(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】人工膝関節の脛骨部品用の脛骨ベースプレート、脛骨ベースプレートを含む脛骨部品、及び脛骨ベースプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20240711BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20240711BHJP
A61B 17/15 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61F2/38
A61B17/56
A61B17/15
(21)【出願番号】P 2021550321
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020054937
(87)【国際公開番号】W WO2020173956
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515326022
【氏名又は名称】リマコルポラーテ エッセ.ピ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】カターニ,ファービオ
(72)【発明者】
【氏名】デ マルティーノ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】フィエドレール,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】リップマン,ジョセフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ロー.ダリック
(72)【発明者】
【氏名】プレサーコ,ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】クエヴェード ゴンザーレス,フェルナンド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スクルーコ,ピーター ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】スクルーコ,トーマス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ティモシー エム.
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-065858(JP,A)
【文献】特開2011-092739(JP,A)
【文献】特開2017-006686(JP,A)
【文献】特開2019-000662(JP,A)
【文献】特開平05-277130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257507(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298950(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107260369(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
A61B 17/56
A61B 17/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝関節の脛骨部品(200)のための脛骨ベースプレート(1,1’,1”)であって、
前記人工膝関節の大腿骨部品の関節接合用のベアリング要素(100)を収容するように適合された近位向き表面(3)を含む本体中実部(2)と、
前記近位向き表面(3)と逆位にあり、近位側の脛骨に接触するように適合された多孔質部接触表面(6)を有する前記本体中実部(2)と一体形成された複数の多孔質部(5)と
を備え、
前記複数の多孔質部(5)は、前記本体中実部(2)に継ぎ目なく組み込まれており、
前記複数の多孔質部(5)は、前記本体中実部(2)に埋め込まれて
おり、
前記脛骨ベースプレート(1,1’,1”)は、付加製造によって全てが製造されている
脛骨ベースプレート(1,1’,1”)。
【請求項2】
前記複数の多孔質部(5)の厚さ(SP)は、0.8~1.2mmの間である
請求項
1に記載の脛骨ベースプレート(1,1’,1”)。
【請求項3】
前記複数の多孔質部(5)が、前記本体中実部(2)の固体部分(401)によって相互に離間されている
請求項1
又は2に記載の脛骨ベースプレート(1,1’,1”)。
【請求項4】
前記複数の多孔質部(5)から遠位方向に延びる1以上の安定化要素(30,40)
を備え、
前記1以上の安定化要素(30,40)は、前記近位側の脛骨に挿入されるように適合されている
請求項1~
3のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1,1’,1”)。
【請求項5】
前記1以上の安定化要素(40)は、微細動作を低減し、前記脛骨ベースプレート(1)の移植時の後方荷重による前記脛骨ベースプレート(1)からの離昇を回避すべく、前記脛骨ベースプレート(1)の前方に配置される
請求項
4に記載の脛骨ベースプレート(1,1’,1”)。
【請求項6】
前記1以上の安定化要素(40)は、
多孔質材料で生成された基体(42)と、
固体材料で生成された先端(41)と
を備え、前記固体材料は、前記近位側の脛骨への挿入を容易にし、前記先端(41)での骨の成長を制限する
請求項
5に記載の脛骨ベースプレート(1)。
【請求項7】
2つの安定化要素(30)は、前記脛骨ベースプレートの前面に対して後方に配置され、内外方向に整列されており、
前記2つの安定化要素(30)は、前記脛骨ベースプレートの大きさに応じて変化する直線距離だけ離間している
請求項
4~6のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1’)。
【請求項8】
前記2つの安定化要素(30)は、当該ベースプレートの前後方向の幅のうちの55%に少なくとも配置されている
請求項
7に記載の脛骨ベースプレート(1’)。
【請求項9】
前記安定化要素(30)は、多孔質材料で全てが生成されている
請求項
4~8のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1,1’,1”)。
【請求項10】
中央矢状面に対して対称形状である
請求項1~
9のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1,1’)。
【請求項11】
中央矢状面に対して非対称形状である
請求項1~
9のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1”)。
【請求項12】
前記複数の多孔質部(5)は、中央矢状面に対して対称的なパターンを画定する
請求項1~
11のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1,1’)。
【請求項13】
例えばEBMなどの付加製造によって、前記脛骨ベースプレート(1,1’,1”)を多層製造する工程
を含む
請求項1~
12のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1,1’,1”)を製造する方法。
【請求項14】
前記脛骨ベースプレート(1,1’,1”)は、チタン又はチタン合金で生成される
請求項
13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1)と、
前記脛骨ベースプレート(1)の前記近位向き表面(3)の上に収容されるように適合されたベアリング要素(100)と
を備える
人工膝関節用の脛骨部品(200)。
【請求項16】
請求項
4~
12のいずれか一項に記載の脛骨ベースプレート(1,1’,1”)を有する部品のキットであって、
座部(21)を画定する前記近位向き表面(3)を取り囲む外周部の壁(20)と、
前記近位側の脛骨に移植されている前記脛骨ベースプレート(1,1’,1”)を脱離すべく、前記1以上の安定化要素(10)を切断するように適合された移植片脱離工具(300)と
を備え、
前記移植片脱離工具(300)は、
鋸刃を前記1以上の安定化要素(10)に案内するように適合された切断ガイド(301)と、
前記移植片脱離工具(300)を前記脛骨ベースプレート(1,1’,1”)に固定するように適合された前記切断ガイド(301)を保持するアダプタ(400)と
を有し、
前記アダプタ(400)は、
前記アダプタ(400)の前記座部(21)への挿入時に前記壁(20)に接触するように適合された第1アダプタ部(410)及び第2アダプタ部(430)
を含み、
前記第1アダプタ部(410)及び前記第2アダプタ部(430)は、前記アダプタ(400)を前記脛骨ベースプレート(1,1’,1”)に固定すべく、前記近位向き表面(3)に平行な摺動方向(X)に相互に離間して、前記壁(20)に前記第1アダプタ部(410)及び前記第2アダプタ部(430)を接触可能にする
キット。
【請求項17】
前記第2アダプタ部(430)は、
所定の大きさの脛骨ベースプレート(1,1’,1”)の座部(21)を固定すべく、前記アダプタ(400)を適合させる形状の第2アダプタ部組立拡張部(432)
を有し、
前記第2アダプタ部組立拡張部(432)は、異なる大きさの脛骨ベースプレートの座部に適合させる別個の第2アダプタ部組立拡張部と交換可能である
請求項
16に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工膝関節の脛骨部品のための脛骨ベースプレートに関する。更に具体的には、骨の成長を可能にする多孔質部を少なくとも含む形式の脛骨ベースプレートに関する。
【0002】
当該脛骨ベースプレートは、人工膝関節のセメントレス型の脛骨部品において好適に用いることができる。
【0003】
また、本開示は、当該脛骨ベースプレートを含む脛骨部品と、当該脛骨ベースプレートの製造方法とに関する。
【0004】
また、本開示は、脛骨ベースプレートと移植片脱離工具とを備えるキットに関する。
【背景技術】
【0005】
当該技術分野において周知のように、完全な人工膝関節は通常、大腿骨の遠位端に取り付けられる大腿骨部品、及び脛骨近位端に取り付けられる脛骨部品という、自然な関節の運動力学を再現する、相互に接合する2つの人工関節部品を備える。
【0006】
脛骨部品は、事前に横方向に切除された脛骨プラトーに取り付けられる金属製のベースプレートを備える。金属製のベースプレートの上には、通常、大腿骨部品が関節接合する低摩耗性のベアリングとして作用する高分子ライナーが固定されている。
【0007】
骨への固定の形式によって、当該技術で用いられる人工関節は、セメント式又はセメントレス式と称される。
【0008】
セメント式の人工膝関節においては、部品は骨セメントによって骨に固定される。一方、セメントレス式の人工膝関節は、骨に直接固定される。
【0009】
移植片の骨統合(osteointegration)を促進すべく、セメントレス式のベースプレートには、通常、骨の成長を可能にするように骨と接触する多孔質材料が設けられている。更に、骨に挿入される安定化要素は、通常、ベースプレートの骨接触面から延びている。
【0010】
更に具体的には、一体式の脛骨部品は、高分子ライナーの下に貼付又は融合された多孔質材料で全てが生成されたベースプレートを備える。
【0011】
セメントレス式の脛骨部品は、組立式にすることもできる。この方式の場合、脛骨部品は、高分子ライナーを着脱可能に接合可能なベースプレートを備える。当該方式では、外科医は、膝関節のバランスを取るために、高さの異なるものからライナーを選択でき、また、損傷の場合にライナーを交換できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該形式の部品においては、ベースプレートは、近位面がライナーを収容するように設計された近位側の中実部、及び遠位面が脛骨プラトーに接触する遠位側の多孔質部という、2つの部分を備えている。
【0013】
多孔質部は、中実部の下に貼付又は融着される。
【0014】
様々な態様での利点があり、本質的には目的に応じているものの、具体的には、ライナーとベースプレートとの間(組立式の脛骨部品)、又はベースプレートの中実部と多孔質部の間(副次的な工程において中実部に多孔質部を添加する従来技術)に、界面(貼付材料又は融着材料)が存在することにより、従来技術のセメントレス式の脛骨部品には数々の弱点がある。
【0015】
脛骨部品は、移植片の総持続期間中において、周期的な荷重を受けるため、固体部分と多孔質部との間の界面の存在により、層間剥離及び電気化学的作用などの劣化現象が促進される。当該劣化現象は、界面の構造的な剛性及び機械的強度を低下させ、移植片の破損を引き起こす。
【0016】
更に具体的には、当該現象は、骨への不適切な荷重伝達を引き起こし、移植片の部分的な脱離を少なくとも決定づける骨吸収を促進する。
【0017】
本開示の技術的課題は、従来技術の弱点を克服可能な構造的かつ機能的な特徴を有するベースプレート、更に具体的には、移植片の総持続期間中における骨への適切な固定と移植片の安定性とを保証するとともに、構造的な剛性及び機械的な耐性が高いベースプレートを提供することである。
【0018】
本開示の別の目的は、革新的な上記の脛骨ベースプレートを備える脛骨部品と、当該脛骨ベースプレートを製造する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
事前に特定した技術的課題は、
人工膝関節の大腿骨部品の関節接合用のベアリング要素を収容するように適合された近位向き表面を含む本体中実部と、
近位向き表面と逆位にあり、近位側の脛骨に接触するように適合された多孔質部接触表面を有する当該本体中実部と一体形成された複数の多孔質部と
を備え、
複数の多孔質部は、本体中実部に継ぎ目なく組み込まれ、本体中実部に埋め込まれている
人工膝関節の脛骨部品用の脛骨ベースプレートによって解決される。
【0020】
換言すると、脛骨ベースプレートは、固体材料の本体部と、本体部に一体形成され、多孔質と固体との間を継ぎ目なく遷移する複数の多孔質材料の部分を備える単一の要素である。
【0021】
界面がないことにより、従来技術の脛骨ベースプレートと比較して、構造的な剛性及び接着抵抗が増加し、粗大な皮膜に特有の層間分離、脱離、及び電気化学的作用の危険性が軽減される。
【0022】
脛骨ベースプレートは、チタン又はチタン合金で生成できる。
【0023】
脛骨ベースプレートは、例えば電子ビーム溶解(EBM:Electron Beam Melting)などの付加製造を用いて、単一工程においてであっても全てが製造できる。
【0024】
付加製造により、脛骨ベースプレートの全体を多層構築可能となる。この方式によれば、従来技術のベースプレートのように、中実部と多孔質部とを別個に製造して、一体に構築することなく、中実本体に多孔質部が組み込まれた、構造が複雑な脛骨ベースプレートを製造できる。
【0025】
多孔質部は、多孔質構造が完全に相互接続可能な、0.8~1.2mm、例えば1.2mmの厚さで生成でき、骨の成長に最適な基部を提供する。
【0026】
当該方式において、固相と多孔質相との厚さの比率は、良好な骨の成長状態を保証し、ベースプレートの移植時の微細動作を低減するように最適化される。
【0027】
脛骨ベースプレートは、本体中実部に組み込まれた複数の多孔質部を有し、多孔質部は本体中実部の一部によって相互に離間されている。換言すると、多孔質部は、本体中実部に埋め込まれている。多孔質部の間の固体部分は、ベースプレートの強度を増加させる構造全体の補強材として作用する。
【0028】
脛骨ベースプレートは、近位向き表面と逆位にある、脛骨ベースプレートの骨接触面から遠位方向に延び、近位側の脛骨に挿入されるように適合され、切除された脛骨プラトーの骨組織と直接接触するように適合された1以上の安定化要素を有することができる。
【0029】
更に具体的には、安定化要素は、複数の多孔質部から延ばすことができる。
【0030】
1以上の安定化要素は、微細動作を更に低減し、荷重伝達を改善すべく、部分的に又は全てが多孔質材料で、例えば多孔質部と同一材料で生成される。
【0031】
多孔質の安定化要素は、固体のものと比較して切除が容易である。
【0032】
1以上の安定化要素は、て、微細動作を低減し、脛骨ベースプレートの移植時の後方荷重又は逆方向の荷重による脛骨ベースプレートからの離昇を回避すべく脛骨ベースプレートの前方に配置できる。
【0033】
更に具体的には、前方にスパイクが設けられる。当該スパイクは、側面が凹状の三角形の基部を実質的に有し、実質的にピラミッド型の形状である。当該三角形の基部は、他よりも長い1以上の辺を有する。更に具体的には、ピラミッドの基部は実質的に正三角形にでき、ピラミッドの基部はスパイクの先端を基準として前方に位置する。
【0034】
1以上の安定化要素は、多孔質材料で生成された基体と、固体材料で生成された先端とを更に有することができ、固体材料は近位側の脛骨への挿入を容易にし、前記先端での骨の成長を制限し、変更を容易にする。
【0035】
脛骨ベースプレートは、脛骨ベースプレートの前面に対して後方に配置された2以上の安定化要素を有することができる。脛骨ベースプレートは、内外方向に整列し、脛骨ベースプレートの大きさに応じて変化する線形距離だけ離間した後方の2つの安定化要素を有し得る。
【0036】
例えば、直線距離は24.7~50.7mm、又は脛骨ベースプレートの大きさの40.95%~61.6%にできる。
【0037】
後方の安定化要素は、ベースプレートの前後方向の幅のうちの55%に配置できる。当該配置は、微細動作を最小化するとともに、脛骨の後部皮質を貫通する危険性を低減するのに寄与する。代替的な実施形態では、後方の安定化要素は整列させないこともできる。
【0038】
後方の安定化要素は、多孔質材料で全てが生成できる。
【0039】
脛骨ベースプレートは、中央矢状面に対して対称的な形状にできる。代替的な実施形態では、中央矢状面対して非対称にできる。
【0040】
複数の多孔質部は、骨統合、及びベースプレートの下にある骨への荷重伝達を最適化するパターンで分配できる。複数の多孔質部は、中央矢状面に対して対称的なパターンを画定できる。
【0041】
更に、当該技術的課題は、例えばEBMなどの付加製造によって、脛骨ベースプレートを多層製造する工程を含む、上述の脛骨ベースプレートを製造する方法によっても解決される。
【0042】
更に、当該技術的課題は、上述の脛骨ベースプレートと、脛骨ベースプレートの近位向き表面に収容されるように適合されたベアリング要素とを備える人工膝関節用の脛骨部品によって解決される。
【0043】
都合の良いことに、1以上の安定化要素は、鋸刃を1以上の安定化要素に案内するように適合された切断ガイドと、移植片脱離工具を脛骨ベースプレートに固定するように適合された切断ガイドを保持するアダプタとを備える移植片脱離工具によって切断でき、アダプタは、当該アダプタの座部への挿入時に、座部を画定する脛骨ベースプレートの近位向き表面を囲む壁に接触するように適合された第1アダプタ部及び第2アダプタ部を有し、第1アダプタ部及び第2アダプタ部は、近位向き表面に平行な方向に相互に離間でき、第1アダプタ部及び第2アダプタ部を前記壁で接触させ、アダプタを脛骨ベースプレートに固定させる。
【0044】
第2アダプタ部は、所定の大きさの脛骨ベースプレートの座部にアダプタを固定すべく、アダプタに適合させる形状の第2アダプタ部組立拡張部を有し、第2アダプタ部組立拡張部は、異なる大きさの脛骨ベースプレートの座部に適合させる別個の第2アダプタ部組立拡張部と交換可能である。
【0045】
複数の第2アダプタ部組立拡張部を提供することにより、移植片脱離工具は、異なる大きさ、形状、及び/又は寸法の脛骨ベースプレートに適合できる。
【0046】
更に、アダプタは、脛骨ベースプレートのそれぞれの歯部の下に挿入されてアダプタを座部に保持するように設計されたアダプタの歯部を有することができる。都合の良いことに、脛骨ベースプレートの歯部は、ベアリング要素を座部に保持するために用いられるものと同一である。
【0047】
換言すると、移植片脱離工具は、ベアリング要素を収容するために用いる同一の特徴を用いて、脛骨ベースプレートに固定できる。
【0048】
切断ガイドは、脛骨ベースプレートの丸みを帯びた形状、更に具体的には脛骨ベースプレートの前側の輪郭に沿った、実質的に弓状の形状を有することができる。
【0049】
移植片脱離工具は、第1アダプタ部及び第2アダプタ部を往復運動させる摺動機構を有することができる。
【0050】
摺動機構は、レバーを有することができ、第1レバー端部が第2アダプタ部に蝶番式に取り付けられ、レバーの別の点が、第1アダプタ部及び第2アダプタ部の移動方向と直交する摺動方向に、第1アダプタ部に対して平行移動させられる。
【0051】
当該方式により、レバーの第1回転方向への回転は、第1アダプタ部及び第2アダプタ部を相互に離間し、レバーの第1回転方向と反対の第2回転方向への回転は、第1アダプタ部及び第2アダプタ部を近接させる。
【0052】
移植片脱離工具は、第1アダプタ部及び第2アダプタ部が脛骨ベースプレートの座部に挿入され、脛骨ベースプレートの近位向き表面を取り囲む壁に最大の間隔をあけて相互に接触する際に、レバーを固定するための固定手段を更に有することができる。この方式によると、移植片脱離工具は、脱離手順中の力や、安定化要素の切断中の鋸刃の振動に耐えられるように、脛骨ベースプレートに堅牢に固定される。
【0053】
固定手段は、レバーと一体形成された弾性要素を有している。弾性要素は、レバーが第1回転方向に全回転したときに、第1アダプタ部の第2スロットに収容され、第2スロットの第1の第2端部に接して最大に圧縮されるように設計され、第1アダプタ部及び第2アダプタ部の一方は、他方に対して最大に間隔をあけて配置される。
【0054】
このように、弾性体は、安定化ピンの切断中に、ベースプレートの壁に接触した第1アダプタ部及び第2アダプタ部を維持できる。
【0055】
弾性要素は、実質的にU字型の形状を有することができ、第1弾性要素端は、第1レバー端に固定され、第2弾性要素端は、第1レバー端と第2レバー端との間のレバーポイントに固定される。
【0056】
更なる特徴及び利点は、例示のために提供され、限定されない添付の図を参照した、例示的であるが排他的ではない、本開示の実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、本開示による脛骨ベースプレートの第1実施形態の遠位側の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図1の脛骨ベースプレートの近位側の斜視図を示す。
【
図5】
図5は、
図1の脛骨ベースプレートの近位側の図を示す。
【
図6】
図6は、
図5の脛骨ベースプレートの中央矢状面に沿った切断断面
図A-Aを示す。
【
図7】
図7は、安定化ペグの中心を通り、
図5の脛骨ベースプレートの矢状面に平行な切断断面
図C-Cを示す。
【
図9】
図9は、本開示による脛骨部品の遠位側の斜視図を示す。
【
図15】
図15は、本開示による脛骨ベースプレートの第2実施形態の近位側の斜視図を示す。
【
図18】
図18は、
図16の安定化要素の中心を通り、脛骨ベースプレートの矢状面に平行なB-B断面図を示す。
【
図19】
図19は、
図15の脛骨ベースプレートの近位側の図と、関連する後方図とを示しており、3つの異なる大きさの例示である。
【
図20】
図20は、本開示による脛骨ベースプレートの第3実施形態の近位側の斜視図を示す。
【
図24】
図24は、
図21の安定化要素を通り、脛骨ベースプレートの矢状面に平行なB-B断面図を示す。
【
図25】
図25は、
図1の脛骨ベースプレートの安定化要素を切断するための移植片脱離工具の斜視図を示す。
【
図35】
図35は、
図1の脛骨ベースプレートに取り付けられた、
図35の移植片脱離工具を含むアセンブリの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
添付の図を参照すると、本開示による脛骨ベースプレートの例示的な実施形態は、一般的に、符号1、符号1’、及び符号1”で識別されている。
【0059】
本明細書において用いられる「近位側(proximal)」、「遠位側(distal)」、「上側(superior)」、「下側(inferior)」、「内側(medial)」、「外側(lateral)」との用語は、既知の方法において近位側の脛骨に移植された際の脛骨ベースプレートの位置を意味する。更に具体的には、「近位側」との用語は、心臓に近いことを意味し、「遠位側」との用語は、心臓から更に遠くにあることを意味する。また、「下側」との用語は足の方向を意味し、「上側」との用語は頭の方向を意味する。「前方(anterior)」との用語は正面部分又は顔の方向を意味し、「後方(posterior)」との用語は身体の背中側を意味する。「内側」との用語は身体の正中線の方向を意味し、「外側」のと用語は身体の正中線から離れることを意味する。
【0060】
さらに、平面とは、前後方向に垂直な前頭面(frontal plane)、内外方向に垂直な矢状面(sagittal plane)、遠近方向に垂直な水平面(transverse plane)であり、既知の事項において規定されている。「中央矢状面(central sagittal plane)」は、脛骨板の最も外側の点と最も内側の点を結ぶ線の中心(脛骨板の内外中心)を通る矢状面に平行な面と規定する。
【0061】
前記脛骨ベースプレート1、1’、及び1”は、特に、人工膝関節のセメントレス式で組立式の脛骨部品200用に適合されている。
【0062】
脛骨ベースプレート1は、脛骨の近位部を置換するように設計されており、あらかじめ横方向に切除された脛骨プラトー上に直接移植され、人工膝関節の大腿骨部品が関節する高分子ライナーなどのベアリング要素100を近位部に収容するように設計されている。
【0063】
脛骨ベースプレート1は、中央矢状面に対して対称な形状の本体中実部2を備える。本体中実部2の水平面における外郭は、実質的に腎臓形状であり、切除された脛骨プラトーの外側の水平面の周縁に近似しており、後十字靭帯を収容すべく、第1顆部51と第2顆部52との間の中央後方の位置に配置された凹部50を有している。
【0064】
脛骨ベースプレートの代替的な実施形態は、中央矢状面に対して非対称な形状を有することができる。例えば、
図20~24に示す脛骨ベースプレート1”を参照されたい。本体中実部2は、固体材料で生成され、ベアリング要素100が配置可能な近位向き表面3によって近位側に分画されている。
【0065】
本体中実部は、単一の材料、更に具体的にはチタン又はチタン合金で生成される。
【0066】
図1に示すように、凹部50を除く近位向き表面3は、近位方向に延びる外周部の壁20によって分画されている。外周部の壁20は、ベアリング要素100を収容するための座部21を画定している。壁20は、ベアリング要素100を近位向き表面3に固定すべく協働する。代替の実施形態では、他の形式の固定機構を設けることができる。
【0067】
近位向き表面3の中心部53からは、ベアリング要素100の座部21への挿入を案内する位置決めの島状部24が延びている。代替的な実施形態では、島状部24は省略できる。
【0068】
外周部の壁20には、ベアリング要素100を座部21に保持する保持手段が設けられている。
【0069】
更に具体的には、保持手段は、壁20が第1顆部51を後側で分画する場合に壁20の上部から前側に延びる第1後歯部22aと、壁20が第2顆部52を後側で分画する場合に壁20の上部から前側に延びる第2後歯部22bとを有する。また、保持手段は、壁20の前方中央部の上部から後側に延びる前歯部22cを有する。
【0070】
図6~8は、保持手段22a、22b、及び22cが可視可能な脛骨ベースプレート1の様々な水平面を示している。
【0071】
図12~14は、
図6~8の横断面図であり、ベアリング要素100が脛骨ベースプレート1の座部21に嵌合され、保持手段22a、22b、22cによって保持されている。これらの図に見られるように、ベアリング要素100は、脛骨ベースプレート1の対応する歯部22a、22b、及び22cの下に挿入されてベアリング要素100を座部21に保持するように設計された接合型のベアリング要素の歯部122a、122b、及び122cを有する。
【0072】
ベアリング要素100は、既知の方法で、大腿骨部品の人工的な顆部の凸面に適合するために、顆部51、52に対応する凹面151、152を有する形状である。他の形状のベアリング要素の表面を設けることは可能である。更に、
図9及び
図10に示すように、ベアリング要素100の正面には、ベアリング要素100を座部21から脱離するのに好適な2つのタブ101が設けられている。
【0073】
図4及び
図5は、近位向き表面3と逆位にあり、切断された脛骨プラトーの骨組織に直接接触するように適合された脛骨ベースプレート1の骨接触面4を示している。
【0074】
脛骨ベースプレート1の本体中実部2においては、骨接触面4の多孔質部接触表面6から本体中実部2に延びる複数の多孔質部5が継ぎ目なく組み込まれている。
【0075】
多孔質部は単一の材料で、より具体的には本体中実部と同一材料で生成される。
【0076】
多孔質部5の存在により、脛骨ベースプレート全体の剛性が低下する。ベースプレートの剛性及び弾性は、必ずではないが、本体中実部の厚さSBに対する多孔質部の厚さSP、及び多孔質部5の数、寸法、及び分布に依存することもありうる。
【0077】
本開示の一実施形態では、多孔質部の厚さSPは、本体中実部の厚さSB(壁20及び島状部(jap)24を除いて算出、例えば、
図8の例を参照)と比較して実質的に半分である。例えば、本体中実部の厚さSBは2mmであり、多孔質部の厚さSPは1.2である。
【0078】
図4及び
図5に示すように、多孔質部5は、中央矢状面に対して対称となるパターンで分布しており、本体中実部2の固体材料によって相互に離間されている。
【0079】
複数の多孔質部5は、より具体的には、本体中実部2の固体部分401によって相互に離間されている。
【0080】
換言すると、各々の多孔質部は、骨組織に接触するように適合された多孔質部接触表面6を除いて、本体中実部の固体材料によって囲まれている。
【0081】
各々の多孔質部5は、海綿骨の形態を模倣した通孔率の高い規則的な三次元の六角形のセル構造で構成されている。
【0082】
高い開孔率及び適切な孔径により、細胞の移動及び血管形成が促進され、酸素、栄養、イオン、骨誘導因子の輸送が容易になり、新規の骨の形成が促進される。換言すると、孔隙度により、骨伝導及び骨誘導の組み合わせの成功を示す、骨の成長及び骨統合が促進される。
【0083】
多孔質部5の多孔質部接触表面6は、多孔質構造の粗度のため、摩擦係数が高い領域である。多孔質部接触表面6の接触により、移植片の一次的安定性が向上し、微細動作を低減できる。ベースプレートの剛性の生理的な負荷への適合による応力遮蔽の効果の低減とともに、生物学的固定(二次的安定性)、骨と移植片との機械的な内部固定が促進する。
【0084】
脛骨ベースプレートの代替的な実施形態は、様々な対称パターンの多孔質部5を有することができる。更に具体的には、本実施形態においては、プレートの強度を向上させるために、多孔質部をプレートの中心部に配置することを回避している。例えば、
図15~18に示す脛骨ベースプレート1’を参照されたい。
【0085】
脛骨ベースプレート1は、骨接触面4から遠位方向に延び、骨に挿入されるように適合された安定化要素30及び31を更に備える。
【0086】
本開示の実施形態による脛骨ベースプレート1、1’、及び1”は、
先端31が曲線的であり、かつ、横断面が実質的に六芒星の形状であるペグ30、換言すると、横断面が、側面が凹んだ六角形である細長いピンであるペグ30、及び
先端41が尖ったスパイク40
という、形状が異なる2種類の安定化要素30及び40を備える。
【0087】
スパイク40は、側面が凹状の実質的に三角形の基部を有する実質的にピラミッド型の形状である。この三角形の基部は、他の辺よりも長い1以上の辺を有している。更に具体的には、例えば、
図5に示したように、ピラミッドの基部は実質的に正三角形であり、基部は先端41を基準にして前方に配置されている。
【0088】
更に具体的には、脛骨ベースプレート1には、脛骨ベースプレート1の中央矢状面に対して対称な位置に配置された2つのペグ30が設けられており、1つは第1顆部51に対応づけられており、1つは第2顆部52に対応づけられている。
【0089】
さらに、ペグ30はベースプレートの後方に近い位置にある。
【0090】
各々のペグ30は、例えば多孔質部5と同一の多孔質材料で生成され、多孔質部5から延びている。したがって、ペグ30は、多孔質部接触表面6から遠位方向に延びる多孔質部5の突起である。
【0091】
ペグ30は、内外方向に整列している。ペグ30の間の直線距離は、脛骨ベースプレートの大きさに応じて変えることができる。
【0092】
図19は、ペグ30の間の距離が異なる3つの大きさの脛骨ベースプレート1”の例を示している。上述は、他の実施形態の脛骨ベースプレートにも適用可能である。
【0093】
一方、スパイク40は、中央かつ前方の位置に配置され脛骨ベースプレート1の中央矢状面の対称性に対して対称な形状となっている。
【0094】
スパイク40は、多孔質部として多孔質材料で生成された基体42と、本体中実部として固体材料で生成された先端41とを有し、多孔質部5から延びている。先端41は、基体42と継ぎ目なく一体形成されている。
【0095】
本開示の実施形態による脛骨ベースプレート1は、単一の材料で、更に具体的にはチタン又はチタン合金で生成されている。
【0096】
以下では、例えば変更手術の際に、脛骨ベースプレート1の骨接触面4から遠位方向に延びる安定化要素30及び40を切断して、前記脛骨ベースプレート1を脱離するのに適した移植片脱離工具の好適な埋め込み方法を説明する。
【0097】
図25-45では、移植片脱離工具は一般的に符号300で示されている。
【0098】
移植片脱離工具300は、近位向き表面3を囲む壁20に接触し、脛骨ベースプレート1の座部21に保持されるように設計されたアダプタ400を有している。
【0099】
更に具体的には、アダプタ400は、後述するように、アダプタ400を座部21に保持するために、脛骨ベースプレート1の各々の歯部22a、22b、及び22cの下に挿入されるように設計された接合型のアダプタの歯部422a、422b、及び422cを有している。
【0100】
アダプタ400は、第1アダプタ部410と第2アダプタ部430とを有している。
【0101】
第1アダプタ部410は、当該第1アダプタ部410と一体形成された移植片脱離工具300の切断ガイド301を支持する。
【0102】
第2アダプタ部430は、第1アダプタ部410と摺動可能に連結し、アダプタ400の座部21への挿入時に、脛骨ベースプレート3の近位向き表面3に平行な摺動方向Xにおける第1アダプタ部と第2アダプタ部との間の相対的な平行移動を可能にする。
【0103】
2つのピン411は、第1アダプタ部410から突出しており、第2アダプタ部430のそれぞれの穴413に摺動可能に挿入され、第1アダプタ部及び第2アダプタ部の相対的な平行移動を案内する。
【0104】
更に、第2アダプタ部430は、脱離可能に連結された、第2アダプタ部主要素431及び第2アダプタ部組立拡張部432を有している。更に具体的には、第2アダプタ部主要素431は、穴413を有し、第1アダプタ部410に対して相対的に移動可能であり、第2アダプタ部組立拡張部432は、第2アダプタ部主要素431に連結され、具体的には、脛骨ベースプレート1の壁20に接触するように形成されている。
【0105】
都合の良いことに、第2アダプタ部組立拡張部432は、各々の脛骨ベースプレート1の大きさに応じてそれぞれ異なる大きさで提供できる。本実施形態では、第2アダプタ部組立拡張部432は、ピン414によって第2アダプタ部主要素431に連結されている。
【0106】
上述の切断ガイド301は、アダプタ400の座部21への挿入時に、取付要素30、40を切断するために、脛骨ベースプレート1の骨接触面4の直下に鋸刃を案内するのに好適である。実際に、切断ガイドの開口部は、アダプタ400の真下の平面上に配置されている。
【0107】
切断ガイド301は、脛骨ベースプレート1の曲線形状、更に具体的には脛骨ベースプレート1の前側の形状に沿った、実質的に弓状の形状である。
【0108】
第1アダプタ部410と第2アダプタ部430の相対動作は、摺動機構500によって作動する。
【0109】
摺動機構500は、第2アダプタ部主要素431に蝶番式に取り付けられた第1レバー端部502と、第1レバー端部502と逆位にあり、レバー501を回転させるために自由に押される第2レバー端部503とを有するレバー501を備える。
【0110】
第1レバー端部502と第2レバー端部503との間に位置するレバー501の点504は、当該点504が摺動方向Xに直交し、かつアダプタ部410及び430の摺動面に平行な方向Yに、第1アダプタ部410に対し平行移動することを制限する方式で、第1アダプタ部410に連結されている。更に具体的には、点504には、第1スロット端部411aと第2の第1スロット端部411bとの間に延在する第1アダプタ部410の第1スロット411を摺動する、レバーと一体形成されたスライダ505が設けられている。
【0111】
レバー501の第1回転方向Dへの回転により、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430は相互に離間し、レバー501の第1回転方向Dと逆方向の第2回転方向Sへの回転は、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430を近接させる(
図42参照)。レバー501の第1回転方向Dへの回転は、スライダ505が第2の第1スロット端部411bに接触したときに停止し、レバー501の第2回転方向Sへの回転は、スライダ505が第1スロット端部411aに接触したときに停止する。
【0112】
また、レバー501は、回転中に、第1の第2スロット端部412a及び第2の第2スロット端部412bから、アダプタ部410及び430の摺動面と直交する平面上で摺動方向Xに延びる第2スロット412に挿入されている。
【0113】
移植片脱離工具300は、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430が相互に最大に間隔をあけているときに、レバー501を固定するための固定手段600をさらに備えている。
【0114】
固定手段600は、レバー501に固定された弾性要素601を有する。例えば
図27に示すように、弾性要素601は、実質的にU字形状であり、第1弾性要素端部601aは第1レバー端部502に固定されており、第2弾性要素端部601bは第2レバー端部503に固定されている。弾性要素601は、レバーが第1回転方向Dに回転している間は第2スロット412に収容され、レバー501が第1回転方向Dに完全に回転したときに第2スロット412に最大に圧縮されるように寸法設定されており、スライダ505は第2の第1スロット端部411bに接し、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430は相互に最大の間隔を有している。
【0115】
以下では、
図40~45を参照して、第1回転方向Dに完全に回転している間の工具300の動作を説明する。
【0116】
図40及び
図41においては、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430が相互に接触し、レバー501が第2回転方向Sに回転してスライダ505が第1スロットの端部411aに接触し、弾性要素601が第2スロット412からほとんど出ている、閉じた構成の工具300を示している。
【0117】
レバー501が第1回転方向Dに回転すると、スライダ505が第1スロット411に摺動し、弾性要素601が第2スロット412に入る間に、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430が相互に徐々に離間する。
【0118】
図42及び
図43は、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430が相互に最大の間隔をあけて配置され、弾性要素601が圧縮されずに第2スロット412内に部分的に入っている拡張した構成の工具300を示している。
【0119】
工具300を閉じた状態から始めて、
図37~41に示すように、工具300は脛骨ベースプレート1の座部21に挿入され、脛骨ベースプレート1の対応する歯部22a及び22bの下に後方のアダプタの歯部322a及び322bを挿入して、脛骨ベースプレート1の壁20でアダプタ400の第2アダプタ部430を後方に接触させる。脱離ガイド300が脛骨プレートに挿入されると、脛骨プレートの壁22との接触により、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430の延びが制限される。当該制限により、弾性要素601が圧縮される。当該状況は、弾性要素601の最大圧縮に対応する。
【0120】
レバー501の第1回転方向Dへの回転を継続した場合、脛骨プレートへの挿入がない場合には、アダプタ部410及び430からの延びが小さくなる。
【0121】
脱離ガイドが脛骨プレートに挿入された場合、弾性要素601はわずかに減圧し、レバー501の回転が継続される。当該回転の継続は、スロット505の末端位置411bによって制限される。当該末端位置は、弾性要素601の圧縮により、脱離ガイドを脛骨プレートに堅牢に固定し、側方では脛骨プレートの壁に対して圧縮力を生じさせ、他方ではレバー501に第1回転方向の力を生じさせる。
【0122】
図44及び45は、第1アダプタ部410及び第2アダプタ部430が相互に間隔をあけて配置され、レバー501が第1回転方向Dに応じて回転し、スライダ505が第2の第1スロット端部411bに接触し、弾性要素601が第2スロット412に最大限に圧縮された阻止状態の構成の工具300を示している。
【0123】
脛骨プレートから脱離ガイドのブロックを解除するためには、逆回転中のレバー501に力を加える必要がある。当該力によって、弾性要素の圧縮力を補い、レバー501を第2回転方向Sに移動させる必要がある。
【0124】
脛骨のベースプレートには多くの利点がある。
【0125】
都合の良いことに、本開示の脛骨ベースプレートは、多孔質材料と固体材料の間の界面がなく、本体中実部に継ぎ目なく組み込まれている1以上の多孔質部を備える。
【0126】
本体中実部と多孔質部との間の連続した遷移により、構造上の弱点となる多孔質材料と固体材料の間に界面がある従来技術の脛骨ベースプレートと比較して、更に高い構造的な剛性及び引張抵抗を更に高くできる。
【0127】
脛骨ベースプレートの構造の一体形成により、粗大な皮膜に特有の層間分離、脱離、及び電気化学的作用などの危険性が軽減される。
【0128】
都合の良いことに、本開示の脛骨ベースプレートは、例えばEBMのような付加製造によって全てが製造できる。
【0129】
脛骨ベースプレートの設計は、出願人が、本体中実部における多孔質部の厚さ及び分布、並びに安定化要素の位置、材質、及び数量が、微細動作(すなわち、移植片の一次安定性)及び隣接する骨への荷重伝達(すなわち、骨の応力遮蔽)に与える影響について正確な研究を実施することによって最適化されている。
【0130】
更に具体的には、具体的な研究においては、大腿骨部品、脛骨ライナー、脛骨プレートからなる人工膝関節を装着した患者を対象に、人工膝関節の生体力学及び運動力学を評価するための透視試験を実施した。
【0131】
並行して、人工膝関節置換術を受けた患者に基づく、脛骨のモデルデータベースを作成した。通常、骨のデータベースは健康な骨の構造のみを報告するため、当該工程は適切であった。しかしながら、健康な骨の荷重伝達は、人工膝関節置換術を受けている患者とは異なっている。人工関節が同一設計の患者の生理的な荷重状態、及び機械的特性がTKAの原因となる欠陥を持つ骨に対応する骨モデルという2つの入力を用いて、多孔質部の有無、多孔質部の厚さ、摩擦係数、及び分布、並びに、安定化要素の形状、材質、位置、及び形式が異なるチタン製の組立式及び一体式の脛骨ベースプレートを考慮して、一連の有限要素シミュレーションを行った。
【0132】
上述の脛骨ベースプレートの最終的な設計は、骨の構造的統合性を維持し、安定性を損なわないように、微細動作及び応力遮蔽を低減して応力分布が均一となり、安定化要素の皮質骨との干渉を回避するのに最適なものとなる。
【0133】
更に具体的には、本開示の脛骨ベースプレートは、組立式である。この方式は、一体式よりも剛性が高いため、少ない微細動作を決定づける。
【0134】
更に都合の良いことに、脛骨ベースプレートは、骨の成長条件を最適化し、微細動作を低減する脛骨ベースプレートの全体的な弾性及び剛性を保証する、摩擦が高く、1.2mm以上の厚さの1以上の多孔質部を有している。
【0135】
更に、多孔質部の分布は、プレートの弾性及び剛性に寄与し、物理的な負荷に基づいて最適化される。多孔質部の間に固体材料が存在することにより、プレート全体の構造強度が向上する。更に具体的には、固体領域の位置は、ベースプレートの静的強度と疲労強度を最大化するように選択される。
【0136】
実施したシミュレーションから、安定化要素の前後方向の位置は、内外方向の位置よりも影響が大きいことが明らかになった。したがって、本開示の脛骨ベースプレートは、後方領域に配置され、対応する顆部のほぼ中央に配置された2つのペグを有している。更に、後方の位置により、更に生理学的な荷重伝達が得られる。
【0137】
更に、出願人は、様々な大きさのベースプレートについて、2つの後側のペグの間の内外方向の最適な直線距離(ML)を規定した。以下の表を参照されたい。
【0138】
【0139】
さらに、出願人は、前後方向における後側のペグの最適な位置を規定している。更に具体的には、後側のペグは、ベースプレートの前後方向の幅のうちの55%に配置されている。当該位置は、微細動作を最小化するとともに、脛骨の後部皮質を貫通するリスクを低減するのに寄与している。
【0140】
ペグには、固体ペグと比較して微細動作の低減及び良好な荷重伝達に寄与すると示された多孔質材料で生成される。
【0141】
更に都合の良いことに、1以上の前方安定化要素が提供されており、微細動作、より具体的には、後方の荷重による前方の離昇を低減できる。スパイクは、前方の中央に位置し、脛骨のベースプレートの下に完全に設置し、結果として、骨が成長することを保証するために、固体材料で作られた先端を少なくとも有している。
【0142】
また、多孔質材料で生成したペグ及びスパイクは、前述した移植片脱離工具を用いて容易に切断できる。
【0143】
都合の良いことに、上述の移植片脱離工具は、簡易かつ小型の構造をしており、脛骨ベースプレートと迅速かつ効果的に連結でき、ほとんど破片を出さずに、安定化要素を数秒(1分未満)で切断する。
【0144】
更に具体的には、当該移植片脱離工具は、脛骨ベースプレートの座部に固定され、座部の外周部の壁に接触するように相互に相対的に移動可能な2つの部分を有するアダプタを備える。
【0145】
更に、移植片脱離工具は、摺動機構と固定手段とを有し、アダプタの部品をそれぞれ移動させ、座部に固定することで、移植片脱離工具を脛骨のベースプレートにしっかりと固定でき、脱離手順中の力や、安定化要素の切断中の鋸刃の振動に耐えることができる。
【0146】
連続かつ特定のニーズを満たす目的で、上記の発明に多数の変更及び変形を当業者が適用できることは明らかであるが、その全ては、以降の請求項で規定される発明の保護範囲内にある。