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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】データ収集頻度決定装置
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240711BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240711BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
G05B23/02 301V
H04M11/00 301
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022017727
(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公開番号】P2023115491
(43)【公開日】2023-08-21
【審査請求日】2023-02-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】境 尚美
(72)【発明者】
【氏名】中原 隆之
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】馬場 慎
【審判官】寺谷 大亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135020(JP,A)
【文献】特開2021-57834(JP,A)
【文献】特開2019-164503(JP,A)
【文献】特開2009-134699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
G05B 23/02
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器から前記データを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定装置であって、
前記設備機器から前記タグ情報を取得する取得部(11)と、
前記タグ情報および前記タグ情報に関連付けられた前記データの収集頻度を含む第1情報を記憶する記憶部(12、30)と、
前記取得部(11)が取得した前記タグ情報および前記第1情報に基づいて前記データの収集頻度を決定する決定部(13)と、
を備え
前記決定部(13)は、前記取得部(11)および前記記憶部(12,30)を制御して、前記設備機器から前記データを収集する頻度を決定するまでの動作を行う、
データ収集頻度決定装置(10)。
【請求項2】
前記第1情報は、複数の前記設備機器それぞれの前記データの項目ごとに付与される前記タグ情報と前記タグ情報に関連づけられた前記データの収集頻度を含む、
請求項1に記載のデータ収集頻度決定装置(10)。
【請求項3】
前記タグ情報に複数の前記第1情報が関連付けられている場合、前記決定部(13)は、所定条件に基づいて前記データの収集頻度を決定する、
請求項1または請求項2に記載のデータ収集頻度決定装置(10)。
【請求項4】
前記決定部(13)は、決定した前記第1情報の候補を出力する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデータ収集頻度決定装置(10)。
【請求項5】
前記データの前記収集頻度を設定する設定部(14)をさらに備え、
前記設定部(14)は、決定された前記データの前記収集頻度が前記データの項目に付与されている前記タグ情報に関連付けられるように設定して前記第1情報を更新する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデータ収集頻度決定装置(10)。
【請求項6】
前記データの前記収集頻度に通信上の規格値が存在し、前記収集頻度の設定値が前記規格値を超えている場合、または前記設定値と前記収集頻度の実績値とが乖離している場合、前記決定部(13)は前記設定値を除外する、
請求項5に記載のデータ収集頻度決定装置。
【請求項7】
必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器から前記データを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定装置であって、
前記設備機器から前記タグ情報を取得する取得部(11)と、
前記タグ情報、および予め前記タグ情報ごとに前記データの収集頻度を定めた第2情報を記憶する記憶部(12、30)と、
前記取得部(11)が取得した前記タグ情報および前記第2情報に基づいて前記データの収集頻度を決定する決定部(13)と、
を備え
前記決定部(13)は、前記取得部(11)および前記記憶部(12,30)を制御して、前記設備機器から前記データを収集する頻度を決定するまでの動作を行う、
データ収集頻度決定装置(10)。
【請求項8】
必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器から前記データを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定装置であって、
前記設備機器から前記タグ情報を取得する取得部(11)と、
前記タグ情報、および予め前記タグ情報ごとに前記データの収集頻度の優先度を定めた第3情報を記憶する記憶部(12、30)と、
前記取得部(11)が取得した前記タグ情報および前記第3情報に基づいて前記データの収集頻度を決定する決定部(13)と、
を備え
前記決定部(13)は、前記取得部(11)および前記記憶部(12,30)を制御して、前記設備機器から前記データを収集する頻度を決定するまでの動作を行う、
データ収集頻度決定装置(10)。
【請求項9】
前記データの収集頻度を設定する設定部(14)をさらに備え、
前記データの収集頻度が任意に設定された場合、前記設定部(14)は、設定された前記データの収集頻度が前記データに付与されている前記タグ情報に関連付けられるように設定して前記第3情報を更新する、
請求項8に記載のデータ収集頻度決定装置。
【請求項10】
必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器から前記データを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定方法であって、
前記設備機器から前記タグ情報を取得する第1ステップと、
前記タグ情報および前記タグ情報に関連付けられた前記データの収集頻度を含む第1情報を記憶する第2ステップと、
前記第1ステップで取得した前記タグ情報および前記第1情報に基づいて前記データの収集頻度を決定する第3ステップと、
CPUによって実行される、
データ収集頻度決定方法。
【請求項11】
必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器から前記データを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定方法であって、
前記設備機器から前記タグ情報を取得する第1ステップと、
前記タグ情報、および予め前記タグ情報ごとに前記データの収集頻度を定めた第2情報を記憶する第2ステップと、
前記第1ステップで取得した前記タグ情報および前記第2情報に基づいて前記データの収集頻度を決定する第3ステップと、
CPUによって実行される、
データ収集頻度決定方法。
【請求項12】
必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器から前記データを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定方法であって、
前記設備機器から前記タグ情報を取得する第1ステップと、
前記タグ情報、および予め前記タグ情報ごとに前記データの収集頻度の優先度を定めた第3情報を記憶する第2ステップと、
前記第1ステップで取得した前記タグ情報および前記第3情報に基づいて前記データの収集頻度を決定する第3ステップと、
CPUによって実行される、
データ収集頻度決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
設備機器からデータを収集する頻度を決定する、データ収集頻度決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機などの設備を遠隔で監視・制御する監視制御装置は、ポーリングと呼ばれる通信方法を用いて、設備が保持するデータを取得する。一般に、データを取得する間隔は等間隔に取得される。
【0003】
但し、全てのデータを等間隔にポーリングすると、データの変動幅が大きい場合には精度が低下し、逆にデータの変動が小さい場合には通信の無駄が生じる。それゆえ、特許文献1(特開2013-187816号公報)に記載の監視制御装置では、設備、データの項目ごとに手動で最適なポーリング回数(データの収集頻度)を設定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、設備、データの項目すべてに対してデータの収集頻度を設定する必要があり、工数がかかり過ぎる。それゆえ、データの収集頻度の設定にかかる工数を低減するという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点のデータ収集頻度決定装置は、必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器からデータを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定装置であって、取得部と、記憶部と、決定部とを備える。取得部は、設備機器からタグ情報を取得する。記憶部は、タグ情報およびタグ情報に関連付けられたデータの収集頻度を含む第1情報を記憶する。決定部は、取得部が取得したタグ情報および第1情報に基づいてデータの収集頻度を決定する。
【0006】
このデータ収集頻度決定装置では、設備機器からデータを収集する頻度が、タグ情報に関連付けられたデータの収集頻度に基づき自動で決定されるので、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0007】
第2観点のデータ収集頻度決定装置は、第1観点のデータ収集頻度決定装置であって、第1情報が、複数の設備機器それぞれのデータの項目ごとに付与されるタグ情報とタグ情報に関連づけられたデータの収集頻度を含む。
【0008】
一般に、1つの設備機器だけでも複数個のデータの項目が存在し、全ての項目に対してデータの収集頻度を設定するには工数がかかるので、複数の設備機器となれば膨大な工数となり、煩わしさに堪えない。
【0009】
しかし、このデータ収集頻度決定装置では、第1情報が、複数の設備機器それぞれのデータの項目ごとに付与されるタグ情報とタグ情報に関連づけられたデータの収集頻度を含むので、複数の設備機器それぞれに対して、データの収集頻度が、タグ情報に関連付けられたデータの収集頻度に基づき自動で決定され、その結果、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0010】
第3観点のデータ収集頻度決定装置は、第1観点または第2観点のデータ収集頻度決定装置であって、タグ情報に複数の第1情報が関連付けられている場合、決定部は所定条件に基づいてデータの収集頻度を決定する。
【0011】
このデータ収集頻度決定装置では、タグ情報に複数の第1情報が関連付けられている場合でも、決定部は、所定条件に基づいてデータの収集頻度を決定してくれるので、作業者は迷うことなく作業を進行させることができる。
【0012】
第4観点のデータ収集頻度決定装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つのデータ収集頻度決定装置であって、決定部が、決定した第1情報の候補を出力する。
【0013】
このデータ収集頻度決定装置では、第1情報の候補が出力されるので、作業者による確認が容易である。
【0014】
第5観点のデータ収集頻度決定装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つのデータ収集頻度決定装置であって、データの収集頻度を設定する設定部をさらに備える。設定部は、決定されたデータの収集頻度がデータの項目に付与されているタグ情報に関連付けられるように設定して第1情報を更新する。
【0015】
このデータ収集頻度決定装置では、第1情報が更新されることによって、データの収集頻度の最適化が進む。
【0016】
第6観点のデータ収集頻度決定装置は、第5観点のデータ収集頻度決定装置であって、データの収集頻度に通信上の規格値が存在し、収集頻度の設定値が規格値を超えている場合、または設定値と収集頻度の実績値とが乖離している場合、決定部はその設定値を除外する。
【0017】
このデータ収集頻度決定装置では、例えば、タグ情報に過去に設定された複数の収集頻度が関連付けられており、収集頻度を平均して決定する場合、規格値を超えている、或いは規格値から乖離している過去の設定値まで含めると、最適な収集頻度を導き出せない。したがって、それらを排除することによって、収取頻度の最適性を高めることができる。
【0018】
第7観点のデータ収集頻度決定装置は、必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器からデータを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定装置であって、取得部と、記憶部と、決定部とを備える。取得部は、設備機器からタグ情報を取得する。記憶部は、タグ情報、および予めタグ情報ごとにデータの収集頻度を定めた第2情報を記憶する。決定部は、取得部が取得したタグ情報および第2情報に基づいてデータの収集頻度を決定する。
【0019】
このデータ収集頻度決定装置では、設備機器からデータを収集する頻度が、予めタグ情報ごとに定められたデータの収集頻度に基づき自動で決定されるので、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0020】
第8観点のデータ収集頻度決定装置は、必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器からデータを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定装置であって、取得部と、記憶部と、決定部とを備える。取得部は、設備機器からタグ情報を取得する。記憶部は、タグ情報、および予めタグ情報ごとにデータの収集頻度の優先度を定めた第3情報を記憶する。決定部は、取得部が取得したタグ情報および第3情報に基づいてデータの収集頻度を決定する。
【0021】
このデータ収集頻度決定装置では、設備機器からデータを収集する頻度が、予めタグ情報ごとに定められたデータの収集頻度の優先度に基づき自動で決定されるので、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0022】
第9観点のデータ収集頻度決定装置は、第8観点のデータ収集頻度決定装置であって、データの収集頻度を設定する設定部をさらに備えている。データの収集頻度が任意に設定された場合、設定部は、設定されたデータの収集頻度がデータに付与されているタグ情報に関連付けられるように設定して第3情報を更新する。
【0023】
第10観点のデータ収集頻度決定方法は、必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器からデータを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定方法であって、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとが実行される。第1ステップは、設備機器からタグ情報を取得するステップである。第2ステップは、タグ情報およびタグ情報に関連付けられたデータの収集頻度を含む第1情報を記憶するステップである。第3ステップは、第1ステップで取得したタグ情報および第1情報に基づいてデータの収集頻度を決定するステップである。
【0024】
第11観点のデータ収集頻度決定方法は、必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器からデータを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定方法であって、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとが実行される。第1ステップは、設備機器からタグ情報を取得するステップである。第2ステップは、タグ情報、および予めタグ情報ごとにデータの収集頻度を定めた第2情報を記憶するステップである。第3ステップは、第1ステップで取得したタグ情報および第2情報に基づいてデータの収集頻度を決定するステップである。
【0025】
第12観点のデータ収集頻度決定方法は、必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている設備機器からデータを収集する頻度を決定するデータ収集頻度決定方法であって、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとが実行される。第1ステップは、設備機器からタグ情報を取得するステップである。第2ステップは、タグ情報、および予めタグ情報ごとにデータの収集頻度の優先度を定めた第3情報を記憶するステップである。第3ステップは、第1ステップで取得したタグ情報および第3情報に基づいてデータの収集頻度を決定するステップである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る冷凍装置の監視制御システムの概略構成図である。
図2】監視制御装置および冷凍装置それぞれの概略構成を示すブロック図である。
図3】監視制御装置が冷凍装置から4種類のデータを等間隔で取得したときの1時間当たりのデータの収集頻度を示す表である。
図4図3の4種類のデータに対して、変動の大きさに応じて1時間当たりのデータの収集頻度を最適化した結果を示す表である。
図5】第1実施形態におけるデータの収集頻度の決定フローチャートである。
図6】データの項目に付与されたタグ情報の一例を示す表である。
図7】サーバに記憶されている過去データの概念図である。
図8】CPUが決定した要求収集頻度を示す表である。
図9】第2実施形態におけるデータの収集頻度の決定フローチャートである。
図10】データの項目に付与されたタグ情報の一例を示す表である。
図11】タグことに設定された優先度を示す表である。
図12】CPUが決定した優先度およびデータの収集頻度を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
(1)冷凍装置の監視制御システム1の概略構成
図1は、第1実施形態に係る冷凍装置の監視制御システム1の概略構成図である。図1において、冷凍装置の監視制御システム1は、監視制御装置10と、冷凍装置としてのチラー20と、サーバ30とを含む。監視制御装置10とチラー20との間は無線通信で情報の送受信が行われる。
【0028】
図2は、監視制御装置10およびチラー20それぞれの概略構成を示すブロック図である。また、図2は、本発明の監視制御システム1の機能に関わる部分を主に示しており、その他の詳細な部分については図示を省略している。
【0029】
図2において、監視制御装置10は、通信部11と、メモリ12と、CPU13と、ディスプレイ17とを有する。
【0030】
CPU13は、チラー20との通信によって得た情報等の処理を行う。メモリ12には、CPU13によって処理された情報や取得された情報が記憶される。
【0031】
ディスプレイ17は、読み出した情報や利用者の入力した情報を出力する画面等である。ディスプレイ17上には、利用者が所定の情報を設定・入力するボタン14が表示される。
【0032】
チラー20は、通信部21と、メモリ22と、CPU23とを有する。通信部211は、監視制御装置10の通信部11との間で情報の送受信を行う。CPU23は、通信部21を介して取得した情報やメモリ22に記憶された情報を処理する。
【0033】
メモリ22はCPU23によって処理された情報や取得された情報が設定情報として記憶されている。なお、設定情報とは、チラー20の運転に必要な情報を全て含む。
【0034】
(2)監視制御装置10
監視制御装置10は、チラー20を監視・制御するために、ポーリングと呼ばれる通信方法を用いて、チラー20が保持するデータを取得する。データを取得する間隔は、現場の通信スペックに依存するが、一般的には、データは等間隔に取得される。
【0035】
図3は、監視制御装置10がチラー20から4種類のデータを等間隔で取得したときの1時間当たりのポーリング回数を示す表である。以下、1時間当たりのポーリング回数をデータの「収集頻度」と言う。
【0036】
図3において、4種類の各データは、「運転能力」、「外気温度」、「往水温度」および「外気湿度」である。図3のように、全てのデータを等間隔にデータを収集することは、変動が大きいデータに対しては精度の低下を招来し、変動が小さいデータに対しては通信の無駄が発生する。
【0037】
図4は、図3の4種類のデータに対して、変動の大きさに応じてデータの収集頻度を最適化した結果を示す表である。図4において、「運転能力」のデータは変動幅が大きいので収集頻度が50回に設定されている。
【0038】
一方、「外気温度」のデータは変動幅が他の3種類のデータの変動幅に比べて小さいの、収集頻度は10回に設定されている。「往水温度」および「外気湿度」のデータの変動幅は、「外気温度」よりも大きく、「運転能力」よりも小さいので、収集頻度は20回に設定されている。
【0039】
監視制御装置10の監視対象である設備またはデータの項目ごとに、図4のような最適化をすることは手動でも可能である。しかしながら、設備またはデータの項目が多くなると工数が増大する。
【0040】
そのため、本実施形態に係る監視制御装置10は、過去の実績から自動的にデータの収集頻度を決定するように構成されており、「データ収集頻度決定装置」として機能する。
【0041】
(2-1)データ収集頻度の決定方法
本実施形態に係るチラー20に限らず、設備機器には必要とされるデータの項目ごとに識別用のタグ情報が付与されている。本実施形態では、データ収集頻度の決定は、監視制御装置10がチラー20からタグ情報を取得することから始める。
【0042】
本願で述べる「タグ情報」とは、データの名称とは別に設定されるものであり、水(#water)や空気(#air)などの物質や、温度(#temperature)や圧力(#pressure)などの物理量、出口(#leaving)や入口(#entering)などの計測箇所、運転能力(#capacity)など機器の状態情報に関するタグが予め定められており、そのタグを組合せて付与することで、データの意味(どこの何を計測したデータなのか)に関する情報になる。
【0043】
また、データ名称からもある程度はデータの意味を類推できるが、データ名称は機器ごと(メーカーごと)に指定されるため、異なる種類の機器間でデータ名称の類似性の判定が複雑になりデータ収集頻度の使いまわしが困難になる。
【0044】
一方、本願で述べる「タグ情報」の場合、予め定められたタグから必要なタグを機器のデータごとに付与するため、機器ごとに多少の差異はあってもタグ情報の類似性を判定することは容易であり、データ収集頻度の使いまわしが容易になる。
【0045】
図5は、データ収集頻度の決定フローチャートである。以下、図5を用いて、監視制御装置10によるデータ収集頻度の決定動作を説明する。
【0046】
(ステップS1)
CPU13は、通信部11を介したチラー20との通信によって、チラー20が保持するデータの項目ごとに付与されているタグ情報を取得する。
【0047】
図6は、データの項目に付与されたタグ情報の一例を示す表である。例えば、「運転能力」、「外気温度」、「往水温度」および「外気湿度」というデータの項目それぞれに対しては、#chiller #cooling #capacity、#chiller #temp #outside、#chiller #temp #water、および#chiller #humidity #outside、というタグが付与されている。
【0048】
(ステップS2)
CPU13は、サーバ30に記憶されている過去データから、一致するタグ情報およびそのタグ情報に関連付けられたデータの収集頻度を必要情報として、一時的にメモリ12に記憶する。
【0049】
図7は、サーバ30に記憶されている過去データの概念図である。図7において、3回分のデータが記憶されており、直近の過去データ[1](ここでは、図7の最上段のデータ)を見ると、タグ#chiller #cooling #capacityに対して、要求された収集頻度50回、実施された収集頻度50回という実績がある。この場合、要求通りの収集頻度でデータの収集が実施されたことがわかる。以下、要求された収集頻度を「要求収集頻度」、実施された収集頻度を「実施収集頻度」と言う。
【0050】
一方、一つ前の過去データ[2]を見ると、タグ#chiller #cooling #capacityに対して、要求収集頻度100回、実施収集頻度60回という実績がある。この場合、要求通りの収集頻度でデータの収集が実施されなかったことがわかる。
【0051】
(ステップS3)
CPU13は、ステップS2の必要情報に基づいてデータの収集頻度を決定する。CPU13は、3件の過去データから収集頻度の平均値を求め、データの収集頻度を決定する。図8は、CPU13が決定した要求収集頻度である。
【0052】
運転能力(#chiller #cooling #capacity)の収集頻度は、(50+30)/2=40である。過去データ[2]の運転能力(#chiller #cooling #capacity)の収集頻度は、要求収集頻度に対して実施収集頻度がかけ離れており、通信上の規格値を無視して設定された可能性があるので、CPU13はノイズとして除去した。
【0053】
本実施形態では、要求収集頻度に対し、実施収集頻度が1回でも下回っていた場合は、ノイズとして除去しており、収集頻度の算出には用いない。それゆえ、CPU13は、過去データ[1]および過去データ[3]の収集頻度に基づいて平均値を算出する。
【0054】
外気温度(#chiller #temp #outside)の収集頻度は、10である。過去データ[2]の外気温度(#chiller #temp #outside)の収集頻度は、要求された収集頻度50に対して実施された収集頻度がかけ離れていたので、CPU13はノイズとして除去した。それゆえ、CPU13は、過去データ[1]の外気温度(#chiller #temp #outside)の実績だけに基づいて決定する。
【0055】
往水温度(#chiller #temp #water)の収集頻度は、20である。過去データ[1]の往水温度(#chiller #temp #water)の実績だけが残っているので、CPU13はそれに基づいて決定する。
【0056】
外気湿度(#chiller #humidity #outside)の収集頻度は、(20+10)/2=15である。過去データ[1]および過去データ[3]に外気湿度(#chiller #humidity #outside)の収集頻度が実績として残っているので、CPU13は、それらの2つの収集頻度に基づいて平均値を算出する。
【0057】
CPU13は、決定したデータの収集頻度を出力し、監視制御装置10のディスプレイ17上に表示させることができる。但し、ディスプレイ17上に表示されたデータの収集頻度は、この時点では候補として表示されているに過ぎず、監視制御装置10のオペレータがディスプレイ17上の設定・入力用のボタン14を押して確定しない限り、設定されない。
【0058】
また、データの収集頻度に通信上の規格値が存在し、設定値が規格値を超えている場合、または収集頻度の実績値と乖離している場合、CPU13はその設定値を除外する。ここで、「その設定値を除外する」とは、ディスプレイ17上のボタン14を押して確定しても受け付けないこと、或いは、受け付けても、次の収集頻度の算出時にノイズとして除去すること、を意味する。
【0059】
(ステップS4)
CPU13は、決定したデータの収集頻度を当該データの項目に付与されているタグ情報に関連付けられるように、メモリ12内の必要情報を更新する。具体的には、監視制御装置10のオペレータが、ディスプレイ17上に表示されたデータの収集頻度を確認し、ディスプレイ17上のボタン14を押すことによって、メモリ12内の必要情報が更新され、それが後日活用するためのデータとしてサーバ30に記憶される。
【0060】
上記の通り、監視制御装置10がチラー20からデータを収集する頻度が、タグ情報に関連付けられたデータの収集頻度に基づき自動で決定されるので、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0061】
本実施形態では、要求収集頻度が過去データの平均値に基づき決定されているが、これに限定されるものではない。例えば、過去データから収集頻度の最頻値または中央値に基づいて決定されてもよい。
【0062】
(3)特徴
(3-1)
監視制御装置10では、チラー20など設備機器からデータを収集する頻度が、タグ情報に関連付けられたデータの収集頻度に基づき自動で決定されるので、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0063】
(3-2)
監視制御装置10では、監視制御対象が複数の設備機器であっても、複数の設備機器それぞれのデータの項目ごとに付与されるタグ情報とタグ情報に関連づけられたデータの収集頻度をメモリ12が記憶する。そして、複数の設備機器それぞれに対して、データを収集する頻度が、タグ情報に関連付けられたデータの収集頻度に基づき自動で決定され、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0064】
(3-3)
監視制御装置10では、タグ情報に複数のデータ収集頻度が関連付けられている場合でも、CPU13が、平均値に基づいてデータの収集頻度を決定するので、作業者は迷うことなく作業を進行させることができる。
【0065】
(3-4)
監視制御装置10では、CPU13が、決定したデータの収集頻度を、オペレータが選択可能な候補として、監視制御装置10のディスプレイ17上に表示させる。
【0066】
(3-5)
監視制御装置10では、オペレータが、ディスプレイ17上に表示されたデータの収集頻度を確認し、ディスプレイ17上のボタン14を押す。これによって、データの収集頻度を当該データの項目に付与されているタグ情報に関連付けられるように、メモリ12内の必要情報が更新され、それがサーバ30に記憶される。その結果、データの収集頻度の最適化が進む。
【0067】
(3-6)
監視制御装置10では、タグ情報に過去に設定された複数の収集頻度が関連付けられており、収集頻度を平均して決定する場合、規格値を超えている、或いは規格値から乖離している過去の設定値まで含めると、最適な収集頻度を導き出せない。したがって、それらを排除することによって、収取頻度の最適性を高めている。
【0068】
(4)変形例
ここまで、チラー20から取得したタグ情報が、過去データとして記憶されているタグ情報とが一致している前提で説明したが、設備機器に付与されるタグ情報は、メーカーや入力者によって異なる場合が考えられる。
【0069】
そのような状況を鑑みて、変形例に係る監視制御装置10では、過去データ内に完全に一致するタグ情報がなかった場合、類似するタグ情報から候補を選出することができる。
【0070】
例えば、ある設備機器から取得したタグ情報が、#chiller #temp #outside #airであった場合、過去データには一致するタグ情報がないので、類似する#chiller #temp #outsideから候補を選出する。
【0071】
<第2実施形態>
ここでは、第2実施形態として、過去データを取得しない実施形態について説明する。第2実施形態に係る監視制御装置10では、タグ毎に設定された優先度を用いた方法を採用している。
【0072】
チラー20における頻出の物理量である、水温、気温、気圧、水圧、流量および風量に対して使用されるタグは、#water、#air、#temp、#pressure、#flowである。これらのタグに対して、予め優先度が設定され、サーバ30に記憶されている。
【0073】
監視制御装置10がチラー20から取得したタグ情報が「#temp #outside」であるとき、そのタグ情報に関連する物理量は空気の温度であるので、使用されるタグは#airおよび#tempである。
【0074】
#airおよび#tempそれぞれの優先度が1および2であるとすれば、「#temp #outside」の優先度は、物理量のタグに設定された優先度の積として表され、1×2=2となる。第2実施形態では、この手順でタグ情報毎の優先度が求められ、その優先度に基づいてデータの収集頻度が決定される。
【0075】
図9は、第2実施形態におけるデータ収集頻度の決定フローチャートである。以下、図9を用いて、監視制御装置10によるデータ収集頻度の決定動作を説明する。
【0076】
(ステップS11)
CPU13は、通信部11を介したチラー20との通信によって、チラー20が保持するデータの項目ごとに付与されているタグ情報を取得する。
【0077】
図10は、データの項目に付与されたタグ情報の一例を示す表である。例えば、「運転能力」、「外気温度」、「往水温度」および「外気湿度」というデータの項目それぞれに対しては、#cooling #capacity、#temp #outside、#temp #water、および#humidity #outside、というタグ情報が付与されている。
【0078】
(ステップS12)
CPU13は、サーバ30から、物理量を表すタグと、そのタグことに設定された優先度を必要情報として、一時的にメモリ12に記憶する。
【0079】
図11は、タグことに設定された優先度を示す表である。図11において、#waterには0.5、#airには1、#tempには2、#pressureには3、#flowには3の優先度が設定されている。
【0080】
(ステップS13)
CPU13は、ステップS2の必要情報に基づいてデータの収集頻度を決定する。CPU13は、タグ情報のタグから関連する物理量のタグを割り出し、その物理量のタグに設定された優先度を掛け合わせた数値に基づいて、データの収集頻度を決定する。図12は、CPU13が決定した優先度およびデータの収集頻度を示す表である。
【0081】
運転能力(#cooling #capacity)に関連する物理量に該当するタグが、サーバ30には存在しない。かかる場合、事前の取り決めにより優先度は1とする。
【0082】
外気温度(#temp #outside)に関連する物理量は空気の温度であり、タグは#airおよび#tempである。#airおよび#tempそれぞれの優先度が1および2であるので、外気温度(#temp #outside)の優先度は1×2=2である。
【0083】
往水温度(#temp #water)に関連する物理量は水の温度であり、タグは#waterおよび#tempである。#waterおよび#tempそれぞれの優先度が0.5および2であるので、往水温度(#temp #water)の優先度は0.5×2=1である。
【0084】
外気湿度(#humidity #outside)に関連する物理量に該当するタグが、サーバ30には存在しない。かかる場合、事前の取り決めにより優先度は1とする。
【0085】
本実施形態ではデータの収集頻度が最大100回であるので、CPU13は、「運転能力」、「外気温度」、「往水温度」および「外気湿度」それぞれの優先度の合計値に対する各データの項目の優先度の比率からデータの収集頻度を算出する。
【0086】
運転能力(#cooling #capacity)は、100×1/(1+2+1+1)=20回である。外気温度(#temp #outside)は、100×2/(1+2+1+1)=40回である。往水温度(#temp #water)は、100×1/(1+2+1+1)=20回である。外気湿度(#humidity #outside)は、100×1/(1+2+1+1)=20回である。
【0087】
CPU13は、決定したデータの収集頻度を出力し、監視制御装置10のディスプレイ17上に表示させることができる。但し、ディスプレイ17上に表示されたデータの収集頻度は、この時点では候補として表示されているに過ぎず、監視制御装置10のオペレータがディスプレイ17上のボタン14を押して確定しない限り、設定されない。
【0088】
(ステップS14)
CPU13は、新たに設定した物理量に使用されるタグの優先度が記憶されるように、メモリ12内の必要情報を更新する。具体的には、関連する物理量が存在しなかった#capacityおよび#humidityに対して取り決めた優先度「1」、決定されたデータの収集頻度がディスプレイ17上に表示されるので、監視制御装置10のオペレータはそれらを確認し、ディスプレイ17上のボタン14を押すことによって、メモリ12内の必要情報が更新され、それがサーバ30に記憶される。
【0089】
好ましくは、優先度だけではなく、決定したデータの収集頻度を当該データの項目に付与されているタグ情報に関連付けられるように、メモリ12内の必要情報を更新し、それがデータとしてサーバ30に記憶されることを推奨する。
【0090】
上記の通り、監視制御装置10がチラー20からデータを収集する頻度が、タグ情報に関連付けられた優先度に基づき自動で決定されるので、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0091】
<他の実施形態>
第1実施形態では、設備機器(チラー20)から取得したタグ情報に関連付けられたデータの収集頻度に基づいてデータの収集頻度を決定した。また、第2実施形態では、設備機器から取得したタグ情報に基づき優先度を求め、その優先度に基づいてデータの収集頻度を決定した。
【0092】
但し、データの収集頻度の決定方法は、上記2つの方法の限定されるものではない。例えば、設備機器からタグ情報を取得する第1ステップと、タグ情報および予めそのタグ情報ごとにデータの収集頻度を定めた必要情報を記憶する第2ステップと、第1ステップで取得したタグ情報および必要情報に基づいてデータの収集頻度を決定する第3ステップと、が実行される、構成にしてもよい。
【0093】
これによって、設備機器からデータを収集する頻度が、予めタグ情報ごとに定められたデータの収集頻度に基づき自動で決定されるので、データの収集頻度の設定工数が低減される。
【0094】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示では、適用例としてチラーを挙げて説明したが、本開示は、チラーに限らず、データを収集する設備機器全般に適用される。
【符号の説明】
【0096】
10 監視制御装置(データ収集頻度決定装置)
11 通信部(取得部)
12 メモリ(記憶部)
13 CPU(決定部)
14 ボタン(設定部)
20 チラー(設備機器)
30 サーバ(記憶部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【文献】特開2013-187816号公報
図1
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図10
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