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特許7519349放射角度変換素子、発光装置および放射角度変換素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】放射角度変換素子、発光装置および放射角度変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20240711BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B3/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021515945
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015470
(87)【国際公開番号】W WO2020217943
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2019081241
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】常友 啓司
(72)【発明者】
【氏名】日下 哲
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-254641(JP,A)
【文献】特開平08-254604(JP,A)
【文献】特開2018-025713(JP,A)
【文献】国際公開第2007/094259(WO,A1)
【文献】特開2000-019307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0284330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に接合されるように構成された放射角度変換素子であって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の主面上に設けられた、光学機能部分を有する樹脂層と、
前記ガラス基板の前記一方の主面の平面視において、前記樹脂層の外側に設けられた、前記樹脂層を含まない接合部分と、
を備え、
前記接合部分は、前記筐体に形成された筐体側金属膜との半田による接合に供されるものであり、
前記接合部分は、前記一方の主面の平面視において、前記樹脂層の外側に設けられた金属膜を含み
前記一方の主面の平面視において、前記金属膜のさらに外側に前記ガラス基板の露出部分が設けられていることを特徴とする放射角度変換素子。
【請求項2】
前記光学機能部分は、複数のマイクロレンズが2次元配列されたマイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項1に記載の放射角度変換素子。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体内に配置される発光素子と、
前記筐体に接合され、前記発光素子からの光の放射角度を変換する請求項1または2に記載の放射角度変換素子と、
を備える発光装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の放射角度変換素子の製造方法であって、
(i)前記ガラス基板を用意するステップと、
(ii)前記ガラス基板の前記一方の主面に前記金属膜のパターンを形成するステップと、
(iii)前記金属膜のパターンに囲まれた領域に光硬化性樹脂を塗布するステップと、
(iv)前記光硬化性樹脂の表面に前記光学機能部分を形成するステップであって、
前記光学機能部分を形成するためのモールドを前記光硬化性樹脂に押圧するステップと、
光を照射して前記光硬化性樹脂を硬化させるステップと、
前記モールドを前記ガラス基板から離型させるステップと、
を備えるステップと、
(v)前記ステップ(iii)および前記ステップ(iv)を前記ガラス基板の前記一方の主面内で繰り返すステップと、
(vi)前記ガラス基板を、前記一方の主面の平面視において前記金属膜より外側の前記ガラス基板が露出した領域において切断して、複数の前記放射角度変換素子を取得するステップと、
を備える放射角度変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射ビームの放射角度を変換する放射角度変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光を様々な方向に散乱または角度変換させる放射角度変換素子は、ディスプレイの表示装置やスクリーンなどに使用され、さらに均一な照明強度を得る目的で、照明装置などの多種多様な装置に広く利用されている。一般的には、光源から出た光の放射角度を広くする場合が多い。
【0003】
近年、光放射角度や角度毎の強度分布、あるいは拡散光を投影した際の面内強度の均一化など、さらに高度な性能が求められるようになってきた。例えば、アレイ状の面発光型レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)から、所定の発散角で放射された光を、より広い角度範囲に拡散させ、かつ拡散角度に異方性を持たせたい、といったニーズがある。
【0004】
光を拡散させたり、角度を変換させる素子には、いくつかの種類がある。例えば平板の内部に、微小空間を分散させたり、微粒子を分散させたりしたようなもの(例えば、半透明樹脂板)、基材の表面に微小な凹凸をランダムにつけたもの(例えば、表面をエッチング等で荒らしたガラス)、基材の表面を加工して設計された凹凸を形成したもの(例えば、回折型素子)、基材の表面にレンズを多数並べたもの(例えば、マイクロレンズアレイ)などが知られている。
【0005】
これらの中で、マイクロレンズアレイを使った放射角度変換素子は、透過率が高く、拡散角度の制御が容易なため、高度な拡散性能を要求される場合に採用される(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-42772号公報
【文献】特開2017-9669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、従来の放射角度変換素子101を用いた発光装置100の一例を示す概略断面図である。この発光装置100は、筐体102と、発光素子104と、放射角度変換素子101とを備える。
【0008】
筐体102は、例えばセラミックスで形成され、上面が開放された箱形状を有する。筐体102の底面102a上にはVCSEL等の発光素子104が固定されている。放射角度変換素子101は、ガラス基板106上に樹脂製のマイクロレンズアレイ108が形成されたものである。放射角度変換素子101は、蓋をするように筐体102に接合され、これにより発光素子104が設置される空間が密閉される。放射角度変換素子101は、マイクロレンズアレイ108が形成された面が、発光素子104側に向くように設置されるのが一般的である。
【0009】
図2は、図1に示す放射角度変換素子101と筐体102の接合箇所Cの拡大図である。放射角度変換素子101を筐体102に接合する方法としては、熱硬化型接着剤やUV硬化型接着剤などの接着剤を用いた接合、半田接合、低融点ガラスを溶融させる接合方法、拡散接合などがある。いずれの場合も、ガラス基板106およびマイクロレンズアレイ108の側面と筐体102との対向部分C1や、マイクロレンズアレイ108と筐体102との対向部分C2を利用して、放射角度変換素子101と筐体102とが接合される。
【0010】
上記のような接合は、樹脂製のマイクロレンズアレイ108とセラミックス製の筐体102が接合される箇所において、互いの材料の密着性の問題から、接合強度が弱くなるおそれがある。また、上記のような接合は、セラミックスと樹脂とで熱膨張係数が異なるため、サーマルショックに弱い側面がある。さらに、上記のような接合においては、樹脂製のマイクロレンズアレイは耐熱性がそれほど高くないので、半田接合や低融点ガラスによる接合など、数百度の高温が必要となる接合方法が利用することができないという課題があった。
【0011】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、筐体に強固に接合することのできる放射角度変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の放射角度変換素子は、筐体に接合される放射角度変換素子であって、ガラス基板と、ガラス基板上に設けられた、光学機能部分を有する樹脂層とを備える。筐体との接合部分において、ガラス基板上に樹脂層が形成されていない。
【0013】
接合部分は、樹脂層の外側に設けられてもよい。
【0014】
接合部分において、ガラス基板上に金属膜が形成されていてもよい。
【0015】
接合部分において、樹脂層の外側に金属膜が形成され、金属膜のさらに外側にガラス基板の露出部分が設けられてもよい。
【0016】
光学機能部分は、複数のマイクロレンズが2次元配列されたマイクロレンズアレイであってもよい。
【0017】
本発明の別の態様は、発光装置である。この装置は、筐体と、筐体内に配置される発光素子と、筐体に接合され、発光素子からの光の放射角度を変換する放射角度変換素子と、を備える。放射角度変換素子は、ガラス基板と、ガラス基板上に設けられた光学機能部分を有する樹脂層とを備える。筐体との接合部分において、ガラス基板上に樹脂層が形成されていない。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、筐体に強固に接合することのできる放射角度変換素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の放射角度変換素子を用いた発光装置の一例を示す概略断面図である。
図2図1に示す放射角度変換素子と筐体の接合箇所の拡大図である。
図3図3(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る放射角度変換素子を説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る放射角度変換素子を用いた発光装置を示す概略断面図である。
図5図4に示す放射角度変換素子と筐体の接合箇所の拡大図である。
図6図6(a)および(b)は、本発明の第2実施形態に係る放射角度変換素子を説明するための図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る放射角度変換素子を用いた発光装置を示す概略断面図である。
図8図7に示す放射角度変換素子と筐体の接合箇所の拡大図である。
図9図9(a)および(b)は、本発明の第3実施形態に係る放射角度変換素子を説明するための図である。
図10図10(a)~(g)は、放射角度変換素子の製造プロセスの一例を示す図である。
図11図11(a)~(g)は、放射角度変換素子の別の製造プロセスの一例を示す図である。
図12図12(a)~(g)は、放射角度変換素子のさらに別の製造プロセスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
図3(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る放射角度変換素子10を説明するための図である。図3(a)は、放射角度変換素子10の平面図である。図3(b)は、図3(a)に示す放射角度変換素子10のA-A断面図である。
【0023】
放射角度変換素子10は、ガラス基板12を備える。ガラス基板12の材質は例えばソーダライムガラスやホウケイ酸ガラス等であってよく、その厚みは300μmであってよい。ガラス基板12の平面寸法は例えば2.5mm×3.0mmであってよい。
【0024】
放射角度変換素子10はさらに、光学機能部分を有する樹脂層14を備える。樹脂層14は、ガラス基板12の少なくとも一方の主面上に設けられる。本第1実施形態において、樹脂層14は、光学機能部分として、複数のマイクロレンズ15が2次元配列されたマイクロレンズアレイ16を有する。樹脂層14の材質は、使用を予定する波長において透過率が十分高い樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シクロオレフィン樹脂またはそれらの複合材を利用できる。本第1実施形態において、マイクロレンズ15は凸レンズであるが、マイクロレンズ15の種類は特に限定されず凹レンズであってもよいし、あるいは凸レンズと凹レンズが混在して構成されてもよい。複数のマイクロレンズ15は、例えば正方配列されてもよいし、稠密配列されてもよい。マイクロレンズ15の外形は、例えば平面視で円形であってもよいし、平面視で矩形であってもよい。各マイクロレンズ15において、樹脂層14とガラス基板12の界面からマイクロレンズ15の頂点までの高さは例えば50μmであってよく、曲率半径は例えば30μmであってよく、サグ量は例えば25μmであってよい。
【0025】
本第1実施形態に係る放射角度変換素子10においては、ガラス基板12の一方の主面上の中央の部分に樹脂層14が設けられており、その外側にはガラス基板12の一方の主面上に樹脂層14が設けられていない部分18が存在している。すなわち、放射角度変換素子10においては、ガラス基板12の一方の主面全体にわたって樹脂層14が形成されておらず、樹脂層14の周囲にガラス基板12の表面が露出した部分18が存在している。このガラス基板12の表面が露出した部分18は、放射角度変換素子10を筐体に実装する際に、放射角度変換素子10と筐体とを接合する接合部分18となる。
【0026】
ガラス基板12の幅をL、接続部分18の幅をLとしたとき、LとLの関係は、0.01L≦L≦0.3L、であり、望ましくは、0.05L≦L≦0.2Lであり、より望ましくは、0.1L≦L≦0.15Lである。Lが0.01Lより小さいと、充分な接着強度、密閉性を得るための接続面積が得られない。一方、Lが、0.3Lより大きいと、接続部分の面積が大きくなりすぎて、素子の小型化に支障が生じる。
【0027】
図4は、本発明の第1実施形態に係る放射角度変換素子10を用いた発光装置20を示す概略断面図である。この発光装置20は、筐体22と、発光素子24と、放射角度変換素子10とを備える。
【0028】
筐体22は、セラミックスで形成され、上面が開放された箱形状を有する。筐体22の底面22a上には発光素子24が固定されている。発光素子24としては、面発光レーザ(VCSEL)のほか、FP型の半導体レーザや発光ダイオード(LED)、YAG等の固体レーザ、エキシマレーザ等のガスレーザ、あるいはメタルハライドランプ等の放電ランプも使用することができる。
【0029】
放射角度変換素子10は、蓋をするように筐体22に接合され、これにより発光素子24が設置される空間が密閉される。放射角度変換素子10は、マイクロレンズアレイ16が形成された面が、発光素子24側に向くように筐体22に設置される。このように形成された発光装置20において、発光素子24から発光した光は、マイクロレンズアレイ16の各マイクロレンズ15によって拡散され、ガラス基板12を通って外部に放射される。ガラス基板12は、マイクロレンズアレイ16の基材となるだけでなく、発光素子24を保護する役割も有しており、その意味でカバーガラスとも呼ばれる。ガラスを用いることは、機械的強度や耐擦傷性の側面から有利である。
【0030】
図5は、図4に示す放射角度変換素子10と筐体22の接合箇所Cの拡大図である。筐体22の開口縁部には、放射角度変換素子10を接合するための段部22bが形成されている。筐体22の段部22bと、放射角度変換素子10の接合部分18とは、接着剤23によって接合されている。
【0031】
ここで、本実施形態に係る放射角度変換素子10においては、接合部分18には樹脂層14が設けられておらず、ガラス基板12が露出しているので、図2で示したような樹脂とセラミックスの接合ではなく、ガラスとセラミックスの接合になる。したがって、樹脂とセラミックスの接合の場合よりも密着性が高くなるので、発光素子24を固定した筐体22と強固に接合することができる。
【0032】
また、ガラスとセラミックスの接合は、樹脂とセラミックスの接合の場合よりも熱膨張係数の差が小さいため、サーマルショックに対する耐性を向上することができる。
【0033】
図6(a)および(b)は、本発明の第2実施形態に係る放射角度変換素子30を説明するための図である。図6(a)は、放射角度変換素子30の平面図である。図6(b)は、図3(a)に示す放射角度変換素子30のA-A断面図である。
【0034】
第2実施形態に係る放射角度変換素子30は、樹脂層14の外側の接合部分18において、ガラス基板12の一方の主面上に金属膜32が形成されている点が、第1実施形態に係る放射角度変換素子10と異なる。
【0035】
金属膜32は一種類の金属あるいは複数の金属の合金からなる単層膜でもよいし、単一の金属からなる金属膜を複数積層した多層膜でもよい。金属膜32を構成する金属の種類としては、Cr、Ni、Pt、Ti、Pd、Auなどが使用されるが、これらに限定されない。多層膜にした場合の一例として、ガラス基板12側から、Cr、Ni、Auの順で成膜したものが挙げられる。金属膜32の厚みは、例えば0.5μmであってよい。
【0036】
ガラス基板12の幅をL、接続部分18の幅をL、金属膜32の幅をL、としたとき、L、LとLの関係は、L=L、0.01L≦L≦0.3L、であり、望ましくは、0.05L≦L≦0.2Lであり、より望ましくは、0.1L≦L≦0.15Lである。Lが0.01Lより小さいと、半田44による接合面積が充分に得られず、強固な接合強度を得にくくなる可能性がある。一方、Lが、0.3Lより大きいと、接続部分の面積が大きくなりすぎて、素子の小型化に支障が生じる。
【0037】
図7は、本発明の第2実施形態に係る放射角度変換素子30を用いた発光装置40を示す概略断面図である。この発光装置40も、セラミックス製の筐体22と、発光素子24と、放射角度変換素子30とを備える。
【0038】
図8は、図7に示す放射角度変換素子30と筐体22の接合箇所Cの拡大図である。図8に示すように、筐体22の開口縁部には、放射角度変換素子30を接合するための段部22bが形成されており、該段部22b上には金属膜42が形成されている。金属膜42は、めっきや蒸着などの方法で形成されてよい。
【0039】
上述したように、第2実施形態に係る放射角度変換素子30は、接合部分18において、ガラス基板12上に金属膜32が形成されている。したがって、放射角度変換素子30側の金属膜32と、筐体22側の金属膜42とを半田44により接合することができるので、強固な接合強度を得ることができる。
【0040】
図9(a)および(b)は、本発明の第3実施形態に係る放射角度変換素子50を説明するための図である。図9(a)は、放射角度変換素子50の平面図である。図9(b)は、図9(a)に示す放射角度変換素子50のA-A断面図である。
【0041】
第3実施形態に係る放射角度変換素子50は、接合部分18において、樹脂層14の外側に金属膜32が形成され、金属膜32のさらに外側にガラス基板12の露出部分52が設けられている点が、第1実施形態に係る放射角度変換素子10と異なる。言い換えると、第3実施形態に係る放射角度変換素子50においては、接合部分18のうち、内側の部分のみに金属膜32が形成されており、外側の部分はガラス基板12の表面が露出している。接合部分18のうち、金属膜32の領域と露出部分52の領域との比は、5:1~1:5であってよい。
【0042】
ガラス基板12の幅をL、接続部分18の幅をL、金属膜32の幅をL、露出部分52の幅をL、としたとき、L、L、LとLの関係は、L=L+L、0.01L≦L+L≦0.3L、であり、望ましくは、0.05L≦L+L≦0.2Lであり、より望ましくは、0.1L≦L+L≦0.15Lである。L+Lが0.01Lより小さいと、充分な接着強度、密閉性を得るための接続面積が得られない。一方、L+Lが、0.3Lより大きいと、接続部分の面積が大きくなりすぎて、素子の小型化に支障がでる。さらに、LとLは、以下を満足しても良い。0.01L≦L≦10L、望ましくは、0.05L≦L≦L、より望ましくは、0.10L≦L≦0.5L2。が0.01Lより小さいと、切断時に充分なトレランスがとりにくくなる可能性がある。一方、Lが10Lより大きいと、半田44による接合面積が充分に得られず、強固な接合強度を得にくくなる可能性がある。
【0043】
金属膜32は一種類の金属あるいは複数の金属の合金からなる単層膜でもよいし、単一の金属からなる金属膜を複数積層した多層膜でもよい。金属膜32を構成する金属の種類としては、Cr、Ni、Pt、Ti、Pd、Auなどが使用されるが、これらに限定されない。多層膜にした場合の一例として、ガラス基板12側から、Cr、Ni、Auの順で成膜したものが挙げられる。金属膜32の厚みは、例えば0.5μmであってよい。
【0044】
一般的に、放射角度変換素子は、マイクロレンズアレイの形成領域より大きいガラス基板を用意し、少なくとも一方の主面にマイクロレンズアレイを成形した後、所定のサイズになるようにガラス基板を切断することにより作製される。一枚の大きなガラス基板の少なくとも一方の面上に複数の放射角度変換素子を配置するように形成し、それから個々の放射角度変換素子を切り出すという手法である。ガラス基板の切断方法としては、回転する砥石を使用する方法や、レーザを利用して割断する方法、ガラスカッターのようにダイヤモンド等でケガキ線をつけてから機械的に割断する方法などがある。ガラス基板の回転する砥石を使用して切断する方法の場合は、切断部分に樹脂層が存在していると、樹脂層に高速回転する砥石が接触するため、その部分からマイクロレンズアレイを構成する樹脂層が剥離するという現象が見られることがある。レーザ光を使用して切断する方法の場合は、ガラス基板の切断部分に樹脂層や金属膜が存在していると、レーザ照射時に樹脂層や金属膜にもレーザが照射され、樹脂層に形成されたマイクロレンズの一部が溶融あるいは蒸発し、その部分が欠点となる場合がある。さらに、ダイヤモンド等でケガキ線をつけてから機械的に割断する方法の場合、切断部分に樹脂層や金属膜があると、その下のガラス基板にケガキ線がつきにくくなり、その結果、切断不良が発生しやすくなる。
【0045】
第3実施形態に係る放射角度変換素子50においては、接合部分18における金属膜32の外側にガラス基板12の露出部分52が形成されているので、砥石やレーザ照射、カッターの先端はガラス基板12に直接作用する。その結果、金属膜32や樹脂層14にダメージを与えることがなく、それにより収率の低下や切断作業時の異物の混入に由来する不良品などの発生を抑制することができる。
【0046】
次に、放射角度変換素子の製造方法を述べる。ただし、以下の説明は、本発明に係る放射角度変換素子の製造方法を限定するものではない。
【0047】
放射角度変換素子は、いわゆるステップアンドリピート法で作製することができる。ステップアンドリピート法とは、所定の大きさのモールドを使って、基板上に部分的に構造体を形成し、成形位置をずらしながら成形を繰り返すことで、基板全面に構造体を形成する方法である。当該方法の手順等は、特開2014-188869号公報、特開2014-13902号公報、特開2010-245470号公報、特開2010-80632号公報、特開2008-168641号公報、特開2007-103924号公報、特開2007-103924号公報、特開2006-245072号公報などが参考としてあげられる。
【0048】
マイクロレンズ等の構造体を基板上に形成する方法では、ガラス基板より小さい型(モールド)を用意し、ガラス基板上に光硬化型の樹脂層を有するワークと、モールド(表面に所定のレンズ形状が形成されている)を合わせて、両者の間に樹脂を充填させ、その部分に紫外光を照射することで、樹脂を硬化させる。このとき、紫外光を照射する場所をモールド直下のみとする。このような転写をガラス基板内で逐次行っていくことで、ガラス基板上の全面に所定のパターンを形成することができる。
【0049】
モールドの製法には様々なものがある。たとえば、Ni等の金属に機械加工によってレンズ形状を形成したもの、フォトリソグラフィにより、ガラスあるいは半導体基板上に感光性樹脂からなるレンズ形状を形成したもの、あるいは、それらの金型から電鋳により複製されたもの、さらには、それらの金型を用いて感光性樹脂を成形したものなどが使用される。以下の製造方法の例では、レーザ描画によりマイクロレンズアレイのレジストパターンを作製し、それを電鋳処理することで得られる金属製のモールドを使用した。
【0050】
図10(a)~(g)は、放射角度変換素子の製造プロセスの一例を示す。まず、図10(a)に示すように、用意したガラス基板12の一方の主面上の所定の場所に、所定量の紫外線硬化樹脂60を滴下する。次に、図10(b)に示すように、ガラス基板12の主面に平行な面で金型(モールド)62の位置合わせを行う。次に、図10(c)に示すように、ガラス基板12とモールド62との間に紫外線硬化樹脂60を充填させるようにモールド62を押圧する。そして、モールド62を押圧しながらモールド62のサイズに対応した照射サイズで規定された領域に紫外線を照射する。次に、図10(d)に示すように、モールド62を離型する。次に、図10(e)に示すように、ガラス基板12上で場所を変えて、図10(a)~図10(d)の工程を繰り返す。これらの工程を繰り返すことにより、図10(f)に示すように、ガラス基板12の全面に多数の放射角度変換素子が形成される。必要に応じて、その後熱処理を行ってもよい。また、モールド62には離型処理を行う場合がある。最後に、図10(g)に示すようにガラス基板12を切断することにより、図3(a)および(b)に示す放射角度変換素子10が得られる。
【0051】
図11(a)~(g)は、放射角度変換素子の別の製造プロセスの一例を示す。図10(a)~(g)に示す製造プロセスと異なる点は、放射角度変換素子を成形する前のガラス基板12の一部に予め金属膜32のパターンを形成しておく点である。この場合、金属膜32のパターンが、紫外線を照射する際の遮光膜の機能も有するので、モールド62の外に染み出した紫外線硬化樹脂60が硬化しないというメリットがある。モールド62を透光性の材料とすれば、紫外線をモールド裏面側から照射することができ、金属膜32と紫外線硬化樹脂60の一部を重ねることもできる。図11(g)に示すように、ガラス基板12を切断することにより、図6(a)および(b)に示す放射角度変換素子30が得られる。
【0052】
図12(a)~(g)は、放射角度変換素子のさらに別の製造プロセスの一例を示す。放射角度変換素子を成形する前のガラス基板12の一部に予め金属膜32のパターンを形成しておく点は、図11(a)~(g)に示す製造プロセスと同一であるが、本製造プロセスは、金属膜32の外側に、金属膜32を形成しない部分(ガラス基板12の表面が露出した部分)を作っておく点が図11(a)~(g)に示す製造プロセスと異なる。図12(g)に示すように、金属膜32の外側のガラス基板12の露出部分を切断することにより、図9(a)および(b)に示す放射角度変換素子50が得られる。
【0053】
上述の製造プロセスでは、ガラス基板12上に適量の紫外線硬化樹脂60を滴下し、それとモールド62とを合わせる例を示したが、逆に未硬化の紫外線硬化樹脂60をモールド62に滴下して、それをガラス基板12と合わせてもよい。
【0054】
さらに、ガラス基板12を切断する前にマイクロレンズアレイ16の表面、あるいはガラス基板12の裏面(マイクロレンズアレイ16が形成されていない面)、あるいはそれらの両方に減反射コーティング(ARコーティング)を行ってもよい。
【0055】
ガラス基板12上への金属膜32のパターニング方法としては、金属膜をめっき法、スパッタ法あるいは蒸着法などにより成膜し、その上にフォトリソグラフィ法によってレジストパターンを成形して、そのレジストパターンをマスクとして、エッチングにより不要な金属膜を除去する方法がある。あるいは、金属膜を成膜する前にガラス基板12上にレジストパターンを形成しておき、その上に金属膜を成膜した後、レジストとその上に成膜された金属膜を除去する方法(リフトオフ法)がある。
【0056】
金属膜32の種類は、ガラスとの付着力やシール性あるいは封止材との密着性等を考慮して適宜選択される。単一の金属からなる場合もあるし、各部の密着性を考慮して多層膜とする場合もある。例えば、ガラス基板12側から、Cr、Ni、Auの順で成膜した3層膜が使用される。もちろん金属の組合せはこれに限ることなく、さまざまな金属膜およびそれらを組み合わせたものから選択される。
【0057】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、入射ビームの放射角度を変換する放射角度変換素子に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10,30,50 放射角度変換素子、 12 ガラス基板、 14 樹脂層、 15 マイクロレンズ、 16 マイクロレンズアレイ、 18 接合部分、 20,40 発光装置、 22 筐体、 24 発光素子、 32,42 金属膜、 52 露出部分、 60 紫外線硬化樹脂、 62 モールド。
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