(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】血液分離デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20240711BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20240711BHJP
B04B 11/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61M1/02 121
B04B5/02 Z
B04B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021560616
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2020060212
(87)【国際公開番号】W WO2020208166
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】102019109749.5
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521444664
【氏名又は名称】エルエムベー・テヒノロギー・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】LMB TECHNOLOGIE GMBH
【住所又は居所原語表記】MOESLSTRASSE 17, 85445 SCHWAIG, DEUTSCHLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イェンチュ,クラウス
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0122048(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0151423(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108578801(CN,A)
【文献】特表2016-518971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
B04B 5/02
B04B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離機における遠心分離工程中に発生する遠心力(Fz)の影響下で血液(16)を複数の血液成分(16a、16b、16c)に分離するための血液分離デバイス(4)であって、
分離対象の前記血液(16)を充填した血液バッグ(12)を受け入れるための第一の室(4a)であって、該血液(16)は、各血液成分(16a、16b、16c)が、前記遠心力の方向(Fz、「分離方向」)に見たときに、前記遠心分離工程の第一段階の完了後に各自の比重にしたがって前記血液バッグ(12)の別々の部分に位置するように、前記遠心力(Fz)の影響下
で個別の血液成分(16a、16b、16c)に分離する、第一の室(4a)と、
それぞれ関連する血液成分(16a、16b、16c)を充填するために提供される少なくとも一つの成分バッグ(13、14)を受け入れるための第二の室(4b)であって
、各成分バッグ(13、14)の入口開口が、管(12a、13a、14a)を介して接続され、該管(12a、13a、14a)には制御可能な弁が配置され、前記血液バッグ(12)の出口開口に接続された、第二の室(4b)と、
前記第一の室(4a)内に配置され、前記分離方向に実質的に垂直な向きの押圧力(Fp)を前記血液バッグ(12)に働かせる排除体(8)であって、前記遠心力(Fz)を用いてかつ/またはばね力(Ff)を用いて前記押圧力(Fp)を発生させるような形をしている排除体(8)と、
前記遠心分離工程の第二の段階中に、各弁に関連する前記血液成分(16a、16b、16c)が、前記排除体(8)の前記押圧力(Fp)の結果として前記関連の成分バッグ(13,14)に入るまで各弁を開放する制御ユニット(5)と、を備える血液分離デバイス(4)。
【請求項2】
前記排除体(8)は、前記遠心力(Fz)および/または前記ばね力(Ff)の一部を、それが前記押圧力(Fp)を発生させるように方向転換させるレバー装置を有することを特徴とする、請求項1に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項3】
前記レバー装置は、前記第一の室(4a)の壁上に回転軸(11)を中心に回転可能に設置されることを特徴とする、請求項2に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項4】
前記ばね力(Ff)を発生させるために、ばね(9)の一端が前記第一の室(4a)の前記壁に取り付けられ、前記ばね(9)の他端が前記レバー装置に取り付けられることを特徴とする、請求項3に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項5】
前記レバー装置の上部が前記壁に向かって所定の角度に曲がっていることを特徴とする、請求項
3または4に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項6】
ジンバル軸受(8b)および押圧板(8c)が前記レバー装置に取り付けられていることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項7】
前記制御ユニット(5)は、前記血液バッグ(12)から排出されたばかりの分離された血液成分(16a、16b、16c)の量を検出するための少なくとも一つのセンサ(17)を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項8】
前記制御ユニット(5)を使用して、前記血液バッグ(12)から排出された分離された血液成分16aおよび16bの量を決定し、いずれの場合も、経験的に決定した所要時間t1が使用されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)
【請求項9】
前記遠心力(Fz)を検出するための加速度センサを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項10】
前記制御ユニット(5)と双方向通信を行うための遠隔制御ユニットを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項11】
前記制御可能な弁は電気モータ駆動クランプであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項12】
前記二つの室(4a、4b)ならびに前記制御ユニット(5)は、開放容器(「嵌込物」)内に配置され、該開放容器(「嵌込物」)の外形は、このために設けられた遠心分離機の受入容器の内形に適合していることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項13】
前記嵌込物は、前記血液バッグ(12)および前記成分バッグ(13、14)が、該嵌込物が取り外されているときに該嵌込物に挿入されることができるように、かつ/または血液分離が完了したときに再度取り外されることができるように、取り外し可能に設計されることを特徴とする、請求項12に記載の血液分離デバイス(4)。
【請求項14】
前記管(12a、13a、14a)を案内するための案内板(18)によって特徴付けられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の血液分離デバイス(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離機での遠心分離工程中に発生する遠心力の影響下で血液を分離するための血液分離デバイスに関する。特に、本発明は、前記遠心分離工程後には血液成分が別々の容器内にある血液分離デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血液バッグに入れられた血液を、遠心分離工程中に発生する遠心力の影響下で当該遠心力の方向に、成分の比重にしたがって個別の成分に分離させることが知られている。次いで、前記血液成分を検査および/または治療目的で個別に利用できるように、このために提供される容器に前記個別の成分の各々を移し替える必要がある。
【0003】
したがって、従来の作業方法では、前記血液はまず遠心分離され、その結果、前記個別の血液成分が前記血液バッグ内で層状に分離する。次いで、前記血液バッグおよび関連の成分バッグは、前記遠心分離機から取り出され、血液成分が前記血液バッグから前記成分バッグへ移し替えられる別体の血液分離デバイスに挿入される。しかしながら、この手順はいくつかの時間のかかるステップが必要であり、その結果、前記別体の血液分離デバイスを使用して、前記遠心分離とこのために提供される前記成分バッグへの移し替えとの間の時間で前記個別の血液成分が再度混ざり合ってしまう。
【0004】
このため、先行技術、例えば、独国特許出願公開第2938367号明細書から作業方法が知られており、前記血液は、前記血液バッグ内で、遠心分離工程中に前記個別の血液成分に分離される。続いて、前記遠心分離機のロータが緩やかに停止していくとき、前記個別の血液成分は、当該成分がそれぞれ管を介して一つまたは複数のサテライトバッグへ移し替えられるように、圧縮空気または油圧を利用して前記血液バッグから排除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この作業方法を実行するためには、分離対象の前記血液を含有する前記血液バッグが挿入される遠心分離機内の受入容器および/または遠心分離機バスケットに圧縮空気接続部または油圧管を設ける特別な遠心分離機が必要である。前記血液を分離するためだけに使用される遠心分離機と比べて、このような遠心分離機の構造は、より大きな技術的努力を必要とし、これらの遠心分離機の調達コストが高くなる。
【0007】
本発明の目的は、安価で使い易い血液分離デバイスを提供することである。本発明に係る血液分離デバイスは、特に、圧縮空気接続部または油圧接続部を有しない従来の遠心分離機とともに利用可能であるべきである。その結果として、技術的努力、ならびに、新たな遠心分離機の調達にかかる高いコストを回避することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1に列挙する特徴を有する前記デバイスによって前記問題を解決する。本発明のさらに有利な実施形態を従属請求項に示す。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記血液分離デバイスは、遠心分離工程中に発生する遠心力を用いてかつ/またはばね力を用いて前記遠心力と実質的に垂直である押圧力を発生させるような形をした排除体によって血液バッグから個別の血液成分を排除するように構成される。次いで、前記個別の血液成分は対応する成分バッグに入るが、各成分バッグの入口開口は、制御可能な弁が配置された管を介して前記血液バッグの出口開口に接続されている。本発明に係る前記血液分離デバイスは、前記血液が前記個別の血液成分に分離される前記遠心分離工程の第一段階の完了後に、各弁が関連する前記血液成分が、前記排除体によって発生する前記押圧力を用いた排除の結果として前記関連の成分バッグに入るまで各弁を開放する制御ユニットをさらに含む。
【0010】
したがって、前記対応する成分バッグへの前記個別の血液成分の移し替えは、前記遠心分離工程の第二段階中に行われる。前記第二段階中の前記遠心力は、前記第一段階中の前記遠心力よりも小さい。好ましくは、前記第二段階は、前記遠心分離機が、所定の遠心力を印加するように調整された段階である。あるいは、前記第二段階は、遠心機ロータの緩やかな停止であり得る。
【0011】
前記ばね力を用いて発生させる押圧力は、前記血液バッグが前記血液分離デバイスに挿入されたときに既に前記血液バッグを押圧していることに留意されたい。しかしながら、制御ユニットによって制御された前記血液バッグから前記成分バッグへの前記管における前記弁を開閉することによって、前記対応する成分バッグへの前記個別の血液成分の流れははっきりと影響を受けることができ、その結果、前記血液が前記個別の血液成分に分離された後で、独国特許出願公開第2938367号明細書に記載のように、前記押圧力を印加する必要がない。
【0012】
以下の説明では、本発明に係る前記血液分離デバイスの変形例、ならびに、前記個別の血液成分を分離するための異なる実施形態を、添付の図面を参照しながら説明する。次節では図面について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、血液分離デバイスの一変形例を示す。
【
図2】
図2は、一実施形態にしたがって使用されるときの、制御ユニットならびに血液バッグおよび二つの成分バッグが挿入されている、前記血液分離デバイスの前記変形例を示す。
【
図3】
図3は、血液が個別の成分に分離される遠心分離工程の第一段階の完了後の、前記実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイスの前記変形例を示す。
【
図4】
図4は、前記血液成分の一つが前記血液バッグから管を介して前記成分バッグの一つに入っている、前記実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイスの前記変形例を示す。
【
図5】
図5は、別の血液成分が前記血液バッグから別の導管を介して別の成分バッグに入っている、前記実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイスの前記変形例を示す。
【
図6】
図6は、血液分離デバイスのさらなる変形例を示す。
【
図7】
図7は、前記実施形態にしたがって使用されるときの、前記制御ユニットならびに前記血液バッグおよび前記二つの成分バッグが挿入されている、前記血液分離デバイスの前記さらなる変形例を示す。
【
図8】
図8は、前記血液が前記個別の成分に分離される前記遠心分離工程の前記第一段階の完了後の、前記実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイスの前記さらなる変形例を示す。
【
図9】
図9は、前記血液成分の一つが前記血液バッグから管を介して前記成分バッグの一つに入っている、前記実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイスの前記さらなる変形例を示す。
【
図10】
図10は、別の血液成分が前記血液バッグから別の管を介して別の成分バッグに入っている、前記実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイスの前記さらなる変形例を示す。
【
図11】
図11は、第一のクランプと第二のクランプが交互に開放され、それに対応して一つの血液成分および/または別の血液成分がそれぞれの管を介してそれぞれの成分バッグに入るようになっているさらなる実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイスの前記変形例の一方を示す。
【
図12A】
図12Aおよび
図12Bは、ジンバル軸受および圧力板を有するレバー装置を備える排除体が使用された前記血液分離装置のさらなる変形例を示す。
【
図12B】
図12Aおよび
図12Bは、ジンバル軸受および圧力板を有するレバー装置を備える排除体が使用された前記血液分離装置のさらなる変形例を示す。
【
図13A】
図13Aおよび
図13Bは、それぞれ、前記血液バッグと前記成分バッグの間で管を案内するための案内板の正面図および側面図を示す。
【
図13B】
図13Aおよび
図13Bは、それぞれ、前記血液バッグと前記成分バッグの間で管を案内するための案内板の正面図および側面図を示す。
【
図14】
図14は、前記案内板が取り付けられた血液分離デバイスの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る血液分離デバイス4は、異なる変形例を使用して実現することができる。このため、前記異なる変形例をまず説明する。前記血液分離デバイス4を使用するための異なる実施形態は、本明細書の後節で本発明にしたがって解説される。前記異なる実施形態は、前記血液分離デバイス4の全ての前記変形例とともに実施することができることに留意されたい。
【0015】
図1および
図2は、一変形例に係る血液分離デバイス4の構造を示す。前記血液分離デバイス4は、第一の室4a、第二の室4b、および制御ユニット5用の室4cを有する。前記第一の室4a内には排除体8が配置され、当該排除体8は、前記第一の室4aの壁上に回転軸11を中心に回転可能に設置されたレバー装置を有する。前記壁は、前記図面から分かるように、前記血液分離デバイス4の外側に面する前記第一の室の壁である。前記排除体8は、個別の血液成分16a、16bおよび16cが血液バッグ12から押し出されて、それぞれの成分バッグ13および14に入るように、例えば
図4に示すように、押圧力Fpを発生させるように配置されている。
【0016】
この変形例では、前記排除体8は、遠心分離中に発生する遠心力Fzを用いて、かつばね力Ffを用いて、前記押圧力Fpを発生させるような形をしている。
【0017】
前記遠心力Fzを用いて前記押圧力Fpを発生させるために、前記排除体8の前記レバー装置は重り8aを有し、当該重り8aの重心は、
図2から分かるように、前記回転軸11を縦方向に通るy軸方向に対して、前記第二の室4bの方向に、すなわち、前記図面では左に偏っているように配置される。その結果、前記遠心力Fzにより、前記排除体8の前記レバー装置に反時計回りのトルクが生じ、前記排除体8の前記レバー装置を前記第二の室4bの方へ押す。前記血液分離方向の外面の方向に前記レバー装置の下部に対して45°などの所定の角度に曲がった前記レバー装置の上部が、前記回転によって反対方向の壁の方へ押圧され、前記第一の室4aの内壁と実質的に平行になる。したがって、上部は、前記遠心力Fzによって発生させた前記押圧力Fpを、前記第一の室4aの前記内壁のより大きな面積に分布させる。また、前記レバーアームのこの曲がった設計は、前記排除体8の前記重り8aが前記回転軸11を縦方向に通る前記y軸方向に対してさらに左寄りになるにつれて、前記レバーアームの前記下部分がさらに左に回転することができ、前記印加トルクが増大するという利点を提供する。
【0018】
また、この変形例に係る前記血液分離デバイス4はばね9を有し、当該ばねのばね力Ffが、前記遠心力Fzを用いて発生させる前記押圧力Fpと実質的に同じ方向の押圧力Fpを発生させるように、当該ばね9の一端が前記第一の室4aの前記壁に取り付けられ、当該ばね9の他端が前記排除体8に取り付けられる。前記ばね9の前記ばね力は、好ましくは、案内レール10を用いて、当該案内レール10に取り付けられた前記ばね9の前記端部を移動させることによって前記ばねの行程を変化させることによって調整することができる。前記ばね9の前記取付端を上方に移動させると、前記ばねの行程は短くなり、前記ばね力Ffは低減する。前記ばね9の前記取付端を下方に移動させると、前記ばね行程は長くなり、前記ばね力Ffは増大する。
【0019】
結果的に、前記血液バッグ12を押圧する結果的な押圧力Fpは、前記遠心力Fzを用いて発生させた前記押圧力Fpと、前記ばね力Ffを用いて発生させた前記押圧力Fpの合計である。したがって、前記第一の室4a内に血液バッグ12が収容されていない状態では、前記排除体8は、
図1に示すように、また
図2では破線で示すように、前記第一の室4aの前記内壁に押し付けられている。
【0020】
別の変形例に係る前記血液分離デバイス4(図示せず)は、前記排除体8の前記レバー装置上に重り8aを有しない。その結果、前記押圧力Fpは、ほとんどばね9の前記ばね力Ffのみによって発生する。前記レバー装置それ自体の質量に作用する前記遠心力Fzは、無視できる程度の押圧力Fpしか発生させない。この場合、前記ばね力Ffは、発生する前記合計押圧力Fpに結果的に対応する、前記ばね力Ffによって発生する前記押圧力Fpが、前記個別の血液成分16a、16bおよび16cを前記血液バッグ12から押し出し、対応する管13a、14aを介してこのために提供された前記成分バッグ13および14に入らせるのに十分であるように、前記ばね自体を設計することによって、または前記案内レール10上の一端を移動することによって設計すべきである。この変形例でも、前記排除体8は、
図1と同様に、前記ばね9の前記ばね力Ffにより前記第一の室4aの前記内壁に押し付けられている。
【0021】
さらなる変形例に係る前記血液分離デバイス4が
図6に示されており、遠心分離中に発生する前記遠心力Fzのみを利用して前記必要な押圧力Fpを発生させる。このため、この変形例に係る前記排除体8は、発生する前記合計の押圧力Fpに結果的に対応する、前記遠心力Fzを利用して発生させる前記押圧力Fpが、前記血液バッグ12から前記個別の血液成分16a、16bおよび16cを押し出すのに十分であるように、上述の変形例に係る前記排除体8よりも大きな質量を有する。前記レバー装置の質量は、前記排除体8の重心が、前記回転軸11を縦方向に通るy軸方向に対して左寄りになるように前記排除体8上に分布させる。その結果、前記排除体8は、
図6および
図7に破線で示すように、初期状態では前記第一の室4aの前記内壁の方向に偏向している。
【0022】
この重量分布と、左寄りにした前記結果的な重心とにより、発生する前記遠心力Fzの影響下で、反時計回りに向かうトルクが前記排除体8の前記レバー装置に作用することが保証される。結果的に、前記第一の室4aの前記内壁の方向に押圧する前記押圧力Fpが発生する。先に説明した変形例のように、前記排除体8の前記レバー装置の上部は、所定の角度で前記血液分離方向の前記外面の方に曲がっている。このようにして、前記押圧力Fpも、より広い面積に分布させ、前記排除体8の下部分は、さらに左に偏向させることができる。
【0023】
図12Aおよび
図12Bに示す別の変形例によれば、前記排除体8は、ジンバル軸受8bおよび圧力板8cが取り付けられたレバー装置を含み得る。前記ジンバル軸受8bにより、前記圧力板8cが、前記第一の室4aの前記内壁に平行に配置されることが保証される。前記ジンバル軸受8bおよび前記圧力板8bが取り付けられた前記レバー装置を使用することにより、前記排除体8が前記血液バッグ12を押圧する面積が増大し、その結果、前記個別の血液成分16a、16bおよび16cがより一層確実に前記血液バッグ12から押し出される。
【0024】
したがって、説明した変形例に係る前記血液分離デバイス4は、遠心分離工程中に発生する前記遠心力Fzを用いてかつ/または前記ばね9によって提供される前記ばね力Ffを用いて前記第一の室4aの前記内壁の方向に押圧力Fpを発生させる前記排除体8を含む。したがって、前記血液バッグ12は、
図2に示すように、挿入された状態で、前記排除体8によって前記第一の室4aの前記内壁に押し付けられ、その結果、前記個別の血液成分16a、16bおよび16cが前記血液バッグ12から押し出される。
【0025】
結果的に、本発明に係る血液分離デバイス4は、前記押圧力Fpを発生させるための付加的な圧縮空気接続部または油圧接続部を必要としない。したがって、下記では遠心分離機嵌込物または嵌込物と呼ぶ開放容器として本発明に係る血液分離デバイス4を設計することが可能であり、当該嵌込物の外形は、従来の遠心分離機の受入容器の内形に適合させることができる。さらに、前記嵌込物は、受入容器を必要としないように遠心分離機のロータに直接取り付けることができるように設計することができる。したがって、本発明に係る血液分離デバイス4は、圧縮空気接続部または油圧接続部を有しない既存の遠心分離機に使用することができ、したがって、高水準の技術的努力を必要とする特別な遠心分離機をコストをかけて調達することが回避される。
【0026】
異なる実施形態に係る前記血液分離デバイス4の使用法を以下に説明する。前記受入容器に挿入される前記血液分離デバイス4は、遠心分離機の前記受入容器が、通常、中央上端にて前記遠心分離機のロータに回転可能に取り付けられるため、発生する前記遠心力Fzにより反時計回りに90°偏向されることに留意されたい。結果として、前記第一の室4aは、遠心分離中は前記第二の室4bの上方になる。したがって、前記排除体8の前記レバー装置は、遠心分離中は下方に押圧される。この配置は、前記レバー装置の前記ずらした重心と組み合わせた前記レバー装置の前記重量により、前記排除体8が、前記第一の室4aの前記内壁の方へ前記押圧力Fpをかけることが保証されるという付加的な利点をもたらす。しかしながら、説明をより分かり易くするため、方向は、下記において、前記図面に示すように指示する。
【0027】
第一の実施形態では、前記血液バッグ12および前記成分バッグ13および14は、いわゆるトップ‐トップ仕様(top‐top specification)にしたがって配置される。これは、前記二つの成分バッグ13および14への前記管が、前記血液バッグ12の同じ端部、例えば頂端に接続されることを意味する。前記血液バッグ12は、管12aが接続される開口を有する。これは、Y型分岐管にて、それぞれの成分バッグ13および14に接続される二つの管13aおよび14aに分岐する。
【0028】
前記管12aには、前記血液バッグ12が初期状態で安全に封止されるようにブレーカ弁が配置される。前記血液バッグ12に受け入れられた前記血液16の白血球は、白血球フィルタを用いて予め取り除くことができる。
【0029】
図2および
図7では、前記血液分離デバイス4が前記遠心分離器に挿入される前の前記初期状態が示されている。分離対象の前記血液16が充填された前記血液バッグ12および前記完全なブレーカ弁が、前記排除体8が回転可能に取り付けられている外壁の方向に右に前記排除体8を手で押すことによって、前記第一の室4aに挿入される。
図2および
図7では、前記排除体8の初期位置が破線で示されており、後方に押圧する動作が、曲線状の実線矢印によって描写されている。前記排除体8が解放された後、排除体8は前記血液バッグ12を押圧するが、前記押圧力Fpは、前記初期状態におけるばね力Ffを有する変形例では、ばね力Ffを有しない変形例よりも高い。しかしながら、前記完全なブレーカ弁が、前記個別の血液成分にまだ分離されていない血液16が前記血液バッグ12から押し出され、前記成分バッグ13および14に入るのを防止している。
【0030】
前記血液分離デバイス4の室4cには制御ユニット5が挿入され、前記個別の管12a、13aおよび14aにおける弁を適宜開閉することによって、前記成分バッグ13および14への前記血液成分16a、16bおよび16cの分配を制御するように適合されている。このため、前記制御ユニット5は、前記血液成分16a、16b、16cの前記分配を制御する対応するソフトウェアプログラムが記憶されたメモリを有するマイクロコンピュータまたはその他の論理ユニットを含む。本変形例では、前記弁はクランプによって形成され、当該クランプの各々は電気モータ15を用いて駆動され、当該電気モータ15が、前記制御ユニット5の前記マイクロコンピュータによって順番に制御される。前記クランプならびに前記関連の電気モータ15も前記制御ユニット5に取り付けられ、前記制御ユニット5は、外部接続部を必要としないように、バッテリなどの独立電源を用いて作動させると有利である。
【0031】
これにより、さらに、本発明に係る血液分離デバイス4の技術的複雑さが軽減する。前記電気モータおよび前記マイクロコンピュータのエネルギー必要量が低いため、数回の分離操作には前記バッテリの一回の充電で十分である。
【0032】
管12a、13aおよび14aはクランプに挿入され、下記のように前記嵌込物に配置される。前記血液バッグ12の前記開口に接続された管12aは、前記嵌込物から突出した前記制御ユニット5の上部に配置された第一のクランプに通される。続けて、前記第一のクランプが閉じられるが、これは、前記嵌込物が前記遠心分離器に挿入されたときに前記ブレーカ弁が開放されることになっているためである。このようにして、前記管12aにおける前記ブレーカ弁が開放された後でも、分離されていない血液16は、既に印加されている前記押圧力Fpによって前記成分バッグ13および14の一方に入ることが防止される。これに関して、管12a、13a、14aがそれぞれ挿入されることになっている全てのクランプは、前記遠心分離中にクランプが開放した場合に、それに収容された前記管12a、13a、14aの絞りおよび/または捻じれが回避されるように配置および設計すべきであることに留意されたい。このようにして、管12a、13a、14aの流路が確実に確保される。
【0033】
次に、管12aは、制御ユニット5用の前記室4cと前記第二の室4bとの間の壁に沿って、前記図面では手前に示す前記嵌込物の外側を下方に案内され、次いで、前記嵌込物の外側底面に沿って前記嵌込物の反対側に(前記図面では後方に向かって)案内される。前記管が前記遠心分離機の前記受入容器に挿入されるときに前記管が絞られるまたは捻じれることを防止するために、前記嵌込物の外面には溝7が作られている。前記管がこのように案内されるとき、前記Y型分岐管は、前記外側底面の中心の領域に位置し、これは、このために設けられる凹部に挿入すべきである。そこから、このために設けられる溝7に前記管13aおよび14aをそれぞれ個別に受け入れるために、前記嵌込物の前記外側に沿って二つの溝7が走っている。前記嵌込物の上部分には、前記管13aおよび14aを挿入することができる二つのホルダ6が前記ユニット上に配置されている。このようにして、管12a、13aおよび14aは前記嵌込物に固定され、前記周方向の溝7および前記Y型分岐管用の前記凹部により、前記嵌込物は、前記管12a、13a、14aの一つが絞られて外れることなく、または前記Y型分岐管が破壊されることなく、前記レセプタクルに挿入することができるようになる。
【0034】
前記血液分離デバイス4それ自体の上で前記管12a、13a、14aを案内する代わりに、またはそれに加えて、
図13Aおよび
図13Bに示す案内板18を使用して前記管12a、13a、14aを案内することができる。このために、前記管12a、13a、14aは、遠心分離操作中に前記管が捻じれるまたは絞られることが防止されるように、前記案内板18の個別のクリップ18aに挿入される。前記案内板18は、前記成分バッグ13および14が収納される前記第二の室4bへ前記管13aおよび14aを案内する二つのレール18bも有する。
図14は、前記案内板18が取り付けられた血液分離装置4を示す。この場合、前記案内板18は、クランプ、ねじまたはその他の適当な保持ユニットによって前記第一の室4aの前記内壁の上部に取り付けられる。前記案内板18は、図示の前記クリップ18aの実施形態または配置に限られず、前記管12a、13a、14aの中の流路が確実に確保されるように前記管12a、13a、14aの如何なる捻じれおよび/または絞りも確実に防止するために、管の長さおよび管径が異なる様々な血液バッグシステムに適合させることができる。
【0035】
前記成分バッグ13および/または14に接続された前記管13aおよび14aは第二のクランプに通され、当該第二のクランプは、両管を受け入れるように構成されている。前記第二のクランプは、さらに、前記管13aおよび14aの一方のみを開放し、その間、他方の管13aまたは14aがそれぞれ切断されるように構成される。結果的に、血液成分16a、16b、16cは、前記二つの成分バッグ13および14の一方にのみ輸送されることができる。しかしながら、前記クランプにこのタイプを使用することは義務ではない。例えば、同時に前記二つのクランプの一方のみが開放されることを保証することができれば、二つの個別のクランプを使用することもできる。
【0036】
次いで、前記成分バッグ13および14が前記第二の室4bに配置され、前記血液バッグ12の前記ブレーカ弁が開放され、前記嵌込物が、遠心分離機の受入容器にポジティブロックにより挿入される。前記ブレーカ弁は、前記嵌込物が前記遠心分離機容器に挿入された後で開放することもできる。前記嵌込物の前記外側上の溝7または案内板18に管12a、13aおよび14aを案内することによって、前記個別の管12a、13aおよび14aが、前記受入容器への挿入中に絞られることも損傷することもないことを保証することができる。また、前記嵌込物の周囲または前記案内板18への前記管12a、13aおよび14aの案内により、前記個別の管12a、13aおよび14aが、前記嵌込物の前記開口から突出することが防止され、その結果、前記遠心分離機の他の部分に引っ掛かるおそれが軽減または回避される。
【0037】
前記排除体8は、上述のように、前記血液バッグ12を既に押圧していることに留意されたい。しかしながら、前記閉じられた第一のクランプによって、前記ブレーカ弁が壊れて開放した後でも、前記成分バッグ13および14のいずれにも血液16が入らないことも保証されている。前記遠心分離機に挿入したとき、前記第二のクランプは、成分バッグ13への管13aが開放しており、他方の成分バッグ14への管14aが遮断されるように構成されている。
【0038】
前記遠心分離機ロータ上の前記指定のレセプタクルに一つまたは複数の嵌込物が挿入されると、前記遠心分離機が始動される。血液16を分離させるには、1500gから3000gの範囲内の遠心力Fzが必要である。このために、血液バッグ12のために提供される典型的な遠心分離機に関しては、3000rpmの範囲内の速さを設定すべきである。上記でさらに詳細に説明したように、前記血液分離デバイス4は、反時計回りに約90°偏向される。前記遠心力Fzは、結果的に、前記図面に示すように、頂部から底部へ作用する。5分から15分後、前記血液が前記個別の成分に分離される前記遠心分離工程のこの第一の段階を終了することができる。
【0039】
前記遠心分離工程の前記第一の段階中、前記血液16は、
図3および
図8に示すように、前記個別の血液成分16a、16bおよび16cに変換される。
【0040】
前記個別の血液成分16a、16bおよび16cは、前記遠心力Fzの方向に各自の比重にしたがって配置されることにより、より高い比重を有する血液成分16a、16bおよび16cほど、前記図面のさらに下方に示すように、より外側に配置される。前記個別の血液成分16a、16bおよび16cが配置される方向を分離方向とも呼ぶ。特に、本実施形態における前記個別の血液成分は、血漿16a、バフィーコート16bおよび赤血球16cである。
【0041】
好ましくは、本発明に係る前記血液分離デバイス4は、前記血液バッグ12内の前記バフィーコート16cの位置を決定するように設計された位置センサを含む。したがって、前記分離された血液16のヘマトクリット値を決定することができる。前記位置センサは、例えば光センサとして設計され、さらに後述する一実施形態にも使用される。
【0042】
前記遠心分離工程の前記第一の段階の完了後に、前記遠心分離機は、前記第一の段階中よりも低い遠心力Fzがあるように第二の段階で調整される。好ましくは、前記第二の段階は、所定の遠心力Fzがあるように前記遠心分離機が調整された段階である。前記第二の段階中の前記遠心力Fzは、前記第一の段階中の前記遠心力Fzよりも小さいことに留意されたい。あるいは、前記第二の段階は、遠心分離機ロータが緩やかに停止していくことでもよい。
【0043】
前記第二の段階中、前記血液成分16a、16bおよび16cは、検査および/または治療法に利用できるように前記それぞれの成分バッグ13および14に移し替えられる。このため、前記第一のクランプがまず開放され、前記押圧力Fpによって前記血液バッグ12を既に押圧している前記排除体8が、前記分離方向に前記血液バッグ12から前記血液成分16a、16bおよび16cを押し出す。前記第二の段階中に血液成分16a、16bおよび16cを移し替えることは、前記血液バッグ12が、必要に応じて、例えば別体の血液分離デバイスを使用するときに、より長時間縦向きに再度保管されるときの前記個別の血液成分16a、16bおよび16cの如何なる再混合も回避するという利点をもたらす。
【0044】
したがって、
図4および
図9に示すように、血漿16aが最初に血液バッグ12から押し出され、管12aおよび13aを介して血漿用に提供された成分バッグ13に入る。
【0045】
前記制御ユニットは、クランプに関連する血液成分が前記血液バッグ12から完全に押し出された否かを決定し、したがって、血液成分が当該血液成分用に提供された前記成分バッグ13および14に完全に入ったことも決定するセンサ17を含む。本変形例では、このためにカラーセンサが使用される。結果的に、前記センサ17は、前記血液バッグ12の前記開口の領域に生じる色の変化を検出し、それによって、前記制御ユニット5は、例えば、前記やや黄色の血漿16aが前記血液バッグ12から完全に押し出されたことを決定することができる。前記センサ17を使用して、前記制御ユニット5が、前記血漿16が前記血液バッグ12から完全に押し出されていると決定する場合、前記制御ユニット5は、前記管14aが開放し、前記管13aが閉鎖されるように前記第二のクランプを切り替える。前記管12aが経由する前記第一のクランプは、前記血液バッグ12の前記開口から管12aおよび14aを介して前記第二の成分バッグ14の開口までの流路があるように、開放したままである。
【0046】
前記第二の段階中に存在し続ける前記遠心力Fzおよび/または前記ばね力Ffにより、前記押圧力Fpは、さらに、前記遠心力Fzの方向に対して実質的に垂直に発生する。これは前記血液バッグ12を押圧し、
図5および
図10から分かるように、前記バフィーコート16bが前記血液バッグ12から押し出され、このようにして前記第二の成分バッグ14に入る。前記センサ17を用いて、前記制御ユニット5が、前記バフィーコートがこのために提供された前記成分バッグ13に完全に入ったと決定するとき、前記制御ユニット5は、前記管12aが遮断されるように前記第一の弁を閉鎖する。結果的に、前記赤血球16aは、前記血液バッグ12から押し出されなくなり、前記異なる血液成分16a、16bおよび16cが、前記血液バッグ12ならびに前記意図する成分バッグ13および14内にあり、これらは、さらに、個別に処理または検査されることができる。
【0047】
前記センサ17を使用して、前記血漿16aまたはバフィーコート16bが前記血液バッグ12から完全に排出されているか否かを決定することは義務ではない。あるいは、前記制御ユニット5を使用して、前記血液バッグ12から排出されている別々の血液成分16aおよび16bの量を決定することもできる。いずれの場合も、経験的に決定した所要時間t1が使用される。当該所要時間t1は、前記個別の血液成分16aまたは16bについて別々に決定すべきである。好ましくは、前記遠心分離機は、前記規定の遠心力Fzが存在するように設定される。このようにして、前記期間t1は、遠心分離機のタイプとは無関係に、すなわち、ロータ径および速さとは無関係に設定することができる。
【0048】
前記既定の遠心力Fzは、前記血液分離デバイス4上に設置された加速度センサによって検出され、前記制御ユニット5は、当該加速度センサから前記遠心力Fzの値を得る。前記加速度センサは、好ましくは、このために前記制御ユニット5に取り付けられる。したがって、前記血液分離デバイス4に取り付けられた前記加速度センサは、前記既定の遠心力Fzを、確実にかつ遠心分離機のタイプとは無関係に設定することができるという利点を提供する。前記遠心分離工程の前記第二の段階中に前記既定の遠心力Fzに達すると、前記制御ユニット5は、前記個別の血液成分16aおよび16bの、それぞれの成分バッグ13および14への移し替えを自動的に開始することができる。
【0049】
前記所定の遠心力Fzを設定するために、前記血液分離デバイス4は、前記遠心分離機の外側に設けられる遠隔制御ユニットを有し、当該遠隔制御ユニットは、前記制御ユニット5と双方向のワイヤレス通信を行うことができる。このために、前記制御ユニット5は、前記遠隔制御ユニットと双方向のワイヤレス通信を行うためのユニットも備える。前記遠隔制御ユニットは、好ましくは、スマートフォン、タブレットコンピュータまたは類似のポータブルユニットであり、前記ワイヤレス通信は、ワイヤレスLAN接続または何らかの類似の接続を介して行われる。結果として、前記加速度センサによって検出される前記遠心力Fzの値は、前記制御ユニット5から前記遠隔制御ユニットへ伝送することができ、前記遠心分離機の速さは、前記所定の遠心力Fzが生じるように適宜変化させることができる。
【0050】
次いで、前記所定の遠心力Fzが作用すると、前記血液成分16aおよび16bの移し替えは、前記遠隔制御ユニットを使用することによって手動で、または前記制御ユニット5を使用することによって自動で開始することができる。結果的に、前記加速度センサおよび前記遠隔制御ユニットの使用により、本発明に係る血液分離デバイス4は、前記遠心力Fzを測定するためのユニットを有しない単純な遠心分離機に使用することも可能になる。
【0051】
前記血漿16aおよび前記バフィーコート16bがそれぞれの成分バッグ13および14に押し込まれた後、前記クランプ、特に前記第一のクランプが閉じられて、前記血液バッグ12からの前記赤血球16cのこれ以上の排出を防止する。
【0052】
前記遠心分離機の前記ロータが停止すると、前記嵌込物は、前記受入容器から取り除かれることができ、前記赤血球16cを含有する前記血液バッグ12および前記血漿16aおよび/または前記バフィーコート16bを含有する前記二つの成分バッグ13および14は、前記嵌込物から取り除かれることができる。
【0053】
したがって、本発明は、前記遠心分離機が停止したときに、前記個別の血液成分16a、16bおよび16cが別々の容器で既に利用可能であるという利点をもたらす。前記遠心分離機が停止した後にのみ前記血液成分16a、16bおよび16cが分離される従来の作業方法と比較して、本発明に係る血液分離デバイス4は、前記血液成分16a、16bおよび16cが、遠心分離と、分離デバイスを使用した前記個別の血液成分16a、16bおよび16cの排出との間の時間で混ざらないという利点を提供する。また、前記血液成分16a、16bおよび16cが分離デバイスによって分離される作業方法と比較して、作業ステップが少なくて済み、したがって時間が節約される。
【0054】
次節では、本発明に係る血液分離デバイス4の使用法を、別の実施形態にしたがって説明する。当該別の実施形態にしたがって使用されるときの前記血液分離デバイス4の前記変形例の一つを
図11に一例として示す。しかしながら、本発明に係る血液分離デバイス4の任意のその他の変形例をこの実施形態にしたがって使用することができることに留意されたい。この実施形態では、前記血液バッグ12および前記成分バッグ13および14は、いわゆるトップ‐ボトム仕様(top‐bottom specification)にしたがって配置されている。これは、前記二つの成分バッグ13および14が、前記血液バッグ12の異なる端部、すなわち、頂端および/または底端に接続されることを意味する。したがって、前記血液バッグ12は、前記管13aおよび/または14aが直接接続される二つの開口を有する。したがって、管12aおよび前記Y型分岐管は、この構成では必要ない。前記血液バッグ12が初期状態で安全に閉じられているように、前記管13aおよび14aの各々にはブレーカ弁が配置されている。
【0055】
前記血液バッグ12および前記成分バッグ13および14は、
図11に示すように、遠心分離前に前記嵌込物に挿入され、前記血液バッグ12が前記第一の室4aに、前記二つの成分バッグ13および14が前記第二の室4bに挿入される。この実施形態では、先に言及したように、一方の管13aを介して前記成分バッグ13に接続される前記血液バッグ12の一方の開口が頂部に配置され、他方の管14aを介して前記成分バッグ14に接続される前記血液バッグ12の別の開口が底部に配置されている。前記血液成分16a、16bおよび16cの分配を制御するために、前記管13aおよび14aは、第一のクランプおよび/または第二のクランプに挿入され、当該第一のクランプおよび/または当該第二のクランプは、遠心分離前の管13aおよび14aの中の流路を遮断する。続けて、管13aおよび14aの前記二つのブレーカ弁が開放されることができ、前記嵌込物が、前記遠心分離機の前記受入容器に導入されることができる。上述のように、前記ブレーカ弁は、前記嵌込物が前記受入容器に挿入された後にのみ開放することもできる。
【0056】
上述の実施形態のように、前記血液は、前記遠心分離工程の前記第一の段階中に、個別の血液成分、すなわち、血漿16a、バフィーコート16bおよび赤血球16cに分離される。
【0057】
特に、前記遠心分離工程の前記第二の段階中での前記成分バッグ13および14と前記血液バッグ12との間の前記個別の成分16a、16b、16cの分離が、先に説明した実施形態と異なる。前記排除体8は、前記遠心力Fzおよび/または前記ばね力Ffを用いて前記血液バッグ12を押圧し、前記管13aが挿入された前記第一のクランプと、前記管14aが挿入された前記第二のクランプとが、連続して開放される。このようにして、まず、前記血漿16aが、前記血液バッグ12の前記上端の前記開口から前記管13aを介して前記成分バッグ13に入り、次いで、前記赤血球16cが、前記血液バッグ12の前記下端の前記開口から他方の管14aを介して他方の成分バッグ14に入る。前記それぞれの成分バッグ13および14へまず前記赤血球16cを移し替え、次いで前記血漿16aを移し替えることも可能である。前記第一の実施形態に係る前記使用法とは対照的に、前記バフィーコート16bが前記血液バッグ12に残り、前記赤血球16cが前記成分バッグ14に輸送される。この実施形態では、センサ17を使用して、前記血漿16aおよび前記赤血球16cが前記血液バッグ12から完全に排出されているか否かを決定する。このために、前記血液バッグ12の前記上部開口の領域の前記センサ17に加えて、前記血液バッグ12の前記下部開口付近にさらなるセンサ17を配置すべきである。あるいは、この場合も同様に、前記血液バッグから前記血漿16aまたは前記赤血球16cを排出するのに必要な期間t1を決定することができる。当該時間t1は、前記個別の血液成分16aおよび/または16cに関して別々に決定すべきである。好ましくは、前記所要時間t1は、この場合も同様に、所定の遠心力Fzに関して決定され、当該所要時間t1は、加速度センサを利用して前記遠心分離工程の前記第二の段階中に決定される。
【0058】
好ましくは、前記制御ユニット5は、前記血液バッグ12の所定の領域に前記バフィーコート16bを維持するために、前記第一のクランプおよび前記第二のクランプを交互に制御する。これにより、前記バフィーコート16bの位置は、上述の前記位置センサを利用して決定される。このようにして、前記バフィーコート16bは、前記遠心分離工程の完了後に、それがある位置から前記二つの開口の一方へ押されることが防止される。このようにして、後に前記血漿16aおよび/または前記赤血球16c中に存在することになる、前記血液バッグ12の内壁上のバフィーコート16bによる汚染が、前記二つの血液成分16aおよび16bの一方が完全に排出されるときに前記バフィーコート16bが前記血液バッグ12の前記上端および/または下端の前記開口付近に至る場合と比較して低減することができる。したがって、前記血液バッグ12および前記成分バッグ13および14がトップ‐ボトム配置にしたがって使用され、前記血漿16aおよび前記赤血球16cが前記クランプを交互に開放することによって排出されるこの手順は、バフィーコート16bによって不純物が低減されるため、白血球フィルタが必ずしも必要ではないという利点をもたらす。前記血漿16aおよび赤血球16cが前記それぞれのバッグ13および/または14へ排出された後、前記管13aおよび14aが受け入れられた前記クランプが閉じられて、前記バフィーコート16bが前記血液バッグ12から排出されるのを防止する。
【0059】
前記遠心分離機の前記ロータが停止された後、前記嵌込物を、このために設けられた前記受入容器から取り出すことができ、前記血漿16aおよび/または前記赤血球16cを含有する前記二つの成分バッグ13および14と、前記バフィーコート16bを含有する前記血液バッグ12とを、前記嵌込物から取り出すことができる。上記の実施形態と同様に、この実施形態は、前記成分が、前記遠心分離工程の完了後には、前記個別の成分バッグ13及び14と、前記血液バッグ12との間で分離されているという利点を提供する。したがって、前記血液成分16a、16b、16cが外部の分離デバイスに導入されるまでの期間にこれらが再混合することが回避される。