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  • 特許-回線制御装置 図1
  • 特許-回線制御装置 図2
  • 特許-回線制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】回線制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/00 20240101AFI20240711BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H04M3/00 A
H04M3/42 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021030677
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131641
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】本田 章悟
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-169933(JP,A)
【文献】特開2006-245956(JP,A)
【文献】特開2019-041211(JP,A)
【文献】国際公開第99/048271(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04M1/00-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
H04Q3/58-3/62
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局との間で無線通信を行う基地局と前記移動局に指令を出力する指令局との通信における回線制御を行う回線制御装置であって、
回線交換の機能を実装した呼制御部と、
前記基地局及び前記指令局との間の物理的インタフェースの変換を行うインタフェース部と、
通信の業務処理の機能を実装したアプリケーション部が基板に実装されるとともに、
前記アプリケーション部が、前記基板に着脱可能に設けられ、
前記アプリケーション部を前記基板から取り外した場合に、代替としてアプリケーションサーバに接続され、前記アプリケーションサーバ内に設けられるソフトウェアのアプリケーション部と前記基板に実装された各部とを通信可能としたことを特徴とする回線制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用無線通信システムにおける回線制御装置に係り、特に、構成が簡略で低コストで、しかも柔軟性と拡張性に優れた回線制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
業務用無線とは、自営陸上移動通信の総称であり、公共業務から民間業務に至るまで幅広い業種で活用されているシステムであって、主に音声、データの無線通信に利用されている。
【0003】
[従来の業務用無線通信システム:図3
従来の業務用無線通信システムについて図3を参照しながら説明する。図3は、従来の業務用無線通信システムの概略図である。
従来の業務用無線通信システムの基本構成は、図3に示す通り、回線制御装置100と、基地局2と、指令卓3と、移動局4とで構成される。
回線制御装置100に基地局2及び指令卓3は有線で接続され、移動局4は基地局2に無線で接続される。
【0004】
指令卓3は、業務用無線通信システムにおいて全移動局4を対象とした一斉指令や、移動局4の間の通話への割込みなど業務運用において特に重要となる指令業務を円滑に行うための機能を有する。
回線制御装置100は、業務用無線通信システムの中核装置であり、指令卓3、基地局2、移動局4からの要求に応じて音声・データ転送のための通信路を確立する回線制御機能を有する。
【0005】
基地局2は、回線制御装置100と有線接続され、移動局4の間及び移動局4と指令卓3との間の無線通信の中継機能を有する。
かつては回線制御装置100と基地局2との間の有線接続では、アナログ回線やデジタル回線が利用されてきたが、近年ではIP(Internet Protocol)化が進んでいる。
移動局4は、主に陸上を移動して基地局2、他の移動局4等との無線通信を行う。
【0006】
ここで、回線制御装置100について図3を用いて詳細に説明する。
回線制御装置100は、ハードウェア(HW)部10とサーバ部20とから構成され、サーバ部20にはアプリケーション部21が設けられ、HW部10には運用管理部11、呼制御部12、インタフェース(I/F)部13が設けられ、各部がIP回線14で接続されている。
【0007】
アプリケーション部21は、公共業務又は民間業務等の内容に応じた特定の業務処理機能を実装した機能部である。
運用管理部11は、回線制御装置100の運用、保守機能を実装した機能部である。
呼制御部12は、回線交換機能を実装した機能部である。
インタフェース部13は、基地局2や指令卓3を回線制御装置100に接続するためのインタフェースを具備する機能部である。
【0008】
従来の回線制御装置100においては、アプリケーション部21はアプリケーションサーバに実装され、サーバ部20という筐体内に配置される。
また、それ以外の機能部は、機能部毎にCPU(Central Processing Unit)、メモリ等で構成される基板に実装され、それらはハードウェア部(HW部)10という筐体内に配置される。
【0009】
回線制御装置100は、当該装置に障害が発生すると、業務用無線通信システム全体が機能しなくなるため、一般的に非常に高い信頼性が要求され、冗長構成を組み、顧客によっては振動条件が厳しい仕様に設定されている。
【0010】
アプリケーションサーバは、汎用サーバ機を使用することが一般的であるが、汎用サーバ機は内部にハードディスク等を実装しているので振動に弱く、免振台を用意してサーバ部20を組み立てる等の対応が必要となる。
【0011】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2002-101463号公報「無線通信システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、回線制御装置内に、アプリケーション部を備えることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2002-101463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、信頼性を向上させるために、回線制御装置100におけるサーバ部20とハードウェア(HW)部10のそれぞれに高価な免振台を設ける必要があり、サーバ部20とHW部10の2つの構成によって装置が大型化して構成が複雑になり、コストが高くなるという問題点があった。
【0014】
尚、特許文献1には、サーバ部を設けず、アプリケーション部をHW部に実装する構成についての記載がない。
【0015】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、高い信頼性を確保しつつ、構成を簡易にしてコストを低減し、小規模業務から大規模業務までに対応可能な回線制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、移動局との間で無線通信を行う基地局と移動局に指令を出力する指令局との通信における回線制御を行う回線制御装置であって、回線交換の機能を実装した呼制御部と、基地局及び指令局との間の物理的インタフェースの変換を行うインタフェース部と、通信の業務処理の機能を実装したアプリケーション部が基板に実装されるとともに、アプリケーション部が、基板に着脱可能に設けられ、アプリケーション部を基板から取り外した場合に、代替としてアプリケーションサーバに接続され、アプリケーションサーバ内に設けられるソフトウェアのアプリケーション部と基板に実装された各部とを通信可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回線交換の機能を実装した呼制御部と、基地局及び指令局との間の物理的インタフェースの変換を行うインタフェース部と、通信の業務処理の機能を実装したアプリケーション部が基板に実装されるとともに、アプリケーション部が、基板に着脱可能に設けられ、アプリケーション部を基板から取り外した場合に、代替としてアプリケーションサーバに接続され、アプリケーションサーバ内に設けられるソフトウェアのアプリケーション部と基板に実装された各部とを通信可能とした回線制御装置としているので、免振台を省略し、構成を簡易にしてコストを低減でき、大規模事業にはアプリケーションサーバを接続して当該サーバでソフトウェアのアプリケーション部を動作させることで、事業規模に適した構成を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本無線通信システムの概略図である。
図2】別の無線通信システムの概略図である。
図3】従来の業務用無線通信システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る業務用無線通信システム(本無線通信システム)は、回線制御装置がハードウェア部で構成され、当該ハードウェア部内の基板にハードウェア構成のアプリケーション部を着脱可能に設け、当該アプリケーション部を取り外した場合に、アプリケーションサーバ内に設けられるソフトウェアのアプリケーション部とハードウェア部とを通信可能としたものであり、小規模の事業にはハードウェア部にアプリケーション部を実装し、大規模事業にはアプリケーションサーバを接続して当該サーバでソフトウェアのアプリケーション部を動作させることで、小規模事業には免振台を省略し、構成を簡易にしてコストを低減でき、事業規模に適した構成を実現できるものである。
【0023】
[事情]
本無線通信システムを説明する前に、システムの事情について説明する。
基地局、移動局の台数が多い場合には、回線制御装置は、交換機機能を実現する対象が多いことになる。
すなわち、規模が大きい業務無線通信システムの場合は、回線制御装置自体のコスト比率は高くなく、免振台やサーバ部等を使用し回線制御装置のコストが大幅に増加したとしてもシステム全体規模との関係でコスト面での大きな影響はない。
【0024】
しかしながら、基地局、移動局の台数が少ない規模の小さいシステムの場合は、上記のようなシステム構成であれば、回線制御装置のコスト増が無視できず、全体のコストに大きな影響を与えてしまうことになる。
【0025】
そのため、小規模システムの場合に、回線制御装置を本実施の形態のように、ハードウェア(HW)部のみで構成することで、免振台やサーバ部が不要となり、コストを低減でき、小型化に大きく貢献できるものである。
【0026】
[本無線通信システム:図1
本無線通信システムについて図1を参照しながら説明する。図1は、本無線通信システムの概略図である。
本無線通信システムは、図1に示すように、回線制御装置1と、基地局2と、指令卓3と、移動局4とを備えている。
回線制御装置1に基地局2及び指令卓3は有線で接続され、移動局4は基地局2に無線で接続される。
【0027】
[基地局2]
基地局2は、回線制御装置1と有線接続され、移動局4と別の移動局4との間、移動局4と指令卓3との間の無線通信の中継機能を有する。
[指令卓3]
指令卓3は、本無線通信システムにおいて全移動局4を対象とした一斉指令や、移動局4と他の移動局4との間の通話への割込みなど業務運用において指令業務を円滑に行うための機能を有する。
[移動局4]
移動局4は、主に陸上を移動して基地局2、他の移動局4等との無線通信を行う。
【0028】
[回線制御装置1]
回線制御装置1は、本無線通信システムの中核装置であり、基地局2、指令卓3、移動局4からの要求に応じて音声・データ転送のための通信路を確立する回線制御機能を有する。
回線制御装置1と基地局2及び指令卓3との間の有線接続では、IP(Internet Protocol)化されている。
【0029】
本無線通信システムにおける回線制御装置1は、ハードウェア(HW)部で構成され、内部の基板に運用管理部11、呼制御部12、インタフェース部13、アプリケーション部15が設けられ、各部がIP回線14で接続されている。
【0030】
運用管理部11は、回線制御装置1の運用、保守機能を実装した機能部である。
呼制御部12は、回線交換機能を実装した機能部である。
インタフェース部13は、基地局2や指令卓3を回線制御装置1に接続するためのインタフェースを具備する機能部である。
運用管理部11、呼制御部12、インタフェース部13のハードウェアは、アプリケーション部15とは別の基板に設けられている。
【0031】
アプリケーション部15は、公共業務又は民間業務等の内容に応じた特定の業務処理機能を実装したハードウェア構成の機能部である。
具体的には、アプリケーション部15は、CPU、メモリ等で構成される基板にハードウェアとして実装され、例えば、DSP(Digital Signal Processor)や制御用のプログラムをROM(Read Only Memory)に書き込んだ機器等で構成される。これにより、回線制御装置1は、個々の部品としてハードウェア部のみで構成される。
【0032】
[別の無線通信システム:図2
次に、本無線通信システムの応用例としての別の無線通信システムについて図2を参照しながら説明する。図2は、別の無線通信システムの概略図である。
本無線通信システムにおけるアプリケーション部15は、当該基板から取り外して、図2に示すように、代替としてアプリケーションサーバ16のアプリケーション部17として構成することもできる。
【0033】
よって、システムが大規模化する場合には、ハードウェアのアプリケーション部15を取り外して、回線制御装置1をアプリケーションサーバ16に接続し、そのアプリケーションサーバ16内に設けられるソフトウェアのアプリケーション部17と回線制御装置1の各部とを通信可能とする通信経路18が設けられているものである。
【0034】
つまり、システム規模や顧客の仕様条件により、アプリケーション部をアプリケーションサーバに実装するか、ハードウェア部の基板に実装するか、選択可能な形態としている。
これは、小規模システムの場合には、アプリケーション部15を回線制御装置1内の基板に実装することで構成を簡易にしてコストを低減でき、大規模システムの場合は、アプリケーションサーバ16にアプリケーション部17を実装することで通信の大規模運用を可能とするものであり、システムの規模に対応可能で、柔軟性と拡張性を備えるものである。
【0035】
[応用例]
回線制御装置1では、アプリケーション部15を基板から取り外して、アプリケーションサーバ16に接続するようにしているが、アプリケーション部15を取り外さないままとして、アプリケーションサーバ16に接続可能とし、スイッチ操作でアプリケーション部15の動作を停止し、アプリケーションサーバ16のソフトウェアのアプリケーション部17を動作させるようにしてもよい。
【0036】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムにおける回線制御装置1によれば、ハードウェア部で構成され、当該ハードウェア部内の基板であるアプリケーション部15を着脱可能に設けられ、当該アプリケーション部15を取り外した場合には、代わりにアプリケーションサーバ16内に設けられるソフトウェアのアプリケーション部17と他のハードウェア各部とを通信可能としたものであり、小規模の事業にはハードウェア部にアプリケーション部を実装し、大規模事業にはアプリケーションサーバ16を接続して当該サーバ内でソフトウェアのアプリケーション部17を動作させることで、小規模事業には免振台を設けず構成を簡易にしてコストを低減でき、事業規模に適した構成を実現できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、高い信頼性を確保しつつ、構成を簡易にしてコストを低減し、小規模業務から大規模業務までに対応可能な回線制御装置に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1…回線制御装置、 2…基地局、 3…指令卓、 4…移動局、 10…ハードウェア(HW)部、 11…呼制御部、 12…運用管理部、 13…インタフェース(I/F)部、 14…IP回線、 15,17…アプリケーション部、 16…アプリケーションサーバ、 18…通信経路、 20…サーバ部(従来)、 100…回線制御装置
図1
図2
図3