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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/14 20060101AFI20240711BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240711BHJP
   C02F 1/68 20230101ALI20240711BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20240711BHJP
【FI】
A61L9/14
A61L9/01 E
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 530K
C02F1/68 530L
F24F7/003
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020178501
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069706
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 拓
(72)【発明者】
【氏名】一桐 正志
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029625(JP,A)
【文献】特開2011-156443(JP,A)
【文献】特開2008-136980(JP,A)
【文献】特開2007-252702(JP,A)
【文献】特開2010-035794(JP,A)
【文献】特開平09-253650(JP,A)
【文献】特開2007-007053(JP,A)
【文献】特開2007-195875(JP,A)
【文献】特開2011-104519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
A61L 2/00- 2/28
A61L 11/00-12/14
C02F 1/46- 1/48
F24F 6/00- 6/18
F24F 8/00- 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除菌対象空気が上流側の吸気口から下流側の送気口へ流れる浄化用通気路を形成するハウジングと、浄化用通気路を流れる除菌対象空気に殺菌剤溶液としての微酸性電解水を噴霧する噴霧装置と、微酸性電解水を生成する生成装置と、ハウジングの外へ微酸性電解水を除菌水として取り出す外部取出部と、生成装置と噴霧装置と外部取出部を接続する流路系と、微酸性電解水の有効塩素濃度を設定する制御装置を備え、
流路系は、生成装置に給水する給水管路と、給水管路を流れる給水量を測定する流量計と、生成装置を噴霧装置と外部取出部の何れか一方に切り替え可能に接続する流路切替弁と、外部取出部と流路切替弁の間に設けた流量調整弁を有し、
生成装置は、電解電流値に応じて塩素ガスの発生量が変化する電解槽を有し、電解槽で発生した塩素ガスを、給水管路を流れる給水中に混気して微酸性電解水を生成し、
制御装置は、生成装置で生成した微酸性電解水を噴霧装置に供給する空気清浄運転モード部と、生成装置で生成した微酸性電解水を外部取出部から取り出す除菌水運転モード部を有し、
空気清浄運転モード部の運転では、電解槽の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御し、
除菌水運転モード部の運転では、電解槽の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を任意に設定する目標設定値の有効塩素濃度に見合う目標発生量に制御し、
流量調整弁の開度調整により給水の流量を調整して除菌水の有効塩素濃度を任意に制御し、
除菌水の有効塩素濃度の制御は、所定の有効塩素濃度を境とする低濃度域と高濃度域とで異なり、低濃度域において除菌水の流量を一定として電解電流値の調整により行い、高濃度域において電解電流値を一定として除菌水の流量の調整により行うことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
制御装置は、空気清浄運転モード部の運転時に、流量計の測定給水量が標準給水量より少ない場合に給水量の不足量に見合って塩素ガスの発生量を減少させて、生成装置で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持し、流量計の測定給水量が標準給水量より多い場合に給水量の過剰量に見合って塩素ガスの発生量を増加させて、生成装置で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持することを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
制御装置は、流路切替弁の操作に伴って、空気清浄運転モード部の運転と、除菌水運転モード部の運転の何れかの運転モードとなることを特徴とする請求項1または2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
外部取出部は、水平方向に向かう水平姿勢と下方向に向かう傾斜姿勢との間に設定する角度範囲において上下に揺動可能であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌、消臭、除塵、ガス除去の機能を備える空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気清浄装置には、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、除菌対象空気が上流側から下流側に流れる通気路を有するハウジングを備え、通気路を流れる除菌対象空気に殺菌剤溶液としての微酸性電解水を噴霧する噴霧装置と、通気路から降下する殺菌剤溶液を受け止める循環槽を有するものであり、さらに、循環槽の微酸性電解水を噴霧装置に供給する循環系と、循環槽に微酸性電解水を供給する薬剤供給装置を有している。そして、薬剤供給装置は、ハウジングの外へ微酸性電解水を取り出す外部取出部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6223112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の空気清浄装置では、微酸性電解水を生成する過程において微酸性電解水の有効塩素濃度を随時任意に制御することができず、初期設定時に予め設定する有効塩素濃度に見合う割合で原料薬液量と給水量を供給し、電解により微酸性電解水を生成している。この際に、電解電流値および単位時間当たりの給水量は常に一定であると想定している。
【0005】
しかし、電解電流値や給水圧、また給水の水道水の水質等は常に一定ではなく、変動を伴うことが常であり、これらを原因として微酸性電解水の有効塩素濃度が成り行き的に変動するので、微酸性電解水の有効塩素濃度を常に一定に維持する保証はない。
【0006】
また、除菌対象空気に殺菌剤溶液として噴霧する微酸性電解水の有効塩素濃度と、外部取出部からハウジングの外へ取り出す微酸性電解水の有効塩素濃度が同じ濃度であるために、初期設定時に設定する有効塩素濃度を、外部に取り出す微酸性電解水の有効塩素濃度を優先して設定すると、除菌対象空気中に濃度の高い微酸性電解水が噴霧され、室内に供給する空気が塩素由来のプール臭を伴うものとなる。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、有効塩素濃度を可変調整することが可能であり、除菌対象空気に殺菌剤溶液として噴霧する微酸性電解水の有効塩素濃度と、外部取出部からハウジングの外へ取り出す微酸性電解水の有効塩素濃度を別々に制御できる空気清浄装置を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の空気清浄装置は、 除菌対象空気が上流側の吸気口から下流側の送気口へ流れる浄化用通気路を形成するハウジングと、浄化用通気路を流れる除菌対象空気に殺菌剤溶液としての微酸性電解水を噴霧する噴霧装置と、微酸性電解水を生成する生成装置と、ハウジングの外へ微酸性電解水を除菌水として取り出す外部取出部と、生成装置と噴霧装置と外部取出部を接続する流路系と、微酸性電解水の有効塩素濃度を設定する制御装置を備え、
流路系は、生成装置に給水する給水管路と、給水管路を流れる給水量を測定する流量計と、生成装置を噴霧装置と外部取出部の何れか一方に切り替え可能に接続する流路切替弁と、外部取出部と流路切替弁の間に設けた流量調整弁を有し、
生成装置は、電解電流値に応じて塩素ガスの発生量が変化する電解槽を有し、電解槽で発生した塩素ガスを、給水管路を流れる給水中に混気して微酸性電解水を生成し、
制御装置は、生成装置で生成した微酸性電解水を噴霧装置に供給する空気清浄運転モード部と、生成装置で生成した微酸性電解水を外部取出部から取り出す除菌水運転モード部を有し、
空気清浄運転モード部の運転では、電解槽の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御し、
除菌水運転モード部の運転では、電解槽の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を任意に設定する目標設定値の有効塩素濃度に見合う目標発生量に制御し、
流量調整弁の開度調整により給水の流量を調整して除菌水の有効塩素濃度を任意に制御し、
除菌水の有効塩素濃度の制御は、所定の有効塩素濃度を境とする低濃度域と高濃度域とで異なり、低濃度域において除菌水の流量を一定として電解電流値の調整により行い、高濃度域において電解電流値を一定として除菌水の流量の調整により行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の空気清浄装置において、制御装置は、空気清浄運転モード部の運転時に、流量計の測定給水量が標準給水量より少ない場合に給水量の不足量に見合って塩素ガスの発生量を減少させて、生成装置で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持し、流量計の測定給水量が標準給水量より多い場合に給水量の過剰量に見合って塩素ガスの発生量を増加させて、生成装置で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持することを特徴とする。
【0011】
本発明の空気清浄装置において、制御装置は、流路切替弁の操作に伴って、空気清浄運転モード部の運転と、除菌水運転モード部の運転の何れかの運転モードとなる。
【0012】
本発明の空気清浄装置において、外部取出部は、水平方向に向かう水平姿勢と下方向に向かう傾斜姿勢との間に設定する角度範囲において上下に揺動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、生成装置が、電解電流値に応じて塩素ガスの発生量が変化する電解槽を有し、電解槽で発生した塩素ガスを、給水管路を流れる給水中に混気して微酸性電解水を生成し、制御装置が空気清浄運転モード部の運転時に、電解槽の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御し、除菌水運転モード部の運転時に、電解槽の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を任意に設定する目標設定値の有効塩素濃度に見合う目標発生量に制御するので、除菌対象空気に殺菌剤溶液として噴霧する微酸性電解水の有効塩素濃度と、外部取出部からハウジングの外へ除菌水として取り出す微酸性電解水の有効塩素濃度を別々に制御できる。
【0014】
制御装置が、空気清浄運転モード部の運転時に、流量計の測定給水量に応じて塩素ガスの発生量を増減させて微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持するので、微酸性電解水の有効塩素濃度が常に安定する。
【0015】
除菌水運転モード部の運転時に塩素ガスの発生量を目標設定値に維持しつつ、流量調整弁の開度調整により給水の流量を調整し、少流量の給水により多くの塩素ガスを混気することで、外部取出部から取り出す除菌水の有効塩素濃度を任意に制御して、有効塩素濃度が目標設定値より高い除菌水を取り出すことができる。また、除菌水運転モード部の運転時に塩素ガスの発生量の目標設定値を変更し、除菌水の流量調整と組み合わせることにより、さらに高濃度の有効塩素濃度の除菌水を取り出すことができる。
【0016】
外部取出部が上下に揺動可能であるので、外部取出部から取り出す除菌水を受け止める容器の開口の高さ位置に応じて外部取出部の給水口の位置を変更することができ、除菌水の水跳ねや零れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す全体斜視図
図2】同実施の形態に係る空気清浄装置を示し、外部取出部の使用状態を示す全体斜視図
図3】同実施の形態に係る空気清浄装置を示し、外部取出部の使用状態を示す拡大斜視図
図4】同実施の形態に係る空気清浄装置の構成を示す模式図
図5】同実施の形態に係る空気清浄装置の生成装置の構成を示す模式図
図6】同実施の形態に係る空気清浄装置の電解槽の構成を示す模式図
図7】同実施の形態に係る空気清浄装置における制御装置の操作盤を示す模式図
図8】同実施の形態に係る空気清浄装置における制御装置の他の操作盤を示す模式図
図9】同実施の形態に係る空気清浄装置における流量と有効塩素濃度の関係を示すグラフ図
図10】同実施の形態に係る空気清浄装置における電流値と有効塩素濃度の関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1から図6に示すように、空気清浄装置は、ハウジング500の前面の扉体501に下方位置の吸気口502と上方位置の送気口503を有しており、ハウジング500の内部に除菌対象空気51が上流側の吸気口502から下流側の送気口503に流れる浄化用通気路52を形成している。
【0020】
ハウジング500の浄化用通気路52の途中には、除菌対象空気51の流れ方向において上流側から下流側へ順次に、第1防塵ネット504、乾式フィルター505、メディア506、噴霧装置53、エリミネータ507、ファン装置600、第2防塵ネット508を設けている。
【0021】
第1防塵ネット504、乾式フィルター505、メディア506は、浄化用通気路52の気液接触領域を形成する風洞509に装着している。メディア506は風洞509の内部に吸気口502の側からハウジング500の奥側に向けて斜め下方に傾斜させて配置してある。
【0022】
噴霧装置53は浄化用通気路52を流れる除菌対象空気に微酸性電解水である殺菌剤溶液をメディア506に沿って噴霧水として噴霧するもので、複数の噴霧ノズル531を備えている。噴霧ノズル531は、斜め下方に向けて配置しても良く、上方に向けて配置しても良く、噴霧装置53をメディア506と対向する位置に配置することも可能である。
【0023】
ここでの微酸性電解水は、主な有効成分が次亜塩素酸(HCLO)で、pH5.0-6.5、有効塩素濃度10-80mg/kgの水溶液である。
【0024】
メディア506は、噴霧装置53から噴霧された噴霧水を保持して除菌対象空気と殺菌剤溶液との気液接触を促すものであって、導電性の材料をマット状にしたものである。エリミネータ507は水滴やミストを捕捉して気流中から除去するものであり、メディア506を配した風洞509の上方位置に配置している。
【0025】
メディア506の下方には循環槽54が設けてあり、循環槽54は浄化用通気路52から降下する殺菌剤溶液を受け止めて貯溜するものである。循環槽54の内部には中継槽541を設けており、中継槽541を覆って降下液ガイド板542を設けている。
【0026】
循環槽54と噴霧装置53の間には循環系55が配設してあり、循環系55は循環ポンプ550を有して循環槽54の殺菌剤溶液を噴霧装置53に供給するものである。
【0027】
循環系55は、殺菌剤溶液の噴霧と排出を兼ねる循環ポンプ550が循環槽54の下方に位置し、循環ポンプ550の下流側に三方流路切替弁551および逆止弁552を介装している。三方流路切替弁551から排水系567が分岐しており、三方流路切替弁551を切替操作することで1台の循環ポンプ550を兼用して殺菌剤溶液の循環と排出を実施できる。
【0028】
また、循環ポンプ550の停止時には逆止弁552が循環系55における殺菌剤溶液の逆流を阻止するので、噴霧装置53の噴霧ノズル531を上方に向けて配置すれば、循環ポンプ550の停止時に循環系55の内部を殺菌剤溶液が満たした状態となり、循環ポンプ550の再起動時に空気の排出に起因する異音が発生しない。
【0029】
殺菌剤溶液である微酸性電解水を供給する薬剤供給系56は、微酸性電解水を生成する生成装置561と、生成装置561に給水する給水系562と、給水系562から分岐して希釈用水を循環槽54に供給する希釈用水供給系563と、先に述べた中継槽541と、生成装置561から微酸性電解水を中継槽541および中継槽541を介して循環槽54に調製用大流量で供給する調製用供給部564と、中継槽541から循環槽54へ微酸性電解水を補給用小流量で滴下して供給する中継ポンプ565を介装した補給用供給部566を備えている。
【0030】
本実施の形態で中継槽541は循環槽54の内部に配置しているが、循環槽54の外部に配置することも可能である。
【0031】
調剤用供給部564には三方流路切替弁564bが介装してあり、三方流路切替弁564bに外部取出部564cが流量調整弁564dを介して接続している。外部取出部564cはハウジング500の扉体501の前面に設けてあり、給水口564eを設けた先端部が水平方向に向かう上方の水平姿勢と先端部が下方向に向かう下方の傾斜姿勢とわたって上下に揺動し、水平姿勢と傾斜姿勢の間に設定する角度範囲(0-90°)において任意の角度に傾斜配置可能である。
【0032】
生成装置561は、給水系562に連通する給水口(ストレーナ)651から調剤用供給部564に連通する送出口652に至る経路中に、電磁弁653、流量計654、電解槽655を有しており、電解槽655に薬液ポンプ656を通して原料薬液の塩酸カートリッジ657が接続している。
【0033】
図6に示すように、電解槽655は給水系562の管路に連通する開口部801を有する通水式の構造をなし、槽内に電極802を配している。そして、電解槽655は槽内に供給する原料薬液の塩酸を電極802で電気分解して塩素ガスGを発生させ、塩素ガスGを電解槽655の開口部801から給水系562の管路を流れる給水中に混気し、微酸性電解水を得る。
【0034】
電解槽655は、電解電流値の調整が可能であり、電解電流値に応じて塩素ガスの発生量が変化する。
【0035】
扉体501の前面には空気清浄装置の運転を担う制御装置900を設けており、制御装置900はタッチパネルからなる操作盤901を有している。図7に示すように、操作盤901は取出量設定部902と濃度設定部903を有している。濃度設定部903で標準設定値または目標設定値の有効塩素濃度を設定すると、設定値に応じて電解槽655の電解電流値が制御される。
【0036】
また、後述する除菌水運転モード部の運転時の有効塩素濃度の調整のために、図8に示すように、操作盤901に取出量設定部902と電流値設定部904と流量設定部905と濃度表示部906を設け、電解電流値と給水系562を流れる給水の流量を設定することで自動計算された濃度を濃度表示部906に表示することも可能である。
【0037】
制御装置900は、生成装置561で生成した微酸性電解水を噴霧装置53に供給する空気清浄運転モード部と、生成装置561で生成した微酸性電解水を外部取出部564cの給水口564eから取り出す除菌水運転モード部を有しており、三方流路切替弁564bの操作に伴って、空気清浄運転モード部の運転と、除菌水運転モード部の運転の何れかの運転モードとなる。
【0038】
空気清浄運転モード部の運転では、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を噴霧用途向けの標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御する。除菌水運転モード部の運転では、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を除菌水の用途に応じて任意に設定する目標設定値の有効塩素濃度に見合う目標発生量に制御する。
【0039】
また、制御装置900には以下の制御機能を設定することも可能である。すなわち、空気清浄運転モード部の運転時に、流量計654の測定給水量が標準給水量より少ない場合に給水量の不足量に見合って塩素ガスの発生量を減少させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持し、流量計654の測定給水量が標準給水量より多い場合に給水量の過剰量に見合って塩素ガスの発生量を増加させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持する。
【0040】
一方、除菌水運転モード部の運転時には、塩素ガスの発生量の調整と、流量調整弁564dの開度調整による給水の流量を調整し、少流量の給水により多くの塩素ガスを混気することで、外部取出部564cから取り出す除菌水の有効塩素濃度を任意に制御することも可能である。
【0041】
このとき、電解電流値と流量と有効塩素濃度は、例えば図9図10に示すような関係を有している。ここでは、有効塩素濃度を30-150ppmの範囲で制御する場合には、図9に示すように、流量を一定に維持する状態で、図10に示すように、電解電流値を1-5Aの範囲で調整する。また、有効塩素濃度を150-390ppmの範囲で制御する場合には、図10に示すように、電解電流値を一定に維持する状態で、図9に示すように、流量を1-5Lの範囲で調整する。
【0042】
以下、上記した構成の作用を説明する。
(空気清浄運転モード部の通常運転モード)
薬剤供給装置56は、中継ポンプ565により補給用供給部566を介して中継槽541から循環槽54へ微酸性電解水を補給用小流量、ここでは例えば0.05L/分で滴下して供給し、循環槽54の殺菌剤溶液の有効塩素濃度を0.1-10mg/Lに維持し、循環槽54の殺菌剤溶液を殺菌に適した希釈濃度に保つ。
【0043】
この状態で、循環ポンプ550によって循環槽54の殺菌剤溶液を噴霧装置53に供給し、ハウジング500の浄化用通気路52を上流側から下流側に流れる除菌対象空気51に、噴霧装置53の噴霧ノズル531から循環槽54で濃度調整された殺菌剤溶液を噴霧する。循環槽54には、噴霧により失われた損失量を補うために、必要に応じて希釈用水供給系563から希釈用水を供給する。
【0044】
この噴霧により、除菌対象空気51に含まれる浮遊菌や塵埃等の異物は、噴霧された殺菌剤溶液の噴霧水に衝突し、捕捉され、除菌される。さらにメディア506に到達した殺菌剤溶液の噴霧水は、メディア506に付着した浮遊菌や塵埃を流下させるとともに、除菌対象空気51に含まれた浮遊菌や塵埃等の異物を取り込み、循環槽54内に流入する。
【0045】
循環槽54では、微酸性電解水が補給用小流量で滴下されて循環槽54の槽内の殺菌剤溶液の有効塩素濃度が0.1-10mg/Lの殺菌に適した濃度に維持されているので、循環槽54内に流入する菌を確実に除菌することができる。また、殺菌剤溶液を除菌対象空気51に高い飽和効率で直接的に噴霧することで、除菌対象空気51に含まれた浮遊菌や塵埃等の異物を殺菌剤溶液に取り込むことができ、除菌に加えて除塵も実現できる。
【0046】
メディア506を通過した殺菌後の空気は、エリミネータ507を通過してファン装置600により室内へ供給される。
(空気清浄運転モード部の調製運転モード)
三方流路切替弁551を操作し、循環ポンプによって循環槽54の古い殺菌剤溶液を排出系567から系外へ排出し、循環槽54の液位を低下させる。
【0047】
次に、三方流路切替弁551を戻して循環系55が噴霧装置53に接続する状態で、薬剤供給系56は、給水系562から生成装置561に給水し、生成装置561において微酸性電解水を生成し、生成時濃度の微酸性電解水を殺菌剤溶液として調製用供給部564を通して中継槽541に調製用大流量で供給する。
【0048】
生成時濃度の微酸性電解水の供給と同時に、希釈用水供給系563から希釈用水を循環槽54に供給する。そして、循環槽54に有効塩素濃度が設定濃度0.1-10mg/Lである濃度調整された微酸性電解水からなる新しい殺菌剤溶液を回分調製し、循環槽54内に殺菌剤溶液を貯溜する。
【0049】
このとき、制御装置900は、空気清浄運転モード部の運転下にあり、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御する。
【0050】
さらに、制御装置900は、流量計654の測定給水量が標準給水量より少ない場合に給水量の不足量に見合って塩素ガスの発生量を減少させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持し、流量計654の測定給水量が標準給水量より多い場合に給水量の過剰量に見合って塩素ガスの発生量を増加させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持する。
(空気清浄運転モード部の洗浄運転モード)
洗浄運転モードでは、三方流路切替弁551を操作し、循環ポンプ550によって循環槽54の古い殺菌剤溶液を排出系567から系外へ排出し、調製用供給部564から殺菌剤溶液を循環槽54に供給し、循環槽54に所定量の殺菌剤溶液を満たして循環槽54を薬剤洗浄する。
【0051】
このとき、制御装置900は、空気清浄運転モード部の運転下にあり、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御する。
【0052】
さらに、制御装置900は、流量計654の測定給水量が標準給水量より少ない場合に給水量の不足量に見合って塩素ガスの発生量を減少させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持し、流量計654の測定給水量が標準給水量より多い場合に給水量の過剰量に見合って塩素ガスの発生量を増加させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持する。
(除菌水運転モード部の運転)
空気清浄装置から微酸性電解水を除菌水として取り出す場合には、三方流路切替弁564bを操作して調剤用供給部564を外部取出部564cに接続し、微酸性電解水を給水口564dから取り出す。
【0053】
このとき、制御装置900は、除菌水運転モード部の運転に切り替わり、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を除菌水の用途に応じて任意に設定する除菌水の目標設定値の有効塩素濃度に見合う目標発生量に制御する。
【0054】
また、制御装置900は塩素ガスの発生量の調整と、流量調整弁564dの開度調整による給水の流量を調整し、少流量の給水により多くの塩素ガスを混気することで、外部取出部564cから取り出す除菌水の有効塩素濃度を任意に制御できる。
【0055】
除菌水の用途は、手指の除菌、テーブルやドアノブ等の器物の表面除菌、嘔吐物の除菌など様々であるが、本実施の形態によれば用途や除菌対象物に応じた最適な有効塩素濃度の微酸性電解水を自在に生成できる。
【0056】
また、制御装置900が空気清浄運転モード部の運転時には、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を噴霧用途向けの標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御し、さらに除菌水運転モード部の運転時には、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を除菌水の用途に応じて任意に設定する目標設定値の有効塩素濃度に見合う目標発生量に制御するので、除菌対象空気に殺菌剤溶液として噴霧する微酸性電解水の有効塩素濃度と、外部取出部564cからハウジング500の外へ除菌水として取り出す微酸性電解水の有効塩素濃度を別々に制御できる。
【0057】
制御装置900が、空気清浄運転モード部の運転時に、流量計654の測定給水量に応じて塩素ガスの発生量を増減させて微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持するので、微酸性電解水の有効塩素濃度が常に安定する。
【0058】
除菌水運転モード部の運転時に塩素ガスの発生量の調整と、流量調整弁564dの開度調整による給水の流量を調整し、少流量の給水により多くの塩素ガスを混気することで、外部取出部564cから取り出す除菌水の有効塩素濃度を任意に制御することで、有効塩素濃度が目標設定値より高い微酸性電解水を除菌水として取り出すことができる。よって、吐しゃ物等の有機物濃度の高い除菌対象物にも有効な除菌水を生成できる。
【0059】
図2図3に示すように、外部取出部564cは上下に揺動可能であるので、外部取出部564cから取り出す除菌水を受け止める容器400の開口401の高さ位置に応じて外部取出部564cの給水口564eの位置を変更することができ、除菌水の水跳ねや零れがなくなる。
【符号の説明】
【0060】
51 除菌対象空気
52 浄化用通気路
53 噴霧装置
54 循環槽
55 循環系
56 薬剤供給系
500 ハウジング
501 扉体
502 吸気口
503 送気口
504 第1防塵ネット
505 乾式フィルター
506 メディア
507 エリミネータ
508 第2防塵ネット
509 風洞
531 噴霧ノズル
541 中継槽
542 降下液ガイド板
550 循環ポンプ
551 三方流路切替弁
552 逆止弁
561 生成装置
562 給水系
563 希釈用水供給系
564 調製用供給部
564b 三方流路切替弁
564c 外部取出部
564d 流量調整弁
564e 給水口
565 中継ポンプ
566 補給用供給部
567 排出系
600 ファン装置
601 ノズル細管
602 第1切替スイッチ
603 直流電源
604 噴霧水
605 ミスト
606 第2切替スイッチ
607 放電用電極
651 給水口(ストレーナ)
652 送出口
653 電磁弁
654 流量計
655 電解槽
656 薬液ポンプ
657 塩酸カートリッジ
801 開口部
802 電極
900 制御装置
901 操作盤
902 取出量設定部
903 濃度設定部
904 電流値設定部
905 流量設定部
906 濃度表示部
G 塩素ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10