(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】直流電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240711BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240711BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240711BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20240711BHJP
B60L 53/53 20190101ALI20240711BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H02J7/00 P
H02J7/10 P
H02J7/10 B
H02J1/00 306B
B60L53/30
B60L53/53
(21)【出願番号】P 2020203500
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小松 史弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐喜
(72)【発明者】
【氏名】竹野 和彦
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102916(JP,A)
【文献】特開2016-220461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00-1/16
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部指令に基づいた蓄電池の充放電動作を行う電気自動車と接続されて、直流電力を使用する負荷に対して供給する電力を制御するシステムであって、
商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記直流電力を消費する負荷と、
蓄電池の電圧を確認する蓄電池電圧確認部と、
前記整流器から出力される電力の電圧を調整する電圧調整部と、
前記負荷における電力需要と、前記電気自動車との間の充放電動作と、前記蓄電池電圧確認部において確認された前記蓄電池の電圧と、に基づいて選択された、前記商用電源、前記電気自動車、前記蓄電池、および前記負荷の間での電力授受の状態である動作モードに基づいて各部を制御するモード制御部と、を有し、
前記電圧調整部は、前記モード制御部によって選択された動作モードに基づいて、前記整流器から供給する電力の電圧を調整する、直流電源システム。
【請求項2】
前記モード制御部は、前記負荷における電力需要と、前記電気自動車との間の充放電動作と、前記蓄電池の電圧と、に基づいて前記動作モードを選択する、請求項1に記載の直流電源システム。
【請求項3】
前記モード制御部は、前記電気自動車との間の充放電の状態が変化したことを契機として、前記動作モードを選択する、請求項2に記載の直流電源システム。
【請求項4】
前記電圧調整部は、前記商用電源からの電力を前記蓄電池に対して給電しない動作モードが指定された場合に、前記蓄電池の電圧に対して前記整流器から出力される電力の電圧値が微量だけ大きくなるように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載の直流電源システム。
【請求項5】
前記電圧調整部は、前記商用電源からの電力を前記負荷への給電に使用しない動作モードが指定された場合に、前記蓄電池の電圧に対して前記整流器から出力される電力の電圧値が小さくなるように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載の直流電源システム。
【請求項6】
前記電圧調整部は、前記商用電源からの電力を前記負荷への給電に使用する動作モードが指定された場合に、前記蓄電池の電圧に対して前記整流器から出力される電力の電圧値が十分に大きくなるように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載の直流電源システム。
【請求項7】
前記電圧調整部は、前記電気自動車からの放電を行う場合、前記電気自動車からの出力電圧を超えないように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する、請求項1~5のいずれか一項に記載の直流電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
負荷に対する電力の供給に電気自動車用電池を利用する分散型電源システムが知られている。例えば、特許文献1に記載の電源システムでは、系統電源からの電力供給量を一定化しつつ、停電時には蓄電池・自動車用電池等を有機的に使用し負荷への電力を供給する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、耐災害性強化として、災害時にも電力が途絶えない通信インフラへの要求が高まっている。そのため、無線基地局への非常時の電源供給源として、蓄電池だけでなく電気自動車等の電池を用いることが検討されている。しかしながら、バックアップ電源としての蓄電池において一定の蓄電量を確保し、さらに電気自動車用電池における充放電を適切に行いながら電力の調整を行う方法については検討されていなかった。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る直流電源システムは、外部指令に基づいた蓄電池の充放電動作を行う電気自動車と接続されて、直流電力を使用する負荷に対して供給する電力を制御するシステムであって、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力を消費する負荷と、蓄電池の電圧を確認する蓄電池電圧確認部と、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する電圧調整部と、前記負荷における電力需要と、前記電気自動車との間の充放電動作と、前記蓄電池電圧確認部において確認された前記蓄電池の電圧と、に基づいて選択された、前記商用電源、前記電気自動車、前記蓄電池、および前記負荷の間での電力授受の状態である動作モードに基づいて各部を制御するモード制御部と、を有し、前記電圧調整部は、前記モード制御部によって選択された動作モードに基づいて、前記整流器から供給する電力の電圧を調整する。
【0007】
上記の直流電源システムによれば、負荷における電力需要と、電気自動車との間の充放電動作と、蓄電池電圧確認部において確認された蓄電池の電圧と、に基づいて選択された動作モードに基づいて、整流器から供給する電力の電圧が調整される。その結果、選択された動作モードに基づいて電力の授受が行われるように制御される。外部指令に基づいた電気自動車用の蓄電池に係る充放電を行いながら、蓄電池の電圧に基づいて動作モードが選択されるため、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る直流電源システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、直流電源システムにおけるコンバータ装置の機能の一例を説明するブロック図である。
【
図3】
図3は、直流電源システムにおけるモード制御部の機能の一例を説明するブロック図である。
【
図4】
図4は、モード制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、直流電源システムにおける充放電切替部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、直流電源システムにおけるモード制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、電気自動車の放電時における動作モードの例を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、動作モードM1時の電力の流れの一例を示す図であり、
図8(b)は、動作モードM2時の電力の流れの一例を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、動作モードM3時の電力の流れの一例を示す図であり、
図9(b)は、動作モードM4時の電力の流れの一例を示す図である。
【
図10】
図10(a)は、動作モードM5時の電力の流れの一例を示す図であり、
図10(b)は、動作モードM6時の電力の流れの一例を示す図であり、
図10(c)は、動作モードM7時の電力の流れの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、電気自動車の放電時における動作モードの選択に関する処理の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、電気自動車の充電時における動作モードの例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図13(a)は、動作モードM8時の電力の流れの一例を示す図であり、
図13(b)は、動作モードM9時の電力の流れの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、
図14(a)は、動作モードM10時の電力の流れの一例を示す図であり、
図14(b)は、動作モードM11時の電力の流れの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、電気自動車の充電時における動作モードの選択に関する処理の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、電気自動車が待機状態の場合の動作モードの例を示す図である。
【
図17】
図17(a)は、動作モードM12時の電力の流れの一例を示す図であり、
図17(b)は、動作モードM13時の電力の流れの一例を示す図である。
【
図18】
図18(a)は、動作モードM14時の電力の流れの一例を示す図であり、
図18(b)は、動作モードM15時の電力の流れの一例を示す図である。
【
図19】
図19は、電気自動車が待機状態の場合の動作モードの選択に関する処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
[直流電源システム]
図1は、一実施形態に係る直流電源システムの概要を示すブロック図である。
図1に示すように、直流電源システム1は、整流器2と、負荷3と、蓄電池4と、コンバータ装置5と、を含んで構成される。また、整流器2は商用電源6に接続され、コンバータ装置5は電気自動車7に接続され得る。直流電源システム1は、商用電源6からの電力(外部電力)を利用可能に構成されている。直流電源システム1内の電力の移動を制御する制御装置は、コンバータ装置5に含まれる制御部52として実現される。
【0012】
整流器2は、商用電源6からの交流電力を直流電力に変換する。また、負荷3は、直流電力を受けて動作する負荷である。本実施形態では、負荷3は通信装置であって、例えば、無線基地局を含んで構成される。負荷3は、一般家庭またはオフィスのような負荷と比較して、特に、直流電力を消費する点が相違する。
【0013】
蓄電池4は、直流電源システム1では、商用電源6または電気自動車7から供給される電力のうち負荷3で消費されない電力(余剰電力)を充電する。また、蓄電池4は、放電によって負荷3または電気自動車7に対して電力を供給することも可能である。蓄電池4として、例えば、リチウムイオン蓄電池を用いることができる。
【0014】
なお、以下の実施形態において「電気自動車7」とは、電気自動車7に設けられている電気自動車用蓄電池をいう。電気自動車は自車の運転等に使用するための蓄電池を搭載している。電気自動車が直流電源システム1に接続された場合、直流電源システム1はこの蓄電池の充電・放電に関与し得る。以下の実施形態では、電気自動車に搭載された蓄電池のことを直流電源システム1に設けられた「蓄電池4」と区別するため「電気自動車7」として説明する場合がある。
【0015】
災害によって停電が発生し、商用電源6からの電力が利用できなくなったときには、電気自動車7および蓄電池4をバックアップ用電源として用いることで、負荷3へ直流電力を供給することができる。
【0016】
電気自動車7は、内部に蓄電池を有している。したがって、電気自動車7は、蓄電池からの電力を負荷3あるいは蓄電池4へ供給することができるため、直流電源システム1における電力供給源として利用することができる。一方、電気自動車7は、直流電源システム1における負荷3とは異なる負荷に対しても電力を供給することが求められ得る。また、電気自動車7自体が移動可能な程度に電力を確保しておくことも求められ得る。電気自動車7は、コンバータ装置5を介して直流電源システム1に対して接続することで、電力の授受を行うことが可能となる。
【0017】
コンバータ装置5は、直流電源システム1が電気自動車7との間で電力を授受する際に、電流・電圧を調整する機能を有する。直流電源システム1(コンバータ装置5)と電気自動車7との間では高電圧で電力の授受が行われ得る。一方、直流電源システム1内では、低い電圧(例えば48V)での送電を想定したバスラインが設けられている。したがって、コンバータ装置において電圧を調整した上で、電気自動車7との間で電力の授受を行う。
【0018】
なお、本実施形態では、直流電源システム1における各部の電力の授受を制御する制御装置がコンバータ装置5内に設けられる場合について説明する。したがって、コンバータ装置5は、
図2に示すように、実質的には、電気自動車7との電力の授受を想定した電力変換に加えて、整流器2、負荷3、蓄電池4、および電気自動車7における電力の授受の調整を行っている。
【0019】
次に、
図2を参照しながら、直流電源システム1におけるコンバータ装置の構成を中心に各部との連携について説明する。
【0020】
コンバータ装置5は、整流器2との接続端子として端子T1が設けられる。同様に、負荷3との接続端子として端子T2が設けられ、蓄電池4との接続端子として端子T3が設けられ、電気自動車7との接続端子として端子T4が設けられる。コンバータ装置5と、整流器2、負荷3、蓄電池4、電気自動車7との間にはこれらを電気的に接続するバスラインが設けられる。バスラインの電圧(バス電圧)は、負荷3の定格電圧(たとえば57V)を超えない電圧(たとえば48V)となるように制御されてもよい。端子T1~T4には、自端子を通過する電力の電圧を計測する機能が設けられていてもよい。例えば、端子T2において計測される電力電圧の計測値は、モード制御部56へ送られてもよい。
【0021】
なお、コンバータ装置5内では、整流器2、負荷3、蓄電池4、電気自動車7の間で電力の授受が可能なように、各端子T1~T4からのバスライン(バス)が点Pの1点に集まるように配線されている。そのため、整流器2を介して商用電源6から供給される電力は、負荷3、蓄電池4、および電気自動車7のいずれにも供給可能である。同様に、蓄電池4から供給される電力は負荷3および電気自動車7のいずれにも供給可能であり、電気自動車7から供給される電力は負荷3および蓄電池4のいずれにも供給可能である。
【0022】
コンバータ装置5は、コンバータ機能部51(コンバータ部)と制御部52とを含んで構成される。コンバータ機能部51は、直流電源システム1が電気自動車7との間で電力を授受する際に、電流・電圧を調整する本来のコンバータとしての機能を発揮する部分である。さらに、コンバータ機能部51は、充放電切替部53と、DC/DC変換部54と、を含んで構成される。
【0023】
充放電切替部53は、制御部52からの指令に基づいて、電気自動車7との間での充電・放電を切り替える機能を有する。
【0024】
DC/DC変換部54は、制御部52からの指令に基づいて、電気自動車7との間で授受する電力の電流・電圧の調整(DC/DC変換)を行う機能を有する。
【0025】
制御部52は、蓄電池4、整流器2、および電気自動車7から蓄電状況等各部の動作に係る情報を取得し、取得した情報に基づいて、各部の充放電および負荷3への電力供給を制御する機能を有する。制御部52は、蓄電池電圧確認部55、モード制御部56、電圧調整部57を含んで構成される。
【0026】
蓄電池電圧確認部55は、蓄電池4の端子電圧(端子電圧VLIB;以降では蓄電池電圧VLIBという場合がある。)を計測する。蓄電池4の端子電圧は、蓄電量としてのSOC(State Of Charge;残容量)と関係している。蓄電池電圧確認部55は、蓄電池4の残容量に関係する情報として蓄電池4の端子電圧を計測する。以下の説明では、蓄電池4の端子電圧を「蓄電池電圧」という場合がある。
【0027】
モード制御部56は、電気自動車7の充放電の状態と、蓄電池4の端子電圧とに基づいて、直流電源システム1における電力の移動を規定する動作モードを設定する機能を有する。動作モードの詳細については後述する。
【0028】
電圧調整部57は、モード制御部56からの指令に基づいて、整流器2から供給される直流電力の電圧を調整する機能を有する。直流電力の電圧を調整することによって、直流電源システム1における電力の移動が制御され得る。
【0029】
次に、モード制御部56について
図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、モード制御部56は、EV動作情報取得部501、蓄電池電圧情報取得部502、動作モード決定部503、整流器電圧指令部504を含んで構成される。
【0030】
EV動作情報取得部501は、電気自動車7(における蓄電池)の充電・放電・待機に係る動作情報を取得する機能を有する。電気自動車7は、直流電源システム1に接続した状態での蓄電池からの放電によって、負荷3に対して電力供給が可能である。一方、電気自動車7は、他の負荷が設けられている場所へ移動して、他の負荷に対して電力を供給することも求められ得る。そのため、電気自動車7ではある程度の蓄電量を確保しておくことが求められる。電気自動車7は、外部指令等によって、直流電源システム1に接続される際の動作内容(充電・放電・待機)が予め規定されている。外部指令とは、例えば、電気自動車7の使用者(ユーザ)による指令であってもよいし、電気自動車7の内部に設けられた判断ロジック等に基づいて決定されたものであってもよい。ここでの「外部」とは、直流電源システム1内ではないことを示している。直流電源システム1は、この外部指令に基づいた充放電を電気自動車7に対して行うことが求められる。
【0031】
電気自動車7では、蓄電池の蓄電量の下限(最低限の蓄電量)および上限(最大の蓄電量)も予め決められていて、その範囲で充電・放電等が行なれてもよい。
【0032】
蓄電池電圧情報取得部502は、蓄電池4における蓄電量をモニタリングする機能を有する。蓄電池電圧情報取得部502は、蓄電池電圧確認部55における電圧(蓄電池電圧)の計測結果を取得する。この計測結果は、動作モード決定部503における動作内容の決定(モード制御部56からの指令内容の決定)に利用される。
【0033】
動作モード決定部503は、上記のEV動作情報取得部501、蓄電池電圧情報取得部502から送られる情報に基づいて、直流電源システム1の動作モードを決定する機能を有する。動作モードの種類および動作モードをどのように決定するかについての詳細は後述する。
【0034】
整流器電圧指令部504は、動作モード決定部503において決定された動作モードに基づいて、電圧調整部57に対して電圧に係る指令を行う機能を有する。電圧調整部57に対する指令とは、整流器2から直流電源システム1へ供給される直流電力の電圧を指定する情報である。整流器2からの出力電圧(整流器出力電圧VRF;以降では整流器電圧VRFという場合がある。)は、整流器2を構成する回路を制御することによって調整可能である。整流器電圧指令部504が電圧調整部57に対して出力電圧の設定の指令を送信すると、電圧調整部57は、整流器2内の回路の制御を変更する。一例として整流器2に対して所定の出力電圧となるように回路変更の指令を行う。これにより、整流器2では、負荷3側へ向けて出力する電力の電圧が設定される。このとき、整流器電圧指令部504は、端子T2で計測される整流器2からの電力の電圧を監視しながら、電圧調整部57への指令の内容を変更する構成としてもよい。
【0035】
上記の直流電源システム1では、一例として、負荷3が通信インフラの一部を担う通信装置であり、ある程度一定量の電力を常時消費することを想定している。したがって、商用電源6からの電力を活用して負荷3に対して一定量の電力を継続して供給することが必要である。一方、蓄電池4は災害によって停電が発生したときに負荷3に長時間の電力供給を可能とする(非常時にも一定の時間通信サービスを継続できるようにする)ためのバックアップ電源として機能し得る。したがって、災害時の非常用電源として利用できるように、蓄電池4のSOCをある程度高くしておくことが求められる。
【0036】
また、直流電源システム1は、電気自動車7が接続された場合には、電気自動車7における充電・放電についても制御することになる。電気自動車7は、自動車として移動するための電力および移動先での負荷への放電に必要な電力を蓄電することが求められる。一方、電気自動車7の蓄電量が大きな状態では放電することによって、直流電源システム1に対して電力の供給も可能である。したがって、電気自動車7のSOCもある程度の範囲に調整することが求められる。
【0037】
そこで、直流電源システム1では、電気自動車7が直流電源システム1に接続した状態で行う動作(充電・放電・待機のいずれか)に基づいて、蓄電池4における蓄電量を考慮しながら、商用電源6からの電力電圧を調整することによって、電気自動車7、蓄電池4、および負荷3の間の電力の移動を制御する。電気自動車7は、直流電源システム1に接続した際に、電力授受の状態をどのようにするか(充電・放電・待機のどの状態とするか)が予め決定される。そのため、直流電源システム1では、この情報に基づいて、電気自動車7の電力授受の状態を維持しながら、蓄電池4の充放電および負荷3への電力供給を制御する。
【0038】
図4を参照して、モード制御部56のハードウェア構成について説明する。
図4に示されるように、モード制御部56は、物理的には、プロセッサC1、メモリC2、ストレージC3、通信装置C4、入力装置C5、出力装置C6、バスC7などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0039】
なお、以下の説明で、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。モード制御部56のハードウェア構成は、
図4に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよい。また、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0040】
モード制御部56における各機能は、プロセッサC1、メモリC2などのハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、プロセッサC1が演算を行い、通信装置C4による通信、メモリC2、およびストレージC3におけるデータの読み出しおよび/又は書き込みを制御することにより実現される。
【0041】
プロセッサC1は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサC1は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。また、プロセッサC1は、GPU(Graphics Processing Unit)を含んで構成されてもよい。例えば、
図3に示した各機能部(501~504)などは、プロセッサC1により実現されてもよい。
【0042】
また、プロセッサC1は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージC3および/又は通信装置C4からメモリC2に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、モード制御部56の各機能部(501~504)は、メモリC2に格納され、プロセッサC1で動作する制御プログラムによって実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサC1で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサC1により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサC1は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0043】
メモリC2は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリC2は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリC2は、本開示の一形態に係る制御方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0044】
ストレージC3は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージC3は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリC2および/又はストレージC3を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0045】
通信装置C4は、有線および/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0046】
入力装置C5は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置C6は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置C5および出力装置C6は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0047】
また、プロセッサC1やメモリC2などの各装置は、情報を通信するためのバスC7で接続される。バスC7は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0048】
また、制御部52は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサC1は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0049】
[充放電制御の概要]
(充放電切替部の動作)
図5は、充放電切替部53による電気自動車7の充放電設定に応じた処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、例えば直流電源システム1に対して電気自動車7を接続した際に行われる。
【0050】
ステップS01では、充放電切替部53において、直流電源システム1に接続された電気自動車7について電力授受の動作指令があるかが確認される。電力授受の動作指令とは、例えば、電気自動車7への放電または充電を行うように指示している情報である。また、この動作指令が存在しない場合(S01-NO)、電気自動車7は直流電源システム1に接続されていたとしても負荷3等の他の装置との間で電力の授受を行わない待機状態とされる。動作指令がある場合(S01-YES)、ステップS02として、動作指令が放電指令であるかの判定が行われる。
【0051】
電気自動車7に係る動作指令が放電指令である場合(S02-YES)、ステップS03において、充放電切替部53は、電気自動車7からの放電を行うための動作を行う(放電動作)。一方、電気自動車7に係る動作指令が放電指令ではない、すなわち充電指令である場合(S02-NO)、ステップS04において、充放電切替部53は、電気自動車7からの充電を行うための動作を行う(充電動作)。
【0052】
このように、充放電切替部53は、直流電源システム1に接続した電気自動車7の動作指令の有無およびその種類に応じた動作を行う。その上で、ステップS05として、充放電切替部53からモード制御部56に対して電気自動車7の動作設定に係る信号を送信する。
【0053】
(モード制御部の動作)
図6は、モード制御部56による制御によって実行される動作の一例を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、例えば直流電源システム1に対して電気自動車7を接続した後に、充放電切替部53からモード制御部56に対して送信された信号を受信した際に行われる。
【0054】
まず、ステップS11では、モード制御部56のEV動作情報取得部501において取得された充放電切替部53からの情報に基づいて、電気自動車7についての充放電に係る動作指令があるかが確認される。
【0055】
電気自動車7についての充放電に係る動作指令がある場合(S11-YES)、ステップS12として、動作指令が放電指令であるかの判定が行われる。電気自動車7に係る動作指令が放電指令である場合(S12-YES)、ステップS13において、モード制御部56は、電気自動車7から放電を行う場合の複数の動作モードから、1つの動作モードを選択する。一方、電気自動車7に係る動作指令が放電指令ではない、すなわち充電指令である場合(S12-NO)、ステップS14において、モード制御部56は、電気自動車7から放電を行う場合の複数の動作モードから、1つの動作モードを選択する。
【0056】
なお、動作指令が存在しない場合(S11-NO)、電気自動車7は直流電源システム1に接続されていたとしても負荷3等の他の装置との間で電力の授受を行わない待機状態とされる。この場合、ステップS15において、モード制御部56は、電気自動車7が待機状態の場合の複数の動作モードから、1つの動作モードを選択する。
【0057】
上記の手順で動作モードを選択した後、ステップS16において、モード制御部56の整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ向けて、選択された動作モードに対応した信号を伝達する。電圧調整部57は、このステップS16で取得した動作モードに対応した信号に基づいて、整流器2からの出力電圧が所定の範囲となるように制御を行う。
【0058】
このように、モード制御部56は、直流電源システム1に接続した電気自動車7の動作指令の有無およびその種類に応じて、動作モードを選択する。動作モードを選択する際には、蓄電池電圧確認部55において計測される蓄電池電圧が考慮される。以下、電気自動車7の充放電状態に応じて設定される動作モードについて説明する。
【0059】
(EV放電時の動作モード)
図7は、電気自動車7から放電を行う場合の直流電源システム1における動作モードの一覧を示す図である。また、
図8~
図10では、各動作モードにおける電力の流れを示している。
【0060】
図7に示すように、電気自動車7から放電を行うことを前提とした場合の動作モードとして、M1~M7の7つの状態が想定され得る。
図7では、モードとして上記のM1~M7が示されていて、各動作モードに対応付けて電力の流れおよび補足説明が示されている。電力の流れとは、直流電源システム1およびその周辺のどの装置からどの装置へ電力が流れるかを示している。また、補足説明として、各モードの電力流れを簡単に示したものが記載されている。なお、
図7(および後述の
図12、
図16)では、整流器2をRFとし、電気自動車7をEVとし、蓄電池4をLIBとし、負荷3をLOADとして示す場合がある。
【0061】
動作モードM1は、
図7においては、電力の流れとして「RF+EV+LIB→LOAD」と記載されている。これは、
図8(a)に示すように、整流器2、電気自動車7(コンバータ5)、蓄電池4の全てから、負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM1は、RF+EVに対してLIBを加えたアシスト運転である。この動作モードM1は、例えば
図8(a)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであり、電気自動車7からの出力電圧が55Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。電圧の数値は一例であり、蓄電池4における蓄電池電圧、電気自動車7からの出力電圧、および整流器2からの出力電圧を上記の関係とすることで、
図8(a)に示す電力の流れが実現される。蓄電池4における蓄電池電圧、電気自動車7からの出力電圧、および整流器2からの出力電圧の設定例が一例であることは、以降で説明する他の動作モードも同様である。なお、電気自動車7からの出力電圧は予め定められているものであり、直流電源システム1側での調整は行わないものとする。
【0062】
動作モードM2は、
図7においては、電力の流れとして「RF+EV→LIB+LOAD」と記載されている。これは、
図8(b)に示すように、整流器2および電気自動車7(コンバータ5)から蓄電池4および負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM2は、RFからLIBへの給電を含むアシスト運転である。この動作モードM2は、例えば
図8(b)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が45Vであり、電気自動車7からの出力電圧が55Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。このときの整流器2からの出力電力と蓄電池4における蓄電池電圧との電圧差が5Vとされているが、この差は両者の間に十分電力差があると判断することができる値である。本実施形態の構成のように48Vの低電圧での送電を想定した構成の場合、3V以上の電圧差は十分に差があると認識ができる程度である。
【0063】
動作モードM3は、
図7においては、電力の流れとして「EV→LIB+LOAD」と記載されている。これは、
図9(a)に示すように、電気自動車7(コンバータ5)から蓄電池4および負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM3は、EVにおける余剰電力をLIBへ給電する運転である。この動作モードM3は、例えば
図9(a)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が45Vであり、電気自動車7からの出力電圧が55Vであるときに、整流器2からの出力電圧を45Vとすることによって実現することができる。この場合、整流器2(商用電源6)からの電力は負荷3への給電等に使用されない。
【0064】
動作モードM4は、
図7においては、電力の流れとして「RF+EV→LOAD」と記載されている。これは、
図9(b)に示すように、整流器2および電気自動車7(コンバータ5)から負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM3は、RFによる負荷への供給をアシストするアシスト運転である。この動作モードM4は、例えば
図9(b)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであり、電気自動車7からの出力電圧が55Vであるときに、整流器2からの出力電圧を52Vとすることによって実現することができる。この場合、整流器2からの電力が蓄電池4へ流れることなく負荷3へ供給され得る。つまり、蓄電池電圧に対して整流器2からの出力電圧が微量だけ(ΔV分)大きくされることで、整流器2からの電力が優先して負荷3へ使用される状態が形成されている。ここでは、電力差が2Vとされているが、この差分はさらに小さく(0.1V~2V程度)てもよい。理想的には、ΔVを0.1V程度に小さくすることで、整流器2からの電力が蓄電池4へ流れることなく負荷3へ供給される状態を形成することができる。
【0065】
動作モードM5は、
図7においては、電力の流れとして「EV+LIB→LOAD」と記載されている。これは、
図10(a)に示すように、電気自動車7(コンバータ5)および蓄電池4から負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM5は、LIBから負荷への給電をアシストするアシスト運転である。この動作モードM5は、例えば
図10(a)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであり、電気自動車7からの出力電圧が55Vであるときに、整流器2からの出力電圧を45Vとすることによって実現することができる。
【0066】
動作モードM6は、
図7においては、電力の流れとして「EV→LOAD」と記載されている。これは、
図10(b)に示すように、電気自動車7(コンバータ5)から負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM6は、EVから負荷への給電のみが行われるEV単独運転である。この動作モードM6は、例えば
図10(b)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであり、電気自動車7からの出力電圧が55Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。
【0067】
動作モードM7は、
図7においては、電力の流れとして「RF→LIB,EV→LOAD」と記載されている。これは、
図10(c)に示すように、整流器2から蓄電池4へ、および、電気自動車7(コンバータ5)から負荷3へ、それぞれ独立して電力を供給することを示している。つまり、動作モードM7は、EVから負荷への給電のみが行われるEV単独運転に加えて、商用電源(RF)によるLIB充電が行われる。この動作モードM7は、例えば
図10(c)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が45Vであり、電気自動車7からの出力電圧が55Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。
【0068】
上記の7つの動作モードのうち、動作モードM1,M3およびM6は、いずれも、「電気自動車7からの出力電圧>蓄電池4における蓄電池電圧=整流器2からの出力電圧」という関係を満たしている。直流電源システム1では、負荷3に供給すべき電力の大きさによってこれらの動作モードの間を遷移し得る。一例として、負荷3で使用する電力が大きな場合には、動作モードM1のように電力が流れるが、電気自動車7からの電力のみを用いて負荷3への給電を行うことができる場合には、動作モードM6のように整流器2からの電力が不要となる。さらに、電気自動車7からの電力のみで蓄電池4の充電および負荷3への給電を行うことができる場合には、動作モードM3のように蓄電池4への充電も行われる。このように、動作モードM1,M3およびM6は、負荷3において消費される電力に応じて遷移し得るモードである。
【0069】
また、動作モードM2,M7については、いずれも、「電気自動車7からの出力電圧>整流器2からの出力電圧>蓄電池4における蓄電池電圧」という関係を満たしている。一例として、負荷3で使用する電力が大きな場合には、動作モードM7のように整流器2からの電力も負荷3へ供給される。一方、負荷3で使用する電力が小さく、電気自動車7からの電力で足りる場合には、動作モードM2のように、整流器2および電気自動車7からの電力が蓄電池4へ流れる。このように、動作モードM2およびM7は、負荷3において消費される電力に応じて遷移し得るモードである。
【0070】
なお、動作モードM4は、例えば、動作モードM6から変更しやすいモードであるといえる。例えば、動作モードM6は、電気自動車7からの電力のみを用いて負荷3への給電を行う状態を示しているが、負荷3での使用電力(電力需要)が大きくなっていった場合、整流器2からの出力電力を微量だけ(例えば、ΔV=0.1~2V程度)大きくし、整流器2からの出力電力の負荷3への供給を追加することで、負荷3への給電を適切に行うことができる。この場合、さらに、負荷3での使用電力が大きくなる場合には、例えば、整流器2からの出力電圧を蓄電池電圧と合わせることで動作モードM1へ遷移させることとしてもよい。
【0071】
動作モードM5についても、例えば、動作モードM6から変更しやすいモードであるといえる。例えば、動作モードM6は、電気自動車7からの電力のみを用いて負荷3への給電を行う状態を示しているが、負荷3での使用電力が大きくなっていった場合、動作モードM5へ変化させることで、蓄電池4からの電力を負荷3への供給に追加することとなり、負荷3への給電を適切に行うことができる。この場合、さらに、負荷3での使用電力が大きくなる場合には、例えば、整流器2からの出力電圧を蓄電池電圧と合わせることで動作モードM1へ遷移させることとしてもよい。また、負荷3での使用電力が低下し、且つ、負荷3への電力が続いたことによって蓄電池電圧が低下した場合には、動作モードM3へ遷移が起き得る。
【0072】
このように、各動作モードM1~M7は、互いに独立するものではなく、負荷3での使用電力等に応じて有機的に変更し得るものである。また、動作モードM1~M7のうち、動作モードM1,M4,M5,M6は、蓄電池電圧が50Vとされていて、蓄電池4からの放電が可能な状態であるといえる。一方、動作モードM2,M3,M7は、蓄電池電圧が45Vとされていて、蓄電池4からの放電が不可能な状態であるといえる。このような状況も考慮して、モード制御部56では動作モードが選択され得る。
【0073】
図11では、一例として、動作モードを予め選んだ上で、整流器2からの出力電圧を指定する場合の手順を示している。
【0074】
まず、ステップS21では、モード制御部56のEV動作情報取得部501において取得された充放電切替部53からの情報に基づいて、放電動作の開始を確認する。
【0075】
次に、ステップS22では、モード制御部56の蓄電池電圧情報取得部502は、蓄電池電圧確認部55における電圧(蓄電池電圧)の計測結果に基づいて、蓄電池4の電圧を確認する。
【0076】
次に、ステップS23では、モード制御部56の動作モード決定部503は、上述の動作モードM1~M7から、現在の直流電源システム1の動作状況に応じて、動作させるモードを選択する。動作させるモードを決定する際には、例えば、負荷3での電力需要(電力の消費状況)も考慮してもよい。負荷3での電力需要に係る情報は、例えば、負荷3からの通知をモード制御部56で取得する構成としてもよい。また、モード制御部56内で予め電力需要に係る予測を行っておくこととしてもよい。
【0077】
このうち、動作モードM2,M7を選択した場合には、ステップS24として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFが十分に(例えば、3V以上)大きくなる(VRF>VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0078】
また、動作モードM5を選択した場合には、ステップS25として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFが小さくなる(VRF<VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0079】
また、動作モードM1,M3,M6を選択した場合には、ステップS26として、蓄電池電圧VLIBと整流器電圧VRFとが同値となる(VRF=VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0080】
さらに、動作モードM4を選択した場合には、ステップS27として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFがわずかに(微量だけ)大きくなる(VRF=VLIB+ΔV)ように、整流器電圧VRFが設定される。このときのΔVは、例えば、0.1V~2V程度とされる。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0081】
動作モードの選択は繰り返し行われてもよい。例えば、ステップS24~S27のいずれかを選択して、電圧調整部57への指令が行われた(ステップS16)とする。その後、所定時間の後に再度蓄電池電圧の確認(ステップS22)~モード選択(ステップS23)を繰り返し、整流器電圧の調整(ステップS16)を行う構成としてもよい。
【0082】
(EV充電時の動作モード)
図12は、電気自動車7において充電を行う場合の直流電源システム1における動作モードの一覧を示す図である。また、
図13および
図14は、各動作モードにおける電力の流れを示している。
【0083】
図12に示すように、電気自動車7から放電を行うことを前提とした場合の動作モードとして、M8~M11の4つの状態が想定され得る。
図12では、モードとして上記のM8~M11が示されていて、各動作モードに対応付けて電力の流れおよび補足説明が示されている。
【0084】
動作モードM8は、
図12においては、電力の流れとして「RF→EV+LIB+LOAD」と記載されている。これは、
図13(a)に示すように、整流器2から、電気自動車7(コンバータ5)、蓄電池4、および負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM8は、電気自動車7だけでなく蓄電池(LIB)も充電を行うモードである。この動作モードM8は、例えば
図13(a)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が45Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。電気自動車7については充電を行うことが規定されているので、出力電圧の設定は存在しない。この点は、動作モードM9~M11も同様である。
【0085】
動作モードM9は、
図12においては、電力の流れとして「RF→EV+LOAD」と記載されている。これは、
図13(b)に示すように、整流器2から電気自動車7(コンバータ5)および負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM9は、蓄電池4(LIB)の充電・放電は行わないモードであり、整流器2による単独運転ともいえる。この動作モードM9は、例えば
図13(b)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであるときに、整流器2からの出力電圧を52Vとすることによって実現することができる。この場合、整流器2からの電力が蓄電池4へ流れることなく負荷3へ供給され得る。つまり、蓄電池電圧に対して整流器2からの出力電圧が微量だけ(ΔV分)大きくされることで、整流器2からの電力が優先して負荷3へ使用される状態が形成されている。ここでは、電力差が2Vとされているが、この差分はさらに小さく(0.1V~2V程度)てもよい。理想的には、ΔVを0.1V程度に小さくすることで、整流器2からの電力が蓄電池4へ流れることなく負荷3へ供給される状態を形成することができる。
【0086】
動作モードM10は、
図12においては、電力の流れとして「RF+LIB→EV+LOAD」と記載されている。これは、
図14(a)に示すように、整流器2および蓄電池4から、電気自動車7(コンバータ5)および負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM10は、蓄電池4によって整流器2からの給電をアシストする運転である。この動作モードM10は、例えば
図14(a)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。
【0087】
動作モードM11は、
図12においては、電力の流れとして「LIB→EV+LOAD」と記載されている。これは、
図14(b)に示すように、蓄電池4から電気自動車7(コンバータ5)および負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM11は、蓄電池4(LIB)によって負荷への給電を行う運転である。この動作モードM11は、例えば
図14(b)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであるときに、整流器2からの出力電圧を45Vとすることによって実現することができる。
【0088】
図15では、一例として、電気自動車7が充電をすることが設定されている条件で、動作モードを予め選んだ上で、整流器2からの出力電圧を指定する場合の手順を示している。
【0089】
まず、ステップS31では、モード制御部56のEV動作情報取得部501において取得された充放電切替部53からの情報に基づいて、充電動作の開始を確認する。
【0090】
次に、ステップS32では、モード制御部56の蓄電池電圧情報取得部502は、蓄電池電圧確認部55における電圧(蓄電池電圧)の計測結果に基づいて、蓄電池4の電圧を確認する。
【0091】
次に、ステップS33では、モード制御部56の動作モード決定部503は、上述の動作モードM8~M11から、現在の直流電源システム1の動作状況に応じて、動作させるモードを選択する。動作させるモードを決定する際には、例えば、負荷3での電力需要(電力の消費状況)も考慮してもよい。
【0092】
このうち、動作モードM8を選択した場合には、ステップS34として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFが十分に(例えば、3V以上)大きくなる(VRF>VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0093】
また、動作モードM11を選択した場合には、ステップS35として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFが小さくなる(VRF<VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0094】
また、動作モードM10を選択した場合には、ステップS36として、蓄電池電圧VLIBと整流器電圧VRFとが同値となる(VRF=VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0095】
さらに、動作モードM9を選択した場合には、ステップS37として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFがわずかに大きくなる(VRF=VLIB+ΔV)ように、整流器電圧VRFが設定される。このときのΔVは、例えば、0.1V~2V程度とされる。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0096】
動作モードの選択は繰り返し行われてもよい。例えば、ステップS34~S37のいずれかを選択して、電圧調整部57への指令が行われた(ステップS16)とする。その後、所定時間の後に再度蓄電池電圧の確認(ステップS32)~モード選択(ステップS33)を繰り返し、整流器電圧の調整(ステップS16)を行う構成としてもよい。
【0097】
(EV待機時の動作モード)
図16は、電気自動車7が充放電を行わない(待機状態である)場合の直流電源システム1における動作モードの一覧を示す図である。また、
図17および
図18は、各動作モードにおける電力の流れを示している。
【0098】
図16に示すように、電気自動車7が待機状態であることを前提とした場合の動作モードとして、M12~M15の4つの状態が想定され得る。
図16では、モードとして上記のM12~M15が示されていて、各動作モードに対応付けて電力の流れおよび補足説明が示されている。
【0099】
動作モードM12は、
図16においては、電力の流れとして「RF→LIB+LOAD」と記載されている。これは、
図17(a)に示すように、整流器2から、蓄電池4および負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM12は、負荷3へ給電しながら蓄電池(LIB)の充電を行うモードである。この動作モードM12は、例えば
図17(a)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が45Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。電気自動車7については待機状態として充放電を行わないことが規定されているので、電気自動車7との間での電力の授受は行われない。この点は、動作モードM12~M15も同様である。
【0100】
動作モードM13は、
図16においては、電力の流れとして「RF→LOAD」と記載されている。これは、
図17(b)に示すように、整流器2から負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM13は、蓄電池4(LIB)の充電・放電は行わないモードであり、整流器2による単独運転ともいえる。この動作モードM13は、例えば
図17(b)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであるときに、整流器2からの出力電圧を52Vとすることによって実現することができる。この場合、整流器2からの電力が蓄電池4へ流れることなく負荷3へ供給され得る。つまり、蓄電池電圧に対して整流器2からの出力電圧が微量だけ(ΔV分)大きくされることで、整流器2からの電力が優先して負荷3へ使用される状態が形成されている。ここでは、電力差が2Vとされているが、この差分はさらに小さく(0.1V~2V程度)てもよい。理想的には、ΔVを0.1V程度に小さくすることで、整流器2からの電力が蓄電池4へ流れることなく負荷3へ供給される状態を形成することができる。
【0101】
動作モードM14は、
図16においては、電力の流れとして「LIB→LOAD」と記載されている。これは、
図18(a)に示すように、蓄電池4から負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM14は、蓄電池4によって負荷3への給電を行う単独運転ともいえる。この動作モードM14は、例えば
図18(a)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであるときに、整流器2からの出力電圧を45Vとすることによって実現することができる。なお、動作モードM14は、例えば、停電等が生じることによって、整流器2からの送電が途絶えるような場合(出力電圧が0Vとなるような場合)にも動作し得るモードである。したがって、動作モードM14については、例えば、整流器2からの送電が不能となる場合に自動的に設定が変更される構成とされていてもよい。
【0102】
動作モードM15は、
図16においては、電力の流れとして「RF+LIB→LOAD」と記載されている。これは、
図18(b)に示すように、整流器2および蓄電池4から負荷3へ向けて電力を供給することを示している。つまり、動作モードM15は、蓄電池4(LIB)によって整流器2から負荷3への給電をアシストする運転である。この動作モードM15は、例えば
図18(b)に示すように、蓄電池4における蓄電池電圧が50Vであるときに、整流器2からの出力電圧を50Vとすることによって実現することができる。
【0103】
図19では、一例として、電気自動車7が待機する(充放電を行わない)ことが設定されている条件で、動作モードを予め選んだ上で、整流器2からの出力電圧を指定する場合の手順を示している。
【0104】
まず、ステップS41では、モード制御部56のEV動作情報取得部501において取得された充放電切替部53からの情報に基づいて、充放電動作を行わないこと(待機状態とすること)を確認する。
【0105】
次に、ステップS42では、モード制御部56の蓄電池電圧情報取得部502は、蓄電池電圧確認部55における電圧(蓄電池電圧)の計測結果に基づいて、蓄電池4の電圧を確認する。
【0106】
次に、ステップS43では、モード制御部56の動作モード決定部503は、上述の動作モードM12~M15から、現在の直流電源システム1の動作状況に応じて、動作させるモードを選択する。動作させるモードを決定する際には、例えば、負荷3での電力需要(電力の消費状況)も考慮してもよい。負荷3での電力需要に係る情報は、例えば、負荷3からの通知をモード制御部56で取得する構成としてもよい。また、モード制御部56内で予め電力需要に係る予測を行っておくこととしてもよい。
【0107】
このうち、動作モードM12を選択した場合には、ステップS44として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFが十分に(例えば、3V以上)大きくなる(VRF>VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0108】
また、動作モードM14を選択した場合には、ステップS45として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFが小さくなる(VRF<VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0109】
また、動作モードM15を選択した場合には、ステップS46として、蓄電池電圧VLIBと整流器電圧VRFとが同値となる(VRF=VLIB)ように、整流器電圧VRFが設定される。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0110】
さらに、動作モードM13を選択した場合には、ステップS47として、蓄電池電圧VLIBに対して整流器電圧VRFがわずかに大きくなる(VRF=VLIB+ΔV)ように、整流器電圧VRFが設定される。このときのΔVは、例えば、0.1V~2V程度とされる。設定された整流器電圧VRFが整流器電圧指令部504から電圧調整部57へ指令として送信され、電圧調整部57において整流器電圧の調整が行われる(ステップS16)。
【0111】
動作モードの選択は繰り返し行われてもよい。例えば、ステップS44~S47のいずれかを選択して、電圧調整部57への指令が行われた(ステップS16)とする。その後、所定時間の後に再度蓄電池電圧の確認(ステップS42)~モード選択(ステップS43)を繰り返し、整流器電圧の調整(ステップS16)を行う構成としてもよい。
【0112】
[作用]
上記の直流電源システム1は、外部指令に基づいた蓄電池の充放電動作を行う電気自動車7と接続される。この状態で、負荷3における電力需要と、電気自動車7との間の充放電動作と、蓄電池電圧確認部55において確認された蓄電池4の電圧と、に基づいて選択された動作モードに基づいて、整流器2から供給する電力の電圧が調整される。その結果、選択された動作モードに基づいて、直流電源システム1内で電力の授受が行われるように制御される。外部指令に基づいた電気自動車7用の蓄電池に係る充放電を行いながら、蓄電池4の電圧に基づいて動作モードが選択されるため、蓄電池4および電気自動車7用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷3への安定した電力供給が可能となる。
【0113】
上述のように、例えば商用電源6からの電力供給が安定しない状況においても負荷3への安定した電力供給が求められる場合、蓄電池4等のバックアップ電源を確保することが検討される。バックアップ電源として電気自動車7の蓄電池を活用することが検討され得る。しかしながら、電気自動車7は移動可能であるという特性を生かした運用が求められるため、電気自動車7の蓄電池における蓄電量もある程度確保しておくことが求められる。
【0114】
上記のような環境では、商用電源6からの電力供給が存在する状況においても、蓄電池4および電気自動車7の蓄電量の適切な管理が求められる。しかしながら、電気自動車7が充電および放電のどちらを行う可能性もあるなかで、負荷3への電力供給を安定して継続しながら、蓄電池4および電気自動車7における充放電をどのように調整するかについて詳細は検討されていなかった。これに対して、上記の直流電源システム1によれば、外部指令に基づいた電気自動車7の蓄電池の充放電動作を行う状態で、蓄電池4の電圧にも基づいて、電力の移動に係る動作モードが設定され得る。そして、その動作モードを実行するために、整流器2からの出力電圧が調整され得る。そのため、蓄電池4および電気自動車7用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷3への安定した電力供給が可能となる。
【0115】
ここで、直流電源システム1のモード制御部56は、負荷3における電力需要と、電気自動車7との間の充放電動作と、蓄電池4の電圧と、に基づいて動作モードを選択してもよい。モード制御部56において、負荷3における電力需要と、電気自動車7との間の充放電動作と、蓄電池4の電圧と、に基づいて動作モードを選択することによって、例えば、電力需要や電気自動車7の充放電動作が変更された場合に、モード制御部56によって動作モードの選択を行うことが可能となる。したがって、例えば、システムの管理者等が関与しないタイミングであっても、動作モードの変更を適切に行うことができ、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能となる。
【0116】
なお、モード制御部56は、電気自動車7との間の充放電の状態が変化したことを契機として、動作モードを選択してもよい。上述のように、電気自動車7の充放電状態が変化すると、直流電源システム1内での電力の流れの変更が必要となる。特に、電気自動車7との間での電力の移動を想定した動作モードとしていた場合、変更する必要が生じる。そこで、充放電の状態が変化したことを契機として動作モードを改めて選択することにより、動作モードの変更を適切に行うことができる。
【0117】
なお、電圧調整部57は、商用電源6からの電力を蓄電池4に対して給電しない動作モードが指定された場合には、蓄電池4の電圧に対して前記整流器から出力される電力の電圧値が微量だけ(ΔV)大きくなるように、整流器2から出力される電力の電圧を調整する態様としてもよい。この場合、整流器2から出力される電力を蓄電池4に対して給電せずに他の装置へ供給することが可能となる。
【0118】
また、電圧調整部57は、商用電源6からの電力を負荷3への給電に使用しない動作モードが指定された場合に、蓄電池4の電圧に対して整流器2から出力される電力の電圧値が小さくなるように、整流器から出力される電力の電圧を調整してもよい。この場合、商用電源6に対して接続された状態であっても、商用電源6からの電力供給を行わずに、直流電源システム1内での電力の移動を行うことができる。
【0119】
電圧調整部57は、商用電源6からの電力を負荷3への給電に使用する動作モードが指定された場合に、蓄電池4の電圧に対して整流器2から出力される電力の電圧値が十分に(例えば、3V以上)大きくなるように、整流器2から出力される電力の電圧を調整してもよい。この場合、整流器2から出力される電力を負荷3へ向けて給電することが可能となる。
【0120】
電圧調整部57は、電気自動車7からの放電を行う場合、電気自動車7からの出力電圧を超えないように、整流器2から出力される電力の電圧を調整してもよい。この場合、電気自動車7からの放電動作を維持した状態で、整流器2から出力される電力を直流電源システム1内で移動させることができる。
【0121】
[変形例]
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく修正および変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0122】
例えば、上記実施形態では、直流電源システム1の負荷3が通信装置である場合について説明したが、負荷3は通信装置に限定されるものではない。
【0123】
また、上記実施形態の直流電源システム1では、モード選択をモード制御部56において行う場合について説明したが、動作モードの選択自体は、直流電源システム1の使用者(ユーザ)が行う構成としてもよい。つまり、動作モードの選択は手動で行われてもよい。その場合、モード制御部56は、EV動作情報取得部501および蓄電池電圧情報取得部502において取得された情報を例えば、ユーザに対して提示することで、動作モードの指定を受ける。そして、指定された動作モードに基づいて、整流器電圧指令部504が電圧調整部57に対して整流器2からの出力電圧の調整を指示する。このような構成とすることで、例えば、直流電源システム1の動作状況等を考慮してユーザが強制的に動作モードを変更させることも可能となる。また、手動による(ユーザによる)動作モードの指定と、動作モード決定部503による動作モードの決定(選択)と、の両方を組み合わせて、状況に応じてどちらを使用するか変更する構成としてもよい。
【0124】
例えば、モード制御部56は、所定時間が経過するとタイムアウトによって動作を終了させる構成を有していてもよい。また、タイマー利用または手動によって動作を終了してもよい。
【0125】
また、上記実施形態の直流電源システム1では、モード制御部56を含む制御部52がコンバータ装置5に設けられる場合について説明したが、制御部52は、コンバータ機能部51とは独立して設けられていてもよい。
【0126】
また、制御部52を構成する各部は1つの装置の内部に設けられていなくてもよい。
【0127】
[その他]
上記実施形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェアおよびソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。また、本実施形態で説明した「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。
【0128】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、割り振り(assigning)などがあるが、これらに限られない。たとえば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)や送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0129】
本開示において説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0130】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0131】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0132】
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0133】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0134】
また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)および無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術および無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0135】
本開示において説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0136】
本開示において使用する「システム」および「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0137】
本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0138】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、又はこれらのあらゆる変形は、2又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的なあらゆる接続又は結合を意味し、互いに「接続」又は「結合」された2つの要素間に1又はそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合又は接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用する場合、2つの要素は、1又はそれ以上の電線、ケーブルおよびプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域および光(可視および不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」又は「結合」されると考えることができる。
【0139】
本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0140】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」およびそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0141】
本開示において、例えば、英語でのa,anおよびtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0142】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【0143】
[付記]
本開示の一形態に係る直流電源システムは、外部指令に基づいた蓄電池の充放電動作を行う電気自動車と接続されて、直流電力を使用する負荷に対して供給する電力を制御するシステムであって、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力を消費する負荷と、蓄電池の電圧を確認する蓄電池電圧確認部と、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する電圧調整部と、前記負荷における電力需要と、前記電気自動車との間の充放電動作と、前記蓄電池電圧確認部において確認された前記蓄電池の電圧と、に基づいて選択された、前記商用電源、前記電気自動車、前記蓄電池、および前記負荷の間での電力授受の状態である動作モードに基づいて各部を制御するモード制御部と、を有し、前記電圧調整部は、前記モード制御部によって選択された動作モードに基づいて、前記整流器から供給する電力の電圧を調整する。
【0144】
上記の直流電源システムによれば、負荷における電力需要と、電気自動車との間の充放電動作と、蓄電池電圧確認部において確認された蓄電池の電圧と、に基づいて選択された動作モードに基づいて、整流器から供給する電力の電圧が調整される。その結果、選択された動作モードに基づいて電力の授受が行われるように制御される。外部指令に基づいた電気自動車用の蓄電池に係る充放電を行いながら、蓄電池の電圧に基づいて動作モードが選択されるため、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能となる。
【0145】
前記モード制御部は、前記負荷における電力需要と、前記電気自動車との間の充放電動作と、前記蓄電池の電圧と、に基づいて前記動作モードを選択する態様としてもよい。
【0146】
モード制御部において、負荷における電力需要と、電気自動車との間の充放電動作と、蓄電池の電圧と、に基づいて動作モードを選択することによって、例えば、電力需要や電気自動車の充放電動作が変更された場合に、モード制御部によって動作モードの選択を行うことが可能となる。したがって、例えば、システムの管理者等が関与しないタイミングであっても、動作モードの変更を適切に行うことができ、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能となる。
【0147】
前記モード制御部は、前記電気自動車との間の充放電の状態が変化したことを契機として、前記動作モードを選択する態様としてもよい。
【0148】
電気自動車との間の充放電の状態が変化すると、直流電源システム内での電力の流れの変更が必要となる。そこで、充放電の状態が変化したことを契機として動作モードを改めて選択することにより、動作モードの変更を適切に行うことができ、蓄電池および電気自動車用電池における蓄電量を適切に管理しながら、負荷への安定した電力供給が可能となる。
【0149】
前記電圧調整部は、前記商用電源からの電力を前記蓄電池に対して給電しない動作モードが指定された場合に、前記蓄電池の電圧に対して前記整流器から出力される電力の電圧値が微量だけ大きくなるように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する態様としてもよい。
【0150】
上記の構成とすることで、整流器から出力される電力を蓄電池に対して給電せずに他の装置へ供給することが可能となる。
【0151】
前記電圧調整部は、前記商用電源からの電力を前記負荷への給電に使用しない動作モードが指定された場合に、前記蓄電池の電圧に対して前記整流器から出力される電力の電圧値が小さくなるように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する態様としてもよい。
【0152】
上記の構成とすることで、商用電源に対して接続された状態であっても、商用電源からの電力供給を行わずに、直流電源システム内での電力の移動を行うことができる。
【0153】
前記電圧調整部は、前記商用電源からの電力を前記負荷への給電に使用する動作モードが指定された場合に、前記蓄電池の電圧に対して前記整流器から出力される電力の電圧値が十分に大きくなるように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する態様としてもよい。
【0154】
上記の構成とすることで、整流器から出力される電力を負荷へ向けて給電することが可能となる。
【0155】
前記電圧調整部は、前記電気自動車からの放電を行う場合、前記電気自動車からの出力電圧を超えないように、前記整流器から出力される電力の電圧を調整する態様としてもよい。
【0156】
上記の構成とすることで、電気自動車からの放電動作を維持した状態で、整流器から出力される電力を直流電源システム内で移動させることができる。
【符号の説明】
【0157】
1…直流電源システム、2…整流器、3…負荷、4…蓄電池、5…コンバータ装置、6…商用電源、7…電気自動車、51…コンバータ機能部、52…制御部、53…充放電切替部、54…DC/DC変換部、55…蓄電池電圧確認部、56…モード制御部、57…電圧調整部、501…EV動作情報取得部、502…蓄電池電圧情報取得部、503…動作モード決定部、504…整流器電圧指令部。