(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】新規な光重合開始剤及びこれらを用いた感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20240711BHJP
C07D 403/10 20060101ALI20240711BHJP
C07D 419/14 20060101ALI20240711BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20240711BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240711BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240711BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08F2/50
C07D403/10
C07D419/14
C08F20/00 510
G02B5/20 101
G03F7/004 512
G03F7/031
(21)【出願番号】P 2020189294
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391025659
【氏名又は名称】株式会社日本化学工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 亮太
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/177316(WO,A1)
【文献】特開2010-189280(JP,A)
【文献】特開2010-189279(JP,A)
【文献】特開2011-022328(JP,A)
【文献】特開2019-109494(JP,A)
【文献】特開2005-099280(JP,A)
【文献】特開2005-097141(JP,A)
【文献】国際公開第2013/083505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C07D 403/10
C07D 419/14
G03F 7/004
G03F 7/031
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される光重合開始剤。
【化1】
(式中、R
1, R
2 の少なくとも1つは、下記一般式(II)で表される基であり、R
1,R
2が下記一般式(II)でない場合は、R
1,R
2は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表す。R
3は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表す。Xは、アリーレン基又は複素環基を表し、かつ、該複素環基上の一つ以上の水素原子は、R、OR、COR、SR、CONRR’、CN、NO
2又はハロゲン原子で置換されていてもよい。R、R’は、複素環基、又は直鎖あるいは枝分かれ構造を有する有機基を示し、該有機基は、アルキル基、アリール基、アラルキル基であってもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、又はアルキレン基が、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により接続された構造を有する基であってもよく、R及びR’が結合した環構造であってもよい。また、該有機基上の水素原子の一つ以上が、ハロゲン原子、アルコキシ基又は複素環基で置換されていてもよい。)
【化2】
(式中、R
4は、二価の有機基を表す。)
【請求項2】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、請求項1に記載の光重合開始剤とを含有するフォトレジスト、ドライフィルムレジスト
又はカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光重合開始剤、さらに、これらを含有する感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、主に、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光重合開始剤からなるが、エチレン性不飽和化合物は、一般に紫外線照射を行うことにより硬化させることができる。重合硬化のためには、それに適した光重合開始剤が必要で、紫外線照射を行うことにより光重合開始剤が活性ラジカルを生じ、エチレン性不飽和化合物が反応して重合する。
【0003】
重合により微細なライン等を得るための光源としては、365nmや405nmの光が主に用いられる。そして、短波長の光源に感度を持つ感光性樹脂組成物を用いることにより、微細な印刷が可能であるため、特に365nm、405nmの光源に優れた感度を有する光重合開始剤が望まれている。
【0004】
これらの短波長の光源に感度を持つ感光性樹脂組成物は、光硬化性インキ、感光性印刷版、ドライフィルムレジスト、カラーフィルター等さまざまな分野に用いられている。また、長波長の光源に優れた感度を有することで、厚膜の深部を硬化する感光性樹脂組成物が望まれている。
特許文献1~4には、オキシムエステル誘導体が記載されており、これらのオキシムエステル誘導体は、光重合開始剤として用いられることが知られているが、これらは使用に際してやや不十分なものであった。
特許文献5に記載の光重合開始剤では、365nm、特に405nmの光に対する感度は、未だ満足いくものではなく、さらなる改善の余地がある。
また、特許文献6~7に記載の光重合開始剤は、365nm、特に405nmの光に対する感度は高いが、解像度、現像性が不十分であり、未だ満足いくものではなく、さらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3558309号明細書
【文献】米国特許第4255513号明細書
【文献】米国特許第4590145号明細書
【文献】米国特許第4202697号明細書
【文献】特許第5626332号明細書
【文献】特許第4344400号明細書
【文献】特許第6095408号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記先行技術の問題点を改善するもので、波長365nm、特に405nmの光に対する感度が高く、解像度、現像性、経時安定性が優れた新規な光重合開始剤を提供すること、および、これを含む感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、後述する一般式(I)
で表される特定構造の光重合開始剤であれば、前記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
1.下記一般式(I)で表される光重合開始剤。
【化1】
(式中、R
1, R
2の少なくとも1つは、下記一般式(II)で表される基であり、R
1, R
2が下記一般式(II)でない場合は、R
1, R
2は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表す。 R
3は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表す。Xは、アリーレン基又は複素環基を表し、かつ、該複素環基上の一つ以上の水素原子は、R、OR、COR、SR、CONRR’、CN、NO
2又はハロゲン原子で置換されていてもよい。R、R’は、複素環基、又は直鎖あるいは枝分かれ構造を有する有機基を示し、該有機基は、アルキル基、アリール基、アラルキル基であってもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、又はアルキレン基が、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により接続された構造を有する基であってもよく、R及びR’が結合した環構造であってもよい。また、該有機基上の水素原子の一つ以上が、ハロゲン原子、アルコキシ基又は複素環基で置換されていてもよい。)
【化2】
(式中、R
4は、二価の有機基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の光重合開始剤は、感光性、解像性、現像性に優れており、365nmから405nm付近における吸光度が、これまでのものよりも高いため、365nm及び405nmの波長を光源として使用する光重合開始剤、あるいは感光性樹脂組成物として有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の光重合開始剤、及びこれらを含有する感光性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の光重合開始剤は、以下の一般式(I)で表わされるものである。
【化3】
式中、R
1, R
2の少なくとも1つは、下記一般式(II)で表される基である。R
3は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表す。R
4は二価の有機基を表す。Xは、アリール基又は複素環基を表す。
【化4】
上記において、「直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基」とは、直鎖状あるいは分枝鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1~20、より好ましくは1~10の範囲である。
「シクロアルキル基」とは、環状の飽和炭酸水素基を意味する。シクロアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常3~20、より好ましくは、3~10の範囲である。
【0011】
「アルコキシ基」とは、エーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を意味する。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1~20、より好ましくは1~10の範囲である。
「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
「アリール基」とは、芳香族炭化水素基を意味する。
アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6~18の範囲である。好ましいアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリル等が挙げられる。
「複素環基」とは、例えば、窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子を1~2個含む5~7員の飽和、不飽和又は完全不飽和の環を意味する。
好ましい「複素環基」としては、チエニル、フラニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ベンゾフラニル、ジュロリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル等が挙げられる。
「アラルキル基」とは、アルキル基における一個または複数個の水素原子が、アリール基で置換された基を意味し、アラルキル基を構成するアルキル基、アリール基は、上記で定義したものである。
前記R4で表される二価の有機基としては、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキレン、置換基を有してもよいシクロヘキシレン、置換基を有してもよいアルキニレンが挙げられる。
これらの基の置換基としてはハロゲン基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基が挙げられる。
【0012】
R及びR'により構成される環は、それらが結合している窒素原子と一緒になって形成される環を意味する。ここで、前記環は、R、R'が結合している窒素原子に加えて、窒素、酸素、硫黄等の炭素以外のヘテロ原子を一個または複数個環内に有してもよい、飽和、部分飽和又は完全不飽和の環である。上記環の具体例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピリジニル、ピリミジニル等が挙げられる。
【0013】
さらに、本発明の光重合開始剤の中でも、特に、前記一般式(I)において、R1が式(II)を有するもの、R2、R3がメチル基を有するもの、R4がメチレン基を有するもの表すものXがフェニル、チエニル、フラニルを有するものが、良好な感光性、解像性、経時安定性の点において好ましい。
【0014】
[本発明の化合物の製造方法]
本発明の中間体であるオキシムを得るためには、一般的に次に示す反応が好適である。アルデヒド又はケトンと、塩酸ヒドロキシルアミンとを、酢酸ナトリウム又はピリジンのような塩基の存在下、エタノールのような極性溶媒中で反応させることで合成することができる。もう一つは、活性メチレン基を有する化合物を、アルカリ条件または酸性条件下、亜硝酸または亜硝酸アルキルと反応させることで合成することができる。
【0015】
前記一般式(I)で表される本発明のオキシムエステル化合物は、一般的に、次のようにして製造することができる。
【化5】
(R
1, R
2の少なくとも1つは、下記一般式(IV)で表される基であり、R
1, R
2は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表し、R
4は二価の有機基を表す。)
【化6】
で表されるカルバゾール系化合物と、下記一般式(V)
【化7】
(Xは、アリーレン基又は複素環基を表し、かつ、該複素環基上の一つ以上の水素原子は、R、OR、COR、SR、CONRR’、CN、NO
2又はハロゲン原子で置換されていてもよい。R、R’は、複素環基、又は直鎖あるいは枝分かれ構造を有する有機基を示し、該有機基は、アルキル基、アリール基、アラルキル基であってもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、又はアルキレン基が、不飽和結合、エーテル結合
、チオエーテル結合、又はエステル結合により接続された構造を有する基であってもよく、R及びR’が結合した環構造であってもよい。また、該有機基上の水素原子の一つ以上が、ハロゲン原子、アルコキシ基又は複素環基で置換されていてもよい。)
で表される酸塩化物とを、塩化アルミニウムのような金属塩化物の存在下に反応させることにより、下記一般式(VI)
【化8】
(R
1, R
2の少なくとも1つは、前記一般式(IV)で表される基であり、R
1, R
2は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表し、Xは上記で定義したとおりである)
【化9】
(式中R
4は二価の有機基を表す。)
で表されるアシル体を得る。
次いで、上記一般式(VI)を水酸化ナトリウム等の塩基の存在下に反応させることにより、前記式(IV)から前記式(II)となる。
次いで、塩酸ヒドロキシルアミンをピリジン等の塩基の存在下に反応させることにより、下記一般式(VI)
【化10】
(式中、R
1、R
2 の少なくとも1つは、前記一般式(II)で表される基であり、R
1, R
2は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表し、R
4は二価の有機基を表す。Xは上記で定義したとおりである)
で表されるオキシム化合物を得る。
【0016】
次いで、上記一般式(VII) と、下記一般式(VIII)
【化11】
(式中 R
3は上記で定義したとおりである)
で表される酸塩化物等を反応させて、下記一般式(I)
【化12】
(式中、R
1、R
2の少なくとも1つは、下記一般式(II)で表される基であり、R
1, R
2は、直鎖又は枝分かれ構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又は複素環基を表し、R
4は二価の有機基を表す。Xは、アリーレン基又は複素環基を表し、かつ、該複素環基上の一つ以上の水素原子は、R、OR、COR、SR、CONRR’、CN、NO
2又はハロゲン原子で置換されていてもよい。R、R’は、複素環基、又は直鎖あるいは枝分かれ構造を有する有機基を示し、該有機基は、アルキル基、アリール基、アラルキル基であってもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、又はアルキレン基が、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により接続された構造を有する基であってもよく、R及びR’が結合した環構造であってもよい。また、該有機基上の水素原子の一つ以上が、ハロゲン原子、アルコキシ基又は複素環基で置換されていてもよい。)
【化13】
(式中R
4は二価の有機基を表す。)
で表される本発明のオキシムエステル化合物を得る。
【0017】
本発明のオキシムエステル化合物は、ラジカル重合が可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の光重合開始剤として有用である。
【0018】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。
感光性樹脂組成物はエチレン性不飽和結合を有する化合物、バインダー等に、本発明の光重合開始剤を含有させてなる成分である。また、必要に応じて、熱重合禁止剤や可塑剤等の添加剤を混合することによって調製される。
【0019】
本発明のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と芳香族ポリヒドロキシ化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル等があげられる。
【0020】
本発明の不飽和カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化合物とのエステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステル、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート等のメタクリル酸エステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物のイタコン酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル等があげられる。
【0021】
本発明の不飽和カルボン酸と芳香族ポリヒドロキシ化合物とのエステルとしては、例えば、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート等があげられる。不飽和カルボン酸と多価カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルとしては、例えば、アクリル酸- フタル酸- エチレングリコールの縮合物、アクリル酸- マレイン酸- ジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸- テレフタル酸- ペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸- アジピン酸- ブタンジオール- グリセリンの縮合物等があげられる。
【0022】
その他本発明に用いられるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の例としては、エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類、フタル酸ジアリル等のアリルエステル、ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等があげられる。主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体としては、例えば不飽和二価カルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、不飽和二価カルボン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド等があげられる。
【0023】
本発明の側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体としては、側鎖に不飽和結合をもつ二価カルボン酸、例えば、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸等とジヒドロキシまたはジアミン化合物との縮合重合体等があげられる。また、側鎖にヒドロキシ基やハロゲン化メチル基の如き官能基をもつ重合体、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート) 、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂ポリエピクロルヒドリン等とアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸の様な不飽和カルボン酸との高分子反応により得られるポリマーも使用できる。
【0024】
バインダーは、重合性の単量体をラジカル重合させることにより得られる。単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α - メチルスチレン、p - メチルスチレン、p - エチルスチレン等のスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル等のビニルアルコールエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、桂皮酸、イタコン酸、クロトン酸等があげられる。
【0025】
本発明のバインダーの使用量は、エチレン性化合物100重量部に対して30~1000重量部、さらに好ましくは50~150重量部である。
【0026】
また、本発明のオキシムエステル化合物は、下記に示すような公知の光重合開始剤と併用して使用することができる。
これら光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4 ,4 '-
ビス( ジエチルアミノ) - ベンゾフェノン、4 - ( メチルフェニルチオ) - フェニルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2 - メチル- 1 - メチルチオフェニル- 2 - モルフォリノプロパン- 1 - オン、2 - ベンジル- 2 - ジメチルアミノ- 1 - ( 4 - モルフォリノフェニル) ブタン- 1 - オン、p - ジエチルアミノ安息香酸エチル、チオキサントン、2 ,5 - ジエチルチオキサントン、2
- クロロキサントン、イソプロピルチオキサントン、1 - クロロ- 4 - プロポキシ- チオキサントン、2 - ( o - クロロフェニル) - 4 ,5 - ジフェニルイミダゾール二量体、2 - ( o - フルオロフェニル) - 4 ,5 - ジフェニルイミダゾール二量体、2 - ( o - メトキシフェニル) - 4 ,5 - ジフェニルイミダゾール二量体、2 - ( p - メトキシフェニル) - 4 ,5 - ジフェニルイミダゾール二量体、2- ( o - クロロフェニル) - 4 ,5 - ジ( o - メトキシフェニル) イミダゾール二量体、9 - フェニルアクリジン、9 - ( p - トルイル) アクリジン、1 ,7 - ビス( 9 ,9 '- アクリジニル) ヘプタン、N - フェニルグリシン、ビス( η 5 - シクロペンタジエニル) ビス[ 2 ,6 - ジフルオロ- 3 - ( 1 H - ピロール- 1 - イル) フェニル] チタニウム、2- エチルアントラキノン、1 - クロロアントラキノン、2 - フェニル- 4 ,6 - ビス( トリクロロメチル) - s - トリアジン、2 - ( 4 - メトキシフェニル) - 4 ,6 - ビス( トリクロロメチル) - s - トリアジン、2 - ナフチル- 4 ,6 - ビス(
トリクロロメチル)- s - トリアジン、2 - ( 4 - メトキシナフチル) - 4 ,6 - ビス( トリクロロメチル)- s - トリアジン、2 - メチル- 4 ,6 - ビス( トリクロロメチル) - s - トリアジン等があげられる。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、オキシムエステル化合物、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を溶解または分散させて使用される。
使用される溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、t-ブチルエチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、クロロホルム、N,N'-ジメチルホルムアミド、N-メチル- 2-ピロリドン等を加えた溶液状組成物として用いられる。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物は、各種印刷インキ、印刷版、塗料、ドライフィルムレジスト、カラーフィルターの用分野に用いられる。
【0029】
本発明で露光に用いられる光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、発光ダイオード、レーザーダイオード、F2エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等を用いることができる。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物において、光重合開始剤の添加量は特に限定されるものではないが、本発明のオキシムエステル化合物は、エチレン性不飽和結合を有する上記重合性化合物100重量部に対して、通常0.1~50重量部、より好ましくは、感度及び解像度等の点を考慮して1~40重量部である。
【0031】
次に、本発明のオキシムエステル化合物を用いた実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
〔実施例1〕オキシムエステル化合物の合成
a.カルバゾール誘導体(アシル体)の合成
【化14】
CH
2Cl
2 100 mL中の3-(3-アセチル-9H-カルバゾール-9-イル)プロピオン酸エチル 5.00部に、テレフタル酸クロリド1.54部及びAlCl
3 6.46部を加えた。室温で一晩攪拌した。次いで、反応混合物を氷水に注いだ。生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウムおよび、食塩水で洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を濃縮後、淡黄緑色固体4.78部(83.5%)を得た。この固体を未精製のまま次の反応に用いた。
【0033】
b. カルバゾール誘導体( カルボン酸) の合成
【化15】
エタノール20ml中のa.で得られたアシル体4.0部に、20%水酸化ナトリウム水溶液3.42gを加えた。
3時間還流した。反応終了後、水50mlを加え、濃塩酸で酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水および食塩水で洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。黄色固体3.4g(収率92%)を得た。この固体を未精製のまま次の反応に用いた。
【0034】
c . オキシム体の合成
【化16】
エタノール30ml中のb.で得られたアシル体3.0部に、塩化ヒドロキシルアンモニウム0.90部及びピリジン1.10部を加えた。10時間還流したのち、反応混合物を氷水に注いだ。得られた固体を濾取し、水で洗浄し、酢酸エチルに溶解した。無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、濃縮し、淡黄白色固体2.79部(89%)を得た。この固体を未精製のまま、次の反応に用いた。
【0035】
d . オキシムエステル体の合成
【化17】
c.で得られたオキシム体1.5部をDMF10部に溶解した。この溶液に、塩化アセチル0.49部を加え、次いでトリエチルアミン0.63部を10℃ 以下で滴下した。室温で4時間攪拌したのち、反応混合物を水に注ぎ、析出固体をろ過した。ろ物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより化合物を単離して、淡黄色固体0.97部(58.2%)を得た。
吸光測定(溶媒 DMF)により、λmaxは343nmであった。
【0036】
〔実施例2〕オキシムエステル化合物の合成
a.カルバゾール誘導体(アシル体)の合成
【化18】
CH
2Cl
2 100mL中の3-(3-へキシル-9H-カルバゾール-9-イル)プロピオン酸エチル
5.00部に、チオフェンジカルボン酸クロリド1.34部及びAlCl
3 5.48部を加えた。室温で一晩攪拌した。次いで、反応混合物を氷水に注いだ。生成物を酢酸エチル
で抽出した。酢酸エチル層を食塩水で洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を濃縮後、淡黄緑色固体4.82部(86.5%)を得た。この固体を未精製のまま次の反応に用いた。
【0037】
b. カルバゾール誘導体(カルボン酸)の合成
【化19】
エタノール20ml中のa.で得られたアシル体4.0 部に、20%水酸化ナトリウム水溶液3.42gを加えた。3時間還流した。反応終了後、水50mlを加え、濃塩酸で酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水および食塩水で洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。黄色固体3.41g(収率91.2%) を得た。この固体を未精製のまま次の反応に用いた。
【0038】
c.オキシム体の合成
【化20】
エタノール30ml中のb.で得られたカルボン酸3.0部に、塩化ヒドロキシルアンモニウム0.58部及びピリジン0.65部を加えた。10時間還流したのち、反応混合物を氷水に注いだ。得られた固体を濾取し、水で洗浄し、酢酸エチルに溶解した。無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、濃縮し、黄色固体2.53部(81.3%)を得た。この固体を未精製のまま、次の反応に用いた。
【0039】
d.オキシムエステル体の合成
【化21】
c .で得られたオキシム体1.5部をDMF10部に溶解した。この溶液に、塩化アセチル0.45部を加え、次いでトリエチルアミン0.59部を10℃ 以下で滴下した。室温で4時間攪拌したのち、反応混合物を水に注ぎ、析出固体をろ過した。ろ物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより化合物を単離して、黄色固体0.97部(58.2%)を得た。
吸光測定(溶媒 DMF)により、λmaxは371nmであった。
【0040】
〔実施例3 〕オキシムエステル化合物の合成
a.カルバゾール誘導体(アシル体)の合成
【化22】
CH
2Cl
2 100mL中の4-(9-エチルー9H-カルバゾール-3-イル)-4-オキソブタン酸エチル 5.00部に、1, 4-ナフタレンジカルボン酸クロリド1.84部及びAlCl
3 6.18部を加えた。室温で一晩攪拌した。次いで、反応混合物を氷水に注いだ。生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウムおよび、食塩水で洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を濃縮後、淡黄緑色固体4.98部(82.8%)を得た。この固体を未精製のまま次の反応に用いた。
【0041】
b. カルバゾール誘導体( カルボン酸) の合成
【化23】
エタノール20mL中のa.で得られたアシル体4.0部に、20%水酸化ナトリウム水溶液2.90部を加えた。3時間還流した。反応終了後、水50mLを加え、濃塩酸で酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水および食塩水で洗浄し、その後無水硫酸
ナトリウムで乾燥した。黄色固体3.4g(収率91.2%)を得た。この固体を未精製のまま次の反応に用いた。
【0042】
c . オキシム体の合成
【化24】
エタノール30ml中のb.で得られたカルボン酸3.0部に、塩化ヒドロキシルアンモニウム0.68部及びピリジン0.61部を加えた。10時間還流したのち、反応混合物を氷水に注いだ。得られた固体を濾取し、水で洗浄し、酢酸エチルに溶解した。無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、濃縮し、淡黄白色固体2.74部(88%)を得た。この固体を未精製のまま、次の反応に用いた。
【0043】
d.オキシムエステル体の合成
【化25】
c.で得られたオキシム体1.5部をDMF10部に溶解した。この溶液に、塩化アセチル0.47部を加え、次いでトリエチルアミン0.63部を10℃ 以下で滴下した。室温で4時間攪拌したのち、反応混合物を水に注ぎ、析出固体をろ過した。ろ物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより化合物を単離して、淡黄色固体0.99部(59.7%)を得た。 吸光測定(溶媒 DMF)により、λmaxは346nmであった。
【0044】
実施例1~3と同様の方法によって合成した、下記一般式(VIII)で表される、本発明の様々な化合物の具体的な構造および、測定結果を表1に示す。
【化26】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
〔実施例11〕感光性樹脂組成物の製造
表2に示す材料を配合し、感光性樹脂組成物を得た。
【0049】
【0050】
なお、比較例1、2においては、光重合開始剤として下記に示す市販品を用いた。
【0051】
〔比較例1〕
商品名:OXE-01(チバ・スペシャリティケミカルズ製)
【化27】
【0052】
〔比較例2〕
商品名:OXE-02(チバ・スペシャリティケミカルズ製)
【化28】
【0053】
〔比較例3〕
商品名: Nikkacure TOE-0 4(株式会社日本化学工業所製)
【化29】
次いで、ガラス基板上に、上記表2に示すそれぞれの感光性樹脂組成物を、回転塗布機を用いて膜厚を3μm となるように塗布し、オーブンで80℃で3分間乾燥させた。その後、超高圧水銀ランプを用いて露光量を変えて露光を行った。次に、1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で2分間スプレーし、未露光部分の除去を行った。
【0054】
実施例1~4、10、12及び比較例1~3についての結果を表3に示す。
ここに示された感度は、25μmのレジストパターンを寸法通り形成できる露光量(mJ/cm2)をもって表示した。
【0055】
(解像度)
下記評価基準に従って、解像度を評価した。
a : 露光現像時において、線幅10μm未満でも良好にパターンを得られた。
b : 線幅15~20μmであれば良好なパターンを得られた。
(現像性)
露光時において、未露光部(光が照射されなかった部分)の残渣を観察し、下記評価基準に従って、現像性を評価した。
- 評価基準-
○ : 未露光部には、残渣がまったく確認されなかった。
△ : 未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった。
× : 未露光部に、残渣が著しく確認された。
【0056】
表3においては、露光量が少ないものほど高感度であることを示す。
実施例1、3、4は比較例1、2に比べて、優れた解像度、現像性を示した。実施例2、10、12は、比較例と比べると、優れた感度、解像度および現像性を示している。
【0057】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の光重合開始剤は、光(波長405nm以下の短波長の光、特に405、365nmの波長)に対する感度が高いため、薄膜化することが可能であり、低コストで高品質のパターンを形成することができる。
また、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と本発明のオキシムエステル化合物を光重合開始剤とする感光性樹脂組成物は、前記波長域において優れた感光性及び解像度
、現像性等を有する。
そして本発明の感光性樹脂組成物は、上記波長域の紫外線照射を行うことにより光重合開始剤が活性ラジカルを生じ、エチレン性不飽和化合物が反応して効率よく重合することから、光硬化性インキ、感光性印刷版、ドライフィルムレジスト、カラーフィルターの分野に用いることができる。