(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20240711BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240711BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E02F9/16 C
B60H1/00 102T
B60H1/32 614C
(21)【出願番号】P 2021055596
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 将也
(72)【発明者】
【氏名】田中 友幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆司
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/073611(WO,A1)
【文献】特開2014-25285(JP,A)
【文献】特開2007-118795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60H 1/00
B60H 1/32
B62D 33/063-33/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に回動可能に設けられた作業装置と、を備え、
前記上部旋回体は、
支持構造体を形成する旋回フレームと、
前記旋回フレーム上に設けられ、前部が前記旋回フレームに上下方向に回動可能に取付けられたフロア部材と、
前記フロア部材の上側に設けられたキャブボックスと、
前記フロア部材の下側に設けられた空調用の室内ユニットと、
を備えてなる建設機械において、
前記フロア部材の下面側には、前側が前記フロア部材の前部に上下方向に回動可能に取付けられ、後側が前記フロア部材に脱着可能に取付けられたユニット取付板が設けられ、
前記室内ユニットは、前記ユニット取付板の下面に取付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記ユニット取付板には、上側に突出するブラケットが設けられ、
前記ブラケットが、前記フロア部材の上側に突出した状態で前記フロア部材に固定されることにより、前記ユニット取付板が前記フロア部材に固定されることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記フロア部材は、前側に位置する足乗せ部と、前記足乗せ部の後側から立ち上がった運転席台座と、を有し、
前記ブラケットは、前記運転席台座に脱着可能に取付けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記フロア部材に対して前記ユニット取付板が回動するときの回動の中心線は、前記旋回フレームに対して前記フロア部材が回動するときの回動の中心線よりも後側に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記室内ユニットは、前記ユニット取付板の前記下面に脱着可能に取付けられる中間取付板を有していることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記中間取付板は、前記ユニット取付板に上側から挿通されるボルトによって前記ユニット取付板に取付けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、チルト動作が可能なフロア部材の下側に空調用の室内ユニットが取付けられた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前部に回動可能に設けられた作業装置と、を備えている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、旋回フレーム上に設けられたフロア部材と、フロア部材の上側に設けられたキャブボックスと、を備えている。フロア部材とキャブボックスとは、オペレータが搭乗するキャブを構成している。また、上部旋回体は、キャブ内に調和空気を供給する空調装置を有している。この空調装置は、例えば、エンジン側の室外ユニットと、室外ユニットとホース類で接続されたキャブ側の室内ユニットと、により構成されている。
【0004】
ここで、油圧ショベルには、狭い作業現場での作業に適したミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルがある。小型の油圧ショベルの上部旋回体は、狭い場所でも旋回できるように小さく形成され、キャブも小型化されている。
【0005】
また、上部旋回体の小型化に伴い、制御弁等を含む各種部品の設置スペースも制限されている。このために、小型の油圧ショベルには、旋回フレームの前部を旋回フレームに上下方向に回動可能に取付けることにより、キャブと一緒にフロア部材をチルト動作(チルトアップ、チルトダウン)できるように構成したものがある。これにより、フロア部材の下側に位置して旋回フレーム上に制御弁等を設置した場合でも、フロア部材をチルトアップすることで制御弁等をメンテナンスすることができる。
【0006】
さらに、小型の油圧ショベルは、キャブの小型化によって室内ユニットをキャブ内に設置するのが難しくなっている。そこで、小型の油圧ショベルは、フロア部材のチルト動作を利用し、フロア部材の下面側に室内ユニットを取付ける構成としている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の油圧ショベルは、チルト動作が可能なフロア部材の下面側に室内ユニットを取付けている。この構成では、フロア部材の下側に室内ユニットをあてがい、室内ユニットに設けたボルト挿通孔に下側からボルトを挿通し、このボルトをフロア部材のねじ穴に螺着することにより、室内ユニットをフロア部材に取付けている。
【0009】
従って、室内ユニットをフロア部材から取外したり、取付けたりする場合には、フロア部材をチルトアップさせた状態で、手探りで工具をボルトに係合させたり、フロア部材の下側に仰向けで入り込んでボルトを回したりしなくてはならない。これにより、フロア部材に室内ユニットを脱着するときの作業性、メンテナンスを行うときの作業性が悪いという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、フロア部材に対する室内ユニットの脱着作業、メンテナンスを容易に行えるようにして、これらの作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に回動可能に設けられた作業装置と、を備え、前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、前記旋回フレーム上に設けられ、前部が前記旋回フレームに上下方向に回動可能に取付けられたフロア部材と、前記フロア部材の上側に設けられたキャブボックスと、前記フロア部材の下側に設けられた空調用の室内ユニットと、を備えてなる建設機械において、前記フロア部材の下面側には、前側が前記フロア部材の前部に上下方向に回動可能に取付けられ、後側が前記フロア部材に脱着可能に取付けられたユニット取付板が設けられ、前記室内ユニットは、前記ユニット取付板の下面に取付けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フロア部材に対する室内ユニットの脱着作業、メンテナンスを容易に行うことができ、これらの作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図2】キャブがチルトアップした状態の油圧ショベルを
図1と同様位置から示す左側面図である。
【
図3】キャブがチルトアップすると共に室内ユニットが下ろされた状態の油圧ショベルを
図1と同様位置から示す左側面図である。
【
図4】旋回フレーム、足乗せ部が破断されたフロア部材、室内ユニット等を示す左側面図である。
【
図5】旋回フレーム、チルトアップしたフロア部材、フロア部材から下ろされた室内ユニットを
図4と同様位置から示す左側面図である。
【
図7】ユニット取付板のブラケットを取外した状態のフロア部材、運転席等を
図6と同様位置から示す斜視図である。
【
図8】ユニット取付板に室内ユニットを取付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の下部走行体を備えた油圧ショベルを例に挙げ、
図1ないし
図9に従って詳細に説明する。
【0015】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、キャブ仕様の油圧ショベルとして構成されている。油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、を備えている。上部旋回体3の前部には、土砂の掘削作業等を行う作業装置4が回動可能に設けられている。
図2、
図3に示すように、油圧ショベル1は、後述の旋回フレーム5に対してキャブ7がチルト動作可能となっている。
【0016】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を形成している。旋回フレーム5は、前側に突出する支持部5Aを有している。この支持部5Aには、作業装置4が回動可能に取付けられている。また、旋回フレーム5の前側の上部には、複数個、例えば、左右方向に間隔をもって2個のフロア取付部5B(
図4、
図5中に1個のみ図示)が上側に突出して設けられている。フロア取付部5Bは、後述するフロア部材8の前部、即ち、足乗せ部9の取付ブラケット9Aを上下方向に回動可能に支持している。
【0017】
旋回フレーム5の後部には、作業装置4との重量バランスを取るためのカウンタウエイト6が取付けられている。旋回フレーム5の後側には、エンジン、熱交換器、油圧ポンプ等が設けられている。また、旋回フレーム5の前側には、フロア部材8の足乗せ部9の下側に位置して制御弁群(いずれも図示せず)が設けられている。
【0018】
キャブ7は、旋回フレーム5の左前側に設けられている。キャブ7は、内部が運転室となったボックス体として形成されている。キャブ7は、後述するフロア部材8、キャブボックス14を含んで構成されている。
【0019】
キャブ7のベースを形成するフロア部材8は、旋回フレーム5上に設けられている。フロア部材8は、旋回フレーム5の左右方向の中間部から左側、かつ旋回フレーム5の前部からカウンタウエイト6までの間を覆うように設けられている。また、フロア部材8は、前側の足乗せ部9と後側の運転席台座10とを有している。
【0020】
図6に示すように、フロア部材8の前側部分を形成する足乗せ部9は、水平方向に延びた板体として形成されている。足乗せ部9の前部の下側には、2個のフロア取付部5Bを挟むように2個の取付ブラケット9A(
図4、
図5中に1個のみ図示)が設けられている。取付ブラケット9Aは、旋回フレーム5のフロア取付部5Bを挟んで配置され、取付ブラケット9Aとフロア取付部5Bとには、左右方向に貫通して軸体9Bが挿着されている。これにより、取付ブラケット9Aは、フロア取付部5Bに対して上下方向に回動可能に支持されている。そして、軸体9Bの軸線は、旋回フレーム5に対してフロア部材8が回動するときの回動の中心線O1(
図4、
図5中の点O1)となっている。
【0021】
また、足乗せ部9の下面9Cには、後述のユニット取付板15を介して室内ユニット17が取付けられている。さらに、足乗せ部9の後部には、室内ユニット17に設けられたブラケット15Cが上下方向に貫通する開口部9D(
図7に図示)が設けられている。
【0022】
フロア部材8の後側部分を形成する運転席台座10は、足乗せ部9の後側から立ち上がって形成されている。運転席台座10には、後述の運転席11等が取付けられている。運転席台座10は、例えば、足乗せ部9の後端から立ち上がった前面部10Aと、前面部10Aの上部から後側に延び、運転席11が取付けられる平坦部10Bと、を有している。前面部10Aは、ユニット取付板15が足乗せ部9の下面9Cに対面した取付位置(
図4に示す位置)に配置されたときに、ブラケット15Cに対面している。前面部10Aには、ブラケット15Cに対面する下側位置に、左右方向に間隔をもって複数個、例えば、3個のねじ穴10C(
図7に図示)が設けられている。
【0023】
運転席11は、オペレータが座るもので、運転席台座10の平坦部10B上に取付けられている。また、走行用の操作レバー・ペダル装置12は、運転席11の前方となる足乗せ部9の前側に設けられている。走行用の操作レバー・ペダル装置12は、下部走行体2を走行させるときに操作される。作業用の操作レバー装置13は、運転席11の左右両側に設けられている。作業用の操作レバー装置13は、作業装置4等を操作するときに操作される。
【0024】
図1ないし
図3に示すように、キャブボックス14は、フロア部材8の上側に設けられている。キャブボックス14は、フロア部材8の周囲から立ち上がって上方を覆うボックス体として形成されている。キャブボックス14は、フロア部材8上にオペレータの居住スペースとなる運転室を形成している。また、キャブボックス14の左面には、オペレータが乗降するときに開かれるドア14Aが設けられている。
【0025】
次に、本実施形態の特徴部分となるユニット取付板15の構成および動作について説明する。
【0026】
図4、
図5に示すように、ユニット取付板15は、フロア部材8を構成する足乗せ部9の下面9C側に設けられている。ユニット取付板15は、足乗せ部9の下面9Cに対面する板体として形成されている。詳しくは、
図8に示すように、ユニット取付板15は、左右方向に長尺な長方形状の板体として形成されている。
【0027】
ユニット取付板15の前縁部には、左右方向に間隔をもって複数個、例えば2個のヒンジ15Aが設けられている。ユニット取付板15は、ヒンジ15Aを足乗せ部9の下面9Cの前側位置に固定することにより、前側が足乗せ部9の前部に上下方向に回動可能に取付けられている。そして、ユニット取付板15は、
図4に示すように、ヒンジ15Aを支点として後側を上側に回動し、上面15Bを足乗せ部9の下面9Cに対面させた位置が取付位置となる。
【0028】
ここで、ユニット取付板15がフロア部材8に対して回動するときの回動の中心線は、ヒンジ15Aの回動中心O2(
図4、
図5中の点O2)となっている。この中心線O2は、旋回フレーム5に対してフロア部材8が回動するときの回動の中心線O1よりも後側に配置されている。
【0029】
ユニット取付板15は、前述した取付位置で、後側がフロア部材8に脱着可能に取付けられている。具体的には、ユニット取付板15には、上面15Bの後側に位置してブラケット15Cが設けられている。ブラケット15Cは、上面15Bから立ち上がって左右方向に延びた板体として形成されている。また、ブラケット15Cは、ユニット取付板15の上面15Bが足乗せ部9の下面9Cに対面した取付位置で、足乗せ部9の開口部9Dを通じて足乗せ部9の上側に突出している。
【0030】
ブラケット15Cには、左右方向に間隔をもって複数個、例えば、3個のボルト挿通孔15D(
図8に図示)が設けられている。3個のボルト挿通孔15Dは、ユニット取付板15の取付位置において、運転席台座10に設けられた3個のねじ穴10Cにそれぞれ対応している。
【0031】
従って、ブラケット15Cは、足乗せ部9の上側に突出した状態で、ボルト挿通孔15Dに挿通したボルト16を運転席台座10のねじ穴10Cに螺着することにより、運転席台座10に脱着可能に取付けられている。この場合、作業者は、ブラケット15Cを足乗せ部9の上側に突出させたことで、足乗せ部9の上側からボルト16に容易にアクセスすることができる。
【0032】
ユニット取付板15には、例えば、縁部側に位置して複数個のボルト挿通孔(いずれも図示せず)が設けられている。複数個のボルト挿通孔は、ユニット取付板15を板厚方向(上下方向)に貫通した丸孔として形成されている。複数個のボルト挿通孔は、下面15Eに後述する中間取付板19を当接させた状態で、中間取付板19のねじ穴19Bと同軸に配置されている。
【0033】
空調用の室内ユニット17は、キャブ7内の運転室に調和空気(温風、冷風等)を供給するために、フロア部材8の足乗せ部9の下側に設けられている。室内ユニット17は、ユニット取付板15の下面15Eに脱着可能に取付けられている。室内ユニット17は、ユニット本体18と中間取付板19とにより構成されている。
【0034】
ユニット本体18は、外形を形成するケース部材18Aを有し、ケース部材18A内には、エバポレータ、ヒータコア、ファン、モータ等(いずれも図示せず)が設けられている。ケース部材18Aは、上下方向に扁平なボックス体として形成され、その周囲には、上下方向に貫通して複数個のボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。
【0035】
図9に示すように、中間取付板19は、ユニット取付板15とほぼ同形状の板体によって形成されている。中間取付板19は、ユニット本体18に設けられた複数個のボルト挿通孔に対応する位置に、複数個のねじ穴19A(上面に溶接されたナット)を有している。また、中間取付板19は、ユニット取付板15に設けられた複数個のボルト挿通孔に対応する位置に、複数個のねじ穴19B(下面に溶接されたナット)を有している。
【0036】
室内ユニット17を組立てるときの手順の一例について述べる。上下を反転した中間取付板19上に上下を反転した室内ユニット17を載せる。この状態で、ユニット本体18の各ボルト挿通孔に上側からボルト20を挿入し、ボルト20のねじ部を中間取付板19の各ねじ穴19Aに螺着する。ユニット本体18に中間取付板19を取付けたら、この組立体の上下を反転することにより、ユニット本体18上に中間取付板19を一体的に取付けることができる。
【0037】
ユニット本体18上に中間取付板19を取付けて室内ユニット17を組立てたら、中間取付板19をユニット取付板15の下面15Eに押付ける。この状態で、ユニット取付板15の各ボルト挿通孔に上側からボルト21を挿入し、ボルト21のねじ部を中間取付板19の各ねじ穴19Bに螺着する。これにより、ユニット取付板15の下面15E側に室内ユニット17を取付けることができる。
【0038】
このユニット取付板15に対する室内ユニット17の取付作業は、ユニット取付板15の各ボルト挿通孔に上側から挿入したボルト21を締付けるだけでよいから、ボルト21を目視しながら簡単に行うことができる。
【0039】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0040】
まず、キャブ7の運転室に乗り込んで運転席11に座ったオペレータは、走行用の操作レバー・ペダル装置12を操作することにより、下部走行体2を走行させる。また、左右の作業用の操作レバー装置13を操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。そして、油圧ショベル1の運転時には、室内ユニット17から運転室に冷風、温風等を供給することにより、運転室を適度な温度に調整することができる。
【0041】
次に、フロア部材8の下側に配設されたエンジン、制御弁群、室内ユニット17等のメンテナンスを行うときの作業手順の一例について説明する。
【0042】
まず、フロア部材8をチルトダウン位置に固定しているボルト(図示せず)を取外し、
図2に示すように、キャブ7を前側に倒しつつ、フロア部材8の後側を持ち上げる。このようにキャブ7と一緒にフロア部材8をチルトアップすることにより、エンジン、制御弁群等の上側には、作業スペースを確保できるから、これらのメンテナンスを行うことができる。
【0043】
ここで、室内ユニット17は、1つの完成されたユニットであるから、室内ユニット17に施すことができるメンテナンスとしては、簡単な清掃作業程度となる。そして、
図2に示すように、フロア部材8と一緒に室内ユニット17をチルトアップした状態では、室内ユニット17の簡単な清掃作業を行うことができる。
【0044】
一方、室内ユニット17の修理作業や大掛かりな清掃作業を行う場合には、室内ユニット17をフロア部材8から取外した後に、室内ユニット17を交換したり、修理したりする必要がある。
【0045】
そこで、室内ユニット17をフロア部材8から取外す場合には、フロア部材8をチルトアップした状態で、ボルト16を緩めて取外す。このときに、ボルト16は、ブラケット15Cと一緒に足乗せ部9の上側に突出した位置に設けられているから、作業者は、ボルト16に容易にアクセスすることができる。
【0046】
図3、
図5に示すように、ボルト16を取外すことにより、ユニット取付板15は、前側を回動支点として後側が下側に回動するから、ユニット取付板15と一緒に室内ユニット17を下げることができる。ユニット取付板15を下げた状態では、ユニット取付板15の上側には、フロア部材8(足乗せ部9)との間に作業スペースを確保することができる。
【0047】
この作業スペースでは、ユニット取付板15の上面15Bにボルト21の頭が露出しているから、作業者は、手探りや仰向け作業ではなく、無理のない作業姿勢のままでボルト21の頭を目視しながら工具を係合させてボルト21を容易に取外すことができ、室内ユニット17を取外すことができる。なお、ユニット取付板15をフロア部材8に固定しているボルト16を取外す作業は、フロア部材8等をチルトアップする前に行うようにしてもよい。
【0048】
室内ユニット17をフロア部材8に取付ける場合には、上述した室内ユニット17の取外し手順と逆の手順で作業を行うことにより、フロア部材8に対する室内ユニット17の取付作業を容易に行うことができる。
【0049】
かくして、本実施形態によれば、フロア部材8は、旋回フレーム5上に設けられ、前部が旋回フレーム5に上下方向に回動可能に取付けられている。このフロア部材8を構成する足乗せ部9の下面9C側には、前側がフロア部材8の前部に上下方向に回動可能に取付けられ、後側がフロア部材8に脱着可能に取付けられたユニット取付板15が設けられている。この上で、空調用の室内ユニット17は、ユニット取付板15の下面15Eに取付けられている。
【0050】
従って、室内ユニット17をフロア部材8から取外したり、取付けたりする場合には、フロア部材8をチルトアップさせた状態で、ユニット取付板15の前側を回動支点としてユニット取付板15の後側を下側に回動させて、ユニット取付板15と一緒に室内ユニット17を下げる。これにより、ユニット取付板15の上側には、フロア部材8との間に室内ユニット17を脱着するための作業スペースを確保することができる。
【0051】
この結果、作業者は、手探りや仰向け作業ではなく、無理のない作業姿勢のままで室内ユニット17を脱着することができ、作業性を向上することができる。また、ユニット取付板15を下げない状態では、室内ユニット17のメンテナンスとして簡単な清掃作業を行うことができる。
【0052】
ユニット取付板15には、上側に突出するブラケット15Cが設けられている。ブラケット15Cが、フロア部材8の上側に突出した状態でフロア部材8の運転席台座10に固定されることにより、ユニット取付板15がフロア部材8に固定される。これにより、ボルト16は、ブラケット15Cと一緒にフロア部材8の上側に突出した位置に設けられているから、作業者は、ボルト16に容易にアクセスすることができ、ボルト16の着脱作業を容易に行うことができる。
【0053】
フロア部材8は、前側に位置する足乗せ部9と、足乗せ部9の後側から立ち上がった運転席台座10と、を有している。この上で、ブラケット15Cは、運転席台座10に脱着可能に取付けられている。従って、フロア部材8の上側に突出するブラケット15Cは、立ち上がった運転席台座10を利用して取付けることができる。
【0054】
フロア部材8に対してユニット取付板15が回動するときの回動の中心線O2は、旋回フレーム5に対してフロア部材8が回動するときの回動の中心線O1よりも後側に配置されている。これにより、フロア部材8とユニット取付板15との間の作業スペースを大きく形成することができる。
【0055】
室内ユニット17は、ユニット取付板15の下面15Eに脱着可能に取付けられる中間取付板19を有している。従って、室内ユニット17は、中間取付板19を介してユニット取付板15の下面15Eに脱着可能に取付けることができる。また、既存のユニット本体18をユニット取付板15に取付けることができる。
【0056】
しかも、中間取付板19は、ユニット取付板15に上側から挿通されるボルト21によってユニット取付板15に取付けられている。これにより、ユニット取付板15の上側にボルト21の頭が露出するから、作業者は、ボルト21の頭を目視しながらボルト21を容易に取外したり、締付けたりすることができる。室内ユニット17を脱着するときの作業性を向上することができる。
【0057】
なお、実施形態では、室内ユニット17は、ユニット本体18と中間取付板19とにより構成し、中間取付板19をユニット取付板15に取付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、ユニット本体18を室内ユニットとしてユニット取付板15に取付ける構成としてもよい。
【0058】
実施形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベル等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
8 フロア部材
9 足乗せ部
9C,15E 下面
10 運転席台座
14 キャブボックス
15 ユニット取付板
15C ブラケット
17 室内ユニット
19 中間取付板
O1,O2 回動の中心線