(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】キノリン誘導体を含む薬物複合体
(51)【国際特許分類】
C07D 215/44 20060101AFI20240711BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240711BHJP
C07K 5/097 20060101ALI20240711BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240711BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07D215/44 CSP
C07K16/00
C07K5/097
C07K16/30
A61K31/47
A61P35/00
A61K47/68
A61K39/395 L
(21)【出願番号】P 2021514607
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2019074909
(87)【国際公開番号】W WO2020058290
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(73)【特許権者】
【識別番号】520018392
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ-サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ムーア アラミ
(72)【発明者】
【氏名】アブダラ アムゼ
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ プロボ
(72)【発明者】
【氏名】イレム ケリフィ
(72)【発明者】
【氏名】バンサン ブランシャール
(72)【発明者】
【氏名】ナダ マッキー-イブライム
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2017年,Vol.138,pp.1114-1125
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2017年,Vol.127,pp.1025-1034
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 215/44
C07K 16/00
C07K 5/097
C07K 16/30
A61K 31/47
A61P 35/00
A61K 47/68
A61K 39/395
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
[式中、-R
1は、基:-NH
2、-CH=CH-CH
2CH
2CONH-OH、-C≡C-CH
2CH
2CONH-OH、-CH=CH-CONH-OH又は-OHを表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、又は-OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子を表し;
-R
4は、水素原子を表す]で表される、以下の状態:塩基又は酸、又は酸の塩又は塩基の塩での;又は水和物又は溶媒和物の形での化合物。
【請求項2】
R
2が、-OCH
3基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1が、基:-NH
2、又は-OHを表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
下記:
【化2】
から選択されることを特徴をする、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R
1が、基:-CH=CH-CO-NH-OH、-CH=CH-CH
2-CH
2-CO-NH-OH、又は-C≡C-CH
2-CH
2-CO-NH-OHを表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
以下:
【化3】
から選択されることを特徴とする、請求項1~2及び5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R
1が-NH
2又は-OH基を表す、請求項1に記載の化合物の調製方法であって、
-下記式(B):
【化4】
[式中、R
2は請求項1に定義される通りであり、そしてR
9は-NO
2又は-O-ベン
ゾイル基を表す]を有する化合物と、下記式(D):
【化5】
[式中、R
3及びR
4は請求項1に定義される通りである]を有する化合物とを接触させ、芳香族求核置換反応により、又は触媒の存在下でのカップリング反応により、下記式(E):
【化6】
[式中、R
3、R
4及びR
2は請求項1に定義される通りであり、そしてR
10は-NO
2又は-O-ベンゾイル基を表す]を有する化合物を形成し;
前記式(E)を有する化合物を、メチル化反応、次に還元又は脱保護反応にゆだね、下記式(I):
【化7】
[式中、R
3、R
4及びR
2は請求項1に定義される通りであり、そしてR
1は-NH
2又は-OH基を表す]を有する化合物を形成することを特徴とする調製方法。
【請求項8】
R
1が-CH=CH-CH
2CH
2CONH-OH、-C≡C-CH
2CH
2CONH-OH、又は-CH=CH-CONH-OHを表す、請求項1に記載の化合物の調製方法であって、
-下記式(N):
【化8】
[式中、R
3及びR
4は、請求項1に定義される通りである]を有する化合物と、下記式(O):
【化9】
[式中、R
2は請求項1に定義される通りである]を有する化合物とを接触させ、下記式(P):
【化10】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、請求項1に定義される通りである]を有する化合物を、芳香族求核置換反応、続くメチル化反応により形成し;
-前記式(P)を有する化合物を、基:-CH=CH-CH
2CH
2-CO-NH-O-(2-テトラヒドロピラニル)、-C≡C-CH
2CH
2-CO-NH-O-(2-テトラヒドロピラニル)又は-CH=CH-CO-NH-O-(2-テトラヒドロピラニル)との有機金属カップリング反応、続く脱保護反応にゆだね、下記式(I):
【化11】
[式中、
R
3、R
4及びR
2は、請求項1に定義される通りである]を有する化合物を形成することを特徴とする調製方法。
【請求項9】
下記:
【化12】
から選択されることを特徴とする中間体化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の式(I)の化合物の調製のためへの、請求項9に記載の化合物の使用。
【請求項11】
下記式(II):
【化13】
[式中、-Y
1は、-NH-、又は-CH=CH-CO-NH-O-を表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、又は-OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子であり;
-R
4は、水素原子であり;
L-RM
★基が、以下:
【化14-1】
及び
【化14-2】
及び
【化14-3】
及び
【化14-4】
から選択されることを特徴とする]を有する、以下の状態:塩基又はその塩の状態での又は水和物又は溶媒和物の形での化合物。
【請求項12】
下記:
【化15-1】
及び
【化15-2】
及び
【化15-3】
及び
【化15-4】
及び
【化15-5】
から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
下記(III):
【化16】
[式中、-Y
1は、-NH-、又は-CH=CH-CO-NH-Oを表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、又は-OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子であり;
-R
4は、水素原子であり;
-
L’は、バリン-シトルリンを含む切断可能リンカーを表し;
-ACは、癌細胞に対する抗体又はその機能的フラグメントを表し;そして
DAR(薬物対抗体比)は、1~8の間で変化する]を有する抗体-薬物複合体。
【請求項14】
請求項11に記載の式(II)の化合物の調製方法であって、請求項1に記載の式(I)の化合物と、式:X-L-RM
★
[式中、-Xは、請求項1に定義されるようなR
1基と反応できる基を表し;
L-RM
★基が、以下:
【化17-1】
及び
【化17-2】
及び
【化17-3】
及び
【化17-4】
から選択されることを特徴とする]を有する化合物とを反応せしめる反応工程を含み、ここで式(I)の化合物の-R
1部分と、式X-L-RM
★の化合物との間の反応が-Y
1-L-RM
★部分の形成をもたらすことを特徴とする調製方法。
【請求項15】
請求項13に記載の式(III)の化合物の調製方法であって、請求項11に記載の式(
II)の化合物と、抗体又はその機能的フラグメントを反応せしめる反応工程を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項16】
医薬的に許容できる担体と共に、請求項13に記載の抗体-薬物複合体を含む医薬組成物。
【請求項17】
医薬品としてのその使用のための、請求項13に記載の抗体-薬物複合体又は請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
細胞増殖を殺すか又は阻害するためへのその使用のための、請求項13に記載の抗体-薬物複合体又は請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
癌の治療へのその使用のための、請求項13に記載の抗体-薬物複合体又は請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に薬物複合体において、ペイロード(毒素とも呼ばれる)として有用である、新規の天然由来のコンブレタスタチンベースの化合物に関する。さらに、本発明は、例えば癌、炎症性又は感染性疾患などの病状を治療するために、ペイロード、ペイロード-リンカー及び薬物複合体として、それらのペイロード、ペイロード-リンカー及び薬物複合体を使用する方法において使用され得るものを含む、コンブレタキノリンの新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の癌に関して、従来の化学療法は、以前として唯一の効果的な治療法である。化学療法は、本質的に細胞毒性効果に基づいて機能し、すなわち毒素が癌細胞を殺し、従って、腫瘍の成長を停止させる。化学療法剤は、主に高レベルの細胞分裂活性で細胞を損傷及び破壊する。しかしながら、それらの治療は、正常な組織への意図しない側副毒性を最小限にしながら、悪性細胞をより適切に標的化し、そして破壊するために改善される必要がある。実際、現在でさえ、それらの医薬品は健康な細胞にも損傷を与えるので、患者は重度の有害現象又は影響に苦しんでいる。多くの細胞毒性の高い医薬品は、悪性腫瘍細胞と同様に正常細胞に対しても攻撃的であるので、臨床的有用性は限られている。健康な組織は、細胞毒性剤の影響を大きく受ける可能性がある。それらの医薬品は、正常細胞と腫瘍細胞とを明確に区別せず、それにより、副作用を引起すので、医薬品は最小レベルで、しばしば投与され、その有効性を低下する傾向がある。これが、腫瘍細胞を特異的に標的化する方法を見出すことが重要である理由である。
【0003】
最大の有効性及び最小の毒性を達成するために、標的細胞、組織及び腫瘍への薬物及び他の薬剤の送達を改善することは、非常に長年にわたっての相当な研究の焦点であった。現代の抗癌療法は、現在、大きな分子、例えば抗体を用いて、より正確に癌を標的化する。抗体は、免疫系の重要な自然発生部であり、「侵入者」(例えば、ウィルス)の細胞表面に特異的に結合し、そしてこの場合、それを排除することができる大きな分子である。しかしながら、しばしば、治療的でない抗体は、化学療法剤と組合せる必要がある。
【0004】
インビボ及びインビトロの両方で、生物学的活性分子を細胞にインポートするための効果的な方法を開発するために多くの試みがなされて来たが、完全に満足できるものではないことが証明された。薬物とその細胞内標的との会合を最適にすると同時に、例えば隣接する細胞への薬物の細胞間再分布を最小にすることは、しばしば困難であり、非効率的であり、又は非効果的である。
【0005】
抗体複合体及び薬物(「抗体薬物複合体」はまた、ADCとも呼ばれる)の概念は、それらの制限を克服しようとしている。それらは以下の3つの重要な要素から構成されている:抗体(目的の腫瘍を選択的に標的とするように設計されている)、毒性ペイロード(当業界において「ペイロード」と呼ばれる、腫瘍を殺す細胞毒性化合物)、及びリンカー(毒性ペイロードを抗体に結合するために使用される)。そのような構造体の主な利点は、以下の治療域の大幅な強化にある:毒性ペイロードの半減期及び特異性の上昇、標的外の毒性及び効果の低下。ADCの使用は、過去30年にわたって広範囲にわたる詳細な研究の対象であった(Moolten et al. (1972), J Natl Cancer Inst. 49 (4): 1057-62, Chari et al, (2014) Angewandte Chemie Int. Ed. 53: 3796-3827; Jackson, (2016) Org. Process Res. Dev. 2016, 20: 852-866)。多くのADCがすでに承認されており、そして市販されている(RocheからのKadcyla及びSeattle GeneticsからのAdcetris)。
【0006】
ADCに使用されるペイロード(又は毒素)は、以下を含む:細菌毒素、例えばジフテリア毒素(Levy et al. (1975) Cancer Res. 35(5):1 182-6)、植物毒素、例えば リシン、小分子毒素、例えばマイタンシノイド (欧州特許第1391213号; Liu et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、 カリケアマイシン(Lode et al. (1998) Cancer Res. 58:2925-2928; Upeslacis et al., (1993) Cancer Res. 53, 3336-3342)、オーリスタチン (Sanderson et al. (2005) Clin. Cancer Res. 11:843-52)、 SN-38又はイリノテカン類似体(Govidan et al. (2013) Mol. Cancer. Ther. 12:968-78, 米国特許第2014/0227180A1号, Goldenberg et al. (2007), Clin. Cancer Res. 13, 5556s-5563s)、ピロロベンゾジアゼピン (米国特許第 2011/0256157A1号, Kung Sutherland et al. Blood (2013) 122:1455-1463, Chari et al., (2009) Mol. Cancer Ther. 8, B126.)又はクリプトフィシン (国際公開第 2011/001052A1号 , Verma et al. (2015) Bioorg. Med. Chem. Lett. 25:864-8, 米国特許第2012/0225089号)。現在、臨床評価の過程において現在、全てのADCの60%以上が、モノメチルオーリスタチンE及びF(チューブリン阻害剤MMAE、MMAF)に関連する毒素を担持している。MMAEは、比較を行うための参照標準ペイロードとして、当業者により見なされ得る。
【0007】
直接的に又は架橋剤を介しての、直接的に又はリンカーを介しての薬物の抗体への結合は、薬物の結合のための化学基の同一性及び位置、薬物放出の機構、薬物放出を提供する構造的要素、及び放出された遊離薬物の構成的変化を含む種々の要因を考慮することを含む。さらに、薬物が、抗体の内在化の後に放出される場合、薬物の放出のメカニズムは、複合体の細胞内輸送と一致する必要がある。従って、特定数の異なる薬物クラスがペイロードとして試されてきたが、その限られた有効性、選択性及び/又は安定性のために、わずかな少数の薬物クラスが、抗体薬物複合体として有効であることが証明されている(Tolcher et al. (2000) J Clin. Oncol. 18:4000, Laguzza et al (1989) J. Med. Chem. 32:548-555, Uadia P, (1984). Cancer Res. 44:4263-4266)。化合物は、複合体として効果的に適切であるために、ナノモルJC50レベルよりも低い細胞毒性レベルで存在すべきであることが判明している(conjugates, should present a level of cytotoxicity that is below the nanomolar IC50 level (Casi and Neri, (2012) J. Control Release. 20;161 (2):422-8; Wu and Senter (2005) Nat. Biotechnol. 23(9):1 137-46)。理想的ペイロードは、多剤耐性メカニズム(MDR)から逃れる必要がある。MDRの対象であるMMAEの場合、いくつかの腫瘍が、耐性のメカニズムを発達させることができる(Chen et al., 2015)。アクセス可能な少数のペイロードは、広範囲の癌の徴候に対して効果的ではない。それらの制限のために、差別化された作用様式、改善された選択性及び毒性プロファイルを有し、そしてMDRの対象ではない、新しいペイロードについての臨床的需要がある。それらの理由のために、コンブレタスタチンは、有能な毒性ペイロードとして見なされて来た。
【0008】
実際、コンブレタスタチンは、1980年代にアフリカ原産のCombretum caffrumから分離され、そしてチューブリン重合阻害活性を有することが確認された(Pettit GR (1987), J Nat Prod 50:1 19-131)。コンブレタスチンA-4(又はCA-4)及び類似体は、細胞毒性があり、そして腫瘍血管系を選択的に破壊するが、又はその新生を防ぐ(Dark et al. (1997) Cancer Res 57, 1829-1834, Grosios K, et al (1999) Br J Cancer 81: 1318-1327)。この構造的に非常に単純なスチルベンCA-4は、いくつかの欠点、例えば低水溶性及び貯蔵、投与及び代謝中に異性化するZ-構成二重結合の化学的不安定性を含む。CA-4のもう1つの欠点は、その不十分な細胞毒性である。それらの問題は、キナゾリン(
図1Bを参照のこと)及びキノリン(
図1C及びDを参照のこと)などの窒素含有複素環を用いた新しい誘導体の開発により克服された(Soussi MA et al (2015) Chem. Med Chem. 10(8): 1392-402; I. Khelifi, et al, (2017), European Journal of Medicinal Chemistry 127:1025-1034)。それらの誘導体により、神経毒性又は心毒性の影響の原因であると考えられている3,4,5-トリメトキシフェニル基が排除された。しかしながら、それらの化合物は、何れもペイローとしても使用され得なかった。
【0009】
コンブレタスタチンは、いくつかの特許においてペイローとして実質的に使用されていると言われているが、例示又は裏付けと成るデータは存在しません:(欧州特許第 1 912 677 B1号 「PSMA抗体薬物複合体」); 国際公開第2014/164534号 (「糖鎖工学による部位特異的抗体薬物複合体」); 米国特許第8,535,678 B2号 (「抗CD70抗体薬物複合体および癌および免疫障害の治療のためのそれらの使用」)。他方では、コンブレタスタチンは、いくつかの研究において可能なペイロードとして評価されているが、しかしそれらの限られた効力、安定性の問題、及び著者自身により認められた好ましくない代謝プロファイルのために、これまでのところ、何れの臨床応用はありません(Toki et al (2002) J. Org. Chem. 67, 1866-1872, Bolu et al (2016) Mol. Pharmaceutics, 13, 1482-1490, R. Nani et al (2015) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 9; 54(46): 13635-13638)。ペイロードとしてのコンブレタスタチン誘導体の使用の唯一の例は、新しいisoNH2CombretaQuinolines (イソ-アミノ-コンブレタキノリン) (PCT/欧州特許第2018/058168号)である。しかしながら、得られたADC Trastuzumab-VC-PAB-ICQO-lは、細胞系SKBR3に対して27μg/mlのIC50値を示した。そのような細胞毒性のレベルは、ADCから予想されるng/mlよりも3ログ(log)低く、そして治療用途のためには不十分である。言い換えれば、それらの誘導体は、自律的な誘導体として有望な特性を示しているが、それらは、結合される場合、それらの細胞毒性を失うように思える。さらに、それらの誘導体の結合のプロセスは、困難であることが証明されており、そして革新的な改善の対象となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
結論として、新しいイソコンブレタキノリン誘導体を用いても、これまでのところ、ほとんどの結合の試みは失敗している。
【0011】
従って、本発明は、上記の1又は2以上の技術的問題を解決しようとしている。
【0012】
特に、本発明の目的は、特に薬物複合体として使用できる、ペイロードとして適格である、毒性、安定性及び代謝プロファイルを示すペイロード(毒性ペイロード又は毒素)として有用である化合物を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、差別化された作用様式、改善された選択性及び毒性プロファイルを有し、そして多剤耐性の現象の影響を受けない新しいペイロードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
長期にわたる研究の後、及び驚くべき方法で、本発明者らは、抗体薬物複合体へのそれらの使用を可能にする構造を有する新規化合物を発見した。
【0015】
従って、第1の側面によれば、本発明は、下記式(I):
【化1】
[式中、-R
1は、基:-NH
2、-NHCORa、-NHCOORb、-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-OH、-(C
2-C
6)アルキニレン-CO-NH-OH又は-OHを表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3又は -OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORcを表し;
-R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORdを表し;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;そして
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表す]で表される、以下の状態:塩基又は酸、又は酸の塩又は塩基の塩での;又は水和物又は溶媒和物の形での化合物に関する。
【0016】
本発明者らは、それらの化合物が、癌、特に腫瘍耐性細胞に対して改善された効力を示すことを発見した。さらに、それらは、高いレベルの化学的安定性を有し、そして何れの異性化も受けず、従って不活性化する傾向を有さない。
【0017】
第2の側面によれば、本発明は、下記式(II):
【化2】
[式中、-Y
1は、-O-、-NH-、-NHCO-、-NHCORa-、-NHCOO-、-NHCOORb-、-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-又は-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-を表し;
- R
2 は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3 又は -OCHF
2を表し;
- R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORc; 及び好ましくは水素原子であり;
- R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORd; 及び好ましくは水素原子であり;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-Lは、架橋剤(リンカー)を表し;
-RM
★は、RM及びRM′から選択され、ここでRMは、標的化剤部分、特に抗体部分、又はその機能的フラグメントと共有接合を形成できる反応性官能基であり、そしてRM′は少なくとも1つの保護基を担持するRM部分である]を有する、以下の状態:塩基又はその塩の状態での又は水和物又は溶媒和物の形での化合物に関する。
【0018】
第3の側面によれば、本発明は、下記(III):
【化3】
[式中、-Y
1は、-O-、-NH-、-NHCO-、-NHCORa-、-NHCOO-、-NHCOORb-、-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-又は-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-を表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3又は-OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORc;及び好ましくは水素原子であり;
-R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORd;及び好ましくは水素原子であり;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-
L’は、架橋剤(リンカー)を表し;
-ACは、標的化剤部分、特に、抗体部分又はその機能的フラグメントを表し;そして
DAR(薬物対抗体[標的化剤]比)は、1~8、及び好ましくは2~4の間で変化する]を有する抗体-薬物複合体に関する。
【0019】
実験部分に示されているように、及び予想外の方法で、本発明者らは、そのような化合物が、既知のペイロードに比較して、非常に効果的であり、そして多数の癌細胞に対して非常に良好な阻害活性を有することを示している。
【0020】
特に、式(I)の化合物は、インビボで、好ましくは標的部位で、式IIIの化合物から放出される。
【0021】
本発明の他の特徴、側面及び利点は、以下の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義:
本発明の文脈において、以下の定義が使用される:
-「Ct-Cz」とは、tからzまでの炭素原子を有することができる炭素鎖を示し、ここで、t及びzは、例えば1~25の値を取ることができ;例えば、C1-C3は、1~3個の炭素原子を有することができる炭素鎖である。
【0023】
-アルキルとは、例えば1~25個の炭素原子、及び好ましくは1~5個の炭素原子を含むことができる、直鎖状又は分岐状の一価飽和脂肪族基を示す。例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル基などについて言及することができる。
【0024】
-アルキレンとは、例えば、1~25個の炭素原子を含むことができる、直鎖状又は分岐状の二価飽和アルキル基を示す。
【0025】
-アルケニレンとは、単結合又は他の二重結合であり得、そして例えば1~25個の炭素原子、及び2~6個の炭素原子を含むことができる他の結合と共に、直鎖状又は分岐状の1つの炭素-炭素二重結合を含む脂肪族炭化水素基を示す。例として、エテニレン(-CH = CH-)、l-プロペニレン、2-プロペニレン、l-ブテニレン、2-ブテニレン、3-ブテニレンなどについて言及することができる。
【0026】
-アルキニレンとは、単結合、二重結合又は他の三重結合であり得、そして例えば1~25個の炭素原子、及び好ましくは、2~6個の炭素原子を含むことができる他の結合と共に、直鎖状又は分岐状の炭素-炭素三重結合を含む脂肪族炭化水素基を示す。例として、エチニレン、1-プロピニレン、2-プロピニレンなどを言及することができる。
【0027】
-A-CF2-基は、水素原子が2つの弗素原子により置換されている二価のアルキル基を示す。
【0028】
-シクロアルキレンとは、3~12個の炭素原子を含むことができる、単環式又は多環式の二価の非芳香族環を示す。例として、シクロプロペン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレンなどを言及することができる。
【0029】
-シクロアルケニレンとは、3~12個の炭素原子を含み、そして1又は2以上の不飽和を含むことができる、単環式又は多環式の二価の非芳香族環を示す。例として、シクロペンテニレン及びシクロヘキセニレンを言及することができた。
【0030】
-ヘテロシクロアルキレンとは、3~12個の炭素原子及びO、N又はSから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含むことができる、単環式又は多環式の二価の非芳香族環を示す。
【0031】
-ヘテロシクロアルケニレンとは、3~12個の炭素原子及びO、N又はSから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含み、そして1又は2以上の不飽和を含むことができる、単環式又は多環式の二価の非芳香族環を示す。。
【0032】
-アリーレンとは、3~20個の炭素原子を含むことができる、全体的に又は部分的に芳香族の二価環、例えばフェにレンを示す。
【0033】
-ヘテロアリーレンとは、3~12個の炭素原子及びO、N又はSから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含むことができる、全体的に又は部分的に芳香族の二価環を示す。
【0034】
-本発明によれば、用語「置換された」とは、1又は2以上の水素が、例えば下記基の中から選択された1又は2以上の基により置換されるという事実を示すと理解される:アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アロイル、ヘテロアロイル、カルボキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アロイルオキシ、ヘテロアロイルオキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン、チオ)エステル、シアノ、ホスホリル、アミノ、イミノ、(チオ)アミド、スルフヒドリル、アルキルチオ、アシルチオ、スルホニル、硫酸塩、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、アジド、ハロアルキル、特にパーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ハロアルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホノアミノ、リン酸塩、ホスホネート、ホスフィネート、アルキルカルボキシ、アルキルカルボキサミドオキソ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ(任意には、例えば、アルキル、アリール、又はヘテロアリールによって一置換又は二置換される)、イミノ、カルボキサミド、カルバモイル(任意には、例えば、アルキル、アリール、又はヘテロアリールによって一置換又は二置換される)、アミジノ、アミノスルホニル、アシルアミノ、アロイルアミノ、(チオ)ウレイド、(アリールチオ)ウレイド、アルキル(チオ)ウレイド、シクロアルキル(チオ)ウレイド、アリールオキシ、アラルコキシ、又は-O(CH2)n-OH、-O(CH2)n-NH2、-O(CH2)nCOOH、-(CH2)nCOOH、-C(O)O(CH2)nR、 -(CH2)nN(H)C(O)OR又は-N(R)S(O)2R、ここでnは1~4の数であり、そしてRは、水素、又は以下から選択された基により独立して選択され:-アルキル、-アルケニル、-アルキニル、-シクロアルキル、-シクロアルケニル、-ヘテロシクロアルキル、-ヘテロシクロアルケニル、-アリール及び-ヘテロアリール、必要に応じて、1つの又は複数の基自体が置換され得る。
【0035】
-用語「反応性官能基」とは、別の化合物と共有結合を形成できる官能基を指すと理解される。
【0036】
-一部分は、化合物の一部を示す。
【0037】
-用語「官能性フラグメント」とは、たぶん保護されている反応性官能基を含む化合物の一部を指すと理解される。
【0038】
-用語「保護基」とは、その反応性の全部又は一部をマスキングするために、化学官能基から分子に導入された官能基を指すと理解される。例えば、それは、イミド、アミド、カルバメート、イミン、エナミン、スルホニル化誘導体、N-スルフェニル化-、N-アルキル化-、又はN-シリル化誘導体、ジオール、カルボニル化誘導体、アセタール、エーテル、ベンジルエーテル、シリルエーテル、エステルなどであり得る。
【0039】
-用語「医薬的に許容できる」とは、一般的に安全で、非毒性であり、そして生物学的に又は他方では、望ましくないものではなく、及びヒト及び/又は獣医の医薬使用のために許容できる、医薬組成物の調製に使用され得るものを指すと理解される。
【0040】
-用語「酸又は塩基の塩(酸又は塩基塩)」とは、塩化された酸又は塩基を指すと理解され、例えば酸付加塩は、無機酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸により、又は有機酸、例えば酢酸又は安息香酸により形成され得る。塩基塩は、無機塩基、例えば酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウム、例えばジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン又はトロメタミンにより形成され得る。
【0041】
-用語「水和物又は溶媒和物」とは、1又は2以上の水分子、又は溶媒との会合又は組合せの形を指すと理解される。
【0042】
式(I)を有する化合物:
上記のように、本発明の目的は、下記式(I):
【化4】
[式中、-R
1は、基:-NH
2、-NHCORa、-NHCOORb、-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-OH、-(C
2-C
6)アルキニレン-CO-NH-OH又は-OHを表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3又は -OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORcを表し;
-R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORdを表し;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;そして
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表す]で表される、以下の状態:塩基又は酸、又は酸の塩又は塩基の塩での;又は水和物又は溶媒和物の形での化合物に関する。
【0043】
好ましくは、R3は、水素原子を表す。
【0044】
好ましくは、R4は、水素原子を表す。
【0045】
1つの好ましい実施形態によれば、式(I)を有する化合物は、下記式(Ia):
【化5】
[式中、-R
1、は、基:-NH
2、-NHCORa、-NHCOORb、-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-OH、-(C
2-C
6)アルキニレン-CO-NH-OH又は-OHを表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3又は -OCHF
2を表し;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表す]で表される、以下の状態:塩基又は酸、又は酸の塩又は塩基の塩での;又は水和物又は溶媒和物の形での化合物を有する。
【0046】
好ましくは、R2は、基:-OCH3、-OCH2CH3又は-OCHF2、及び好ましくは、-OCH3基を表す。
【0047】
好ましくは、R1は、基:-NH2、-NHCORa、-NHCOORb又は-OHを表し、特にR1は、-NH2又は-OH 基、及び好ましくは-NH2基を表す。
【0048】
さらなる好ましい実施形態によれば、前記化合物は、以下から選択される:
【化6】
【0049】
1つの好ましい実施形態によれば、式(I)を有する化合物は、実際、下記式(Ib):
【化7】
[式中、-R
5 は、水素原子、基:-CORa又は-COORbを表し;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3又は -OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORcを表し;
-R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORd、及び好ましくは、水素原子を表し;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;そして
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表す]有すを有する、以下の状態:塩基又は酸、又は酸の塩又は塩基の塩での;又は水和物又は溶媒和物の形での化合物で有する。
【0050】
好ましくは、R1は、基:-(C2-C6)アルケニレン-CO-NH-OH、又は-(C2-C6)アルキニレン-CO-NH-OHを表し、好ましくは、R1が、基:-CH=CH-CO-NH-OH、-CH=CH-CH2-CH2-CO-NH-OH、又は-C≡C-CH2-CH2-CO-NH-OHを表す。
【0051】
1つの好ましい実施形態によれば、式(I)を有する化合物は、実際、下記式(Ic):
【化8】
[式中、-Wは-CH = CH-又は-C≡C-を表し;
-nは0、1、2、3、又は4であり、好ましくはnは0又は2であり;
-R
2は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3又は -OCHF
2を表し;
-R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORcを表し;
-R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORd、及び好ましくは、水素原子を表し;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表し;そして
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル又は-CF
3を表す]を有する、以下の状態:塩基又は酸、又は酸の塩又は塩基の塩での;又は水和物又は溶媒和物の形での化合物で有するを。
【0052】
さらなる好ましい実施形態によれば、前記化合物は、以下から選択される:
【化9】
【0053】
式(I)を有する化合物の調製方法:
本発明は、R
1が-NH
2又は-OH基を表す、本発明の式(I)を有する化合物の調製方法:
-下記式(A):
【化10】
[式中、R
2は、上記式(I)において定義される通りであり、そしてR
9は、-NO
2又は-O-ベンゾイル基を表す]を有する化合物を、アミノ化反応にゆだね、下記式(B):
【化11】
[式中、R
2は、上記式(I)において定義された通りであり、そしてR
9は、-NO
2又は-O-ベンゾイル基を表す]を有する化合物を形成し;
-下記式(C):
【化12】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を、シアン化反応にゆだね、下記式(D):
【化13】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成し;
-前記式(B)を有する化合物と、式(D)を有する化合物とを接触させ、芳香族求核置換反応により、下記式(E):
【化14】
[式中、R
3、R
4及びR
1は、上記式(I)において定義される通りであり、そしてR
10は、-NO
2又は-O-ベンゾイル基を表す]を有する化合物を形成し:
-前記式(E)を有する化合物を、メチル化反応に還元又は脱保護にゆだね、下記式(I):
【化15】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(I)において定義される通りであり、そしてR
1は、-NH
2又は-OH基を表し、そしてRa及びRbは、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成することを特徴とする調製方法に関する。
【0054】
本発明はまた、R
1が-NH
2基を表す、本発明の式(I)を有する化合物の調製方法:
-下記式(F):
【化16】
[式中、R
2は、上記式(I)において定義される通りである]を有するに化合物を、ニトロ化反応にゆだね、下記式(G):
【化17】
[式中、R
2は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成し;
-下記式(H):
【化18】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を、シアン化及び反応にゆだね、下記式(D):
【化19】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成し:
-前記式(G)を有する化合物と、前記式(J)を有する化合物とを接着させ、パラジウムの存在下で、カップリング反応により、下記式(K):
【化20】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成し;
-前記式(K)を有する化合物を、メチル化反応、次に還元反応にゆだね、下記式(L):
【化21】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成することを特徴とする調製方法に関する。
【0055】
本発明はまた、R
1が基:-C
2-C
6-アルケニレン-CO-NH-OH又は-C
2-C
6-アルキニレン-CO-NH-OHを表す、本発明の化合物の調製方法:
-下記式(M):
【化22】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を、シアン化反応にゆだね、下記式(N):
【化23】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成し;
-前記式(N)を有する化合物と、下記式(O):
【化24】
[式中、R
2は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物とを接触させ、芳香族求核置換反応、続いてメチル化反応により、下記式(P):
【化25】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成し;
-前記式(P)を有する化合物を、基:-C
2-C
6-アルケニレン-CO-NH-O-(2-テトラヒドロピラニル)又は-C
2-C
6-アルキニレン-CO-NH-O-(2-テトラヒドロピラニル)との有機金属カップリング反応、次に脱保護反応にゆだね、
下記式(I):
【化26】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(I)において定義される通りであり、そしてR
1は、基:-C
2-C
6-アルケニレン-CO-NH-OH又は-C
2-C
6-アルキニレン-CO-NH-OHを表す]を有する化合物を形成することを特徴とする調製方法に関する。
【0056】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明は、R
1がNH
2又は-OH基を表す、本発明の化合物の調製方法:、
-下記式(B):
【化27】
[式中、R
2は、上記式(I)において定義される通りであり、そしてR
9は-NO
2又は-O-ベンゾイル基を表す]を有する化合物と、下記式(D):
【化28】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物とを接触させ、芳香族求核置換反応により、又は特にパラジウムに基く触媒の存在下で、下記式(E):
【化29】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(I)において定義される通りであり、そしてR
10は-NO
2又は-O-ベンゾイル基を表す]を有する化合物を形成し;
-前記式(E)を有する化合物を、メチル化反応、次に還元又は脱保護反応にゆだね、下記式(I):
【化30】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(I)において定義される通りであり、そしてR
1は-NH
2又は-OH基を表し、そしてRa及びRbは上記式(I)において定義される通りである]を有する化合物を形成することを特徴とする調製方法に関する。
【0057】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明は、化合物(Ic)の調製方法:
-下記式(N):
【化31】
[式中、R
3及びR
4は、上記式(Ic)において定義される通りである]を有する化合物と、下記式(O):
【化32】
[式中、R
2は、上記式(Ic)において定義される通りである]を有する化合物とを接触させ、下記式(P):
【化33】
[式中、R
3、R
4及びR
2は、上記式(Ic)において定義される通りである]を有する化合物を、芳香族求核置換反応、続くメチル化反応により形成し;
-前記式(P)を有する化合物を、基:-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-(2-テトラヒドロピラニル)又は-C
2-C
6-アルキニレン-CO-NH-O-(2-テトラヒドロピラニル)との有機金属カップリング反応、続く脱保護反応にゆだね、下記式(Ic):
【化34】
[式中、
n、R
3、R
4及びR
2は、上記式(Ic)において定義される通りである]を有する化合物を形成することを特徴とする調製方法に関する。
【0058】
好ましくは、芳香族求核置換によりもたらされるカップリングは、酸性媒体において、特に塩酸の存在下でもたらされる。
【0059】
特に、それらは、極性非プロトン性溶媒、より具体的には、ジオキサン中でもたらされる。
【0060】
好都合には、カップリングは、120℃~160℃、特に130℃~150℃の温度で、特に溶媒の還流下でもたらされる。
【0061】
好都合には、カップリングの工程は、10~14時間、特に11~13時間、好ましくは12時間、実施される。
【0062】
特に、カップリング反応は、以下のカップリング剤の存在下で実施され得る:例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-2,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3 -テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、O-(7-アザ=ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)又はプロピルホスホン酸無水物、任意には以下のカップリング剤と組み合わされる:N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアゾール(HOBt)、I-ヒドロキ四-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホNHS)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)又はN-メチルモルホリン(NMM)。
【0063】
アルキル化、好ましくはメチル化、特にアミンの工程は、その実行に必要な全ての知識を有する当業者に良く知られている反応である。例えば、それらは、塩基、特に炭酸塩の存在下で、アミンを、-(C1-C5)ハロゲン化アルキルと反応させることによりもたらされ得る。-(C1-C5)ハロゲン化アルキルは好ましくは、-(C1-C5)ヨウ化アルキル、-(C1-C5)臭化アルキル、又は-(C1-C5)塩化アルキルであり得る。より具体的には、アルキル化工程は、極性非プロトン性溶媒、より好ましくはジメチルホルムアミド下で実施される。好ましくは、アルキル化工程は、室温で行われる。
【0064】
アミノ化、シアン化、還元又は脱保護、又はさらにニトロ化の反応は、その実行に必要な全ての知識を有する当業者に良く知られている反応である。
【0065】
特に、アミノ化工程は、特に固体鉄及び塩酸の存在下で、60~100℃、特に70~90℃の温度で実施され得る。
【0066】
本発明の調製方法はまた、特に医薬的に許容できる酸又は塩基の存在下で、医薬的に許容できる塩を提供するために、形成された化合物の塩化の工程を、任意には含むことができる。
【0067】
本発明はまた、下記から選択された中間体化合物にも関する:
【化35】
【0068】
本発明はまた、上記式(I)を有する化合物の調製のためへの、そのような中間体化合物の使用にも関する。
【0069】
式(II)を有する化合物:
その別の側面によれば、本発明は、下記式(II):
【化36】
[式中、-Y
1は、-O-、-NH-、-NHCO-、-NHCORa-、-NHCOO-、-NHCOORb-、-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-又は-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-を表し;
- R
2 は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3 又は -OCHF
2を表し;
- R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORc; 及び好ましくは水素原子であり;
- R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORd; 及び好ましくは水素原子であり;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-Lは、架橋剤(リンカー)を表し;
-RM
★は、RM及びRM′から選択され、ここでRMは、標的化剤部分、特に抗体部分、又はその機能的フラグメントと共有接合を形成できる反応性官能基であり、そしてRM′は少なくとも1つの保護基を担持するRM部分である]を有する、以下の状態:塩基又はその塩の状態での又は水和物又は溶媒和物の形での化合物に関する。
【0070】
第1の好ましい実施形態によれば、L-RM
★基が、以下:
【化37-1】
【化37-2】
から選択される。
【0071】
別の好ましい実施形態によれば、前記化合物は、以下から選択される:
【化38】
から選択される。
【0072】
架橋剤(リンカー):
本発明の架橋剤又は「リンカー」は、2つの構成成分を連結する化合物であり、それぞれが架橋剤の一端に付着される。
【0073】
架橋剤が共有結合である場合、標的化剤、例えば抗体への毒性化合物(「ペイロード」)の直接結合は、細胞内の標的化された分子とのペイロードの相互作用する能力を低めることができる。
【0074】
好ましい実施形態によれば、リンカーは、2つの成分間、特にペイロードと標的化剤との間の距離を増加させ、従ってそれらの間の立体的障害を減衰させる。
【0075】
特に、リンカーは、その骨格に1~30個の原子を含む連続鎖を有し、リンカーの長さは、ペイロードと標的化剤との間の原子又は結合の最小数として定義される。
【0076】
1つの特定の実施形態によれば、リンカーは、基:C1-C20-アルキレン、C1-C20-ヘテロアルキレン、C2-C20-アルケニレン、C2-C20-ヘテロアルケニレン、C2-C20-アルキニレン、C2-C20-ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、又はヘテロアリールアルキレン(それらは、任意には置換される)から選択される。リンカーは、1又は2以上の要素、例えばエステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、炭化水素部分、又はそれらの誘導体の1つを含むことができる。リンカーは、それらの構造体要素の1つ又は複数を含むことができる。それらの要素の個々は、1回以上、例えば2、3、4、5又は6回さえリンカーに存在し得る。
【0077】
1つの特定の実施形態によれば、リンカーは、ジスルフィド結合を含むことができる。
【0078】
リンカーは、ペイロード及び標的化剤に、単一の工程で又は複数の工程で、例えば2つの連続する工程で接続されなければならないことが理解される。この目的のために、リンカーは近位端及び遠位端に2つの基を有し、それらの端は、(i)連結される成分の1つに存在する基、特にペイロード又は標的化剤上で活性化される基と共有結合を形成することができるか、又は(ii)ペイロードの基上で共有結合を形成するために活性化されるか又は活性化され得る。
【0079】
従って、1つの好ましい実施形態によれば、カップリング反応に起因するリンカーの末端に存在する化学基は、エステル、エーテル、ウレタン、ペプチド結合などから選択される。
【0080】
1つの特定の実施形態によれば、リンカーLは、1~20個の原子を含み、C、O、N及びSからお互い独立して選択され、特に2~18個の原子、より特定には、5~16個の原子及び好ましくは6~15個の原子を含む線状鎖である。
【0081】
1つの特定の実施形態によれば、線状鎖の原子の少なくとも60%は、炭素原子である。特に、線状鎖の原子は、単結合により結合される。
【0082】
1つの特定の実施形態によれば、リンカーLは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アルケニレン、ヘテロアルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、arアルキレン、又はヘテロアラルキレンから選択された基であり、それらは、N、O及びSから選択された1~4個のテロ原子を含み、前記リンカーは任意には、置換される。
【0083】
1つの特定の実施形態によれば、リンカーLは、以下の基の少なくとも1つを含む:ジスルフィド(-SS-)、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、アミン(-NH-)、エステル(-OC(= O)-又は‐C(= O)- O-)、カルボキサミド(-NH-C(= O)-又はC(= O)-NH-)、ウレタン(-NH-C(= O)-O-又は-OC(= O)-NH-)、又は 尿素部分(-NH-C(= O)-NH-)。
【0084】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、リンカーLは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、ヘテロシクロアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、及びヘテロアラルキレンから選択された数mの基を含み、それらの基の個々は多分、置換されており、そして以下の基の少なくとも1つからお互い独立して選択された数nの基を含み:ジスルフィド(-SS-)、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、アミン(-NH-)、エステル(-OC(= O)-又は‐C(= O)- O-)、カルボキサミド(-NH-C(= O)-又はC(= O)-NH-)、ウレタン(-NH-C(= O)-O-又は-OC(= O)-NH-)、又は 尿素部分(-NH-C(= O)-NH-)、ここでmはn+1に等しい。特に、mは2であり、そしてnは1であるか、又はmは3であるか、又はnは2である。より具体的には、リンカーは、2又は3個の置換されていないアルキレン基、及び1つ又は2つの置換されていないアルキレン基に連結されたジスルフィド、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、カルボキサミド、ウレタン又は尿素部分を含む。
【0085】
1つの特定の実施形態によれば、線状鎖中の炭素原子は独立して、任意に置換されたメチレン基(-CH2-)の一部を形成する。特に、前記任意の置換基は独立して、ハロゲン及び-(C1-C6)アルキル基、特にメチルから選択される。
【0086】
特に、リンカーLは、安定した架橋剤であり、すなわち、それは、(i)酵素の存在下で、及び(ii)細胞内還元環境下で安定である。
【0087】
1つの特定の実施形態によれば、安定したリンカーは、(i)切断可能な酵素下部構造及び/又は(ii)ジスルフィド基を含まない。特に、リンカーは、12原子までの範囲の長さ、特に、2~10原子の範囲の長さ、より特定には、4~9、及びさらに特定には6~8の範囲の長さを有する。
【0088】
1つの他の特定の実施形態によれば、リンカーは切断可能な架橋剤であり、すなわち、(i)化学的切断可能であるか、又は(ii)還元可能な架橋剤である。
【0089】
1つの実施形態によれば、架橋剤は、還元により切断でき、すなわち細胞内還元環境下で切断され得る。特に、ジスルフィド基を含むリンカーであり得;細胞内還元環境による内在化の後、標的化剤に結合されるペイロードの細胞内放出をもたらす(Shen et al., (1985), J Biol. Chem. 260: 10905-10908)。
【0090】
1つの特定の実施形態によれば、架橋剤は、ジスルフィド結合、特に-CMe2-S-S-CMe2-部分を含む。他の実施形態によれば、リンカーは、ジスルフィド結合を通して標的化剤のチオール基に結合される。
【0091】
他の実施形態によれば、リンカーは、化学的切断、特に加水分解又はタンパク質分解により切断可能である。特に、化学的切断は、酵素により触媒され、すなわちリンカーは、酵素、特にリソソームペプチダーゼ、特にカテプシンBにより切断され得、内在化の後、標的化剤に結合されるペイロードの細胞内放出をもたらす(Dubowchik et al., (2002) Bioconjug Chem. 13: 855-69)。1つの特定の実施形態によれば、切断可能リンカーは、フェニルアラニル-リジン(Phe-Lys)、バリル-リジン(Val-Lys)、フェニルアラニル-アラニン(Phe-Ala)、バリルアラニン(Val-Ala)、フェニルアラニルシトルリン(Phe-Cit)及びバリン-シトルリン(Val-Cit)から選択されたジペプチドを含む。特に、切断可能なリンカーは、さらに、ジペプチドとペイロードとの間にp-アミノベンジル(PAB)スペーサーを含む。
【0092】
1つの実施形態によれば、リンカーは、ヒドラゾン基を含む。この特定の実施形態においては、切断は、リソソームにおける加水分解により生じる。
【0093】
1つの実施形態によれば、リンカーは、自己犠牲的な架橋剤であり、すなわち切断可能な結合を含む。特に、切断後、断片化が起こり、前記切断の後、ペイロードに付着したままであるリンカーの一部が除去される。リンカーは、以下の基を含むことができ:-(切断可能な結合)-X-フェニル-CH2-O-C(=O)-、ここでカルボニル基は、放出される有利アミノ基を含む本発明の化合物中のフェニル環に結合されるアミノ基に結合される。
【0094】
1つの好ましい実施形態によれば、架橋剤は、以下の化合物から選択される:
【化39】
【0095】
本発明のために適切であるリンカーとして、以下に記載されるリンカーについても言及され得る:Jun Lu et al. (“Linker shaving a crucial role in antibody-drug conjugates”, Int. J. Mol. Sci. 2016, 17, 561), Jessica R. McCombs and Shawn C. Owen (“Antibody drug conjugates: Design and selection of linker, payload and conjugation chemistry”, The AAPS Journal, vol. 17, No. 2, March 2015, 339), Laurent Ducry and Bernhard Stmmp (“Antibody-drug conjugates: linking cytotoxic payloads to monoclonal antibodies”, Bioconjugate Chem. 2010, 21, 5-13), 及びNareshkumar Jain et al. ("Current ADS linker chemistry, Pharm. Res. 2015, 32: 3526-3540)。
【0096】
抗体-薬物複合体:
本発明はまた、上記で定義されたような化合物を含む抗体薬物複合体にも関する。
【0097】
その別の側面によれば、本発明は、下記(III):
【化40】
[式中、-Y
1は、-O-、-NH-、-NHCO-、-NHCORa-、-NHCOO-、-NHCOORb-、-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-又は-(C
2-C
6)アルケニレン-CO-NH-O-を表し;
- R
2 は、基:-OCH
3、-OCH
2CH
3、-SCH
3、-SCH
2CH
3 又は -OCHF
2を表し;
- R
3は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORc; 及び好ましくは水素原子であり;
- R
4は、水素原子又は基:-CH
3、-CN、-F、-Cl又は-ORd; 及び好ましくは水素原子であり;
-Raは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rbは、基:-(C
1-C
5)アルキレン-又は-CF
2-であり;
-Rcは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-Rdは、基:-(C
1-C
5)アルキル-又は-CF
3-であり;
-L’は、架橋剤(リンカー)を表し;
-ACは、標的化剤部分、特に、抗体部分又はその機能的フラグメントを表し;そして
DAR(薬物対抗体[標的化剤]比)は、1~8、及び好ましくは2~4の間で変化する]を有する抗体-薬物複合体に関する。
【0098】
標的化剤:
用語「標的化剤」とは、生物学的標的に対する親和性を有する分子を指すと理解される。標的化剤は、細胞毒性化合物を、生物学的標的に向ける機能を有する。
【0099】
用語「生物学的標的」とは、好ましくは、癌細胞の表面上に位置する抗原、又は抗原群を指すと理解される。それらの抗原は、例えば成長因子受容体、変異した「腫瘍抑制因子」癌遺伝子産物又は遺伝子、血管新生関連分子、又は接着分子であり得る。
【0100】
特に、標的化剤は、リガンド、タンパク質、抗体、例えばモノクローナル抗体、タンパク質又は抗体フラグメント、ペプチド、オリゴヌクレオチド又はオリゴ糖から選択される。
【0101】
好ましくは、それは抗体(又は免疫グロブリン)又は抗体フラグメントである。
【0102】
本発明のために適切である抗体として、特に免疫グロブリンIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMを言及できる。
【0103】
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又は最適化された抗体Fc領域を有する抗体であり得る。特に、それはモノクローナル抗体である。
【0104】
より具体的には、抗体は、以下から選択され得る:
-抗SSA / Ro(抗シェーグレン症候群関連抗原A又は抗Ro)自己抗体、抗La / SS-B(抗シェーグレン症候群タイプB)自己抗体、抗セントロメア抗体、抗 神経核抗体-2型、抗dsDNA(抗二本鎖DNA)、抗RNP(抗リボヌクレオプロテイン)、抗Smith、抗トポイソメラーゼ抗体、抗ヒストン抗体、抗p62抗体、及び抗sp100抗体を含む抗-核抗体;
-抗-糖タンパク質210抗体;
-抗tTG(抗組織トランスグルタミナーゼ)抗体及び抗eTG(抗表皮トランスグルタミナーゼ)抗体を含む抗―トランスグルタミナーゼ抗体;
-抗-ガングリオシド抗体;
-抗-アクチン抗体;
-抗-CCP(抗環状シトルリン化ペプチド)抗体、肝臓及び腎臓ミクロソーム1型抗体;
-抗-トロンビン抗体;
-抗ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、抗プロテイナーゼ3(PR3)、抗ラクトフェリン、抗エラスターゼ、細菌誘導タンパク質(BPI)、抗カテプシンGを含む抗―好中球細胞質抗体(ANCA);
-抗-糸球体基底膜(IV型コラーゲンのα―3鎖)、抗-ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R);
-抗-リウマチ因子抗体;
-抗アクチン抗体、抗トロポニン抗体、及び抗トロポミオシン抗体を含む抗-平滑筋抗体;
-抗カルジオリピン抗体、抗亜硫酸オキシダーゼ抗体、抗サルコシンデヒドロゲナーゼ抗体及び抗グリコーゲンホスホリラーゼ抗体を含む抗-ミトコンドリア抗体;
-抗-SRP(シグナル認識粒子)抗体;
-抗-VGCC(電位依存性カルシウムチャネル)抗体;
-抗-VGKC抗体(電位依存性カリウムチャネル);
-抗-PL7、-PL12、-JO1、-EJ及び-JO抗体を含む抗―シンセターゼ抗体;及び
-抗H因子自己抗体、抗Cl阻害剤、抗C1q、抗C3、抗因子B、抗C3bBb(代替補体経路からのC3コンバターゼ)、抗C4b2a(古典的補体経路からのC3コンバターゼ)を含む抗-末端補体抗体。
【0105】
アロ抗体として、ヒト血小板抗原抗体(HPA)及び抗-IgA抗体を言及することができる。
【0106】
ヒト治療用抗体として、以下を含む群から選択されたそれらの抗体を言及することができる:パニツムマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アリロクマブ、アニフロルマブ、アチヌマブ、アトロリムマブ、ベリムマブ、ベルチリムマブ、ベズロトクスマブ、ビマグラムマブ、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ダルスマブマブ、 エルデルマブ、エノチクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファシヌマブ、フェザキヌマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フラヌマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、グレンバツムマブベドチン、ゴリムマブ、グセルクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リリルマブ、ルカツムマブ、リビビルマブ、リリルマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、マブリリムマブ、メブリリムマブ、ネスバクマブ、ニボルマブ、オファツムマブ、オララタマブ、オルチクマブ、オクセルマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パトリツマブ、プラクルマブ、プリツムマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、セクキヌマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、 スタムルマブ、タバルマブ、テプロツムマブ、チシリムマブ(=トレメリムマブ)、トベツマブ、トラロキヌマブ、トレメリムマブ、ツビルマブ、ウレルマブ、ウステキヌマブ、バンチクマブ、ベセンクマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ。
【0107】
ネズミ治療用抗体として、以下を含む群から選択されたそれらの抗体を言及することができる:アバゴボマブ、アフェリモマブ、アナツモマブマフェナトックス、ブリナツモマブ、デツモマブ、ドリモマブアリトックス、エドバコマブ、エドレコロマブ、エルシリモマブ、エンリモマブペゴル、エピツモマブシツキセタン、ファラリモマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブチウキセタン、イムシロマブ、イノリモマブ、レマレソマブ、マスリモマブ、ブリナツモマブ、サツモマブ、モクセツモマブパスドトックス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトックス、ナプツモマベスタフェナトックス、ネレリモマブ、オデュリモマブ、オレゴボマブ、ペムツモマブ、ラコツモマブ、ソリトマブ、タプリツモマブパプトックス、テリモマブアリトックス、テナツモマブ、トシツモマブ、ベパリモマブ、及びゾリモマブアリトックス。
【0108】
キメラ治療用抗体として、以下を含む群から選択されたそれらの抗体を言及することができる:アブシキシマブ、アマツキシマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、クレノリキシマブ、エクロメキシマブ、エンシツキシマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ジレンツキシマブ、ゴミリキシマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、ケリキシマブ、ルミリキシマブ、パギバキシマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、リツキシマブ、セトキサキシマブ、シルツキシマブ、テネリキシマブ、ウブリツキシマブ、バパリキシマブ、ボロシキシマブ、及びザツキシマブ。
【0109】
ヒト治療抗体として、以下を含む群から選択されたそれらの抗体を言及することができる:アフツズマブ、アラシズマブペゴル、アレムツズマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ(=トシリズマブ)、バピネオズマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブロソズマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シタツズマブボガトックス、クラザキズマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コンシズマブ、クレネズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、デムシズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エロツズマブ、エナバツズマブ、エノキズマブ、エプラツズマブ、エリズマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、ファルレツズマブ、フェルビズマブ、フィクラツズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、イバリズマブ、イムガツズマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イトリズマブ、イキセキズマブ、ラベツズマブ、ランブロリズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、ロデルシズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、マルゲツキシマブ、マツズマブ、メポリズマブ、ミラツズマブ、モガムリズマブ、モタビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、オカラツマブ、オクレリズマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトックス、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、キリズマブ、ラニビズマブ、レスリズマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、ソラネズマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スビズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、テフィバズマブ、テプリズマブ、ティルドラキズマブ、チガツズマブ、トシリズマブ(=アトリズマブ)、トラリズマブ、トラスツズマブ、トレガリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ウルトキサズマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ビシリズマブ及びボルセツズマブマフォドチン。
【0110】
好ましくは、それは、ヒト化治療用抗体、及びより好ましくはトラスツズマブである。
【0111】
DAR:
複合体は、一般的に、標的化剤に結合された1~8、好ましくは2~4の平均数の細胞毒性化合物(ペイロード)を含む(これは、移植の程度、又は「薬物対抗体(すなわち、標的化剤)比」、(又は「DAR」)である。
【0112】
この数は、標的化剤の性質、又は結合中に使用される条件に依存して、著しく変化することができる。
【0113】
標的化剤が抗体である場合、DARは、例えば紫外線(UV)分光法により、又は複合体の高分離能質量分析HRMSスペクトルのデコンボリューションにより決定され得る。
【0114】
UV分光法により評価されたDARは、Antony S. Dimitrov ((ed), LLC, 2009, “Therapeutic Antibodies and Protocols”, vol. 525, 445, Springer Science)により提示された方法に示されているように、DAR(UV)と呼ばれる。この方法は、2つの波長WL1及びWL2での分離工程の後、複合体の溶液の吸光度を測定することから成る。裸の抗体及びペイロードから得られたモル吸光係数が使用される。WL1及びWL2、(AWL1)及び(AWL2)での複合体溶液の吸光度は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)スペクトルの対応するUVピークで、又は標準のUV分光光度計を用いて、測定される。吸光度は、次の形式で表され得る:
AWL1 = (cD x eD
WL1) + (cA x eA
WL1)
AWL2 = (cD x eD
WL2) + (cA x eA
WL2)
ここで、・cD及び cAは、それぞれ、ペイロードに関連する複合体の部分、及び抗体に関連する複合体の部分の溶液中の濃度を表し;
・eD
WL1及びeD
WL2は、それぞれ、波長WL1及びWL2での複合体化の前のペイロードのモル吸光係数を表し;
・eA
WL1及びeA
WL2は、それぞれ、波長WL1及びWL2での裸の抗体のモル吸光係数を表す。
【0115】
用語「裸の抗体」とは、ペイロードが付着されていない抗体、すなわち複合体化の前の抗体を指すと理解されている。
【0116】
それらの2つの等式を解くと、以下がもたらされる:
cD = [(eA
WL1 x AWL2) - (eA
WL2 x AWL1)] / [(eD
WL2 x eA WL1) - (eA
WL2 x eD
WL1)]
cA = [AWL1-(cD x eD
WL1)] / eA
WL1
【0117】
次に、DAR(UV)は、cD/cAに対応する。
【0118】
他方では、DARは、複合体のHRMSスペクトルのデコンボリューションにより計算され、そして次に、DAR(HRMS)と呼ばれる。
【0119】
調製及び複合体化方法:
本発明はまた、上記で定義されたような式(II)を有する化合物の調製方法に関し、上記で定義されたような式(I)を有する化合物と、式X-L”-RM★を有する化合物とを反応せしめる反応工程を含むことを特徴とし、ここで前記式中、
-Xは、上記で定義されたようなR1基と反応することができる基を表し;
-L”は、架橋剤(リンカー)を表し、
-RM★は、RM及びRM′から選択され、ここでRMは、標的化剤部分、特に抗体部分又はその機能的フラグメントと共有結合を形成できる反応性官能基であり、そしてRM′は、少なくとも1つの保護基を担持するRM部分であり;ここで式(I)を有する化合物の-R1部分と、式X-L”-RM★を有する化合物との間の反応が-Y1-L-RM★部分の形成をもたらす。
【0120】
RM★がRMである1つの好ましい実施形態によれば、この方法はさらに、RM基をもたらすRM′部分を脱保護する脱保護工程を含む。
【0121】
好ましくは、この方法は、上記で定義されたような式(II)を有する化合物と、標的化部分とを反応させる反応工程を含む。
【0122】
標的化剤部分への複合体化は、標的化剤部分に存在する遊離アミノ基への式(I)-L-RMを有する化合物構築物のカップリングを通して達成され得る。そのような実施形態によれば、RM基は、活性化されたカルボン酸誘導体、例えばN-ヒドロキシスクシミドエステル、又は活性化された炭酸誘導体、例えばイソチオシアネートが選択され得る。
【0123】
標的化剤部分への複合体化はまた、標的化剤部分に存在する遊離チオール基への式(I)-L-RMを有する化合物構築物のカップリングを通して達成され得る。そのような実施形態によれば、RM基は、ハロアセチル基、受容体置換アルケンを含むRM基(マイケルシステム)、特にマレイミド基又はプロペノイル基(Badescu et al., 2014, Bioconjugate Chem., 25: 460-469)、特にCl、Br及びアリール-S、特にフェニル-S-から選択された脱離基Xにより、3位で置換された又は3及び4位で二置換されたマレイミド基から選択され得る。
【0124】
1つの特定の実施形態によれば、チオール基は、野生型標的化剤部分に存在する単一の非結合システイン残基の一部である。1つの他の特定の実施形態によれば、チオール基は、特に組換え遺伝子工学により、例えば野生型配列への挿入により、野生型標的化剤部分における第1のシステイン残基とジスルフィド架橋を形成する第2のシステインの除去により、又は非システイン残基の置換により、野生型標的化剤部分から生成された単一の非結合システイン残基の一部である。1つの他の実施形態によれば、チオール基は、野生型標的化剤部分に存在する2つのシステイン間のジスルフィド結合の還元により生成される。
【0125】
標的化剤部分への複合体化はまた、標的化剤部分に存在する2つの遊離チオール基への式(I)-L-RMを有する化合物構築物のカップリングを通して達成され得る。そのような実施形態によれば、RM基は、特にCl、Br及びアリール-S-、特にフェニル-S-から選択された脱離基Xにより3及び4位で置換されたマレイミドから選択され得る。
【0126】
1つの実施形態によれば、2つのチオール基はそれぞれ、野生型標的化剤部分に存在する単一の非結合システイン残基の一部を形成する。1つの他の特定の実施形態によれば、チオール基は、特に組換え遺伝子工学により、例えば野生型配列への挿入により、野生型標的化剤部分における第1のシステイン残基とジスルフィド架橋を形成する第2のシステインの除去により、又は非システイン残基の置換により、野生型標的化剤部分から生成された2つの単一の非結合システイン残基の一部である。そのような2つのチオール基と、二置換されたマレイミドとの反応により、チオール基は、架橋され、それにより、元々存在していたジスルフィド架橋を模倣する。
【0127】
1つの特定の実施形態によれば、遊離チオール基は、標的化剤部分に存在するアミノ基のチオール化により、特に、そのような遊離アミノ基と、2-イミノチオラン(Still et al., 1984, Can. J. Org. Chem. 62:586)及びアシルチオ酢酸の誘導体(X-C(=O)-CH2-Sアシル)、例えばアシルチオ酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステルから選択されたチオール化剤とを反応させることにより生成され得る。
【0128】
標的化剤部分への複合体化は、遺伝子工学、例えばp-アセチルフェニルアラニンの導入及び続くオキシムの連結により導入された非天然のアミノ酸へのカップリングを通して達成され得る(Kazane et al, (2012) Proc. Natl. Acad. Sci. US A, 109: 3731-3736)。
【0129】
標的化剤部分への複合体化は、標的化剤部分におけるチロシン残基のフェニル環への環状ジアゾジカルボキアミドのカップリングを通して達成され得る(Ban et al, (2010) J Am. Chem. Soc. 13: 1523-5)。
【0130】
標的化剤部分への複合体化は、1,3-双極付加環化反応(「クリックケミストリー」)を通して達成され得る。
【0131】
1つの実施形態によれば、標的化剤部分は、二重又は、三重結合を含み、そして(I)-L-RMを有する化合物構築物は、1,3-双極子、特にアジド基を含む。特に、標的化剤部分は、最初に、ジベンゾシクロオクチン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はアザジベンゾシクロオクチン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応する(Zhou et al, (2013) J Am Chem Soc. 135: 12994-7)。
【0132】
1つの他の実施形態によれば、標的化剤部分は、1,3-双極子、特にアジド基を含み、そして式(I)-L-RMを有する化合物構築物は、二重又は三重結合を含む。特に、標的化剤部分は、酵素触媒反応により、アジドを含む分子と最初に反応させるグリコシル化抗体である(SiteClick; Zeglis et al, (2013) Bioconjug Chem. 24: 1057-67)。1つの他の実施形態によれば、アジド基は、非天然のアミノ基p-アジド-フェニルアラミンを通して導入される(Kazane et al, (2012) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 109: 3731-3736)。
【0133】
医薬的使用:
本発明はまた、医薬的に許容できる担体と共に、上記で定義されたような抗体-薬物複合体を含む医薬組成物にも関する。
【0134】
特に、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの医薬的に許容できる賦形剤を含むことができる。
【0135】
医薬組成物は、1又は2以上の医薬的に許容できる希釈剤、担体、賦形剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、吸収剤、及び/又は防腐剤を含むことができる。
【0136】
本発明はまた、特に治療することを目的とした医薬品としてのその使用のための本発明の医薬組成物にも関する。
【0137】
本発明はまた、医薬品としてのその使用のための、上記で定義されたような抗体-薬物複合体、又は上記で定義されたような医薬組成物にも関する。
【0138】
本発明はまた、細胞増殖を殺すか又は阻害するためへのその使用のための、上記で定義されたような抗体-薬物複合体、又は上記で定義されたような医薬組成物にも関する。
【0139】
本発明はまた、癌を治療するためへのその使用のための、上記で定義されたような抗体-薬物複合体、又は上記で定義されたような医薬組成物にも関する。
【0140】
癌の中で、以下を言及することができるが、但しそれらだけには限定されない:種々の白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、胃癌、食道癌、腎臓癌、胸膜癌、甲状腺癌、皮膚癌、子宮頸癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、精巣癌、前立腺癌、膀胱癌、脳癌、直腸癌、又は骨癌。
【0141】
特に、以下を言及することができる:結腸直腸癌、肺癌、特に非小細胞癌、胃癌、膵臓癌、慢性骨髄性白血病、乳癌、及び卵巣癌、より具体的には乳癌。
【0142】
特に、治療の必要な患者は、哺乳類、特にヒトである。
【0143】
本発明はまた、特にそれを必要とする患者に、有効量の少なくとも1つの本発明の抗体-薬物複合体を投与することを含む、癌の治療のための治療方法も記載している。
【0144】
1つの特定の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、全身投与される薬剤の形で使用される。
【0145】
従って、本発明の医薬組成物は、非経口路による投与を意図され得る。用語、非経口とは、注射剤及び輸液を含むことを意図され得る。
【0146】
注射剤は、アンプルの形で、又はすぐに使用できる注射剤の形で、例えばすぐに使用できる注射器又は単回使用の注射器の形で、又は実際、複数の引き出し用の穿剌可能なバイアルにおいてさえ処方され得る。注射剤の投与は、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)又は皮膚内(i.c.)適用の形で行われ得る。特に、結晶、溶液、ナノ粒子又はコロイド分散系、例えばヒドロゾルの懸濁液の形で適切な注射可能製剤を製造することが可能である。
【0147】
さらに、注射可能組成物は、等張水性希釈剤により溶解されるか又は分散され得る、濃縮物の形で製造され得る。注入液はまた、等張液、脂肪エマルジョン、リポソーム製剤及びマイクロエマルジョンの形でも調製され得る。注射剤と同様に注射製剤も希釈用の濃縮液の形で調製され得る。注射可能な製剤はまた、例えばミニポンプによる、入院患者及び外来治療の両方の状況において、永久注入の形で適用され得る。
【0148】
特に本発明の複合体のタンパク質又はポリマーへの吸着に影響を与えるための物質として、非経口薬物組成物、例えばアルブミン、血漿、希釈剤、界面活性剤、有機希釈剤、pH影響物質、錯化物質又はポリマー物質に添加することが可能であり、又はそれらはまた、注射器具又は包装材料、例えばプラスチック又はガラスなどの材料への本発明の複合体の吸着を低減する目的で添加され得る。
【0149】
標的化剤部分を含む本発明の化合物は、マイクロキャリア又は非経口ナノ粒子、例えばポリ(メタ)アクリレート、ポリラクテート、ポリグリコテート、ポリアミノ酸又はポリエーテルウレタンに基く微細に分散された粒子に結合され得る。非経口組成物はまた、本発明の複合体が、それぞれ細かく分散された、又は懸濁液の形で、又は薬剤中の結晶の懸濁液の形で導入される場合「複数ユニット原理」に基いて、又は本発明の複合体が製剤、例えば続いて移植される錠剤又はロッドに封入される場合、「単一ユニット原理」に基いて、デポ調製物として修飾され得る。単一ユニット及び複数ユニット製剤におけるそれらの移植物又は薬物デポは、しばしば、いわゆる生物分解性ポリマー、例えば乳酸及びグルコール酸のポリエステル、ポリエーテルウレタン、ポリアミノ酸、ポリ(メタ)アクリレート又は多糖類から成る。
【0150】
非経口製剤として処方される本発明の医薬組成物の調製中に添加されるアジュベント及び担体は、以下から選択される:滅菌水(アクアステリリサタ)、pH値に影響を与える物質、例えば有機又は無機の酸又は塩基又はそれらの塩、pH値を調整するための緩衝物質、等張化のための物質、例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グルコース及びフルクトース、界面活性剤及び乳化剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸の部分エステル(例えば、Tween(登録商標))又はポリオキシエチレンの脂肪酸エステル(例えば、Cremophor(登録商標))、脂肪油、例えば落花生油、大豆油又はヒマシ油、脂肪酸の合成エステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、中性油(例えばMiglyol(登録商標))、高分子アジュバント、例えばゼラチン、デキストラン、ポリビニルピロリドン、有機溶媒の溶解度を高める添加剤、例えばプロピレングリコール、エタノール、N、N-ジメチルアセトアミド、プロピレングリコール、又は複合体形成物質、例えばクエン酸塩及び尿素、防腐剤、例えば安息香酸ヒドロキシプロピルエステル及びメチルエステル、ベンジルアルコール、酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウム及び安定剤、例えばEDTA。
【0151】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物の処方の間、この方法は、本発明の複合体の硬化を防ぐために増粘剤、又は堆積物及び/又は複合体形成剤、例えばEDTAの再懸濁性を確保するために界面活性剤及び高分子電解質の添加を含む。活性成分と種々のポリマーとの複合体を得ることも可能である。そのようなポリマー例として、以下を言及することができる:ポリエチレングリコール、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、Pluronics(登録商標)又はポリエチレングリコールソルビトール脂肪酸エステル。本発明の複合体はまた、例えばシクロデキストリンを含む包接化合物の形で、液体製剤中組込まれ得る。1つの特定の実施形態によれば、分散剤が、追加のアジュバントとして添加され得る。凍結乾燥物の製造に関しては、マンニトール、デキストラン、スクロース、ヒトアルブミン、ラクトース、ポリビニルピロリドン(PVP)又は種々のゼラチンのような剤が使用され得る。
【0152】
非経口投与の場合、組成物は、懸濁剤及び/又は湿潤剤を含むことができる水性懸濁液又は水溶液の形であり得る。組成物は、好都合には、無菌である。それは、等張液の形で存在できる(とくに、血液に関して)。
【0153】
本発明の化合物は、1日当たり0.01mg~1000mgの範囲の用量で医薬組成物に使用され得、1日1回の単回用量又は1日中、複数回用量で投与され得る。
【0154】
毎日投与される用量は好都合には、5mg~500mg、及びより好都合には、10mg~200mgである。
【0155】
しかしながら、当業者が理解できるであろう、それらの範囲外の用量を使用する必要があるかも知れない。
【0156】
本発明の1つの特定の実施可能によれば、本発明のその使用のための化合物は、細胞毒性であるかどうかにかかわらず、別の活性成分、特に抗癌化合物と組合して投与される。従って、本発明の医薬組成物はまた、別の活性成分も含むことができる。
【0157】
従って、本発明の医薬組成物は、上記で定義されたような少なくとも1つの抗体薬物複合体を、同時又は別々の使用のための、又はある期間にわたって広がる使用のための組合せ製品による少なくとも1つの他の活性成分を含み、特に癌の治療のために使用され得る。
【0158】
請求項を含む全記載を通して、用語「含む」とは、特にことわらない限り、「少なくとも1つを含む」と同義であると理解されるべきである。「・・・と・・・との間」及び「・・・から・・・までの範囲」という表現は、特にことわらない限り、制限を含むものとして理解されるべきである。
【0159】
説明及び実施例においては、温度は、特にことわらない限り、℃で表され、そして圧力は、特にことわらない限り、大気圧である。
【0160】
本発明は、以下に提示されている非制限的な例により、より詳細に示される。
【実施例】
【0161】
実施例1:4-((3-アミノ-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルの調製
1.1一般的な概略図:
【化41】
【0162】
1.2 4-((4-メトキシ-3-ニトロフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルの調製
密閉菅内で、塩素化複素環式化合物及び芳香族アミノ誘導体を、連続して、2mlのジオキサンに添加する。
【0163】
次に、1滴のHClを混合物に添加し、そして反応媒体を、攪拌しながら、140℃で12時間、加熱する。
【0164】
その混合物を冷却し、そしてその後、水性NaOH(4N)により中和し、そして混合物を、酢酸エチル(3×10ml)により抽出する。
【0165】
組合わされた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空下で濃縮する。粗反応混合物を、NaHを含むジメチルホルムアミド(DMF)溶液(5ml)に、0℃で溶解する。この混合物に、CH3Iを一滴ずつ添加し、そして反応媒体を、周囲温度で、攪拌しながら、2時間置く。
【0166】
粗反応混合物を、シリカカラムでのクロマトグラフィーにより濃縮し、そして精製する。
【0167】
4-((4-メトキシ-3-ニトロフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルを、56%の収率を伴って、固体形で得る。
【0168】
測定される融点は、219.9~220.5℃である。
【0169】
特性評価:1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (d, J = 8.5 Hz, 1H); 7.71 (t, J = 8.5 Hz, 1H); 7.61 (d, J = 8.5 Hz, 1H); 7.58 (d, J = 2.7 Hz, 1H); 7.42 (t, J = 8.5 Hz, 1H); 7.34 (s, 1H); 7.05 (dd, J = 9.1 Hz, J = 2.8 Hz, 1H); 6.98 (d, J = 9.1 Hz, 1H); 3.94 (s, 3H); 3.52 (s, 3H)。
【0170】
特性評価:13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ: 153.9; 150.0; 149.3; 142.1; 139.9; 134.3; 130.9; 130.8; 128.2; 127.4; 124.5; 123.6; 118.4; 117.6; 114.9; 114.5; 56.9; 42.9。
【0171】
特性評価:HRMS C18H15N4O3: 335.1144 (計算値); 335.1150 (実測値)。
【0172】
特性評価:IR neat νmax/cm-1: 2363, 2340, 1679, 1625, 1603, 1460, 1275。
【0173】
1.3 4-((3-アミノ-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルの調製:
25mlのビコールにおいて、ニトロ化合物を、エタノール/水混合物[8/2]に添加する。反応媒体を、80度に過熱し、そして固形鉄(10当量)及び3滴のHClを反応媒体に添加する。ニトロ化合物が完全に還元されるまで、全混合物を、攪拌しながら、80℃に添加する。
【0174】
粗反応混合物を、周囲温度に冷却し、そして濾紙上で濾過する。濾液を、シリカカラムでのクロマトグラフィーにより、濃縮及び精製し、そしてこのようにして、還元生成物を得る。
【0175】
4-((3-アミノ-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルを、62%の収率を伴って、固体形で得る。
【0176】
測定される融点は、84.9~92.6℃である。
【0177】
特性評価:1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 7.98 (d, J = 8.4 Hz, 1H); 7.59 (t, J = 9.2 Hz, 2H); 7.26 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 6.68 (d, J = 8.5 Hz, 1H); 6.46 (d, J = 2.5 Hz, 1H); 6.36 (dd, J = 8.5 Hz, J = 2.5 Hz, 1H); 3.88 (s, 2H); 3.84 (s, 3H); 3.42 (s, 3H)。
【0178】
特性評価:13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ: 154.5; 149.7; 144.9; 143.5; 137.5; 134.0; 130.1; 129.9; 126.7; 125.6; 123.0; 118.2; 113.6; 111.0; 110.9; 110.7; 55.7; 43.8。
【0179】
特性評価:HRMS C18H17N4O: 305.1402 (計算値); 305.1399 (実測値)。
【0180】
特性評価:R neat νmax/cm-1: 3475, 3377, 2960, 2837, 2236, 1570, 1502, 1264。
【0181】
特性評価:(液体クロマトグラフィー/質量分析)LC-MS: t.r. 15.36.
Purity: 95.47%。
【0182】
実施例2:4-(3-ヨード-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルの調製:
2.1 4-(3-ヨード-4-メトキシフェニル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルの調製:
【化42】
【0183】
密閉された菅において、以下を混合する:4-クロロキノリン-2-カルボニトリル(376mg、2.00mモル、1当量)、及び3-ヨード-4-メトキシアニリン(500mg、2.00mモル)、ジオキサン(10mL)及び濃HCl(5滴)。
【0184】
混合物を、140℃で一晩、加熱する。
【0185】
反応混合物を冷却した後、混合物を、中性pHに中和し、そして酢酸エチルにより抽出する。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥する。
【0186】
粗残渣を、シリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸上エチル0→30%)により精製する。
【0187】
4-(3-ヨード-4-メトキシフェニル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルを、51%の収率で、黄色の固体の形で単離する。
【0188】
特性評価:1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.11 (d, J = 8.5 Hz, 1H); 7.92 (d, J = 7.7 Hz, 1H); 7.86 - 7.74 (m, 2H); 7.71 - 7.60 (m, 1H); 7.33 (dd, J = 8.3; 2.7 Hz, 1H); 7.00 - 6.88 (m, 2H); 6.73 (s, 1H); 3.98 (s, 3H)。
【0189】
特性評価:エレクトロスプレーイオン化-高分解能質量分析(ESI+) HRMS: m/z for C17H13N3OI [M+H]+ 402.0103 (計算値); 402.0113 (実測値)。
【0190】
2.2 4-((3-ヨード-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルの調製:
【化43】
【0191】
NaH(70.0mg、2.17mモル)を、0℃で、ジメチルホルムアミド(DMF)(5ml)中、4-((3-ヨード-4-メトキシフェニル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルの溶液に添加する。次に、CH3I(305mg、2.17mモル)を、一滴ずつ添加する。混合物を、0℃で30分間、攪拌する。
【0192】
混合物を周囲温度にし、水により希釈し、そして次に酢酸エチルにより抽出し、そして硫酸マグネシウム上で乾燥する。
【0193】
粗残渣を、シリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル 0→40%)により精製する。
【0194】
化合物4-((3-ヨード-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリルを、71%の収率で、黄色の固体の形で単離する。
【0195】
特性評価:1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.08 (d, J = 8.4 Hz, 1H); 7.79 - 7.51 (m, 3H); 7.48 - 7.21 (m, 2H); 6.92 (dd, J = 8.7; 2.7 Hz, 1H); 6.73 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 3.88 (s, 3H); 3.48 (s, 3H)。
【0196】
特性評価:13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ: 155.49; 154.17; 149.84; 144.02; 134.25; 134.19; 130.56; 130.29; 127.41; 125.07; 124.27; 123.06; 117.91; 112.35; 111.28; 86.64; 56.66; 43.64。
【0197】
特性評価:(ESI+) HRMS: m/z C18H15N3OI [M+H]+ 416.02 260 (計算値); 416.0267 (実測値)。
【0198】
特性評価:R (neat): 1571, 1562, 1482, 1430, 1279, 1109, 808, 766, 713, 603 cm-1。
【0199】
融点=175~180℃。
【0200】
実施例3:(E)-5-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシペント-4-エナミンの調製:
3.1 N-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ペント-4-エナミンの調製:
【化44】
【0201】
1当量のカルボン酸を、ジクロロメタン(DCM)中で、1当量のNHTHPと共に混合する。続いて、1当量の(ジシクロへキシルカルボジイミド)DCCを添加する。混合物を、周囲温度で一晩、攪拌し、そして次に、飽和炭酸水素塩溶液及び水により洗浄する。残渣を、シリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル 1:1)により精製する。
【0202】
白色固体の形でのN-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ペント-4-エナミンを、86%の収率で得る。
【0203】
特性評価:1H NMR (300 MHz, DMSO) δ: 10.93 (s, 1H); 5.78 (dq, J = 10.6; 6.6 Hz, 1H); 5.00 (dd, J = 21.1; 13.7 Hz, 2H); 4.80 (s, 1H); 3.92 (m, 1H); 3.50 (m, 1H); 2.24 (m, 2H); 2.08 (m, 2H); 1.69 - 1.51 (m, 6H)。
【0204】
3.2 (E)-5-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシペント-4-エナミンの調製:
【化45】
【0205】
アルゴンガスによりパージされた密閉菅において、以下を添加し:上記の実施例2で調製された4 -((3-ヨード-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリル(30.0mg、0.072mモル)、N-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ペント-4-エナミン(42.0 mg、0.20mモル)、トリ(o-トリル)ホスフィン(7.20 mg、0.023mモル)、Pd(OAC)2(6.0 mg、0.026 mモル)、EtN3(49.0 mg、0.48 mモル)及びDMF(1 mL);混合物を脱気し、そして100℃で一晩、加熱する。
【0206】
反応媒体を、周囲温度にし、DCMにより希釈し、そしてその後、セライトを通して濾過し、次に、濾液を蒸発する。中間化合物の形成(上記概略図を参考)を、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)により確認し、そしてその化合物を、精製しないで、続く工程に使用する。
【0207】
ジオキサン(0.5ml)中、4NのHClの溶液を、無水ジオキサン(1ml)中、中間化合物(上記概略図を参照)の溶液に添加する。混合物を、周囲温度で30分間、攪拌し、そして続いて、周囲温度で蒸発し、そして次に、水中アセトニトリルの勾配を用いての高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製する。凍結乾燥の後、化合物(E)-5-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシペント-4-エナミンを、30%の収率で黄色の固体の形で得る。
【0208】
特性評価:(ESI+) HRMS: m/z C23H23N4O3 [M+H]+: 403.1770 (計算値); 403.1768 (found)。
【0209】
特性評価:IR (neat): 2947, 1641, 1569, 1491, 1235, 1031, 970, 758 cm-1。
【0210】
純度(HPLC):100%。
【0211】
特性評価:1H NMR (400 MHz, MeOD) δ: 7.89 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 7.61 (t, J = 7.4 Hz, 1H); 7.53 - 4.45 (m, 1H); 7.34 (m, 1H); 7.24 - 7.23 (m, 3H); 6.87 (m, 3H); 6.67 (d, J = 15.9 Hz, 1H); 6.17 - 6.04 (m, 1H); 3.81 (s, 3H); 3.48 (s, 4H); 2.46 (dd, J = 13.5; 6.7 Hz, 2H); 2.28 - 2.16 (m, 2H)。
【0212】
特性評価:13C NMR (101 MHz, MeOD) δ: 172.04; 156.07; 155.65; 150.60; 144.35; 134.94; 131.31; 131.22; 130.31; 129.22; 127.66; 126.91; 126.25; 125.32; 123.70; 123.63; 118.85; 113.20; 111.66; 56.24; 44.45; 33.52; 30.33。
【0213】
融点=177~182℃
【0214】
実施例4:5-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシペント-4-インアミドの調製:
4.1 N-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ペント-4-インアミドの調製:
【化46】
【0215】
1当量のカルボン酸を、DCMにおいて1当量のNHTHPと共に混合物、続いて、1等量の(ジシクロへキシルカルボジイミド)DCCを添加する。混合物を、周囲温度で一晩、攪拌し、そして次に、飽和炭酸水素塩溶液及び水により洗浄する。残渣を、シリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル1:1)により精製する。
【0216】
白色固体の形でのN-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ペント-4-インアミドを、76%の収率で得る。
【0217】
特性評価:1H RMN (300 MHz, DMSO) δ: 11.04 (s, 1H); 4.80 (s, 1H); 3.91 (s, 1H); 3.50 (d, J = 11.6 Hz, 1H); 2.80 (s, 1H); 2.35 (d, J = 6.2 Hz, 2H); 2.18 (t, J = 7.0 Hz, 2H); 1.58 (m, 6H)。
【0218】
4.2 5-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシペント-4-インアミドの調製:
【化47】
【0219】
アルゴンによりパージされた密閉菅において、以下を添加する:上記の実施例2で調製された4 -((3-ヨード-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリル(30.0mg、0.072mモル)、N-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ペント-4-インアミド(28.0 mg、0.144mモル)、PdCl2P(Ph3)2(12 mg、0.017mモル)、CuI(7 mg、0.036 mモル)、Et3N(21.0 mg、0.22 mモル)及びDMF(1 mL)。
【0220】
混合物を脱気し、そして周囲温度で一晩、攪拌する。反応混合物を、DCMにより希釈し、そしてその後、セライトを通して濾過し、次に濾液を蒸発する。中間化合物の形成(上記スキームを参照)を、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)により確認し、そしてその化合物を、精製しないで、続く工程に使用する。
【0221】
ジオキサン(0.5ml)中、4NのHClの溶液を、無水ジオキサン(1ml)中、中間化合物(上記概略図を参照)(29.0mg、0.06mモル)の溶液に添加する。混合物を、周囲温度で30分間、攪拌し、そして続いて、周囲温度で蒸発し、そして次に、水中、アセトニトリルの勾配を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製する。
【0222】
凍結乾燥の後、化合物5-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシペント-4-インアミドを、15%の収率を伴って、黄色の固体の形で得る。
【0223】
特性評価:1H NMR (400 MHz, MeOD) δ: 8.54 (s, 1H); 7.93 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 7.72 - 7.49 (m, 2H); 7.30 - 7.27 (m, 2H); 7.18 - 6.85 (m, 3H); 3.83 (s, 3H); 3.47 (s, 3H); 2.70 (s, 2H); 2.34 (s, 2H)。
【0224】
特性評価:13C NMR (101 MHz, DMSO) δ: 167.20; 156.84; 153.86; 149.09; 142.69; 133.65; 130.27; 129.92; 128.30; 127.21; 125.14; 125.05; 122.31; 118.06; 113.16; 112.43; 112.11; 94.05; 76.58; 55.84; 43.65; 40.15; 39.94; 39.73; 39.52; 39.31; 39.10; 38.89; 31.49; 15.41。
【0225】
特性評価:(ESI+) HRMS: m/z C23H21N4O3 [M+H]+ 403.1614 (計算値); 403.1621 (実測値)。
【0226】
特性評価:IR (neat): 2987, 1644, 1496, 1066, 766 cm-1。
【0227】
純度(MPLC):100%。
【0228】
融点=170~175℃。
【0229】
実施例5:(E)-3-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシアクリルアミドの調製:
5.1 N-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)アクリルアミドの調製:
【化48】
【0230】
1当量のカルボン酸を、DCMにおいて、1当量のNHTHPと共に混合する。続いて1当量の(ジシクロへキシルカルボジイミド)DCCを、添加する。その混合物を、周囲温度で一晩、攪拌し、そして次に、飽和炭酸水素塩溶液及び水により洗浄する。残渣を、シリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル1:1)により精製する。
【0231】
N-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)アクリルアミドを、61%の収率を伴って、白色固体の形で得る。
【0232】
特性評価:1H NMR (200 MHz, CDCL) δ: 9.41 (s, 1H); 6.40 (d, J = 16.7 Hz, 1H); 6.15 (s, 1H); 5.69 (d, J = 10.4 Hz, 1H); 4.97 (s, 1H); 3.96 (t, J = 8.1 Hz, 1H); 3.59 (dd, J = 11.3; 4.0 Hz, 1H); 1.77 (d, J = 10.9 Hz, 3H); 1.58 (s, 3H)。
【0233】
5.2 (E)-3-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシアクリルアミドの調製:
【化49】
【0234】
アルゴンによりパージされた密閉菅において、以下を添加する:上記の実施例2で調製された4 -((3-ヨード-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリル(30.0mg、0.072mモル)、N-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)アクリルアミド(34.0 mg、0.20 mモル)、トリ(o-トリル)ホスフィン(7.20 mg、0.023 mモル)、Pd(OAC)2(6.0mg、0.026mモル)、EtN3(49.0 mg、0.48 mモル)及びDMF(1 mL)。混合物を、脱気し、そして100℃で一晩、加熱する。
【0235】
反応混合物を、周囲温度にし、DCMにより希釈し、そしてその後、セライトを通して濾過し、次に濾液を蒸発する。中間化合物の形成(上記概略図を参照)を、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)により確認し、そしてその化合物を、精製しないで、続く工程に使用する。
【0236】
ジオキサン(0.5ml)中、4NのHClの溶液を、無水ジオキサン(1ml)中、中間化合物(上記概略図を参照)の溶液に添加する。混合物を、周囲温度で30分間、攪拌し、そして続いて、周囲温度で蒸発し、そして次に、水中、アセトニトリルの勾配を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製する。
【0237】
凍結乾燥の後、(E)-3-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシアクリルアミドを、55%の収率を伴って、黄色の固体の形で得る。
【0238】
特性評価:1H NMR (300 MHz, MeOD) δ: 7.94 (d, J = 8.2Hz, 1H); 7.82 - 7.48 (m, 3H); 7.44 (s, 1H); 7.29 (s, 2H); 7.07 (dd, J = 29.0; 8.9Hz, 2H); 6.42 (d, J = 17.0Hz, 1H); 4.85 (水と重なった塩酸塩に対応するピーク), 3.90 (s, 3H); 3.53 (s, 3H)。
【0239】
特性評価:13C NMR (75 MHz, MeOD) δ: 165.03; 155.74; 154.66; 149.31; 143.14; 134.58; 133.72; 130.06; 129.10; 126.58; 125.39; 124.73; 123.80; 122.40; 118.50; 117.41; 112.46; 110.98; 55.02; 42.86。
【0240】
特性評価:(ESI+) HRMS: m/z C21H19N4O3 [M+H]+ 375.1457 (計算値); 375.1455 (実測値)。
【0241】
特性評価:IR (neat): 3213, 1567, 1492, 1427, 1241, 1105, 977, 762 cm-1。
【0242】
純度(HPLC):100%。
【0243】
融点=215~210℃。
【0244】
実施例6:癌細胞系に対する遊離の非複合体化形式での本発明の化合物(「ICQN」)と呼ばれる)の抗増殖活性の比較:
本発明の化合物4-((3-アミノ-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリル(ICQN-1); 5-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシペント-4-インアミド(ICQN-2); 及び(E)-3-(5-((2-シアノキノリン-4-イル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-N-ヒドロキシアクリルアミド(ICQN-3)のIC50(許容できる用語に従って)活性を、従来技術の化合物と、及び市販及び臨床的参照化合物、特にMMAE(モノメチルアウリスタチンE)と比較する。IC50活性を、以下の種々の異なる癌細胞系で測定する:HCT116(結腸直腸腫瘍)、A549(非小細胞肺癌)、NCI-N87(胃腫瘍)、Mia-Paca-2(膵臓腫瘍)、K562R(慢性骨髄性白血病)、SKOV3(卵巣腫瘍)、SKBr3(乳癌、Her2過剰発現)、MCF7(乳癌)、MDA-MB231(乳癌)。
【0245】
前記癌細胞系は、American Culture Collection (ATCC, Rockville, MD)から、又はthe Leibniz Institute (DSMZ, Braunschweig-Germany)の微生物と細胞培養のドイツコレクション、又は細胞培養のヨーロッパのコレクション(ECACC, England)から入手した。癌細胞系は、供給者の説明書に従って培養された。
【0246】
HCT-116ヒト結腸直腸癌、SK-BR3乳癌、及びSK-OV-3卵巣癌細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)及び1%グルタミンを補充されたGibco McCoy's 5A培地において培養した。
【0247】
A549肺癌細胞、K562R骨髄性白血病細胞、及びNCI-N87胃癌細胞を、10%ウシ胎児血清(FC5)及び1%グルタミンを補充されたGibco Roswell Park Memorial Institute (RPMI) 1640培地において培養した。Mia-Paca2癌細胞を、10%ウシ血清(FCS)及び1%グルタミンを補充されたGibco Dulbecco's 改良イーグル培地 (DMEM)において培養した。
【0248】
乳房腺癌細胞MDA-MB231及びMCF7を、10%ウシ胎児血清(FCS)及び1%グルタミンを補充されたGibco RPMI1640培地において培養した。
【0249】
細胞を、Vi-cell XR (Beckman Coulter)を用いて計数し、そして細胞生存性を、0.25%トリパンブル-色素排除アッセイを用いて評価した。細胞を、マイコプラズマPCR検出キット (Applied Biological Materials Inc., Canada)により、製造業者の指示に従っての実験の前、マイコプラズマの存在について試験し、そしてマイコプラズマを含まない細胞のみを、研究に使用した。細胞系を、5%CO2を含む加湿された雰囲気において、37℃で維持した。
【0250】
IC50の決定のために、細胞を、100μlの増殖培地を含む96ウェルプレート(3×103個の細胞/ウェル)に播種した。培養の24時間後、細胞を、試験された化合物により、10の異なる最終濃度で処理した。各濃度は、ストック溶液から開始する培地での連続的希釈から得た。対照細胞を、担体により処理した。実験は、三重反復して実施された。
【0251】
測定は、PolarStar Omega マイクロプレートリーダー(BMG- Labtech)を用いて、生物発光(アデノシン三リン酸の定量化-ATP)を通して生存細胞の数の測定を可能にする、CellTiter Gloアッセイ (Promega)を用いて72時間の処理の後に実施された。
【0252】
用量-応答曲線を、Graph Prismソフトフェアアプリケーションによりプロットし、そしてIC50値を、多項式曲線(4又は5つのパラメーターロジスティック方程式)を用いて計算した。
【0253】
結果は、下記の表1に示される。
【0254】
それらの結果が示すように、本発明の化合物は、多くの癌細胞系に対して非常に良好な阻害活性を示す。
【0255】
【0256】
細胞系HCT116、A549、NCI-N87、Mia-Paca-2、K562R、MCF7及びMDA-MB231に対するIC50の結果は、市販及び臨床の参照化合物MMAEで得られたそれらの結果よりも全体的にはるかに優れている。細胞系の選択が、複合体化抗体が関連する状況において満たされていないままである医学的必要性を表す広範囲の固体及び液体の癌適応症に基かれていることを繰り返しておくべきである。幅広いパネルに対して観察されたこの細胞毒性はまた、ペイロードの商業的成功の基準でもある。
【0257】
実施例7:本発明の化合物の抗増殖活性と、市販及び臨床的参照化合物MMAE(非複合体化形式)の抗増殖活性との比較分析:
IC50比を、本発明の化合異物(ICQN-1)とMMAEとの間で確立した。IC50比が高いほど、治療の改善の可能性が高くなり、そして従って、商業的成功の可能性が高くなる。
【0258】
【0259】
従って、本発明の化合物は、MMAEよりも非常に有意な利点を示す。例えば、NCI-N87(胃癌)細胞系に関連して、ICQN1は、MMAEよりも22倍効果的である。
【0260】
実施例8:N-Me基によりお互い連結されたキノリン核及び芳香環を有する従来技術の化合物と比較された抗増殖活性(L. Chen et al. Eur. J. Med. Chem. 2017, 138, 1114):
上記に引用されたChenなどにより出版された研究においては、言及された分子の中で、化合物13bは以下の構造を有する:
【化50】
【0261】
この化合物は、MDA-MB-231細胞系に対して3.2nMのIC50を示している。
【0262】
下記表3は、本発明の化合物(ICQN-1(4-((3-アミノ-4-メトキシフェニル)(メチル)アミノ)キノリン-2-カルボニトリル))及びL. Chen et al. (Eur. J. Med. Chem. 2017, 138, 1114)により記載された化合物13bについての7種の細胞系にわたる集合的な比較データを提示している。
【0263】
【0264】
本発明の化合物は、非常に驚くべきことには、化合物13bの細胞毒性活性よりもはるかに高い全体的な細胞毒性活性を有する。キノリンの2位でのMe基のCNによる置換の後に得られたその活性は、予想外であり、そして当業者により予測され得なかった。実際、L.Chenなど及び当業者によれば、キノリンの2位でのメチルは、阻害活性を維持するために必要であると思われた。さらに、L.Chenなどによれば、ADC戦略において何れの複合体化も適用について言及されていない。
【0265】
実施例9:ジヘテロアリールメチルアミン型構造を有する従来技術の化合物と比較した抗増殖活性(Alamiなど):
Alami et al. Eur. J. Med. Chem. 2019, 168, 176-188によれば、分子Ia及びIb(以下の構造)の比較により、当業者は、キノリンの2位でCNによるMeの置換が、細胞毒性の劇的な低下を導くことに気づく(HCT116細胞系に対して100倍)。
【化51】
【0266】
しかしながら、上記実施例8により支持されるように、キノリンの2位でのCNによるMeの置換は、細胞毒性の驚くべき改善を誘発する(10倍)。当業者は、本発明の化合物に関して、そのような活性を予期せず、予見することもできなかった。
【0267】
Alamiなどの化合物1aは、リンカーに結合するためのアンカーポイントを有さないので、ADC戦略においてペイロードと見なすことができない可能性があることもまた注目されるべきである。
【0268】
実施例10:ジ(ヘテロアリール)アリールエチレン型構造を有する従来技術の化合物と比較した抗増殖活性:
Alami et al. J. Med. Chem. 2019, 62, 1902-1916によれば、N-Me基の代わりに二重結合を担持する分子4f/4j及び4g/4kを一度に2つ比較することにより、当業者は、キノリンの2位でのMeのCNによる置換が、細胞系HCT116について1nM以下の細胞毒性IC50の改善の達成を予測する能力を提供しないことを見出した。当業者は、化合物4f(2位でのMe)から化合物4j(2位でのCN)に移る場合に活性の喪失に気づいている。
【0269】
【0270】
実施例11:先行技術のICQO-1のペイロードに比較しての本発明の化合物の抗増殖活性の比較分析:
先行技術において同定された全ての化合物中で、ICQO-1は当業者のペイロードの特性を示す唯一のものである。ICQOは、下記構造を有するものとして、国際特許出願PCT/EP2018/058168に開示される化合物である:
【化52】
【0271】
IC50比は、本発明の化合物(ICQN-1)と従来技術のICQO-1の化合物との間で確立された。比率が高いほど、インビボでの有能な治療活性が大きい。
【0272】
【0273】
それらの比率は、本発明の化合物(ICQN)が、ICQO-1タイプの化合物に対して非常に有意な利点を示していることを示している。例えば、HCT-116(結腸直腸癌)細胞系の場合、ICGN-1は、ペイロード化合物ICQO-1よりも44倍効率的である。この有意な差は、当業者にとって特に予測不可能であり、且つ予想外であった。
【0274】
実施例12:キノリンタイプの先行技術の化合物と比較したICQNの抗増殖活性の比較分析(特許出願US 2006/074187、実施例21):
VB118は、本発明の化合物と比較することを目的として合成及び記載されたキノリン化合物(特許出願US2006/074187、実施例2)である。
【0275】
【0276】
VB118タイプの先行技術の化合物と比較して、本発明の化合物(ICQN)上のキノリンの2位でのニトリル官能基及びアミン官能基-NH2の付加は、細胞系及び癌徴候の幅広いパネルにわたって、少なくとも2logの活性の驚くべき増加を誘発する。
【0277】
実施例13:耐性癌細胞に対する市販の参照化合物MMAE及びペイロードICQO-1と比較した本発明の化合物(ICQN)の抗増殖活性の比較分析(MDRプロファイル:多剤耐性):
K562R(慢性骨髄性白血病)細胞は、参照化合物MMAEを含むいくつかの化学療法化合物に耐性を有することを可能にするMDRプロファイルを有する。
【0278】
【0279】
ペイロード及び複合体化された医薬品分野の当業者は、ペイロード、例えば35nMのIC50を有するMMAEが、本発明の化合物よりも低い治療上の関心を提供することに気付くであろう。ペイロードは、いったん複合体化にされると、効果的であるために、好ましくは、標的化された癌細胞に対してナノモノ以下の活性を有する。本発明の化合物ICQN-1は、MMAEよりも74倍、大きいのみならず、また化合物ICQO-1よりも4.2倍、大きい優位性を示すことが見出されている。本発明の化合物は、特に驚くべき活性を示すと同時に、多剤耐性(MDR)プロファイルを有する癌の治療的分化も示している。
【0280】
実施例14:複合体化された抗体の調製:
種々の異なる「毒性-リンカー」化合物(バリン-シトルリンに基く)、切断可能な酵素(カテプシンB酵素による)、及び切断不可能な化合物が、以下の表8に示されるように、得られた:
【0281】
【0282】
化合物はVB179、VB185、VB199 及びVB279は、パラニトロフェニルクロロホルメートによる本発明の式(I)を有する化合物(ICQN-1)のNH2官能基の活性化により得られた。次に、形成された中間体は、リンカーMC-Val-Cit-PABAのベンジルアルコール官能基と反応する。
【0283】
化合物VB277は、リンカーMC-Val-Cit-PABAのベンジルアルコール官能基のトリフラート形での活性化、続いて塩基性媒体中で化合物NI313との反応により調製された。
【0284】
化合物VB284及びVB289は、ICQN-1と耐性官能基との間のペプチドカップリングにより調製された。
【0285】
VB179:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.58 (s, 1H), 8.06 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.67 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.58 (s, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.49 (dd, J = 8.6, 1.1 Hz, 1H), 7.34 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 6.98 (s, 2H), 6.94 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.74 (dd, J = 8.7, 2.7 Hz, 1H), 5.97 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 5.40 (s, 2H), 5.00 (s, 2H), 4.38 (td, J = 8.2, 5.5 Hz, 1H), 4.18 (dd, J = 8.3, 7.1 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.43 (s, 3H), 2.97 (m, 2H), 2.15 (m, 2H), 1.97 (dq, J = 13.5, 6.7 Hz, 1H), 1.70 (m, 1H), 1.57 (m, 1H), 1.52 - 1.47 (m, 2H), 1.45 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 1.42 - 1.30 (m, 2H), 1.23 - 1.14 (m, 2H), 0.85 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.82 (d, J = 6.7 Hz, 3H). HRMS (ESI): m/z [M + H] C47H55N10O9についての計算値 :903,4153 実測値: 903,4156. 純度: 98.2%。
【0286】
VB 199:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.58 (s, 1H), 8.06 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.67 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.58 (s, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.49 (dd, J = 8.6, 1.1 Hz, 1H), 7.34 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 6.98 (s, 2H), 6.94 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.74 (dd, J = 8.7, 2.7 Hz, 1H), 5.97 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 5.40 (s, 2H), 5.00 (s, 2H), 4.38 (td, J = 8.2, 5.5 Hz, 1H), 4.18 (dd, J = 8.3, 7.1 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H), 3,62 - 3,47 (m, 10 2H), 3.43 (s, 3H), 2.97 (m, 2H), 1.97 (dq, J = 13.5, 6.7 Hz, 1H), 1.70 (m, 1H), 1.57 (m, 1H), 1.42 - 1.30 (m, 2H), 0.85 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.82 (d, J = 6.7 Hz, 3H). HRMS (ESI): m/z [M + H] C52H65N10O13についての計算値: 1037.4733 実測値: 1037.4727.純度: 96.0%。
【0287】
VB277:
HRMS (ESI): m/z [M + H] C49H57N10O9についての計算値: 929.4310 実測値: 929.4312。
【0288】
VB284:
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.48 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.73 - 7.55 (m, 2H), 7.21 (s, 1H), 6.74 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.71 (s, 2H), 6.53 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 3.90 (s, 2H), 3.57 (m, 2H), 3.53 (s, 3H), 2.43 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.76 (m, 4H), 1.42 (m, 2H). HRMS (ESI): m/z [M + H] C28H28N5O4についての計算値: 498.2141 実測値:498.2140. 純度: 100%。
【0289】
VB289:
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 8.46 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.70 - 7.54 (m, 2H), 7.34 - 7.23 (m, 1H), 7.18 (s, 1H), 6.71 (s, 2H), 6.45 (dd, J = 8.6, 2.5 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.46 (s, 3H), 3.40 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 2.30 - 2.16 (m, 1H), 2.10 - 1.97 (m, 2H), 1.87 - 1.76 (m, 2H), 1.54 (ddd, J = 25.0, 13.1, 3.0 Hz, 2H), 1.16 - 0.98 (m, 2H), 0.88 (m, 1H). HRMS (ESI): m/z [M + H] 524.2298 C30H30N5O4についての計算値: 実測値: 524.2300. 純度: 93%。
【0290】
複合体化された抗体は、参照により本明細書に組込まれ、必要なら、本発明の読み取り及び当業者の一般的知識に適合される、国際特許出願PCT/EP2018/058168の実施例9に記載されるプロトコル(特に段落158)に従って得られる。
【0291】
実施例15:得られた複合体化抗体の活性の評価:
本発明の化合物(ICQN-1)を、異なるリンカーにカップリングし、そして続いて、異なるADCを得るために、毒性リンカーを、抗体トラスツズマブと複合体化した。調製されたADCの中で、DAR4を有する次のADCトラスツズマブ-Mal-PEG4-Val-Cit-PABC-ICQN-1は、胃癌細胞系NCI-N87(IC50=9nM)に対してインビトロナノモル活性を示した。比較として、参照ペイロードMMAEを備えた参照ADC:トラスツズマブ-Mal-Val-Cit-PABC-MMAEは、ほとんど同等の細胞毒性活性を示した(6nMのIC50)。