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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】直流電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240711BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20240711BHJP
   B60L 53/53 20190101ALI20240711BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20240711BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240711BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
B60L53/30
B60L53/53
B60L58/13
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020183596
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073548
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐喜
(72)【発明者】
【氏名】小松 史弥
(72)【発明者】
【氏名】竹野 和彦
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102916(JP,A)
【文献】特開2013-081289(JP,A)
【文献】特開2016-220461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部指令に基づいた蓄電池の充放電動作を行う電気自動車と接続されて、直流電力を使用する負荷に対して供給する電力を制御する直流電源システムであって、
商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記直流電力を消費する負荷と、
前記直流電力による蓄電が可能な蓄電池と、
前記電気自動車との間での前記直流電力の授受を調整するコンバータ部と、
前記外部指令に基づいた前記電気自動車における蓄電池の充放電動作の実行を前提として、前記電気自動車との電力の授受、および、前記蓄電池の蓄電量に基づいた前記蓄電池における充放電動作に係る調整を行いつつ、前記負荷への電力供給を制御する制御部と、
を有する、直流電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記電気自動車の蓄電池から放電を行う場合に、前記コンバータ部における前記電気自動車からの出力電圧と前記整流器からの出力電圧との関係を調整することで、前記負荷への電力供給を制御する、請求項1に記載の直流電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記蓄電池の端子電圧と前記整流器からの出力電圧との関係を調整することで、前記蓄電池における充放電を調整しながら、前記負荷への電力供給を制御する、請求項1または2に記載の直流電源システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記電気自動車の蓄電池における蓄電量が所定の範囲から外れる場合には、前記コンバータ部と前記電気自動車との連携を切断する、請求項1~3のいずれか一項に記載の直流電源システム。
【請求項5】
前記負荷へ直流電力が供給されるバスにおけるバス電圧値を測定するバス電圧測定部をさらに有し、
前記制御部は、前記電気自動車の蓄電池への充電を行う場合に、前記バス電圧測定部によるバス電圧値の変動を監視しながら、前記電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量を調整する、請求項1~4のいずれか一項に記載の直流電源システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記バス電圧値が所定の閾値よりも大きい条件で、前記電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量が最大となるように、充電量を調整する、請求項5に記載の直流電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
負荷に対する電力の供給に電気自動車用電池を利用する分散型電源システムが知られている。例えば、特許文献1では、発電電源、蓄電池、系統電源、電気自動車電池と、負荷との間で電力の調整を行う分散型電源機器システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-76977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、耐災害性強化として、災害時にも電力が途絶えない通信インフラへの要求が高まっている。そのため、無線基地局への非常時の電源供給源として、蓄電池だけでなく電気自動車等の電池を用いることが検討されている。しかしながら、バックアップ電源としての蓄電池において一定の蓄電量を確保し、さらに電気自動車用電池における充放電を適切に行いながら電力の調整を行う方法については検討されていなかった。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る直流電源システムは、外部指令に基づいた蓄電池の充放電動作を行う電気自動車と接続されて、直流電力を使用する負荷に対して供給する電力を制御する直流電源システムであって、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力を消費する負荷と、前記直流電力による蓄電が可能な蓄電池と、前記電気自動車との間での前記直流電力の授受を調整するコンバータ部と、前記外部指令に基づいた前記電気自動車における蓄電池の充放電動作の実行を前提として、前記電気自動車との電力の授受、および、前記蓄電池の蓄電量に基づいた前記蓄電池における充放電動作に係る調整を行いつつ、前記負荷への電力供給を制御する制御部と、を有する。
【0007】
上記の直流電源システムによれば、外部指令によって蓄電池の充放電動作が指定されている電気自動車を接続した際に、電気自動車における蓄電池の充放電動作を実行しながら、電気自動車との電力の授受と、蓄電池における充放電とが調整される。その上で、負荷への電力供給が制御される。外部指令に基づいた電気自動車の蓄電池の充放電動作を行うことで、電気自動車用電池における蓄電量の管理を適切に行うことができる。また、蓄電池における蓄電量に基づいて充放電動作に係る調整を行いつつ、負荷への電力供給を制御することによって、例えば、蓄電池における蓄電量を適切な範囲となるように調整しながら、負荷への電力供給を行うことができる。このように、上記の直流電源システムによれば、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る直流電源システムの概略構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る直流電源システムにおけるコンバータ装置の機能の一例を説明するブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る直流電源システムにおける制御部の機能の一例を説明するブロック図である。
図4図4は、制御部のハードウェア構成例を示す図である。
図5図5は、制御部による制御によって実行される直流電源システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、制御部による制御によって実行される直流電源システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、制御部による制御によって実行される直流電源システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態に係る直流電源システムにおけるコンバータ装置の機能の一例を説明するブロック図である。
図9図9は、第2実施形態に係る直流電源システムにおける制御部の機能の一例を説明するブロック図である。
図10図10は、制御部による制御によって実行される直流電源システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
<第1実施形態>
[直流電源システム]
図1は、第1実施形態に係る直流電源システムの概要を示すブロック図である。図1に示すように、直流電源システム1は、整流器2と、負荷3と、蓄電池4と、コンバータ装置5と、を含んで構成される。また、整流器2は商用電源6に接続され、コンバータ装置5は電気自動車7に接続され得る。直流電源システム1は、商用電源6からの電力(外部電力)を利用可能に構成されている。直流電源システム1内の電力の移動を制御する制御装置は、コンバータ装置5に含まれる制御部52として実現される。
【0012】
整流器2は、商用電源6からの交流電力を直流電力に変換する。また、負荷3は、直流電力を受けて動作する負荷である。本実施形態では、負荷3は通信装置であって、例えば、無線基地局を含んで構成される。負荷3は、一般家庭またはオフィスのような負荷と比較して、とくに、直流電力を消費する点が相違する。
【0013】
蓄電池4は、直流電源システム1では、商用電源6または電気自動車7から供給される電力のうち負荷3で消費されない電力(余剰電力)を充電する。また、蓄電池4は、放電によって負荷3または電気自動車7に対して電力を供給することも可能である。蓄電池4として、例えば、リチウムイオン蓄電池を用いることができる。
【0014】
なお、以下の実施形態において「電気自動車7」とは、電気自動車7に設けられている電気自動車用蓄電池をいう。電気自動車は自車の運転等に使用するための蓄電池を搭載している。電気自動車が直流電源システム1に接続された場合、直流電源システム1はこの蓄電池の充電・放電に関与し得る。以下の実施形態では、電気自動車に搭載された蓄電池のことを直流電源システム1に設けられた「蓄電池4」と区別するため「電気自動車7」として説明する場合がある。
【0015】
災害によって停電が発生し、商用電源6からの電力が利用できなくなったときには、電気自動車7および蓄電池4をバックアップ用電源として用いることで、負荷3へ直流電力を供給することができる。
【0016】
電気自動車7は、内部に蓄電池を有している。したがって、電気自動車7は、蓄電池からの電力を負荷3あるいは蓄電池4へ供給することができるため、直流電源システム1における電力供給源として利用することができる。一方、電気自動車7は、直流電源システム1における負荷3とは異なる負荷に対しても電力を供給することが求められ得る。また、電気自動車7自体が移動可能な程度に電力を確保しておくことも求められ得る。電気自動車7は、コンバータ装置5を介して直流電源システム1に対して接続することで、電力の授受を行うことが可能となる。
【0017】
コンバータ装置5は、直流電源システム1が電気自動車7との間で電力を授受する際に、電流・電圧を調整する機能を有する。直流電源システム1(コンバータ装置5)と電気自動車7との間では高電圧で電力の授受が行われ得る。一方、直流電源システム1内では、低い電圧(例えば48V)での送電を想定したバスラインが設けられている。したがって、コンバータ装置において電圧を調整した上で、電気自動車7との間で電力の授受を行う。
【0018】
なお、本実施形態では、直流電源システム1における各部の電力の授受を制御する制御装置がコンバータ装置5内に設けられる場合について説明する。したがって、コンバータ装置5は、図2に示すように、実質的には、電気自動車7との電力の授受を想定した電力変換に加えて、整流器2、負荷3、蓄電池4、および電気自動車7における電力の授受の調整を行っている。
【0019】
次に、図2を参照しながら、直流電源システム1におけるコンバータ装置の構成を中心に各部との連携について説明する。
【0020】
コンバータ装置5は、コンバータ機能部51(コンバータ部)と制御部52とを含んで構成される。コンバータ機能部51は、直流電源システム1が電気自動車7との間で電力を授受する際に、電流・電圧を調整する本来のコンバータとしての機能を発揮する部分である。さらに、コンバータ機能部51は、充放電切替部53と、電流・電圧調整部54と、を含んで構成される。
【0021】
充放電切替部53は、制御部52からの指令に基づいて、電気自動車7との間での充電・放電を切り替える機能を有する。
【0022】
電流・電圧調整部54は、制御部52からの指令に基づいて、電気自動車7との間で授受する電力の電流・電圧の調整を行う機能を有する。
【0023】
制御部52は、蓄電池4、整流器2、および電気自動車7から蓄電状況等各部の動作に係る情報を取得し、取得した情報に基づいて、各部の充放電および負荷3への電力供給を制御するための指令を発出する機能を有する。
【0024】
図3に示すように、制御部52は、EV設定情報取得部501、EV状態監視部502、蓄電池状態監視部503、動作内容決定部504、整流器電圧指令部505、出力電圧指令部506、充電電流指令部507を含んで構成される。
【0025】
EV設定情報取得部501は、電気自動車7(における蓄電池)の充電・放電・待機に係る設定情報を取得する機能を有する。電気自動車7は、直流電源システム1に接続した状態での蓄電池からの放電によって、負荷3に対して電力供給が可能である。一方、電気自動車7は、他の負荷が設けられている場所へ移動して、他の負荷に対して電力を供給することも求められ得る。そのため、電気自動車7ではある程度の蓄電量を確保しておくことが求められる。電気自動車7は、外部指令等によって、直流電源システム1に接続される際の動作内容(充電・放電・待機)が予め規定されている。外部指令とは、例えば、電気自動車7の使用者(ユーザ)による指令であってもよいし、電気自動車7の内部に設けられた判断ロジック等に基づいて決定されたものであってもよい。ここでの「外部」とは、直流電源システム1内ではないことを示している。直流電源システム1は、この外部指令に基づいた充放電を電気自動車7に対して行うことが求められる。
【0026】
電気自動車7では、蓄電池の蓄電量の下限(最低限の蓄電量)および上限(最大の蓄電量)も予め決められていて、その範囲で充電・放電等が行なれてもよい。この場合、EV設定情報取得部501は、接続された電気自動車7の動作内容(充電・放電・待機)と、電気自動車7における蓄電量の設定(範囲)に係る情報とを取得する。取得された情報は、動作内容決定部504における動作内容の決定(制御部52からの指令内容の決定)に利用される。
【0027】
EV状態監視部502は、電気自動車7の蓄電池における蓄電量の監視を行う。監視結果は、動作内容決定部504における動作内容の決定(制御部52からの指令内容の決定)に利用される。EV状態監視部502は、例えば、電気自動車7から送信される蓄電量に係る情報(例えば、SOC(State Of Charge;残容量)を特定する情報)を取得する構成としてもよい。
【0028】
蓄電池状態監視部503は、蓄電池4における蓄電量の監視を行う。監視結果は、動作内容決定部504における動作内容の決定(制御部52からの指令内容の決定)に利用される。蓄電池状態監視部503は、例えば、蓄電池4の端子電圧(端子電圧VLIB)を計測することによって、端子電圧から蓄電量としてSOC(State Of Charge;残容量)を推定する構成としてもよい。
【0029】
動作内容決定部504は、上記のEV設定情報取得部501、EV状態監視部502、蓄電池状態監視部503から送られる情報に基づいて、直流電源システム1の動作内容を決定する機能を有する。動作内容をどのように決定するかについての詳細は後述する。
【0030】
整流器電圧指令部505は、動作内容決定部504において決定された動作内容に基づいて、整流器2に対して電圧に係る指令を行う機能を有する。整流器2に対する指令とは、整流器2から直流電源システム1へ向けて出力される直流電力の電圧である。整流器2の出力電圧(整流器出力電圧VRF)は、整流器2を構成する回路を制御することによって調整可能である。整流器電圧指令部505が整流器2へ向けて出力電圧の設定の指令を送信することで、整流器2では、指令に基づいて負荷3側へ向けて出力する電力の電圧を設定する。
【0031】
出力電圧指令部506は、動作内容決定部504において決定された動作内容に基づいて、コンバータ機能部51の電流・電圧調整部54に対して電圧に係る指令を行う機能を有する。出力電圧とは、電気自動車7から放電される直流電力の電圧である。電気自動車7からの出力電圧(EV出力電圧VEV)は、例えば、電流・電圧調整部54を構成する回路を制御することによって調整可能である。出力電圧指令部506が電流・電圧調整部54へ向けて出力電圧の設定の指令を送信することで、電流・電圧調整部54では、指令に基づいて負荷3側へ向けて出力する電力の電圧を設定する。
【0032】
充電電流指令部507は、動作内容決定部504において決定された動作内容に基づいて、コンバータ機能部51の電流・電圧調整部54に対して充電電流に係る指令を行う機能を有する。充電電流とは、直流電源システム1から電気自動車7へ充電する際の直流電力の電流である。充電電流は、単位時間あたりに電気自動車7へ移動する電荷の量ということもできる。すなわち、EV充電電流Iは、単位時間あたりの充電量に相当するともいえる。電気自動車7への充電電流(EV充電電流I)は、例えば、電流・電圧調整部54を構成する回路を制御することによって調整可能である。出力電圧指令部506が電流・電圧調整部54へ向けて充電電流の設定の指令を送信することで、電流・電圧調整部54では、指令に基づいて電気自動車7側へ向けて出力する電力の電流を設定する。
【0033】
コンバータ装置5は、整流器2との接続端子として端子T1が設けられる。同様に、負荷3との接続端子として端子T2が設けられ、蓄電池4との接続端子として端子T3が設けられ、電気自動車7との接続端子として端子T4が設けられる。コンバータ装置5と、整流器2、負荷3、蓄電池4、電気自動車7との間にはこれらを電気的に接続するバスラインが設けられる。バスラインの電圧(バス電圧)は、負荷3の定格電圧(たとえば57V)を超えない電圧(たとえば48V)となるように制御されてもよい。
【0034】
なお、コンバータ装置5内では、整流器2、負荷3、蓄電池4、電気自動車7の間で電力の授受が可能なように、各端子T1~T4からのバスラインB(バス)が点Pの1点に集まるように配線されている。そのため、整流器2を介して商用電源6から供給される電力は、負荷3、蓄電池4、および電気自動車7のいずれにも供給可能である。同様に、蓄電池4から供給される電力は負荷3および電気自動車7のいずれにも供給可能であり、電気自動車7から供給される電力は負荷3および蓄電池4のいずれにも供給可能である。
【0035】
上記の直流電源システム1では、一例として、負荷3が通信インフラの一部を担う通信装置であり、ある程度一定量の電力を常時消費することを想定している。したがって、商用電源6からの電力を活用して負荷3に対して一定量の電力を継続して供給することが必要である。一方、蓄電池4は災害によって停電が発生したときに負荷3に長時間の電力供給を可能とする(非常時にも一定の時間通信サービスを継続できるようにする)ためのバックアップ電源として機能し得る。したがって、災害時の非常用電源として利用できるように、蓄電池4のSOCをある程度高くしておくことが求められる。
【0036】
また、直流電源システム1は、電気自動車7が接続された場合には、電気自動車7における充電・放電についても制御することになる。電気自動車7は、自動車として移動するための電力および移動先での負荷への放電に必要な電力を蓄電することが求められる。一方、電気自動車7の蓄電量が大きな状態では放電することによって、直流電源システム1に対して電力の供給も可能である。したがって、電気自動車7のSOCもある程度の範囲に調整することが求められる。
【0037】
そこで、直流電源システム1では、電気自動車7が直流電源システム1に接続した状態で行う動作(充電・放電・待機のいずれか)に基づいて、蓄電池4におけるSOCを考慮しながら、負荷3への電力供給を制御する。電気自動車7は、直流電源システム1に接続した際に、電力授受の状態をどのようにするか(充電・放電・待機のどの状態とするか)が予め決定される。そのため、直流電源システム1では、この情報に基づいて、電気自動車7の電力授受の状態を維持しながら、蓄電池4の充放電および負荷3への電力供給を制御する。
【0038】
図4を参照して、制御部52のハードウェア構成について説明する。図4に示されるように、制御部52は、物理的には、プロセッサC1、メモリC2、ストレージC3、通信装置C4、入力装置C5、出力装置C6、バスC7などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0039】
なお、以下の説明で、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。制御部52のハードウェア構成は、図4に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよい。また、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0040】
制御部52における各機能は、プロセッサC1、メモリC2などのハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、プロセッサC1が演算を行い、通信装置C4による通信、メモリC2、およびストレージC3におけるデータの読み出しおよび/又は書き込みを制御することにより実現される。
【0041】
プロセッサC1は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサC1は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。また、プロセッサC1は、GPU(Graphics Processing Unit)を含んで構成されてもよい。例えば、図3に示した各機能部(501~507)などは、プロセッサC1により実現されてもよい。
【0042】
また、プロセッサC1は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージC3および/又は通信装置C4からメモリC2に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、制御部52の各機能部(501~507)は、メモリC2に格納され、プロセッサC1で動作する制御プログラムによって実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサC1で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサC1により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサC1は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0043】
メモリC2は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Progra mmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリC2は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリC2は、本開示の一形態に係る制御方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0044】
ストレージC3は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Comp act Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージC3は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリC2および/又はストレージC3を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0045】
通信装置C4は、有線および/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0046】
入力装置C5は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置C6は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置C5および出力装置C6は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0047】
また、プロセッサC1やメモリC2などの各装置は、情報を通信するためのバスC7で接続される。バスC7は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0048】
また、制御部52は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサC1は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0049】
[充放電制御の概要]
図5図7は、制御部52による制御によって実行される直流電源システム1の動作の一例を示すフローチャートである。図5は、電気自動車7の充放電状態に基づく制御内容の概要を説明するフローチャートであり、図6および図7は、それぞれ電気自動車7が放電、充電である場合の制御内容を説明するフローチャートである。
【0050】
まず、図5に示すステップS01では、制御部52のEV設定情報取得部501によって取得された情報に基づいて電気自動車7(EV)の充放電の状態が確認される。電気自動車7の充放電の状態として、「放電」「充電」「待機」の3種類が想定される。放電とは、電気自動車7から直流電源システム1への電力供給であり、充電とは、電気自動車7への直流電源システム1からの電力供給である。待機とは、電気自動車7と直流電源システム1との間で電力の授受を行わない状態をいう。これらの状態は外部指令によって予め設定されている。したがって、直流電源システム1では、電気自動車7については、外部指令によって指定された状態の動作が行われるように制御を行う。
【0051】
電気自動車7の状態が「放電」である場合、制御部52の動作内容決定部504では、放電制御(ステップS02)を行うことを決定する。電気自動車7の状態が「充電」である場合、制御部52の動作内容決定部504では、充電制御(ステップS03)を行うことを決定する。さらに、電気自動車7の状態が「待機」である場合、制御部52の動作内容決定部504では、電気自動車7による充放電を制御する回路(EV回路)を切り離すことで、電気自動車7との間での電力の授受を行わないこととし、蓄電池4に係る制御(ステップS05)のみを行うことを決定する。
【0052】
(放電制御)
放電制御の具体的な動作について、図6を参照しながら説明する。まず、ステップS11では、制御部52の蓄電池状態監視部503によって、蓄電池4における蓄電池電圧(端子電圧)が確認される。
【0053】
次に、ステップS12では、制御部52の動作内容決定部504によって、整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBと等しくなるように設定される。整流器電圧指令部505はこの動作内容を整流器2に対して通知することで整流器出力電圧VRFが調整される。VRF=VLIBの関係を満たすように調整された場合、整流器2を経て供給される商用電源6からの電力は、蓄電池へ向かわず負荷3へ向かうことになる。
【0054】
次に、ステップS13では、制御部52の動作内容決定部504によって、蓄電池4の端子電圧VLIBに基づいて、蓄電池4の充電の要否を判定する。例えば、動作内容決定部504は、蓄電池4の端子電圧VLIBから求められるSOCが、充電が必要な程度に低くなっている場合には充電が必要であると判定し、充電が不要な程度の値であれば充電不要と判定する。
【0055】
充電が必要であると判定された場合(S13-YES)、ステップS14として、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7からのEV出力電圧VEVが整流器2における整流器出力電圧VRFよりも大きくなるように(VEV>VRF)設定される。電気自動車7からのEV出力電圧VEVと整流器2における整流器出力電圧VRFとの差は、例えば、2V~5V程度とされる。この状態とすることで、電気自動車7から放電される電力が蓄電池4へ供給され、蓄電池4が充電される。この状態を継続している間は、電気自動車7からの放電および蓄電池4への充電が継続される。
【0056】
次に、ステップS15では、制御部52の動作内容決定部504によって、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが100となったか、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが下限(予め設定された下限値)となったかを判定する。すなわち、SOCLIB=100またはSOCEV=下限を満たすまで、ステップS14が継続され、電気自動車7からの放電および蓄電池4の充電が継続される。
【0057】
ステップS16に示すようにSOCLIBが100となった場合には、蓄電池4が満充電となったため、ステップS17において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止される。すなわち、電気自動車7からのEV出力電圧VEVが整流器2における整流器出力電圧VRFと同じとなるように調整し、電気自動車7からの放電された電力が蓄電池4へ供給されることが防がれる。
【0058】
また、電気自動車7からの放電が進行しSOCEV=下限となった場合には、ステップS20に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの放電を中止する。これにより、電気自動車7のSOCが下限値未満となることが防がれる。なお、電気自動車7の回路を切り離した後、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが100となるまで整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBよりも大きくなるように(VRF>VLIB)設定して蓄電池4への充電を継続してもよい。蓄電池4が満充電となった場合には、制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止されるように制御してもよい。
【0059】
充電が不要であると判定された場合(S13-NO)、ステップS18として、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7からのEV出力電圧VEVが整流器2における整流器出力電圧VRFよりもわずかに大きくなるように(VEV=VRF+ΔV)設定される。ここでΔVとは、0.1V~1V程度とされる。このような関係とすることによって、電気自動車7から放電される電力は、蓄電池4へ充電されることなく、負荷3への供給に利用される。ΔVだけ大きくすることで、電気自動車7からの放電が継続して行われることになる。
【0060】
次に、ステップS19では、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが下限(予め設定された下限値)となったかを判定する。すなわち、SOCEV=下限を満たすまで、ステップS18が継続され、電気自動車7からの放電が継続される。
【0061】
電気自動車7からの放電が進行しSOCEV=下限となった場合(S19-YES)には、ステップS20に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの放電を中止する。これにより、電気自動車7のSOCが下限値未満となることが防がれる。
【0062】
(充電制御)
【0063】
充電制御の具体的な動作について、図7を参照しながら説明する。まず、ステップS31では、制御部52の蓄電池状態監視部503によって、蓄電池4の状態が確認される。蓄電池4の充放電の状態として、「放電」「充電」「待機」の3種類が想定される。なお、充電制御では、前提として、電気自動車7への充電が行われるので、充放電切替部53では電気自動車7の充電を行うように設定され、電流・電圧調整部54では電気自動車7への充電電流が指定される。これらの設定は、制御部52の動作内容決定部504によって決定され、充電電流指令部507からの指令に基づいて行われる。
【0064】
まず、蓄電池4が充電を行う場合、ステップS32では、制御部52の動作内容決定部504によって、整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBよりも大きくなるように(VRF>VLIB)設定される。整流器電圧指令部505はこの動作内容を整流器2に対して通知することで整流器出力電圧VRFが調整される。VRF>VLIBの関係を満たすように調整された場合、整流器2を経て供給される商用電源6からの電力が、負荷3だけでなく、蓄電池4へも向かうようになる。
【0065】
次に、ステップS33では、制御部52の動作内容決定部504によって、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが100となったか、または、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが100となったか、を判定する。すなわち、SOCLIB=100またはSOCEV=100を満たすまで、ステップS32が継続され、蓄電池4および電気自動車7への充電が継続される。
【0066】
SOCLIB=100またはSOCEV=100であり(S33-YES)、さらに、ステップS34に示すようにSOCLIBが100となった場合(S34-YES)には、蓄電池4が満充電となったため、ステップS35において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止される。すなわち、蓄電池4の端子電圧VLIBが整流器2における整流器出力電圧VRFと同じとなるように調整することで、整流器2から供給される電力が蓄電池4へ供給されることが防がれる。
【0067】
また、電気自動車7への充電が進行しSOCEV=100となった場合(S34-NO)には、ステップS38に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの充電を中止する。これにより、電気自動車7への過充電が防がれる。なお、電気自動車7の回路を切り離した後、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが100となるまでVRF>VLIBの関係を満たすように調整を継続し(ステップS32)、SOCLIBが100となった場合(S34-YES)には、蓄電池4が満充電となったため、ステップS35において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止されるように制御してもよい。
【0068】
次に、蓄電池4が待機状態の場合、ステップS36では、制御部52の動作内容決定部504によって、整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBと等しくなるように(VRF=VLIB)設定される。整流器電圧指令部505はこの動作内容を整流器2に対して通知することで整流器出力電圧VRFが調整される。VRF=VLIBの関係を満たすように調整された場合、整流器2を経て供給される商用電源6からの電力が、蓄電池へ流れず負荷3へ向かうようになる。
【0069】
次に、ステップS37は、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが100となったかを判定する。すなわち、SOCEV=100を満たすまで、ステップS32が継続され、電気自動車7への充電が継続される。
【0070】
ステップS37に示すようにSOCEV=100となった場合(ステップS37-YES)には、ステップS38に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの充電を中止する。これにより、電気自動車7への過充電が防がれる。
【0071】
次に、蓄電池4が放電を行う場合、ステップS39では、制御部52の動作内容決定部504によって、整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBよりも小さくなるように(VRF<VLIB)設定される。整流器電圧指令部505はこの動作内容を整流器2に対して通知することで整流器出力電圧VRFが調整される。VRF<VLIBの関係を満たすように調整された場合、蓄電池4からの電力が、負荷3および電気自動車7へ向かうようになる。
【0072】
次に、ステップS40では、制御部52の動作内容決定部504によって、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが下限(予め設定された下限値)となったか、または、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが100となったか、を判定する。すなわち、SOCLIB=下限またはSOCEV=100を満たすまで、ステップS39が継続され、蓄電池4からの放電および電気自動車7への充電が継続される。
【0073】
SOCLIB=下限またはSOCEV=100であり(S40-YES)、さらに、ステップS41に示すようにSOCLIBが下限となった場合(S41-YES)には、蓄電池4の蓄電量が下限となったため、ステップS42において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止される。すなわち、蓄電池4の端子電圧VLIBが整流器2における整流器出力電圧VRFと同じとなるように調整することで、蓄電池4からの放電が停止される。
【0074】
また、電気自動車7への充電が進行しSOCEV=100となった場合(S41-NO)には、ステップS38に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの充電を中止する。これにより、電気自動車7への過充電が防がれる。なお、電気自動車7の回路を切り離した後、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが下限となるまでVRF<VLIBの関係を満たすように調整を継続し(ステップS39)、SOCLIBが下限となった場合(S41-YES)には、ステップS42において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4からの充電が停止されるように制御してもよい。
【0075】
(待機制御)
上述のように、電気自動車7の状態が「待機」である場合、制御部52の動作内容決定部504では、電気自動車7による充放電を制御する回路(EV回路)をコンバータ装置5(コンバータ機能部51)から切り離すことで、電気自動車7との間での電力の授受を行わないこととする。一方、蓄電池4については、蓄電量に応じた充放電制御(ステップS05)を行う。
【0076】
蓄電池4への充放電に係る制御は、図7で示した充電制御と同様とされる。すなわち、蓄電池4の状態(ステップS31)に応じて、整流器2の出力電圧を設定し、蓄電池4の充電または放電を停止するまで、充電、放電、または待機の状態を継続する。なお、図7では、電気自動車7が充電状態にあることを前提としているため、電気自動車7への充電を停止するかどうかを判定するステップ(ステップS33,S37,S40)が存在する。しかしながら、電気自動車7の状態が「待機」である場合には、これらのステップでは、電気自動車7におけるSOCの値を確認するプロセスは省かれる。
【0077】
<第2実施形態>
[直流電源システムの変更点]
次に、図8および図9を参照しながら、第2実施形態に係る直流電源システム1Aについて説明する。直流電源システム1Aは、第1実施形態で説明した直流電源システム1と比較して以下の点が相違する。すなわち、コンバータ装置5Aにおいて、負荷3へ直流電力が供給されるバスラインB上にバス電圧を測定するバス電圧測定部55が設けられる。一例としてバス電圧測定部55は、端子T1~T4からのバスラインBが集合する点Pに対応する位置にバス電圧測定部55が設けられてもよい。
【0078】
バス電圧測定部55で測定されるバス電圧は、制御部52へ送られ、特に、電気自動車7への充電を行う場合に充電電流をどのように設定するかを決める際に用いられる。
【0079】
そのため、図9に示すように、コンバータ装置5Aの制御部52Aには、バス電圧監視部508が設けられる。バス電圧監視部508では、バス電圧測定部55におけるバス電圧の測定値を取得し、動作内容決定部504へ送る。動作内容決定部504は、バス電圧監視部508から取得されるバス電圧の測定値にも基づいて、動作内容を決定する。
【0080】
[充放電制御の概要]
次に、制御部52Aによる制御によって実行される直流電源システム1Aの動作について図5,6および図10を参照しながら説明する。直流電源システム1Aの動作(充放電制御)は、電気自動車7の蓄電池に対して充電を行う場合(充電制御)以外は、第1実施形態に係る直流電源システム1と同様である。したがって、図5,6に記載されている制御については、説明を簡略化または省略する。
【0081】
まず、図5に示すステップS01では、制御部52のEV設定情報取得部501によって取得された情報に基づいて電気自動車7(EV)の充放電の状態が確認される。電気自動車7の状態が「放電」である場合、制御部52の動作内容決定部504では、放電制御(ステップS02)を行うことを決定する。電気自動車7の状態が「充電」である場合、制御部52の動作内容決定部504では、充電制御(ステップS03)を行うことを決定する。さらに、電気自動車7の状態が「待機」である場合、制御部52の動作内容決定部504では、電気自動車7による充放電を制御する回路(EV回路)を切り離すことで、電気自動車7との間での電力の授受を行わないこととし、蓄電池4に係る制御(ステップS05)のみを行うことを決定する。この流れは、第1実施形態と同様である。
【0082】
(放電制御)
直流電源システム1Aにおける放電制御の具体的な動作は、直流電源システム1と同様である。すなわち、上述の放電制御と同様の制御が行われる。
【0083】
(充電制御)
充電制御の具体的な動作について、図10を参照しながら説明する。まず、ステップS31では、制御部52の蓄電池状態監視部503によって、蓄電池4の状態が確認される。蓄電池4の充放電の状態として、「放電」「充電」「待機」の3種類が想定される。なお、図7に示した充電制御では、電気自動車7への充電の制御が予め行われているが、図10に示すフローチャートには、電気自動車7へ充電する際の具体的な制御内容が含まれている。
【0084】
まず、蓄電池4が充電を行う場合、ステップS52では、制御部52の動作内容決定部504によって、整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBよりも大きくなるように(VRF>VLIB)設定される。整流器電圧指令部505はこの動作内容を整流器2に対して通知することで整流器出力電圧VRFが調整される。VRF>VLIBの関係を満たすように調整された場合、整流器2を経て供給される商用電源6からの電力が、負荷3だけでなく、蓄電池4へも向かうようになる。
【0085】
次に、ステップS53は、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7への充電電流(EV充電電流I)が決定される。充電電流指令部507がこの動作内容を電流・電圧調整部54に対して通知することで電流値が調整される。より詳細には、EV充電電流Iは所定間隔(例えば1秒)毎に変動され得る。例えば、ある時刻のEV充電電流Iは、1秒前の電流値It-1+差分dIによって設定される。充電開始時は、Iは初期値Iとされる。初期値Iは、例えば、電気自動車7へ電力供給をしたとしても直流電源システム1A内でバス電圧が不安定とならない程度に小さな値が設定され、例えば、1Aとされ得る。所定間隔毎の変動幅となる差分dIは、充電電流の変動幅としては微小な範囲で設定され、例えば、1Aとされ得る。
【0086】
EV充電電流Iは、バス電圧値をモニタしながら調整される。すなわち、EV充電電流Iを変化させた後、バス電圧値Vが予め定められた閾値Vthreshより大きいか否かを確認しながら、dIずつ増加させる。
【0087】
このように、ステップS53では、I=It-1+dIとなるように、EV充電電流IをdI分だけ増加させ、その後、ステップS54において、バス電圧値Vが閾値Vthreshよりも大きいか否かを判定する。閾値Vthreshは、電気自動車7への充電電量が、負荷3への電力供給を継続する環境において過負荷となっていないかを判断する指標として設定される。バス電圧値Vが閾値Vthresh以下である状況はバス電圧が不安定となっていて、負荷3への安定した電力供給ができなくなる可能性を示している状態であると判断する。したがって、バス電圧値Vが閾値Vthresh以下である場合(S54-NO)、現在のEV充電電流Iがバス電圧に影響を与えていると判断し、ステップS55として、制御部52の動作内容決定部504では、現在のEV充電電流IをdIだけ減らす。その結果、ステップS56として、EV充電電流Iを増加前のIt-1に戻される。
【0088】
一方、バス電圧値VがVthreshよりも大きい場合(S54-YES)、現在のEV充電電流はバス電圧に影響を与えていないと判断する。
【0089】
次に、ステップS57では、制御部52の動作内容決定部504によって、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが100となったか、または、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが100となったか、を判定する。SOCLIB=100またはSOCEV=100を満たすまで、ステップS53,S54が継続される。すなわち、バス電圧値Vが閾値I=It-1+dIとなるように、EV充電電流IをdI分だけ増加させ(S53)、その結果、バス電圧値Vが閾値Vthresh以下となっていないかを確認する(S54)。この過程を繰り返すことで、バス電圧値Vが閾値Vthreshよりも大きい状態(バス電圧が安定した状態)を維持しながら、EV充電電流Iを可能な限り大きくすることができる。
【0090】
なお、SOCLIB=100またはSOCEV=100であり(S57-YES)、さらに、ステップS58に示すようにSOCLIBが100となった場合(S58-YES)には、蓄電池4が満充電となったため、ステップS59において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止される。すなわち、蓄電池4の端子電圧VLIBが整流器2における整流器出力電圧VRFと同じとなるように調整することで、整流器2から供給される電力が蓄電池4へ供給されることが防がれる。
【0091】
また、電気自動車7への充電が進行しSOCEV=100となった場合(S58-NO)には、ステップS66に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの充電を中止する。これにより、電気自動車7への過充電が防がれる。なお、電気自動車7の回路を切り離した後、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが100となるまでVRF>VLIBの関係を満たすように調整を継続し(ステップS52)、SOCLIBが100となった場合(S58-YES)には、蓄電池4が満充電となったため、ステップS59において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止されるように制御してもよい。
【0092】
次に、蓄電池4が待機状態の場合、ステップS60では、制御部52の動作内容決定部504によって、整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBと等しくなるように(VRF=VLIB)設定される。整流器電圧指令部505はこの動作内容を整流器2に対して通知することで整流器出力電圧VRFが調整される。VRF=VLIBの関係を満たすように調整された場合、整流器2を経て供給される商用電源6からの電力が、蓄電池へ流れず負荷3へ向かうようになる。
【0093】
次に、蓄電池4が充電状態の場合と同様に、バス電圧を監視しながら電気自動車7の充電電流を調整する。すなわち、ステップS61として、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7への充電電流(EV充電電流I)が決定される。充電電流指令部507がこの動作内容を電流・電圧調整部54に対して通知することで電流値が調整される。すなわち、ある時刻のEV充電電流Iは、1秒前の電流値It-1+差分dIによって設定される。充電開始時は、Iは初期値Iとされる。ステップS61において、I=It-1+dIとなるように、EV充電電流IをdI分だけ増加させ、その後、ステップS62において、バス電圧値Vが閾値Vthreshよりも大きいか否かを判定する。
【0094】
バス電圧値Vが閾値Vthresh以下である場合(S62-NO)、現在のEV充電電流Iがバス電圧に影響を与えていると判断し、ステップS63として、制御部52の動作内容決定部504では、現在のEV充電電流IをdIだけ減らす。その結果、ステップS64として、EV充電電流Iを増加前のIt-1に戻される。
【0095】
一方、バス電圧値VがVthreshよりも大きい場合(S62-YES)、現在のEV充電電流はバス電圧に影響を与えていないと判断する。
【0096】
次に、ステップS65では、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが100となったか、を判定する。SOCEV=100を満たすまで、ステップS61,S62が継続され、バス電圧値Vが閾値Vthreshよりも大きい状態(バス電圧が安定した状態)を維持しながら、EV充電電流Iを可能な限り大きくする。
【0097】
ステップS65に示すようにSOCEV=100となった場合(ステップS65-YES)には、ステップS66に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの充電を中止する。これにより、電気自動車7への過充電が防がれる。
【0098】
次に、蓄電池4が放電を行う場合、ステップS67では、制御部52の動作内容決定部504によって、整流器2における整流器出力電圧VRFが蓄電池4の端子電圧VLIBよりも小さくなるように(VRF<VLIB)設定される。整流器電圧指令部505はこの動作内容を整流器2に対して通知することで整流器出力電圧VRFが調整される。VRF<VLIBの関係を満たすように調整された場合、蓄電池4からの電力が、負荷3および電気自動車7へ向かうようになる。
【0099】
次に、蓄電池4が充電状態および待機状態の場合と同様に、バス電圧を監視しながら電気自動車7の充電電流を調整する。すなわち、ステップS68として、制御部52の動作内容決定部504によって、電気自動車7への充電電流(EV充電電流I)が決定される。充電電流指令部507がこの動作内容を電流・電圧調整部54に対して通知することで電流値が調整される。すなわち、ある時刻のEV充電電流Iは、1秒前の電流値It-1+差分dIによって設定される。充電開始時は、Iは初期値Iとされる。ステップS68において、I=It-1+dIとなるように、EV充電電流IをdI分だけ増加させ、その後、ステップS69において、バス電圧値Vが閾値Vthreshよりも大きいか否かを判定する。
【0100】
バス電圧値Vが閾値Vthresh以下である場合(S69-NO)、現在のEV充電電流Iがバス電圧に影響を与えていると判断し、ステップS70として、制御部52の動作内容決定部504では、現在のEV充電電流IをdIだけ減らす。その結果、ステップS71として、EV充電電流Iを増加前のIt-1に戻される。
【0101】
一方、バス電圧値VがVthreshよりも大きい場合(S69-YES)、現在のEV充電電流はバス電圧に影響を与えていないと判断する。
【0102】
次に、ステップS65では、制御部52の動作内容決定部504によって、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが下限(予め設定された下限値)となったか、または、電気自動車7(の蓄電池)のSOCであるSOCEVが100となったか、を判定する。すなわち、SOCLIB=下限またはSOCEV=100を満たすまで、ステップS68,S69が継続され、バス電圧値Vが閾値Vthreshよりも大きい状態(バス電圧が安定した状態)を維持しながら、EV充電電流Iを可能な限り大きくする。
【0103】
SOCLIB=下限またはSOCEV=100であり(S72-YES)、さらに、ステップS73に示すようにSOCLIBが下限となった場合(S73-YES)には、蓄電池4の蓄電量が下限となったため、ステップS74において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4への充電が停止される。すなわち、蓄電池4の端子電圧VLIBが整流器2における整流器出力電圧VRFと同じとなるように調整することで、蓄電池4からの放電が停止される。
【0104】
また、電気自動車7への充電が進行しSOCEV=100となった場合(S73-NO)には、ステップS66に示すように電気自動車7の回路を切り離し、電気自動車7からの充電を中止する。これにより、電気自動車7への過充電が防がれる。なお、電気自動車7の回路を切り離した後、蓄電池4のSOCであるSOCLIBが下限となるまでVRF<VLIBの関係を満たすように調整を継続(ステップS67)しながら上記の手順を繰り返し、SOCLIBが下限となった場合(S74-YES)には、ステップS74において制御部52の動作内容決定部504によって蓄電池4からの充電が停止されるように制御してもよい。
【0105】
(待機制御)
直流電源システム1Aにおける待機制御の具体的な動作は、直流電源システム1と同様である。すなわち、上述の待機制御と同様の制御が行われる。
【0106】
上述のように、電気自動車7の状態が「待機」である場合、制御部52Aの動作内容決定部504では、電気自動車7による充放電を制御する回路(EV回路)をコンバータ装置5(コンバータ機能部51)から切り離すことで、電気自動車7との間での電力の授受を行わないこととする。一方、蓄電池4については、蓄電量に応じた充放電制御(ステップS05)を行う。
【0107】
蓄電池4への充放電に係る制御は、図7で示した充電制御と同様とされる。すなわち、蓄電池4の状態(ステップS31)に応じて、整流器2の出力電圧を設定し、蓄電池4の充電または放電を停止するまで、充電、放電、または待機の状態を継続する。なお、図7では、電気自動車7が充電状態にあることを前提としているため、電気自動車7への充電を停止するかどうかを判定するステップ(ステップS33,S37,S40)が存在する。しかしながら、電気自動車7の状態が「待機」である場合には、これらのステップでは、電気自動車7におけるSOCの値を確認するプロセスは省かれる。この点も直流電源システム1と同様である。
【0108】
[作用]
上記の直流電源システム1(および1A)によれば、外部指令によって蓄電池の充放電動作が指定されている電気自動車7を接続した際に、電気自動車7における蓄電池の充放電動作を実行しながら、電気自動車7との電力の授受と、直流電源システム1における蓄電池4における充放電とが調整される。その上で、直流電源システム1では、負荷3への電力供給が制御される。このように、外部指令に基づいた電気自動車7の蓄電池の充放電動作を行うことで、電気自動車7の蓄電池における蓄電量の管理を適切に行うことができる。また、蓄電池4における蓄電量に基づいて充放電動作に係る調整を行いつつ、負荷3への電力供給を制御することによって、例えば、蓄電池4における蓄電量を適切な範囲としながら、負荷3への電力供給を行うことができる。このように、上記の直流電源システム1によれば、蓄電池4および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷3への安定した電力供給が可能となる。
【0109】
上記実施形態で説明したように、通信インフラに関わる通信装置のように、例えば商用電源6からの電力供給が安定しない状況においても負荷3への安定した電力供給が求められる場合、蓄電池4等のバックアップ電源を確保することが検討される。蓄電池4をバックアップ電源として確保しようとすると蓄電池4を大容量化することが検討され得る。しかしながら、種々の条件によって蓄電池4の大容量化は困難な場合がある。一方、バックアップ電源として電気自動車7の蓄電池を活用することが検討され得る。しかしながら、電気自動車7は移動可能であるという特性を生かした運用が求められるため、電気自動車7の蓄電池における蓄電量もある程度確保しておくことが求められる。
【0110】
上記のような環境では、商用電源6からの電力供給が存在する状況においても、蓄電池4および電気自動車7の蓄電量の適切な管理が求められる。しかしながら、電気自動車7が充電および放電のどちらを行う可能性もあるなかで、負荷3への電力供給を安定して継続しながら、蓄電池4および電気自動車7における充放電をどのように調整するかについて詳細は検討されていなかった。これに対して、上記の直流電源システムによれば、外部指令に基づいた電気自動車7の蓄電池の充放電動作を行うことで、電気自動車7の蓄電池における蓄電量の管理を適切に行うことができると共に、蓄電池4における蓄電量に基づいて充放電動作が行われる。したがって、負荷3への電力供給を安定して継続しながら、蓄電池4および電気自動車7の両方において、蓄電量を考慮した制御を行うことが可能となる。
【0111】
また、電気自動車7の蓄電池から放電を行う場合には、コンバータ機能部51における電気自動車7からの出力電圧と、整流器2からの出力電圧との関係を調整することで、負荷3への電力供給を制御してもよい。この場合、電気自動車7からの出力電圧と整流器2からの出力電圧との関係を調整することで、電力の流れが調整され得る。そのため、電気自動車7の蓄電池からの放電を継続しながら、負荷3への電力供給を安定して行うことができる。
【0112】
また、蓄電池4の端子電圧と整流器2からの出力電圧との関係を調整することで、蓄電池4における充放電を調整しながら、負荷3への電力供給を制御してもよい。蓄電池4の端子電圧と整流器2からの出力電圧との関係を調整することで、蓄電池4における充電放電(および待機)の切替えを行うことができる。これを利用することで、負荷3への電力供給を制御しながら、蓄電池4における充放電の調整を簡単に行うことが可能となる。
【0113】
また、電気自動車7の蓄電池における蓄電量が所定の範囲から外れる場合、具体的には、SOCが下限となるか、または100となる場合に、コンバータ機能部51と電気自動車7との連携を切断する(回路を切り離す)こととしてもよい。この場合、各部の出力電圧の調整等を行っている間に、電気自動車7の蓄電池において想定外の充放電が発生することが防がれる。したがって、電気自動車7の蓄電池の劣化等が防がれるとともに、蓄電量を安定して管理することができる。
【0114】
また、第2実施形態で説明した直流電源システム1Aのように、負荷3へ直流電力が供給されるバスにおけるバス電圧値を測定するバス電圧測定部55をさらに有していてもよい。このとき、制御部52は、電気自動車7の蓄電池への充電を行う場合に、バス電圧測定部55によるバス電圧値の変動を監視しながら、電気自動車7の蓄電池への単位時間あたりの充電量(例えば、電流)を調整する態様としてもよい。上記の構成とすることで、電気自動車の蓄電池への充電を行うことが過負荷となっている状態に生じ得るバス電圧値の変動(特にバス電圧値の低下)を監視しながら、電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量を調整することができる。したがって、電気自動車7の蓄電池への充電が負荷3への直流電力の供給に影響を与えないように適切に管理することができる。
【0115】
具体的には、バス電圧値が所定の閾値(Vthresh)よりも大きい条件で、電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量が最大となるように、充電量を調整してもよい。この場合、負荷3へ安定した直流電力の供給を行いながら、電気自動車7への速やかな充電が実現される。
【0116】
より詳細には、バス電圧値が所定の閾値(Vthresh)よりも大きいかを確認しながら、電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量を徐々に大きくしていく構成とすることで、バス電圧値が所定の閾値(Vthresh)よりも大きい条件で、電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量を最大とすることができる。
【0117】
[変形例]
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく修正および変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0118】
例えば、上記実施形態では、直流電源システム1の負荷3が通信装置である場合について説明したが、負荷3は通信装置に限定されるものではない。
【0119】
また、上記実施形態の直流電源システム1,1Aでは、電圧制御によって整流器2、蓄電池4および電気自動車7の電力フローを決定するものであったが、電流による制御を採用してもよい。電圧・電流のどちらの制御であっても、上述のように蓄電池4および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷3への安定した電力供給が可能となる。
【0120】
また、上記実施形態の直流電源システム1,1Aでは、制御部52がコンバータ装置5,5Aに設けられる場合について説明したが、制御部52は、コンバータ機能部51とは独立して設けられていてもよい。
【0121】
また、バス電圧測定部55についても同様であり、コンバータ装置5Aの内部に設けられていなくてもよく、例えば、負荷3との端子T2よりも負荷3側に設けられていてもよい。
【0122】
[その他]
上記実施形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェアおよびソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。また、本実施形態で説明した「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。
【0123】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、割り振り(assigning)などがあるが、これらに限られない。たとえば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)や送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0124】
本開示において説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0125】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0126】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0127】
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0128】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0129】
また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)および無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術および無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0130】
本開示において説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0131】
本開示において使用する「システム」および「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0132】
本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0133】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、又はこれらのあらゆる変形は、2又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的なあらゆる接続又は結合を意味し、互いに「接続」又は「結合」された2つの要素間に1又はそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合又は接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用する場合、2つの要素は、1又はそれ以上の電線、ケーブルおよびプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域および光(可視および不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」又は「結合」されると考えることができる。
【0134】
本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0135】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」およびそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0136】
本開示において、例えば、英語でのa,anおよびtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0137】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【0138】
[付記]
本開示の一形態に係る直流電源システムは、外部指令に基づいた蓄電池の充放電動作を行う電気自動車と接続されて、直流電力を使用する負荷に対して供給する電力を制御する直流電源システムであって、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力を消費する負荷と、前記直流電力による蓄電が可能な蓄電池と、前記電気自動車との間での前記直流電力の授受を調整するコンバータ部と、前記外部指令に基づいた前記電気自動車における蓄電池の充放電動作の実行を前提として、前記電気自動車との電力の授受、および、前記蓄電池の蓄電量に基づいた前記蓄電池における充放電動作に係る調整を行いつつ、前記負荷への電力供給を制御する制御部と、を有する。
【0139】
上記の直流電源システムによれば、外部指令によって蓄電池の充放電動作が指定されている電気自動車を接続した際に、電気自動車における蓄電池の充放電動作を実行しながら、電気自動車との電力の授受と、蓄電池における充放電とが調整される。その上で、負荷への電力供給が制御される。外部指令に基づいた電気自動車の蓄電池の充放電動作を行うことで、電気自動車用電池における蓄電量の管理を適切に行うことができる。また、蓄電池における蓄電量に基づいて充放電動作に係る調整を行いつつ、負荷への電力供給を制御することによって、例えば、蓄電池における蓄電量を適切な範囲にとしながら、負荷への電力供給を行うことができる。このように、上記の直流電源システムによれば、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能となる。
【0140】
前記制御部は、前記電気自動車の蓄電池から放電を行う場合に、前記コンバータ部における前記電気自動車からの出力電圧と前記整流器からの出力電圧との関係を調整することで、前記負荷への電力供給を制御する態様としてもよい。
【0141】
上記の構成とすることで、コンバータ部における電気自動車からの出力電圧と整流器からの出力電圧との関係を調整することによって負荷への電力供給が制御される。電気自動車からの出力電圧と整流器からの出力電圧との関係を調整するため、電気自動車の蓄電池から放電を継続しつつ負荷への電力供給を安定して行うことができる。
【0142】
前記制御部は、前記蓄電池の端子電圧と前記整流器からの出力電圧との関係を調整することで、前記蓄電池における充放電を調整しながら、前記負荷への電力供給を制御する態様としてもよい。
【0143】
蓄電池の端子電圧と整流器からの出力電圧との関係を調整することで、蓄電池における充電放電の切替えを行うことができる。これを利用する構成とすることで、負荷への電力供給を制御しながら、蓄電池における充放電を調整することが可能となる。
【0144】
前記制御部は、前記電気自動車の蓄電池における蓄電量が所定の範囲から外れる場合には、前記コンバータ部と前記電気自動車との連携を切断する態様としてもよい。
【0145】
電気自動車の蓄電池における蓄電量が所定の範囲から外れる場合に、コンバータ部と電気自動車との連携を切断する構成とすることで、各部の出力電圧の調整等を行っている間に、電気自動車の蓄電池において想定外の充放電が発生することが防がれる。
【0146】
前記負荷へ直流電力が供給されるバスにおけるバス電圧値を測定するバス電圧測定部をさらに有し、前記制御部は、前記電気自動車の蓄電池への充電を行う場合に、前記バス電圧測定部によるバス電圧値の変動を監視しながら、前記電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量を調整する態様としてもよい。
【0147】
電気自動車の蓄電池への充電を行うことによって負荷へ安定した直流電力の供給が行われないような現象が生じる場合、バス電圧が変動し得る。したがって、上記のように、バス電圧値の変動を監視しながら、電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量を調整することで、電気自動車の蓄電池への充電が負荷への直流電力の供給に影響を与えないように適切に管理することができる。
【0148】
前記制御部は、前記バス電圧値が所定の閾値よりも大きい条件で、前記電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量が最大となるように、充電量を調整する態様としてもよい。
【0149】
上記のように、バス電圧値が所定の閾値よりも大きい条件で、電気自動車の蓄電池への単位時間あたりの充電量が最大となるように、充電量を調整する場合、負荷へ安定した直流電力の供給を行いながら、電気自動車への速やかな充電が実現される。
【符号の説明】
【0150】
1,1A…直流電源システム、2…整流器、3…負荷、4…蓄電池、5,5A…コンバータ装置、6…商用電源、7…電気自動車、51…コンバータ機能部、52,52A…制御部、53…充放電切替部、54…電圧調整部、55…バス電圧測定部、501…EV設定情報取得部、502…EV状態監視部、503…蓄電池状態監視部、504…動作内容決定部、505…整流器電圧指令部、506…出力電圧指令部、507…充電電流指令部、508…バス電圧監視部。
図1
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図8
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図10