(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】高さ調節可能なシート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/26 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B60N2/26
(21)【出願番号】P 2021540871
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2020050665
(87)【国際公開番号】W WO2020148220
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-05
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】リドスモ、エリック
(72)【発明者】
【氏名】アーキヴェスト、アンダース
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19522967(DE,A1)
【文献】実開昭57-182530(JP,U)
【文献】特開平07-149176(JP,A)
【文献】国際公開第2015/167378(WO,A1)
【文献】特開2008-143342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/02,3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の調節可能なシート装置であって、
ベース部(10)と、
後退位置と呼ばれる第1の位置と、伸長位置と呼ばれる第2の位置との間で、前記ベース部(10)に対して移動可能なシート部(20)と、
前記ベース部(10)及び前記シート部(20)に接続された、変形可能な平行四辺形を形成する関節運動システム(30)であって、前記変形可能な平行四辺形に対角に接続された少なくとも1つの対角支持アーム(31)を備える、関節運動システム(30)と、を備え、前記対角支持アーム(31)は、前記シート部(20)が前記第1の位置にあるときには第1の長さを有し、前記シート部(20)が前記第2の位置にあるときには第2の長さを有するように設計されて
おり、
前記対角支持アーム(31)は、
前記シート部(20)が前記第2の位置にあるときに、前記対角支持アーム(31)を前記第2の長さでロックするように構成され、かつ、前記シート部(20)に印加される、通常使用時の力と呼ばれる第1の力で係合し、前記第1の力に耐えるように構成された第1のロック手段(34)と、
前記シート部(20)が前記第2の位置にあるときに、前記対角支持アーム(31)を前記第2の長さでロックするように構成され、かつ、前記シート部(20)に印加される、前記第1の力よりも大きい、車両衝撃時の力と呼ばれる第2の力で係合し、前記第2の力に耐えるように構成された第2のロック手段(35)と、
を備え、
前記第2のロック手段(35)は、前記第2の力が前記シート部に印加されたときにのみ係合されることを特徴とする、車両用の調節可能なシート装置。
【請求項2】
前記対角支持アーム(31)は、前記シート部(20)が前記第2の位置にあるときに、前記シート部(20)のための機械的停止部を提供するように構成される、請求項1に記載の車両用の調節可能なシート装置。
【請求項3】
前記対角支持アーム(31)は、
第1の部分(31A)と、
前記第1の部分(31A)に対して移動可能である第2の部分(31B)と、
を備える、請求項1
又は2に記載の調節可能なシート装置。
【請求項4】
前記第2の部分(31B)は、前記シート部(20)に対して枢動可能に装着され、前記第1の部分(31A)は、前記ベース部(10)に対して枢動可能に装着される、請求項
3に記載の調節可能なシート装置。
【請求項5】
前記関節運動システム(30)は、
前記ベース部(10)の下側前方枢動部(10A)及び前記シート部(20)の上側前方枢動部(20A)に接続された第1の関節アーム(32)と、
前記ベース部(10)の下側後方枢動部(10B)及び前記シート部(20)の上側後方枢動部(20B)に接続された第2の関節アーム(33)と、
を備え、
前記対角支持アーム(31)は、前記シート部(20)の前記上側前方枢動部(20A)及び前記ベース部(10)の前記下側後方枢動部(10B)に接続される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の調節可能なシート装置。
【請求項6】
少なくとも1つの弾性戻り要素(41、42)を備え、前記変形可能な平行四辺形の少なくとも2つの別個の枢動ジョイントはそれぞれ、前記少なくとも1つの弾性戻り要素(41、42)の一部分を備える、請求項1
又は2に記載の調節可能なシート装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの弾性戻り要素(41、42)は、少なくとも2つの直線部(41C、42C)を備える弾性ワイヤによって形成され、各直線部(41C、42C)は、前記2つの別個の枢動ジョイントの各々のヒンジ軸を形成する、請求項
6に記載の調節可能なシート装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弾性戻り要素(41、42)は、張力効果を有し、前記シート部(20)に、前記後退位置と前記伸長位置との間に配置された平衡位置を課す、請求項
6又は7に記載の調節可能なシート装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの調節可能なシート装置を備える
、2列目又は後続の列のシートのための、シートクッション。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの調節可能なシート装置を備える、自動車。
【請求項11】
請求項
7に記載の調節可能なシート装置の組み立て方法であって、
前記ヒンジ軸を形成する弾性戻り要素の直線部(41C、42C)を、
前記シート部の少なくとも1つの凹部に挿入して、ヒンジを形成する工程、
前記直線部(41C、42C)の
端部(41E、42E)を塑性変形させて
、折り畳み、前記形成されたヒンジの前記弾性戻り要素を取り外し不能にする工程、
を含む、少なくとも1つの、変形可能な平行四辺形の枢動ジョイントを組み立てる工程を含む、組み立て方法。
【請求項12】
前記折り畳まれた端部(41E、42E)を
前記ベース部及び前記シート部に引っ掛けることからなる工程を含む、請求項
11に記載の組み立て方法。
【請求項13】
前記折り畳まれた端部を
前記ベース部及び前記シート部に引っ掛ける前に、前記弾性戻り要素に張力をかけることからなる工程を含む、請求項
12に記載の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置に関し、特に、シート部の高さ調節を可能にするように意図されたシート装置に関する。特定の実施例によれば、本発明は、子供を乗せ、安全にシートベルトのバックルを留めるために、車両シートの一部分を上昇させることを可能にするように車両シート又はベンチシートに一体化するように意図された調節可能なシート装置を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
国際公開第2015167378号は、具体的には、変形可能な平行四辺形を有する関節運動システムと対角補強支持体とを備える、高さ調節可能なシート装置を開示するが、この構造は、製造が複雑である場合があり、かつ、対角補強支持体と変形可能な平行四辺形の関節アームとの間で摺動させることにより、摩耗、騒音、又は閉塞が生じ得るという、使用時の欠点を有する場合がある。
【0003】
本発明の目的は、上述した背景技術の欠点を克服することであり、具体的には、まず第一に、製造が単純であり、かつ使用が簡単で信頼性の高い調節可能なシート装置を提案することである。
【0004】
したがって、本発明の第1の態様は、車両用の調節可能なシート装置であって、
ベース部と、
後退位置と呼ばれる第1の位置と、伸長位置と呼ばれる第2の位置との間で、ベース部に対して移動可能なシート部と、
ベース部及びシート部に接続された、変形可能な平行四辺形を形成する関節運動システムであって、変形可能な平行四辺形に対角に接続された少なくとも1つの対角支持アームを備える、関節運動システムと、
を備え、
対角支持アームは、シート部が第1の位置にあるときには第1の長さを有し、シート部が第2の位置にあるときには第2の長さを有するように設計されていることを特徴とする、車両用の調節可能なシート装置に関する。
【0005】
上記実装形態に係る装置は、長さが変動する対角支持アームを備える。換言すると、対角支持アームは伸長可能であり、かつ、ベース部に対するシート部の移動中に長さが変動するように設計されている。結果として、対角支持アームの2つの端部は、伸長又は後退中に変形可能な平行四辺形に常に引っ掛けられたままとすることができ、これにより、システム及び運動が単純になり、変形可能な平行四辺形の関節アーム上での対角支持アームの一端の摺動トラックを設ける必要がなくなる
【0006】
本出願では、変形可能な平行四辺形は通常、4つのバーを備え、ボールジョイント又は枢動部の回転接続によって互いに対して全般的に関節運動する4つの剛性本体から構成されたシステムを形成する。最も単純な形態では、これらの部分はバーであり、バーの端部に接続部があり、バーのうちの1つは、車両のシャシー又は車両のシートに接続することができ、次いでベース部を形成し、また、(ベース部とは反対側にある)他のバーのうちの1つは、ベース部に対して円形並進運動で移動可能である。
【0007】
有利には、対角支持アームは、シート部が第2の位置にあるときに、シート部のための機械的停止部を提供するように構成される。対角支持アームに停止部を一体化することにより、装置の設計全体が単純になる。
【0008】
有利には、対角支持アームは、
シート部が第2の位置にあるときに、対角支持アームを第2の長さでロックするように構成され、かつ、シート部に印加される、通常使用時の力と呼ばれる第1の力に係合し、第1の力に耐えるように構成された第1のロック手段と、
シート部が第2の位置にあるときに、対角支持アームを第2の長さでロックするように構成され、かつ、シート部に印加される、第1の力よりも大きい、車両衝撃時の力と呼ばれる第2の力に係合し、第2の力に耐えるように構成された第2のロック手段と、を備え、第2のロック手段は、第2の力がシートに印加されたときにのみ係合される。上記実装形態によれば、対角支持アームは、各々が特定の係合モードを有する2つの明確なロック手段を備える。第1のロック手段は、(乗員、例えば、体重が60kg未満、好ましくは45kg未満、より好ましくは36kg未満である子供を支持するために)通常使用時に機械的停止部を提供するように意図されている。第2のロック手段は、車両の急減速時に、すなわち、子供の体重によって生み出される力よりもはるかに大きい力(例えば、数百キログラム)が印加される衝撃時に、機械的停止部を提供するように意図されている。
【0009】
詳細には、使用位置では、第1のロック手段は通常使用時に係合され、次いで、システムが過度に静止しないように、第2のロック手段内に隙間又は空間が存在する。製造は単純である。しかしながら、車両が衝突した場合、車両及び乗員に課される減速は、システムに対して第2の(有意な)力を発生させることがある。第1のロック手段は、第2のロック手段の隙間又は内部空間を占め、第2の力に耐えるために、係合後により高い抵抗能力を有するように変形するように意図されている。
【0010】
有利には、対角支持アームは、
第1の部分と、
第1の部分に対して移動可能である第2の部分と、を備える。内部構造は単純であり、内部の2つの部分のみが互いに対して移動可能である。
【0011】
有利には、第2の部分は、第1の部分に対して、
後退位置から伸長位置へのシート部の移動の第1の部分の間の並進運動に従って、
後退位置から伸長位置へのシート部の移動の第2の部分の間の少なくとも1回のロック回転に従って、移動可能である。有利には、ロック回転は、シート部の移動のまさに終わりに生じる。
【0012】
有利には、第2の部分は、第1の部分に対して、
後退位置から伸長位置へのシート部の移動の第1の部分の間の並進運動に従って、
後退位置から伸長位置へのシート部の移動の第2の部分の間の、第2の部分又は第1の部分のうちの一方の弾性変形と組み合わされた並進運動に従って、移動可能である。弾性変形は、第1のロック手段の一部分によって生成され得る。
【0013】
有利には、対角支持アームは、第2の部分に対する第1の部分の摺動接続部を備える。
【0014】
有利には、第2の部分は、シート部に対して枢動可能に装着され、第1の部分は、ベース部に対して枢動可能に装着される。
【0015】
有利には、第1の部分及び/又は第2の部分は、スタンピングされたシートメタルから形成される。具体的には、次いで2つのU字形状のシートメタル部を、2つの部分のうちの1つのそれぞれの側に下向きに折り畳むことによって、摺動接続部が得られる。
【0016】
有利には、関節運動システムは、
ベース部の下側前方枢動部及びシート部の上側前方枢動部に接続された第1の関節アームと、
ベース部の下側後方枢動部及びシート部の上側後方枢動部に接続された第2の関節アームと、
を備え、対角支持アームは、シート部の上側前方枢動部及びベース部の下側後方枢動部に接続される。
【0017】
有利には、調節可能なシート装置は、少なくとも1つの弾性戻り要素を備え、変形可能な平行四辺形の少なくとも2つの別個の枢動ジョイントはそれぞれ、当該少なくとも1つの弾性戻り要素の一部分を備える。
【0018】
有利には、当該少なくとも1つの弾性戻り要素は、少なくとも2つの直線部を備える弾性ワイヤによって形成され、各直線部は、2つの別個の枢動ジョイントの各々のヒンジ軸を形成する。
【0019】
結果として、各直線部はトーションバーとして作用し、ジョイントに接続された各部分の端部に櫛形を提供することが可能であり、穴が直線部を受容する。これらの部分の組み立て及び製造は簡単である。
【0020】
有利には、当該少なくとも1つの弾性戻り要素は、弾性戻り要素を枢動ジョイントから取り外し不能にするように、塑性変形された少なくとも1つの端部を備える。実際には、組み立ての終わりに、折り畳み動作(永久変形)により、システムを取り外し不能にすることが可能であり、それにより、使用の良好な安全性が保証される。
【0021】
有利には、当該少なくとも1つの弾性戻り要素は、弾性戻り要素を枢動ジョイントから取り外し不能にするように、縁部が折り畳まれた状態の概ねU形状を有する。
【0022】
有利には、当該少なくとも1つの弾性戻り要素は張力効果を有し、シート部に、後退位置と伸長位置との間に配置された平衡位置を課す。初期調節に応じて、後退位置と伸長位置との間に平衡位置が提供され、後退位置から伸長位置への、又は伸長位置から後退位置への移動によって張力が生じ、ガタガタ音を制限することが可能になる。また、これにより、システムの使用が容易になり、後退位置又は伸長位置のうちの一方から平衡位置への移動が自動的に開始される。
【0023】
有利には、調節可能なシート装置は、制御ハンドルを備える。当然ながら、ハンドルによって制御される後退位置におけるロックシステムを提供することが可能である。具体的には、シート部に装着されたハンドルに直接一体化されたロックボルト、及びベース部のラッチ(又はその逆)を提供することが可能であり、それにより、シート部が後退位置にあるときにボルトがラッチに係合することができる。
【0024】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る少なくとも1つの調節可能なシート装置を備える、好ましくは2列目又は後続の列のシートのための、シートクッションに関する。
【0025】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に係る少なくとも1つの調節可能なシート装置を備える、自動車に関する。
【0026】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様に係る調節可能なシート装置の組み立て方法であって、
ヒンジ軸を形成する弾性戻り要素の直線部を、枢動ジョイントに接続された部分の各々の少なくとも1つの凹部に挿入して、ヒンジを形成する工程、
直線部の自由端を塑性変形させて、前記形成されたヒンジの弾性戻り要素を取り外し不能にする工程、
を含む、少なくとも1つの、変形可能な平行四辺形の枢動ジョイントを組み立てる工程を含む、組み立て方法に関する。
【0027】
有利には、組み立て方法は、折り畳まれた端部を枢動ジョイントに接続された部分のうちの1つに引っ掛けることからなる工程を含む。
【0028】
有利には、組み立て方法は、折り畳まれた端部を枢動ジョイントに接続された部分のうちの1つに引っ掛ける前に、弾性戻り要素に張力をかけることからなる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付図面に、本発明を図示する。
【0030】
【
図1】
図1は、シート部が後退位置にある状態の、本発明に係るシート装置を示す。
【0031】
【
図2】
図2は、シート部が平衡位置にある状態の、
図1のシート装置を示す。
【0032】
【
図3】
図3は、シート部が伸長位置にある状態の、
図1のシート装置を示す。
【0033】
【
図4】
図4は、シート部が伸長位置にある状態の、
図1のシート装置を斜視図で示す。
【0034】
【
図5】
図5は、シート部が伸長位置にある状態の、
図1のシート装置の部分正面図を示す。
【0035】
【
図6】
図6は、シート部が伸長位置にある状態の、
図5のシート装置の断面図を示す。
【0036】
【
図7】
図7は、シート部が伸長位置にある状態の、
図1のシート装置を斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
これらの図面を参照すると、調節可能なシート装置は、具体的には、ベース部10と、シート部20と、関節運動システム30と、を備える。
【0038】
図1~
図3は、外装がない状態の調節可能なシート装置を示し、すなわち、補強部分又は構造部分のみが示されている。調節可能なシート装置は、車両シートに一体化されるように意図されており、後退位置にあるシート部20(
図1)は、車両シートの残りの部分と同一平面又は同一レベルに配置され、伸長位置にあるシート部20(
図3又は
図4又は
図7)は、小さい子供を正しくバックルで固定することを可能するために、車両シートの残りの部分の上方に配置され、それにより、別個の補助シートを提供する必要がなくなる
【0039】
図1は、シート部20が後退位置にある状態の、すなわち、シート部20がベース部10に対して折り畳まれた状態のシート装置を示す。したがって、シート部20及びシート部20の外装(図示せず)は、車両のシートの残りの部分と同じレベルに位置し得る。大人は快適に座ることができる。
【0040】
図3は、シート部20が伸長位置にある状態の、すなわち、シート部20がベース部10に対して上昇した状態のシート装置を示す。したがって、シート部20及びシート部20の外装(図示せず)は、小さい子供を安全にバックルで固定することができるように、車両のシートの残りの部分のはるかに上方にある。
【0041】
図示の実施例によれば、
図1及び
図3を参照すると、シート部20は、
(A2-A1)=垂直上方方向に95mm、
(B1+B2)=水平後方方向に150mm、
移動する。当然ながら、これらの値は示唆的なものであり、必要に応じたそれらの調節を想定することができる。
【0042】
シート装置は、
図2、
図3、
図4及び
図7で見ることができる変形可能な平行四辺形を有する関節運動システム30を備え、具体的には、
ベース部10の下側前方枢動部10a及びシート部20の上側前方枢動部20Aに接続された第1の関節アーム32と、
ベース部10の下側後方枢動部10B及びシート部20の上側後方枢動部20Bに接続された第2の関節アーム33と、
によって形成される。
【0043】
関節運動システム30はまた、シート部20の上側前方枢動部20A及び下側後方枢動部10Bに接続された対角支持アーム31を備える。本発明の一態様によれば、対角支持アーム31は、可変長さを有し、実際には、シート部20が後退位置にあるときには、対角支持アーム31は第1の長さを有し、シート部20が伸長位置にあるときには、対角支持アーム31は第2の長さを有する。この実施形態は、枢動接続部の数を制限するので好ましい。しかしながら、他の実施形態は、独立した枢動接続部によって、対角支持アーム31を第1及び/又は第2のアーム、並びに/あるいはベース部及び/又はシート部に接続することによって提供され得る。
【0044】
このため、対角支持アーム31は、第1の部分31Aと、第1の部分31Aに対して移動可能な第2の部分31Bとを備える。図示の実施形態によれば、第2の部分31Bは、第1の部分に対して、
後退位置から伸長位置へのシート部20の移動の第1の部分の間の並進運動に従って、
後退位置から伸長位置へのシート部20の移動の第2の部分(すなわち、移動の終わり)の間の少なくとも1回のロック回転に従って、移動可能である。一例として、第1の部分31A及び/又は移動可能な第2の部分31Bは、コンパクトなサイズ及び良好な剛性を提供するように、スタンピングされた/パンチングされた/リブが付けられた/屈曲されたシートメタルで提供される。第2のメタルシートを受容するために、例えばメタルシートの縁部を下向きに折り畳むことによって摺動接続部を提供することは容易である。
【0045】
図示の実施例によれば、対角支持アーム31は、後退位置から伸長位置へと移動するとき、その長さを低減させる。その結果、伸長位置では、第2の部分31Bの摺動部分は、下側後方枢動部10Bに近接し、良好な剛性が提供される。
【0046】
シート部20の伸長位置を確保にするために、
図3では、対角支持アーム33は、シート部20が伸長位置と呼ばれる第2の位置にあるときに、シート部20のための機械的停止部を提供するように構成される。
【0047】
具体的には、
図5に、対角支持アーム31を詳細に示し、対角支持アーム31は、
シート部20が第2の位置にあるときに、対角支持アーム31を第2の長さでロックするように構成され、かつ、シート部20に印加される、通常使用時の力と呼ばれる第1の力に係合し、第1の力に耐えるように構成された第1のロック手段34と、
シート部20が第2の位置にあるときに、対角支持アーム31を第2の長さでロックするように構成され、かつ、シート部20に印加される、第1の力よりも大きい、車両衝撃時の力と呼ばれる第2の力に係合し、第2の力に耐えるように構成された第2のロック手段35と、を備え、第2のロック手段35は、第2の力がシートに印加されたときにのみ係合される。
【0048】
図5及び
図6に示されるように、第1のロック手段34及び第2のロック手段35はそれぞれ、第1の部分31A内の少なくとも1つのノッチ又はベアリングゾーン、及び第2の部分31B内の突起によって形成される。シート部20が伸長位置に到達したときに、突起がそれぞれのノッチ内に、又はそれらのベアリングゾーン上に係合されると、ロック手段は、後退位置へのいかなる戻りも防止する。
【0049】
更に、対角支持アーム31の製造を容易にするために、第1のロック手段34のみが、
図6に示されるセクションに示されるように、
図5の軸V-Vに従って、通常使用時に(すなわち、シート部20上に座っている子供と)係合される。実際には、第1のロック手段34は、そのセクション上で接触(c)し、第2のロック手段35のレベルに隙間(j)が提供される。
【0050】
しかしながら、車両が衝撃を受けた場合には、はるかに大きな力がシート部20に印加され、次いで、第1のロック手段34は変形するように意図されているので、第2のロック手段35のレベルで隙間jが取り込まれ、第2のロック手段35の各突起は、その対応するノッチと接触し、その結果、シート部20は、第2の位置、すなわち伸長位置において安全かつ有効にロックされる。
【0051】
それにもかかわらず、第1のロック手段34のみが通常の状況(制限された第1の力)に係合され、車両が衝撃を受けた場合に第2の力で第1のロック手段34がわずかに変形することにより、第2のロック手段35と係合することが可能となるので、この実装形態は、第1の部分31A及び第2の部分31Bの製造時に厳密な調節を行うことがなくなることに留意されたい。結果として、第2のロック手段35に対して第1のロック手段34の正確な位置決めを行う必要はない。
【0052】
シート部20を伸長位置からロック解除するために、第1のロック手段34のレベルに提供されたレバーアームをハンドル21によって作動し、それによって、第2の部分31Bに対して第1の部分31Aを枢動させることによって第1のロック手段及び第2のロック手段を解放することが可能になり、次いで、シート部20が後退位置に入ることを可能にするように互いに対して摺動させることができる。
【0053】
また、弾性戻り手段は、2つの弾性戻り要素41及び42が関節運動システム内に提供された状態で提供され、シート部20に対して、後退位置と伸長位置との間に配置された平衡位置を課す。換言すると、弾性戻り要素41及び42は、シート部20を後退位置から自動的に引き出し始めるように、また、シート部20を伸長位置から自動的に折り畳み始めるように予め張力がかけられている。
【0054】
更に、(細い線の背後に位置する部分を示すために、シート部20が透明である)
図7に示されるように、各弾性戻り要素41及び42は、変形可能な平行四辺形のヒンジ軸を形成する少なくとも1つの直線部41C及び42Cを備える。
【0055】
有利には、本明細書に示されるように、第1の弾性戻り要素41は、(ベース部10と第1の関節アーム32との間の)下側前方枢動部10a、及び(シート部20と第1の関節アーム32との間の)上側前方枢動部20Aにヒンジ軸を形成する。
【0056】
第2の弾性戻り要素42は、(ベース部10と第2の関節アーム33との間の)下側後方枢動部10Bのレベル、及び(シート部20と第2の関節アーム33との間の)上側後方枢動部20Bのレベルにヒンジ軸を形成する。
【0057】
最後に、本システムの信頼性を確保し、特にいかなる分解又は転位も回避するために、各弾性戻り要素は、システムを取り外し不能にするために、組み立て後に塑性変形され(折り畳まれ)、かつ、ベース部10及びシート部20に固定された端部41E及び42Eを備える(
図7の左下の破線の例を参照)。
【0058】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明される本発明の種々の実施形態に対して、当業者にとって明白な種々の修正及び/又は改善を加えることができる点が理解されるであろう。特に、技術的又は構造的な不適合性がない限り、本明細書に開示される全ての実施形態を組み合わせることが可能である。