(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】音響物品及び関連方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/168 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G10K11/168
(21)【出願番号】P 2020521981
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 US2018056671
(87)【国際公開番号】W WO2019079695
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-07
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リ,スンギュ
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン,メーガン エー.
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,ジョナサン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バーリガン,マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハンシェン,トーマス ピー.
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】片岡 利延
【審判官】木方 庸輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0132999号明細書
【文献】特表2011-508830号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響物品であって、
複数の繊維を有する不織布繊維層を含む多孔質層と、
前記多孔質層と接触し、多孔質炭素を含み、かつ0.1m
2/g~10,000m
2/gの平均表面積を有し、前記不織布繊維層の繊維中に分散されて物理的に及び/又は接着的に保持されている不均一な充填剤と、を含み、
前記不均一な充填剤が、前記多孔質層及び前記多孔質層に接触している不均一な充填剤の総重量に対して、10重量%~50重量%の量で存在し、
前記音響物品は、100MKS Rayls~5000MKS Raylsの流動抵抗を有する、音響物品。
【請求項2】
前記多孔質層の主表面にわたって延びている抵抗層を更に含み、前記抵抗層は、10MKS Rayls~5000MKS Raylsの流動抵抗を有する、請求項1に記載の音響物品。
【請求項3】
前記多孔質炭素が、活性炭、バーミフォーム炭素、又はこれらの混合物を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の音響物品。
【請求項4】
前記不均一な充填剤が、
最大1300m
2/gの平均表面積を有する第1の不均一な充填剤と、
少なくとも1300m
2/gの平均表面積を有する第2の不均一な充填剤と、
を含むブレンド充填剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の音響物品。
【請求項5】
音響物品の製造方法であって、
前記音響物品の音響吸収を50Hz~2,000Hzの音周波数で増加させるために、多孔質炭素を含む不均一な充填剤を複数の繊維を有する不織布繊維層を含む多孔質層内に配置すること
、を含み、
前記不均一な充填剤が、0.1m
2/g~10,000m
2/gの平均表面積を有
し、かつ、前記不織布繊維層の繊維中に分散されて物理的に及び/又は接着的に保持されて
おり、かつ、前記多孔質層及び前記多孔質層に接触している不均一な充填剤の総重量に対して、10重量%~50重量%の量で存在する、製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の音響物品を含み、前記音響物品に結合された主要な航空宇宙又は自動車構造を更に含む、音響アセンブリ。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の音響物品を使用する方法であって、
表面に近接して前記音響物品を配置して、前記表面の振動を減衰させること、を含む、
方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の音響物品を使用する方法であって、
前記音響物品を空気キャビティに近接して配置して、前記空気キャビティを通って伝達される音エネルギーを吸収すること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、断熱及び防音での使用に好適な音響物品について説明する。提供される音響物品は、自動車及び航空宇宙用途におけるノイズを低減するのに特に好適であり得る。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、自動車及び航空宇宙技術における開発は、より速く、より安全で、より静かで、より広々とした車両を求める消費者の要求によって推進されてきた。これらの属性は、燃費に対する欲求に対して釣り合いを取る必要がある。理由としては、これらの消費者によって推進される属性を強化すると、概ね、車両の重量も増加するからである。
【0003】
車両の重量を10%削減することで、燃料効率を約8%向上させることができるため、自動車及び航空宇宙用製造業者は、既存の性能目標を達成しながら車両重量を削減する大きなインセンティブを得る。また、車両の構造がより軽量になると、ノイズがますます問題となり得る。一部のノイズは構造振動から発生し、構造振動により、空気に伝播して伝達する音エネルギーが生じ、空中伝播ノイズが発生する。構造振動は、従来的には、重い粘性材料で作られた減衰材料を使用して制御される。空中伝播ノイズは、従来的には、音エネルギーを吸収することができる、繊維又は発泡体などの柔らかくしなやかな材料を使用して制御される。
【0004】
構造伝播ノイズ及び空中伝播ノイズは、近接場減衰と呼ばれる手法によって緩和することができる。近接場領域は、振動構造の表面に近い領域として定義され、空気がパネルに沿って横方向に前後に揺動(slosh)する。近接場領域は、音響吸収体を使用して修正することができ、音エネルギーは、流体と繊維との粘性相互作用によって消散される。このような消散により、車両乗員が体験するノイズ、振動、及び耳障りな音を著しく低減することができる。
【発明の概要】
【0005】
既知の空中伝播音響吸収体は、高い音周波数で良好に機能することができるが、概ね、低い音周波数(<800Hz)で十分に機能しない。従来、この技術的問題は、吸収体を厚くするか、又は重いバリア層を追加することによって対処されてきた。しかしながら、これらの選択肢はそれぞれ、吸収体の全体的な重量及び厚さを著しく増やす可能性がある。本明細書では、孔容積(porosity)の高い音響粒子を1つ以上の設計された多孔質層に配置して、高周波数及び低周波数の両方で顕著な音響吸収を達成できる薄い軽量の音響物品を得ること、を伴う、代替的な解決策が記載される。
【0006】
多孔質炭素に基づく音響粒子は、単位重量当たりの莫大な表面積を有することができる。その大きな表面積に加えて、活性炭は、その表面にガス分子を瞬間的に吸着及び脱着する。理論に束縛されるものではないが、活性炭の吸着及び脱着特性は、空気の動的体積弾性率を変化させて、音響媒体を通して音の速度を低下させると考えられる。これらの特性により、非常に良好な低周波吸音性能が得られる。例えば、特定のサイズ及び量の活性炭を使用すると、200Hzで50%の垂直入射吸音を達成することができる。
【0007】
音の速度を下げる効果として、音響波長が短くなる。したがって、好適な量の好適なサイズの音響粒子を音響吸収材と組み合わせて使用する場合、吸収材料の比較的薄い層で低周波吸音(600Hz未満)を達成することができる。
【0008】
様々な種類の多孔質層は、これらの音響粒子を添加することにより利点を得ることができる。ある種類のものは、十分な密度で、繊維表面に沿って音波エネルギーを消散させることによって広帯域吸収を提供できる不織布繊維層に基づく。別の種類の多孔質層は、多数の小さな開口又は穿孔を有するフィルムに基づく。有孔フィルムは、穿孔の壁と、それらの内部で振動する空気のプラグとの間の摩擦によって音エネルギーを消散させる。連続気泡発泡体及び微粒子床に基づく多孔質層もまた可能である。これらの材料は、高表面エネルギー粒子を含むことにより利点を得、これにより、驚くべきことに、高周波性能、厚さ、又は重量を著しく損なうことなく低周波性能を向上させることができる。
【0009】
第1の態様では、音響物品が提供される。音響物品は、多孔質層と、多孔質層と接触し、多孔質炭素を含み、かつ0.1m2/g~10,000m2/gの平均表面積を有する不均一な充填剤と、を含み、音響物品は、100MKS Rayls~5000MKS Raylsの流動抵抗を有する。任意に、多孔質層が、複数の繊維を有する不織布繊維層を含み、不均一な充填剤が、複数の繊維内に少なくとも部分的に捕捉されている。任意に、多孔質層が、30マイクロメートル~5000マイクロメートルの平均最小直径である複数の開口を有する有孔フィルムを含み、不均一な充填剤が、有孔フィルムにわたって層内に延びている。
【0010】
第2の態様では、音響物品の製造方法であって、音響物品の音響吸収を50Hz~2,000Hzの音周波数で増加させるために、多孔質炭素を含む不均一な充填剤を多孔質層内に配置することであって、不均一な充填剤が、0.1m2/g~10,000m2/gの平均表面積を有する、配置すること、を含む、製造方法が提供される。
【0011】
第3の態様では、上述の音響物品を含む音響アセンブリが提供される。
【0012】
第4の態様では、前述の音響物品を使用する方法であって、表面に近接して音響物品を配置して、表面の振動を減衰させること、を含む、方法。
【0013】
第5の態様では、前述の音響物品を使用する方法であって、音響物品を空気キャビティ(cavity)に近接して配置して、空気キャビティを通って伝達される音エネルギーを吸収すること、を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書で提供されるように:
【
図1】様々な実施形態による多層音響物品の側面断面図である。
【
図2】様々な実施形態による多層音響物品の側面断面図である。
【
図3】様々な実施形態による多層音響物品の側面断面図である。
【
図4】様々な実施形態による多層音響物品の側面断面図である。
【
図5】明確にするために上部層を省略した、
図4の音響物品の平面図である。
【
図6】様々な実施形態による多層音響物品の拡大側面断面図である。
【
図7】様々な実施形態による多層音響物品の拡大側面断面図である。
【
図8】別の実施形態による多層音響物品の側面断面図である。
【
図9】様々な実施形態による音響アセンブリの拡大側面断面図である。
【
図10】様々な実施形態による音響アセンブリの拡大側面断面図である。
【
図11】様々な実施形態による音響アセンブリの拡大側面断面図である。
【
図12】様々な実施形態による音響アセンブリの拡大側面断面図である。
【
図13】様々な実施形態による音響アセンブリの拡大側面断面図である。
【
図14】様々な実施形態による音響アセンブリの拡大側面断面図である。
【
図15a】例示の音響物品における有孔フィルムの開口寸法を示す図である。
【
図15b】例示の音響物品における有孔フィルムの開口寸法を示す図である。
【
図15c】例示の音響物品における有孔フィルムの開口寸法を示す図である。
【
図16】例示の音響物品と比較音響物品との音響応答を比較する加速度プロットを示す図である。
【
図17】例示の音響物品と比較音響物品との係数を比較する垂直入射吸収係数プロットを示す図である。
【
図18】例示の音響物品と比較音響物品とのインピーダンスの実数部を比較する比音響インピーダンスプロットを示す図である。
【
図19】例示の音響物品と比較音響物品とのインピーダンスのリアクタンス部を比較する比音響インピーダンスプロットを示す図である。
【0015】
明細書及び図面中での参照文字の繰り返しの使用は、本開示の同じ又は類似の特徴部又は要素を表すことが意図されている。多くの他の変更形態及び実施形態を、当業者であれば考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨内に該当することが理解されるべきである。図面は、縮尺どおりではない場合がある。
【0016】
定義
本明細書で使用する場合、
「平均」は、特に指定しない限り、数平均を意味する。
【0017】
「坪量」は、10cm×10cmのウェブサンプルの重量に100を掛けて算出され、グラム毎平方メートル(gsm)単位で表される。
【0018】
「コポリマー」は、2つ以上の異なるポリマーの繰り返し単位から作られたポリマーを指し、ランダム、ブロック、及び星形(例えば樹枝状)コポリマーを含む。
【0019】
「寸法安定性」とは、重力の影響を受けずにその形状を実質的に保持する(すなわち、垂れ下がらない)構造を指す。
【0020】
「ダイ」とは、メルトブローを含むがこれに限定されないポリマー溶融加工及び繊維押出加工に使用するための、少なくとも1つのオリフィスを含む加工用アセンブリを意味する。
【0021】
「不連続」とは、繊維又は複数の繊維に関して使用される場合、制限されたアスペクト比(例えば、長さと直径との比が、例えば、10,000未満)を有する繊維を意味する。
【0022】
「捕捉されている」とは、粒子がウェブの繊維中に分散されて物理的に及び/又は接着的に保持されていることを意味する。
【0023】
ポリマーの「ガラス転移温度(又はTg)」は、非晶質ポリマー(又は半結晶性ポリマー内の非晶質領域内)において、温度が上昇するにつれて、硬く比較的脆い「ガラス状」の状態から粘性又はゴム状の状態になる可逆的転移が生じる温度を指す。
【0024】
不織布繊維層の繊維の「メジアン繊維径」は、例えば走査型電子顕微鏡を使用して、繊維構造の1枚以上の画像を作製し、当該1枚以上の画像で明確に見える繊維の横方向の寸法を測定して、繊維径の合計数を求め、その繊維径の総数に基づいて、メジアン繊維径を計算することにより決定される。
【0025】
「不織布繊維層」とは、個々の繊維又はフィラメントが相互に重なり合っているが、編布におけるような識別可能な状態ではない構造を呈するシート又はマットを形成する、繊維の絡まり又は点結合を特徴とする複数の繊維を意味する。
【0026】
「配向された」とは、繊維に関して使用される場合、繊維内のポリマー分子のうちの少なくとも一部分が、例えば延伸加工の使用によって、又は、繊維流がダイから出る際の細径化装置の使用によって、繊維の長手方向軸に位置合わせされていることを意味する。
【0027】
「粒子」とは、微細化形状の材料の離散した小片又は個別の部分を指す。粒子は、微細化形状の個別粒子が共に結合又は集積した総体を含んでもよい。したがって、本開示の特定の例示的実施形態で使用される個別微粒子は、凝集、物理的噛み合い、静電結合、又は他の結合により微粒子を形成してもよい。特定の場合では、米国特許第5,332,426号(Tangら)で記載されているように、個々の微粒子の凝集体の形態の微粒子が形成されてもよい。
【0028】
「ポリマー」とは、少なくとも10,000g/molの分子量を有する比較的高分子量の材料を意味する。
【0029】
「多孔質」とは、空気透過性であることを意味する。
【0030】
「収縮」とは、米国特許出願公開第2016/0298266号(Zilligら)に記載の試験方法に基づいて、150℃まで7日間加熱した後の繊維不織布層の寸法の減少を意味する。
【0031】
「サイズ」とは、所与の物体又は表面の最長寸法を指す。
【0032】
「実質的に」とは、少なくとも50%、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、99.99、若しく99.999%の量といった大部分若しくはほとんど、又は100%を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で使用される場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利点をもたらし得る本明細書に記載される実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを意図するものでもない。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、1つ以上の構成要素及び当業者に公知のその等価物が含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0035】
用語「含む」及びその変形は、これらの用語が添付の説明に現れた場合、限定的意味はないことに注意されたい。また更に、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、垂直などの相対語が、本明細書において使用される場合があり、その場合、特定の図面において見られる視点からのものである。これらの用語は、説明を簡略にするためだけに使用される。しかしながら、本発明の範囲を決して限定しない。
【0036】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」に対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」、又は「ある実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。
【0037】
本開示は、音響吸収体、振動減衰材、及び/又は防音材及び断熱材として機能する音響物品、アセンブリ、及びその方法を目的とする。音響物品及びアセンブリは、概ね、1つ以上の多孔質層と、1つ以上の多孔質層と接触している1つ以上の不均一な充填剤と、を含む。任意に、提供される音響物品及びアセンブリは、1つ以上の非多孔質バリア層及び/又は1つ以上の多孔質層に隣接する空気間隙を含む。これらの構成要素におけるそれぞれの構造及び機能特性は、以下のサブセクションに記載される。
【0038】
多孔質層
提供される音響物品は、1つ以上の多孔質層を含む。有用な多孔質層としては、不織布繊維層、有孔フィルム、微粒子床、連続気泡発泡体、繊維ガラス、ネット、織布、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
微細繊維を含有する設計された不織布繊維層は、航空宇宙用途、自動車用途、輸送用途、及び建築用途において有効な吸音材であり得る。複数の微細繊維を有する不織布材料は、構造の高表面積が、音エネルギーの粘性消散を促進するレジームである高い音周波数で特に効果的であり得る。不織布層は、繊維ガラスからできていてもよい。ポリマー不織布層は、例えば、メルトブロー又は溶融紡糸によって作ることができる。
【0040】
メルトブローでは、1つ以上の熱可塑性ポリマー流は、緊密に配置されたオリフィスを含むダイを通って押し出され、高速で熱風の収束流によって減衰され、微細繊維を形成する。これらの微細繊維を表面に集めて、メルトブロー不織布繊維層を提供することができる。選択された操作パラメータ、例えば溶融状態からの固化の度合いに応じて、回収された繊維は半連続的又は本質的に不連続であり得る。特定の例示的実施形態では、本開示のメルトブロー繊維は、分子レベルで配向されていてもよい。繊維は、溶融物中の欠陥、形成されたフィラメントの交差、繊維の細径化に使用される乱流による過剰な剪断、又は形成プロセスで生じる他の事象によって中断され得る。これらは、概ね、半連続的であるか、又は繊維の絡み合い間の距離よりもはるかに長い長さを有することが分かっており、そのため個々の繊維を端から端までそのままの状態で繊維塊から除去できない。
【0041】
溶融紡糸では、不織布繊維は、フィラメントとして一連のオリフィスから押し出され、冷却及び固化して繊維を形成する。フィラメントを、移動する空気流が含まれ得る空気空間に通し、フィラメントを冷却し、細径化(つまり、延伸)ユニットを通過し、フィラメントを少なくとも部分的に延伸するのを支援する。溶融紡糸法で作られた繊維は「スパンボンド」することができ、それにより、一組の溶融紡糸繊維を含むウェブが繊維ウェブとして回収され、任意に、繊維を互いに融着させるための1つ以上の結合操作に供される。溶融紡糸繊維は概ね、メルトブロー繊維よりも直径が大きい。
【0042】
繊維は、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブテン、ポリ乳酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエチレン-co-ビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、又はこれらのコポリマー若しくはブレンドから選択されたポリマーから、複数の繊維の総重量、少なくとも35重量%の量で作ることができる。好適な繊維材料としては、エラストマーポリマーも挙げられる。
【0043】
脂肪族ポリエステル繊維に基づく不織布層は、高温用途での分解(degradation:劣化)又は収縮に抗するのに特に有利であり得る。有用な脂肪族ポリエステルの分子量は、15,000g/mol~6,000,000g/mol、20,000g/mol~2,000,000g/mol、40,000g/mol~1,000,000g/molの範囲であってもよく、又はいくつかの実施形態では、15,000g/mol;20,000;25,000;30,000;35,000;40,000;45,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;100,000;200,000;500,000;700,000;1,000,000;2,000,000;3,000,000;4,000,000;5,000,000;若しくは6,000,000g/molの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0044】
不織布繊維層のメルトブロー繊維又は溶融紡糸繊維は、任意の好適な直径を有することができる。繊維は、0.1マイクロメートル~10マイクロメートル、0.3マイクロメートル~6マイクロメートル、0.3マイクロメートル~3マイクロメートルのメジアン径を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1マイクロメートル、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47、若しくは50マイクロメートルの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きいメジアン径を有してもよい。
【0045】
任意に、不織布繊維層における複数の繊維のうちの少なくとも一部は、互いに又は不均一な充填剤に物理的に結合される。点結合法によって、又は平滑なカレンダーロールによって適用された熱及び圧力を使用する従来の結合技術を使用することができるが、このような方法は、繊維の望ましくない変形又はウェブの圧縮を引き起こす場合がある。任意に、繊維間又は繊維と不均一な充填剤との間の付着は、不織布繊維層内に溶融性繊維又はバインダー繊維を含むことによって達成されてもよい。
【0046】
繊維を結合するための他の手法は、例えば、米国特許出願公開第2008/0038976号(Berriganら)及び米国特許第7,279,440号(Berriganら)に教示されている。手法の1つは、回収された繊維のウェブ及び繊維を、制御された加熱及び急冷操作に供することを伴い、この操作には、ウェブに、繊維を軟化させるのに十分な温度まで加熱された気体流を強制的に通過させて、繊維の交差点で繊維を共に結合させることが含まれ、ここで、加熱された流れは適用される期間が短かすぎるため繊維を完全に溶融しておらず、次いで、ウェブに、加熱された流れよりも少なくとも50℃低い温度の気体流を直ちに強制的に通過させて、繊維を急冷することが含まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、2つの異なる種類の分子相が繊維内に存在する。例えば、主に半結晶相は、主に非晶質相と共存してもよい。別の例として、主に半結晶相は、結晶秩序の低いドメイン(例えば、ポリマーが鎖延長されていないもの)、及び結晶化度に対して全体的な秩序度が不十分である非晶質のドメインを含有する相と共存してもよい。このような繊維は、上記のように加熱下で加工して、不織布繊維層を形成することもできる。
【0048】
いくつかの実施形態では、不織布繊維層の繊維は、結合操作中に繊維構造を実質的に溶融又は喪失しないが、それらの元の繊維寸法を有する個別の繊維として残る。
【0049】
いくつかの実施形態では、繊維ポリマーは、高いガラス転移温度を呈し、これは高温用途での使用に望ましい場合がある。特定の不織布繊維層は、断熱材としての使用など、後続の加工又は使用において、中程度の温度までであっても加熱された場合に著しく収縮する。このような収縮は、メルトブロー繊維が熱可塑性ポリエステル又はそのコポリマー、特に本質的に半結晶性のものを含む場合に問題となることが示されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、提供される不織布繊維層は、高密度化されていない層に隣接する少なくとも1つの高密度化層を有する。高密度化層及び非高密度化層のいずれか又は両方は、不均一な充填剤で充填されてもよい。高密度化層及び隣接する非高密度化層は、均一な密度を有する不織布繊維層の一体層から調製されるのに費用効果が高くなり得る。提供される方法は、所望であれば、層全体にわたるポリマー繊維の均一な分布を有する高密度化層を提供することができる。あるいは、ポリマー繊維の分布は、不織布繊維層の主表面にわたって意図的に不均一にすることができ、このことにより、主表面に沿ったその位置に基づいて、音響応答を調整することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、不織布繊維層の高密度化部分及び非高密度化部分のメジアン繊維径は、実質的に同じである。これは、例えば、繊維を著しく溶融させることなく、高密度化領域内で繊維を互いに融着させることができる方法によって実現することができる。繊維の溶融を回避することにより、不織布繊維層の高密度化層内でもたらされた大きな表面積に由来する音響効果を維持することができる。
【0052】
設計された不織布繊維層は、多数の利点を呈すことができ、そのうちのいくつかは予想外のものである。これらの材料は、従来の絶縁材が熱劣化又は破損する高温での断熱用途及び防音用途に使用することができる。特に要求が厳しいのは、自動車の車両及び航空宇宙の機体用途であり、絶縁材は、ノイズが大きいのみではなく、極端な温度に達する可能性がある環境で機能する。
【0053】
提供される不織布層は、自動車及び航空宇宙の用途において遭遇する可能性がある150℃以上の温度での収縮に抗することができる。収縮は、熱曝露又は加工中の結晶化から生じ得るものであり、音響性能を低下させ、製品の構造的一体性に影響を与える可能性があるため、概ね望ましくない。提供された不織布繊維層は、米国特許出願公開第2016/0298266号(Zilligら)に記載の収縮試験方法を用いて測定した場合、150℃まで7日間加熱した後、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の収縮を示し得る。このような収縮値は、長手方向及び横断方向の両方に沿って適用することができる。いくつかの実施形態では、不均一な充填剤を不織布層の隙間に配置することにより、高温での収縮度を更に低減することができる。
【0054】
更なる利点として、高密度化層により、不織布繊維層が熱的に成形され、寸法安定性のある三次元構造にすることができる。このような構造に基づく物品及びアセンブリは、カスタマイズされた三次元形状を有する基材に適合するように成形することができる。特定の用途向けに物品又はアセンブリの形状をカスタマイズすることにより、空間の使用が最適化され、例えば自動車又は航空宇宙の構成要素への取り付けが簡素化される。これらの成形構造は寸法安定性があるため、これらの物品及びアセンブリはまた、元の平面構成に戻る傾向がある従来の防音及び断熱製品と比較して層間剥離のリスクを低減する。
【0055】
更に別の利点は、高温で機能し、かつ寸法安定性があるだけでなく、ウェブの高密度化部分及び非高密度化部分の両方の内で高密度の表面積を保持する不織布繊維層を作製できることに関連する。高表面積を有する不均一な充填剤と組み合わせて、繊維によって提供される高表面積を保持することにより、非常に小さな重量の材料であっても、音響吸収体として高レベルの性能を達成することができる。不織布繊維層のノイズ消散性は、音圧波の運動エネルギーが熱に変換される繊維表面での粘性消散に基づいているため、表面積は関連がある。
【0056】
単一層から不織布繊維ウェブを製造する場合、複数の層を含む物品を製造するために使用される方法と比較して、加工及びウェブ処理工程を減らす必要がある。その性能特性を維持しながら、最終製品中の層の数を低減することにより、製造を簡素化し、関連するコストを削減する。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の繊維集団が不織布繊維層に組み込まれる。繊維集団間の差異は、例えば、組成、メジアン繊維径、及び/又はメジアン繊維長に基づくことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、不織布繊維層は、10マイクロメートル未満のメジアン径を有する複数の第1の繊維と、少なくとも10マイクロメートルのメジアン径を有する複数の第2の繊維と、を含むことができる。様々な理由から、異なる直径の繊維を有することが有利であり得る。より厚い第2の繊維を含めることにより、不織布繊維層の弾力性、耐破砕性を改善することができ、ウェブの全体的なロフトを維持するのに役立つ。第2の繊維は、第1の繊維に関して前述したポリマー材料のいずれかから作製することができ、メルトブロー法又は溶融紡糸法から作製されてもよい。
【0059】
不織布層の繊維は、望ましい機械的特性、音響特性、及び/又は熱特性を提供するために、任意の好適な繊維径を有することができる。例えば、第1及び第2の繊維のいずれか又は両方は、少なくとも10マイクロメートル、10マイクロメートル~60マイクロメートル、20マイクロメートル~40マイクロメートルのメジアン径を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、10マイクロメートル、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、27、30、32、35、37、40、45、50、55、若しくは60マイクロメートルの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きいメジアン径を有してもよい。
【0060】
任意に、第1及び第2の繊維のいずれか又は両方が配向される。配向繊維とは、分子スケールで顕著な配列を示す繊維である。完全に配向され、部分的に配向されたポリマー繊維は既知であり、市販されている。繊維の配向は、複屈折、熱収縮、X線散乱、及び弾性率など、多数の方法のいずれかで測定できる(例えば、Principles of Polymer Processing,Zehev Tadmor and Costas Gogos,John Wiley and Sons,New York,1979,pp.77-84を参照されたい)。不織布繊維層内の繊維の配向は、任意の既知の方法を使用して達成することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、第2の繊維は、第1の複数の繊維と散在する短繊維である。短繊維は、バインダー繊維及び/又は構造繊維を含むことができる。バインダー繊維としては、上述のポリマー繊維のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。好適な構造繊維としては、上述のポリマー繊維のいずれか、その他にセラミック繊維、ガラス繊維、及び金属繊維などの無機繊維;並びにセルロース繊維などの有機繊維を挙げることができるが、これらに限定されない。不織布層への短繊維のブレンドは、カーディングと呼ばれることもある。
【0062】
第1及び第2の繊維の組み合わせに関連する追加の選択肢及び利点は、例えば、米国特許第8,906,815号(Mooreら)に記載されている。
【0063】
多孔質層は、本質的に繊維質のものである必要はない。例えば、1つ以上の多孔質層は、有孔フィルムを使用する。有孔フィルムは、該フィルムを貫通して延びている多数の穿孔、すなわち貫通穴を有するフィルム又は壁で構成される。穿孔により、壁の両側に配置された空気空間が互いに連通することができる。
【0064】
穿孔内に封入されているのは、共振システム内の質量構成要素として作用する空気のプラグである。これらの質量構成要素は、穿孔内で振動し、空気のプラグと穿孔の壁との間の摩擦から音エネルギーを消散させる。音エネルギーの吸収は、音響物品を通る流体の正味の流れを本質的にゼロにして行うことができる。
【0065】
穿孔は、所与の周波数範囲にわたって所望の音響性能を得るのに好適な寸法(例えば、穿孔直径、形状、及び長さ)を備えることができる。音響性能は、例えば、有孔フィルムから音を反射させ、対照サンプルの結果と比較した音響消散の結果として音響強度の低下を特徴付けることにより、測定することができる。
【0066】
図において、穿孔は、有孔フィルムの表面全体に沿って配置されている。あるいは、壁は、部分的にのみ穿孔されていてもよい。つまり、一部の領域では穿孔されているが、他の領域では穿孔されていない。特定の例では、壁の有孔領域は、縦方向に沿って延び、1つ以上の非有孔領域に隣接していてもよい。例えば、壁は、1つ又は2つの有孔側面のみを有する矩形の断面チューブを有し得る。
【0067】
穿孔は、広範な形状及びサイズを有することができ、様々な成形、切断、又は打ち抜き操作のいずれかによって生成することができる。穿孔の断面は、例えば、円形、正方形、又は六角形であり得る。いくつかの実施形態では、穿孔は細長いスリットのアレイによって表される。穿孔は、それらの長さに沿って均一である直径を有し得ると同時に、円錐台の形状を有するか、そうでなければ、少なくとも一部の長さに沿ってテーパ状になった側壁を有する穿孔を使用することが可能である。穿孔の側壁をテーパ状にすることは、後述するように、不均一な充填剤が穿孔内に受容されることを可能にするのに有利であり得る。様々な穿孔構成及びそれを作製する方法は、米国特許第6,617,002号(Wood)に記載されている。
【0068】
任意に、及び図に示されるように、穿孔は、互いに対して概ね均一な間隔を有する。その場合、穿孔は、二次元グリッドパターン又は千鳥状パターンで配置されてもよい。穿孔はまた、隣接する穿孔間の正確な間隔が不均一であるが、それでもなお穿孔が肉眼で見えるスケールで壁にわたって均等に分配されるランダム化構成で壁に配置され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、穿孔は、壁に沿って本質的に均一な直径のものである。あるいは、穿孔は、直径のいくらかの分布を有し得る。いずれの場合でも、穿孔の平均最小直径は、10マイクロメートル、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、150、170、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、4000、若しくは5000マイクロメートルの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。明確にするために、非円形の穴の直径は、本明細書では、平面図で非円形の穴と同等の面積を有する円の直径として定義される。
【0070】
有孔フィルムの孔容積は、フィルムが占めていない所与の体積の割合を表す無次元の数量である。簡略化された表現では、穿孔は円筒形であると想定することができ、その場合、孔容積は、平面図において穿孔によって置き換えられた壁の表面積の割合によってよく近似される。例示的実施形態では、壁は、0.1%~10%、0.5%~10%、又は0.5%~5%の孔容積%を有し得る。いくつかの実施形態では、壁は、0.1%、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10%の値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい孔容積%を有する。
【0071】
フィルム材料は、関連する周波数を有する入射音波に応答して振動するように好適に調整された弾性率(例えば、曲げ弾性率)を有することができる。穿孔内の空気プラグの振動と共に、壁自体の局所的な振動は、音エネルギーを消散させ、音響物品を通る伝達損失を高めることができる。壁の曲げ弾性率は、剛性を反映して、その音響伝達インピーダンスにも直接影響する。
【0072】
いくつかの実施形態では、フィルムは、0.2GPa~10GPa、0.2GPa~7GPa、0.2GPa~4GPaの曲げ弾性率、又はいくつかの実施形態では、0.2GPa、0.3、0.4、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、若しくは210GPaの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい曲げ弾性率を有する材料を含む。
【0073】
好適な熱可塑性ポリマーは、典型的には、0.2GPa~5GPaの範囲の曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、繊維又は他の充填剤の添加により、これらの材料の曲げ弾性率を20GPaまで高めることができる。熱硬化性ポリマーは、概ね、5GPa~40GPaの範囲の曲げ弾性率を有する。有用なポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリ乳酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリウレタン、及びこれらのブレンドが挙げられる。
【0074】
可撓性フィルム内に配置された複数の穿孔に起因し得る音響性能特性は、例えば、米国特許第6,617,002号(Wood)、同第6,977,109号(Wood)、及び同第7,731,878号(Wood)に記載されている。
【0075】
いくつかの実施形態では、多孔質層は微粒子床を含む。微粒子床は、活性炭、バーミフォーム(vermiform)炭素、ゼオライト、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)、パーライト、アルミナ、グラスバブルズ、ガラスビーズ、及びこれらの混合物の粒子を含んでもよい。微粒子床の粒子のうち、音響的に活性である不均一な充填剤がなくてもよく、一部又は全てが音響的に活性である不均一な充填剤であってもよい。微粒子床の孔容積は、粒子のサイズ分布に基づいて部分的に調節することができる。粒子は、0.1マイクロメートル~2000マイクロメートル、5マイクロメートル~1000マイクロメートル、10マイクロメートル~500マイクロメートルであってもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1マイクロメートル、0.5、1、2、5、10、20、30、40、50、70、100、200、300、400、500、700、1000、1500、若しくは2000マイクロメートルの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0076】
多孔質層は、概ね、音響圧力の周波数空間の、音響媒体内の関連する粒子速度に対する比である、その比音響インピーダンスによって特徴付けられ得る。穿孔を有する剛性フィルムに基づく理論モデルでは、例えば、速度は、穴の中及び外に移動する空気から導出される。フィルムが可撓性である場合、壁の動きは音響インピーダンスの計算に寄与する可能性がある。比音響インピーダンスは、周波数の関数として変化し、概ね、進行性平面波条件では実数であるが、比音響インピーダンスは、定在平面波又は発散波条件の下で複素数になる。したがって、音響媒体の比インピーダンスは、圧力及び速度の波により、2つの特性間で位相不整合が生じる可能性があり、この位相不整合挙動は音響吸収性能を反映するという事実を反映する。2つの構成要素が互いに同位相にある場合、最大の音響吸収が可能であり、2つの構成要素が互いに位相を異にする場合、逆もまた同様である。有利には、提供される音響物品及びアセンブリは、従来の音響吸収体よりも広い周波数範囲にわたって一貫して高いレベルの音響吸収を提供することができる(例えば、
図18に示す実施例及び比音響インピーダンス比を参照されたい)。
【0077】
本明細書で使用するとき、比音響インピーダンスは、1MKS Raylが1パスカル秒/メートル(Pa・s・m-1)に等しいか、又は同等に1ニュートン秒/立方メートル(N・s・m-3)、あるいは1kg・s-1・m-2である、MKS Raylsで測定される。
【0078】
多孔質層はまた、その伝達インピーダンスによって特徴付けることができる。有孔フィルムについては、伝達インピーダンスは、多孔質層の入射側の音響インピーダンスと、有孔フィルムが存在しない場合に観測される音響インピーダンス、すなわち、空気キャビティのみの音響インピーダンスとの間の差である。
【0079】
流動抵抗は、伝達インピーダンスの低周波数限界である。実験的に、これは、多孔質層に既知の低速の空気を吹き込み、それに関連する圧力低下を測定することによって推定することができる。流動抵抗は、測定された圧力低下を速度で除算しものとして求めることができる。
【0080】
有孔フィルムを含む実施形態では、有孔フィルムのみを通る流動抵抗(不均一な充填剤がない)は、50MKS Rayls~8000MKS Rayls、100MKS Rayls~4000MKS Rayls、又は400MKS Rayls~3000MKS Raylsとすることができる。いくつかの実施形態では、有孔フィルムを通る流動抵抗は、50MKS Rayls、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、若しくは8000MKS Raylsの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0081】
不織布繊維層を含む実施形態では、不織布繊維層のみを通る流動抵抗(不均一な充填剤がない)は、50MKS Rayls~8000MKS Rayls、100MKS Rayls~4000MKS Rayls、又は400MKS Rayls~3000MKS Raylsとすることができる。いくつかの実施形態では、不織布繊維層を通る流動抵抗は、50MKS Rayls、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、若しくは8000MKS Raylsの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0082】
音響物品全体を通る流動抵抗は、100MKS Rayls~5000MKS Rayls、120MKS Rayls~3000MKS Rayls、又は150MKS Rayls~1000MKS Raylsとすることができる。いくつかの実施形態では、音響物品全体を通る流動抵抗は、10MKS Rayls、20、30、40、50、70、100、120、150、180、200、250、300、400、500、600、700、1000、1100、1200、1500、1700、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、若しくは8000MKS Raylsの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい。
【0083】
非多孔質層
任意に、提供される音響物品は、1つ以上の非多孔質層を含む。非多孔質層は、それを通るガスの流れを実質的に防ぐバリアフィルムを含み、したがって、放出圧力効果を有さない。バリアフィルムはまた、孔容積を実質的に有さなくてもよい。浸透する低周波音波に応答して前後に移動する可撓性スクリムとは異なり、固体フィルムを使用してこの低周波数移動に抗し、音波を反射することによって音響物品内に共振を誘発することができる。様々な実施形態では、多孔質層と非多孔質層との組み合わせを使用して、入射音エネルギーを集合的に捕捉及び消散させることができる。
【0084】
好適なバリアフィルムとしては、エラストマー膜が挙げられる。好適な材料の例としては、フルオロエラストマー、ネオプレン、及び熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。フルオロポリマー材料は、概ね、高密度及び低弾性率の有益な組み合わせを提供するので、音響及び減衰用途に有用であり得る。
【0085】
バリアフィルムは、任意の既知の方法を用いて層状音響物品に組み込まれてもよい。例示の方法は、多孔質層上に直接コーティングすること、を含む。代替として、バリアフィルムを別個に形成し、1つ以上の多孔質層上に積層してもよい。
【0086】
不均一な充填剤
音響物品の多孔質層は、音響性能を改善することができる少なくとも1つの不均一な充填剤と接触している。好適な不均一な充填剤としては、多孔質粒子が挙げられ、これは、開孔、閉孔、又はこれらの組み合わせによって特徴付けられ得る。不均一な充填剤は剛性であり得、そのため充填材料の動は、音響環境内の流体相(例えば、空気)の動きと比較してごくわずかである。
【0087】
開孔を有する充填剤粒子としては、ゼオライト、エアロゲル、多孔質アルミナ、雲母、パーライト、粒状ポリウレタン発泡体粒子、金属有機構造体(MOF)、及び多孔質炭素材料が挙げられる。閉孔を有する充填剤粒子としては、独立気泡発泡体粒子及び中空粒子が挙げられる。単一の細孔(又はキャビティ)を正確に有し得る中空粒子としては、膨張ポリマー微小球、セラミック微小球、及び中空グラスバブルズが挙げられる。
【0088】
不均一な充填剤は、多孔質層に対して様々な構成で存在してもよい。例えば、多孔質層が不織布繊維層、連続気泡発泡体、又は微粒子床である場合、不均一な充填剤は、不織布繊維層、連続気泡発泡体、又は微粒子床に埋め込まれてもよい。多孔質層が有孔フィルムを含む場合、不均一な充填剤は、有孔フィルムにかけて延びている複数の開口内に少なくとも部分的に存在し得る。いくつかの実施形態では、多孔質層に接触している不均一な充填剤の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が、複数の開口内に存在する。あるいは、不均一な充填剤は、多孔質層に隣接する個別の層として存在してもよい。
【0089】
多孔質粒子は、マクロ細孔(50ナノメートルより大きい幅を有する)、メソ細孔(50ナノメートル未満で2ナノメートルより大きい幅を有する)、マイクロ細孔(2ナノメートル未満の幅を有する)、及び/又は上記の組み合わせを含むことができる。これらの特徴を例示する不均一な充填剤としては、多孔質炭素粒子が挙げられる。多孔質炭素粒子としては、活性炭及びバーミフォーム炭素が挙げられる。
【0090】
活性炭は、主に炭素原子で構成された複合構造を有する高多孔質炭素質材料である。活性化法は、約1000℃の高温でスチームを使用して、又は場合によっては、より低い温度でリン酸を使用して実行することができる。活性炭中の細孔のネットワークは、炭素原子の無秩序な層の剛性骨格内に形成されたチャネルであり、化学結合によって互いに連結され、不均一に積層されている。これにより、炭素層内に多数のピット及び亀裂によって形成された非常に多孔質の構造が作り出される。
【0091】
活性炭の顕著な特徴の1つは、ガス分子の吸着性である。内部孔容積0.3m3を有する活性炭1m3で、30m3以上のガスを吸着することができる。音響物品における多孔質炭素の挙動は、周囲空気分子の吸着と一致している。多孔質炭素が限られた空間内で空気分子を吸着する場合、有効空気体積は、多孔質炭素を含まない同じ空間内の空気体積の2倍より大きくなることがある。音響キャビティ内の有効空気体積を膨張させることにより、多孔質炭素は、音響共振周波数を高から低にシフトする傾向がある。この周波数シフトは、音響吸収における4分の1波長の短縮(又は音響媒体内の音の速度の減速)として解釈することができ、より薄い層において高い音響性能を提供する。
【0092】
バーミフォーム炭素(又はバーミフォーム黒鉛)は、膨張性黒鉛に、黒鉛層に浸透するゲスト分子を挿入することによって作られた多孔質炭素の層状形態である。高温では、ゲスト分子は相変化を受ける。この急な反応により、黒鉛層を押し広げるのに十分な圧力が生じ、制限されない場合、粒子の体積が急速に増加する。膨張黒鉛は、バーミフォーム黒鉛として知られている虫のような構造を有する。
【0093】
バーミフォーム黒鉛は、マイクロ細孔(2nm未満の細孔)を欠いていることを踏まえ、活性炭よりも著しく大きい細孔構造を有するため、注目に値する。バーミフォーム炭素の表面積は1m2/g未満で、活性炭の表面積よりも数桁も小さい。これらの違いから、活性炭よりも高い周波数ノイズを減衰させるのに、バーミフォーム炭素をより効果的にすることができる。結果として、膨張した周波数範囲にわたって音響吸収を提供するために、活性炭とバーミフォーム炭素とのブレンドを使用することが有利であり得る。
【0094】
不均一な充填剤を構成する粒子の平均サイズは、音響物品の機械的特性だけでなく、音響吸収に影響を及ぼす加工上の考慮事項にも関連する可能性がある。バーミフォーム黒鉛では、例えば、より小さい小板の方が、エッジ面積の内部容積に対する全体的な比率が高い層を生成する。粒子サイズが縮小するにつれて、膨張ガスの流出経路の効率が高まり、全体的な膨張の可能性が低減し、孔径が縮小する。
【0095】
バーミフォーム黒鉛が処理される温度も音響性能に影響を与え、より高い温度で処理された粒子は層間でより高い膨張度を示す傾向があることが見出された。黒鉛層のばねモデルを使用することで、ばねがより膨張、すなわちばねの可撓性が高まり、ひいては音響減衰が改善される。
【0096】
凝集体を除き、不均一な充填剤は、0.1マイクロメートル~2000マイクロメートル、5マイクロメートル~1000マイクロメートル、10マイクロメートル~500マイクロメートルの平均粒子サイズを有してもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1マイクロメートル、0.2、0.5、1、2、5、7、10、15、20、30、40、50、70、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1500、1700、若しくは2000マイクロメートルの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい平均粒子サイズを有してもよい。
【0097】
その多孔質の性質により、不均一な充填剤は、非常に大きな表面積を有し、その結果、吸着能を有することが可能である。高い表面積密度を有することにより、孔構造の高度な複雑さとねじれを反映することができ、摩擦損失による固体構造へのより大きな内部反射とエネルギー伝達をもたらす。これは、空中伝播ノイズの吸収として現れる。不均一な充填剤の平均表面積は、0.1m2/g~10,000m2/g、0.5m2/g~5000m2/g、1m2/g~2500m2/gでもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1m2/g、0.2、0.5、0.7、1、2、5、10、20、50、100、120、150、200、250、300、350、400、450、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、若しくは10,000m2/gの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、不均一な充填剤の高い表面密度は、非常に微細な細孔の存在に起因する。活性炭は、例えば、2nm未満の寸法を有するマイクロ細孔を呈し、これが炭素粒子中の表面積の大部分を占めている。
【0099】
不均一な充填剤は、0.1ナノメートル~50マイクロメートル、1ナノメートル~40マイクロメートル、2.5ナノメートル~30マイクロメートル数平均孔径を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1ナノメートル、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、40、50、70、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900ナノメートル、1マイクロメートル、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、若しくは50マイクロメートルの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0100】
不均一な充填剤粒子は、音響用途で使用される従来の充填剤よりもはるかに小さい最小孔径を呈することができる。例えば、活性炭の最小細孔は、直径が2nm未満であり得る。バーミフォーム炭素は、概ね、直径数十ミクロンの細孔を有するが、ナノメートル又はサブナノメートルの範囲の細孔は有さない。概ね、不均一な充填剤は、最大500nm、最大400nm、最大300nm、最大200nm、最大100、最大50、最大20、最大10、最大5、最大2、及び最大1nmの最小孔径を有し得る。
【0101】
不均一な充填剤は、0.01cm3/g~5cm3/gの数平均細孔容積を有し得る。いくつかの実施形態では、数平均細孔容積は、0.01cm3/g、0.02、0.05、0.07、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.5、3、3.5、4、4.5、若しくは5cm3/gの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0102】
前述のように、2つ以上の異なる種類の不均一な充填剤の使用は、複合材物品の音響応答を修正するのに有効であり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なる種類の充填剤が、音響物品の多孔質層内にブレンドされる。他の実施形態では、異なる種類の充填剤が、音響物品内の1つ又は2つの多孔質層に隣接する微粒子床内にブレンドされる。他の実施形態では、異なる種類の充填剤が存在するが、個別の層に配置され、それぞれ独立して多孔質層又は微粒子床内にある。
【0103】
不均一な充填剤が2つ以上の充填剤の微粒子ブレンドである場合、ブレンドは、最大1300m2/gの平均表面積を有する第1の不均一な充填剤と、少なくとも1300m2/gの平均表面積を有する第2の不均一な充填剤と、を含むことができる。あるいは、ブレンドは、最大500m2/gの平均表面積を有する第1の不均一な充填剤と、少なくとも500m2/gの平均表面積を有する第2の不均一な充填剤と、を含むことができる。あるいは、ブレンドは、最大100m2/gの平均表面積を有する第1の不均一な充填剤と、少なくとも100m2/gの平均表面積を有する第2の不均一な充填剤と、を含むことができる。あるいは、ブレンドは、最大10m2/gの平均表面積を有する第1の不均一な充填剤と、少なくとも10m2/gの平均表面積を有する第2の不均一な充填剤と、を含むことができる。
【0104】
あるいは、又は組み合わせて、ブレンドは、最大500ナノメートルの数平均細孔容積を有する不均一な充填剤と、少なくとも500ナノメートルの数平均細孔容積を有する第2の不均一な充填剤と、を含むことができる。あるいは、ブレンドは、最大1マイクロメートルの数平均細孔容積を有する不均一な充填剤と、少なくとも1マイクロメートルの数平均細孔容積を有する第2の不均一な充填剤と、を含むことができる。
【0105】
更なる代替として、充填剤は、活性炭、バーミフォーム炭素、ゼオライト、金属有機構造体(MOF)、パーライト、アルミナ、グラスバブルズ、及びガラスビーズの組み合わせなどの、2つ以上の異なる充填剤組成物で構成され得る。
【0106】
音響物品
3つの例示的実施形態による音響物品が
図1~
図3に示され、以降はそれぞれの番号100、200、及び300によって参照される。示されるように、これらの音響物品100、200、300のそれぞれは、多層構造である。
図1~
図3及びその後の図では、該当する場合、入射音波と反射音波の方向が棒線の矢印で表される。
【0107】
物品100は、3つの主要層から構成される。層は、以下の順序で、第1の多孔質層102、第2の多孔質層104、及び第3の多孔質層106を含む。任意に、及び示されるように、多孔質層102、104、及び多孔質層104、106は、互いに直接接触している。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の層がこれらの層の間に配置されてもよく、又は多孔質層102、106の外部に面する主表面に沿って延びてもよい。あるいは、多孔質層102、104の一方又は両方を除外することができる。
【0108】
物品100では、多孔質層102、104、106は繊維不織布層として図示されているが、上記の「多孔質層」と題するサブセクションで詳細に説明されるように、他の種類の多孔質層(例えば、連続気泡発泡体、微粒子床)を代わりに使用してもよいことを理解されたい。
図1に示されるように、第2の多孔質層104は不均一な充填剤を含み、多孔質層102、106は、不均一な充填剤を実質的に欠いている。
【0109】
多孔質炭素などの望ましい音響特性を有する不均一な充填剤は、第2の多孔質層104内の複数の繊維内に捕捉されている。不均一な充填剤は、第2の多孔質層104及び第2の多孔質層104に接触している不均一な充填剤の総重量に対して、1重量%~99重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%の量で存在してもよく、又はいくつかの実施形態では、1重量%、2、3、4、5、7、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、若しくは99重量%の値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい量で存在してもよい。不均一な充填剤の特定の態様は、「不均一な充填剤」と題された上記サブセクションに記載されている。
【0110】
任意に、図示されていないが、不均一な充填剤は、第2の多孔質層104内で部分的にのみ捕捉されていて、一部の不均一な充填剤は第2の多孔質層104の外側に存在してもよい。いくつかの実施形態では、本質的に、不均一な充填剤が、第2の多孔質層104内に捕捉されておらず、かつ本質的に全ての不均一な充填剤が、第2の多孔質層104に隣接する不均一な充填剤の微粒子床に存在する。
【0111】
有利には、活性炭から構成される不均一な充填剤の添加により、50Hz~200Hzの音周波数などの低音周波数での音響物品の音響吸収を実質的に増加させることができる。いくつかの実施形態では、活性炭から構成される不均一な充填剤の添加により、50Hz、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、400、500、700、1000、2000、3000、4000、5000、7000、若しくは10,000Hzの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい音周波数にわたって音響物品の音響吸収を実質的に増加させることができる。
【0112】
図示されている実施形態では、第3の多孔質層106は、第1の多孔質層102の厚さよりも著しく大きい厚さを有する。
図2は、第1、第2、及び第3の多孔質層202、204、206を含む代替的な実施形態を示し、これらは
図1のものと類似しているが、第3の多孔質層206が第1の多孔質層202の厚さよりも著しく大きい厚さを有する点が異なる。
【0113】
これらの構造では、1つの多孔質層は、他の多孔質層の厚さの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、若しくは1000%の値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい厚さを有し得る。
【0114】
提供される音響物品は、好ましくは、当面の用途における空間的制約内で所望の音響性能を達成する全体的な厚さを有する。個々の多孔質層は、1マイクロメートル~10センチメートル、30マイクロメートル~1センチメートル、50マイクロメートル~5000ミリメートルの全体の厚さを有してもよく、又はいくつかの実施形態では、1マイクロメートル、2、5、10、20、30、40、50、100、200、500マイクロメートル、1ミリメートル、2、3、4、5、7、10、20、50、70、若しくは100ミリメートルの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい全体の厚さを有してもよい。
【0115】
多孔質層106、206は、全音響構造の低周波性能を改善する抵抗材料として機能することができる。多孔質層106、206はまた、粒子充填多孔質層104、204に到達すると音波の反射を誘発する傾向がある音響粒子速度を低減することができる。このシナリオでは、音響インピーダンス(圧力/速度)は速度がゼロに近づくにつれ非常に高くなるため、反射が発生しやすくなる。しかしながら、音響粒子の存在により、前述のように、空気分子の可逆吸着/脱着によって引き起こされる圧力が低下した層として作用することができる。圧力を下げると、音響インピーダンスも低下し、音の一部が透過することができ、かつ音響物品100、200内のより多くの音エネルギーの捕捉が助長され、ひいては音響性能が改善される。
【0116】
この実施形態では、不均一な充填剤は、実質的に互いに及び任意の多孔質層から分断されている。すなわち、不均一な充填剤の粒子は、互いに物理的に付着せず、周囲の構造から独立して少なくとも限定された移動又は振動が可能である。これらの場合、捕捉されている粒子は、繊維自体とはほとんど独立して、不織布材料の繊維内で移動及び振動することができる。
【0117】
物品300は、不均一な充填剤を実質的に含まない3つの多孔質層302、306、310の間に挟まれた不均一な充填剤で充填された2つの多孔質層304、308を含むという点で、物品100、200の特徴及び利点を兼ね備えている。
【0118】
音響物品が6つ、7つ、又は更にはより多くの多孔質層で構成され、少なくとも1つの多孔質層が不均一な充填剤を含有するか、そうでなければ接触している、更なる実施形態もまた可能であることを理解されたい。
【0119】
図4は、第1の多孔質層402及び第2の多孔質層404、並びに第1の多孔質層402と第2の多孔質層404との間に配置された不均一な充填剤420の層を有する音響物品400の側面図を示す。
図5は、同じ物品400を平面図で示しており、明確にするために第1の多孔質層402が除去されている。多孔質層402、404及び不均一な充填剤420は、
図1~
図3中の多孔質層と類似している。多孔質層402、404は、物品400の音響性能に寄与するだけでなく、不均一な充填剤420を多孔質層402、404間の空間に物理的に留めて固定するようにも機能することができる。
【0120】
物品400の更なる注目すべき側面は、壁432による、複数の区画チャンバ430へのその分割である。チャンバ430は、互いに対して横方向に配置され、それぞれのチャンバ430は、示されるように、第1の多孔質層402、不均一な充填剤の層420、及び第2の多孔質層404、を含む。任意に、及び示されるように、チャンバ430は、平面図においてグリッドパターンで配置される。
【0121】
チャンバ430を互いに分け隔てる壁432は、それらの組成物において特に制限されず、多孔質であっても、多孔質でなくてもよい。好ましい実施形態では、壁432は、低流動抵抗を有する可撓性ポリマー膜、スクリム、又は有孔フィルム(有孔フィルムなど)から作製される。有利には、壁432はまた、物品400内の側部境界の存在に基づいて、グレージング波(grazing wave)の消散を提供することによって、音響性能を改善することができる。
【0122】
再び
図4及び
図5を参照すると、壁432は、物品400の主表面上のそれぞれの直交方向に沿って画定された規則的な間隔Δ
1及びΔ
2を有する。理想的な寸法は対象の音周波数に依存するが、Δ
1及びΔ
2のそれぞれは、独立して、多孔質層402、404の一方又は両方の厚さの、0.1%~200%の範囲内でもよく、又はいくつかの実施形態では、0.1%、0.2、0.5、1、2、5、7、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、150、200、250、300、350、400、450、若しくは500%の値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きくてもよい。
【0123】
図6は、有孔フィルムから構成される多孔質層に基づく音響物品500を対象とする。音響物品500は、第1の有孔フィルム502と第2の有孔フィルム504(これまで「有孔フィルム」と題するサブセクションの下に記載されている)との間に留めた不均一な充填剤520を有している。フィルム502、504は、物品500の主表面に垂直な方向に沿ってそれぞれのフィルム502、504にかけて延びている複数の開口503、505(又は貫通穴)を有する。任意に、及び図示されるように、複数の開口503、505は、開口503、505間の規則的な中心間間隔を有する所定の二次元パターンで配置される。
【0124】
示される実施形態では、開口503は、概ね開口505と位置合わせされているが、フィルム502、504は、違って対称ではない。フィルム504は、フィルム502よりも著しく厚い。更に、開口503は概ね円筒形であるが、開口505はテーパ状の側壁を有し、概ね円錐形状の開口部を形成する。再び
図6を参照すると、不均一な充填剤520は、概ね円錐形の開口部内に存在し、不均一な充填剤520の粒子が開口503、505の最小幅よりも著しく大きいため、フィルム502、504の間に機械的に保持される。
【0125】
フィルム502、504は、接着剤の使用、熱積層、及び機械的結合を含む、任意の既知の方法によって互いに固定することができる。フィルム502、504のいずれかはまた、これらの方法のいずれかを使用して前述したように、繊維不織布層に結合することもできる。いくつかの実施形態では、繊維不織布層は、不均一な充填剤、有孔フィルム、又は別の繊維不織布層へのその付着を補助する粘着性ポリマー繊維を含有する。好適な粘着性繊維としては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン又はポリエチレン/ポリプロピレンコポリマーから作られた接着繊維が挙げられる。
【0126】
図7は、第1の有孔フィルム602及び第2の有孔フィルム604と、それらの間に配置された不均一な充填剤620と、を含むという点で、音響物品500と多くの点が類似する音響物品600を示す。しかしながら、物品600は、図に示されるように、入射音波から離れて面する音響物品の主表面に接触し、それに沿って延びている密閉空気間隙640を追加的に含むという点で、前の物品とは異なる。空気間隙640は、特定の周波数での伝達損失を向上させるようにサイズ決定され得る共振チャンバを提供する。
【0127】
空気間隙640は、1/4波長理論に基づく音響共振器として作用することができる。この理論によれば、ピーク音響吸収は、音響層の厚さの1/4波長を表す周波数で生じる。より大きな空気間隙は、ピーク音響吸収をより低い周波数にシフトさせる。例えば、厚さ5センチメートルの空気間隙では、1600Hzでピーク吸収があり、10cmの空気間隙では、800Hzでピーク吸収が発生する場合がある。
【0128】
対象の音響周波数に応じて、空気間隙は、10マイクロメートル~10センチメートル、500マイクロメートル~5センチメートル、1ミリメートル~3センチメートルの厚さを有してもよく、又はいくつかの実施形態では、10マイクロメートル、20、30、40、50、70、100、200、500、1ミリメートル、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100ミリメートル(10センチメートル)の値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい厚さを有してもよい。
【0129】
図8は、不均一な充填剤で充填された吹込マイクロファイバーから構成される第1の繊維不織布層702を使用する、別の多層の実施形態による音響物品700を示す。充填された不織布層702は、不均一な充填剤を含まない第2の不織布層704と接触している。任意に、第1の不織布層702は、第2の不織布層704の厚さよりも著しく薄い厚さを有する高密度化層のために圧縮されている。捕捉された粒子が高密度化され、かつ存在することにより、第1の不織布層702は、第2の不織布層704よりもはるかに高い密度を有することができる。不織布層702、704は、一対の抵抗スクリム706、708の間に挟まれている。
【0130】
粒子充填層は概ね、典型的なメルトブロー繊維不織布バッキング(150MKS Raylsよりも大きい)と比較して、低い流動抵抗(50MKS Rayls未満)を有する。抵抗スクリム706、708は、高流動抵抗(例えば、最大2000MKS Rayls)を呈する薄い多孔質層である。いくつかの実施形態では、抵抗スクリム706、708は、5000マイクロメートル未満の厚さを有し、ごくわずかな曲げ剛性を有する。
【0131】
抵抗スクリムなどの抵抗層を含めることにより、特により低い周波数での音響性能を更に向上させることができる。これは、音響物品全体の流動抵抗の増加、及び第2の不織布層704内の音エネルギーの捕捉の増加に起因する。抵抗層は、10MKS Rayls~5000MKS Rayls、20MKS Rayls~3000MKS Rayls、又は50MKS Rayls~1000MKS Raylsへの流動抵抗を有することができる。いくつかの実施形態では、抵抗層を通る流動抵抗は、10MKS Rayls、20、30、40、50、70、100、200、300、400、500、600、700、1000、1100、1200、1500、1700、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、若しくは8000MKS Raylsの値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい。
【0132】
抵抗層は、1マイクロメートル~10センチメートル、30マイクロメートル~1センチメートル、50マイクロメートル~5000マイクロメートルの厚さを有してもよく、又はいくつかの実施形態では、10マイクロメートル、20、30、40、50、70、100、200、500、1ミリメートル、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100ミリメートル(10センチメートル)の値について、これ未満、これと同じ、又はこれより大きい厚さを有してもよい。
【0133】
図9~
図14はそれぞれ、1つ以上の有孔フィルムが非音響構造構成要素に直接又は間接的に結合されている音響アセンブリの一例を示す。
【0134】
図9は、不均一な充填剤を実質的に含まない繊維不織布層804に隣接する不均一な充填剤で充填された有孔フィルム802を有する音響アセンブリ800を示す。示されるように、入射音波は最初に有孔フィルム802と接触している。有孔フィルム802とは反対側に、繊維不織布層804は、主要構造850にわたって延び、これと接触している。
【0135】
図10は、一対の音響物品902、906を有する音響アセンブリ900を示しており、各音響物品902、906は、
図6に前述したように、それらの間に配置された不均一な充填剤を有する一対の有孔フィルムを含む。音響物品902、906の間に延びているのは、不均一な充填剤を実質的に含まない繊維不織布層904である。示されるように、音響物品902は入射音波に面し、音響物品906は主要構造950と接触している。
【0136】
図11は、空気間隙1040の分だけ互いに離れた少なくとも第1の音響物品1002及び第2の音響物品1004を有する音響アセンブリ1000を示す。示されるように、任意の数の追加の音響物品が、音響物品1002、1004と主要構造1050との間に挿入されてもよい。有利には、アセンブリ1000内の有孔フィルムは、互いに異なる開口寸法、間隔、及び配列を有して、既知の音周波数に対するカスタマイズされた音響応答を提供することができる。示されるように、入射音波は最初に音響物品1002に接触するが、これらの音波は、アセンブリ1000内のフィルムのいずれか及び全てを通って伝播することができる。
【0137】
図12は、音響物品1102及び微粒子床1160を有する音響物品1100を示す。微粒子床1160は、音響物品1102と主要構造1150との間に画定された間隙内に捕捉された第2の不均一な充填剤から構成される。第1及び/又は第2の不均一な充填剤は、活性炭又はバーミフォーム炭素粒子などの、音響活性多孔質粒子を含む。微粒子床は、0.4g/cc以上の密度を有することができ、繊維不織布層に典型的に見られる質量よりも著しく大きな質量を提供するので、特定の音響用途に有利であり得る。
【0138】
図13は、音響物品1202が、不均一な充填剤で充填され、主要構造1250から離れている音響アセンブリ1200を示す。音響物品1202の一方の側面は入射音波に面し、反対側は主要構造1250に面する。音響物品1202は、複数の壁1232によって順に画定される、一連の密閉された音響チャンバ(
図4~
図5に示されるものと類似)によって、主要構造1250に接続されている。各壁1232は、音響物品1202に対して概ね垂直な平面に沿って配向されている。壁1232は、有孔フィルムから作られており、追加的なグレージング流(grazing flow)の消散を提供する。
【0139】
図14は、音響物品1302が主要構造1350から離れている音響アセンブリ1300を示す。音響物品1302は、複数のスタンドオフ1370によって主要構造1350に結合されている。スタンドオフ1370は、示されるように中実であり、主要構造1350における振動に応答して構造減衰効果を提供することができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、上記の音響物品は、音響バリア及び音響吸収体の両方の特性が同時に求められる用途で使用するように設計することができる。従来の多孔質音響吸収体は、音響バリア性能が不足しており、これは、音伝達損失性能が劣っていることを意味し、音響吸収に対する孔容積の要求値が高いことを背景とする。従来のアプローチでは、これらの用途に2つの異なる処理が使用されており、例えば、吸収体処理は音響エネルギーを消散するために使用され、バリア処理は音エネルギーの伝達を遮断するために使用されていた。
【0141】
不織布繊維材料のバリア性能を改善する簡素な方法の1つは、材料の空気流動抵抗を高めることである。しかしながら、この手段を取る場合、材料全体の孔容積のレベルと音響圧力の粘性消散との両方が低減されるため、材料の音響吸収性能が失われる可能性が非常に高くなる。悪くない吸収性能及びバリア性能を同時に得るには、空気流動抵抗を高めながら、材料全体に一定レベルの孔容積を保持することが可能である。
【0142】
次の実施例に示されるように、高い孔容積と空気流動抵抗とを組み合わせることにより、提供された音響物品が音響吸収体及び音響バリアの両方として作用することが可能になる。これらの実施形態では、非常に高い表面積(典型的には800m2/gを超える)を有する活性炭などの多孔質炭素が、高レベルで充填されて、かなりの量の音響エネルギーを消散させる。驚くべきことに、これらの材料は、同じ厚さを有する固体バリアの質量則によって予測されるものを超える防音性能を提供することができる。
【0143】
使用方法
提供される音響物品は、音伝達を制御するための多数の多様な用途に組み込むことができる。例えば、
図9~
図14の主要構造は、固定構造物、陸上車両、水上車両、又は航空宇宙用機体の一部であり得る。固定構造物の例としては、機械設備などの建物デバイス及びノイズ発生デバイスが挙げられる。陸上車両の例としては、自動車及び列車が挙げられる。航空宇宙用車両の例としては、航空機、ヘリコプター、及び宇宙船が挙げられる。
【0144】
陸上車両としては、商用トラック、乗用トラック(passenger truck)、自動車両(automatous vehicle)、トレーラー、鉄道車両、鉄道機関車、オートバイなどが挙げられる。このような車両の場合、提供された音響物品は、ドア、屋根、床下、車両トラック、エンジンコンパートメント、手荷物エリア、及びタイヤに含まれ得る。鉄道車両としては、地下鉄、鈍行通勤列車、及び高速列車が挙げられる。
【0145】
建物デバイスの例としては、加熱及び冷却デバイス、放熱器、送風機、並びに対応するダクト作業及び空気処理機器を包含するHVAC(加熱、換気、空調)システムが挙げられる。機械デバイスとしては、内燃機関、モーター、箔押機、圧縮機、乾燥機、ポンプ、射出成形機、オーブン、機械輸送デバイス、コンベアが挙げられ、更に、芝生/草刈り機、送風機、除雪機、トラクター、鋤、及び刈り取り機などの産業用/商業用又は家庭用機器を挙げることができる。他の家庭及び建物デバイスとしては、冷蔵庫、電子レンジ、食器洗浄機、衣類洗浄機、衣類乾燥機、真空掃除機、及び製氷機などの器具が挙げられる。
【0146】
より広義には、提供される音響物品は、建物、家、商業地、製造プラント、空港、発電所、発電プラント、病院、地下鉄、トンネル、エレベーター、エスカレーター、ショッピングセンター、小売センター、スポーツスタジム、コンサートホール、倉庫、及びオフィスビルに使用することができる。特定の用途としては、天井タイル、音低減パネル、壁、立方体の壁及び床での使用が挙げられる。装飾壁カバー(例えば、壁紙、布、カーテン)を音響物品又はアセンブリに積層又は他の方法で適用することも可能である。同様に、音響物品は、コンピューター、携帯電話、タブレット、及びサーバファームなどの電子機器において有用であり得る。所望であれば、提供される物品及びアセンブリは、難燃性添加剤を含むことができる。
【0147】
音響物品が構造又は車両に配置される場合、物品は、2つのパネルの間に位置決めされ、固定され得る。自動車又は航空機の場合、第1のパネルは内装材であってもよく、第2のパネルは、鋼又はアルミニウムなどの材料を含むことができる自動車車体又は航空機胴体などの外面とすることができる。いくつかの追加的な例では、音響物品は、音響物品を少なくとも部分的に取り囲むシェル又はバッグを備えて配置することができる。次いで、第1及び第2のパネルがシェルに取り付けられる。シェルは、ポリフッ化ビニル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エポキシ、又はこれらの混合物などの任意の好適な材料を含むことができる。シェルは、ポリアミド、不織布スクリム、鉱物繊維、又はこれらの混合物から選択される補強材料を更に含むことができる。
【0148】
網羅することを意図するものではないが、音響物品、アセンブリ、及び関連する方法の更なる実施形態は以下のとおりである。
【0149】
1. 音響物品であって、多孔質層と、多孔質層と接触し、多孔質炭素を含み、かつ0.1m2/g~10,000m2/gの平均表面積を有する不均一な充填剤と、を含み、音響物品は、100MKS Rayls~8000MKS Raylsの流動抵抗を有する、音響物品。
【0150】
2. 音響物品が、100MKS Rayls~6000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態1に記載の音響物品。
【0151】
3. 音響物品が、100MKS Rayls~5000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態2に記載の音響物品。
【0152】
4. 多孔質層が、複数の繊維を有する不織布繊維層を含み、不均一な充填剤が、複数の繊維内に少なくとも部分的に捕捉されている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の音響物品。
【0153】
5. 複数の繊維が、0.1マイクロメートル~2000マイクロメートルのメジアン繊維径を有する、実施形態4に記載の音響物品。
【0154】
6. 複数の繊維が、5マイクロメートル~1000マイクロメートルのメジアン繊維径を有する、実施形態5に記載の音響物品。
【0155】
7. 複数の繊維が、10マイクロメートル~500マイクロメートルのメジアン繊維径を有する、実施形態6に記載の音響物品。
【0156】
8. 複数の繊維が、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ナイロン6,6、ポリウレタン、ポリブテン、ポリ乳酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエチレン-co-ビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、又はこれらのコポリマー若しくはブレンドから選択されるポリマーを、複数の繊維の総重量を基準にして、少なくとも35重量%の量で含む、実施形態4~7のいずれか1つに記載の音響物品。
【0157】
9. 複数の繊維が接着繊維を含む、実施形態4~8のいずれか1つに記載の音響物品。
【0158】
10. 複数の繊維が熱可塑性半結晶性ポリマーを含む、実施形態4~9のいずれか1つに記載の音響物品。
【0159】
11. 複数の繊維がメルトブロー繊維を含む、実施形態4~9のいずれか1つに記載の音響物品。
【0160】
12. 複数の繊維が、最大10マイクロメートルのメジアン径を有する複数の第1の繊維と、少なくとも10マイクロメートルのメジアン径を有する複数の第2の繊維と、を含む、実施形態4~11のいずれか1つに記載の音響物品。
【0161】
13. 複数の繊維が、20,000g/molを超える重量平均分子量を有するポリマーを含む、実施形態4~12のいずれか1つに記載の音響物品。
【0162】
14. 繊維不織布層が、収縮試験に基づいて、150℃で7日後に15%未満の収縮率を示す、実施形態4~13のいずれか1つに記載の音響物品。
【0163】
15. 複数の繊維が繊維ガラスを含む、実施形態4~9のいずれか1つに記載の音響物品。
【0164】
16. 多孔質層が連続気泡発泡体を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の音響物品。
【0165】
17. 多孔質層が微粒子床を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の音響物品。
【0166】
18. 微粒子床が、活性炭、バーミフォーム炭素、ゼオライト、金属有機構造体(MOF)、パーライト、アルミナ、グラスバブルズ、ガラスビーズ、及びこれらの混合物の粒子を含む、実施形態17に記載の音響物品。
【0167】
19. 微粒子床が、0.1マイクロメートル~2000マイクロメートルの平均粒子サイズを有する粒子を含む、実施形態17又は18に記載の音響物品。
【0168】
20. 微粒子床が、5マイクロメートル~1000マイクロメートルの平均粒子サイズを有する粒子を含む、実施形態19に記載の音響物品。
【0169】
21. 微粒子床が、10マイクロメートル~500マイクロメートルの平均粒子サイズを有する粒子を含む、実施形態20に記載の音響物品。
【0170】
22. 多孔質層が、30マイクロメートル~5000マイクロメートルの平均最小直径である複数の開口を有する有孔フィルムを含み、不均一な充填剤が、有孔フィルムにわたって層内に延びている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の音響物品。
【0171】
23. 有孔フィルムが、単独で10MKS Rayls~8000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態22に記載の音響物品。
【0172】
24. 有孔フィルムが、単独で30MKS Rayls~6000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態23に記載の音響物品。
【0173】
25. 有孔フィルムが、不均一な充填剤の層に接着結合されている、実施形態22~24のいずれか1つに記載の音響物品。
【0174】
26. 複数の繊維が、有孔フィルムを不均一な充填剤の層に接着結合する粘着性繊維を含む、実施形態25に記載の音響物品。
【0175】
27. 不均一な充填剤のうちの少なくとも一部が、複数の開口内に存在する、実施形態22~26のいずれか1つに記載の音響物品。
【0176】
28. 多孔質層が、0.1GPa~420GPaの曲げ弾性率を有する、実施形態1~27のいずれか1つに記載の音響物品。
【0177】
29. 多孔質層が、0.2GPa~210GPaの曲げ弾性率を有する、実施形態28に記載の音響物品。
【0178】
30. 多孔質層が、0.2GPa~5GPaの曲げ弾性率を有する、実施形態29に記載の音響物品。
【0179】
31. 多孔質層が、1マイクロメートル~10センチメートルの厚さを有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の音響物品。
【0180】
32. 多孔質層が、30マイクロメートル~1センチメートルの厚さを有する、実施形態31に記載の音響物品。
【0181】
33. 多孔質層が、50マイクロメートル~5000マイクロメートルの厚さを有する、実施形態32に記載の音響物品。
【0182】
34. 多孔質層が、第1の多孔質層であり、更に、第1の多孔質層にわたって延びている、10MKS Rayls~8000MKS Raylsの流動抵抗を有する第2の多孔質層を含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の音響物品。
【0183】
35. 第2の多孔質層が、30MKS Rayls~6000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態34に記載の音響物品。
【0184】
36. 第2の多孔質層が、50MKS Rayls~4000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態35に記載の音響物品。
【0185】
37. 第2の多孔質層が不織布繊維層を含む、実施形態34~36のいずれか1つに記載の音響物品。
【0186】
38. 第2の多孔質層が、30マイクロメートル~5000マイクロメートルの平均最小直径である複数の開口を有する有孔フィルムを含む、実施形態34~36のいずれか1つに記載の音響物品。
【0187】
39. 第2の多孔質層が、第1の多孔質層内に不均一な充填剤を固定するように作用している、実施形態34~38のいずれか1つに記載の音響物品。
【0188】
40. 第2の多孔質層が、0.01ミリメートル~100ミリメートルの厚さを有する、実施形態34~39のいずれか1つに記載の音響物品。
【0189】
41. 第2の多孔質層が、0.1ミリメートル~50ミリメートルの厚さを有する、実施形態40に記載の音響物品。
【0190】
42. 第2の多孔質層が、0.3ミリメートル~10ミリメートルの厚さを有する、実施形態41に記載の音響物品。
【0191】
43. 不均一な充填剤が、多孔質層及び多孔質層に接触している不均一な充填剤の総重量に対して、10重量%~95重量%の量で存在する、実施形態1~42のいずれか1つに記載の音響物品。
【0192】
44. 不均一な充填剤が、多孔質層の重量に対して、15重量%~85重量%の量で存在する、実施形態43に記載の音響物品。
【0193】
45. 不均一な充填剤が、多孔質層の重量に対して、20重量%~80重量%の量で存在する、実施形態44に記載の音響物品。
【0194】
46. 不均一な充填剤が、第2の多孔質層内に更に配置されている、実施形態34~45のいずれか1つに記載の音響物品。
【0195】
47. 第2の多孔質層内の不均一な充填剤が、第2の多孔質層及び第2の多孔質層に接触している不均一な充填剤の総重量に対して、10重量%~95重量%の量で存在する、実施形態46に記載の音響物品。
【0196】
48. 第2の多孔質層内の不均一な充填剤が、第2の多孔質層の重量に対して、15重量%~85重量%の量で存在する、実施形態47に記載の音響物品。
【0197】
49. 第2の多孔質層内の不均一な充填剤が、第2の多孔質層の重量に対して、20重量%~80重量%の量で存在する、実施形態48に記載の音響物品。
【0198】
50. 多孔質層の主表面のうちの少なくとも一部分にわたって延びている抵抗層を更に含み、抵抗層は、10MKS Rayls~8000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態1~49のいずれか1つに記載の音響物品。
【0199】
51. 抵抗層が、20MKS Rayls~6000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態50に記載の音響物品。
【0200】
52. 抵抗層が、30MKS Rayls~4000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態51に記載の音響物品。
【0201】
53. 抵抗層がスクリムを含む、実施形態50~52のいずれか1つに記載の音響物品。
【0202】
54. 抵抗層が1マイクロメートル~10センチメートルの厚さを有する、実施形態50~53のいずれか1つに記載の音響物品。
【0203】
55. 抵抗層が30マイクロメートル~1センチメートルの厚さを有する、実施形態54に記載の音響物品。
【0204】
56. 抵抗層が50マイクロメートル~5000マイクロメートルの厚さを有する、実施形態55に記載の音響物品。
【0205】
57. 多孔質層に隣接する空気間隙を更に含む、実施形態1~56のいずれか1つに記載の音響物品。
【0206】
58. 空気間隙が10マイクロメートル~10センチメートルの厚さを有する、実施形態57に記載の音響物品。
【0207】
59. 空気間隙が500マイクロメートル~5センチメートルの厚さを有する、実施形態58に記載の音響物品。
【0208】
60. 空気間隙が1ミリメートル~3センチメートルの厚さを有する、実施形態59に記載の音響物品。
【0209】
61. 不均一な充填剤が、0.5m2/g~5000m2/gの平均表面積を有する、実施形態1~60のいずれか1つに記載の音響物品。
【0210】
62. 不均一な充填剤が、50m2/g~2500m2/gの平均表面積を有する、実施形態61に記載の音響物品。
【0211】
63. 不均一な充填剤が、0.1ナノメートル~50マイクロメートルの数平均孔径を有する、実施形態1~62のいずれか1つに記載の音響物品。
【0212】
64. 不均一な充填剤が、1ナノメートル~40マイクロメートルの数平均孔径を有する、実施形態63に記載の音響物品。
【0213】
65. 不均一な充填剤が、2.5ナノメートル~30マイクロメートルの数平均孔径を有する、実施形態64に記載の音響物品。
【0214】
66. 不均一な充填剤が、最大500ナノメートルの最小孔径を有する、実施形態1~65のいずれか1つに記載の音響物品。
【0215】
67. 不均一な充填剤が、最大200ナノメートルの最小孔径を有する、実施形態66に記載の音響物品。
【0216】
68. 不均一な充填剤が、最大100ナノメートルの最小孔径を有する、実施形態67に記載の音響物品。
【0217】
69. 不均一な充填剤が、多孔質アルミナ、ゼオライト、雲母、エアロゲル、シリカ、バーミキュライト、パーライト、金属有機構造体、又はこれらの混合物を更に含む、実施形態1~68のいずれか1つに記載の音響物品。
【0218】
70. 不均一な充填剤が、0.01cm3/g~5cm3/gの数平均細孔容積を有する、実施形態69に記載の音響物品。
【0219】
71. 多孔質炭素が活性炭を含む、実施形態70に記載の音響物品。
【0220】
72. 多孔質炭素が、バーミフォーム炭素を含む、実施形態70又は71に記載の音響物品。
【0221】
73. 不均一な充填剤が閉孔充填剤(closed pore filler)を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の音響物品。
【0222】
74. 閉孔充填剤が、膨張ポリマー微小球、セラミック微小球、中空グラスバブルズ、又はこれらの混合物を含む、実施形態73に記載の音響物品。
【0223】
75. 不均一な充填剤が、互いに実質的に分断された粒子を含む、実施形態1~74のいずれか1つに記載の音響物品。
【0224】
76. 不均一な充填剤が、0.1マイクロメートル~2000マイクロメートルの数平均粒子サイズを有する、実施形態1~75のいずれか1つに記載の音響物品。
【0225】
77. 不均一な充填剤が、10マイクロメートル~1000マイクロメートルの数平均粒子サイズを有する、実施形態76に記載の音響物品。
【0226】
78. 不均一な充填剤が、30マイクロメートル~500マイクロメートルの数平均粒子サイズを有する、実施形態77に記載の音響物品。
【0227】
79. 不均一な充填剤が、最大1300m2/gの平均表面積を有する第1の不均一な充填剤と、少なくとも1300m2/gの平均表面積を有する第2の不均一な充填剤と、を含むブレンド充填剤である、実施形態1~78のいずれか1つに記載の音響物品。
【0228】
80. 不均一な充填剤が、最大500ナノメートルの数平均孔径を有する第1の不均一な充填剤と、少なくとも500ナノメートルの数平均孔径を有する第2の不均一な充填剤と、を含む、実施形態1~78のいずれか1つに記載の音響物品。
【0229】
81. 不均一な充填剤が、多孔質炭素を含む第1の不均一な充填剤と、ゼオライト、アルミナ、グラスバブルズ、カーボンブラック、炭素繊維、及びガラスビーズのうちの1つ以上を含む第2の不均一な充填剤と、を含む、実施形態1~78のいずれか1つに記載の音響物品。
【0230】
82. 30マイクロメートル~5000マイクロメートルの平均最小直径を有する複数の開口と、有孔フィルムにわたって層内に延びている不均一な充填剤と、を有する有孔フィルム、を含み、不均一な充填剤のうちの少なくとも一部が、複数の開口内に存在する、音響物品。
【0231】
83. 音響物品の製造方法であって、音響物品の音響吸収を50Hz~2,000Hzの音周波数で増加させるために、多孔質炭素を含む不均一な充填剤を多孔質層内に配置することであって、不均一な充填剤が、0.1m2/g~10,000m2/gの平均表面積を有する、配置すること、を含む、製造方法。
【0232】
84. 多孔質層が、複数の繊維を含む不織布繊維ウェブを含み、多孔質炭素が、複数の繊維内に少なくとも部分的に捕捉されている、実施形態83に記載の方法。
【0233】
85. 多孔質層が、30マイクロメートル~5000マイクロメートルの平均最小直径である複数の開口を有する有孔フィルムを含み、不均一な充填剤を多孔質層内に配置することは、不均一な充填剤を複数の開口内に配置すること、を含む、実施形態83に記載の方法。
【0234】
86. 多孔質層が第1の多孔質層であり、第1の多孔質層上に第2の多孔質層を配置して、第1の多孔質層内に不均一な充填剤を固定すること、を更に含む、実施形態83~85のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
87. 第2の多孔質層が、30マイクロメートル~5000マイクロメートルの平均最小直径である複数の開口を有する有孔フィルムを含む、実施形態86に記載の方法。
【0236】
88. 多孔質層が、10MKS Rayls~8000MKS Raylsの流動抵抗を有する、実施形態83~87のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
89. 実施形態1~82のいずれか1つに記載の音響物品を含み、音響物品に結合された主要な航空宇宙又は自動車構造を更に含む、音響アセンブリ。
【0238】
90. 実施形態1~82のいずれか1つに記載の音響物品を使用する方法であって、表面に近接して音響物品を配置して、表面の振動を減衰させること、を含む、方法。
【0239】
91. 実施形態1~82のいずれか1つに記載の音響物品を使用する方法であって、音響物品を空気キャビティに近接して配置して、空気キャビティを通って伝達される音エネルギーを吸収すること、を含む、方法。
【0240】
92. 音エネルギーの吸収が、音響物品を通る流体の正味の流れが本質的にゼロで起こる、実施形態91に記載の音響物品の使用方法。
【実施例】
【0241】
【0242】
試験方法
垂直入射音響吸収
ASTM E1050-12「Standard Test Method for Impedance and Absorption of Acoustical Materials Using a Tube,Two Microphones and a Digital Frequency Analysis System」に従って、垂直入射音響吸収を試験した。Bruel&Kjaer(Denmark)から入手可能な「IMPEDANCE TUBE KIT(50HZ-6.4KHZ)TYPE 4206」を使用した。略語「α」を使用して、垂直入射吸収係数を報告した。
【0243】
伝達損失音響試験
ASTM E2611-09(Standard Test Method for Measurement of Normal Incidence Sound Transmission of Acoustical Materials based on the Transfer Matrix Method)に概説される手順に従って、バリア特性を確認するための音響材料の伝達損失を測定した。材料によって伝達、反射、及び消散される音響エネルギーを表す伝達係数、反射係数、及び消散係数を計算し、T、R、及びαdとして報告した。
【0244】
活性炭材料の表面積
AUTOSORB IQ(Quantachrome Instruments(Boynton Beach,Florida))を使用して、市販の活性炭材料の表面積を分析した。77KでのN2吸着によって表面積を求めた。
【0245】
空気流動抵抗
ASTM C-522-03(Reproved 2009)、「Standard Test Method for Airflow Resistance of Acoustical Materials」に従って、「手で剥離した高密度化層部分」にわたる流動抵抗を測定した。測定に使用した機器は、POROUS Materials,Inc.(Ithaca,NY)から入手可能なPERMEAMETER Model Number GP-522-Aであった。流動抵抗をRayls(Pa・s/m)単位で報告した。
【0246】
実施例におけるBMFウェブ粒子層の流動抵抗は、約30MKS Raylsであると測定された。
【0247】
実施例1(EX-1)
Wente,Van A.、「Superfine Thermoplastic Fibers」in Industrial Engineering Chemistry、Vol.48ページ1342以降(1956)、及び1954年5月25日に発行されたWente,Van A.Boone,C.D.及びFluharty,E.L.による「Manufacture of Superfine Organic Fibers」と題されたNaval Research LaboratoriesのレポートNo.4364に記載されているものと同様の方法によって、不織布メルトブローウェブを調製したが、例外点として、ドリルダイを使用して繊維を製造した。
【0248】
ダイを通して高速の加熱空気流にポリプロピレン樹脂を押出成形し、その凝固及び回収の前にポリプロピレン吹込マイクロファイバー(「BMF」)を延伸し、細径化させた。ポリプロピレン吹込マイクロファイバーの流れを、米国特許第4,118,531号(Hauser)に記載の方法に従ってポリプロピレン短繊維とブレンドした。更に、米国特許第3,971,373号(Braun)の方法に従って、ポリプロピレン吹込マイクロファイバーの流れにAC-1活性炭粒子を供給した。ポリプロピレン吹込マイクロファイバー、ポリプロピレン短繊維、及び活性炭粒子のブレンドを、ナイロンベルト上でランダムに回収し、活性炭粒子を充填したポリプロピレンBMFウェブ粒子層を得た。BMFウェブ粒子層を、95重量%の活性炭粒子と5重量%の吹込マイクロファイバーとの比で充填し、総面積密度が200gsmとなるようにした。
【0249】
垂直入射音響吸収をASTM E1050-12に従って試験した。EX-1の粒子層を、20mmの空気空間バッキングを有するインピーダンスチューブに取り付けた。試験結果の概要は表2のとおりであった。
【表2】
【0250】
実施例2(EX-2)
活性炭AC-1(3g)をBMF-1のサンプルにランダムに分布させ(手で引き裂いて粒子をウェブに分布させ)、総面積密度を680gsmとした。得られたBMFウェブのサンプルの厚さは40mmであった。垂直入射音響吸収を、ASTM E1050-12に従って試験した。試験結果の概要は表3のとおりであった。
【0251】
BMF-1(入手状態のまま、活性炭粒子なし)の試験結果の概要も表3のとおりであった。
【0252】
実施例3(EX-3)
活性炭AC-1(6g)をBMF-1のサンプルにランダムに適用し(手で引き裂いて粒子をウェブに分布させ)、総面積密度を1450gsmとした。得られたBMFウェブのサンプルの厚さは40mmであった。垂直入射音響吸収を、ASTM E1050-12に従って試験した。試験結果の概要は表3のとおりであった。
【0253】
実施例4(EX-4)
活性炭AC-1(20g)をBMF-1のサンプルにランダムに適用し(手で引き裂いて粒子をウェブ全体に分布させ)、総面積密度を2900gsmとした。得られたBMFウェブのサンプルの厚さは40mmであった。垂直入射音響吸収を、ASTM E1050-12に従って試験した。試験結果の概要は表3のとおりであった。
【表3】
【0254】
実施例5(EX-5)
EX-1(
図1を参照;層104は厚さ=3mm)によるBMFウェブ粒子層を、BMF-1の2つの層(厚さ=11.3mmの層102、及び厚さ=25.7mmの層106)の間に配置することにより、3層の音響物品(
図1の100を参照)を構築し、BMFウェブ粒子層を音響物品の一方の主表面により多く配置するようにした。垂直入射吸収係数を得るために、インピーダンスチューブ内に取り付けられた場合、全体の構造の厚さを40mmに設定した。
【0255】
EX-5の垂直入射音響吸収を、ASTM E1050-12に従って試験し、試験結果の概要は表4のとおりであった。試験構成の1つでは、粒子層は、「前部」(すなわち、音源近くに;
図1の音響物品200の204を参照)に配置され、第2の試験構成では、粒子層は「後部」(すなわち、音源から遠くに;
図2の音響物品100の層104を参照)に配置された。
【表4】
【0256】
実施例6(EX-6)
EX-1(厚さ=3mmをそれぞれ有する層304及び308)による2つの粒子層を、BMF-1の3層(それぞれ厚さ=11.3mmを有する層302、306、及び310)の中で散在させることによって、5層の音響物品(
図2の300を参照)を構築した。垂直入射吸収係数を得るために、インピーダンスチューブ内に取り付けられた場合、全体の構造の厚さを40mmに設定した。
【0257】
EX-6の垂直入射音響吸収をASTM E1050-12に従って試験した。試験結果の概要は表4のとおりで、垂直入射吸収係数「α」を報告する。
【0258】
実施例7(EX-7)
マイクロ有孔フィルム及びAC-1粒子の2つの層から、マイクロ有孔フィルム「サンドイッチ状」(
図6の500を参照)を構成した。米国特許第6,617,002号(Wood)に記載されているように、マイクロ有孔フィルムを調製した。フィルムグレードのポリプロピレン樹脂PP-1をポリプロピレンフィルム(厚さ1.8mm)の押出成形に使用した後、フィルムをエンボス加工及び熱処理して、エンボス加工により開口を作製した。開口の寸法は、
図15a~
図15c及び表5に詳述されたとおりであった。
【表5】
【表6】
【0259】
マイクロ有孔フィルムの1つの層(
図5の504を参照)を、大きな方の直径が上向きの概ね円錐形の孔開口部で配向し、AC-1粒子を散布して開口を少なくとも部分的に充填した(
図5の505参照)。同じ種類のマイクロ有孔フィルムの第2の層を、第1の層の上に配置し、大きな方の直径が下向きの概ね円錐形の孔開口部で配向して、少なくとも部分的に充填された開口を覆うようにした(
図6の500を参照されたい;この実施例では、層502及び504は同じ厚さ及び開口寸法、並びに開口間の距離を有する)。2つのマイクロ有孔フィルム層の開口を完全に位置合わせする試みはなされなかった。EX-7の得られた音響物品は、約25gsmの総面積密度を有した。
【0260】
EX-7の音響物品の垂直入射音響吸収を、ASTM E1050-12に従って試験した。試験構成は、20mm又は30mmのいずれかに設定した「空気間隙」(
図6の640を参照)を含んだ。試験結果の概要は表6のとおりであった。
【表7】
【0261】
実施例8(EX-8)
EX-1に記載の手順に従ってBMFウェブ粒子層を調製したが、例外点として、ポリプロピレン樹脂の代わりにポリウレタン(「PU」)樹脂を使用し、AC-1活性炭粒子の代わりにAC-2活性炭粒子を使用した。得られたPU BMFウェブ粒子層は、95重量%の活性炭粒子と5重量%の吹込マイクロファイバーとの比を有した。
【0262】
PU BMFウェブ粒子層をBMF-2のサンプルに入れ、「サンドイッチ状」構造を作製した(
図8の音響物品700を参照)。BMF-2不織布層(
図8の706参照)の抵抗スクリム層のうちの1つ(
図8の704参照)を剥離し、PU BMFウェブ粒子層(
図8の702参照)をスクリム層の内面に沿って配置し、スクリム層を再度閉じて、8.9gsmの面積密度を有するサンドイッチ状構造を得た。
【0263】
垂直入射音響吸収をASTM E1050-12に従って試験した。EX-8の粒子層を、20mmの空気空間バッキングを有するインピーダンスチューブに取り付けた。試験したEX-8の音響物品の厚さは10mmであった。比較のために、BMF-2の層も10mmの厚さで試験した。試験結果の概要は表7のとおりであった。
【表8】
【0264】
BMF-3の調製
EX-1に記載したものと同様の方法に従ってBMF-3を作製したが、例外点として、活性炭粒子を添加しなかった。ポリマー材料はポリプロピレンであった。含まれるBMF-3には、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)スクリム層の上部と底部が含まれ、面積密度は約20gsmである。(市販のBMF-1及びBMF-2に見られるものと同様)。BMF-3は、約400gsmの総面積密度及び約20mmの厚さを有した。
【0265】
実施例9(EX-9)
実施例8に記載の手順に従って、サンドイッチ構造(
図8の700を参照)を有する音響物品を調製したが、例外点として、不織布層としてBMF-2の代わりにBMF-3を使用した(
図8の704を参照)。
【0266】
垂直入射音響吸収をASTM E1050-12に従って試験した。EX-9の粒子層を、20mmの空気空間バッキングを有するインピーダンスチューブに取り付けた。試験したEX-9の音響物品の厚さは10mmであった。比較のために、BMF-3の層も10mmの厚さで試験した。試験結果の概要は表8のとおりであった。
【表9】
【0267】
実施例10(EX-10)
活性炭粒子を充填したBMFウェブ粒子層をEX-1に記載の手順に従って作製したが、例外点として、ポリプロピレンの代わりにポリウレタン材料を使用した。活性炭粒子は、32×60のメッシュサイズを有した。BMFウェブ粒子層を、95重量%の活性炭粒子と5重量%の吹込マイクロファイバーとの比で充填し、総面積密度が1500gsmとなるようにした。BMFウェブ粒子層の厚さは5mmであった。
【0268】
BMFウェブ粒子層の音響減衰測定を以下のように行った。BMFウェブ粒子層のサンプル(354mm×288mm)を、鋼パネル(高さ=354mm、幅=288mm、厚さ=1mm)の上部に配置した。鋼プレートの底側に位置決めされたモーダル振とう器により鋼プレートを振とうした。モーダル振とう器は、ランダムなノイズ信号を与え、モーダル振とう器と同じ鋼プレートの側面に位置決めされているが、振とう器が鋼プレートに接した位置から多少離れた加速度計を用いて、プレートの振動応答を測定した。鋼パネルのみ(比較)及びBMFウェブ粒子層を上部に配置した鋼パネルの両方について加速度応答対周波数を測定した。試験結果の概要は表16のとおりであった。
【0269】
実施例11(EX-11)
活性炭AC-3粒子を充填したBMFウェブ粒子層を、EX-1に記載の手順に従って作製した。活性炭粒子は、48×100のメッシュサイズを有した。BMFウェブ粒子層を、40重量%の活性炭粒子と60重量%の吹込マイクロファイバーとの比で充填し、総面積密度が400gsmとなるようにした。BMFウェブ粒子層の厚さは8mmであった。
【0270】
伝達損失音響試験を、ASTM E2611-09に従って実行した。垂直入射伝達損失の結果は表9に示すとおりであり、BMF-1及び300gsm及び400gsmでの質量則の結果と比較される。
【表10】
【0271】
電力伝達係数、反射係数、及び消散係数の結果の詳細を表10に示す。
【表11】
【0272】
実施例12(EX-12)
活性炭AC-3粒子を充填したBMFウェブ粒子層を、EX-1に記載の手順に従って作製した。活性炭粒子は、48×100のメッシュサイズを有した。BMFウェブ粒子層を、80重量%の活性炭粒子と20重量%の吹込マイクロファイバーとの比で充填し、総面積密度が400gsmとなるようにした。BMFウェブ粒子層の厚さを1mmとした。空気流動抵抗(AFR)を試験し、結果は約350Raylsであった。
【0273】
実施例13(EX-13)
活性炭AC-3粒子を充填したBMFウェブ粒子層を、EX-1に記載の手順に従って作製した。活性炭粒子は、48×100のメッシュサイズを有した。BMFウェブ粒子層を、40重量%の活性炭粒子と60重量%の吹込マイクロファイバーとの比で充填し、総面積密度が60gsmとなるようにした。BMFウェブ粒子層の厚さを1mmとした。空気流動抵抗(AFR)を試験し、結果は約650Raylsであった。
【0274】
垂直入射音響吸収試験を実施し、ASTM E1050-12で定義される係数αを計算した。
図17は、周波数に基づくEX-12、EX-13、及び層状SMSスクリムの垂直入射吸収係数を表す。
【0275】
垂直入射音響吸収試験を実施して、ASTM E1050-12で定義される垂直反射吸収係数Rを計算することにより、比音響インピーダンスを計算した。次に、式(1)を使用して、比音響インピーダンス比を計算した。
Z/(ρc)=(1+R)/(1-R) (1)
【0276】
図18は、周波数に基づいたEX-12、EX-13、及び層状SMSスクリムの比音響インピーダンス比の実数部を反映した比音響抵抗比を表す。
図19は、周波数に基づいたEX-12、EX-13、及び層状SMSスクリムの比音響インピーダンスの虚数部を反映した比音響リアクタンス比を表す。
【0277】
上記特許出願において引用された全ての文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でそれらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。