(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】粉末成形部品製造用ニッケル基超合金
(51)【国際特許分類】
C22C 19/05 20060101AFI20240711BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240711BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20240711BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20240711BHJP
C22F 1/10 20060101ALI20240711BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240711BHJP
B22F 10/14 20210101ALN20240711BHJP
B22F 10/18 20210101ALN20240711BHJP
B22F 10/28 20210101ALN20240711BHJP
B22F 12/41 20210101ALN20240711BHJP
B33Y 70/00 20200101ALN20240711BHJP
B33Y 80/00 20150101ALN20240711BHJP
B33Y 10/00 20150101ALN20240711BHJP
【FI】
C22C19/05 C
B22F1/00 M
C22C1/04 B
B22F3/24 C
C22F1/10 H
C22F1/00 602
C22F1/00 605
C22F1/00 650A
C22F1/00 630A
C22F1/00 651B
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 606
B22F10/14
B22F10/18
B22F10/28
B22F12/41
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2021504811
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(86)【国際出願番号】 FR2019051831
(87)【国際公開番号】W WO2020025880
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502255911
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ジャン リシャール
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ラム
(72)【発明者】
【氏名】エデルヌ ムヌー
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-065909(JP,A)
【文献】特開平04-056741(JP,A)
【文献】特開2007-191798(JP,A)
【文献】特開2014-070230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00 - 19/05
B22F 9/08
C22C 1/04
F01D 1/00 - 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
5~6.5%のアルミニウム、
4.5~7%のコバルト、
14.5~16.5%のクロム、
0~0.2%のハフニウム、
0~1.5%のモリブデン、
2~3.5%のタンタル、
0~2%のチタン、
1~2.5%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなるニッケル基超合金。
【請求項2】
質量%で、
5~6.5%のアルミニウム、
4.5~7%のコバルト、
14.5~16.5%のクロム、
0~0.2%のハフニウム、
0~1.5%のモリブデン、
2~3.5%のタンタル、
0.5~2%のチタン、
1~2.5%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項1に記載のニッケル基超合金。
【請求項3】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項1に記載のニッケル基超合金。
【請求項4】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項3に記載のニッケル基超合金。
【請求項5】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
1~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項4に記載のニッケル基超合金。
【請求項6】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項3に記載のニッケル基超合金。
【請求項7】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項3に記載のニッケル基超合金。
【請求項8】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項6又は7に記載のニッケル基超合金。
【請求項9】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項4又は7に記載のニッケル基超合金。
【請求項10】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項4又は6に記載のニッケル基超合金。
【請求項11】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項6~10のいずれか1項に記載のニッケル基超合金。
【請求項12】
質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
1~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる
、請求項11に記載のニッケル基超合金。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のニッケル基超合金より製造されたガスタービン部品。
【請求項14】
以下のステップを含む、ガスタービン部品の製造方法:
(S1)請求項1~12のいずれか1項に記載のニッケル基超合金
の粉末を製造すること、
(S2)前記粉末を成形することにより部品を製造すること。
【請求項15】
溶体化熱処理ステップ(S3)及びその後のγ'相析出熱処理ステップ(S4)を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン用の、特にノズルまたは整流器、可動翼またはリングセグメントとも呼ばれるベーン用のニッケル基超合金の分野全般に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル基超合金は、一般にガスタービンの高温部、すなわち燃焼室の下流側に位置するガスタービンの部品に使用される。
【0003】
ニッケル基超合金の主な利点は、650℃~1200℃という高温での高いクリープ強度と、酸化及び腐食に対する耐性とを兼ね備えていることである。
【0004】
この高温耐性は、面心立方(FCC)結晶構造のγ-NiマトリックスとL12構造のγ'-Ni3Alの秩序ある硬化析出物からなる、これらの材料の微細構造に主に起因している。
【0005】
ニッケル基超合金部品は一般的に鋳造によって製造され、鋳造工程のパラメータを厳密に制御し、部品に連続して熱処理を施すことで部品の微細構造を得ることができる。
【0006】
近年、ニッケル基超合金部品の製造には、粉末成形法が用いられるようになってきている。本明細書で使用されるように、粉末形成法とは、焼結による製造工程(粉末冶金工程とも呼ばれる)、金属射出成形(MIM工程)による製造工程、または、例えばバインダジェット工程、または、例えば溶融堆積工程(または、溶融フィラメント加工(FFF)工程)のようなアディティブ製造工程を意味する。
【0007】
しかし、粉末成形により得られる超合金部品の機械的特性は、鋳造により得られる超合金部品の機械的特性に劣る場合がある。
【0008】
このような粉末成形により製造された部品の機械的特性の低下は、粉末成形の製造工程で使用される温度範囲や、加熱・冷却速度が鋳造品の製造工程とは大きく異なるため、粉末成形により製造された部品は、同じ組成の部品であっても鋳造品と同じ微細構造を有することができないことに起因している。
【0009】
Rene(商標)77は、ガスタービン部品、特にタービンブレードの鋳造製造に一般的に使用されているニッケル基超合金である。
【0010】
例えば、金属射出成形法(MIM法)で製造されたRene(商標)77の部品は、鋳造法で製造された部品よりも粒径が小さい微細構造を有しているため、MIM法で製造された部品の耐クリープ性が制限されている。
【0011】
実際、MIN法中に行われるこの超合金の焼結は、チタン炭化物が析出する温度範囲(1200℃~1300℃の間)で行われ、冷却後のツェナーピンニングによる粒界の移動が強く制限され、その結果、粗粒微細組織の生成が制限される。
【0012】
ニッケル基超合金を記載した文献WO02/22901が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、部品の機械的特性、特に耐クリープ性を向上させることができるように、ニッケル基超合金粉末を成形することによる部品の製造に好適なニッケル基超合金組成物を提案することを目的とする。
【0014】
特に、本発明の目的は、トポロジカルコンパクト相TCP(クロム、モリブデン、及びタングステンに富むμ相またはσ相)の形成に対する低感度を確保することにより、超合金の体積内での組織安定性を維持することにある。
【0015】
また、本発明は、鋳造に用いられる最先端の超合金と同様のγ'相含有量を有する超合金を与えることを目的とする。
【0016】
また、本発明は、密度が高すぎない合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、質量%で、
5~6.5%のアルミニウム、
4.5~7%のコバルト、
14.5~16.5%のクロム、
0~0.2%のハフニウム、
0~1.5%のモリブデン、
2~3.5%のタンタル、
0~2%のチタン、
1~2.5%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなるニッケル基超合金に関する。
【0018】
ニッケル基合金とは、ニッケルの質量%が優勢な合金と定義される。
【0019】
不可避不純物とは、組成物に意図的に添加されず、他の元素と一緒に持ち込まれる元素と定義される。不可避不純物の中でも、特にケイ素(Si)について言及することができる。
【0020】
本発明に係る超合金によれば、鋳造に適した従来の合金を用いて鋳造により製造された部品の微細組織に匹敵する微細組織を有する部品を粉末成形により製造することが可能となる。
【0021】
本発明に係る超合金は、特に、焼結中に、粒界の移動を制限する傾向のある炭化物、または他の化合物の形成を制限するか、または回避することを可能にし、したがって、粒の大きさを制限することができる。
【0022】
可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5~6.5%のアルミニウム、
4.5~7%のコバルト、
14.5~16.5%のクロム、
0~0.2%のハフニウム、
0~1.5%のモリブデン、
2~3.5%のタンタル、
0.5~2%のチタン、
1~2.5%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0023】
さらに、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0024】
本発明の超合金はまた、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0025】
可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
1~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0026】
さらに、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0027】
可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0028】
他の可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0029】
他の可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0030】
他の可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0031】
可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
0.5~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0032】
可能な変形例によれば、本発明の超合金は、質量%で、
5.6~6%のアルミニウム、
5.2~6.2%のコバルト、
15.4~16%のクロム、
0.1~0.15%のハフニウム、
0.5~0.9%のモリブデン、
2.5~2.9%のタンタル、
1~1.5%のチタン、
1.6~2%のタングステン、
0.04~0.08%のジルコニウム、
0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、
を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0033】
第2の態様によれば、本発明は、前記特徴のいずれか1つを有する、ニッケル基超合金ガスタービン部品に関する。
【0034】
この部品は、高圧タービンや低圧タービンなどの航空機用ガスタービンエンジンのタービンの部品であってもよいし、圧縮機の部品であってもよく、特に高圧圧縮機の部品であってもよい。
【0035】
追加の特徴によれば、タービンまたは圧縮機の部品は、ブレードであることができ、前記ブレードは、可動ブレードまたはベーン、またはリングセクターであることができる。
【0036】
第3の態様によれば、本発明は、以下のステップからなるガスタービン部品を製造するための方法に関する:
前記特徴のいずれか1つを有する、ニッケル基超合金粉末を製造すること、
前記粉末を成形することにより部品を製造すること。
【0037】
前記ニッケル基超合金粉末を成形する工程は、前記粉末を焼結することにより行うこともできるし、前記粉末から付加製造により行うこともできるし、前記粉末から金属射出成形(MIM工程)を行うことにより行うこともできる。
【0038】
さらなる特徴によれば、この方法は、溶体化熱処理ステップ及びその後のγ'相析出熱処理ステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本開示の対象の他の特徴及び利点は、添付の図を参照して、非限定的な例として与えられる本発明の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【0040】
【
図1】
図1は本発明の可能な変形に係る、ガスタービン部品の製造方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の超合金は、主要な添加元素を含むニッケルを含む。
【0042】
主要な添加元素は、コバルトCo、クロムCr、モリブデンMo、タングステンW、アルミニウムAl、及びタンタルTaを含む。主要な添加元素はチタンTiを含んでいてもよい。
【0043】
この超合金はまた、合金中の最大含有率が質量%で1%を超えない添加元素である微量添加元素を含んでいてもよい。
【0044】
微量添加元素は、ハフニウムHf、炭素C、ホウ素B、及びジルコニウムZrを含む。
【0045】
このニッケル基超合金は、質量%で、5~6.5%のアルミニウム、4.5~7%のコバルト、14.5~16.5%のクロム、0~0.2%のハフニウム、0~1.5%のモリブデン、2~3.5%のタンタル、0~2%のチタン、1~2.5%のタングステン、0~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0046】
この超合金は、この超合金からなる粉末を成形することにより製造された部品の高温機械抵抗特性を向上させる。
【0047】
そのような機械特性の向上は、粉末成形された超合金部品の内部に、鋳造により製造される最先端の超合金部品の微細構造に類似した傾向のある微細構造を生成することにより達成される。
【0048】
本発明に係る超合金は、鋳造プロセスで使用される温度よりも低い、粉末成形中に使用される温度に適合する。
【0049】
タングステン、クロム、コバルトは、γ(ガンマ)マトリックスとも呼ばれる面心立方晶(FCC)構造のオーステナイトマトリックスの硬化に主に関与している。この硬化は、ニッケルをタングステン、クロム、コバルトで置換することで得られる。
【0050】
また、好ましくは、この超合金はモリブデンを含んでいてもよいが、これは、モリブデンもまた、ニッケルに代えてγマトリックスの硬化に主に関与しているからである。
【0051】
アルミニウム及びタンタルは、γ'(ガンマ')相としても知られている秩序立方構造L12のNi3硬化相(Al、Ta)の析出を促進する。
【0052】
また、好ましくは、チタンは、γ'相であるNi3硬化相(Al、Ta、Ti)の析出も促進するため、この超合金はチタンを含んでいてもよい。
【0053】
さらに、モリブデン、タングステン、タンタルなどの耐火元素は、拡散によって制御されるメカニズムを遅らせることで、超合金の耐クリープ性、耐酸化性を向上させる。
【0054】
さらに、クロム及びアルミニウムは、超合金の高温、特に腐食では900℃前後、酸化では11000℃前後の高温での耐酸化性と耐食性を向上させる。
【0055】
また、クロムとコバルトの添加により、超合金のγ'ソルボース温度を低下させることができる。
【0056】
さらに、コバルトはγマトリックスを強化し、トポロジカルコンパクト相TCPの析出や二次反応帯SRZの形成に対する感受性を低下させる。しかし、コバルトは、γ'のソルボース温度を低下させる傾向がある。
【0057】
有利には、酸化環境下で高温で超合金上に形成されるアルミナAl2O3層の密着性を高めて耐高温酸化性を向上させるために、超合金にハフニウムを含有させてもよい。
【0058】
さらに、炭素、ホウ素、ジルコニウムを添加することにより、粒界の抵抗力が強化され、超合金を用いて製造された部分の耐食性が向上する。
【0059】
好ましくは、このニッケル基超合金は、質量%で、5~6.5%のアルミニウム、4.5~7%のコバルト、14.5~16.5%のクロム、0~0.2%のハフニウム、0~1.5%のモリブデン、2~3.5%のタンタル、0.5~2%のチタン、1~2.5%のタングステン、0~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0060】
質量%で0.5~2%のチタン含有量で耐クリープ性が向上する。
【0061】
このニッケル基超合金はまた、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0062】
好ましくは、このニッケル基超合金は、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0.5~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0063】
質量%で0.5~1.5%のチタン含有量で耐クリープ性がさらに向上する。
【0064】
さらに好ましくは、このニッケル基超合金は、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、1~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0065】
質量%で1~1.5%のチタン含有量で耐クリープ性がさらに向上する。
【0066】
この超合金はまた、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0.04~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0067】
ジルコニウムの含有量が0.04~0.08%、最大でホウ素0.03%、炭素0.07%を質量%で含有することにより、耐食性が向上する。
【0068】
この超合金はまた、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0.1~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0069】
ハフニウムの含有量が0.1~0.15%の範囲であると、超合金の機械的特性が向上する。
【0070】
好ましくは、この超合金は、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0.1~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0.04~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、
0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0071】
この超合金はまた、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0.1~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0.5~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0072】
この超合金はまた、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0.5~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0.04~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0073】
好ましくは、この超合金は、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0.1~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、0.5~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0.04~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0074】
さらにより好ましくは、この超合金は、質量%で、5.6~6%のアルミニウム、5.2~6.2%のコバルト、15.4~16%のクロム、0.1~0.15%のハフニウム、0.5~0.9%のモリブデン、2.5~2.9%のタンタル、1~1.5%のチタン、1.6~2%のタングステン、0.04~0.08%のジルコニウム、0~0.03%のホウ素、0~0.07%の炭素、を含み、残余がニッケル及び不可避的不純物からなる。
【0075】
この超合金を使用することで、高温での機械的耐性の良いガスタービン部品の製造が可能になる。
【0076】
図1に示すように、ガスタービン部品の製造方法は、以下のステップを含む:
S1:上記のニッケル基超合金粉末を製造すること、
S2:この粉末を成形することにより部品を製造すること。
【0077】
ニッケル超合金粉末の製造のステップS1は、所望の組成を有するように予め調製した溶融物を霧化することにより行われる。この霧化は、例えば、二窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを用いて行うことができる。
【0078】
ステップS1で得られた粉末を成形して部品を製造するステップS2は、焼結(粉末冶金工程ともいう)や付加製造、金属射出成形(MIM工程)などの方法で行うことができる。
【0079】
粉末を焼結させることによる製造は、製造する部品の形状に合わせて金型に粉末を充填し、粉末を圧縮して加熱することで、粉末の粒を拡散させて結合させる。粉末が融着することなく、拡散現象によって部品の凝集力が得られる。焼結温度は、1220℃~1320℃の範囲で構成することができる。
【0080】
超合金粉末からの付加製造は、バインダージェット法で行うことができる。そのためには、トレイの上に薄層の粉末を堆積させる。製造される部品の形状に合わせて、粉末の異なる粒を結合させ、部品の第一の要素部分を製造するために、粉末の層にバインダーを噴霧する。部品の第1の要素部分が製造されると、トレイは下降し、製造される部品の第1の要素部分の上に新たな粉体層が堆積される。ここでも、一度粉体層が塗布されると、バインダーが噴霧されて、部品の第2の要素部分が製造される。これらの操作は、その後、部品全体を製造するために繰り返される。その後、バインダーを除去し、部品を、例えば1220℃~1320℃の間で構成される温度で焼結させることができる。
【0081】
別の可能な変形例によれば、部品の付加製造は、溶融堆積プロセス(または溶融フィラメント製造(FFF)プロセス)によって実行され得る。そのために、超合金粉末は、プラスチックバインダーと混合され、フィラメントを形成するように成形される。金属とプラスチックバインダーを混合して形成されたフィラメントは、制御された方法で溶融され、製造される部品に形状を与えるように溶融物が堆積される。フィラメントから材料を析出させて部品を形成した後、超合金のみからなる部品を得るために、プラスチックバインダーを例えば加熱により除去する。プラスチックバインダーが除去されると、部品は焼結され、焼結温度は1220℃~1320℃の間で構成される。
【0082】
まだ別の可能な変形例によれば、部品の付加製造は、選択的レーザー溶融(SLM)によって行われる。そのために、超合金粉末の薄い層がトレイに堆積される。次に、レーザービームが粉末を選択的に溶融させ、部品の第一の要素部分を形成する。第1の要素部が形成されると、プラテンが下降し、部品の第1の要素部の上に新しい粉末層が堆積される。この新しい粉末層をレーザーで選択的に溶融させ、部品の第二の要素部分を製造する。その後、これらの操作を繰り返して、部品全体を製造する。
【0083】
また別の可能性のある変形例によれば、部品の付加製造は、選択的レーザー溶融に類似したプロセスである電子ビーム溶融(EBM)によって実行され、ここでは、粉末は真空下にあり、レーザーの代わりに電子ビームによって溶融される。
【0084】
粉末を成形して部品を製造するステップS2は、金属射出成形(MIM)によって行うことができる。そのためには、超合金粉末をプラスチックバインダーと混合する。そして、この混合物を射出して部品の形状を作る。成形後、バインダーを加熱などで除去し、ニッケル基超合金のみで構成された部品を得る。プラスチックバインダーが取り除かれた後、部品は焼結される。
【0085】
さらに、
図1に示すように、製造工程は、
溶体化熱処理ステップS3に続いて、γ'相析出熱処理ステップS4を含んでいてもよい。
【0086】
溶体化熱処理ステップS3は、部品の製造時に形成されたγ'析出物の溶解を引き起こすのに適した温度と時間で部品を加熱することにより行われる。溶体化熱処理の温度は、γマトリクスの局所的な溶融を避けるために、固相温度よりも低い温度とする。
【0087】
溶体化熱処理ステップS3は、1100℃~1300℃、典型的には1200℃の温度に、1時間~5時間、典型的には3時間、部品を加熱することにより行うことができる。
【0088】
さらに、この溶体化熱処理ステップS3では、その部分の微細組織の粒径を大きくする。
【0089】
このγ'相析出熱処理ステップS4は、γ'相を所望の形状に再析出させるための1種または複数種のエージングにより行われる。
【0090】
γ'相の析出熱処理ステップS4は、例えば、800℃~900℃以下、典型的には850℃の温度で第1のエージングを行い、次いで、700℃~800℃、典型的には750℃の温度で第2のエージングを行うことにより行うことができる。第1のエージングにより大きなγ'相の析出物が析出し、第2のエージングにより小さなγ'相の析出物が析出する。
【0091】
製造された部品は、等軸結晶構造を有することができ、すなわち、結晶構造の粒径が全方向において実質的に等しい。このような等軸構造は、焼結によっては結晶粒が配向しないため、粉末を焼結することによって達成される。
【0092】
しかしながら、本発明は、等軸結晶構造を有する部品の製造に限定されるものではない。例えば、選択的レーザー溶融(SLMプロセス)による部品製造の変種を用いたり、電子ビーム溶融(EBMプロセス)による部品製造の変種を用いたりすることで、配向結晶粒を有する部品を製造することが可能となる。
【0093】
本発明に係る超合金は、ガスタービン用のブレードの製造に適している。このブレードは、圧縮機のブレードであってもよく、好ましくは、低圧圧縮機よりも作動温度が高い高圧圧縮機のブレードであってもよく、また、このブレードはタービンブレードであってもよい。