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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】水門開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E02B7/20 110
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021212665
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096725
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-136825(JP,U)
【文献】実開昭57-197523(JP,U)
【文献】特開2009-191541(JP,A)
【文献】特開平07-008017(JP,A)
【文献】特開2002-219221(JP,A)
【文献】実公昭51-034119(JP,Y1)
【文献】実開昭48-011630(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/54
E02B 8/02-8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体を上昇させる力を発生する駆動ユニットが架台に固定された水門開閉装置において、
前記架台に回動自在に取り付けられ、前記扉体に固定された吊具を係止して該扉体を休止位置で留める休止フックと、
前記架台の上方に突出した凸部を有し、前記休止フックに固定された延設部材と、
前記架台の上部に取り付けられ、前記凸部の後側に当接して、前記扉体と共に上昇する前記吊具が前記休止フックに接触する位置に該休止フックを位置決めするストッパと
前記ストッパの後方で前記架台に固定され、第1の螺子部材が貫通した状態で取り付けられた立設部材とを備え
前記ストッパには、前記架台に該ストッパを固定する第2の螺子部材が貫通した前後方向に長い長孔が形成され、
前記ストッパは、前記第1の螺子部材が後側に接触する側壁部を有し、前記第2の螺子部材が緩められて、前記架台に対する位置調整が可能となり、
前記凸部は、前記休止フックに接触した前記吊具の上昇に伴い、前方に移動して前記ストッパに非接触となり、更なる前記吊具の上昇によって、後方に移動して前記ストッパに再び接触することを特徴とする水門開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門の扉体を昇降させる水門開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水路や河川等の水門には、扉体を昇降させる水門開閉装置が設けられている。水門開閉装置においては、点検等の際、扉体が自重で下がることを防止するため、特許文献1に記載されているように、扉体(ゲート本体)の上部に設けられた吊具(休止吊具)に休止フック(ハンガ)を係止して、扉体を固定している。図6に示すように、休止フック100は、チェーンの巻き上げやラダーの引き上げ等により扉体101を上昇させる駆動ユニット102が固定される架台103(特許文献1では、堰の梁)に回動自在に取り付けられている。
【0003】
吊具104は、図7(A)、(B)に示すように、休止フック100の直下から、扉体101と共に上昇して、休止フック100に形成された傾斜部105に接触する。休止フック100は、図7(C)に示すように、傾斜部105に接触した状態で上昇する吊具104から与えられる力によって反時計回りに回動する。吊具104が傾斜部105の先側より高い位置まで上昇すると、吊具104と休止フック100との接触が解除される。
【0004】
これによって、休止フック100は自重により時計回りに回動し、休止フック100の先側が吊具104の係止孔内に挿入され、吊具104は、図7(D)に示すように、傾斜部105の上方で休止フック100に接触する。この状態から吊具104が扉体101と共に下降することにより、図7(E)に示すように、休止フック100は吊具104に係止される。
【0005】
ここで、ストッパ106は、図8(A)に示すように、休止フック100の直下から上昇する吊具104が傾斜部105に接触する基準位置に休止フック100を位置決めする。休止フック100は、ストッパ106が無ければ、図8(B)に示すように、自重により基準位置から時計回りに回動した位置で静止するように設計されている。休止フック100をこのように設計した上で、ストッパ106を設けることによって、吊具104に非接触な状態の休止フック100は確実にストッパ106に接し基準位置に配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実全昭57-197523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、ストッパ106は、図6に示すように、架台103から下方に突出するように架台103に取り付けられていたため、ストッパ106が取り付けられた架台103を水門開閉装置101の設置現場に運搬する際、ストッパ106に架台103の荷重がかからないようにする等、運搬上の注意が必要なだけでなく、設置現場でストッパ106の位置を調整することになった場合に、調整作業が容易でないという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、設置現場でのストッパの位置調整を容易に行える水門開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る水門開閉装置は、扉体を上昇させる力を発生する駆動ユニットが架台に固定された水門開閉装置において、前記架台に回動自在に取り付けられ、前記扉体に固定された吊具を係止して該扉体を休止位置で留める休止フックと、前記架台の上方に突出した凸部を有し、前記休止フックに固定された延設部材と、前記架台の上部に取り付けられ、前記凸部の後側に当接して、前記扉体と共に上昇する前記吊具が前記休止フックに接触する位置に該休止フックを位置決めするストッパと、前記ストッパの後方で前記架台に固定され、第1の螺子部材が貫通した状態で取り付けられた立設部材とを備え、前記ストッパには、前記架台に該ストッパを固定する第2の螺子部材が貫通した前後方向に長い長孔が形成され、前記ストッパは、前記第1の螺子部材が後側に接触する側壁部を有し、前記第2の螺子部材が緩められて、前記架台に対する位置調整が可能となり、前記凸部は、前記休止フックに接触した前記吊具の上昇に伴い、前方に移動して前記ストッパに非接触となり、更なる前記吊具の上昇によって、後方に移動して前記ストッパに再び接触する
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る水門開閉装置は、架台の上部に取り付けられ、扉体と共に上昇する吊具が休止フックに接触する位置に休止フックを位置決めするストッパを備えるので、架台上でストッパを位置調整でき、当該位置調整を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る水門開閉装置の説明図である。
図2】同水門開閉装置の説明図である。
図3】(A)、(B)はそれぞれ、ストッパの側面図及び平面図である。
図4】(A)~(E)はそれぞれ、休止フックを吊具に係止する流れを示す説明図である。
図5】(A)~(C)はそれぞれ、休止フックを吊具に係止した状態を解除して扉体を下降可能な状態にする流れを示す説明図である。
図6】従来例に係る水門開閉装置の説明図である。
図7】(A)~(E)はそれぞれ、従来例の休止フックを吊具に係止する流れを示す説明図である。
図8】(A)、(B)はそれぞれ、ストッパの有無による休止フックへの影響を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る水門開閉装置10は、扉体Dを上昇させる力を発生する駆動ユニット11が架台Sに固定された装置であって、扉体Dを休止位置で留める休止フック12と、休止フック12を位置決めするストッパ13を備えている。
【0012】
水門開閉装置10が具備する駆動ユニット11は、図1図2に示すように、ワイヤ14が巻き付けられたドラム15と、作動してドラム15に回転力を与える図示しないモータとを有し、複数の鋼材によって形成された架台Sに固定されている。なお、図2では、架台Sの一部の記載が省略されている。ワイヤ14は、一端がドラム15に固定され、ドラム15から垂れ下がった領域が扉体Dの上部に回転自在に設けられた滑車16に掛け渡され、他端が架台Sに取り付けられた留具17に連結されている。
【0013】
扉体Dの上部には、貫通孔(係止孔)を有する逆U字状(Uを上下反対にした形状)の吊具18が固定されている。
ドラム15からワイヤ14が送り出されることにより、扉体Dは滑車16及び吊具18と共に下降し、ドラム15にワイヤ14が巻き取られることにより、扉体Dは滑車16及び吊具18と共に上昇する。
【0014】
休止フック12は、金属製の長尺体であり、一側端部(上側端部)が軸材19によって架台Sに回動自在に取り付けられ、平面視して吊具18と重なる位置に配されている。休止フック12は鉛直に配され、他側端部(下側端部)は、吊具18に係止可能に鉤状に形成されている。休止フック12の一側端部には、架台Sの上方に突出した凸部20を有する延設部材21が固定されている。本実施の形態では、延設部材21が金属板であり、延設部材21には、架台Sに固定されたリニアジャッキ22に基側端部が連結されたアーム23の先側端部が固定されている。
【0015】
リニアジャッキ22には、作業員による回転操作によりリニアジャッキ22を作動させる手動ハンドル24が取り付けられている。リニアジャッキ22の作動によって、リニアジャッキ22の力がアーム23を介して延設部材21に与えられ、休止フック12及び延設部材21が軸材19を中心に回動する。
架台Sの上部には、図1図3(A)、(B)に示すように、延設部材21に当接して休止フック12を位置決めするストッパ13が取り付けられている。
【0016】
ストッパ13は、図3(A)、(B)に示すように、複数(本実施の形態では4個)の長孔25が形成されたベース部材26と、延設部材21に接触する当接部28を有し、架台Sの上部に取り付けられている。ベース部材26は、側面視してU字状の板材からなり、複数の長孔25が形成された底板部29が架台Sに接触し、底板部29を基準にしてその両側に側壁部30、31が設けられている。本実施の形態では、底板部29を基準にして、側壁部30が設けられている側を前側、側壁部31が設けられている側を後側とする。
【0017】
側壁部30、31の間には補強板32が設けられ、当接部28は側壁部30に固定されている。架台Sの上部には、ストッパ13の後方に側壁部31に対向して配置された立設部材27が固定され、それぞれ頭部を有する複数(本実施の形態では2個)の螺子部材33が立設部材27を貫通した状態で立設部材27に取り付けられている。各螺子部材33の頭部は立設部材27と側壁部31の間に配され、各螺子部材33の立設部材27の前側の領域にはナット34が装着されている。
【0018】
架台Sの上部には図示しない複数(本実施の形態では4個)の螺子孔があって、各螺子孔には、長孔25を貫通した螺子部材35が取り付けられている。各長孔25は前後方向に長く、各螺子部材35が緩められて、ベース部材26(ストッパ13)は、架台Sに対する位置調整が可能となり、各螺子部材35が締め付けられて架台Sの上部に固定される。
ベース部材26は、図4(A)に示すように、休止フック12の下方に配された吊具18の真上に、休止フック12の他側端部に形成された前上がりの傾斜部36が位置するように配される必要がある。以下、休止フック12の下方に配された吊具18の真上に傾斜部36が配置された休止フック12の位置を基準位置と言う。
【0019】
ストッパ13による休止フック12の基準位置への位置決めは、以下に記す(1)、(2)の手順によりなされる。
(1)まず、休止フック12が基準位置に配された状態で、図3(A)、(B)、図4(A)に示すように、延設部材21の凸部20の後側に当接部28が接触する位置で、ベース部材26を螺子部材35により固定する。
【0020】
(2)次に、固定されたベース部材26の側壁部31の後側に螺子部材33の頭部が接触するように螺子部材33を配置し(立設部材27に対する螺子部材33の位置調整を行い)、立設部材27の前側にナット34が接触するようにナット34の螺子部材33に対する取り付け位置を調整する。
【0021】
休止フック12及び延設部材21は、基準位置に配された休止フック12が、ストッパなしでは自重により時計回りに回転するように(即ち、延設部材21がストッパ13の当接部28に後ろ向きの力を与えるように)設計されていることから、当接部28が延設部材21の凸部20の後側に接触する位置でベース部材26を固定することによって、休止フック12は基準位置で位置決めされる。
【0022】
また、休止フック12は、以下に記す(a)~(d)のステップにより吊具18を係止した状態となる。
(a)休止フック12の下位置に配された吊具18が、図4(A)、(B)に示すように、駆動ユニット11のモータの正転により上昇する扉体Dと共に上昇して、基準位置に配された休止フック12の傾斜部36に接触する。よって、ストッパ13は、凸部20に当接して、扉体Dと共に上昇する吊具18が休止フック12に接触する位置に休止フック12を位置決めしている。
【0023】
(b)吊具18が、図4(C)に示すように、傾斜部36に接触した状態で上昇して、休止フック12に力を与えて休止フック12を反時計回りに回動させる。これによって、延設部材21はストッパ13に非接触な状態となる。
【0024】
(c)吊具18が、図4(D)に示すように、傾斜部36の先側より高い位置まで上昇することにより、休止フック12との接触が解除され、休止フック12は自重により時計回りに回動して、係止フック12の先部が吊具18の貫通孔に挿入されて吊具18が傾斜部36の上方で休止フック12に接触し、凸部20は当接部28に接触する。この際、凸部20から当接部28に作用する力によりベース部材26が後方に移動するのを、螺子部材33、ナット34及び立設部材27によって防止している。
【0025】
(d)駆動ユニット11のモータを停止させた後、反転させて、吊具18を扉体Dと共に下降させ、図4(E)に示すように、休止フック12を吊具18に係止させ、駆動ユニット11のモータを停止させる。休止フック12が吊具18に係止した状態となった扉体Dの位置を休止位置とする。よって、休止フック12は吊具18を係止して扉体Dを休止位置で留めることとなる。
【0026】
そして、以下に記す(e)、(f)のステップによって、休止フック12が吊具18を係止した状態から、扉体Dが下降できる状態となる。
(e)駆動ユニット11のモータを正転させて、図5(A)、(B)に示すように、扉体Dと共に吊具18を上昇させて、休止フック12が吊具18を係止した状態を解除する。
(f)駆動ユニット11のモータを停止させた後、手動ハンドル24の回転によりリニアジャッキ22を作動させて、軸材19を中心に休止フック12を反時計回りに回動させ、扉体Dが吊具18と共に下降可能な状態にする。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、ストッパは螺子部材以外の部材によって架台へ固定してもよい。
また、延設部材は必ずしも必要ではない。例えば、休止フックを回転自在に支持する支持部材を架台の上部に設けて、休止フックの一部領域が架台より高い位置に配されるようにし、ストッパを、休止フックの当該領域に接触するようにすれば、延設部材を用いる必要は無い。
【0028】
そして、休止フックの反時計回りの回動は、リニアジャッキ以外の機構(例えば、手動ウインチや手動レバー)を用いて行えるようにすることができる。
更に、ワイヤの巻き上げ巻き下げによって扉体を昇降させる駆動ユニットを採用する代わりに、ラダーの昇降により扉体を昇降させる駆動ユニットを用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10:水門開閉装置、11:駆動ユニット、12:休止フック、13:ストッパ、14:ワイヤ、15:ドラム、16:滑車、17:留具、18:吊具、19:軸材、20:凸部、21:延設部材、22:リニアジャッキ、23:アーム、24:手動ハンドル、25:長孔、26:ベース部材、27:立設部材、28:当接部、29:底板部、30、31:側壁部、32:補強板、33:螺子部材、34:ナット、35:螺子部材、36:傾斜部、D:扉体、S:架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8