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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】パターンプレート
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A61F13/15 321
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021015448
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118762
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2021-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-20
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505038900
【氏名又は名称】ニチダイフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】川中 太一
(72)【発明者】
【氏名】庫内 篤
(72)【発明者】
【氏名】奥島 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 淳一
(72)【発明者】
【氏名】前川 健一郎
【合議体】
【審判長】森藤 淳志
【審判官】藤井 眞吾
【審判官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0055135(KR,A)
【文献】国際公開第2018/042544(WO,A1)
【文献】特許第5913757(JP,B1)
【文献】特開2014-100440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品を製造する製造装置に用いられるパターンプレートであって、吸収性物品の形状に応じた領域に複数の孔が形成された表層板と、この表層板の裏面に積層状に設けられ、前記表層板のいくつかの孔であって、上段及び段の孔が同数で中段がこれより1個多くの孔を単位孔群として、この単位孔群の外縁で孔の開いていない部分を繋いだリブにより囲まれた領域が略六角形状でその表裏を貫通する孔を形成する補強板と、を有したパターンプレート。
【請求項2】
前記補強板を、複数枚を積層して一体化した請求項1記載のパターンプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に係る吸収体の製造装置に用いられるパターンプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
尿や経血等の排泄液を吸収する吸収性物品の一例として、使い捨ておむつや生理用ナプキン等が使用されている。そして、これらの吸収性物品は、排泄液を吸収する部材として、パルプ繊維や粒状の高吸収性ポリマー(以下、SAPとも言う)などの液体の吸収体材料を単票状に成形してなる吸収体を有している。
【0003】
上記の吸収体は、例えば特許文献1(特開2014-100440号公報)に示されるような製造装置により生成される。ここで、前記製造装置の概略構成について本願における図5を参照して説明する。製造装置11は回転ドラム12を有している。回転ドラム12の外周面12Dには、吸収体Pが形成されるように、後述のパターンプレート21が周方向Dに複数並設されている。
【0004】
回転ドラム12内には、回転ドラム12の回転には追従せず、固定され、該回転ドラム12の軸を所定角度で、負圧区画12a、正圧区画12b、無圧区画12cに、区画壁により区画し、さらに負圧区画12aでは吸気を、正圧区画12bでは排気を行う吸排気機構(不図示)が設けられている。
【0005】
また、回転ドラム12の周方向Dの所定位置には、回転ドラム12内の負圧区画12aに対向して散布ダクト13が設けられている。この散布ダクト13は、負圧区画12aに位置する回転中の回転ドラム12の外周面12Dに向けて、パルプ繊維及びSAPなどを混合した液化状の吸収体材料Zを散布するものである。
【0006】
回転ドラム12は、周方向Dにおいて散布ダクト13の位置(負圧区画12a)の領域を通過する際に、該負圧区画12aで生じる吸気と、該散布ダクト13からの散布によりパターンプレート21の後述の孔21aに吸収体材料Zが吸引堆積されて単票状に成形される。
【0007】
そして、回転ドラム12は、負圧区画12aの周方向Dにおける下流側の排気区画12bの領域で、排気により、成形された吸収体性材料Zが外周面12Dから取り出されて、単票状の吸収体Pがさらに下流工程へ搬送される。
【0008】
図6及び図7には、回転ドラム12とこの回転ドラム12の周面に設けられるパターンプレート21の関係を示している。図6は、一部のパターンプレート21を取り外した回転ドラム12の概略斜視図であり、図7は、パターンプレート21の構成を示した分解斜視図である。
【0009】
パターンプレート21は、その分割数において回転ドラム12の外周面12Dの曲率に対応した円弧状とされ、パターンプレート21は、複数の孔21aが形成された表層板21Aと、この表層板21Aの(回転ドラム12における)内周面から裏打ち補強すべく表層板21Aの内周面に当接固定された棒部B1,B2が枠有の格子状に組まれた補強板21Bと、表層板21Aを部分的に覆って目的とする吸収体Pの平面視形状範囲で該表層板21Aの孔21aを露出させるガイド板21Cと、有している。
【0010】
特許文献1の例で説明を続けるが、特許文献1を含む一般的な従来のパターンプレートは、該補強板21Bは、棒部B1,B2により表層板21Aの裏打ち補強のために格子状に組まれているから、B1,B2が一部の孔21aを塞いでしまうこととなる。
【0011】
表層板21Aの孔21aが塞がれると、正圧区画12bにおいて棒部B1,B2が孔21aからの外周方向への排気を阻害して、負圧区画12aで散布された吸収体材料Zが外周方向に抜けず目詰まりを生じることになる。
【0012】
そして、この目詰まりが生じると、パターンプレート21のメンテナンス時に、外周側から高圧水を噴射しても棒部B1,B2が孔21aからの内周方向への噴射による吸収体材料Zの抜け出しを阻害して残留してしまい、この目詰まりした吸収体材料Zの除去が非常困難であるという問題がある。
【0013】
また、孔21aに目詰まり個所が存在すると、そこから吸収体材料Zの分布が偏って目詰まり個所が拡大したり、部分的に不均質になったりする可能性がある。この結果、回転ドラム12が数周回転しただけで目詰まりした吸収体材料Zの完全な除去が必要となっており、手間が生じ、生産効率が悪かった。
【0014】
補強板21Bは、表層板21Aが負圧区画12aにおける負圧と、散布ダクト13からの吸収体材料Zの散布噴射圧で窪んだり、凹んだりしないように設けており、該補強板21Bの棒部B1,B2が表層板21Aの孔21aを塞いでいるというなら、補強板21Bが必要ないように表層板21Aの厚みを大きくすることが考えられる。
【0015】
ここで、表層板21Aの製造について説明する。表層板21Aは、エッチングにより複数の孔21aが形成された薄板が、又は目の細かい厚みの小さい金網が、用ることができるが、ここでは薄板として説明する。
【0016】
一方、補強板21Bは、上記のように棒部B1,B2で構成されるものの他、目の粗い金網、エッチングによるハニカム又は六角形の孔を形成した板、パンチング板、エキスパンドメタル板が用いられる。
【0017】
表層板21Aの厚みを大きくする場合、予め複数の孔21aが形成された複数の表層板21A同士を積層して厚みを大きくすることはできるが、板厚の大きい板材について、例えばパンチングやエッチングで例えば孔や所定形状を形成するには、その孔径より大きい厚みの板には、下記の制限があって加工できない。
【0018】
例えばパンチングの場合、板を打ち抜く際にパンチ(金型)に発生する圧縮応力が大きくなり、パンチが破損したり、また材料の塑性変形(例えば反り上がり)が発生して加工精度が悪化したりする。一方、エッチングの場合、板厚が大きくなると所定の形状より穴形状が大きい部分が顕著に表れるため、例えば隣接する穴同士が繋がったりするなど、穴の加工精度が悪化する。
【0019】
では、予め複数の孔21aが形成された複数の表層板21A同士を積層して厚みを大きくすることが検討されるが、孔21aそのもの、つまり個々の孔21aを形成する内周高さ(=板厚)が大きいと、圧力損失が高く、吸引ができなくなったり、内周内に吸収体材料Zが残留したりして洗浄性が悪くなるといった新たな問題が生じる。
【0020】
結果的に、補強板21Bにて厚みを稼ぐこととなるが、そうなると、上記のとおり、補強板21Bにおける棒部B1,B2のような構成が、表層板21Aの一部の孔21aを塞いでしまうこととなる。
【0021】
以上のことから、従来のパターンプレートは、表層板が吸引により凹んだり、窪んだりしないようにするためには補強板を設けるしか有効かつ具体的な手立てがないが、この補強板の構成部材が、表層板の孔を塞いでしまい、孔の目詰まりを生じさせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】特開2014-100440号公報
【文献】特許5913757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、従来のパターンプレートは、表層板が吸引により凹んだり、窪んだりしないようにするために設けた補強板の構成によって該表層板の孔に吸収体材料の目詰まりが発生し、目詰まりした吸収体材料の除去が非常に困難であった点を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記の課題を解決するために、吸収性物品の形状に応じた領域に複数の孔が形成された表層板と、この表層板の裏面に積層状に設けられ、前記表層板のいくつかの孔であって、上段及び段の孔が同数で中段がこれより1個多くの孔を単位孔群として、この単位孔群の外縁で孔の開いていない部分を繋いだリブにより囲まれた領域が略六角形状でその表裏を貫通する孔を形成する補強板と、を有した構成とした。
【発明の効果】
【0025】
補強板におけるリブは、表層板のいくつかの孔を単位孔群として該単位孔群における孔の開いていない部分を繋いでいるから、表層板の孔は一つとして該リブによって塞がってしまうことがない。したがって、パターンプレートは吸引により凹んだり、窪んだりすることをリブによって抑制することができると共に、リブによって吸収体材料の目詰まりが発生することが抑制され、よって清掃の手間が大幅に軽減でき、吸収体材料の分布が偏って不均質なものとなってしまう可能性を劇的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のパターンプレートの部分的に拡大して示し、(a)は表層板側から見た斜視図、(b)は補強板側から見た斜視図、である。
図2】本発明のパターンプレートにおける表層板の孔と、補強板のリブとの関係を示す図である。
図3】製造装置の回転ドラムと本発明のパターンプレートとの関係を示す図である。
図4】本発明のパターンプレートの概略構成を示す図である。
図5】製造装置の概略構成を示す図である。
図6】製造装置の回転ドラムと従来のパターンプレートとの関係を示す図である。
図7】従来のパターンプレートの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、吸収性物品を製造する製造装置に用いられるパターンプレートの構造特性上、吸引によって凹んだり、窪んだりしないようにある一定の剛性を保ち、なおかつ、吸収体材料を堆積させる表層板の孔を塞ぐことのないようにするという両目的を達成するために、吸収性物品の形状に応じた領域に複数の孔が形成された表層板と、この表層板の裏面に積層状に設けられ、前記表層板のいくつかの孔であって、上段及び段の孔が同数で中段がこれより1個多くの孔を単位孔群として、この単位孔群の外縁で孔の開いていない部分を繋いだリブにより囲まれた領域が略六角形状でその表裏を貫通する孔を形成する補強板と、を有した構成とした。
【0028】
表層板は、目詰まりを考えると薄いことが望ましく、材質は例えば耐食性に優れて適度な剛性を有するステンレス材を用いる。この表層板は、四隅に位置決め孔が形成されており、補強板と高精度で位置決めされるようになっている。孔は、該表層板が薄いので、エッチング加工にてオーダーに応じた孔径とピッチで作成することができる。
【0029】
補強板は、材質は上記表層板と同様の理由で例えばステンレス材を用いるが、板厚は表層板ほど薄い必要はなく、リブがエッチング加工できる最大厚みであることが望ましい。リブは、上記表層板のいくつかの孔を単位孔群として該単位孔群における孔の開いていない部分を繋いだ平面視形状の孔が形成されるようエッチングを行って得る。また、この補強板も表層板と同様に四隅に位置決め孔が形成されており、表層板の孔と、補強板のリブとが、リブにより孔を塞がないように高精度に位置決めされる。
【0030】
表面板と補強板とは、例えば上記の位置決め孔を合わせて積層したうえで、例えば拡散接合により一体化する。拡散接合を行うことで、表面板の孔を塞ぐことなく、両者一体とでき、また、両者一体となった場合の剛性が増すこととなる。
【0031】
本発明は、リブによって表層板の孔が塞がれなければ、リブによって生じる該補強板の表裏を貫通する孔(開口)寸法が表層板の孔径より大きくても構わないという発想に基づいてなされた。
【0032】
したがって、補強板におけるリブは、表層板のいくつかの孔を単位孔群として該単位孔群における孔の開いていない部分を繋いだ形状、例えば上段3個、中段4個、下段3個の合計10個分を単位孔群として、この単位孔群の外縁で孔の開いていない部分を繋いでリブとする。
【0033】
このリブに囲まれた領域は六角形となり、上記のとおり、表層板の孔を塞がず、表層板の孔径より大きい補強板の表裏を貫通する略六角の孔(開口)がリブによって形成されることとなり、リブの形成された補強板が、表層板の剛性の向上させることとなる。
【0034】
また、本発明は、上記の構成において、前記補強板を、複数枚を積層して一体化した構成としてもよい。補強板は、上記のとおりエッチング加工の制限で1枚ではさほど厚みを大きくすることができず、補強面の不安がある場合は、補強板を複数積層して一体化すればよい。
【0035】
補強板を複数積層して一体化することに関しては、特に限定はしないが、例えば拡散接合によることで剛性の向上と強固な一体性を得ることができる。また、複数の補強板は、例えば全て同じリブ(による開口)形状を有していてもよいし、1枚毎に又は何枚かを、並びに全枚を、異なるリブ(による開口)形状としていてもよい。ただし、この場合は、リブによって互いに隣接するリブによる開口を塞がないように構成する。
【0036】
こうすることで、パターンプレート全体の剛性が向上することはもちろん、表層板の孔の深さが増すことにはならないので、厚みを大きくしても目詰まりの発生が上記と同等に抑制できる。また、表層板の裏面側に向けて、リブによる開口寸法が大きくなるように補強板を積層することで、厚みを大きくしてもパターンプレートの洗浄時が容易に行える。
【実施例
【0037】
本発明の一実施例について、図1図4を参照して説明する。なお、吸収体物品の製造装置については、本発明のポイントではないと共に従来技術の項目において説明したとおりなのでここでは割愛するが、図3に示す回転ドラムに関して図6において重複する部材については同じ参照符号を付すこととする。
【0038】
本発明のパターンプレート1は、図5に示した吸収性物品を製造する製造装置における図3に示す回転ドラム12(回転ドラムは図5と重複)の周面に設けられる。パターンプレート1は、図3に示すように、回転ドラム12の外周面12Dを複数枚で覆い、その1枚は該回転ドラム12の分割数分の曲率に対応した円弧状とされている。
【0039】
パターンプレート1は、複数の孔2aが形成された表層板2と、この表層板2の裏面に積層状に設けられた補強板3と、表層板2を部分的に覆って目的とする吸収体Pの平面視形状範囲で該表層板2の孔2aを露出させるガイド板4と、有している。
【0040】
図1及び図2に示す本発明のパターンプレート1における表層板2と補強板3は、本例においては例えば次のように構成されている。表層板2は、厚さ0.3mmで周方向寸法(以下、縦という)570.0mm×周方向と直交する方向寸法(以下、幅という)470.0mmでその四隅に位置決め孔が形成されたステンレス板において、縦541.0mm×幅377.0mmの範囲に直径0.45mmの円形の孔2aを前記範囲における開口割合が43%となるようにエッチング加工を行って得ている。
【0041】
補強板3は、補強板3は、表層板2と同サイズでその四隅に該表層板2Aと同じ位置の四隅に位置決め孔が形成されたステンレス板が用いられ、該表層板3と同範囲において、いくつかの孔2a、本例では図2に示すように、中央に1個、その周りに個の合計、換言すると上段2個、中段3個、下段2個、該上段と該下段の孔の個数が同数で、該中段が該上段及び該下段の孔の個数より1個多く数えた孔2aの集合を単位孔群2Aとして該単位孔群2Aにおける孔2aの開いていない接続部分2bを繋いだリブ3Aが形成されるようにエッチング加工を行って得ている。
【0042】
そして、表層板2と、上記構成の10枚の補強板3とを、回転ドラム12の外周側からこの順に、互いの位置決め孔を用いて、10枚の補強板3においては上下層のリブ3A同士がずれないよう、かつ補強板3のリブ3Aにより表層板2の孔2aが塞がることのないように、精密に位置合わせしつつ積層し、全体を拡散接合して一体とする。
【0043】
そして、拡散接合により一体となった、厚み3.3mmで縦570.0mm×幅470.0mmの中間品を、エッチング加工した領域を中心として縦520.76mm×横415.0mmに切断して、ガイド板4を取り付けてパターンプレート1を得ている。
【0044】
以上のように、本発明のパターンプレート1は、補強板3自体及びリブ3Aが表層板2の孔2aを塞ぐことなく、該表層板2の剛性補強を行うことができ、よって、パターンプレート1は吸引により凹んだり、窪んだりすることが抑制され、また、吸収体材料の目詰まりが発生することがないので、清掃の手間が大幅に軽減でき、吸収体材料の分布が偏って不均質なものとなってしまう可能性を劇的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 パターンプレート
2 表層板
2a 孔
3 補強板
3A リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7