IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-表面耐圧痕性フィルム構造体及び方法 図1
  • 特許-表面耐圧痕性フィルム構造体及び方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】表面耐圧痕性フィルム構造体及び方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/00 20060101AFI20240711BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240711BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240711BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240711BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20240711BHJP
   B65H 75/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B65H18/00
B32B7/06
B32B7/12
B32B27/00 L
B29C63/02
B65H75/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020563839
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 IB2019050911
(87)【国際公開番号】W WO2019155358
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】62/626,941
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ダンネビッツ,フィクトール
(72)【発明者】
【氏名】バーマイスター,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー,ヒューバート
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-279737(JP,A)
【文献】特表平10-504344(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216113(WO,A1)
【文献】特表平08-505575(JP,A)
【文献】米国特許第04219596(US,A)
【文献】中国実用新案第206383615(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 63/02
B65H 18/00
B65H 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールを提供するために中心の長手方向軸の周りに巻かれたフィルム材料のウェブであって、前記フィルム材料が、
第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムであって、1以上のポリ塩化ビニルフィルム層を有する形状適合性ベースフィルムと、
前記形状適合性ベースフィルムの前記第2の表面に結合した第1の表面、及び反対側の第2の表面を含む接着層と、
前記接着層の前記第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、
前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、
を含み、
前記保護フィルム層は、前記保護フィルム層と前記1以上のポリ塩化ビニルフィルム層との間に他の層を設けることなく積層され
前記保護フィルム層が、2286mm/分の分離速度で測定して、約2~6cN/25.4mmの範囲の結合力で、前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面に剥離可能に取り付けられており、前記保護フィルム層が、約17マイクロメートル以下の厚さで提供されている、フィルム材料のウェブ。
【請求項2】
前記保護フィルム層が、光学的にクリア、透明、透光性、及び有色のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のフィルム材料のウェブ。
【請求項3】
前記保護フィルム層が、90%超の全可視透過率を有する、請求項2に記載のフィルム材料のウェブ。
【請求項4】
前記保護フィルム層が形状適合性であり、前記形状適合性ベースフィルムの伸びと同じか又はそれより高い伸びを有する、請求項1に記載のフィルム材料のウェブ
【請求項5】
前記形状適合性ベースフィルムが、単層ポリ塩化ビニルフィルム、二層ポリ塩化ビニルフィルム、三層ポリ塩化ビニルフィルム、複合フィルム、ポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のフィルム材料のウェブ。
【請求項6】
前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面が光沢表面を含む、請求項1に記載のフィルム材料のウェブ。
【請求項7】
前記保護フィルム層が、前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面と直接接触している、請求項1に記載のフィルム材料のウェブ。
【請求項8】
第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムであって、1以上のポリ塩化ビニルフィルム層を有する形状適合性ベースフィルムと、
前記形状適合性ベースフィルムの前記第2の表面に結合した第1の表面、及び反対側の第2の表面を含む接着層と、
前記接着層の前記第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、
前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、
を含み、
前記保護フィルム層は、前記保護フィルム層と前記1以上のポリ塩化ビニルフィルム層との間に他の層を設けることなく積層され
前記保護フィルム層が、2286mm/分の分離速度で測定して、約2~6cN/25.4mmの範囲の結合力で、前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面に剥離可能に取り付けられており、前記保護フィルム層が、約17マイクロメートル以下の厚さで提供されている、フィルム材料のシート。
【請求項9】
基材にフィルム材料のシートを適用する方法であって、
基材の外面に隣接してフィルム材料のシートを配置する工程であって、前記フィルム材料のシートが、
第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムであって、1以上のポリ塩化ビニルフィルム層を有する形状適合性ベースフィルムと、
前記形状適合性ベースフィルムの前記第2の表面に結合した第1の表面、及び反対側の第2の表面を含む接着層と、
前記接着層の前記第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、
前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、
を含み、前記保護フィルム層は、前記保護フィルム層と前記1以上のポリ塩化ビニルフィルム層との間に他の層を設けることなく積層される、配置する工程と、
前記剥離ライナーを前記接着層の前記第2の表面から取り外す工程と、
前記接着層を前記基材の前記外面に適用する工程と、
を含み、
前記保護フィルム層が、2286mm/分の分離速度で測定して、約2~6cN/25.4mmの範囲の結合力で、前記形状適合性ベースフィルムの前記第1の表面に剥離可能に取り付けられており、前記保護フィルム層が、約17マイクロメートル以下の厚さで提供されている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面圧痕に耐性があるフィルム構造体に関し、特に、ロール形態で製造及び保管されるが表面圧痕に耐性がある多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを製造するために使用される典型的な方法の1つは、キャリアウェブを上部フィルム層でコーティングし、次いで任意選択の追加層を追加することを含む。フィルムは、典型的には、接着剤コーティングされたライナーへの積層(lamination)前に、キャリアウェブから剥離される。剥離プロセスはオフライン又はインラインのいずれかで行うことができ、いくつかのフィルムは、ロール形態の場合にフィルム上の巻き取り張力によって引き起こされ得る表面圧痕の形成を最小化するために、インラインで剥離される。
【0003】
フィルム材料がインライン又はオフラインでキャリアウェブから剥離されるかどうかに関わらず、フィルム表面は、剥離された後に、特定の種類の損傷から保護されなくなる。これは、特に柔らかく、巻き取りプロセス中及び/又は保管中に、巻き取り張力及びロール形態に置かれた場合の材料自体の静的重量が原因で、表面圧痕(例えば、折り目、くぼみ、溝、又は他の表面欠陥)の形成に影響されやすいフィルムに関する問題を引き起こし得る。加えて、保護されていないフィルムは、例えば、上面に接触するスキージで表面に光沢フィルムが適用される場合など、表面に適用される場合に、ひっかき傷が付きやすい可能性がある。
【0004】
フィルム表面上の望ましくない表面圧痕を最小化するために多数の加工及び材料の変更が行われてきたが、このような欠陥を平滑化するために、巻き出しプロセス中及び/又はロールからの材料の変換中に熱処理を施し得るなどの、後加工が必要とされることが多い。このような後加工は、時間及び/又はコストがかかる場合がある。したがって、光沢フィルムなどのフィルム上の表面圧痕を最小化又は排除する表面耐圧痕性フィルム構造体を提供することが望まれている。このような構造体は、大きなロールの材料が長期間保管される状況において特に有益であり得る。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で提供される製造方法及びフィルム構造体は、フィルムの製造を可能にする一方で、望ましくない表面圧痕の形成を最小化又は排除し、例えば3M Company(St.Paul,Minnesota)から「Scotchcal」及び「Scotchlite」の商品名で市販されているフィルムなどがある。方法及び構造体はまた、フィルムを別の表面に適用するプロセス中にひっかき傷を防止するのに有用であり得る。
【0006】
本明細書に記載されるフィルム材料の一実施形態によれば、フィルム材料のウェブは、ロールを提供するために中心の長手方向軸の周りに巻かれ、フィルム材料が、第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムと、ベースフィルムの第2の表面に結合した第1の表面、及び反対側の第2の表面を含む接着層と、接着層の第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、を含む、フィルム材料のウェブである。使用する際、フィルム材料の長さの一部分は、ロールから巻き出し可能であり、フィルム材料の個別のシートに変換可能であり得、保護フィルム層は、フィルム材料の個別のシートから取り外し可能である。
【0007】
保護フィルム層は、光学的にクリア(clear)、透明(transparent)、透光性(translucent)、及び/又は有色であってもよく、90%超の全可視透過率を有し得る。保護フィルム層はまた、形状適合性であってもよく、ベースフィルムの伸びと同じか又はそれより高い伸びを有してもよい。保護フィルム層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はポリ塩化ビニルのうちの少なくとも一部で作製されてもよく、2286mm/分の分離速度で測定して、約2~6cN/25.4mmの範囲の結合力で、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられてもよい。実施形態において、保護フィルム層は、形状適合性ベースフィルムの第1の表面と直接接触している。
【0008】
形状適合性ベースフィルムは、複数の材料層を含んでもよく、単層ポリ塩化ビニルフィルム、二層ポリ塩化ビニルフィルム、三層ポリ塩化ビニルフィルム、複合フィルム、ポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。形状適合性ベースフィルムの第1の表面は、約1μm未満のRa値を有する表面粗さ、及び/又は約6μm未満のRz値を有する表面粗さを有する光沢表面を有してもよいが、表面粗さは、これらの近似値よりも幾分又は著しく高い又は低いRa及び/又はRz値を有し得る。
【0009】
本明細書に記載されるフィルム材料の一実施形態によれば、ロールに巻かれたフィルム材料のウェブに関して上述した構造、材料、及び/又は特徴部のいずれかを含み得るフィルム材料のシートが提供される。フィルム材料のシートの例示的な実施形態は、第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムと、ベースフィルムの第2の表面に結合した第1の表面、及び反対側の第2の表面を含む接着層と、接着層の第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、を含む。
【0010】
本明細書で提供される例示的な実施形態によれば、基材にフィルム材料のシートを適用する方法は、基材の外面に隣接してフィルム材料のシートを配置する工程であって、フィルム材料のシートが、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層を含むフィルム材料について本明細書で提供される実施形態のいずれかを含み得る、工程を含む。方法は、剥離ライナーを接着層の第2の表面から取り外すことと、接着層を基材の外面に適用することと、を更に含む。フィルム材料の第1の表面から保護フィルム層を取り外す工程は、接着層を基材の外面に適用する前又は後のいずれかで生じ得、これは、適用ツールの使用により少なくとも部分的に達成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は添付図面を参照して更に説明される。
図1】ロールに巻かれたフィルム材料のウェブの一実施形態における概略側面図である。
図2】ロールから巻き出された後のフィルム材料の一実施形態における一部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで図を参照し、最初に図1を参照すると、フィルム材料のロール10は、長手方向軸12の周りに巻かれた状態で示されている。ロール10は、ロールの所望の外径に達するまで、又は所望の長さの材料がロール上に巻かれるまで、フィルム材料が巻かれた周りのその幅を通って延びる中央コアを含み得る。ロール10に使用されるフィルム材料の構造体の実施形態は、本明細書で説明される。
【0013】
記載される実施形態によれば、ロール上へのフィルム材料の初期巻き取り及び/又はロールの一定期間保管中にそれ自体上のウェブ材料の静的重量によって引き起こされ得るものなどの、フィルム上の表面圧痕を最小化又は防止するための特徴部が提供される。加えて、フィルム材料の実施形態は、適用中にフィルム材料表面へのひっかき傷を最小化又は防止する特徴部を備える。基本原理は、最終製品の適用特性に悪影響を及ぼさない保護層でフィルム材料を被覆することを含む。
【0014】
ここで図2を参照すると、フィルム材料20の例示的な実施形態が示されており、これは概ね、第1の側面24及び第2の側面26を有するベースフィルム22、ベースフィルム22の第1の側面24に隣接する保護フィルム28、ベースフィルム22の第2の側面26に隣接する接着層30、並びに接着層30の外面32に隣接する剥離ライナー34を含む。
【0015】
ベースフィルム22は、好ましくは、少なくとも50%の伸びレベルを有し、かつ1つ以上の層を含む形状適合性フィルム材料である。本明細書で使用する場合、用語「形状適合性」は、概して、凸状特徴部、凹状特徴部、及び/又は他の形状若しくは外形を含む三次元基材の形状を実質的に又は完全にとることができるフィルムを指す。しかしながら、フィルムの形状適合性の決定は、そのような基材に実際に適用される状況に限定されず、フィルムが基材に適用される前にこの機能を有することもある。実施形態では、このような形状を取ることは、フィルムの構造的一体性及び/又は美的外観に望ましくない変化を伴わずに可能である。この意味では、形状適合性フィルムは、平坦面に適用することができ、かつ/又は十分に大きな曲率半径(大円柱など)を有する表面の周りでわずかに湾曲することができるが、より複雑な三次元基材に適用することは不可能である非形状適合性フィルムとは区別できる。
【0016】
フィルムの形状適合性に影響を及ぼし得る因子としては、フィルムを作製するために使用される材料の同一性、そのような材料の分子量、そのようなフィルムがさらされる条件(例えば、温度、放射線曝露、及び湿度)、及びフィルム材料中の添加剤の存在(例えば、可塑剤含有量、強化繊維、顔料、安定剤(例えば、UV安定剤)、及び硬度向上粒子)が挙げられる。
【0017】
ベースフィルム22は、厚さ約50μmであり、少なくとも50%の伸びレベルを有するが、15μmより薄くても150μmより厚くてもよい、単層ポリ塩化ビニルフィルムなどの多種多様な材料を含んでもよい。ベースフィルム22として使用することができる他の例示的な材料としては、少なくとも50%の伸びレベルを有する、厚さ約75~95μmの二層ポリ塩化ビニルフィルム;少なくとも50%の伸びレベルを有する、厚さ約130μmの三層ポリ塩化ビニルフィルム;1つ又は2つのPVC層と1つ又は2つのポリエステル系層とを含み、厚さが約50~150μmである複合フィルム;50%超の伸びレベルを有する、厚さ約30~95μmのメラミン樹脂で架橋されたイソシアネート変性ポリエステルからなるポリエステル系フィルム;及び少なくとも50%の伸びレベルを有する変性アクリル樹脂からなるアクリル系フィルム;他のポリエステル系フィルム;ポリプロピレンフィルム;ポリウレタンフィルム;ポリオレフィンフィルム;並びにこれらの組み合わせ並びに上述したものより薄い若しくはより厚い、及び/又は上述したものより大きい若しくはより小さい伸びを有する他のフィルムが挙げられる。ベースフィルム22のこれらの例示的な材料を用いて、DIN EN ISO 527に従って伸びを測定した。
【0018】
ベースフィルム22は、一般的に、保護フィルム28が適用され得る比較的滑らかな表面を備える。例示的な実施形態では、ベースフィルムは、約1μm未満のRaの表面粗さ、又は約6μm未満のRzの表面粗さを有し、表面粗さはDIN EN ISO 4287に従って測定された。
【0019】
接着層30及び剥離ライナー34は、例えば、それぞれアクリル接着剤及びシリコーン処理したライナーを含んでもよい。例示的な実施形態では、接着層30は、感圧接着剤、空気がフィルム(例えば、3M Company(St.Paul,Minnesota)から市販されている、「Comply」の商品名で入手可能なフィルム)の下で横方向に逃げることを可能にする接着剤中に微細構造空気チャネルのネットワークを有するフィルム、及び/又は接着剤の初期接触面積を最小化し、適用中にアプリケータがフィルムに再配置されることを可能にする、3M Company(St.Paul,Minnesota)から、「Controltac」の商品名で市販されている材料を含む多数の材料又は材料の組み合わせを含んでもよい。剥離ライナー34は接着層30に隣接して配置されてもよく、これは概ね、例えばフィルム材料20を表面に適用するためなどに、接着剤を露出することが望まれるまで接着層を被覆する保護フィルム又は紙層である。
【0020】
保護フィルム28は、2つのロール間の両方のフィルムを押圧することを含む積層プロセスによって、ベースフィルム22上に適用することができる。両方のロール間の圧力は、ロールの種類及び加工速度に依存し、パラメータは、フィルム層間の空気捕捉を防止するように調節可能であることが好ましい。保護フィルム28は、概ね、製造プロセス中にベースフィルム22の外側又は「表」側を保護すると考えられる。この保護フィルム28は、フィルム材料20のユーザーによって実施される最終適用プロセス中でさえ、最終製品上に残ることができる。
【0021】
ベースフィルム22と保護フィルム28との間の結合は、弱い分子間力によって達成される。結合力は、ASTM D3330法に従って測定することができる。一実施例では、ベースフィルム22と保護フィルムとの間の結合力は、2286mm/分の分離速度で測定して、約2~6cN/25.4mmの範囲であり得るが、より高い又はより低い結合力が考えられる。
【0022】
保護フィルム28は、ベースフィルム22の「表」表面を保護するために提供され、したがって、剥離されたフィルムを「ブロッキング」から保護し、それによって、また、製品に悪影響を及ぼすことなく、フィルム材料20を実質的により長い時間保管することを可能にする。顧客のニーズに応じて、保護フィルム28は、表面への適用中に最終製品上に残っていてもよく、又は残っていなくてもよい。保護フィルム28が表面への適用中に最終製品上に残る場合、ひっかき傷の形成を防止し、更に適用特性を改善することができる。保護フィルム28が最終用途に所望されない場合、変換プロセス中に剥離することができる。保護フィルム28は、概ね、ベースフィルム22の上面における追加の洗浄又は加工を必要とすることなく、ベースフィルム22から取り外すことが容易である。
【0023】
保護フィルム28に使用可能な材料の1つは、本明細書に記載される任意のベース層22の保護層として好適であり得る、薄いポリエチレンフィルムである。あるいは、保護フィルム28は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニルのうちの少なくとも1つを含んでもよい。保護フィルム用の別の例示的な材料としては、Brangs+Heinrich GmbH(Solingen,Germany)から市販されているprofiSTRETCH MCP(物品番号8160468)(F1)が挙げられ、例えば、約9μm、約17μm、又はそれより厚い若しくはそれより薄いフィルムの厚さで提供されるようなものである。フィルム材料20の実施形態では、保護フィルム28は、概ね、それが適用されるベースフィルム22と少なくとも同じくらい可撓性である。
【0024】
特定の実施形態では、保護フィルム28は光学的にクリアであり、例えばASTM D1746法に従って測定することができるなど、加工中に最終製品を検査することができるように、90%超の全透過率を有する。クリアな保護フィルムはまた、最終色の外観に影響を与えない。しかしながら、着色フィルム、透光性フィルム、及び/又は有色フィルムを使用することも可能である。
【実施例
【0025】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【表1】
【0026】
実施例1~13-伸び測定
グラフィックフィルムのPVC側に保護フィルム(F1)を有する異なる色のグラフィックフィルム(F2~F14)について、試験方法DIN EN ISO 527に従って、伸び値を測定した。グラフィックフィルムは、厚さ約50μmの有色PVCキャストフィルム、約30μmのアクリル接着剤、及び接着剤を被覆するライナーからなる。試験のためにライナーを取り外した。保護フィルム(F1)を、室温にて手動で、ゴムローラーによって、グラフィックフィルムの露出したPVC側に、強固な圧力で積層した。全てのグラフィックフィルムに接着されている保護フィルム(F1)、例えば、グラフィックフィルムと保護フィルムとの間の結合は、ASTM D3330(180°の角度;2286mm/分)に従って測定して、2.8cN/25.4mmよりも大きかった。保護(F1)フィルムを有するグラフィックフィルムを、伸びについて試験し、結果を%で報告し、表2に示す。
【表2】
【0027】
実施例14-ベースPVCフィルムと保護フィルムとの間の結合
保護フィルム(F1)を、室温にて手動で、ゴムローラーによって、グラフィックフィルム(F15)の露出したPVC側に、強固な圧力で積層した。180°の角度及び2286mm/分の分離速度でグラフィックフィルム(F15)から保護フィルムを剥離するASTM D3330法に従って、保護フィルム(F1)のグラフィックフィルムとの結合を測定した。結果をcN/25.4mmで報告する。
【表3】
【0028】
本発明をその複数の実施形態を参照して説明してきた。本明細書で特定される任意の特許又は特許出願の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。上記の詳細な説明及び実施例は、理解しやすいように示したものにすぎない。これによって不必要な限定がなされるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態において多くの変更を行うことができることが、当業者には明白であろう。したがって本発明の範囲は、本明細書に記載される構造体に限定されるべきものではなく、特許請求の文言により記載される構造体及びそうした構造体の等価物によってのみ限定されるものである。
【0029】
以下は本開示による例示的な実施形態である。
項目1.ロールを提供するために中心の長手方向軸の周りに巻かれたフィルム材料のウェブであって、フィルム材料が、
第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムと、
ベースフィルムの第2の表面に結合した第1の表面、及び
反対側の第2の表面を含む接着層と、
接着層の第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、
形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、
を含む、フィルム材料のウェブ。
項目2.形状適合性ベースフィルムが、中心の長手方向軸の周りに巻かれて、ロールを提供する、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目3.保護フィルム層が、光学的にクリア、透明、透光性、及び有色のうちの少なくとも1つである、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目4.保護フィルム層が、90%超の全可視透過率を有する、項目3に記載のフィルム材料のウェブ。
項目5.保護フィルム層が形状適合性であり、ベースフィルムの伸びと同じか又はそれより高い伸びを有する、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目6.保護フィルム層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニルのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目7.保護フィルム層が、2286mm/分の分離速度で測定して、約2~6cN/25.4mmの範囲の結合力で、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられている、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目8.形状適合性ベースフィルムが複数の材料層を含む、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目9.形状適合性ベースフィルムが、単層ポリ塩化ビニルフィルム、二層ポリ塩化ビニルフィルム、三層ポリ塩化ビニルフィルム、複合フィルム、ポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目10.形状適合性ベースフィルムの第1の表面が光沢表面を含む、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目11.形状適合性ベースフィルムの第1の表面が、約1μm未満のRa値を有する表面粗さを有する、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目12.形状適合性ベースフィルムの第1の表面が、約6μm未満のRz値を有する表面粗さを有する、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目13.保護フィルム層が、形状適合性ベースフィルムの第1の表面から取り外し可能である、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目14.フィルム材料の長さを有する、項目1に記載のフィルム材料のウェブであって、フィルム材料の長さの一部分が、ロールから巻き出し可能であり、フィルム材料の個別のシートに変換可能である、ウェブ。
項目15.保護フィルム層が、フィルム材料の個別のシートから取り外し可能である、項目7に記載のフィルム材料のウェブ。
項目16.保護フィルム層が、形状適合性ベースフィルムの第1の表面と直接接触している、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目17.保護フィルム層が、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に静電的に引き付けられている、項目1に記載のフィルム材料のウェブ。
項目18.第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムと、
ベースフィルムの第2の表面に結合した第1の表面、及び
反対側の第2の表面を含む接着層と、
接着層の第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、
形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、
を含む、フィルム材料のシート。
項目19.保護フィルム層が、光学的にクリア、透明、透光性、及び有色のうちの少なくとも1つである、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目20.保護フィルム層が、90%超の全可視透過率を有する、項目19に記載のフィルム材料のシート。
項目21.形状適合性ベースフィルムが複数の材料層を含む、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目22.保護フィルム層が形状適合性であり、ベースフィルムの伸びと同じか又はそれより高い伸びを有する、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目23.保護フィルム層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニルのうちの少なくとも1つを含む、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目24.保護フィルム層が、2286mm/分の分離速度で測定して、約2~6cN/25.4mmの範囲の結合力で、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられている、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目25.形状適合性ベースフィルムが、単層ポリ塩化ビニルフィルム、二層ポリ塩化ビニルフィルム、三層ポリ塩化ビニルフィルム、複合フィルム、ポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうちの少なくとも1つを含む、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目26.形状適合性ベースフィルムの第1の表面が光沢表面を含む、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目27.形状適合性ベースフィルムの第1の表面が、約1μm未満のRa値を有する表面粗さを有する、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目28.形状適合性ベースフィルムの第1の表面が、約6μm未満のRz値を有する表面粗さを有する、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目29.保護フィルム層が、形状適合性ベースフィルムの第1の表面から取り外し可能である、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目30.保護フィルム層が、形状適合性ベースフィルムの第1の表面と直接接触している、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目31.保護フィルム層が、形状適合性ベースフィルムの第1の表面に静電的に引き付けられている、項目18に記載のフィルム材料のシート。
項目32.基材にフィルム材料のシートを適用する方法であって、
基材の外面に隣接してフィルム材料のシートを配置する工程であって、フィルム材料のシートが、
第1の表面及び反対側の第2の表面を含む形状適合性ベースフィルムと、
ベースフィルムの第2の表面に結合した第1の表面、及び
反対側の第2の表面を含む接着層と、
接着層の第2の表面に剥離可能に取り付けられた剥離ライナーと、
形状適合性ベースフィルムの第1の表面に剥離可能に取り付けられた保護フィルム層と、
を含む、配置する工程と、
剥離ライナーを接着層の第2の表面から取り外す工程と、
接着層を基材の外面に適用する工程と、
を含む、方法。
項目33.接着層を基材の外面に適用した後に、フィルム材料の第1の表面から保護フィルム層を取り外す工程を更に含む、項目32に記載の方法。
項目34.接着層を基材の外面に適用する前に、フィルム材料の第1の表面から保護フィルム層を取り外す工程を更に含む、項目32に記載の方法。
項目35.接着層適用工程が、適用ツールを使用して接着層を適用することを含む、項目32に記載の方法。
項目36.適用工程で使用される適用ツールが、スキージ及び切断面のロールのうちの少なくとも1つを含む、項目35に記載の方法。
図1
図2