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特許7519364口腔および咽頭を介して罹患する疾病の予防のための製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】口腔および咽頭を介して罹患する疾病の予防のための製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20240711BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240711BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 33/16 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/409 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/05
A61K8/34
A61K8/368
A61K9/06
A61Q11/00
A61P31/00
A61K33/16
A61K8/27
A61K33/30
A61K31/409
A61K8/49
A61K8/21
A61P31/12
A61K36/48
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021545824
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2020022903
(87)【国際公開番号】W WO2020186258
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】16/353,802
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520085866
【氏名又は名称】イントラモント テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】モンテ,ジョセフ,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】イントラター,ジェームズ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067283(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/071288(WO,A2)
【文献】国際公開第2004/098566(WO,A1)
【文献】特開平11-222419(JP,A)
【文献】TANIN GALALCOOL,2010年
【文献】Critical Reviews in Food Science and Nutrition,1998年,Vol.38, No.6,p.421-464
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感冒もしくは他の上気道および咽頭感染の予防または抑制のための練り歯磨き組成物であって、
(1)歯のエナメルを染色しない、タラポッドから精製された没食子酸タンニン抽出物又はタラタンニン;および
(2)遊離亜鉛塩、を含む歯磨きゲルあるいはペーストを含む、練り歯磨き組成物。
【請求項2】
前記亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される有機亜鉛塩である、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項3】
前記有機亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛である、請求項2に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項4】
前記亜鉛塩が、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される無機亜鉛塩である、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項5】
前記タラポッドから精製された没食子酸タンニン抽出物又はタラタンニンが、前記組成物の0.01重量%~10重量%である、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項6】
遊離亜鉛塩が、前記組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲である、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項7】
フッ化物化合物をさらに含む、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項8】
前記組成物が可鍛性の、または圧搾可能なチューブに貯蔵される、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項9】
前記タラタンニンが、Caesalpinia spinosaに由来するポッドから精製された抽出物である、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項10】
前記感染が、コロナウイルス感染である、請求項1に記載の練り歯磨き組成物。
【請求項11】
前記コロナウイルス感染が、COVID-19である、請求項10に記載の練り歯磨き組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月12日に出願された米国特許出願第15/701,465号の一部継続である2019年3月14日に出願された米国特許出願第16/353,802号に対する優先権を主張し、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、口腔、咽頭、および/もしくは肺を介する感染の罹患を予防または抑制するための組成物および配合物、ならびにこれらの組成物および配合物を使用および作製する方法に関する。具体的には、本発明は、感冒もしくは他の呼吸器および咽頭感染の予防または抑制のための、ペーストまたはゲルの形態での練り歯磨き、あるいはマウスウォッシュまたは口腔リンス、あるいはチューインガムなどのチュアブル素材、あるいは他の経口投与製剤、ならびに吸入による投与のための製材、ならびに感冒および/もしくは他の呼吸器および咽頭感染を予防または抑制するこれらの組成物および配合物を口、咽頭および/または肺に投与することに対するそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
既に市場にあるいくつかの練り歯磨きおよびマウスウォッシュは、う蝕に抵抗し(通常はフッ化物を通じて)、歯肉炎の発生率を低減し(通常はトリクロサンおよび/または酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、もしくは塩化亜鉛などの亜鉛塩の作用により(M.Sanz,et al.,Antiplaque and Antigingivitis toothpastes.Monograph Oral Sci(2013)23:27-44))、食物の粒子の口をゆすぐのを補助し、かつ「爽やかな息」をもたらすことが知られている。したがって、現在入手可能な店頭販売されている練り歯磨きは、虫歯(虫歯の穴を引き起こす細菌誘発性う蝕)、歯肉炎、敏感な歯の改善、および口腔衛生全般の予防の必要性に対処しているが、当技術分野において、風邪、ならびに病原性ウイルス、細菌、および真菌によって引き起こされる多数の他の病態、もしくは場合により他の状態(例えば、口内炎、耳感染など)を含む、いくつかの状態の罹患を予防または抑制するか、あるいはそれらの発生率または可能性を低減する、練り歯磨きあるいは製剤の能力を高めるであろう成分を含む練り歯磨きおよび他の経口投与製剤の必要性が存在する。したがって、当技術分野において、口腔および咽頭を介するいくつかの感染の罹患を予防もしくは抑制するか、またはそれらの発生率もしくは可能性を低減すると同時に、虫歯の穴を予防し口腔を洗浄することにおいて、ほとんどの練り歯磨きおよびマウスウォッシュのように機能するであろう練り歯磨きおよびマウスウォッシュおよび他の配合物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
ここに記載されているのは、その実施形態のうちの1つの形態で口、咽頭または肺に適用されると、ウイルス、細菌、もしくは真菌などの病原体と、口、咽頭および/もしくは肺に存在する組織との間の相互作用に起因する多くの起こり得る病態の罹患を予防または抑制することを補助するであろう配合物である。練り歯磨きまたはゲルの好ましい実施形態では、本明細書に記載される組成物および配合物は、口腔および咽頭表面に適切に送達され得る。少なくとも毎日、歯のブラッシングに続いて、最小限のすすぎ、または製剤、典型的には練り歯磨きを単に吐き出す習慣により、使用者は、いくつかの病態、特に風邪に罹患することから保護されるか、またはそれらのより低い発生率を有するであろう。別の好ましい実施形態では、本明細書に記載される製剤および組成物は、吸入器またはネブライザーを使用する吸入によって、口、咽頭および/または肺に適切に送達され得る。その結果、使用者は、インフルエンザ、SARSもしくはCOVID-19などの多くのウイルス感染を罹患することから保護されるか、またはそれらのより低い発生率を有する。
【0005】
当技術分野で既知の好適な成分は、本発明の実施形態の基礎を形成し、それらに、溶解した亜鉛塩の成分、および高度に精製された没食子酸タンニン抽出物または調製物から選択される1つ以上の収斂性化合物(タラポッドからの高度に精製された抽出物であるGALALCOOL(登録商標)(フランスを拠点とするLaffort Companyによって販売される)など;タラ(Caesalpinia spinosa)から抽出された低着色タンニンは本明細書で「タラタンニン」と呼ばれる)、別の無色または低着色のタンニン、および亜鉛プロトポルフィリンIXの成分が添加されるであろう。
【0006】
一態様では、本明細書に提供されるのは、感冒もしくは他の呼吸器および咽頭感染の予防または抑制のための練り歯磨きあるいは他の経口投与製剤として配合された組成物であり、無色もしくは低着色のタンニン(白ワインへの添加のためにタラポッドから抽出され、フランスのLaffort Companyによって販売される低着色のタンニンであるGALALCOOL(登録商標)、または別の大量生産された無色もしくは低着色もしくは白色のタンニン、あるいはそれらの組み合わせを含む)を含む歯磨きゲルまたはペーストを含む。いくつかの実施形態では、練り歯磨きまたは他の経口投与製剤は、亜鉛プロトポルフィリンIXをさらに含む。いくつかの実施形態では、練り歯磨きまたは他の経口投与製剤は、遊離亜鉛塩をさらに含む。
【0007】
別の態様では、本明細書に提供されるのは、感冒もしくは他の呼吸器および咽頭感染の予防または抑制のためのチューインガム、口腔リンス、マウスウォッシュ、またはエアロゾルとして配合された組成物であり、GALALCOOL(登録商標)を含む溶媒もしくは他のビヒクル、またはタラタンニンまたは別の大量生産された、無色もしくは低着色もしくは白色のタンニン、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、チューインガム、口腔リンス、マウスウォッシュ、またはエアロゾルは、亜鉛プロトポルフィリンIXをさらに含む。いくつかの実施形態では、チューインガム、口腔リンス、マウスウォッシュ、またはエアロゾルは、遊離亜鉛塩をさらに含む。
【0008】
別の態様では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される組成物または製剤を対象の口および/または咽頭に投与することによって、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の罹患を予防または抑制するか、あるいはその発生率または可能性を低減する方法である。
【0009】
別の態様では、本明細書に提供されるのは、ウイルス感染の予防あるいは抑制のための、かつ吸入による投与のために配合された組成物であり、GALALCOOL(登録商標)、タラタンニン、1つ以上の他の無色もしくは低着色のタンニン、またはそれらの組み合わせを含む溶媒あるいは他のビヒクルを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、遊離亜鉛塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、亜鉛プロトポルフィリンIXをさらに含む。また、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される組成物または製剤を吸入によって対象に投与することによって、ウイルス感染の罹患を予防もしくは抑制するか、またはそのの発生率もしくは可能性を低減する方法である。
【0010】
さらに別の態様では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される組成物または製剤を作製する方法である。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明の例から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者にとって明らかになるため、例示のみの方法によって与えられることが、理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明において、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的詳細が記載される。しかし、本発明はこれらの具体的詳細を伴わずに実行され得ることが、当業者によって理解されるであろう。他の事例では、本発明を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細に記載されていない。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるのは、ペーストもしくはゲルの形態での練り歯磨き、またはマウスウォッシュもしくは口腔リンス、またはチューインガムなどのチュアブル素材、またはフッ化物、洗剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、溶媒(グリセロールおよび/またはプロピレングリコールなど)、亜鉛の塩、研磨剤(ヒュームドシリカなど)、抗菌剤(トリクロサンなど)、甘味料を含む香味料などの当技術分野で既知の好適な成分を有するベース製剤、および組成物もしくは配合物に有用もしくは必要と思われる任意の他の好適な成分を含有するであろう、他の経口投与製剤である。ベース製剤または配合物に添加されるのは、以下のうちの1つ以上である。
(1)収斂性化合物、GALALCOOL(登録商標)と呼ばれるタンニンおよび/またはタラタンニンと呼ばれるタンニン、
(2)収斂性化合物、亜鉛プロトポルフィリンIXと呼ばれるポルフィリン、ならびに
(3)収斂性化合物、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニン以外の無色または低着色のタンニン(例えば、GALALCOOL(登録商標)と同じ企業からのプロアントシアニジン(proanthocyanidic)タンニンおよびオークエラグ(oak ellagic)タンニンの低着色タンニン調製物であるTANFRESH(登録商標))
【0014】
上記の成分は、病原性であり得るいくつかの口腔細菌、例えば、歯肉炎をもたらし得るものを含み、鵝口瘡を引き起こし得る口腔真菌を含む、ライノウイルスなどの感冒を引き起こすウイルスを含む、いくつかの病原体の罹患を予防または抑制することに対してそれらの効果をもたらすであろう。典型的には、使用者は、歯ブラシを用いて本明細書に記載される練り歯磨きを適用する場合、少なくとも1日に1回は練り歯磨きで磨き、ブラッシングの直後に、製剤を1回だけ軽く吐き出し、かつ/または水で濯ぎ流すかのいずれかを行うであろう。
【0015】
本発明の練り歯磨きまたは他の実施形態は、口腔および咽頭を介したいくつかの感染症の罹患を予防もしくは抑制するか、またはそれらの発生率もしくは可能性を低減すると同時に、虫歯の穴の予防および口腔の洗浄において、ほとんどの練り歯磨きおよびマウスウォッシュのように機能するであろう。
【0016】
本発明者のうちの1人は、彼の人生のほとんどで風邪によく悩まされ、典型的には年あたり3~4回の感冒を罹患していた。しかし、その際、彼は、人が意図的にその口に入れる可能性のある成分を選択するために、自身の感冒のより低い発生率の関連性を探り始めた。いくつかは、あり得そうな科学的根拠を進展させているが、他のものは、病気のより低い発生率に逸話的に関連し、以下を含む。
1.亜鉛の塩、
2.フッ化スズまたは他のフッ化物、
3.ラウリル硫酸ナトリウム、および
4.タンニンなどのポリフェノール。
【0017】
既に市場にあるいくつかの練り歯磨きおよびマウスウォッシュは、う蝕に抵抗し(通常はフッ化物を通じて)、歯肉炎の発生率を低減し(通常はトリクロサンおよび/または酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、もしくは塩化亜鉛などの亜鉛塩の作用により(M.Sanz,et al.,Antiplaque and Antigingivitis toothpastes.Monograph Oral Sci(2013)23:27-44))、食物の粒子の口をゆすぐのを補助し、かつ「爽やかな息」をもたらすことが知られている。しかし、本発明の実施形態では、練り歯磨きまたはマウスウォッシュは、成分の唯一の組み合わせを有せず、特に、後者の練り歯磨き中の成分は、亜鉛塩のより遅い放出を提供する。亜鉛塩は、歯肉炎を予防するためにいくつかの練り歯磨きにおいて長年使用されているが、亜鉛塩が、感冒ウイルスの粘膜への感染力を明らかに低減させることによって風邪の症状を低減するためにも使用され得ることを考慮すると、現在の練り歯磨きでブラッシングすることによって通常達成されるよりも長い期間、口腔内に亜鉛塩を存在させるための、後述される方法を使用することによって、より安定した亜鉛イオン源を提供することは理にかなっている。新しい練り歯磨きは、典型的には、歯ブラシでブラッシングすることを通じて少なくとも1日あたり1回使用され、それにもかかわらず、悪影響または効能の低減を伴わずに1日あたり2回以上使用され得る。ブラッシングの後、使用者は、練り歯磨きの残留物の適切な保持を可能にするために、水で1回だけの濯ぎによって、または部分的もしくは完全に濯ぐことさえなく、その口から成分を吐き出す。
【0018】
亜鉛塩に関しては、亜鉛イオンが細胞へのライノウイルスの付着を予防できること、ならびに亜鉛含有トローチが風邪の症状および持続期間を軽減できることが、現在知られている(WedMD.Cold,Flu & Cough Health Center - Zinc for Colds: Lozenges & Nasal Spraysを参照されたく、www.webmd.com/cold-and-flu/cold-guide/zinc-lozenges-cold-remedyで入手可能であり、かつNational Institutes of Health Office of Dietary Supplements.Zinc Fact Sheet for Health Professionalsを参照されたく、ods.od.nih.gov/factsheets/Zinc-HealthProfessionalで入手可能である)。しかし、自身をそのような成分に1日半さらさなかったことが、再度風邪に罹患することをもたらしたという、発明者のうちの1人による観察は、口および咽頭における抗感冒成分の滞留時間の延長が、亜鉛化合物による感冒予防の有効性を高めることができることを示唆した。したがって、発明者のうちの1人は、練り歯磨きの後者の目標を達成するための方法を思いついた。亜鉛は、呼吸器合胞体ウイルスなどの他の一般的ウイルスに対して効果を有すると考えられ(Effect of Zinc Salts on Respiratory Syncytial Virus Replication-NCBI.www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC353050で入手可能である)、したがって、亜鉛塩の滞留時間を延長すると、練り歯磨きの他の健康上の利点が得られるということが、留意されるべきである。
【0019】
亜鉛を含有し、後者を口腔、歯茎、および咽頭に適用する練り歯磨きによって、個人に感染する能力が妨げられ得る、多数の感染性ウイルスが存在する可能性がある。さらに、亜鉛塩は抗菌および抗真菌特性も有することが知られており、それらは、フッ化物塩、洗剤、および他の構成要素と共に、真菌および細菌感染に罹患する頻度を低減することも補助するであろう。したがって、本発明の実施形態は、局所から口腔および咽頭で罹患する広範な病状に対処する。
【0020】
感冒(ライノウイルスおよび他のウイルス)の罹患を予防する亜鉛塩の能力と相関する亜鉛塩の特性は、収斂性の特性である(www.britannica.com/science/astringent.2016年9月14日にアクセス済み、を参照されたい)。亜鉛は、「金属収斂剤」と呼ばれる収斂剤のクラス、すなわち、細胞の表面層に対して凝固効果を引き起こすものに属する。これは、タンパク質の凝固が、感冒の罹患の予防または抑制に関与していることを示唆するであろう。カプシドと呼ばれるタンパク質コートがすべてのウイルスを取り囲むと仮定すると、コート内のタンパク質の凝固は、ビリオン(個別のウイルス粒子)のそれらの細胞宿主への付着を根本的に妨げ、これは、表面で収斂剤に表面的にさらされた宿主細胞に特に当てはまるであろう。しかし、多くのウイルスは、タンパク質コートを取り囲む脂質の「エンベロープ」も有するため、収斂剤の凝固効果が妨げられる可能性があり、さらに、そのようなエンベロープは、タンパク質(ウイルス)とタンパク質(抗体)との結合を妨げることによって免疫防御を妨げると考えられている。しかし、練り歯磨き、ならびに他の経口および咽頭製剤は、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高効率の界面活性剤を含有し、したがって、ウイルスの脂質エンベロープを可溶化するのを補助し、したがって、製剤中の収斂剤へのタンパク質カプシドの曝露をもたらす。したがって、洗剤環境は、収斂剤(亜鉛塩を含む)による、エンベロープウイルスからの感染の罹患の予防の成功における補助因子であると思われる。ほとんどの感冒はライノウイルスによって引き起こされ、それらはエンベロープウイルスではないため、咽頭においてそれらに罹患することを予防するための洗剤補助因子の必要性は、おそらく重要ではない。
【0021】
それにもかかわらず、本発明の実施形態は、感冒ウイルスだけでなく、口、咽頭もしくは肺において罹患する他のウイルスの罹患の予防または抑制を意図しており、それらの多くは、エンベロープウイルスである。本明細書に開示される練り歯磨きなどの本発明の実施形態が予防または抑制し得るエンベロープウイルスの中には、特に、単純ヘルペスI(口腔ヘルペス)、水痘ウイルス(水疱瘡)、インフルエンザウイルス、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルスなどのコロナウイルス(そのメンバーは重症急性呼吸器症候群(SARS)およびCOVID-19の原因である)、フラビウイルス(C型肝炎)、呼吸器合胞体ウイルスがある(medimoon.com/2014/03/list-of-some-common-viral-diseases-and-their-treatment)。ウイルスの初期罹患の時点は、必ずしもウイルスの最終的分布および症状を表すものではないということが、留意されるべきである。例えば、人は、咽頭を通じてC型肝炎に罹患する可能性があるが、病気の主病巣は、肝臓である。同様に、内耳感染(中耳炎)は、最初に咽頭で罹患したウイルスまたは細菌感染から二次的に罹患され得る。したがって、いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される練り歯磨きは、コロナウイルス感染、特にCOVID-19を含むさまざまなウイルス感染の罹患を予防もしくは抑制するか、またはそれらの発生率または可能性を低減する。
【0022】
したがって、収斂性の特性は、粘膜の細胞によってウイルスの罹患を停止することと関連がある。本発明の実施形態では、GALALCOOL(登録商標)と呼ばれる単離されたタンニンは、口腔および咽頭を介した、ウイルスおよび細菌を含む微生物によって引き起こされる病態の罹患を予防するために使用されるであろう成分である。これは、少なくとも部分的には、その知られている収斂特性によるものである。それは、亜鉛の場合のように凝固剤として作用するであろう。しかし、単独の亜鉛とは異なり、それは、亜鉛(亜鉛塩から)のイオン形態では期待されない粘液分泌に対する親和性を有するであろう。したがって、それは、特定の口および咽頭表面に長時間付着することができる可能性がある。さらに、それは、少なくとも1つの研究で示されているように、有益な抗炎症特性を有する(P.Buzzini,et al.,Antimicrobial and Antiviral Activity of Hydrolysable Tannins.Mini-Reviews in Medicinal Chemistry(2008)8:1179-1187、Yuan-Jin Guo et al.,Effect of Corilagin on Anti-inflammation in HSV-1 Encephalitis and HSV-1 Infected Microglias.European Journal of Pharmacology(2010)635:79-86、J.Luoqi,et al.,A Potential Anti-tumor Herbal Medicine,Corilagin,Inhibits Ovarian Cancer Cell Growth Through Blocking the TGF-β Signaling Pathways.BMC Complementary and Alternative Medicine(2013)13:33、N. Bismelah,et al.,Journal of Medicinal Plants Studies(2016)4:18-23、A Gupta,et al.,Phytochemistry and Pharmacological Activities of Haritaki-A Review.Journal of Pharmacy Research(2010)3:417-424)。インドグーズベリーの抽出物は練り歯磨き成分として提案され(P Potduang,et al.,The Development of Phyllanthus emblica and Zanthoxylum limonella Toothpaste.The 6th International Conference on Natural Products for Health and Beauty (NATPRO6),January 21-23,2016)、かつ抽出物はその構成物質の1つとしてコリラギンを有することが提案されているが、多くの他の構成物質は、その抽出物に存在する。さらに、その場合、コリラギンは、製剤中の有効成分として選ばれるることも、抗菌剤および抗炎症薬としてのその作用機序も明らかにされることもなかった。本発明の実施形態において使用されるGALALCOOL(登録商標)、タラタンニン、または他の低着色もしくは無色のタンニンは、0.03重量%であり、これは、P Potduang, et al.によって提案された抽出物を有する練り歯磨きにおける0.2重量%の抽出物濃度最大値よりもはるかに低い。しかし、はるかに高い濃度のタンニンが最適であると証明され得、この特許の請求項によれば、それは、練り歯磨き組成物の10重量%にもなる可能性があり、0.2%よりはるかに高い。そのような場合、本発明の実施形態における純粋なタンニンの濃度は、多くの要因により、インドグーズベリー練り歯磨きにおけるものを超えるであろう。
【0023】
他の収斂性化合物、すなわち無色または低着色であるタンニンは、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンの代替成分となるであろうが、1つ以上のそのようなタンニンはまた、歯磨剤の効能を延長するために、後者と共に使用され得る。タンニンのポリフェノール化合物のうちGALALCOOL(登録商標)が一例にすぎないタンニンは、多くの食用植物において比較的高濃度で見いだされる。それらは、収れん性であり、したがって、典型的には、タンパク質の沈殿をもたらし、さらに、ほとんどのウイルスが外部環境と相互作用するタンパク質カプシド(殻)を有することを考慮すると、これは、口および喉における遊離分布からウイルスを除去する上で最も重要であり得る(A Manual of Materia Medica and Pharmacology,p.282.DMR Culbreck.Lea and Febiger,Philadelphia,1927)。さらに、これは、亜鉛のように、特定のウイルスの、粘膜の細胞への付着を妨げる能力を示唆するであろうが、その非常に低い水溶性は、亜鉛塩とは異なり、特に濡れにくいものを、口の中の異なる場所で優先的に隔離する可能性があることを示唆する。また、ポリフェノール(フラボノイド化合物ケルセチンなど)は、抗菌特性を有するため、潜在的な抗ウイルス剤としてだけではなく、口腔の健康に対する他の潜在的利点を保持することが、報告されている(TPT Cushnie and AJ Lamb,Antimicrobial Activity of Flavonoids.International Journal of Antimicrobial Agents(2005)26:343)。GALALCOOL(登録商標)およびタラタンニンと共に他のタンニンは、本発明の特定の実施形態では有効成分と見なされるであろう。しかし、タンニンは、典型的には、暗色の化合物であるため、特定のタンニンのみが、本発明の特定の実施形態では潜在的共成分と見なされ、タンニンは、典型的には、歯のエナメル質を染色するため、無色または低着色のタンニン(すなわち、非染色タンニン)のみが本発明の特定の実施形態では使用されることが、重要である。それらはまた、歯ブラシの毛を染色し、別の心理的に好ましくない結果を生じる可能性がある。したがって、本発明の特定の実施形態では、歯のエナメル質または歯ブラシの毛を染色するタンニンのみが、本明細書に記載される組成物に含まれる。本発明の実施形態において使用されるGALALCOOL(登録商標)、タラタンニン、および/または他のタンニンもしくはポリフェノール収斂性化合物(例えば、TANFRESH(登録商標))は、本発明の実施形態の他の構成要素の成分と共に潜在的に相乗的効能を表示するであろう。本発明の実施形態の組成物中の成分は、製品が毎回使用される度に不注意に完全に飲み込まれたとしても、毒性がないことが知られている濃度にある。タンニンの毒物学に関する懸念については、GRAS物質に関する選択委員会が、タンニン酸(加水分解性ガロタンニンプロトタイプとして)の潜在的毒性に関して以下のように介入した(https://www.fda.gov/Food/IngredientsPackagingLabeling/GRAS/SCOGS/ucm261485.htm、2017年8月23日アクセス):「したがって、選択委員会は、前述の観点から、以下を結論付ける。
タンニン酸(加水分解性ガロタンニン)に関する入手可能な情報には、現在のレベルで、かつ現在実践される方式で使用される場合に、公衆への危険性を疑う合理的根拠を実証または示唆する証拠はない。しかし、追加のデータがなければ、消費量の顕著な増加が食に関する危険を引き起こすかどうかを判断することはできない。」
【0024】
最後に、別の成分である亜鉛プロトポルフィリンIX(RF Labbe,et al.,Zinc Protoporphyrin: A Metabolite with a Mission.Clinical Chemistry(1999)45:2060-2072)は、経口投与製品の構成物質であり得る。より長い持続性に関してさらに別の亜鉛源であり、それ自体が収斂剤であることに加えて、それは、二価イオン(亜鉛イオンなど)の知られている担体であり、したがって、亜鉛を口および咽頭のより広範な領域に運ぶことにおいて支援し、かつそれ自体が後者の領域において収斂性を長引かせることを支援する、より持続性のある亜鉛源を作り出す。亜鉛塩は、水溶性であり、口、および口腔と、かつ口腔を超えて続く領域からより容易に洗い流されるであろう。
【0025】
しかし、各成分は、異なる物理的および化学的特性を有するため、それらの収斂性の共通性にもかかわらず、それらの構造的安定性の差異、互いに対する親和性、口および咽頭における異なる表面に対する親和性、ならびに異なる分泌物に関連および付着する傾向により、相乗効果が生じるであろう。
【0026】
現在入手可能な店頭販売されている練り歯磨きは、虫歯(虫歯の穴を引き起こす細菌誘発性う蝕)、歯肉炎、敏感な歯の改善、および口腔衛生全般の予防の必要性に対処しているが、ここに説明される新規の練り歯磨きは、複数の成分を組み合わせることによって相乗的機序で働く可能性がある。各成分の表面親和性は、特定の組織(例えば、歯茎対咽頭の粘膜対歯エナメル質)によって異なるため、異なる成分が、異なる組織の有効成分へより完全曝露を作り出すように働くことが期待され得、さらに、細菌およびウイルスの異なる株が異なる成分に対する感受性において大きく異なる場合があるため、成分の多様性は、効果があることが知られている各単一の成分の単なる最高安全濃度でのそれらの使用よりも大きな効果を有するはずである。新規の練り歯磨き中の成分は、風邪、ならびに病原性ウイルス、細菌、および真菌によって引き起こされる多数の他の病態、または場合により他の状態(例えば、口内炎、耳感染など)を含む、いくつかの状態の罹患を予防する練り歯磨きの能力を高めるであろう成分を含む唯一の組み合わせで存在するであろう。練り歯磨きの消費者は、所望の結果を得るために1日あたり1回自身の歯をブラッシングする必要があることが好ましい。
【0027】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示するために提示される。しかし、実施例は、決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0028】
本発明の実施形態には、以下が含まれる。
1.感冒もしくは他の呼吸器および咽頭感染の予防または抑制のための練り歯磨きあるいは他の経口投与製剤として配合された組成物であって、GALALCOOL(登録商標)、タラタンニン、1つ以上の他の無色もしくは低着色のタンニン、またはそれらの組み合わせを含む歯磨きゲルあるいはペーストを含む、組成物。
2.遊離亜鉛塩をさらに含む、実施形態1に記載の組成物。
3.亜鉛塩が、有機亜鉛塩である、実施形態2に記載の組成物。
4.有機亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態3に記載の組成物。
5.有機亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛である、実施形態4に記載の組成物。
6.亜鉛塩が、無機亜鉛塩である、実施形態2に記載の組成物。
7.無機亜鉛塩が、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態6に記載の組成物。
8.GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
9.GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.03重量%である、実施形態8に記載の組成物。
10.別の無色もしくは低着色のタンニン、または各々の他の無色もしくは低着色のタンニンが、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
11.1つ以上の他の無色または低着色のタンニンが、各々、組成物の0.03重量%である、実施形態10に記載の組成物。
12.GALALCOOL(登録商標)の濃度がゼロである、実施形態10または11に記載の組成物。
13.組成物が、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンと1つ以上の他の無色または低着色のタンニンとの組み合わせを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
14.それぞれ、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.01重量%~10重量%であり、別のまたは各々の他の無色もしくは低着色のタンニンのものが、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態13に記載の組成物。
15.それぞれ、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.03重量%であり、別のまたは各々の他の無色もしくは低着色のタンニンのものが、組成物の0.03重量%である、実施形態13に記載の組成物。
16.亜鉛プロトポルフィリンIXをさらに含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
17.亜鉛プロトポルフィリンIXが、組成物の0.1重量%~5重量%の範囲である、実施形態16に記載の組成物。
18.亜鉛プロトポルフィリンIXが、組成物の0.5重量%である、実施形態17に記載の組成物。
19.遊離亜鉛塩が、組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲である、実施形態2~18のいずれか1つに記載の組成物。
20.遊離亜鉛塩が、組成物の0.4重量%である、実施形態19に記載の組成物。
21.フッ化物化合物をさらに含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の組成物。
22.感冒もしくは他の呼吸器および咽頭感染の予防または抑制のためのチューインガム、口腔リンス、マウスウォッシュ、あるいはエアロゾルとして配合された組成物であって、GALALCOOL(登録商標)、タラタンニン、1つ以上の他の無色もしくは低着色のタンニン、またはそれらの組み合わせを含む溶媒あるいは他のビヒクルを含む、組成物。
23.遊離亜鉛塩をさらに含む、実施形態22に記載の組成物。
24.亜鉛塩が、有機亜鉛塩である、実施形態23に記載の組成物。
25.有機亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態24に記載の組成物。
26.有機亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛である、実施形態24に記載の組成物。
27.亜鉛塩が、無機亜鉛塩である、実施形態23に記載の組成物。
28.無機亜鉛塩が、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態27に記載の組成物。
29.GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態22~28のいずれか1つに記載の組成物。
30.GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.03重量%である、実施形態29に記載の組成物。
31.1つ以上の他の無色または低着色のタンニンの濃度が、各々、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態22~30のいずれか1つに記載の組成物。
32.1つ以上の他の無色または低着色のタンニンが、各々、組成物の0.01重量%である、実施形態31に記載の組成物。
33.組成物が、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンと1つ以上の他の無色または低着色のタンニンとの組み合わせを含む、実施形態22~32のいずれか1つに記載の組成物。
34.それぞれ、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.01重量%~10重量%であり、1つ以上の他の無色または低着色のタンニンのものが、各々、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態33に記載の組成物。
35.それぞれ、GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.03重量%であり、1つ以上の他の無色または低着色のタンニンのものが、各々、組成物の0.03重量%である、実施形態34に記載の組成物。
36.亜鉛プロトポルフィリンIXをさらに含む、実施形態22~35のいずれか1つに記載の組成物。
37.亜鉛プロトポルフィリンIXが、組成物の0.1重量%~5重量%の範囲である、実施形態36に記載の組成物。
38.亜鉛プロトポルフィリンIXが、組成物の0.5重量%である、実施形態37に記載の組成物。
39.遊離亜鉛塩が、組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲である、実施形態23~38のいずれか1つに記載の組成物。
40.遊離亜鉛塩が、組成物の0.4重量%である、実施形態39に記載の組成物。
41.フッ化物化合物をさらに含む、実施形態22~40のいずれか1つに記載の組成物。
42.組成物が中に貯蔵される可鍛性の、または圧搾可能なチューブをさらに含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の組成物。
43.組成物が、練り歯磨きとして、かつ半透明ゲルとして、またはペーストとして配合される、実施形態1~21または42のいずれか1つに記載の組成物。
44.実施形態1~21または42~43のいずれか1つに記載の練り歯磨きを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の罹患を予防または抑制する、方法。
45.実施形態1~21または42~43のいずれか1つに記載の練り歯磨きを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の発生率あるいは可能性を低減する、方法。
46.投与するステップが、対象の歯のブラッシングを含む、実施形態44または45に記載の方法。
47.組成物が、口腔リンスまたはマウスウォッシュとして配合される、実施形態22~41のいずれか1つに記載の組成物。
48.実施形態47に記載の口腔リンスまたはマウスウォッシュを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の罹患を予防または抑制する、方法。
49.実施形態47に記載の口腔リンスまたはマウスウォッシュを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の発生率または可能性を低減する、方法。
50.投与するステップが、対象の口を口腔リンスまたはマウスウォッシュで濯ぎ流すことを含む、実施形態48または49に記載の方法。
51.組成物が、チューインガムとして配合される、実施形態22~41のいずれか1つに記載の組成物。
52.実施形態51に記載のチューインガムを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の罹患を予防または抑制する、方法。
53.実施形態51に記載のチューインガムを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の発生率または可能性を低減する、方法。
54.投与するステップが、チューインガムを噛むことを含む、実施形態52または53に記載の方法。
55.組成物が、口および/または咽頭に噴霧されるエアロゾルとして配合される、実施形態22~41のいずれか1つに記載の組成物。
56.実施形態55に記載のエアロゾルを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の罹患を予防または抑制する、方法。
57.実施形態55に記載の口腔リンスまたはマウスウォッシュを対象に投与することを含む、感冒または他の呼吸器もしくは咽頭感染の発生率または可能性を低減する、方法。
58.投与するステップが、対象の口および/または咽頭にエアロゾルを噴霧することを含む、実施形態56または57に記載の方法。
59.感染が風邪である、実施形態44~55または52~55または57~58のいずれか1つに記載の方法。
60.感染が風邪以外の上気道または咽頭感染である、実施形態44~55または52~55または57~58のいずれか1つに記載の方法。
61.感染がインフルエンザである、実施形態44~55または52~55または57から58のいずれか1つに記載の方法。
62.感染がコロナウイルス感染である、実施形態44~55または52~55または57~58のいずれか1つに記載の方法。
63.コロナウイルス感染がCOVID-19である、実施形態62に記載の方法。
64.GALALCOOL(登録商標)、タラタンニン、1つ以上の他の無色もしくは低着色のタンニン、またはそれらの組み合わせを含む溶媒あるいは他のビヒクルを含む、ウイルス感染の予防あるいは抑制のための、かつ吸入による投与のために処方された、組成物。
65.遊離亜鉛塩をさらに含む、実施形態64に記載の組成物。
66.亜鉛塩が、有機亜鉛塩である、実施形態65に記載の組成物。
67.有機亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態66に記載の組成物。
68.有機亜鉛塩が、グルコン酸亜鉛である、実施形態66に記載の組成物。
69.亜鉛塩が、無機亜鉛塩である、実施形態65に記載の組成物。
70.無機亜鉛塩が、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態69に記載の組成物。
71.GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態64~70のいずれか1つに記載の組成物。
72.GALALCOOL(登録商標)またはタラタンニンが、組成物の0.03重量%である、実施形態71に記載の組成物。
73.1つ以上の他の無色または低着色のタンニンの濃度が、各々、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態64~72のいずれか1つに記載の組成物。
74.1つ以上の他の無色または低着色のタンニンが、各々、組成物の0.01重量%である、実施形態73に記載の組成物。
75.組成物が、GALALCOOL(登録商標)と1つ以上の他の無色または低着色のタンニンとの組み合わせを含む、実施形態64~74のいずれか1つに記載の組成物。
76.それぞれ、GALALCOOL(登録商標)が、組成物の0.01重量%~10重量%であり、1つ以上の他の無色または低着色のタンニンのものが、各々、組成物の0.01重量%~10重量%である、実施形態75に記載の組成物。
77.それぞれ、GALALCOOL(登録商標)が、組成物の0.03重量%であり、1つ以上の他の無色または低着色のタンニンのものが、各々、組成物の0.03重量%である、実施形態76に記載の組成物。
78.亜鉛プロトポルフィリンIXをさらに含む、実施形態64~77のいずれか1つに記載の組成物。
79.亜鉛プロトポルフィリンIXが、組成物の0.1重量%~5重量%の範囲である、実施形態78に記載の組成物。
80.亜鉛プロトポルフィリンIXが、組成物の0.5重量%である、実施形態79に記載の組成物。
81.遊離亜鉛塩が、組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲である、実施形態65~80のいずれか1つに記載の組成物。
82.遊離亜鉛塩が、組成物の0.4重量%である、実施形態81に記載の組成物。
83.フッ化物化合物をさらに含む、実施形態64~82のいずれか1つに記載の組成物。
84.実施形態64~83のいずれか1つに記載の組成物を対象に吸入によって投与することを含む、ウイルス感染の罹患を予防または抑制する、方法。
85.実施形態64~83のいずれか1つに記載の組成物を対象に吸入によって投与することを含む、ウイルス感染の発生率または可能性を低減する、方法。
86.ウイルス感染が感冒である、実施形態84または85に記載の方法。
87.ウイルス感染症が感冒以外の上気道または咽頭感染である、実施形態84または85に記載の方法。
88.ウイルス感染がインフルエンザである、実施形態84または85に記載の方法。
89.ウイルス感染がコロナウイルス感染である、実施形態84または85に記載の方法。
90.コロナウイルス感染がCOVID-19である、実施形態89に記載の方法。
91.組成物が毎日1回投与される、実施形態83~90のいずれか1つに記載の方法。
92.組成物が毎日2回投与される、実施形態83~90のいずれか1つに記載の方法。
93.実施形態65~80のいずれか1つに記載の組成物を含む吸入器またはネブライザーを含む、送達装置。
【実施例
【0029】
実施例1
最初に、ケルセチンを、練り歯磨きのためのタンニン構成要素として試験し、ベース練り歯磨きに添加した。ベース練り歯磨きの135グラムあたり20μgのケルセチンでは、より多くのケルセチンは、使用者の歯ブラシ、および最終的にはその使用者の歯の表面の累積的な汚れのリスクを冒さずに添加されることはできないことが、視覚的に判断された。次いで、比較的安価で大量に市販されている没食子酸タンニンの高度に精製された抽出物(すなわち、GALALCOOL(登録商標))を、使用した。500mgのGALALCOOL(登録商標)は、6か月の毎日の使用の後でさえも、汚れを生じることなく練り歯磨きの135グラムチューブに添加され得ることが、見いだされている。
【0030】
別の実験では、没食子酸タンニンの高度に精製された抽出物(GALALCOOL(登録商標))の6%水性懸濁液および純粋なケルセチンを、調製した。1つの透明なナイロン製の毛の歯ブラシを、各懸濁液に入れ、1100Wの電子レンジ中で150秒(2.5分)加熱した。別々に、ケルセチン懸濁液の20倍での没食子酸タンニンの高度に精製された抽出物(GALALCOOL(登録商標))の水性の濃いペーストもまた、調製した。別の歯ブラシを、そのGALALCOOL(登録商標)ペースト中で同様に加熱した。次いで、歯ブラシを水道水中で濯いだ。GALALCOOL(登録商標)にさらされた2つの歯ブラシは染色を示さなかったが、ケルセチンに浸した歯ブラシは黄色がかった残留染色を有した。さらに、6%の水性懸濁液を有するカップからの水を、デカントした。ケルセチンカップは明らかな沈殿物を示したが、GALALCOOL(登録商標)カップはそのような沈殿物を示さなかった。
【0031】
実施例2
本発明者らは、口腔内の感染前ウイルスを不活化することによって風邪と戦うための練り歯磨きを開発した。アプローチは、選択タンニンの使用を通じて、接触時にウイルスを不活性化することである。タンニンはタンパク質を沈殿させることが知られており、ウイルスはタンパク質で覆われている。したがって、タンニンは、特に水溶性で加水分解性の場合、個々のビリオンに障害を引き起こすことができる。さらに、膜組織を通過するには大きすぎるビリオンを塊に集める(凝集させる)のには十分であり、そうでなければ、ビリオンは活動性感染を引き起こすであろう。
【0032】
選択タンニンと少量のグルコン酸亜鉛との混合物を標準的練り歯磨きベースに追加して使用すると、毎日歯の表面にブラッシングされ、口腔内で発泡する際に、2つの作用機序を安全に提供するコーティングが形成される:第1に、バリアが、口腔膜を通じた感冒ビリオンの浸透を抑制するように構築される。第2に、タンニンが、ビリオンのタンパク質を沈殿させ、それらを凝集させて不活性状態にする。亜鉛塩は、口の中でタンニンを付着させるのを補助できる亜鉛イオンを提供する。亜鉛イオン自体は、タンニンをタンパク質に架橋できるため、したがって、凝集するビリオンに相乗的に作用し、また、ビリオンのそれらの宿主細胞への侵入に必要とされる細胞受容体にビリオンを結合する際のリガンドとして機能するタンパク質を遮断できる。
【0033】
コロナウイルス:
有効成分(タンニンおよび亜鉛イオン)を取り出し、安全に吸入形態に適合させ、肺に分散させることは、コロナウイルスビリオン(またはインフルエンザビリオンなどの他のビリオン)を凝集させ、最小限の毒性学的リスクでウイルスを効果的に不活化できる。
【0034】
タンニン分子とビリオンの間の相互作用を例示するために、基剤は、有効成分(タンニンおよび亜鉛イオン)でコーティングは、次いで、ビリオンでコーティングされる。ウイルス表面およびそれらの凝集は、電子顕微鏡下で作成された顕微鏡写真で観察される。これらの成分を有する吸入器は、毒性学的または呼吸器刺激性の問題がある場合にそれを評価するために動物に対して試験される。そのような吸入器は、おそらく1日に1回使用されるであろう。次いで、動物モデルは、肺培養可能な(lung-incubatable)ウイルスに対するこれらの成分の効能を示すために使用される。
【0035】
これは、ワクチン接種ベースの(すなわち、株特異的)アプローチではない新規のアプローチである。それは、ビリオンの凝集が、免疫系がウイルスをより適切に識別し、免疫系にウイルス特異的根拠で抗体および免疫反応を惹起させることができるようにするが、抗体および免疫応答の惹起を伴うことさえなく、ビリオンの凝集は、ウイルスとは無関係に感染前のビリオンを不活化する新規の方法である。結果として、ワクチン接種ベースのアプローチに対するこのアプローチの1つの利点は、新しいCOVID-19コロナウイルス株の変異を含む、他の肺培養(lung-incubating)ビリオンを抑制できることである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態を記載すると、本発明は正確な実施形態に限定されないこと、ならびに様々な変更および修正が、添付の特許請求の範囲で定義されているように、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく当業者によって、そこで実施され得ることを、理解されたい。