(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240711BHJP
F16K 1/44 20060101ALI20240711BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20240711BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K1/44 B
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2020178720
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】笠井 宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143704(JP,A)
【文献】特開2012-237342(JP,A)
【文献】特開2017-075657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0166979(US,A1)
【文献】実開昭58-162362(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0279956(US,A1)
【文献】実開昭58-101057(JP,U)
【文献】米国特許第06047718(US,A)
【文献】中国実用新案第209762383(CN,U)
【文献】特開2019-211006(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107975602(CN,A)
【文献】特開2020-034140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00 - 1/54
F16K 31/04 - 31/05
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室および弁ポートを構成する弁本体と、前記弁ポートを開閉する弁体と、前記弁体を軸線方向に沿って進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁であって、
前記弁ポートの弁室側には、その開口周縁に位置する主弁座と、前記主弁座と同心円状で該主弁座よりも径方向外側または内側にずれて位置する副弁座と、が設けられ、
前記弁体は、前記主弁座に着座可能な主弁体と、前記副弁座に着座可能な副弁体と、前記主弁体を前記副弁体に対して弁閉方向に付勢する主弁ばねと、前記駆動部の駆動軸に対して前記副弁体を弁閉方向に付勢する副弁ばねと、
前記駆動部の駆動軸と前記副弁体とを接続する円筒状の接続部材と、を有し、
前記主弁ばねは、前記主弁体と前記副弁体との間に設けられ、前記副弁ばねは、前記接続部材の内部に設けられ、前記副弁体に対して前記主弁体が軸線方向に移動自在に設けられるとともに、前記駆動軸に対して前記副弁体が軸線方向に移動自在に設けられ、
前記主弁体と前記副弁体のうち、弁閉動作時に、先に閉じる方の弁体には弁座に着座するテーパ部が設けられ、後から閉じる方の弁体と弁座の少なくとも一方には、軸線方向と直交する平面に沿って平坦なシール面が設けられ、前記シール面が他方とシールすることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記副弁体および前記副弁座の少なくとも一方には、他方に当接して弾性変形可能な弾性部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁体の弁閉動作の際に、前記主弁体が前記主弁座に着座した後に前記副弁体が前記副弁座に着座するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁体は
、前記接続部材が前記弁本体のガイド孔によって軸線方向に案内され、前記弁ポートと前記ガイド孔とが連通された圧力バランス式であって、
前記主弁体と前記主弁座との主着座部は直径Aの円環状に形成され、前記副弁体と前記副弁座との副着座部は直径Bの円環状に形成され、各着座部の直径A,Bの間に前記接続部材の外径Cが設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~4のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動弁として、駆動部によって進退駆動される主弁体と、主弁体に対して移動自在に支持された副弁体と、を備え、弁閉動作の際に、主弁体が弁口を閉じるよりも先に副弁体が弁口を閉じるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の電動弁では、主弁体および副弁体による二重シール構造を有していることから、異物噛み込みによる弁漏れの抑制を図ることができるものの、主弁体よりも先に副弁体が弁閉することで、主弁体および副弁体の両方の動きに流量が依存するため、流量特性が安定しない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、弁漏れ性能の向上を図るとともに流量特性を安定させることができる電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁室および弁ポートを構成する弁本体と、前記弁ポートを開閉する弁体と、前記弁体を軸線方向に沿って進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁であって、前記弁ポートの弁室側には、その開口周縁に位置する主弁座と、前記主弁座と同心円状で該主弁座よりも径方向外側または内側にずれて位置する副弁座と、が設けられ、前記弁体は、前記主弁座に着座可能な主弁体と、前記副弁座に着座可能な副弁体と、前記主弁体を前記副弁体に対して弁閉方向に付勢する主弁ばねと、前記駆動部の駆動軸に対して前記副弁体を弁閉方向に付勢する副弁ばねと、前記駆動部の駆動軸と前記副弁体とを接続する円筒状の接続部材と、を有し、前記主弁ばねは、前記主弁体と前記副弁体との間に設けられ、前記副弁ばねは、前記接続部材の内部に設けられ、前記副弁体に対して前記主弁体が軸線方向に移動自在に設けられるとともに、前記駆動軸に対して前記副弁体が軸線方向に移動自在に設けられ、前記主弁体と前記副弁体のうち、弁閉動作時に、先に閉じる方の弁体には弁座に着座するテーパ部が設けられ、後から閉じる方の弁体と弁座の少なくとも一方には、軸線方向と直交する平面に沿って平坦なシール面が設けられ、前記シール面が他方とシールすることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、主弁体および主弁座と副弁体および副弁材とによる二重シール構造によって弁漏れ性能の向上を図ることができる。さらに、副弁体に対して主弁体が軸線方向に移動自在に設けられるとともに、主弁ばねによって主弁体が弁閉方向に付勢されていることで、主弁体が主弁座に着座した後、さらに弁体を弁閉方向に駆動して副弁体を副弁座に着座させる、すなわち、副弁体よりも先に主弁体を弁閉させることができ、主弁体の動きによって流量が決まることから流量特性を安定させることができる。また、駆動部の駆動軸に対して副弁体が軸線方向に移動自在に設けられるとともに、副弁ばねによって副弁体が弁閉方向に付勢されていることで、副弁体が副弁座に着座した後、さらに弁体を弁閉方向に駆動して副弁体を副弁座に押し付けることができ、副弁体によるシール性能を向上させることができる。さらに、主弁ばねおよび副弁ばねを備えていることで、主弁体および副弁体がそれぞれ主弁座および副弁座にロックされにくくなり、弁体の安定作動を図るとともに、弁漏れ性能や耐久性の向上を図ることができる。
【0008】
この際、前記副弁体および前記副弁座の少なくとも一方には、他方に当接して弾性変形可能な弾性部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、副弁体および副弁座の一方に設けられた弾性部が他方に当接して弾性変形することで、副弁体によるシール性能を向上させることができる。
【0009】
また、前記弁体の弁閉動作の際に、前記主弁体が前記主弁座に着座した後に前記副弁体が前記副弁座に着座するように構成されていることが好ましい。この構成によれば、前述のように、副弁体よりも先に主弁体を弁閉させることができ、主弁体の動きによって流量が決まることから流量特性を安定させることができる。
【0010】
さらに、前記弁体は、前記接続部材が前記弁本体のガイド孔によって軸線方向に案内され、前記弁ポートと前記ガイド孔とが連通された圧力バランス式であって、前記主弁体と前記主弁座との主着座部は直径Aの円環状に形成され、前記副弁体と前記副弁座との副着座部は直径Bの円環状に形成され、各着座部の直径A,Bの間に前記接続部材の外径Cが設定されていることが好ましい。この構成によれば、弁ポートとガイド孔とが連通された圧力バランス式の弁装置において、接続部材の外径Cが主弁体および副弁体の各着座部の直径A,Bの間に設定されていることで、ガイド孔位置にて作用する接続部材の背圧による軸線方向の荷重と、弁ポート側から主弁体や副弁体に作用する圧力による軸線方向の荷重と、の荷重差を小さくすることができる。従って、弁体を開閉するための駆動部の負荷を軽減することができ、駆動部が大型化するのを抑制することができる。
【0011】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動弁および冷凍サイクルシステムによれば、主弁体および副弁体による二重シール構造によって弁漏れ性能の向上を図ることができるとともに、副弁体よりも先に主弁体を弁閉させることで流量特性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】前記電動弁の全開状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図3】前記電動弁の主弁着座点の状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】前記電動弁の副弁着座点の状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】前記電動弁の全閉状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図7】前記電動弁の全開状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図8】前記電動弁の主弁着座点の状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図9】前記電動弁の副弁着座点の状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図10】前記電動弁の全閉状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図11】本発明の第1の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【
図12】本発明の第2の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態に係る電動弁を
図1~
図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁本体1と、弁体2と、駆動部3と、ねじ送り機構4と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。
【0015】
弁本体1は、それぞれ筒状の第1本体部材1A、第2本体部材1Bおよび第3本体部材1Cを有し、第1本体部材1Aの上側に第2本体部材1Bが溶接固定され、第2本体部材1Bの上側に第3本体部材1Cがろう付け固定されている。第1本体部材1Aおよび第2本体部材1Bは、それぞれ切削加工されたSUS製等の部材であって、それらの内部に円筒状の弁室1Dが形成されている。第1本体部材1Aは、その側面に第1ポート1Eが形成され、底面に第2ポート(弁ポート)1Fが形成されている。第1本体部材1Aの第1ポート1Eには、弁室1Dに連通して冷媒が流入又は流出される第1継手管11が取り付けられ、第2ポート1Fには、弁室1Dに連通して冷媒が流出又は流入される第2継手管12が取り付けられている。第3本体部材1Cは、SUS製の金属板材からプレス加工等により筒状に形成された部材であって、第3本体部材1Cの上側には、駆動部3を覆うケース13が固定されている。
【0016】
図2~5に示すように、第1本体部材1Aにおける第2ポート1Fの上側(弁室1D側)には、主弁座14と、主弁座14よりも上側かつ主弁座14と同心円状で径方向外側に位置する副弁座15と、が形成されている。第2本体部材1Bには、弁体2を軸線L方向に案内するガイド孔16が形成されている。
【0017】
弁体2は、主弁座14に対して接離して着座及び離座する主弁体2Aと、主弁体2Aと同心円状で主弁体2Aよりも径方向外側に位置して副弁座15に対して接離して着座及び離座する副弁体2Bと、副弁体2Bに対して主弁体2Aを弁閉方向に付勢する主弁ばね2Cと、駆動部3の駆動軸32(後述)に対して副弁体2Bを弁閉方向に付勢する副弁ばね2Dと、副弁体2Bと駆動軸32とを接続する円筒状の接続部材2Eと、を備えている。主弁体2Aは、底面部21を有した円筒状に形成され、底面部21の外周部には主弁座14に当接するテーパ面が形成され、主弁体2Aの上端部には径方向外側に延びる鍔部22が形成されている。副弁体2Bは、主弁体2Aを保持する円環状の第1部材23と、第1部材23の上側に溶接固定される円板状の第2部材24と、第1部材23の下側に設けられて副弁座15に当接して弾性変形する弾性部としてのOリング25と、Oリング25を第1部材23に保持するリング26と、を有している。
【0018】
主弁体2Aは、その円筒外周面が副弁体2Bの第1部材23内周面に案内されることで軸線L方向に移動自在に設けられるとともに、鍔部22が第1部材23に係止されることで副弁体2Bから抜け出さないように保持されている。主弁ばね2Cは、主弁体2Aの底面部21上面と副弁体2Bの第2部材24下面との間に圧縮状態で設けられ、主弁体2Aを弁閉方向に付勢している。副弁体2Bは、第2部材24が接続部材2Eの下側に溶接固定され、接続部材2Eが駆動軸32の先端部に対して軸線L方向に移動自在に設けられている。副弁ばね2Dは、接続部材2Eの内部にて、駆動軸32先端の拡径部34Aと接続部材2Eの底部との間に圧縮状態で設けられ、副弁体2Bを駆動軸32に対して弁閉方向に付勢している。接続部材2Eの上端部内側には、駆動軸32の拡径部34Aを係止する係止部27が固定され、これによって弁体2が駆動軸32に接続されている。
【0019】
図1に示すように、駆動部3は、電動モータとしてのステッピングモータ3Aと、ステッピングモータ3Aの回転を規制するストッパ機構3Bと、を備える。ステッピングモータ3Aは、外周部が多極に着磁されたマグネットロータ31と、ケース13の外周に配設されたステータコイル(不図示)と、マグネットロータ31の中央に固定された駆動軸32と、を備えている。駆動軸32は、固定部材32Aを介してマグネットロータ31に固定されるとともに軸線Lに沿って延びるねじ軸33と、弁体2に接続される先端部材34と、ねじ軸33と先端部材34とを回転自在に接続する転がり軸受35と、を備えている。ねじ軸33には雄ねじ部33Aが一体に形成され、この雄ねじ部33Aがねじ送り機構4の一方を構成している。先端部材34の先端部には、拡径部34Aが形成されている。転がり軸受35は、ねじ軸33の先端部に固定されるベアリングホルダ35Aと、ベアリングホルダ35Aと先端部材34の基端部との間に設けられるラジアルベアリング35Bと、を備え、ねじ軸33の回転が先端部材34および弁体2に伝達されないようになっている。
【0020】
ストッパ機構3Bは、ケース13の天井部から垂下された円柱状のガイド36と、ガイド36の外周に固定されたガイド線体37と、ガイド線体37にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ38と、を備えている。可動スライダ38には、径方向外側に突出した爪部38A,38Bが設けられ、回転するマグネットロータ31の延長軸31Aが爪部38Bを押すことで、可動スライダ38がガイド線体37に倣って回転かつ上下するようになっている。ガイド線体37には、マグネットロータ31の最上端位置を規定する上端ストッパ37Aと、マグネットロータ31の最下端位置を規定する下端ストッパ37Bと、が形成されている。これらの上端ストッパ37Aおよび下端ストッパ37Bに可動スライダ38の爪部38A,38Bが当接することで、可動スライダ38の回転が停止され、これによりマグネットロータ31の回転が規制され、弁体2の上昇または下降も停止される。
【0021】
ねじ送り機構4は、ステッピングモータ3Aの回転により弁体2を進退させるものであって、第2本体部材1Bの上端部に固定される支持部材4Aと、支持部材4Aの内部に設けられる雌ねじ部材4Bと、を備えている。支持部材4Aは、全体略円筒状に形成された金属製の部材であって、その下端部が第2本体部材1Bにカシメ固定されている。支持部材4Aの中間部には、周方向の複数個所に導通孔41が設けられている。雌ねじ部材4Bは、全体円筒状の樹脂製部材等であって、その内周面にねじ送り機構4の他方を構成する雌ねじ部42が形成されている。ねじ送り機構4は、駆動軸32のねじ軸33の雄ねじ部33Aと雌ねじ部材4Bの雌ねじ部42とが螺合することで構成され、ステッピングモータ3Aによりマグネットロータ31及びねじ軸33が回転駆動されると、雄ねじ部33Aが雌ねじ部42に案内されて駆動軸32が軸線L方向に進退移動し、これに伴って弁体2も軸線Lに沿って上昇または下降する。
【0022】
本実施形態の電動弁10の動作を
図2~5を参照して説明する。先ず、
図2に示すように、主弁体2Aが主弁座14から離隔し、副弁体2Bが副弁座15から離隔した全開状態において、主弁体2Aは、主弁ばね2Cによって弁閉方向に付勢され、鍔部22が第1部材23に係止されている。また、副弁体2Bは、副弁ばね2Dによって弁閉方向に付勢され、接続部材2Eの係止部27が駆動軸32の拡径部34Aに係止されている。次に、ステッピングモータ3Aの駆動により弁体2を弁閉方向に下降させていくと、
図3に示すように、弁体2のうち主弁体2Aの底面部21のテーパ面が主弁座14に当接する。このとき、副弁体2BのOリング25と副弁座15とは当接せず、隙間が形成されている。
【0023】
次に、弁体2を弁閉方向にさらに下降させていくと、
図4に示すように、副弁体2BのOリング25が副弁座15に当接する。このとき、副弁体2Bの下降に伴い、主弁体2Aの鍔部22が第1部材23から離れるとともに、主弁ばね2Cが圧縮され、その押圧力が主弁体2Aに作用し、主弁体2Aのテーパ面が主弁座14に押し付けられる。さらに、弁体2を下降させると、
図5に示すように、副弁体2BのOリング25が副弁座15との間で弾性変形するとともに、副弁ばね2Dの押圧力が副弁体2Bに作用し、Oリング25が副弁座15に押し付けられる。このとき、副弁体2Bの下降により主弁ばね2Cの押圧力がさらに高まり、主弁体2Aのテーパ面が主弁座14に強く押し付けられる。
【0024】
このような全閉状態において、主弁体2Aが主弁座14に着座した主着座部と、副弁体2Bが副弁座15に着座した副着座部と、によって第1継手管11、第1ポート1Eおよび弁室1Dと、第2ポート1Fおよび第2継手管12とが区画される。全閉状態からステッピングモータ3Aの駆動により弁体2を弁開方向に上昇させれば、上述した弁閉動作とは逆に副弁体2Bから弁開し始め、次に主弁体2Aが弁開して全開状態となる。
【0025】
以上の本実施形態によれば、電動弁10は、主弁体2Aおよび主弁座14と副弁体2Bおよび副弁材15とによる二重シール構造によって弁漏れ性能の向上を図ることができる。さらに、副弁体2Bに対して主弁体2Aが軸線L方向に移動自在に設けられるとともに、主弁ばね2Cによって主弁体2Aが弁閉方向に付勢されていることで、主弁体2Aが主弁座14に着座した後、さらに弁体2を弁閉方向に駆動して副弁体2Bを副弁座15に着座させる、すなわち、副弁体2Bよりも先に主弁体2Aを弁閉させることができ、主弁体2Aの動きによって流量が決まることから流量特性を安定させることができる。
【0026】
また、駆動部3の駆動軸32に対して副弁体2Bが軸線L方向に移動自在に設けられるとともに、副弁ばね2Dによって副弁体2Bが弁閉方向に付勢されていることで、副弁体2Bが副弁座15に着座した後、さらに弁体2を弁閉方向に駆動して副弁体2Bを副弁座15に押し付けることができ、副弁体2Bによるシール性能を向上させることができる。さらに、電動弁10は、主弁ばね2Cおよび副弁ばね2Dを備えていることで、主弁体2Aおよび副弁体2Bがそれぞれ主弁座14および副弁座15にロックされにくくなり、弁体2の安定作動を図るとともに、弁漏れ性能や耐久性の向上を図ることができる。
【0027】
また、副弁体2Bに設けられたOリング25が副弁座15に当接して弾性変形することで、Oリング25を副弁座15に押し付けることができ、副弁体2Bによるシール性能を機械加工の金属部品だけの副弁体よりも向上させることができる。
【0028】
また、駆動軸32のねじ軸33と先端部材34とが転がり軸受35によって回転自在に接続されることで、ねじ軸33の回転抵抗を低減して駆動力伝達効率を高めることができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態に係る電動弁を
図6~
図10に基づいて説明する。
図6に示すように、本実施形態の電動弁10Aは、第1実施形態の電動弁10と同様に、弁本体1と、弁体2と、駆動部3と、ねじ送り機構4と、を備えている。電動弁10Aは、第1実施形態の電動弁10と比較して、弁本体1の第2本体部材1Bおよび弁体2の構成が相違している。以下相違点について詳しく説明し、第1実施形態と同一又は同様の構成については、同じ符号を付すことで説明を省略又は簡略する。
【0030】
電動弁10Aにおいて、弁体2の主弁体2Aの底面部21には、連通孔21Aが形成され、接続部材2Eの上端部側の周面には、複数の連通孔2Fが形成されている。これらの連通孔21A,2Fが設けられていることで、主弁体2A、副弁体2Bおよび接続部材2Eの内部を介して、第2ポート1Fおよび第2継手管12と、ガイド孔16の上部空間(弁体2の背面空間)と、が連通されている。さらに、弁体2の背面空間は、支持部材4Aの導通孔41を通してケース13の内部とも連通されている。また、主弁体2Aの外周面と副弁体2Bの第1部材23内周面との間には冷媒の漏れを防止するパッキン28が設けられ、接続部材2Eとガイド孔16の内周面との間には冷媒の漏れを防止するパッキン29が設けられている。従って、主弁体2Aが主弁座14に着座し、第2ポート1Fと弁室1Dとが区画された際には、第1継手管11側の冷媒は、第1ポート1Eから弁室1Dまでは流入するものの、ガイド孔16や弁体2の背面空間には流入しないようになっている。
【0031】
以上のように、本実施形態の電動弁10Aは、弁体2の前面側(背面側と反対側)である第2ポート1F側の空間と、弁体2の背面空間と、が連通されることで、弁体2に軸線L方向に作用する圧力の均圧化が図られた圧力バランス式のものである。従って、電動弁10Aでは、弁体2の弁開動作または弁閉動作における駆動部3の負荷が軽減される。さらに、電動弁10Aでは、
図7に示すように、主弁体2Aと主弁座14との主着座部(第2ポート1Fの内径)は直径Aの円環状に形成され、副弁体2Bと副弁座15との副着座部(Oリング25の直径)は直径Bの円環状に形成され、各着座部の直径A,Bの間に接続部材2Eの外径Cが設定されている。なお、接続部材2Eの外径Cとしては、C=(A+B)/2であることが好ましい。
【0032】
このような本実施形態の電動弁10Aは、第1実施形態の電動弁10と同様に動作し、同様の作用効果を奏することができる。さらに、電動弁10Aによれば、圧力バランス式の弁装置において、接続部材2Eの外径Cが主弁体2Aおよび副弁体2Bの各着座部の直径A,Bの間に設定されていることで、接続部材2Eに背面側の受圧面積と、第2ポート1F側の主弁体2Aの受圧面積および副弁体2Bの受圧面積と、を近づけ、弁体2に軸線L方向(上下方向)に作用する荷重差を小さくすることができる。従って、弁体2を開閉するための駆動部3の負荷を軽減することができ、駆動部3が大型化するのを抑制することができる。さらに、電動弁10Aは、圧力バランス式のため、第1ポート1E側と、第2ポート1F側との差圧が大きくても使用できる。例えば、CO
2などの超高圧冷媒の冷凍サイクルでも使用することができる。また、正流し(第1ポート1Eから第2ポート1Fへの流れ)と、逆流し(第2ポート1Fから第1ポート1Eへの流れ)の双方向でも使用することができるため、後述の
図12の冷暖切換のヒートポンプサイクルでも使用することができる。すなわち、第1実施形態の電動弁10は、非圧力バランス式のため、第1ポート1Eから第2ポート1Fへの正流し専用であったが、第2実施形態の電動弁10Aは、圧力バランス式のため、正流しと逆流しの双方向流通可能である。
【0033】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを
図11、12に基づいて説明する。
図11は、実施形態の第1の冷凍サイクルシステムを示す図である。
図12は、実施形態の第2の冷凍サイクルシステムを示す図である。図において、符号100は前記実施形態の電動弁10,10Aを用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は圧縮機、500は四方弁を構成する流路切換弁である。膨張弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、圧縮機400、および流路切換弁500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0034】
図11に示す第1の冷凍サイクルシステムは、冷房運転専用のものであり、その冷凍サイクルの流路は、図に実線の矢印で示したように、圧縮機400で圧縮された冷媒は室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された冷媒は膨張弁100(第1実施形態の電動弁10、または第2実施形態の電動弁10Aの第1継手管11から第2継手管12への流れ)を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。膨張弁100は、室外熱交換器200から流入する冷媒を減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0035】
図12に示す第2の冷凍サイクルシステムにおいて、冷凍サイクルの流路は、流路切換弁500により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図に実線の矢印で示したように、圧縮機400で圧縮された冷媒は流路切換弁500から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された冷媒は膨張弁100(第2実施形態の電動弁10Aの第1継手管11から第2継手管12への流れ)を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0036】
一方、暖房運転時には、図に破線の矢印で示したように、圧縮機400で圧縮された冷媒は流路切換弁500から室内熱交換器300、膨張弁100(第2実施形態の電動弁10Aの第2継手管12から第1継手管11への流れ)、室外熱交換器200、流路切換弁500、そして、圧縮機400の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する冷媒、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0037】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10,10Aを例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0038】
また、前記実施形態の電動弁10,10Aでは、主弁体2Aと同心円状で主弁体2Aよりも径方向外側に副弁体2Bが設けられ、主弁座14と同心円状で主弁座14よりも径方向外側に副弁座15が設けられていたが、これに限らず、主弁体2Aと同心円状で主弁体2Aよりも径方向内側に副弁体2Bが設けられ、主弁座14と同心円状で主弁座14よりも径方向内側に副弁座15が設けられてもよい。
【0039】
また、前記実施形態の電動弁10,10Aでは、副弁体2Bに弾性部としてのOリング25が設けられていたが、弾性部は、副弁座15に設けられていてもよいし、副弁体2Bおよび副弁座15の両方に設けられていてもよい。また、弾性部としては、副弁体や副弁座に設けられる別体のOリング25などに限らず、副弁体や副弁座の一部に一体に形成されたものであってもよい。また、弾性部としてのOリングは、Oリング形状の様な断面が丸形状に限らず、四角形状や三角形状のリング状シール部材等でもよい。
【0040】
また、前記第2実施形態の電動弁10Aでは、主弁体2Aの底面部21に形成された連通孔21Aから弁体2の内部を通る連通経路によって、第2ポート1F側の空間と弁体2の背面空間とが連通されていたが、これに限らず、弁体2の内部を経由しない連通経路によって連通されてもよい。さらに、電動弁10Aでは、弁体2の主弁体2Aの外周面と副弁体2Bの第1部材23内周面との間にパッキン28が設けられ、接続部材2Eとガイド孔16の内周面との間にパッキン29が設けられていたが、これらのパッキン28,29は、省略することができる。すなわち、主弁体2Aの外周面と副弁体2Bの内周面との隙間や、接続部材2Eとガイド孔16の内周面との隙間が微少であって、冷媒の漏れが少ないという条件が成り立てば、パッキン28,29を省略してもよい。
【0041】
また、前記実施形態の電動弁10,10Aは、駆動部3のステッピングモータ3Aによって駆動軸32のねじ軸33を回転させ直動式の駆動機構を有していたが、これに限らず、モータと駆動軸との間に遊星ギア等の減速機構を有したものであってもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 弁本体
1D 弁室
1E 第1ポート
1F 第2ポート(弁ポート)
1F 弁座部
2 弁体
2A 主弁体
2B 副弁体
2C 主弁ばね
2D 副弁ばね
2E 接続部材
3 駆動部
14 主弁座
15 副弁座
16 ガイド孔
25 Oリング(弾性部)
32 駆動軸
100 膨張弁(電動弁)
200 室外熱交換器(凝縮器又は蒸発器)
300 室内熱交換器(蒸発器又は凝縮器)
400 流路切換弁
500 圧縮機