(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240711BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240711BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N21/84 E
F21S2/00 435
G02B6/00 331
(21)【出願番号】P 2020539581
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033869
(87)【国際公開番号】W WO2020045557
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-12-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018163523
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】吉村 憲久
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】渡▲辺▼ 純也
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112735(JP,A)
【文献】国際公開第2006/120932(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079742(WO,A1)
【文献】特開2013-206834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状をなす導光板と、該導光板の側周面からその内部に光を導入する光源体とを備えるとともに、前記導光板の一方の板面に複数の凹部が形成されており、
前記導光板に入射した光が前記凹部で拡がるように反射し、該導光板の他方の板面から外部に射出されて、所定の対象物に照射されるとともに、該対象物を、該導光板の一方の板面側から該導光板を通じて観察できるように構成したものであって、
前記凹部が、その表面が滑らかな凹曲面で形成された部分凹球面、部分楕円球面又は部分長円球面であり、
前記凹部を前記板面に垂直にかつその中心を通るように切った断面形状において、該凹部の開口縁での接線と前記板面とのなす角度である接線角が
55°以上75°以下であることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記凹部が、部分凹球状のものである請求項1記載の光照射装置。
【請求項3】
前記凹部の開口径が、0.02mm以上0.2mm以下である請求項1記載の光照射装置。
【請求項4】
隣り合う前記凹部間の間隔が、凹部開口径の2倍以上5倍以下である請求項1記載の光照射装置。
【請求項5】
平板状をなす導光板と、該導光板の側周面からその内部に光を導入する光源体とを備えるとともに、前記導光板の一方の板面に複数の凹部が形成されており、
前記導光板に入射した光が前記凹部で拡がるように反射し、該導光板の他方の板面から外部に射出されて、所定の対象物に照射されるとともに、該対象物を、該導光板の一方の板面側から該導光板を通じて観察できるようにしたものであって、
前記凹部が
中心角を110°以上150°以下とする部分凹球面であることを特徴とする光照射装置。
【請求項6】
請求項1記載の光照射装置と、前記導光板の一方の面側に配置されたカメラとを備え、前記導光板の他方の面側に配置された対象物を、該導光板を介して前記カメラで撮像することにより検査できるように構成されたものであることを特徴とする検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の表面検査などのために光を照射する光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製品などの対象物(以下、ワークともいう。)に対し、その全方位から可及的に一様な光を照射して検査できるようにした光照射装置(以下、全方位光照射装置ともいう。)が知られている。このような全方位光照射装置は、ワークの検査部位に曲面や凸凹があってもそれによる影を作らず、例えばワーク表面の印字や色の違い等を浮だたせることができるので、球体、R形状ワーク、半田部分などの検査に適している。
【0003】
かかる全方位光照射装置は、ドーム型をもって嚆矢とするが、高さ寸法がやや大きくなるため、近時では、特許文献1や特許文献2に示すように、平板状の導光板を用いて薄型にした平板型全方位光照射装置が開発されている。
【0004】
この種の平板型全方位光照射装置は、平板状をなす導光板と、該導光板の周囲に配置された複数のLEDとを備えており、この導光板の一方の板面には、多数の微細な拡散反射部が互いに隙間を空けて設けられている。なお、本明細書でいう「拡散」とは、例えば球面で反射することにより光が拡がる態様も含むものである。
【0005】
そして、LEDから射出されて該導光板の側周面からその内部に入射した光を、導光板の対向する板面間で繰り返し全反射させて進行させつつ、その光のうち、前記拡散反射部に当たった光を、そこで拡がるように反射させ、導光板の他方の板面から外側に射出する、つまり、導光板の他方の板面だけを面状に発光させるようにしてある。前記拡散反射部としては、導光板の一方の板面上に塗装やプリントなどによって形成されたドット層(特許文献1)や、前記一方の板面に穿たれた、例えばV字型の凹部(特許文献2)などがある。
【0006】
ワークを検査する場合は、前記導光板の他方の板面をワークに向けて配置し、該他方の板面から射出される拡散光でワークを照明する。そして、このようにして照明されたワークを、導光板を挟んで逆側から、すなわち導光板の一方の板面側から該導光板を介して、カメラや肉眼などの観察手段によって観察・検査する。
【0007】
しかしながら、この種の平板型全方位光照射装置においては、導光板の内部に導かれた光が、観察手段側の板面(一方の板面)からも若干漏れ、その漏れ光がノイズ成分となって、検査におけるSN比が悪化する場合がある。
【0008】
また、前記特許文献2のようなV字型の凹部では、導光板からワークに向かって射出される拡散光の配光性に偏りが生じるため、ドーム型のものに比べると、ワークへの照射光の一様性が劣り、検査の精度を高められないという不具合も認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-98093号公報
【文献】特開2016-136124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、前記不具合に鑑みてなされたものであって、導光板から観察手段側に漏れ出る漏れ光を可及的に減少させてそれによるノイズ成分を低減させるとともに、対象物への照射光の一様性を高め、検査精度を向上させることのできる光照射装置を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係る光照射装置は、平板状をなす導光板と、該導光板の側周面からその内部に光を導入する光源体とを備えるとともに、前記導光板の一方の板面に複数の凹部が形成されたものであり、前記導光板に入射した光が前記凹部で拡散反射し、該導光板の他方の板面から外部に射出されて、検査対象物に照射されるとともに、該検査対象物を、導光板の一方の板面側から該導光板を通じて観察できるようにしたものである。
【0012】
そして、前記凹部の表面が滑らかな凹曲面で形成されており、前記凹部を前記板面に垂直にかつその中心を通るように切った断面形状において、該凹部の開口縁での接線と前記板面とのなす角度である接線角が、50°以上85°以下に設定されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成の本願発明は、前記凹部に当たった光のうち、一部が導光板を透過して一方の面板側から漏れ光として射出されるところ、その漏れ光の配光特性や強度を、凹部開口縁における接線角の調整によってコントロール可能であることを本願発明者が初めて着目してなされた画期的なものである。
【0014】
すなわち、本願発明によれば、凹部開口縁での前記接線角を85°以下に設定することによって、漏れ光の配光特性において板面と垂直な方向の光強度が抑制されるので、該板面と対向するように垂直な方向を向いて配置される観察手段に対して入射する漏れ光を低減させることができ、SN比を向上させることが可能になる。
【0015】
他方、接線角を小さくし過ぎると、凹部が平坦面に近くなり、対象物側へ拡散反射する光(以下、照射光ともいう。)の拡散度合い(一様性)が低くなるところ、該接線角を50°以上としているので、対象物に対する好適な照明を担保することができる。
【0016】
また、凹部の表面が滑らかな曲面なので、対象物側へ拡散反射する光の一様性を向上させることができる。
【0017】
前記接線角は、上限においては、80°以下であればより好ましく、75°以下であればさらに好適である。また、該接線角は、下限においては、52°~53°以上であればより好ましく、55°以上であればさらに好適である。
【0018】
前記凹部の具体的な形状としては、部分凹球状のものを挙げることができる。
【0019】
凹部の加工を可能ならしめるには、該凹部の開口径が0.02mm以上であることが好ましく、凹部の観察手段への写り込みを抑制するには、該凹部の開口径が0.2mm以下であることが好ましい。
照射光の一様性には、凹部間のピッチも関係しており、その観点から言えば、凹部間の平均ピッチが前記開口径の2倍以上5倍以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
このような構成の光照射装置によれば、導光板から観察手段側に漏れ出る漏れ光を可及的に減少させてそれによるノイズ成分を低減させるとともに、対象物への照射光の一様性を高めることができる。したがって、例えば検査精度を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態における検査用光照射装置を含む検査システムを示す斜視図である。
【
図2】同実施形態における検査用光照射装置の縦断面図である。
【
図3】同実施形態における導光板の一方の板面側から見た平面図である。
【
図4】同実施形態における凹部を、板面に垂直にかつその中心を通るように切断した断面図である。
【
図5】同実施形態における凹部を平面方向から視た部分拡大図である。
【
図6】接線角θが90°、75°、72.2°それぞれでの漏れ光の配光特性を示す図面である。
【
図7】接線角θが55°、50°、45°それぞれでの漏れ光の配光特性を示す図面である。
【
図8】接線角θとノイズ比との関係を示すグラフである。
【
図9】接線角θとノイズ比との関係を示す正規化したグラフである。
【
図10】接線角θを90°、75°、72.2°、55°、50°、45°としたときのそれぞれでの照射光の配光特性を示す図面である。
【
図11】接線角θを90°、75°、72.2°、55°、50°、45°としたときのそれぞれでの照射光の配光特性とランバーシアン配光特性との差分配光特性を示す図面である。
【
図12】接線角θをパラメータとしたときの、ランバーシアン配光特性と照射光配光特性との差分のPV値の変化を示すグラフである。
【
図13】本発明の他の実施形態における凹部の配列を示す平面図である。
【符号の説明】
【0022】
100 検査用光照射装置
200 検査システム
1 導光板
1a 一方の板面
1b 他方の板面
1c 側周面
2 LED(発光体)
4 凹部
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る光照射装置の一例たる検査用光照射装置100の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
この検査用光照射装置100は、
図1に示すように、全体として薄い正方平板状をなすものであり、背景技術でも述べたが、検査の対象物であるワークWに対し、そのほぼ全方位(ほぼ180°全天方向)から一様な拡散光を照射することによって、ワークWの表面の曲面や多少の凸凹などによる影をキャンセルする機能を有している。
【0025】
より具体的に説明すると、このものは、
図1、
図2に示すように、平板状をなす導光板1と、該導光板1の周囲に配置された光源体たる複数のLED2と、該LED2を収容するとともに前記導光板1の側周縁部を支持する枠体3とを備えたものである。
【0026】
前記導光板1は、
図3に示すように、例えば等厚で正方形状をなす樹脂製(ここでは、PMMA製)の透明板である。そして、互いに対向する平行な板面のうちの一方の板面1aには多数の微細な凹部4が形成してあり、他方の板面1bは平滑鏡面に形成してある。
【0027】
前記凹部4は、
図4、
図5に示すように、前記導光板1の一方の板面1aに亘って穿たれた部分凹球状のものであり、この実施形態では、正方格子点上に規則正しく整列させてある、
【0028】
前記LED2は、
図2に示すように、例えば表面実装型のものであり、この実施形態では、複数のLED2が細長い配線基板21の表面に1列に搭載されている。なお、発光色のラインナップとしては、白色、赤色、青色など、複数色が取り揃えられている。
【0029】
前記枠体3は、
図1、
図2に示すように、4つの辺部材31からなる正方枠状をなすものであり、各辺部材31には、内側に向かって開口し、かつ、長手方向に沿って端から端まで延びる有底溝3aが設けてある。そして、この有底溝3aに、前記導光板1の周縁部が嵌め込まれるようにして保持されている。また、該有底溝3aの底部には前記配線基板21が装着されており、この配線基板21に搭載されたLED2の発光面が導光板1の側周面1cに臨むように構成されている。このような構成によって、LED2から射出された光が、導光板1の四辺側周面1cからその内部に導入されるようにしてある。
【0030】
このような構成の検査用光照射装置100においては、LED2から射出された光は、導光板1の側周面1cから入射し、該導光板1の対向する板面間で繰り返し全反射しながら内部を進行する。そして、その光のほとんどは、進行中に凹部4に当たり、そこで拡散反射して、導光板1の他方の板面1bから外側に射出される。つまり、他方の板面1bが発光面となるわけである。なお、一方の板面1aからも光はわずかに漏れ出るが、この漏れ光については後述する。
【0031】
なお、
図2中、符号8は、導光板1の一方の板面1a上を覆う透明なカバー板である。符号5は、配線基板21の裏面と枠体3との間に介在するとともに双方に密着して、LED2の熱を枠体3に伝導し放熱させる、粘弾性を有する熱伝導体5である。また、同図中符号6は、配線基板21の表面と導光板1の側周面1cとの間に介在して、これらの間の距離を一定に保つスペーサ6である。
【0032】
このスペーサ6は、本実施形態では、
図2に示すように、その外側に設けられた弾性体7(コイルばねや板バネ)によって、内側(有底溝3aの開口方向)に向かって付勢してあり、このことによって、スペーサ6の表側当たり面が導光板1の側周面1cに密接するようにしてある。
【0033】
他方、配線基板21(及びLED2)は、前記熱伝導体5によって、内側(有底溝3aの開口方向)に向かって付勢してあり、このことによって、スペーサ6の裏側当たり面に密接させてある。
【0034】
かかる構造によって、スペーサ6が配線基板21の表面と導光板1の側周面1cとの間に密接介在することとなり、その間の距離が一定に保たれるわけである。
【0035】
この構造について付言しておくと、前記導光板1は、その板面と平行な方向においては、互いに内側に向かって弾性付勢された対向するスペーサ6によって挟まれて保持されているわけであるが、この構造によって、LED2の点灯発熱による導光板1の伸びを、前記弾性体7が縮むことによって吸収することができるようにしている。そのために、前記弾性体7の最大縮みしろを、予想される発熱による導光板5の最大伸びしろ以上に設定してある。
【0036】
他方、前記導光板1の伸びによって、LED2及び配線基板21も、スペーサ6を介して外側に押され、移動するところ、熱伝導体5の室温からの最大縮みしろが、導光板5の前記最大伸びしろ以上に設定してあって、導光板5の伸びによるLED2及び配線基板21の移動を、前記熱伝導体5が縮むことによって吸収することができるようにしてある。
【0037】
次に、このような構成の検査用光照射装置100を用いた検査システム200について簡単に説明する。この検査システム200は、
図1、
図2に示すとおり、検査用光照射装置100の他に、カメラCを備えている。そして、前記導光板1の他方の板面1bがワークWを向くように配置されて、該他方の板面1bから射出される拡散光によりワークWが照明される一方、このようにして照明されたワークWを、導光板1を挟んで逆側から、すなわち導光板1の一方の板面1a側からカメラCによって撮像し、その撮像画像が検査に供されるようにしてある。
【0038】
さて、以上に述べた前提構成の下、この実施形態においては、この凹部4を以下のような態様としている。
【0039】
すなわち、
図4、
図5に示すように、この凹部4の中心を通り、かつ前記板面1aに垂直な面で切った断面形状において、該凹部4の開口縁での接線と前記板面とのなす角度である接線角θ(あるいは、凹部4の中心角αの1/2)が55°以上75°以下、凹部4の開口径φが0.02mm以上0.2mm以下、かつ、凹部4間のピッチpが前記開口径φの2倍以上5倍以下に設定してある。
【0040】
このようなものであれば、前記導光板1に入射した光のうち、カメラC側に出射される漏れ光の配光特性において、板面1aと垂直な方向の光強度が抑制されるので、該板面1aと対向するように、かつその垂直な方向を向いて配置されるカメラCに入射する漏れ光が低減し、撮像画像でのSN比が向上する。
【0041】
他方、接線角θを小さくし過ぎると、凹部4が平坦面に近くなり、ワークW側へ拡散反射する照射光の拡散度合い(一様性)が低くなるところ、該接線角を55°以上としているので、そのような不具合を解消して、ワークWに対する好適な照明を担保することができる。
【0042】
次に、上述した効果を検証した具体的なシミュレーション結果を示す。
【0043】
まず、カメラC側に漏れる漏れ光の特性について述べる。
【0044】
図6、
図7は、接線角θが90°、75°、72.2°、55°、50°、45°での漏れ光の各配光特性である。なお、ここでの配光特性は、本検査用光照射装置100を点光源とみなせるだけ十分離れた箇所からみたときの配光特性のことである。
【0045】
同図から明らかのように、接線角θが小さくなるほど、垂直方向を中心にした低い光強度の角度範囲が広がっていくことがわかる。
【0046】
そこで、カメラCには、精々、一方の板面1aに垂直な方向±20°の範囲で出る漏れ光が入射することから、その角度範囲での漏れ光の光エネルギの、ワークW側に射出される光エネルギに対する割合をノイズ比(SN比の逆数)として、接線角θとノイズ比との関係を調べた。その結果を
図8に示す。
【0047】
図8から明らかのように、接線角θが75°において、ノイズ比に明らかな変曲点があり、これを超えるとノイズ比が急激に大きくなる。
他方、接線角θを75°から小さくしていくと、ノイズ比は60°くらいまではほぼ同じで、それ以下になるとゆっくりと小さくなっていく。
図9に75°でのノイズ比を1として正規化したグラフを示す。
【0048】
このような傾向は、凹部4の開口径、凹部4のピッチ、導光板1の厚み又は導光板1の素材を変えても同様であることが
図8、
図9から看取できる。
【0049】
そして、これら
図8、
図9からすると、漏れ光に関しては、接線角θを75°以下にすれば非常に好適であることがわかる。
【0050】
次に、ワークW側に射出される照射光の特性に関して述べる。
【0051】
検査のためには、前記照射光の配光特性(ここでの配光特性は、本検査用光照射装置100を点光源とみなせるだけ十分離れた箇所からみたときの配光特性である。)が、ランベルトの余弦則に則った配光特性(以下、ランバーシアン配光特性という。)とできるだけ等しいことが好ましいとされている。
【0052】
そこで、接線角θを90°、75°、72.2°、55°、50°、45°としたときのそれぞれでの照射光の配光特性を調べた。その結果が
図10である。また、前記各接線角θにおける照射光の配光特性とランバーシアン配光特性との差分を
図11に示す。接線角θが72.2°において照射光の配光特性はランバーシアン配光特性とほぼ等しくなり、その前後では、ややずれることがわかる。
【0053】
これらから、接線角θをパラメータとして、ランバーシアン配光特性と照射光配光特性との差分のPV値がどのように変わるのかを調べ、グラフ化した。これが
図12である。同図から約72°で配光特性がランバーシアン配光特性に最も近似し、55°を下回るとPV値が急激に悪化しだすことがわかる。そして、凹部4の開口径、凹部4のピッチ、導光板1の厚み又は導光板1の素材を変えても同様であることが同図から看取できる。
【0054】
したがって、前述したように接線角θを55°以上75°以下にすれば、カメラCに入射する漏れ光を可及的に低減でき、かつ、照射光の配光特性を検査に好ましいランバーシアン配光特性の所定範囲内に収めることができる。
【0055】
また、凹部4の開口径φが0.02mm以上であれば、製造の困難性が顕著になることはないし、該開口径φ0.2mm以下であればカメラへの映り込みを大きく低減できる。さらに凹部4間のピッチpが前記開口径φの2倍以上5倍以下であれば、照射光の配光特性を維持できる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限られない。
【0057】
例えば、接線角θは、75°以下に限られない。
図9に示すように、例えば85°以下であれば、90°(半球面)より約10%も漏れ光が低減されるし、80°以下であれば、90°(半球面)より約20%も漏れ光が低減されるので、検査の要求精度によっては、接線角の上限を85°や80°としても十分な効果を得られる。
【0058】
同様な理由から、接線角θは、55°以上に限られず、約50°以上であってもよいし、約52°以上であっても構わない。
【0059】
さらに、凹部の形状は部分凹球面のみならず、その表面が滑らかに、かつ、周方向に進むにつれ、接線角度が徐々に増加のみ(又は減少のみ)するような形態であればよい。例えば部分楕円球面や部分長円球面などでも構わない。
【0060】
また、凹部の配列は正方格子点のみならず、
図13に示すように正三角格子点でもよいし、ランダムな配列や、矩形格子点でもよい。ランダムの場合のピッチ(間隔)の定義は、最も近い凹部までの間隔を個別ピッチとして、その平均をピッチとする。また、矩形格子点の場合は、長いピッチと短いピッチの平均とする。
【0061】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願発明によれば、導光板から観察手段側に漏れ出る漏れ光を可及的に減少させてそれによるノイズ成分を低減させるとともに、対象物への照射光の一様性を高め、検査精度を向上させることのできる光照射装置を提供することができる。