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特許7519273ガス、電気、水のプリペイド式供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ガス、電気、水のプリペイド式供給システム
(51)【国際特許分類】
   G07F 15/06 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G07F15/06 101
G07F15/06 102
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020185450
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074968
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222657
【氏名又は名称】東洋計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】土田 泰秀
(72)【発明者】
【氏名】土田 泰正
(72)【発明者】
【氏名】宮原 清貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亮
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028704(JP,A)
【文献】特開2016-126627(JP,A)
【文献】特開平03-136194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 15/00 - 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリペイドカードに担持されたプリペイド金額に基づき、ガス、電気または水の供給を制御するガス、電気または水のプリペイド式供給システムにおいて、
前記プリペイドカードは、当該プリペイドカードを利用可能なガス、電気または水の供給量を計測するメータのメータ識別情報、前記プリペイド金額、および、前記メータの動作制御のために用いる設定値を担持する情報担持部を備えており、
前記メータは、
記憶部と、
前記プリペイドカードの前記情報担持部に担持されている担持情報を読み込むカードリーダと、
前記記憶部に記憶保持されているメータ識別情報に、読み込まれた前記メータ識別情報が一致するか否かを判別する判別部と、
前記メータ識別情報が一致する場合に、前記記憶部に記憶保持されている前記プリペイド金額を、読み込まれた前記プリペイド金額に基づき更新するプリペイド金額更新部と、
前記メータ識別情報が一致する場合に、前記記憶部に記憶保持されている前記設定値を、読み込まれた前記設定値に変更する設定値変更部と、
を備えており、
前記プリペイドカードの前記情報担持部には、前記記憶部に記憶保持されている前記設定値の変更の要否を指示する指示情報が担持されており、
前記メータの前記設定値変更部は、読み込まれた前記指示情報が、前記記憶部に記憶保持されている前記設定値の変更が必要であることを示している場合にのみ、前記記憶部に記憶保持されている前記設定値を読み込まれた前記設定値に変更するプリペイド式供給システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記プリペイドカードは、前記情報担持部に顧客識別情報が担持された顧客カードであるプリペイド式供給システム。
【請求項3】
請求項2において、
新規の前記顧客カードの発行および発行済みの前記顧客カードのチャージを行うカード発行機と、
前記顧客識別情報に対応付けした形態で、前記メータ識別情報、前記設定値および前記指示情報が登録される顧客データベースと、
を備えており、
前記カード発行機は、
新規の前記顧客カードの発行要求、および、前記顧客識別情報の入力があると、入力された前記顧客識別情報を用いて、前記顧客データベースから前記メータ識別情報、前記設定値および前記指示情報を取得する情報取得部と、
ガス、電気または水の使用料の前払い金を受け付ける入金処理部と、
取得した前記メータ識別情報、前記設定値および前記指示情報と、前記入金処理部が受け付けた前記前払い金に対応するプリペイド金額とを、前記顧客識別情報と共に新規カードの情報担持部に書き込むことで新規の前記顧客カードを作成し、これを発行するカード発行部と、
発行済みの前記顧客カードに対して、前記入金処理部で受け付けた前払い金に対応する新たなプリペイド金額を用いて、前記顧客カードに担持されている前記プリペイド金額を更新するカードチャージ部と、
を備えているプリペイド式供給システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記カード発行機との間で有線あるいは無線による通信を行う管理サーバを備えており、
前記管理サーバは、前記カード発行機から提供される前記顧客識別情報を用いて、前記顧客データベースから前記メータ識別情報、前記設定値および前記指示情報を検索して前記カード発行機の前記情報取得部に提供し、
前記カード発行機は、
前記カード発行部から発行される新規の前記顧客カードに関する情報および前記カードチャージ部による発行済みの前記顧客カードの更新に関する情報を、前記管理サーバに提供する情報提供部を備えており、
前記管理サーバは、前記情報提供部から受け取った情報により、前記顧客データベースを更新するデータ更新部を備えているプリペイド式供給システム。
【請求項5】
請求項1ないしのうちのいずれか一つの項において、
前記メータの前記動作制御のために用いる前記設定値は、
ガス、電気または水の供給を遮断する遮断機構を駆動して、ガス、電気または水の供給を強制遮断する場合の条件を規定する値、または、予め設定した動作異常を検出するために前記メータに設定された検出用の判別値であるプリペイド式供給システム。
【請求項6】
プリペイドカードに担持されたプリペイド金額に基づきガス、電気または水の供給を制御するプリペイド式供給システムに用いる前記プリペイドカードであって、
利用可能なメータのメータ識別情報、前記プリペイド金額、および、前記メータの動作制御のために用いる設定値を担持しており、
更に、前記メータに設定されている前記設定値の変更の要否を指示する指示情報が担持されているプリペイドカード。
【請求項7】
プリペイドカードに担持されたプリペイド金額に基づき、ガス、電気、水の供給を制御するプリペイド式供給システムに用いるメータであって、
プリペイド金額、メータ識別情報、当該メータの駆動制御に用いる設定値を記憶保持する記憶部と、
前記プリペイドカードに担持されている担持情報を読み込むカードリーダと、
前記記憶部に記憶保持されている前記メータ識別情報に、読み込まれた前記メータ識別情報が一致するか否かを判別する判別部と、
前記メータ識別情報が一致する場合に、前記記憶部に記憶保持されている前記プリペイド金額を、読み込まれた前記プリペイド金額に基づき更新するプリペイド金額更新部と、
前記メータ識別情報が一致する場合に、前記記憶部に記憶保持されている設定値を、読み込まれた前記設定値に変更する設定値変更部と、
を備えており、
前記メータの前記設定値変更部は、読み込まれた前記担持情報に指示情報が含まれている場合には、当該指示情報が前記設定値の変更が必要であることを示しているときにのみ、前記記憶部に記憶保持されている前記設定値を、読み込まれた前記設定値に変更するメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリペイドカードに担持されたプリペイド金額に基づき、ガス、電気、水の供給を制御するプリペイド式供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスのプリペイド式供給システムにおいては、特許文献1、2に記載されているように、ガスメータに、ICカード等からなるプリペイドカードを読み取るカード読取部が備わっている。ガスメータを介してガスが使用される毎に、プリペイドカードから読み取られたプリペイド金額からガス使用料を減算する精算処理を行う。プリペイド金額が零になると、ガスメータは、内蔵の遮断弁を閉じて、ガスの使用を停止する。
【0003】
ガスのプリペイド式供給システムは、ガス使用者(顧客)の居住期間が短く、ガス使用者が短期間で頻繁に変わる場合等において、ガス使用者が必要量のガスを効率良く使用するのに適している。例えば、ウィークリーマンション、賃貸住宅、アパートなどに設置して用いられる。このような場合、どのようなガスの使われ方をするのかを事前に把握できないことが多い。ガスメータの保安機構として設定されているガス供給を強制遮断するための遮断流量、遮断時間が、ガス使用者のガス使用形態に適さないという不具合が生じるおそれがある。
【0004】
例えば、ウィークリーマンションに、プリペイド式のガスメータを設置した場合において、前の入居者は、料理はせず、ヤカンでお湯を沸かす程度のガス利用状態の人であり、この後の入居者は、逆に、長い時間煮込むような料理を頻繁に行うようなガス利用状態の人であった場合には、ガスの利用状態が大きく異なる。遮断時間についていえば、前の入居者の保安のための遮断値としては、例えば「60分連続使用したら遮断する」ことでよいが、これが次の入居者にそのまま適用されると「60分で遮断してしまい、料理ができない」ということになる。
【0005】
そこで、本願出願人は、特許文献3において、ガス使用者にとって使い勝手のよいプリペイドカード式ガスメータを提案している。このプリペイドカード式ガスメータでは、安全のための遮断流量、遮断時間を設定、変更するための入力操作部が備わっている。ガス使用者が入れ替わった場合に、ガス会社の担当者が、入力操作部を操作して、新たなガス使用者に適した遮断流量、遮断時間を設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平09-7039号公報
【文献】特開2009-211353号公報
【文献】特開2019-28704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に記載のプリペイドカード式ガスメータにおいては、頻繁にガス使用者が入れ替わる毎に、ガス会社の担当者等がガスメータの設置場所に出向き、入力操作を行って、遮断流量、遮断時間などを設定している。無線による通信機能が備わったガスメータの場合においては、例えば、遠隔操作により、ガス会社の担当者が、ガスメータの動作制御のための設定値の設定、変更を行う。
【0008】
いずれの場合においてもガス会社の担当者等による人手による作業が必要になる。また、通信機能が備わっていないスタンドアローン型のガスメータの場合、あるいは、通信には適さない設置場所に設置されるガスメータの場合等においては、通信による遠隔操作によって設定値の設定変更を行うことができない。
【0009】
このような状況は、電気料金を前払いするプリペイド式の電気供給システム、水道料金等の水の使用料金を前払いするプリペイド式の水供給システムにおいても同様に生じる。例えば、電磁調理器が装備された住宅等の電気消費場所において、電気使用者が入れ替わる毎に、新たな電気使用者のライフスタイルに合わせて、保安機能の制御用の設定値を変えることが望ましい。
【0010】
さらには、ガス、電気、水のいずれのプリペイド式供給システムにおいても、プリペイド金額が無くなった時には、それらの供給を強制的に停止するようになっている。しかし、使用中に供給が突然に遮断されることは安全の観点などから望ましくない場合がある。そのために、ガス、電気、水の使用中にプリペイド金額が無くなった場合には、例えば、ガス等の使用の終了後の時点で遮断できるように、プリペイド金額が無くなった後においても所定量のガス、電気、水を使用できるように設定される場合がある。このような予備的な使用可能量の設定も、必要に応じて変更できることが望ましい。
【0011】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、プリペイド式のガス、電気、水の供給の強制遮断などの動作制御のための1つまたは複数の設定値を、適切な値に変更等する作業を人手に頼ることなく、また、通信による遠隔操作に頼ることなく、簡単に行えるガス、電気、水のプリペイド式供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、プリペイドカードに担持されたプリペイド金額に基づき、ガス、電気、水の供給を制御するガス、電気または水のプリペイド式供給システムにおいて、プリペイドカードの情報担持部に、当該プリペイドカードを利用可能なメータ(ガスメータ、電力メータ、水道メータ)のメータ識別情報およびガス、電気または水の使用料として前払いされたプリペイド金額と共に、メータの動作制御のために用いる1つまたは複数の設定値を担持させたことを特徴としている。メータの動作制御のために用いる設定値には、例えば、ガスメータに備わっているガス遮断弁を強制遮断する場合の条件を規定する値、ガスメータによる動作異常を判別するための判断基準となる値などがある。同様に、電力メータ、水道メータによって制御されるブレーカ等の電気遮断機構、水遮断弁を強制遮断する場合に用いる設定値、予め設定した動作異常を検出するために前記メータに設定された検出用の判別値などがある。
【0013】
また、メータは、記憶部と、プリペイドカードの情報担持部に担持されている担持情報を読み込むカードリーダと、記憶部に記憶保持されているメータ識別情報に、読み込まれたメータ識別情報が一致するか否かを判別する判別部と、メータ識別情報が一致する場合に、記憶部に記憶保持されているプリペイド金額を、読み込まれたプリペイド金額に基づき更新するプリペイド金額更新部と、メータ識別情報が一致する場合に、記憶部に設定されている設定値を、読み込まれた設定値に変更する設定値変更部とを備えていることを特徴としている。
【0014】
プリペイドカードに担持される設定値として、当該プリペイドカードを用いる顧客の生活形態等に適した値を設定しておく。顧客が、ガス、電気、水の使用を開始するにあたって、このプリペイドカードを用いて、メータに、ガス、電気または水の使用料をチャージすると、プリペイド金額と共に設定値がメータに読み込まれ、既にメータに設定されている設定値が自動的にプリペイドカードに担持されている設定値に変更される。設定値が変更された状態でガス、電気、水の使用が可能になる。
【0015】
本発明によれば、顧客がプリペイドカードを用いてメータにプリペイド金額をチャージする際に、同時に、設定値の変更が自動的に行われる。プリペイド金額をメータにチャージする動作は必須であり、したがって、ガス、電気、水の管理会社の作業員等が操作するなどの設定値変更のための人手による作業、通信を介した遠隔操作により管理会社の担当者などが設定値を変更する作業が不要になる。よって、顧客に適したメータの動作制御のための設定値変更を、効率よく行うことができる。
【0016】
ここで、メータに設定されている設定値の変更が不要な場合がある。これに対処するために、例えば、プリペイドカードの情報担持部に、設定値の変更の要否を指示する指示情報も担持させればよい。この場合には、メータの設定値変更部は、読み込まれた指示情報が、設定値の変更が必要であることを示している場合にのみ、既に設定されている設定値を読み込まれた設定値に変更すればよい。
【0017】
また、プリペイドカードを、顧客識別情報が担持された顧客カードとして、顧客毎に発行することができる。この場合には、事前に、顧客識別情報に対応付けした形態で、メータ識別情報、設定値および指示情報が登録された顧客データベースを構築しておけばよい。カードチャージ機能を備えたカード発行機において、顧客データベースの登録情報に基づき、新規の顧客カードの発行時、発行済みの顧客カードのチャージあるいは再チャージの際に、顧客データベースに登録されている設定値を顧客カードに書き込めばよい。
【0018】
なお、顧客情報を顧客データベースに登録する手続は、顧客が管理会社の担当者と対面式で行うこともできるが、紙ベースにより郵送などで行うこともでき、また、スマートフォン等の通信端末からガス会社のインターネット上の登録サイトにアクセスして登録手続きを行っても良い。顧客情報に、顧客のガスの使用形態等についての項目も含めておき、これに基づき、顧客カードに担持される設定値を事前に決めておくことができる。顧客は、カード発行機において、顧客登録を行うことで発行された顧客識別情報を用いて、顧客カードの発行、チャージを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用したガスのプリペイド式供給システムを示す概略構成図である。
図2図1のガスメータにおけるガス使用開始手順を示す概略フローチャートである。
図3図1のガスメータのガス供給動作を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(全体構成)
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の実施の形態は、本発明をプリペイド式ガス供給システムに適用した場合の例である。本発明は、電気、または、水道水などの水のプリペイド式供給システムに対しても同様に適用可能である。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るプリペイド式ガス供給システムを示す概略構成図である。プリペイド式ガス供給システム1は、ガス会社等が運営する管理サーバ10と、複数か所に設定されるPOS端末であるカード発行機20と、カード発行機20から発行され、当該カード発行機20によってプリペイド金額がチャージあるいは再チャージされるプリペイドカードである顧客カード40と、各ガス消費地50に設置され、顧客カード40を用いてガスの供給が行われるガスメータ60とを備えている。
【0022】
(管理サーバ)
管理サーバ10は、通信回線を介して、ガス会社の管理者PC11に接続されている。また、管理サーバ10には顧客データベース12が接続されている。顧客データベース12には、各顧客(各ガス消費地50のガス使用者)を特定する顧客識別情報13、各ガス消費場所のガスメータ60を特定するメータ識別情報14、プリペイド金額15、ガスメータ60の動作制御に用いる設定値16が紐付けされた形態で登録されている。また、ガスメータ60に設定されている設定値16Aを設定値16に変更することの要否を指示する指示情報17も顧客識別情報13に紐付けした形態で登録される。
【0023】
管理サーバ10は、コンピュータを中心に構成される制御部18、各カード発行機20との間で一般通信回線網2等を介して通信を行ってデータの送受を行う通信部19等を備えている。制御部18は、制御プログラムを実行することにより、管理者PC11、各カード発行機20からの入力情報に基づき顧客データベース12の登録、更新等を行うデータベース登録・更新部として機能する。また、制御部18は、各部を駆動制御して、各カード発行機20から提供される顧客識別情報13を用いて、顧客データベース12から、対応するメータ識別情報14、設定値16、指示情報17等を検索出力してカード発行機20に提供する情報提供部として機能する。また、制御部18は、カード発行機20から受け取る情報に基づき、顧客データベース12を更新するデータ更新部として機能する。
【0024】
(カード発行機)
カード発行機20は、コンピュータを中心に構成される制御部21、記憶部22、一般通信回線網2等の通信網を介して管理サーバ10との間でデータの送受を行う通信部23、操作表示部24を備えている。また、カード発行機20は、顧客カード40として、情報が担持される前の新規カード40Aが収納されたカードストッカ25、カードリーダー・ライター26、挿入発行口27からカードリーダー・ライター26のリード・ライト部を経てカードストッカ25に至るカード搬送経路(図示せず)に沿って、新規カード40A、顧客カード40を搬送するカード搬送機構(図示せず)その他の機構部分を備えている。新規カード40A、したがって、顧客カード40は、本例で非接触型のICカードからなり、カードリーダー・ライター26との間で無線通信を行って情報の送受を行う。さらに、カード発行機20は、入金処理部28を備えている。入金処理部28は、紙幣、硬貨を、ガス使用料の前払い金として受け入れる金銭処理機構、クレジットカードその他のキャッシュレス決済サービスを利用した入金処理機構のいずれであってもよい。
【0025】
制御部21は、上記の各部を駆動制御して、顧客情報を管理サーバ10の顧客データベース12から取得する情報取得部、取得した顧客情報を用いて新規の顧客カード40を発行するカード発行部、顧客カード40のプリペイド金額を更新するカードチャージ部、管理サーバ10に情報を提供する情報提供部として機能する。
情報取得部は、顧客が操作表示部24を介して新規の顧客カード40の発行要求および顧客識別情報13を入力すると、入力された顧客識別情報13を用いて、管理サーバ10の顧客データベース12に登録されているメータ識別情報14、設定値16、指示情報17等を取得する。
カード発行部は、カードリーダー・ライター26を駆動制御して、取得したメータ識別情報14、設定値16および指示情報17と、入金処理部28が受け付けた前払い金に対応するプリペイド金額15とを、顧客識別情報13と共に、カードストッカ25から送り出される新規カード40Aの情報担持部41に書き込むことで、新規の顧客カード40を作成し、これを発行する。
カードチャージ部は、カードリーダー・ライター26を駆動制御して、入金処理部28で受け付けた前払い金に対応する新たなプリペイド金額15を用いて、発行済みの顧客カード40に担持されているプリペイド金額15を更新するカードチャージ動作を行う。
情報提供部は、カード発行部から発行される新規の顧客カード40に関する情報およびカードチャージ部による発行済みの顧客カード40の更新に関する情報を、管理サーバ10に提供する。
【0026】
顧客カード40は、本例では非接触型のICカードであり、顧客カード40の情報担持部41には、顧客識別情報13、顧客カード40が利用可能なガスメータ60のメータ識別情報14、プリペイド金額15、および、ガスメータ60の動作制御のために用いる設定値16および指示情報17が担持される。情報担持部41に書き込まれる情報、すなわち、担持情報には、ガス使用のための情報である顧客識別情報13、メータ識別情報14およびプリペイド金額15と、ガスメータ60の動作制御に用いる設定値16および指示情報17に加えて、カードID、発行日時、発行場所(あるいは発行機ID)、カード種別情報などのカード認証・識別用の情報31も含まれる。
【0027】
(ガスメータ)
各ガス消費地50においては、ガス供給源51からガスメータ60を経由してガス使用機器52にガスが供給される。ガスメータ60は、顧客カード40の担持情報に含まれているプリペイド金額15に対応するガス使用可能量だけガスの供給を行う。ガスメータ60は、顧客カード40との間で無線通信を行い、担持情報を読み込む。
【0028】
ガスメータ60は、メータケース61の内部に、ガス通路62が配置されている。ガス供給源51からガスメータ60のガス通路62を経由して、ガス使用機器52に向けてガスが供給される。ガス通路62の途中位置には遮断弁63が配置されている。遮断弁63よりも下流側の部分には、ここを流れるガスを計測する計測部64が配置されている。
【0029】
メータケース61の内部には、各部の駆動電力を供給する電池電源65と、コンピュータを中心に構成される制御ユニット66、通信機能を備えたカードリーダ67が配置されている。制御ユニット66は、計測部64の計測値から、ガス使用機器52の側に供給されるガス流量、ガス流量の積算値、ガス連続使用時間等を演算する演算部71、各部の駆動を制御する駆動制御部72、および、各種情報を記憶保持する記憶部73を備えている。ガスメータ60に、顧客カード40をかざすことで、これらの間で無線通信が行われ、顧客カード40の担持情報がカードリーダ67によって読み取られる。読み取られた担持情報は、駆動制御部72の制御の下で、記憶部73等に保持される。
【0030】
メータケース61の前面には、液晶表示器等からなる表示部74が配置されており、駆動制御部72の制御の下に、各種情報を表示可能である。メータケース61の前面において、表示部74の隣接位置には、カードリーダ67を起動させるために、ガス使用者(顧客)によって操作されるチャージボタン81が配置されている。また、ガスの供給開始指令を入力するために、ガス使用者によって操作される使用開始ボタン82が配置されている。
【0031】
ここで、チャージボタン81および使用開始ボタン82は、ガス管理会社の担当者が各種設定値の設定・変更を行う場合にも使用される。本例では、ガス管理会社の担当者に、カードリーダ67によって読み取り可能な特殊カード(ICカード)を携帯させる。特殊カードは、その記憶部に、カード種別情報として、「サービス用」であることを表すコードが書き込まれたカードである。担当者は、チャージボタン81を操作してカードリーダ67を起動して特殊カードを読み取らせる。読み取ったカード種別情報に基づき、ガスメータ60の駆動制御部72は、動作モードを、各種設定値の設定・変更が可能な制御モードに切り替え、チャージボタン81、使用開始ボタン82を、各種設定値の設定・変更用の操作ボタンとして機能させる。これらのボタン81、82を操作することで、担当者は各種設定値の設定・変更を行うことができ、設定・変更作業の終了後にはボタン操作により制御モードを通常の動作モードに戻すことができる。設定あるいは変更された各種設定値、例えば、遮断流量78、遮断時間79は、設定値16Aとして、記憶部73に保持される。
【0032】
駆動制御部72は、インストールされている制御用プログラムを実行することにより、以下の各部として機能する。
遮断弁63を制御してガスの供給および停止を行うガス供給停止部
プリペイド金額15から、供給されたガス流量に対応するガス使用料金を減算する精算部
上述したように各種設定値の設置・変更が可能な制御モードにおいて、チャージボタン81、使用開始ボタン82の操作入力に基づき、遮断流量78および遮断時間79の設定あるいは変更を行う設定値変更部
演算部71で算出されるガス流量が遮断流量78を超えた場合およびガス連続使用時間が遮断時間79を超えた場合のうちの少なくとも一方の場合に、ガスの供給を強制停止するガス強制遮断部
チャージボタン81が操作されるとカードリーダ67を起動して顧客カード40、特殊カードの読み取りを可能にするカードリーダ起動制御部
記憶部73に記憶保持されているメータ識別情報に、読み込まれたメータ識別情報が一致するか否かを判別する判別部
判別部によってメータ識別情報が一致することが確認された場合に、記憶部73に記憶保持されているプリペイド金額を、読み込まれたプリペイド金額に基づき更新するプリペイド金額更新部
【0033】
上記のガス供給停止部は、ガス使用者によって使用開始ボタン82が操作されると、プリペイド金額が残っていることを条件として、遮断弁63を開状態に切り替える制御を行う。また、設定値変更部は、顧客カード40から読み込まれた設定値16および指示情報17に基づき、既に設定されている設定値16Aである遮断流量78、遮断時間79の設定変更を行う機能も備わっている。
【0034】
この構成のプリペイド式ガス供給システム1において、ガス使用者は、ガス使用に先立って、ガス会社に対して顧客登録の手続きを行う。この手続きにより、顧客データベース12に、ガス使用者の顧客情報(住所、氏名、ガス消費場所情報、顧客識別情報13、設置されているガスメータ60のメータ識別情報14、設定値16、指示情報17等)が登録される。また、ガス使用者には、顧客識別情報13が提供される。設定値16には、例えば、遮断流量78および遮断時間79のそれぞれを示す値が含まれる。
【0035】
ガス使用者は、最寄りのカード発行機20において、顧客識別情報13を入力し、所定の金額の入金手続きを行い、ガス使用料金を前払いし、前払い金額に対応するプリペイド金額15が書き込まれた顧客カード40を購入する。発行された新たな顧客カード40には、顧客識別情報13、メータ識別情報14、プリペイド金額15、設定値16、指示情報17等が担持される。
【0036】
図2は、プリペイド式ガス供給システム1のガスメータ60におけるガス使用開始手順を示す概略フローチャートである。図1図2を参照して説明すると、ガスの使用を開始するには、ガス使用者は、ガスメータ60のチャージボタン81を操作する(図2のステップST1)。ガスメータ60の駆動制御部72は、チャージボタン81が操作されると、カードリーダ67を起動してカード読取を可能にする(ステップST2)。また、表示部74には、ガス使用者に対する操作指示が表示される。
【0037】
操作指示に従って、ガス使用者が顧客カード40をガスメータ60にかざし、あるいは、接触させると、カードリーダ67によって顧客カード40の担持情報が読み込まれる(ステップST3)。駆動制御部72は、読み込まれた担持情報に含まれるカード認証用の情報およびメータ識別情報14に基づき、顧客カード40の認証を行い(図2のステップST4)、担持情報の読込(カード情報の読込)を行う(図2のステップST5)。
【0038】
駆動制御部72は、読み込まれたプリペイド金額15を、プリペイド金額15Aとして、記憶部73に記憶保持する(図2のステップST6)。(なお、プリペイド金額の再チャージの場合には、記憶部73に記憶保持されているプリペイド金額15Aを更新する)。また、駆動制御部72は、読み込まれた指示情報17によって既存の設定値16A(遮断流量78、遮断時間79)の変更の要否を判断する(図2のステップST7)。変更が要求されている場合には、記憶部73に既に設定されている設定値16Aを、読み込まれた設定値16(遮断流量、遮断時間)に変更する処理を行う(図2のステップST8)。これにより、記憶部73には、読み込まれた設定値16が、設定値16Aとして保持され、これらに基づき、遮断弁63の遮断制御が行われることになる。
【0039】
ガス使用者が表示された操作指示に従って、ガスメータ60の使用開始ボタン82を操作すると、駆動制御部72は遮断弁63を開く(図2のステップST9、ST10)。これにより、ガスメータ60を介してガスの供給が可能になる。
【0040】
図3はガスメータ60のガス供給動作を示す概略フローチャートである。ガス使用者がガスを使用すると、ガスメータ60では、供給されるガスを計測し、ガス流量、積算値、ガス連続使用時間等を演算する(ステップST11、12)。駆動制御部72は、予め設定されているプリペイド用ガス料金体系に基づき、使用されたガス流量のガス料金を算出し、設定されているプリペイド金額15Aから減算する精算処理を行う(ステップST13)。精算後にプリペイド金額15Aが残っているか否かを判別し(ステップST14)、零になった場合には、遮断弁63を閉じてガスの供給を止め(ステップST16)、ガスが使用できない旨、その理由あるいは原因を表示し(ステップST17)、処理を終了する。
【0041】
ここで、ガスメータ60においては、記憶部73には、遮断流量78および遮断時間79のそれぞれの設定値16Aが保持されている。使用されるガスのガス流量が遮断流量78を超える大流量になった場合、ガスの連続使用時間が遮断時間79を超える長時間になった場合、および、これらの双方を満たす場合のうち、いずれか一つの場合が、ガス強制遮断条件として設定される。
【0042】
駆動制御部72は、ガス強制遮断条件を満たすことが検出された場合には(ステップST15)、ガス使用において異常が発生したものと判断して、遮断弁63を閉じて、ガスの供給を強制遮断する(ステップST16)。この後は、ガスが使用できない旨、その理由あるいは原因を表示し(ステップST17)、処理を終了する。
【0043】
ガス使用者が入れ替わった場合などにおいて、ガス使用形態が大きく変わる場合がある。このような場合には、ガス使用者のガス使用形態に適した設定値16(遮断流量78、遮断時間79)となるように、ガスメータ60の設定値16Aを変更することが望ましい。本例のプリペイド式ガス供給システム1においては、顧客カード40に、顧客のガス使用形態に適した設定値16が担持されている。顧客カード40を用いてガスメータ60にプリペイド金額15のチャージを行う際に、同時に、設定値16が読み込まれて、ガスメータ60の側の遮断流量78、遮断時間79の設定値16Aのそれぞれ、ガス使用者に適した値に自動的に変更される。
【0044】
プリペイド金額15をガスメータ60にチャージする動作は必須であり、したがって、ガス会社の作業員等が操作してガスメータ60の設定値16Aを変更する作業、通信を介した遠隔操作によりガス会社の担当者などが設定値16Aを変更する作業が不要になる。よって、ガス使用者に適したガスメータ60の動作制御のための設定値変更を、効率よく行うことができる。
【0045】
例えば、ガス使用者がガスを長時間連続して使用しない場合には、遮断時間を短く設定する。次のガス使用者が料理などで長時間に亘って頻繁にガスを使用する場合には、遮断時間を長い時間に変更する。これにより、不必要なガス遮断を防ぐことができ、利便性が向上する。
【0046】
なお、上記の例においては消費電力を削減するためにチャージボタン81を配置してあるが、チャージボタン81を省略して、カードリーダ67を顧客カード40の読み取りが常に可能な状態に維持しておくことも可能である。また、使用開始ボタン82を省略して、プリペイド金額のチャージが行われると、自動的にガスの使用を開始できるようにすることも可能である。チャージボタン81、使用開始ボタン82を省略した場合には、例えば、メータケース61の背面あるいは内部には、ガス管理会社の担当者が各種設定値の設定・変更を行うための設定用入力操作部を配置しておけばよい。
【符号の説明】
【0047】
1 プリペイド式ガス供給システム
2 一般通信回線網
10 管理サーバ
12 顧客データベース
13、13A 顧客識別情報
14、14A メータ識別情報
15、15A プリペイド金額
16、16A 設定値
17 指示情報
18 制御部
19 通信部
20 カード発行機
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 操作表示部
25 カードストッカ
26 カードリーダー・ライター
27 挿入発行口
28 入金処理部
31 カード認証・識別用の情報
40 顧客カード
40A 新規カード
41 情報担持部
50 ガス消費地
51 ガス供給源
52 ガス使用機器
60 ガスメータ
61 メータケース
62 ガス通路
63 遮断弁
64 計測部
65 電池電源
66 制御ユニット
67 カードリーダ
71 演算部
72 駆動制御部
73 記憶部
74 表示部
78 遮断流量
79 遮断時間
81 チャージボタン
82 使用開始ボタン
図1
図2
図3