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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 27/08 20060101AFI20240711BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B01D27/08
B01D29/10 501C
B01D29/10 501Z
B01D29/10 510C
B01D29/10 501A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021529040
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2019081063
(87)【国際公開番号】W WO2020104260
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】102018009187.3
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004689
【氏名又は名称】ハイダック フィルターテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】フォルクマー クライン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘンネス
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0161703(US,A1)
【文献】特表2016-506868(JP,A)
【文献】特表2010-502438(JP,A)
【文献】特表2012-520164(JP,A)
【文献】特表2005-521547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0168390(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタハウジング(2)と、前記フィルタハウジング内に収容されたフィルタエレメント(15)とを備えたフィルタ装置であって、前記フィルタエレメントのエレメント材料(44)が、液体を濾過するために2つのエンドキャップ(40,42)の間に延びており、前記エンドキャップのうちの少なくとも一方のエンドキャップ(40)がエレメント収容体(14)に支承されており、2以上の自由度を利用し得る支承体よって、前記フィルタエレメント(15)が前記フィルタエレメントの一方のエンドキャップ(40)を介して、前記エレメント収容体(14)に枢着式に支承されているものにおいて、
前記支承体が、凸面状に延びる支承面(46)を有し、前記支承面が凹面状に延びる支承面(54)内で案内されており、そしてそれぞれの支承面(46,54)がシェル(55a,55b)の構成部分であり、前記シェルのうちの少なくとも1つ(55b)が液体のための貫流部(55c)を有していることを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項2】
前記凸面状に延びる前記支承面(46)がそれぞれ前記エレメント収容体(14)の部分であり、そして前記凹面状に延びる支承面(54)がそれぞれ前記一方のエンドキャップ(40)の部分であることを特徴とする、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
嵌め込み結合又はクリップ結合の形式で互いに当接して位置する2つの前記支承面(46,54)が球面状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記エレメント収容体(14)が前記フィルタハウジング(2)内に、じ結合部分(12,26)によって固定されていることを特徴とする、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタエレメント(15)の長手方向軸線が部分的に、前記エレメント収容体(14)の長手方向軸線から全ての方向に、規定可能な旋回角だけ、球面状の前記支承面(46,54)によって旋回可能であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記フィルタエレメント(15)の最大限可能な変向角を制限するブロック装置(30,61)が設けられており、前記ブロック装置(30,61)が前記フィルタエレメント(15)のエンドキャップ(40)と前記エレメント収容体(14)との間で作用し、前記エンドキャップ及び前記エレメント収容体の両方によって形成されていることを特徴とする、請求項からまでのいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
さらなるブロック装置(64,66,68,70)が設けられており、前記さらなるブロック装置が、前記フィルタエレメント(15)のエレメント収容体(14)を、前記フィルタハウジング(2)の内部に配置されたハウジング収容体(6)にねじ被せるときには、前記一方のエンドキャップ(40)及び対応するエレメント収容体(14)の長手方向軸線が互いに整合している基礎位置からの旋回運動を阻止し、そして前記エレメント収容体(14)が前記ハウジング収容体(6)に固定されると、そして前記エレメント収容体(14)に対して前記一方のエンドキャップ(40)をじ被せ方向にさらに回転運動させると、前記さらなるブロック装置(64,66,68,70)が前記基礎位置からの旋回運動を自由にすることを特徴とする、請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記フィルタエレメント(15)の他方の前記エンドキャップ(42)が、前記フィルタハウジング(2)の内部の別のハウジング収容体(74)に固定されており、そして、前記別のハウジング収容体(74)がウジング蓋(78)の構成部分であり、前記ハウジング蓋が、前記フィルタハウジング(2)の部分としてフィルタヘッド(80)上に、なくとも1つのねじ結合部分(84)によって固定されていることを特徴とする、請求項7に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
1つの前記ハウジング収容体(6)が少なくとも1つのばね負荷型のバイパス弁(24)を有しており、前記バイパス弁が開位置では、前記フィルタエレメント(15)を少なくとも部分的に迂回しながら、前記フィルタハウジング(2)の内部からの流路を前記フィルタハウジングの出口(4)で解放することを特徴とする、請求項7に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
ィルタエレメント(15)であって、前記フィルタエレメントのエレメント材料(44)が、液体を濾過するために2つのエンドキャップ(40,42)の間に延びており、前記エンドキャップのうちの少なくとも一方のエンドキャップ(40)がエレメント収容体(14)に支承されており、2以上の自由度を利用し得る支承体によって、前記フィルタエレメント(15)が前記フィルタエレメントの一方のエンドキャップ(40)を介して、前記エレメント収容体(14)に枢着式に支承されているものにおいて、
前記支承体が、凸面状に延びる支承面(46)を有し、前記支承面が凹面状に延びる支承面(54)内で案内されており、そしてそれぞれの支承面(46,54)がシェル(55a,55b)の構成部分であり、前記シェルのうちの少なくとも1つ(55b)が液体のための貫流部(55c)を有していることを特徴とする、フィルタエレメント(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタハウジングと、フィルタハウジング内に収容されたフィルタエレメントとを備えたフィルタ装置であって、フィルタエレメントのエレメント材料が、液体を濾過するために2つのエンドキャップの間に延びており、前記エンドキャップのうちの少なくとも一方のエンドキャップがエレメント収容体に支承されており、2以上の自由度を利用し得る支承体によって、フィルタエレメントがフィルタエレメントの一方のエンドキャップを介して、エレメント収容体に枢着式に支承されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ装置は従来技術において公知であり、例えば特許文献1(独国特許出願公開第10142774号)明細書を参照されたい。上記文献のように、エレメント収容体がハウジング部分、例えばハウジング管片及び/又はハウジング蓋に設けられた管片と形状結合しているようなフィルタ装置の場合には、フィルタハウジング及びフィルタハウジング部分の製造時には、極めて狭い製造誤差を保つことにより、エンドキャップのそれぞれのエレメント収容体の軸線と、ハウジング側及び/又は蓋側の保持エレメント、例えば管片の軸線とが正確に整合することを保証しなければならない。ハウジング製造時には、とりわけ複数のハウジング部分が互いに組み付けられる、複数部分から成る構造形式でハウジングを組み立てるときには、整合誤差が生じるおそれがある。この整合誤差によって、フィルタエレメントに歪みが生じ、この歪みは結果として誤機能又は損傷を招く。特に、長いフィルタエレメントを備えたフィルタ装置はこのような問題に遭遇する。それというのもこの場合には、最も小さな角度誤差及び位置偏差でさえも、対向する保持エレメントに既に大きなずれをもたらすことを意味するからである。
【0003】
さらなるフィルタ装置は、特許文献2(国際公開第02/076570号)、特許文献3(国際公開第2007/003517号)、及び特許文献4(独国特許出願公開第102014002241号明細書)に由来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第10142774号明細書
【文献】国際公開第02/076570号
【文献】国際公開第2007/003517号
【文献】独国特許出願公開第102014002241号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題点に照らして、本発明の課題は、合理的且つ低廉に製造できると同時に、確実な運転挙動を特徴とする、冒頭で述べた形式のフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、このような課題は、請求項1の特徴を全体として有するフィルタ装置によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の特徴部によれば、本発明の主要な特質は、支承体が、凸面状に延びる支承面を有し、支承面が凹面状に延びる支承面内で案内されており、そしてそれぞれの支承面がシェルの構成部分であり、シェルのうちの少なくとも1つが液体のための貫流部を有していることにある。
【0008】
シェルとは本発明に意味において、そして技術機械の定義の意味において、面状の支持構造であって、二重に空間的に湾曲しており、そして具体的には負荷を直角にもその平面内でも吸収し得るものと理解される。シェルは、シェルの厚さ全体にわたって一定である膜力を介して荷重を分配することにより、その耐荷重能力を最適に活用するので、シェルは僅かな重量で高い剛性を有する。
【0009】
シェルを介した支承のこのような構成の特別な利点は、貫流部がフィルタエレメントの外側の、フィルタ装置の未処理側に対してシールされることにある。
【0010】
さらに、2以上の自由度を利用し得る支承体によって、フィルタエレメントがその一方のエンドキャップを介して、エレメント収容体に枢着式に支承されている。これにより、生じ得るずれ誤差を補償することができるので、製造の際に狭く保たれるべき製造誤差限界の軽減が可能になり、ひいては長い構造のフィルタエレメント又は組立式のフィルタハウジングを有するフィルタ装置も確実に運転され、そしてこのようなフィルタ装置を申し分のない製造コストで製造することができる。
【0011】
支承体が少なくとも1つの凸面状に延びる支承面を有しており、支承面が、少なくとも1つの凹面状に延びる支承面内で案内されるように、配置を為し得ると有利である。それぞれのエンドキャップとエレメント収容体との間に一種のボールジョイントが形成されるように、球面状支承体が形成されるので、整合誤差を歪みなしに補償することができる。
【0012】
それぞれ凸面状に延びる支承面はエレメント収容体の部分であってよく、それぞれ凹面状に延びる支承面が前記一方のエンドキャップの部分である。これによりエレメント収容体が球形状であると、フィルタエレメントの支承面はエレメント収容体の支承面上に容易に被せ嵌めることができる。
【0013】
有利な実施例では、嵌め込み結合又はクリップ結合の形式で互いに当接して位置する両支承面は、球面状に形成されている。互いに対応する湾曲はこれにより、エンドキャップによってエレメント収容体上に被せ嵌められたフィルタエレメントを軸線方向に固定する。
【0014】
有利な実施例の場合、エレメント収容体はフィルタハウジング内に、有利にはねじ結合部分によって固定されている。フィルタエレメントの長手方向軸線は部分的に、エレメント収容体の長手方向軸線から全ての方向に、規定可能な旋回角だけ球面状支承体によって旋回可能である。
【0015】
特に有利な実施例の場合、フィルタエレメントの最大限可能な変向角を制限するブロック装置が設けられており、ブロック装置がフィルタエレメントのエンドキャップとエレメント収容体との間で作用し、エンドキャップ及びエレメント収容体の両方によって形成されている。フィルタエレメント及びエレメント収容体からのユニットの最大傾斜位置を制限することにより、フィルタエレメントをフィルタハウジング内へ挿入する際のハンドリングを容易にする。
【0016】
さらなるブロック装置が設けられており、ブロック装置が、フィルタエレメントのエレメント収容体を、フィルタハウジングの内部に配置されたハウジング収容体にねじ被せるときには、一方のエンドキャップ及び対応するエレメント収容体の長手方向軸線が互いに整合している基礎位置からの旋回運動を阻止し、そしてエレメント収容体がハウジング収容体に固定されると、そしてエレメント収容体に対して前記一方のエンドキャップを有利にはねじ被せ方向にさらに回転運動させると、前記さらなるブロック装置が基礎位置からの旋回運動を自由にするような配置を為し得ると特に有利である。従って、有効な状態にあるさらなるブロック装置によって、フィルタエレメントをフィルタハウジング内へ組み込むために、フィルタエレメントはエレメント収容体と一緒に、軸線が整合した剛性的なユニットとして提供される。このことは組み付け動作時に特に有効な組み付け手段を形成する。組み付け動作時には、エレメント収容体を、ハウジング内部のアクセス性が悪いハウジング収容体のねじ山と係合させなければならない。ブロック装置がフィルタエレメントのねじ被せ回転の経過中には無効化されるので、組み込み-螺合動作の終了に伴って球面状支承体が、生じ得る整合誤差の補償のために有効になることも同時に保証されている。
【0017】
有利な実施例では、フィルタエレメントの前記他方のエンドキャップが、フィルタハウジングの内部の別のハウジング収容体に固定されており、前記別のハウジング収容体は有利にはハウジング蓋の構成部分であり、ハウジング蓋は、フィルタハウジングの部分としてフィルタヘッド上に、特に少なくとも1つのねじ結合部分によって固定されている。前記さらなるハウジング収容体はハウジング蓋の管片によって形成されていてよい。この管片は、フィルタエレメントの対応するエンドキャップの開口内に係合する。管片はこのエンドキャップのクロージャ、又は流路を形成することができる。流路はフィルタヘッドからフィルタエレメントの内部内へ延びている。
【0018】
前記1つのハウジング収容体が少なくとも1つのばね負荷型のバイパス弁を有することができ、バイパス弁がその開位置では、フィルタエレメントを少なくとも部分的に迂回しながら、フィルタハウジングの内部からの流路をフィルタハウジングの出口で解放すると有利である。流路は、前記一方のエンドキャップによって形成された、ハウジング収容体においてシールされたキャビティを介して案内されていてよい。キャビティは、バイバス弁の開放時に通流される篩織布を含んでいる。
【0019】
請求項11によれば、本発明の対象はさらに、特に請求項1から10までのいずれか1項に記載のフィルタ装置のために提供されたフィルタエレメントである。
【0020】
図面に示された実施例に基づいて以下に本発明を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明のフィルタ装置を、中心の鉛直方向断面で断面した状態で示す斜視図である。
図2図2は、実施例のフィルタエレメントのエンドキャップ及びエンドキャップに対応するエレメント収容体を示す、中心鉛直方向平面で断面された拡大斜視図である。
図3図3は、実施例の2つのブロック装置の領域を、両方ともブロック位置にある状態で示す、図2とは別の拡大斜視図である。
図4図4は、ブロック装置のうちの1つが解放位置にある状態で示す、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照しながら、インタンク・フィルタ装置の例を挙げて本発明を説明する。フィルタ装置2は、下端部4で開いた管体の形態でフィルタハウジング2を有している。本発明は、両側で閉じたフィルタポットの形態でフィルタハウジングが設けられているフィルタ装置においても同様に有利に実現することができる。下端部4の近くでは、フィルタハウジング2の管体の内側にハウジング収容体6が固定されている。ハウジング収容体6は、同軸的な内側貫通路8を備えた、2部分から成るリング体によって形成されている。上側部分10では、貫通路8は、上方へ向かって突出するねじ山付き管片12とともに続いている。ねじ山付き管片の雄ねじ山とは、エレメント収容体14のねじ山付きリング26の雌ねじ山が、フィルタエレメント15を支承するために螺合することができる。雌ねじ山を介して、エレメント収容体14はフィルタハウジング2内に解離可能に固定することができる。ハウジング収容体6の下側部分16内には、中心の貫通路8の外側の周りに分配された弁チャンバ18がバイパス弁のために形成されている。バイパス弁は、上側部分10の上側円環面20から下側部分16の貫流路22への貫流路を有している。貫流路22は、ばね負荷型の閉鎖体24によって通常は閉じられている。
【0023】
図1はフィルタエレメント15を、組み付けられた機能位置で示している。機能位置では、エレメント収容体14から同軸的に下方へ向かって突出するねじ山付きリング26が、ハウジング収容体6のねじ山付き管片12と螺合している。締め付け螺合時には、ねじ山付きリング26の端部28(図2参照)は上側部分10の円環面20に当接している。図2から最も明らかに判るように、ねじ山付きリング26は、エレメント収容体14の、半径方向平面内で延びる平らな環状のカバー面30の下側から延びている。このカバー面の外周面からは、鐘形の外套32がねじ山付きリング26の方向に延びている。外套32は壁貫通部34を有しており、外套自体とねじ山付きリング26との間に環状室36を形成している。図1に示された螺合された機能位置では、外套32の下側リング縁部38は、ねじ山付きリング26の端部28と同様に、ハウジング収容体6の上側部分10の円環面20に当接している。
【0024】
フィルタエレメント15は通常の場合、エンドキャップ40及び42の間に延びるエレメント材料44を中空円筒形態で有している。エンドキャップ40,42のうち、図1の下側に位置するエンドキャップ40はエレメント収容体14に支承されている。支承体を形成するために、エレメント収容体14(図2~4参照)は、カバー面30から出発して、同軸的に上方へ向かって突出する管体48を有している。管体48の半径方向外側に位置する壁は、凸面状に湾曲した環状面の形態を成す支承面46を形成している。エンドキャップ40は、エレメント材料44の端面側の端部のための平らな当接面50の半径方向内側の縁部から出発して、上方及び下方へ向かって突出する管体52を有している。管体の半径方向内側に位置する壁は、凹面状に湾曲する環状面の形態を成す第2の支承面54を形成している。
【0025】
図面(具体的には図2参照)は、支承状態を示している。この状態では、エンドキャップ40の管体52はエレメント収容体14の管体48に被せ嵌められている。互いに当接する支承面46,54を有する支承体は、具体的にはカバー面30上に無支持の状態で起立する管体48の弾性的な従動性に基づき、クリップ結合されている。凸面状支承面46が凹面状の支承面54に当接することにより、エンドキャップ40とエレメント収容体14との間にボールジョイントの形式の球面状支承体が形成されている。それぞれの支承面46,54は膜状のシェル55a,55bの構成部分であり、これらのシェルのうちの少なくとも一方のシェル55bは、液体のための貫流部55cを有している。この貫流部はフィルタエレメント内の中空室55dと流体案内接続されている。エンドキャップ40の当接面50上に当接するエレメント材料44のための囲いは、半径方向内側で管体52によって、そして半径方向外側で外套面56によって形成されている。外套面は上方へ向かって半径方向に拡大してシェル58になる。シェル58はエレメント材料44の端区分を半径方向の間隔を置いて取り囲んでいる。
【0026】
形成された球面状支承体は、図1及び2に示されているような整合基礎位置から、フィルタエレメント15に対してエレメント収容体14の長手方向軸線を変向させるのを可能にする。このような整合位置では、エンドキャップ40の管体52の下縁部61は、エレメント収容体14のカバー面30から間隔を置いて位置している。これに対して図3及び4は、変向させた状態を示しており、より正確に述べるならば、リング体52の下縁部60が、ストッパを形成するエレメント収容体14のカバー面30に当接している最大限可能な変向状態を示している。これにより、最大変向を制限するブロック装置が形成されている。
【0027】
図2~4は、さらなるブロック装置の詳細を示している。さらなるブロック装置は、エレメント収容体14の管体48の上側端縁部60及びエンドキャップ40の管体52の上側端縁部62の構成によって形成されている。図示のように、このようなブロック装置は遮断ブロック64を有している。遮断ブロックは、方形の短いリブの形態を成して、管体52の端縁部62の内側で半径方向内側へ向かって突出している。内側に位置する他方の管体48の端縁部60には切り欠き66が形成されている。この切り欠きは段部68及び70(具体的には図3及び4参照)を成して、管体48のそれぞれ1つの周囲区分にわたって延びている。第1段部68と一緒に、切り欠き66は端縁部62の軸線方向凹部を形成している。軸線方向凹部は、遮断ブロック64の軸線方向厚さに相当し、そして周方向において、段部面から僅かに突出する突起72によって、遮断ブロック64の周方向で測定された長さよりも僅かだけ大きい周方向長さに制限されている(図3参照)。第1段部68に続いて、突起72の次に第2段部70が設けられている。第2段部によって、端縁部62は軸線方向にさらに沈め込まれており、第1段部68よりも大きい周方向長さを有している。
【0028】
このような配置の場合、このようなさらなるブロック装置の機能は次の通りである。図2及び3は、エンドキャップ40を備えたフィルタエレメント15の軸線がエレメント収容体14の長手方向軸線と整合している基礎位置を示している。エンドキャップ40の遮断体64は、エレメント収容体14の管体48の切り欠き66の第1段部68内に位置している。第1段部68の軸線方向の延びが遮断ブロック64の軸線方向に測定された厚さに相当するので、球面状支承体は変向をブロックされている。同時に、突起72が遮断ブロック64の周方向における摺動を妨げるので、このような基礎位置では、フィルタエレメント15とエレメント収容体14との間の回転ロックが形成されている。従って、基礎位置においては、フィルタハウジング2内へのフィルタエレメント15の組み込みのための組み付け動作時に、フィルタエレメント15は、フィルタエレメントと一緒に剛性的なユニットを形成するエレメント収容体14によって、ハウジング収容体6のねじ山付きリング26に楽に且つ確実に当てることができ、そして形成された回転ロックによって固く螺合させることができる。螺合状態が形成されると、さらなる回転によって、突起72によって形成された回転ロックを克服することができるので、遮断ブロック64は突起72を乗り越え、切り欠き66の第2段部70によって形成された自由空間内に達する。段部70の軸線方向深さがより大きいことに基づき、遮断ブロック64はもはや軸線方向には支持されていないので、球面状支承体は解放され、第1ブロック装置によって形成された限界内で整合誤差の補償のために変向させることができる。
【0029】
他方の上側エンドキャップ42は、図示の実施例(図1参照)では、エレメント収容体と係合している。エレメント収容体は管片74によって形成されている。管片74はエンドキャップ42の中心開口76と係合している。このような形状結合的な係合の代わりに、上側エンドキャップ42と当該エレメント収容体との間に、下側エンドキャップ40のところで示された種類の球面状支承体が設けられていてもよい。図示の例において設けられた管片74は、ハウジング蓋78の構成部分である。ハウジング蓋はねじ結合部分85によって取り外し可能にフィルタヘッド80に固定されている。フィルタヘッドは未濾過物入口82を有しており、そしてインタンク・フィルタ装置では普通であるように、図示されていないタンク壁内の開口に取り付けられている。図1に示された機能位置において、ねじ山付きリング26の端部28及びエレメント収容体14の端縁部38は、ハウジング収容体6の円環面20に密に当接している。未濾過物がハウジング収容体6の下側部分16内のバイパス弁へ接近するために、外套32内部に位置する環状室36は、未濾過物が壁貫通部34を介して達する流入室を形成している。このような環状室36の底部を形成する円環面20には、開口84が設けられている。開口はそれぞれのバイバス弁の閉鎖体24によって通常は閉じられている。外套32の壁貫通部34には、射出成形された篩格子が設けられていてよい。篩格子はバイバス弁が圧力作動式に開かれると、未濾過物流を濾過する。図示されていない実施形態において、提示した球面状支承体を下方から上方のエレメント端部に移動させること、又は両エレメント端部にこのような支承体を設けることも可能である。
なお、本開示には以下の態様も含まれる。
〔態様1〕
フィルタハウジング(2)と、前記フィルタハウジング内に収容されたフィルタエレメント(15)とを備えたフィルタ装置であって、前記フィルタエレメントのエレメント材料(44)が、液体を濾過するために2つのエンドキャップ(40,42)の間に延びており、前記エンドキャップのうちの少なくとも一方のエンドキャップ(40)がエレメント収容体(14)に支承されており、2以上の自由度を利用し得る支承体(46,54)によって、前記フィルタエレメント(15)が前記フィルタエレメントの一方のエンドキャップ(40)を介して、前記エレメント収容体(14)に枢着式に支承されているものにおいて、
前記支承体が、凸面状に延びる支承面(46)を有し、前記支承面が凹面状に延びる支承面(54)内で案内されており、そしてそれぞれの支承面(46,54)がシェル(55a,55b)の構成部分であり、前記シェルのうちの少なくとも1つ(55b)が液体のための貫流部(55c)を有していることを特徴とする、フィルタ装置。
〔態様2〕
前記支承体が少なくとも1つの凸面状に延びる支承面(46)を有しており、前記支承面が、少なくとも1つの凹面状に延びる支承面(54)内で案内されていることを特徴とする態様1に記載のフィルタ装置。
〔態様3〕
前記凸面状に延びる前記支承面(46)がそれぞれ前記エレメント収容体(14)の部分であり、そして前記凹面状に延びる支承面(54)がそれぞれ前記一方のエンドキャップ(40)の部分であることを特徴とする、態様1又は2に記載のフィルタ装置。
〔態様4〕
嵌め込み結合又はクリップ結合の形式で互いに当接して位置する2つの前記支承面(46,54)が球面状に形成されていることを特徴とする、態様1から3までのいずれか1つに記載のフィルタ装置。
〔態様5〕
前記エレメント収容体(14)が前記フィルタハウジング(2)内に、有利にはねじ結合部分(12,26)によって固定されていることを特徴とする、態様1から4までのいずれか1つに記載のフィルタ装置。
〔態様6〕
前記フィルタエレメント(15)の長手方向軸線が部分的に、前記エレメント収容体(14)の長手方向軸線から全ての方向に、規定可能な旋回角だけ、球面状の前記支承体(46,54)によって旋回可能であることを特徴とする、態様1から5までのいずれか1つに記載のフィルタ装置。
〔態様7〕
前記フィルタエレメント(15)の最大限可能な変向角を制限するブロック装置(30,61)が設けられており、前記ブロック装置(30,61)が前記フィルタエレメント(15)のエンドキャップ(40)と前記エレメント収容体(14)との間で作用し、前記エンドキャップ及び前記エレメント収容体の両方によって形成されていることを特徴とする、態様1から6までのいずれか1つに記載のフィルタ装置。
〔態様8〕
さらなるブロック装置(64,66,68,70)が設けられており、前記さらなるブロック装置が、前記フィルタエレメント(15)のエレメント収容体(14)を、前記フィルタハウジング(2)の内部に配置されたハウジング収容体(6)にねじ被せるときには、前記一方のエンドキャップ(40)及び対応するエレメント収容体(14)の長手方向軸線が互いに整合している基礎位置からの旋回運動を阻止し、そして前記エレメント収容体(14)が前記ハウジング収容体(6)に固定されると、そして前記エレメント収容体(14)に対して前記一方のエンドキャップ(40)を有利にはねじ被せ方向にさらに回転運動させると、前記さらなるブロック装置(64,66,68,70)が前記基礎位置からの旋回運動を自由にすることを特徴とする、態様1から7までのいずれか1つに記載のフィルタ装置。
〔態様9〕
前記フィルタエレメント(15)の他方の前記エンドキャップ(42)が、前記フィルタハウジング(2)の内部の別のハウジング収容体(74)に固定されており、そして、前記別のハウジング収容体(74)が有利にはハウジング蓋(78)の構成部分であり、前記ハウジング蓋が、前記フィルタハウジング(2)の部分としてフィルタヘッド(80)上に、特に少なくとも1つのねじ結合部分(84)によって固定されていることを特徴とする、態様1から8までのいずれか1つに記載のフィルタ装置。
〔態様10〕
1つの前記ハウジング収容体(6)が少なくとも1つのばね負荷型のバイパス弁(24)を有しており、前記バイパス弁が開位置では、前記フィルタエレメント(15)を少なくとも部分的に迂回しながら、前記フィルタハウジング(2)の内部からの流路を前記フィルタハウジングの出口(4)で解放することを特徴とする、態様1から9までのいずれか1つに記載のフィルタ装置。
〔態様11〕
特に態様1から10までのいずれか1つに記載のフィルタ装置のためのフィルタエレメントであって、前記フィルタエレメントのエレメント材料(44)が内部の中空室(55d)を仕切りながら2つのエンドキャップ(40,42)の間に収容されているものにおいて、少なくとも一方のエンドキャップ(40)が、シェル状の、有利には球面状に形成された支承面(46)を有しており、前記支承面が、液体のための貫流部(55c)を有しており、前記貫流部が前記中空室(55d)と流体案内接続されていることを特徴とする、フィルタエレメント。
図1
図2
図3
図4