(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2021038330
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】朝原 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孔一
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-338031(JP,A)
【文献】特開2014-240756(JP,A)
【文献】特開平09-276715(JP,A)
【文献】特開2015-010857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が配置される試験室と、空調機器とを有し、前記空調機器によって前記試験室内に所定の環境を形成することが可能であり、且つ前記試験室に消火及び/又は冷却を目的とする注水が行われる場合がある環境試験装置において、
前記試験室を含む試験室領域と、前記空調機器の少なくとも一部を含む環境形成領域に分割されており、前記試験室領域と前記環境形成領域とが結合されて一体化された構造であり、
前記試験室領域の少なくとも一部と前記環境形成領域の少なくとも一部とが接合された接合部を有し、
前記接合部であって前記注水時に想定される最高水位よりも上の位置に、前記試験室と前記環境形成領域とを連通する吸気用連通孔が設けられ、
前記試験室には、前記吸気用連通孔と前記試験室の下部領域を繋ぐ通気路があり、
前記試験室内の空気が、前記通気路及び前記吸気用連通孔を経由して前記環境形成領域に導入され、当該環境形成領域で空調された空気が、前記試験室に戻され
、
前記試験室と前記環境形成領域との間で空気を循環させる送風機を有し、
当該送風機は、前記空調機器の上部空間から平面方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
供試体が配置される試験室と、空調機器とを有し、前記空調機器によって前記試験室内に所定の環境を形成することが可能であり、且つ前記試験室に消火及び/又は冷却を目的とする注水が行われる場合がある環境試験装置において、
前記試験室を含む試験室領域と、前記空調機器の少なくとも一部を含む環境形成領域に分割されており、前記試験室領域と前記環境形成領域とが結合されて一体化された構造であり、
前記試験室領域の少なくとも一部と前記環境形成領域の少なくとも一部とが接合された接合部を有し、
前記接合部であって前記注水時に想定される最高水位よりも上の位置に、前記試験室と前記環境形成領域とを連通する吸気用連通孔が設けられ、
前記試験室には、前記吸気用連通孔と前記試験室の下部領域を繋ぐ通気路があり、
前記試験室内の空気が、前記通気路及び前記吸気用連通孔を経由して前記環境形成領域に導入され、当該環境形成領域で空調された空気が、前記試験室に戻され、
前記通気路は、吸気口を複数有し、一つの吸気口は、前記最高水位よりも上の位置に設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
前記吸気口を切り替える、切り替え手段を有し
、前記最高水位よりも上の位置に設けられている一つの吸気口に前記切り替え手段が設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
供試体が配置される試験室と、空調機器とを有し、前記空調機器によって前記試験室内に所定の環境を形成することが可能であり、且つ前記試験室に消火及び/又は冷却を目的とする注水が行われる場合がある環境試験装置において、
前記試験室を含む試験室領域を含む筐体と、前記空調機器の少なくとも一部を含む環境形成領域を含む筐体に分割されており、前記試験室領域を含む筐体の一側面側と前記環境形成領域を含む筐体の一側面側とが結合されて一体化された構造であり、
前記試験室領域の少なくとも一部を含む筐体と前記環境形成領域の少なくとも一部を含む筐体とが接合された接合部を有し、
前記接合部であって前記注水時に想定される最高水位よりも上の位置に、前記試験室と前記環境形成領域とを連通する吸気用連通孔が設けられ、
前記試験室には、前記吸気用連通孔と前記試験室の下部領域を繋ぐ通気路があり、
前記試験室内の空気が、前記通気路及び前記吸気用連通孔を経由して前記環境形成領域に導入され、当該環境形成領域で空調された空気が、前記試験室に戻されることを特徴とする環境試験装置。
【請求項5】
前記通気路は、前記最高水位よりも上の位置に曲部を有するものであることを特徴とする請求項1
乃至4のいずれかに記載の環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験室の内部に所望の環境を形成する環境試験装置に関するものである。本発明は、特に、環境試験中に、供試体に放水したり、供試体を水没させたりすることが生じ得る環境試験装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置は、試験室内に、所望の温度環境(例えば、高温や低温)や湿度環境(例えば、高湿度や低湿度)を、人工的に作り出すことができるものである。
【0003】
環境試験装置には、環境形成領域と試験室を有しているものがある。ここで、環境形成領域はヒータや冷却器等の空調機器が内蔵された部分であり、試験室は供試体(被試験物)が配置される空間である。
環境試験装置には、前記した環境形成領域と試験室の間で空気を循環させて、試験室内の環境を所望の環境に整えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
供試体には、試験中に発熱するものがあり、発火するおそれがあるものもある。供試体が発火したような場合、消火や冷却を目的として注水が行われる場合がある。
また消火等のために、供試体を故意に水没させることも考えられる。
試験室内に大量に注水すると、環境形成領域に水が浸入する懸念がある。特に、供試体が水没するレベルまで注水すると、環境形成領域に水が浸入するおそれがある。その結果、ヒータや冷却器が水没し、故障する懸念がある。
また供試体が水没するレベルまで注水すると、環境試験装置の各部から水漏れする懸念もある。
【0006】
本発明は、従来技術の上記した点に注目し、試験室内に注水しても、環境形成領域に水が浸入しにくい構造の環境試験装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、供試体が配置される試験室と、空調機器とを有し、前記空調機器によって前記試験室内に所定の環境を形成することが可能であり、且つ前記試験室に消火及び/又は冷却を目的とする注水が行われる場合がある環境試験装置において、前記試験室を含む試験室領域と、前記空調機器の少なくとも一部を含む環境形成領域に分割されており、前記試験室領域と前記環境形成領域とが結合されて一体化された構造であり、前記試験室領域の少なくとも一部と前記環境形成領域の少なくとも一部とが接合された接合部を有し、前記接合部であって前記注水時に想定される最高水位よりも上の位置に、前記試験室と前記環境形成領域とを連通する吸気用連通孔が設けられ、前記試験室には、前記吸気用連通孔と前記試験室の下部領域を繋ぐ通気路があり、前記試験室内の空気が、前記通気路及び前記吸気用連通孔を経由して前記環境形成領域に導入され、当該環境形成領域で空調された空気が、前記試験室に戻されることを特徴の一つとする環境試験装置である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、供試体が配置される試験室と、空調機器とを有し、前記空調機器によって前記試験室内に所定の環境を形成することが可能であり、且つ前記試験室に消火及び/又は冷却を目的とする注水が行われる場合がある環境試験装置において、前記試験室を含む試験室領域と、前記空調機器の少なくとも一部を含む環境形成領域に分割されており、前記試験室領域と前記環境形成領域とが結合されて一体化された構造であり、前記試験室領域の少なくとも一部と前記環境形成領域の少なくとも一部とが接合された接合部を有し、前記接合部であって前記注水時に想定される最高水位よりも上の位置に、前記試験室と前記環境形成領域とを連通する吸気用連通孔が設けられ、前記試験室には、前記吸気用連通孔と前記試験室の下部領域を繋ぐ通気路があり、前記試験室内の空気が、前記通気路及び前記吸気用連通孔を経由して前記環境形成領域に導入され、当該環境形成領域で空調された空気が、前記試験室に戻され、前記試験室と前記環境形成領域との間で空気を循環させる送風機を有し、当該送風機は、前記空調機器の上部空間から平面方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする環境試験装置である。
上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、供試体が配置される試験室と、空調機器とを有し、前記空調機器によって前記試験室内に所定の環境を形成することが可能であり、且つ前記試験室に消火及び/又は冷却を目的とする注水が行われる場合がある環境試験装置において、前記試験室を含む試験室領域と、前記空調機器の少なくとも一部を含む環境形成領域に分割されており、前記試験室領域と前記環境形成領域とが結合されて一体化された構造であり、前記試験室領域の少なくとも一部と前記環境形成領域の少なくとも一部とが接合された接合部を有し、前記接合部であって前記注水時に想定される最高水位よりも上の位置に、前記試験室と前記環境形成領域とを連通する吸気用連通孔が設けられ、前記試験室には、前記吸気用連通孔と前記試験室の下部領域を繋ぐ通気路があり、前記試験室内の空気が、前記通気路及び前記吸気用連通孔を経由して前記環境形成領域に導入され、当該環境形成領域で空調された空気が、前記試験室に戻され、前記通気路は、吸気口を複数有し、一つの吸気口は、前記最高水位よりも上の位置に設けられていることを特徴とする環境試験装置である。
前記吸気口を切り替える、切り替え手段を有し、前記最高水位よりも上の位置に設けられている一つの吸気口に前記切り替え手段が設けられていることが望ましい。
上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、供試体が配置される試験室と、空調機器とを有し、前記空調機器によって前記試験室内に所定の環境を形成することが可能であり、且つ前記試験室に消火及び/又は冷却を目的とする注水が行われる場合がある環境試験装置において、前記試験室を含む試験室領域を含む筐体と、前記空調機器の少なくとも一部を含む環境形成領域を含む筐体に分割されており、前記試験室領域を含む筐体の一側面側と前記環境形成領域を含む筐体の一側面側とが結合されて一体化された構造であり、前記試験室領域の少なくとも一部を含む筐体と前記環境形成領域の少なくとも一部を含む筐体とが接合された接合部を有し、前記接合部であって前記注水時に想定される最高水位よりも上の位置に、前記試験室と前記環境形成領域とを連通する吸気用連通孔が設けられ、前記試験室には、前記吸気用連通孔と前記試験室の下部領域を繋ぐ通気路があり、前記試験室内の空気が、前記通気路及び前記吸気用連通孔を経由して前記環境形成領域に導入され、当該環境形成領域で空調された空気が、前記試験室に戻されることを特徴とする環境試験装置である。
【0008】
本態様の環境試験装置は、試験室を含む試験室領域と、空調機器を含む環境形成領域に分割されている。そのため試験室が環境形成領域から切り離されており、試験室単体で漏水を防ぐ構造をとることができる。
また本態様の環境試験装置は、接合部の気密性を確保したいという要求と、試験室内における空気の流れを円滑にして試験室内の温度等のばらつきを小さくしたいという要求を満足するものである。
試験室内の温度ばらつきを小さくするためには、環境形成領域から試験室内に空気を導入する空気導入部の位置を、試験室の空気を環境形成領域に送り出す空気吸気部の位置から離す必要がある。
そのためには、空気吸気部は、試験室の下部側領域に設けられていることが望ましい。
一方、試験室の下部と環境形成領域を直接つなぐと、試験室を水没させた際に、環境形成領域も水没してしまう。
そこで本態様は、吸気用連通孔を注水時に想定される最高水位よりも上の位置に設けた。そのため、試験室に注水した際に、吸気用連通孔が水没することがなく、環境形成領域側に水が浸入しにくい。
また、通気路によって試験室の下部領域から空気が吸引されるので、試験室内の温度等のばらつきを小さくすることができる。
【0009】
上記した態様において、前記通気路は、前記最高水位よりも上の位置に曲部を有するものであることが望ましい。
【0010】
本態様によると、吸気用連通孔に水が入りにくい。
【0011】
上記した各態様において、前記試験室と前記環境形成領域との間で空気を循環させる送風機を有し、当該送風機は、前記空調機器の上部からずれた位置に配置されていることが望ましい。
【0012】
本態様によると、空調機器を高い位置に置くことができるので、空調機器が浸水しにくい。
【0013】
上記した各態様において、前記通気路は、吸気口を複数有するものであることが望ましい。
【0014】
また、前記吸気口を切り替える、切り替え手段を有していることが望ましい。
【0015】
本態様によると、例えば、通常時に空気を吸引させる吸気口と、注水時に空気を吸引する吸気口を使い分けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の環境試験装置によると、試験室内に注水しても、環境形成領域への水の浸入や、それに伴う空調機器の故障等が起きにくく、早期に環境試験を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の環境試験装置の断面図であり、環境試験を実施している際の状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態の環境試験装置の断面図であり、試験室に注水した際の状態を示す。
【
図4】本発明の他の実施形態の環境試験装置の断面図であり、環境試験を実施している際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の環境試験装置1について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、
図1、
図2、
図3の様に、独立した試験室領域側装置2と、環境形成領域側装置3があり、この両者が結合されて一体化されたものである。
試験室領域側装置2及び環境形成領域側装置3は、それぞれ独立した筐体5、6を有し、当該筐体5、6内に機器が内蔵されている。
【0019】
試験室領域側装置2は、その大部分が試験室領域である。試験室領域側装置(試験室領域)2は、断熱性を有する壁で前面を除く5面が形成された本体部10を有している。本体部10の前面には開口11があり、当該開口11には扉12が設けられている。扉12も断熱性を有している。
試験室領域側装置2の内部には試験室15として機能する空間がある。
試験室15は、注水される場合があることを前提として作られている。試験室15には、設計上、最高水位が定められている。
図2において、一点鎖線で表されたラインが、注水時に想定される最高水位16である。
【0020】
本体部10の奥壁18には、吸気用開口20と、空気導入用開口21が設けられている。
吸気用開口20及び空気導入用開口21は、いずれも最高水位16よりも上の位置にある。
本実施形態では、吸気用開口20と空気導入用開口21は、共に長方形であり、上下に並べて配置されている。本実施形態では、吸気用開口20が下であり、その上に空気導入用開口21が配されている。
【0021】
吸気用開口20にはダクト25が取り付けられている。
ダクト25は、吸気用開口20と、試験室15の下部領域を繋ぐ通気路を形成するものである。
ダクト(通気路)25は、一端に接続部26があり、当該接続部26が吸気用開口20に接続されている。
ダクト25には、接続部26の近傍に曲部27があり、当該曲部27よりも先の部分は、本体部10の奥壁18に沿って垂下している。曲部27の位置は、最高水位16よりも上である。
ダクト25の先端は、試験室15の下部領域に至り、第一吸気口30が開口している。
本実施形態では、第一吸気口30は、試験室15の底部近傍にある。第一吸気口30の高さは、試験室15の下部領域であり、試験室15の全高の3分の1以下の位置にある。
【0022】
ダクト25の中間部に、第二吸気口31が開口している。第二吸気口31は、弁32(切り替え手段)が取り付けられている。
弁32は、揺動型の弁であり、第二吸気口31を開閉する板状又はシート状の弁体33を有している。弁体33は、ダクト25内にあり、上辺側を中心として揺動する。
また弁体33は、図示しない付勢部材又は重力によって、
図2の様な垂下姿勢となっており、弁体33によって、第二吸気口31が塞がれている。
第二吸気口31及び弁体33は、いずれも最高水位16よりも上の位置にある。
【0023】
本体部10の上部には、送風機室35が設けられている。
送風機室35は、本体部10の奥壁18と天井壁36との隅の部分に作られた小室であり、内部が、導入路形成部37と送風機配置部38に区切られている。
導入路形成部37と送風機配置部38の間には、連通口46が開いている。また送風機配置部38と試験室15の間は、空気導入口47で連通している。
本実施形態では、連通口46は、上下方向に開口している。空気導入口47は、横方向に向かって開口している。即ち、空気導入口47は、水平や斜め方向といった水平成分を有する方向に開口している。
【0024】
送風機配置部38には、送風機40の羽根41が配置されている。本実施形態では、
図1の様に送風機40を2台有している。送風機40の台数は任意であり、1台であってもよく、3台以上であってもよい。
送風機40は、シロッコファン等の遠心式送風機であり、羽根41は、遠心羽根である。
羽根41は、
図2、
図3の様に軸線を垂直方向にして配置されており、羽根41の回転中心側が連通口46に臨み、羽根41の周方向に空気導入口47が開口している。
送風機40のモータ42は、本体部10に外付けされている。
【0025】
試験室15には、水位センサー45が設置されている。水位センサー45は、試験室15内の水位が、最高水位16に到達したことを検知するものである。
また試験室15には、図示しない注水口が設けられている。
【0026】
次に環境形成領域側装置3について説明する。
環境形成領域側装置3は、前記した様に独立した筐体6を有している。そして当該筐体内に、環境形成領域50が設けられている。
環境形成領域50は、断熱壁51で覆われた空間52を有し、内部に空調機器として、冷却器53と、ヒータ55が内蔵されている。冷却器53は、冷凍装置の蒸発器である。ヒータ55は電気ヒータである。
本実施形態では、冷却器53とヒータ55は、縦方向に並べて配置されている。
【0027】
環境形成領域50の空間52には、空気戻り側開口60と、空気往き側開口61が設けられている。
【0028】
本実施形態の環境試験装置1は、
図1、
図2、
図3の様に、試験室領域側装置2と、環境形成領域側装置3が一体化されたものである。
具体的には、試験室領域側装置2の筐体5の裏面側70と、環境形成領域側装置3の筐体6の正面側71とを合致させた状態で、試験室領域側装置2と環境形成領域側装置3とが結合されている。
試験室領域側装置2と環境形成領域側装置3とが結合された状態においては、試験室領域側装置2の裏面側70と、環境形成領域側装置3の正面側71との合致部が接合部72となっている。
【0029】
試験室領域側装置2と環境形成領域側装置3とが結合された状態においては、試験室領域側装置2の吸気用開口20と、環境形成領域側装置3の空気戻り側開口60とが合致し、一連の吸気用連通孔65が形成されている。即ち、試験室領域側装置2と環境形成領域側装置3との接合部72に、吸気用連通孔65が形成されている。
【0030】
また試験室領域側装置2と環境形成領域側装置3とが結合された状態においては、試験室領域側装置2の空気導入用開口21と、環境形成領域側装置3の空気往き側開口61とが合致し、一連の空気供給用連通孔66が形成されている。即ち、試験室領域側装置2と環境形成領域側装置3との接合部72に、空気供給用連通孔66が形成されている。
【0031】
次に、本実施形態の環境試験装置1の機能について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、送風機40を起動すると、環境形成領域50と試験室15との間で空気が循環し、試験室15内の温度や湿度が所望の環境に調節される。
即ち送風機40を起動すると、環境形成領域50が試験室15に対して負圧傾向となる。そのため、試験室15内に設置されたダクト(通気路)25の第一吸気口30から空気が吸引され、ダクト25及び吸気用連通孔65を経由して環境形成領域50に当該空気が導入される。環境形成領域50に導入された空気は、冷却器53及びヒータ55によって温度が調整される。
温度等が調整された空気は、空気供給用連通孔66から試験室領域側装置2に導入され、送風機室35に入る。そして、導入路形成部37、連通口46、送風機配置部38を経由して、温度が調整された空気が、空気導入口47から試験室15内に戻される。
【0032】
その結果、試験室15内に所望の環境が創出され、供試体100が当該環境下に置かれる。
通常の環境試験を実施している際には、試験室15に対して上部側に設けられた空気導入口47から空調された空気が供給され、試験室15の下部に設けられたダクト25の第一吸気口30から空気が吸引されて、環境形成領域50に送られる。
このように、環境試験時においては、試験室15内に空気を導入する空気導入口47と、試験室15から空気を排出する第一吸気口30とが、上下に大きく離れた位置関係にあるため、試験室15内における空気の流れが円滑であり、試験室15内の温度等のばらつきが小さい。
【0033】
本実施形態では、通気路たるダクト25に、第一吸気口30と第二吸気口31が設けられている。しかしながら、第二吸気口31は、弁体33で封鎖されている。そのため、前記した様に、試験室15内の空気は、試験室15の下部領域に開口する第一吸気口30からダクト25に導入される。
【0034】
例えば供試体100が発火すると、多くの場合、送風機40と、空調機器(冷却器53、ヒータ55)の運転が停止される。
また図示しない注水口から試験室15内に注水される。注水は、供試体が水没する程度まで行われる場合がある。
ここで本実施形態では、設計上、注水時の水位に上限が定められており、供試体100の大きさに係わらず、水位センサー45が最高水位16に到達したことを検知すると、消火や冷却を目的とした注水が停止する。
従って、本実施形態の環境試験装置1では、試験室15内の水位が、最高水位16を超えることはない。
【0035】
本実施形態の環境試験装置1では、試験室15と環境形成領域50とを連通するのは、吸気用連通孔65と空気供給用連通孔66のみであるが、いずれも最高水位16よりも上の位置にある。
そのため、試験室15内の水位は、吸気用連通孔65や空気供給用連通孔66には至らない。従って、試験室15内の水が、吸気用連通孔65や空気供給用連通孔66を経由して、環境形成領域50に流れ込むことはない。
【0036】
また仮に、注水中に送風機40が駆動している場合は、ダクト25内が負圧となり、切り替え手段たる弁体33が付勢手段や重力に抗して揺動し、
図3の様に第二吸気口31が開く。第二吸気口31は、最高水位16よりも上に設けられているから、第二吸気口31からは空気のみが吸い込まれ、水が環境形成領域50に浸入することはない。
【0037】
また発火や発熱があって、注水されている最中も環境試験を継続する場合もあり、その際には故意に送風機40が駆動されるが、前記した理由により、水が環境形成領域50に浸入することはない。
第一吸気口30が完全に水没するまでの間は、第一吸気口30から水しぶきが吸い込まれるが、ダクト25の上部に曲部27があるので、水滴の多くは、曲部27の内壁に衝突して落下する。そのため、第一吸気口30が完全に水没するまでの間においても、環境形成領域50に浸入する水はわずかであり、実害はない。
【0038】
本実施形態の環境試験装置1は、注水対象の試験室15と空調機器(冷却器53、ヒータ55)が配された環境形成領域50を繋ぐ部位が、最高水位よりも上の位置に設けられているから、試験室15から環境形成領域50側に水が流れ込むことがない。
そのため、空調機器(冷却器53、ヒータ55)が水没することはなく、消火後、排水して直ちに環境試験を再開することができる。
【0039】
また本実施形態の環境試験装置1では、注水対象の試験室15と空調機器(冷却器53、ヒータ55)が配された環境形成領域50を繋ぐ部位、即ち吸気用連通孔65及び空気供給用連通孔66までは水位が上昇しないので、吸気用連通孔65等の気密性を確保するための処理が容易である。
即ち、環境試験装置1では、試験室領域側装置2と環境形成領域側装置3を連通させる部分の気密性を確保する必要がある。
具体的には、試験室領域側装置2の吸気用開口20及び空気導入用開口21の近傍から、環境試験装置1の外部に空気が漏れないようにシールする必要がある。環境形成領域側装置3の空気戻り側開口60と空気往き側開口61についても同様であり、環境試験装置1の外部に空気が漏れないようにシールする必要がある。
ここで、水が通過する部位をシールする処理は、水が通過しない部位をシールする処理に比べて困難である。本実施形態では、シールすべき部位が、最高水位よりも上の位置に設けられているから、シールすべき部位に水が流れ込むことがない。
そのため本実施形態で採用する構造によると、気密性を確保するための処理が容易である。
【0040】
また本実施形態の環境試験装置1では、送風機40が、試験室領域側装置2側に設置されている。そのため、送風機40は、空調機器(冷却器53、ヒータ55)の上部空間からずれた位置に配置されている。言い換えると、空調機器の上に送風機40が無い。そのため、空調機器をより高い位置に設置することができる。
即ち、通常の環境試験装置は、空調機器の真上の位置に送風機が配置されたレイアウトとなっており、当然に空調機器は、送風機の下に配置されている。
これに対して、本実施形態では、送風機40が、空調機器(冷却器53、ヒータ55)の上部空間からずれた位置に配置されているので、環境形成領域50と送風機40が横並び状態となるレイアウトとなる。
そのため、空調機器の位置を通常の場合に比べて高くすることができ、空調機器への浸水を防ぐことができる。
【0041】
以上説明した実施形態では、空調機器として、冷却器53とヒータ55を例示したが、空調機器の内容は限定されるものではなく、冷却器53だけでも良いし、ヒータ55だけでもかまわない。また加湿器等を有するものであってもよい。
【0042】
以上説明した実施形態では、ダクト25に空気を導入する吸気口を切り替える切り替え手段として、弁32を採用した。弁32は、気圧の差によって自動的に開閉するものであり、推奨されるものであるが、切り替え手段は、アクチェータによって動作するものや、手動によって切り替えるものであってもよい。
アクチュエータによって切り替え手段を動作させる場合、注水のタイミングを基に切り替えることが望ましい。例えば、注水を開始すると同時に切り替えることや、注水を開始後、所定時間が経過した後に切り替えることができる。
以上説明した実施形態では、ダクト25に空気を導入する吸気口を二か所に設けたが、さらに多数であってもよい。また吸気口は、第一吸気口30だけであってもよい。
【0043】
以上説明した実施形態では、水位センサー45を設け、当該水位センサー45が最高水位16に到達したことを検知すると、消火や冷却を目的とした注水が停止する構成を採用したが、水位センサー45に代わり、或いは水位センサー45に加えて、例えばオーバーフロー管を設け、最高水位以上に水位が上昇しない様な構造であってもよい。
【0044】
以上説明した実施形態では、送風機40が試験室領域側装置2側に設置されているが、送風機40は、環境形成領域50側に設置されていてもよい。
【0045】
以上説明した実施形態では、ダクト25によって、吸気用連通孔65と試験室15の下部領域を繋ぐ通気路を構成した。
上記した実施形態では、試験室15の内壁から独立したダクト25を設け、当該ダクト25によって、吸気用開口20と試験室15の下部領域を繋ぐ通気路を構成している。
本実施形態によると、容易に通気路の気密性を確保することができるので、推奨される。
しかしながら、本発明は、ダクトを使用した通気路に限定されるものではなく、
図4に示す様に、試験室15の奥壁18に吸気用開口20を覆う通気路形成部材75を取り付けて、通気路76を形成してもよい。通気路形成部材75は、吸気用開口20を覆う部材であって、内壁18から扉12の方向(
図4の左方向)に延びる上面と、内壁18に対向して前記上面から下方に延びる面と、を少なくとも有している。通気路形成部材75は、前記下方に延びる面から内壁18の方向に延びる面をさらに有してもよい。この変形例では、通気路形成部材75の内面と奥壁18とで囲まれる空間が、吸気用開口20と試験室15の下部領域を繋ぐ通気路76となる。
【符号の説明】
【0046】
1 環境試験装置
2 試験室領域側装置(試験室領域)
3 環境形成領域側装置
5 筐体
6 筐体
15 試験室
16 最高水位
20 吸気用開口
21 空気導入用開口
25 ダクト(通気路)
27 曲部
30 第一吸気口
31 第二吸気口
32 弁(切り替え手段)
40 送風機
45 水位センサー
50 環境形成領域
53 冷却器(空調機器)
55 ヒータ(空調機器)
65 吸気用連通孔
66 空気供給用連通孔
72 接合部
75 通気路形成部材
76 通気路