(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6557 20140101AFI20240711BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/623 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20240711BHJP
H01M 10/627 20140101ALN20240711BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/623
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/6566
H01M10/625
H01M10/627
(21)【出願番号】P 2022077344
(22)【出願日】2022-05-10
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂井 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】村石 康輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】根本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】池田 博昭
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072198(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084290(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/083599(WO,A1)
【文献】特開2016-081685(JP,A)
【文献】特開2015-222663(JP,A)
【文献】国際公開第2015/075766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6557
H01M 10/613
H01M 10/623
H01M 10/647
H01M 10/651
H01M 10/6566
H01M 10/625
H01M 10/627
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端子を上部に備えたケースに電極体と電解液とが収容された単電池であって、一方向に沿って配列された複数の前記単電池と、互いに隣り合う前記ケースが備えるケース側壁の間に介在するスペーサと、を備える組電池であって、
前記電極体は、正極シートと負極シートとがセパレータを介して積層した積層体を捲回した偏平な捲回体であって、一対の相対する平面を備える偏平部と、一対の前記平面の上縁を繋ぐ上湾曲面を備える上湾曲部と、一対の前記平面の下縁を繋ぐ下湾曲面を備える下湾曲部と、を備え、かつ、前記ケースの内部で下方に偏って収容され、
前記スペーサは、前記ケース側壁のなかで前記上湾曲部から前記下湾曲部までと対向する部分において、前記ケース側壁を前記ケースの内側に向けて押圧するとともに、前記ケース側壁との間に冷却風が通過するための複数の流路を構成し、
前記ケース側壁のなかで前記上湾曲部と対向する第1対向部における単位面積あたりの前記冷却風による第1冷却効率は、前記ケース側壁のなかで前記偏平部と対向する第2対向部における単位面積あたりの第2冷却効率よりも低い
組電池。
【請求項2】
複数の前記流路において、前記第1対向部に接する部分が第1部分であり、前記第2対向部に接する部分が第2部分であり、
前記第1部分における前記冷却風の進行方向に沿う第1平均流速は、前記第2部分における前記冷却風の進行方向に沿う第2平均流速よりも小さい
請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記第1部分に位置する前記流路の第1流路断面積は、前記第2部分に位置する前記流路の第2流路断面積よりも小さくなるように構成されている
請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記電解液は、前記下湾曲面と接触し、かつ、液面が前記上湾曲部よりも下方に位置し、
前記第1冷却効率は、前記ケース側壁のなかで前記下湾曲部と対向する第3対向部における単位面積あたりの前記冷却風による第3冷却効率よりも低い
請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の組電池。
【請求項5】
前記ケース側壁のなかで前記下湾曲部と対向する第3対向部における単位面積あたりの前記冷却風による第3冷却効率は、前記第2冷却効率よりも低い
請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の組電池。
【請求項6】
前記単電池の電池容量に対する前記外部端子と前記電極体との距離の値が1.57mm/Ah以上である
請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池を、スペーサを介して並べて配置した組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池は、組電池として構成された状態で車両駆動用の高出力電源等に広く用いられている。組電池は、電極体をケースに収容して構成された複数の単電池と、隣り合う単電池の間に1つずつ介在される複数のスペーサとを備える。複数の単電池は、隣り合う単電池の一方が備える正極の外部端子と、他方が備える負極の外部端子とがバスバーによって接続されることで直列に接続される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組電池は、組電池としての電池寿命の向上を目的として、組電池を構成する各単電池の電池寿命の向上が望まれている。一方、組電池では、充放電時において、各単電池の外部端子の温度が大きく上昇する。すると、外部端子での発熱が電極体のうち外部端子に近い部分に伝達されることで、当該部分の温度が上昇して電極体に温度ムラが生じる。電極体に生じる温度ムラは、単電池の電池寿命を低下させる一因となる。特に、ハイブリッド自動車等で用いられるような高入出力が要求される組電池では、上記の問題が生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための組電池は、外部端子を上部に備えたケースに電極体と電解液とが収容された単電池であって、一方向に沿って配列された複数の前記単電池と、互いに隣り合う前記ケースが備えるケース側壁の間に介在するスペーサと、を備える組電池であって、前記電極体は、正極シートと負極シートとがセパレータを介して積層した積層体を捲回した偏平な捲回体であって、一対の相対する平面を備える偏平部と、一対の前記平面の上縁を繋ぐ上湾曲面を備える上湾曲部と、一対の前記平面の下縁を繋ぐ下湾曲面を備える下湾曲部と、を備え、かつ、前記ケースの内部で下方に偏って収容され、前記スペーサは、前記ケース側壁のなかで前記上湾曲部から前記下湾曲部までと対向する部分において、前記ケース側壁を前記ケースの内側に向けて押圧するとともに、前記ケース側壁との間に冷却風が通過するための複数の流路を構成し、前記ケース側壁のなかで前記上湾曲部と対向する第1対向部における単位面積あたりの前記冷却風による第1冷却効率は、前記ケース側壁のなかで前記偏平部と対向する第2対向部における単位面積あたりの第2冷却効率よりも低い。
【0006】
上記構成によれば、ケース内において、電極体がケースの上部に位置する外部端子に対して離れるように下方に偏って収容されることで、充放電時における外部端子での発熱を電極体に伝えにくくすることができる。したがって、電極体のうち外部端子に近い上湾曲部の温度上昇を抑えることができるため、電極体の温度ムラを抑えることができる。また、上湾曲部は、偏平部よりも薄い部分であるため、偏平部よりも充放電時の発熱量が少ない部分である。第1冷却効率を第2冷却効率よりも低くすることで、上湾曲部の冷却量を偏平部の冷却量よりも低めて上湾曲部が過剰に冷却されることを防ぐことができる。これにより、電極体の温度ムラを抑えることができる。
【0007】
上記組電池において、複数の前記流路において、前記第1対向部と接する部分が第1部分であり、前記第2対向部と接する部分が第2部分であり、前記第1部分における前記冷却風の進行方向に沿う第1平均流速は、前記第2部分における前記冷却風の進行方向に沿う第2平均流速よりも小さいことが好ましい。上記構成によれば、第1平均流速を第2平均流速よりも小さくすることで、第1冷却効率を第2冷却効率よりも低くすることができる。
【0008】
上記組電池において、前記第1部分に位置する前記流路の第1流路断面積は、前記第2部分に位置する前記流路の第2流路断面積よりも小さくなるように構成されていることが好ましい。上記構成によれば、第1部分における冷却風の圧力損失を高めることができるため、第1平均流速を好適に小さくすることができる。さらに、流路断面積自体も第1部分が第2部分よりも小さくなることから、第1部及び第2部分における流路断面積の差異と平均流速の差異とによって、第1部分の流量を第2部分の流量よりも効果的に低めることができる。したがって、第1冷却効率を第2冷却効率よりも効果的に低めることができる。
【0009】
上記組電池において、前記電解液は、前記下湾曲面と接触し、かつ、液面が前記上湾曲部よりも下方に位置し、前記第1冷却効率は、前記ケース側壁のなかで前記下湾曲部と対向する第3対向部における単位面積あたりの前記冷却風による第3冷却効率よりも低くてもよい。上記構成によれば、電解液の液面が上湾曲部よりも下方に位置することから、上湾曲部は、周囲に存在する電解液の熱容量の影響を受けない分だけ、下湾曲部と比較して冷却され易い。そのため、第1冷却効率を第3冷却効率よりも低くすることで、上湾曲部の冷却量を下湾曲部の冷却量よりも低めて上湾曲部が過剰に冷却されることを防ぐことができるため、電極体の温度ムラを抑えることができる。
【0010】
上記組電池において、前記ケース側壁のなかで前記下湾曲部と対向する第3対向部における単位面積あたりの前記冷却風による第3冷却効率は、前記第2冷却効率よりも低くてもよい。上記構成によれば、下湾曲部は、偏平部よりも薄い部分であるため、偏平部よりも充放電時の発熱量が少ない部分である。第3冷却効率を第2冷却効率よりも低くすることで、下湾曲部の冷却量を偏平部の冷却量よりも低めて下湾曲部が過剰に冷却されることを防ぐことができるため、電極体の温度ムラを抑えることができる。
【0011】
上記組電池において、前記単電池の電池容量に対する前記外部端子と前記電極体との距離の値が1.57mm/Ah以上であることが好ましい。上記構成によれば、単電池の電池容量に対する外部端子と電極体との距離の値を1.57mm/Ah以上とすることで、外部端子での発熱を電極体に好適に伝えにくくすることができる。したがって、電極体のうち外部端子に近い上湾曲部の温度上昇を好適に抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極体の温度ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、組電池を構成する単電池を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、電極体を展開した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、単電池の内部構造とスペーサの構造とを示す側面図である。
【
図6】
図6は、単電池の内部構造とスペーサとの対応関係を示す正面図である。
【
図7】
図7は、スペーサの変更例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、組電池の一実施形態について
図1~
図7を参照して説明する。
[組電池の構成]
図1に示すように、組電池1は、複数の単電池10と、複数のスペーサ40と、一対のエンドプレート50と、複数の拘束バンド51とを備える。複数の単電池10は、所定の一方向である配列方向Xに配列される。一対のエンドプレート50は、配列方向Xにおいて、組電池1の両端に配置される。各拘束バンド51は、一対のエンドプレート50を架橋するように取り付けられる。スペーサ40は、配列方向Xにおいて、各単電池10の間、及び、単電池10とエンドプレート50との間に1つずつ介在する。
【0015】
エンドプレート50は、複数の単電池10と複数のスペーサ40とを配列方向Xに挟み込む。拘束バンド51の各端は、ビスによってエンドプレート50に固定される。拘束バンド51は、配列方向Xに所定の拘束圧が加わるように取り付けられる。組電池1は、複数の単電池10と複数のスペーサ40とに対して、エンドプレート50と拘束バンド51とによって配列方向Xから拘束圧が加えられることで一体的に保持される。
【0016】
[単電池の構成]
図2に示すように、単電池10は、例えば、非水二次電池であって、一例としてリチウムイオン二次電池である。単電池10は、ケース11を備える。ケース11は、収容部11Aと、蓋体12とを備える。収容部11Aは、電極体20と非水電解液とを収容する。収容部11Aは、上側に開口を有した扁平な有底角型(直方体形状)の外形を有する。
【0017】
蓋体12は、収容部11Aの開口を閉塞する。ケース11は、収容部11Aに蓋体12を取り付けることで密閉された電槽が構成される。収容部11Aは、配列方向Xにおいて、互いに向かい合うケース側壁11Bを備える。ケース側壁11Bは、組電池1の状態でスペーサ40に押圧される平坦面を有する。収容部11A及び蓋体12は、アルミニウム、もしくはアルミニウム合金等の金属で構成される。
【0018】
蓋体12には、正極の外部端子13Aと、負極の外部端子13Bとが設けられる。外部端子13A,13Bは、電力の充放電に用いられる。電極体20における正極側の端部である正極側集電部20Aは、正極の集電部材14Aを介して正極の外部端子13Aに電気的に接続される。電極体20における負極側の端部である負極側集電部20Bは、負極の集電部材14Bを介して負極の外部端子13Bに電気的に接続される。なお、外部端子13A,13Bの形状は、
図2に示す形状に限定されず、任意の形状であってよい。隣り合う単電池10の正極の外部端子13Aと負極の外部端子13Bとは、バスバー52(
図1参照)で電気的に接続されている。これにより、隣り合う単電池10は、直列に電気接続されている。
【0019】
なお、集電部材14A,14Bと蓋体12の間には、絶縁性を有したガスケットが配置される。ガスケットは、集電部材14A,14Bと蓋体12とを電気的に絶縁するとともに、集電部材14A,14Bと蓋体12との間をシールする。また、蓋体12は、非水電解液を注入するための注入口15を備える。
【0020】
[電極体]
図3に示すように、電極体20は、長尺の正極シート21と負極シート24とがセパレータ27を介して積層した積層体を捲回した偏平な捲回体である。正極シート21、負極シート24、及びセパレータ27は、それぞれの長手となる方向が長手方向D1と一致するように積層される。捲回前の積層体は、正極シート21、セパレータ27、負極シート24、セパレータ27の順に、厚さ方向に積層される。電極体20は、セパレータ27を挟んで積層された正極シート21と負極シート24とが、その帯形状の幅方向D2に延びる捲回軸L1周りに捲回された構造を有している。
【0021】
[正極シート]
正極シート21は、正極集電体22と、正極合材層23とを備える。正極集電体22は、長尺状に形成された箔状の電極基材である。正極合材層23は、正極集電体22の相対する2つの面の各々に設けられる。正極集電体22は、幅方向D2の一端に、正極合材層23が形成されずに正極集電体22が露出した正極側未塗工部22Aを備える。
【0022】
正極集電体22は、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。正極集電体22が備える正極側未塗工部22Aは、捲回体の状態において、向かい合う面が互いに圧接されて正極側集電部20Aを構成する。
【0023】
正極合材層23は、液状体の正極合材ペーストの硬化体である。正極合材ペーストは、正極活物質、正極溶媒、正極導電材、及び、正極結着材を含む。正極合材層23は、正極合材ペーストが乾燥されて正極溶媒が気化することで形成される。したがって、正極合材層23は、正極活物質、正極導電材、及び、正極結着材を含む。
【0024】
正極活物質は、単電池10における電荷担体であるリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なリチウム含有複合金属酸化物が用いられる。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、リチウム以外の他の金属元素とを含む酸化物である。リチウム以外の他の金属元素は、例えば、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、チタン、タングステン、アルミニウム、リチウム含有複合酸化物にリン酸鉄として含有される鉄からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0025】
例えば、リチウム含有複合酸化物は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する三元系リチウム含有複合酸化物であり、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMnO2)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。
【0026】
正極溶媒は、有機溶媒の一例であるNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液が用いられる。正極導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバ等の炭素繊維、黒鉛が用いられる。正極結着材は、正極合材ペーストに含まれる樹脂成分の一例である。正極結着材は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等が用いられる。
【0027】
なお、正極シート21は、正極側未塗工部22Aと正極合材層23との境界に、絶縁層を備えてもよい。絶縁層は、絶縁性を有した無機成分と、結着材として機能する樹脂成分とを含む。無機成分は、粉末状のベーマイト、チタニア、及びアルミナからなる群から選択される少なくとも1つである。樹脂成分は、PVDF、PVA、アクリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0028】
[負極シート]
負極シート24は、負極集電体25と、負極合材層26とを備える。負極集電体25は、長尺状に形成された箔状の電極基材である。負極合材層26は、負極集電体25の相対する2つの面の各々に設けられる。負極集電体25は、幅方向D2の一端であって、正極側未塗工部22Aと反対に位置する端部において、負極合材層26が形成されずに負極集電体25が露出した負極側未塗工部25Aを備える。
【0029】
負極集電体25は、銅または銅を主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。負極側未塗工部25Aは、捲回体の状態において、向かい合う面が互いに圧接されて負極側集電部20Bを構成する。
【0030】
負極合材層26は、液状体の負極合材ペーストの硬化体である。負極合材ペーストは、負極活物質、負極溶媒、負極増粘材、及び、負極結着材を含む。負極合材層26は、負極合材ペーストが乾燥されて負極溶媒が気化することで形成される。したがって、負極合材層26は、負極活物質、負極増粘材、及び、負極結着材を含む。なお、負極合材層26は、導電材のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0031】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料である。負極活物質は、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が用いられる。負極溶媒は、一例として、水である。負極分散材は、一例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることができる。負極結着材は、正極結着材と同様のものを用いることができる。負極結着材は、一例としてSBRである。
【0032】
[セパレータ]
セパレータ27は、正極シート21と負極シート24との接触を防ぐとともに、正極シート21及び負極シート24の間で非水電解液を保持する。非水電解液に電極体20を浸漬させると、セパレータ27の端部から中央部に向けて非水電解液が浸透する。
【0033】
セパレータ27は、ポリプロピレン製等の不織布である。セパレータ27としては、例えば、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、及びイオン導電性ポリマー電解質膜等を用いることができる。
【0034】
図4に示すように、電極体20は、捲回体の湾曲部分が上下に並ぶように、捲回軸L1が収容部11Aの底面に平行に延在する状態で配置される。捲回軸L1は、電極体20がケース11に収容された状態で、上下方向において、電極体20のほぼ中心に位置する。
【0035】
電極体20は、偏平部31と、上湾曲部32と、下湾曲部33とを備える。偏平部31は、相対する一対の平面31Sを備える。上湾曲部32は、偏平部31の上部に位置する。上湾曲部32は、一対の平面31Sの上縁を繋ぐ上湾曲面32Sを備える。上湾曲部32は、偏平部31の上端から上側に膨らむ形状を有する。下湾曲部33は、偏平部31の下部に位置する。下湾曲部33は、一対の平面31Sの下縁を繋ぐ下湾曲面33Sを備える。下湾曲部33は、偏平部31の下端から下側に膨らむ形状を有する。電極体20は、下湾曲部33が収容部11Aの底面側に位置し、かつ、上湾曲部32が蓋体12側に位置するようにケース11内に収容される。
【0036】
ケース側壁11Bは、第1対向部11B1と、第2対向部11B2と、第3対向部11B3とを備える。第1対向部11B1は、ケース側壁11Bのなかで上湾曲部32と対向する部分である。第2対向部11B2は、ケース側壁11Bのなかで偏平部31と対向する部分である。第3対向部11B3は、ケース側壁11Bのなかで下湾曲部33と対向する部分である。
【0037】
ケース11の内部において、電極体20は、外部端子13A,13Bに対して離れるように、下方に偏って収容される。電極体20は、ケース11の内部において、外部端子13A,13Bは、単電池10の充放電時において、発熱量が多い部分である。したがって、電極体20を外部端子13A,13Bに対して離れるように、下方に偏って収容することで、単電池10の充放電時における外部端子13A,13Bでの発熱を電極体20に伝えにくくすることができる。
【0038】
電極体20は、外部端子13A,13Bに対して所定の距離Dを有した状態で、電極体20と外部端子13A,13Bとが集電部材14A,14Bを介して接続される。外部端子13A,13Bと電極体20との距離Dは、単電池10の電池容量に基づいて設定されることが好ましい。単電池10の電池容量(Ah)に対する距離D(mm)の値は、1.57mm/Ah以上であることが好ましく、1.96mm/Ah以上であればより好ましい。単電池10の電池容量に対する距離Dの値が上記の数値以上であれば、外部端子13A,13Bでの発熱を電極体20に好適に伝えにくくすることができる。なお、距離Dは、一例として、10mm以上である。また、単電池10の電池容量は、一例として、3.5Ah以上6.5Ah以下である。
【0039】
電極体20が収容部11Aに収容されると、収容部11Aの開口は、蓋体12が配置されてレーザ溶接等の固定方法によってシールされる。そして、ケース11には、蓋体12に設けられた注入口15を介して非水電解液ESが注入される。その後、注入口15は、レーザ溶接等によってシールされる。非水電解液ESは、少なくとも電極体20と接触する量が注入される。非水電解液ESは、一例として、下湾曲部33と接触と接触し、かつ、液面が上湾曲部32よりも下方に位置する程度の量が注入される。本実施形態では、非水電解液ESは、非水電解液ESの使用量の削減、及び、単電池10及び組電池1の軽量化の観点から、下湾曲部33の上端、もしくは下湾曲部33の上端よりもわずかに下方の位置に液面が位置するように注入される。
【0040】
[非水電解液]
非水電解液ESは、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。非水溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートからなる群から選択された一種または二種以上の材料である。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)である。
【0041】
本実施形態では、非水溶媒としてエチレンカーボネートを採用している。非水電解液ESには、添加剤としてのリチウム塩としてのリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)が添加される。例えば、非水電解液におけるLiBOBの濃度が0.001以上0.1以下[mol/L]となるように、非水電解液にLiBOBを添加する。
【0042】
[スペーサ]
図4に示すように、スペーサ40は、基板部41と、突出部42とを備える。基板部41は、一例として矩形平板で構成される。突出部42は、基板部41の一方の面に櫛歯状に並んで設けられる複数のリブ43によって構成される。各リブ43の先端面は、隣り合う単電池10の一方が備えるケース側壁11Bと面接触し得るように平面、かつ、基板部41の一方の面からの高さが同じになるように構成されている。また、基板部41の他方の面は、隣り合う単電池10の他方が備えるケース側壁11Bに押し当てられる押し当て面である。
【0043】
突出部42は、隣り合うリブ43の間に、各単電池10を冷却するための冷却風が通過する複数の流路44を構成する。複数の流路44において、ケース側壁11Bの第1対向部11B1と接する部分が第1部分44Aである。第1部分44Aでは、上下方向において、1つの流路44が位置する。複数の流路44のうち、ケース側壁11Bの第2対向部11B2と接する部分が第2部分44Bである。第2部分44Bでは、複数の流路44が上下に並ぶ。複数の流路44のうち、ケース側壁11Bの第3対向部11B3と接する部分が第3部分44Cである。第3部分44Cでは、上下方向において、1つの流路44が位置する。
【0044】
第1部分44Aに位置する各流路44の第1流路幅W1は、第2部分44Bに位置する各流路44の第2流路幅W2よりも小さい。第1部分44Aに位置する各流路44の第1流路断面積は、第2部分44Bに位置する各流路44の第2流路断面積よりも小さい。第1流路幅W1は、第3部分44Cに位置する流路44の第3流路幅W3よりも小さい。第1流路断面積は、第3部分44Cに位置する各流路44の第3流路断面積よりも小さい。第3流路幅W3は、第2流路幅W2と同じか、第2流路幅W2よりも大きい。第3流路断面積は、第2流路断面積と同じ、もしくは、それよりも大きい。
【0045】
第1流路幅W1は、一例として、5mm以上6mm以下が好ましい。第2流路幅W2及び第3流路幅W3は、一例として、5mm以上9mm以下、より好ましくは、6mmよりも大きく、かつ9mm以下が好ましい。
【0046】
図5に示すように、複数のリブ43は、上下に延びる中心線CLを対称軸として線対称な形状を有する。中心線CLは、スペーサ40のなかで、電極体20の捲回軸L1と平行な方向において中央に位置する。複数のリブ43は、1つの第1リブ43A、複数の第2リブ43B、複数の第3リブ43C、及び複数の第4リブ43Dによって構成される。
【0047】
第1リブ43Aは、捲回軸L1と平行な第1平行部と、捲回軸L1と垂直な第1垂直部とを備える。第1平行部は、複数のリブ43のなかで最も上部に位置する。第1平行部は、主としてケース側壁11Bのなかで第1対向部11B1の上端を押圧する。第1垂直部は、第1平行部の中央において、基板部41の下端から第1平行部に向かって上下に延びる部分である。第1垂直部は、第1平行部と基板部41の下端との間の空間を2つに区切る。第2リブ43B、第3リブ43C、及び第4リブ43Dの各々は、第1平行部と基板部41の下端との間において、第1垂直部を対称軸として線対称に配置される。
【0048】
第2リブ43Bは、基板部41の下端から上方に向かって延びるとともに、基板部41の側縁に向かって延びる。第2リブ43Bの一例は、捲回軸L1と平行な第2平行部と、捲回軸L1と垂直な第2垂直部と、第2平行部及び第2垂直部を繋ぐ円弧状の円弧部とを備える。第2リブ43Bの一例は、捲回軸L1と平行な第2平行部と、第2平行部における中心線CL側の端部から基板部41の下端に向かって円弧状に延びる円弧部とを備える。第2平行部は、主としてケース側壁11Bのなかで第2対向部11B2を押圧する。特に、複数の第2リブ43Bのうち最も下方に位置する第2リブ43Bが備える第2平行部は、主としてケース側壁11Bのなかで第2対向部11B2と第3対向部11B3との境界を押圧する。
【0049】
第3リブ43Cは、第1リブ43Aと第2リブ43Bとの間、及び、2つの第2リブ43Bの間に配置される。第3リブ43Cの一例は、捲回軸L1と平行な第3平行部と、第3平行部における中心線CL側の端部から下方に向かって湾曲する湾曲端部とを備える。第1リブ43Aと第2リブ43Bとの間に配置される第3リブ43Cは、第1リブ43Aと第2リブ43Bとの間に構成される流路44を2つに分岐させる。同様に、2つの第2リブ43Bの間に配置される第3リブ43Cは、2つの第2リブ43Bの間に構成される流路44を2つに分岐させる。第1リブ43Aと第2リブ43Bとの間に配置される第3リブ43Cが備える第3平行部は、主としてケース側壁11Bのなかで第1対向部11B1と第2対向部11B2との境界を押圧する。2つの第2リブ43Bの間に配置される第3リブ43Cが備える第3平行部は、主としてケース側壁11Bのなかで第2対向部11B2を押圧する。
【0050】
第4リブ43Dは、基板部41の下端において、第2リブ43Bよりも中心線CLから離れた位置に配置される。第4リブ43Dは、捲回軸L1と平行に延びる第4平行部を備える。第4リブ43Dは、主としてケース側壁11Bのなかで第3対向部11B3の下端を押圧する。
【0051】
また、組電池1の状態で、スペーサ40には、下方から冷却風CWが送風される。冷却風CWは、スペーサ40の下端において、リブ43が構成する流路44に流入した後、流路44を通じてスペーサ40の側縁近傍から流出する。
【0052】
例えば、第1リブ43Aと、第1リブ43Aに最も近い第2リブ43Bとの間に構成される流路44の場合では、冷却風CWは、スペーサ40の下端から流路44に流入すると、第3部分44Cを通じて第2部分44Bに到達する。冷却風CWの流量は、流路44に流入してから第3リブ43Cの位置に到達するまでは一定である。そして、冷却風CWは、第2部分44Bで第3リブ43Cの位置まで到達すると、第1部分44Aを通過する冷却風CWと、そのまま第2部分44Bを通過する冷却風CWとに分岐する。第1部分44Aを通過する冷却風CWの流量は、分岐前の流量よりも少なくなる。また、第1流路断面積が第2流路断面積よりも小さいことから、第1部分44Aを通過する冷却風CWの流量は、第2部分44Bを通過する冷却風CWの流量よりも少なくなる。そして、第1部分44Aを通過する冷却風CWと、第2部分44Bを通過する冷却風CWとの各々が、スペーサ40の側縁近傍から流出する。
【0053】
例えば、2つの第2リブ43Bの間に構成される流路44の場合では、冷却風CWは、スペーサ40の下端から流路44に流入すると、第3部分44Cを通じて第2部分44Bに到達する。冷却風CWの流量は、流路44に流入してから第3リブ43Cの位置に到達するまでは一定である。そして、冷却風CWは、第2部分44Bで第3リブ43Cの位置まで到達すると、第2部分44Bのなかで2つの流路44に分岐する。そして、2つの流路44に分岐した冷却風CWの各々が、スペーサ40の側縁近傍から流出する。この場合では、冷却風CWの流量は、第1流路断面積が第2流路断面積よりも小さいことから、分岐前及び分岐後の各流路44における冷却風CWの流量が第1部分44Aにおける冷却風CWの流量よりも多くなる。なお、2つの第2リブ43Bの間に第3リブ43Cを備えない場合、流路44における冷却風CWの流量は一定であり、かつ、第1部分44Aにおける冷却風CWの流量よりも多くなる。
【0054】
例えば、第4リブ43Dと、第4リブ43Dに最も近い第2リブ43Bとの間に構成される流路44の場合では、冷却風CWは、スペーサ40の下端から流路44に流入すると、第3部分44Cを通じてスペーサ40の側縁近傍から流出する。この場合、冷却風CWの流量は、流路44に流入してから、流路44から流出するまでは一定である。なお、第1流路断面積が第3流路断面積よりも小さいことから、第1部分44Aにおける冷却風CWの流量は、第3部分44Cにおける冷却風CWの流量よりも少なくなる。
【0055】
以上より、複数の流路44のうち、第1部分44Aに位置する各流路44における冷却風CWの第1流量は、第2部分44Bに位置する各流路44における冷却風CWの第2流量よりも少ない。同様に、複数の流路44のうち、第1流量は、第3部分44Cに位置する各流路44における冷却風CWの第3流量よりも少ない。なお、第3流量は、第2流量と同じか第2流量よりも多い。一例として、第1流量は、第2流量に対して50%以上80%以下である。
【0056】
第1対向部11B1は、第1部分44Aを通過する冷却風CWによって冷却される。第2対向部11B2は、第2部分44Bを通過する冷却風CWによって冷却される。第3対向部11B3は、第3部分44Cを通過する冷却風CWによって冷却される。第1流量が第2流量よりも少ないことから、第1対向部11B1の単位面積あたりの冷却風CWによる第1冷却効率は、第2対向部11B2の単位面積あたりの冷却風CWによる第2冷却効率よりも低い。同様に、第1流量が第3流量よりも少ないことから、第1冷却効率は、第3対向部11B3の単位面積あたりの冷却風CWによる第3冷却効率よりも低い。第3冷却効率は、第2冷却効率と同じか第2冷却効率よりも高い。なお、ここでの冷却効率とは、単位時間あたりに対象物に及ぼす冷却量の大きさを意味する。例えば、第1冷却効率が第2冷却効率よりも低いことは、単位時間あたりにおいて、第1対向部11B1における単位面積あたりの冷却量が、第2対向部11B2における単位面積あたりの冷却量よりも小さいことを意味する。
【0057】
第1部分44Aを通過する冷却風CWは、第1部分44Aを通過しない冷却風CWよりも流路44内での経路の全長が長く、かつ第1流路断面積が第2流路断面積及び第3流路断面積よりも小さいため、流路44内での圧力損失が大きくなり易い。そのため、第1部分44Aにおける冷却風CWの第1平均流速は、第2部分44Bにおける冷却風CWの第2平均流速よりも小さくなる。同様に、第1部分44Aにおける冷却風CWの第1平均流速は、第3部分44Cにおける冷却風CWの第3平均流速よりも小さくなる。第1部分44A、第2部分44B、及び第3部分44Cの各部における平均流速及び流路断面積の差異は、各部における流量の差異、ひいては冷却効率の差異に寄与する。なお、ここでの流速とは、冷却風CWが流路44内で単位時間あたりに進行方向に沿う方向へ移動した距離を意味する。
【0058】
[組電池の作用]
以下、
図6を参照して、組電池1の作用について説明する。なお、
図6では、電極体20とスペーサ40のリブ43との位置関係を説明する便宜上、リブ43の形状を二点鎖線で示す。
【0059】
図6に示すように、上湾曲部32は、第1対向部11B1を介して第1部分44Aを通過する冷却風CWによって冷却される。偏平部31は、第2対向部11B2を介して第2部分44Bを通過する冷却風CWによって冷却される。下湾曲部33は、第3対向部11B3を介して第3部分44Cを通過する冷却風CWによって冷却される。
【0060】
上湾曲部32は、偏平部31よりも電極体20の厚さが薄い部分であるため、偏平部31よりも充放電時の発熱量が少ない部分である。そこで、第1冷却効率を第2冷却効率よりも低くして上湾曲部32の冷却量を偏平部31の冷却量よりも低めることで、上湾曲部32が過剰に冷却されることを防いでいる。
【0061】
また、下湾曲部33は、上湾曲部32と同様に偏平部31よりも薄い部分であるため、偏平部31よりも充放電時の発熱量が少ない部分である。一方、非水電解液ESの液面が上湾曲部32よりも下方に位置することから、上湾曲部32は、周囲に存在する非水電解液ESの熱容量の影響を受けない分だけ、下湾曲部33と比較して冷却され易い。そこで、第1冷却効率を第3冷却効率よりも低くして上湾曲部32の冷却量を下湾曲部33の冷却量よりも低めることで、上湾曲部32が過剰に冷却されることを防いでいる。
【0062】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)ケース11の内部において、電極体20を下方に偏って収容することで、単電池10の充放電時における外部端子13A,13Bでの発熱を電極体20に伝えにくくすることができる。これにより、電極体20の温度ムラを抑えることができる。
【0063】
(2)第1冷却効率を第2冷却効率よりも低くすることで、偏平部31に対して上湾曲部32が過剰に冷却されることを防ぐことができる。これにより、電極体20の温度ムラを抑えることができる。
【0064】
(3)第1部分44Aにおける第1平均流速を第2部分44Bにおける第2平均流速よりも小さくすることで、第1部分44Aにおける第1流量を第2部分44Bにおける第2流量よりも低くすることができる。結果として、第1冷却効率を第2冷却効率よりも低くすることができる。
【0065】
(4)第1部分44Aに位置する各流路44の第1流路断面積は、第2部分44Bに位置する各流路44の第2流路断面積よりも小さく構成されている。これにより、第1部分44Aにおける冷却風CWの圧力損失を高めることができるため、第1平均流速を第2平均流速よりも小さくすることができる。また、第1部分44Aと第2部分44Bとの間の流路断面積の差異及び平均流速の差異によって、第1流量を第2流量よりも効果的に低めることができる。結果として、第1冷却効率を第2冷却効率よりも効果的に低めることができる。
【0066】
(5)第1冷却効率を第3冷却効率よりも低くすることで、非水電解液ESが下湾曲面33Sと接触し、かつ、液面が上湾曲部32よりも下方に位置した状態において、上湾曲部32が過剰に冷却されることを防ぐことができる。これにより、電極体20の温度ムラを抑えることができる。
【0067】
(6)単電池10の電池容量(Ah)に対する距離D(mm)の値が1.57mm/Ah以上、より好ましくは1.96mm/Ah以上であれば、外部端子13A,13Bでの発熱を電極体20に好適に伝えにくくすることができる。
【0068】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・外部端子13A,13Bでの発熱が電極体20に悪影響を及ぼさないのであれば、単電池10の電池容量(Ah)に対する距離D(mm)の値が1.57mm/Ah未満であってよい。この場合、少なくともケース11の内部において、電極体20が下方に偏って収容されていればよい。
【0069】
・第3冷却効率は、第2冷却効率よりも低くてもよい。例えば、非水電解液ESの熱容量による冷却効率への影響が小さい場合や、非水電解液ESの液面が上湾曲部32もしくはそれ以上の高さにまで達している場合では、上湾曲部32と同様に、下湾曲部33の冷却量を偏平部31よりも低めることが好ましい。第3冷却効率を第2冷却効率よりも低くして下湾曲部33の冷却量を偏平部31の冷却量よりも低めることで、下湾曲部33が過剰に冷却されることを防ぐことができるため、電極体20の温度ムラを抑えることができる。例えば、第3冷却効率が第1冷却効率と同等であってもよい。
【0070】
・第1流路断面積と第2流路断面積とが同じであってもよい。この場合、第1部分44Aにおける第1平均流速を、第2部分44Bにおける第2平均流速よりも小さくすることで、第1冷却効率を第2冷却効率よりも低くすればよい。例えば、第1部分44Aを通過する冷却風CWの流路44内の経路の全長を、第2部分44Bを通過し、かつ第1部分44Aを通過しない冷却風CWの流路44内の経路の全長よりも長くすることで、第1平均流速を第2平均流速よりも小さくしてもよい。
【0071】
・複数のリブ43の形態は、
図5に示す形状に限定されない。例えば、
図7に示すように、リブ43は、捲回軸L1と平行な複数の第5リブ43Eによって構成されてもよい。この場合、複数の第5リブ43Eは、隣り合う第5リブ43Eの間に、各単電池10を冷却するための冷却風CWが通過する複数の流路44を構成する。複数の流路44において、ケース側壁11Bを介して上湾曲部32に対向して位置する部分が第1部分44Aである。第1部分44Aでは、上下方向において、1つの流路44が位置する。複数の流路44のうち、ケース側壁11Bを介して偏平部31に対向して位置する部分が第2部分44Bである。第2部分44Bでは、複数の流路44が上下に並ぶ。複数の流路44のうち、ケース側壁11Bを介して下湾曲部33に対向して位置する部分が第3部分44Cである。第3部分44Cでは、上下方向において、1つの流路44が位置する。この場合、冷却風CWは、スペーサ40の一方の側縁において各流路44に流入するとともに、他方の側縁において各流路44から流出する。
【0072】
図7に示すリブ43の形態において、第1部分44Aに位置する流路44の第1流路幅W1は、第2部分44Bに位置する1つの流路44の第2流路幅W2よりも小さい。第1流路幅W1は、第3部分44Cに位置する流路44の第3流路幅W3よりも小さい。また、第5リブ43Eは、基板部41の一方の面からの高さが同じになるように構成されている。また、各流路44は、一例として、何れも同じ長さを有する。この場合であっても、第1流路断面積が第2流路断面積及び第3流路断面積よりも小さいことから、第1部分44Aの第1平均流速は、第2部分44Bの第2平均流速及び第3部分44Cの第3平均流速よりも小さくなる。したがって、このような形態であっても、上記(1)~(6)に準じた効果を得ることができる。
【0073】
また、
図7に示す形態において、第3部分44Cに位置する流路44の第3流路幅W3は、第2部分44Bに位置する各流路44の第2流路幅W2よりも小さくてもよい。例えば、第3流路幅W3は、第1流路幅W1と同じであってもよい。この場合、第3冷却効率が第2冷却効率よりも低くなることで、下湾曲部33の冷却量を偏平部31の冷却量よりも低めることができる。これにより、非水電解液ESの熱容量による冷却効率への影響が小さい場合や、非水電解液ESの液面が上湾曲部32もしくはそれ以上の高さにまで達している場合に、下湾曲部33が過剰に冷却されることを防ぐことができる。結果として、電極体20の温度ムラを抑えることができる。
【0074】
なお、
図7に示す形態において、隣り合う第5リブ43Eの間隔を等しくすることで各流路44の流路断面積を等しくしてもよい。この場合、各流路44に流入する冷却風CWの流速を、第1部分44A、第2部分44B、及び第3部分44Cの各々で変えることによって、第1部分44A、第2部分44B、及び第3部分44Cの各部における流量を制御してもよい。このような形態によっても、ケース側壁11Bの各部に対する冷却効率を制御できる。
【0075】
・第1平均流速が第2平均流速よりも低ければ、第1部分44Aのなかに、第2部分44Bにおける第2平均流速よりも流速が小さい部分が局所的に存在してもよい。また、第1冷却効率が第2冷却効率よりも低ければ、第1平均流速が第2平均流速以上であってもよい。例えば、第1部分44Aの第1流路断面積が第2部分44Bの第2流路断面積よりも小さい場合に、第1部分44Aに流入する冷却風CWの圧力を高めることで、第1平均流速を第2平均流速と同等以上としてもよい。この場合であっても、例えば、第1部分44Aにおける第1流量が、第2部分44Bにおける第2流量よりも低ければ、第1冷却効率が第2冷却効率よりも低くなる。
【0076】
・第1部分44Aを通過する冷却風CWの流路44内の経路の全長が、第2部分44Bを通過し、かつ第1部分44Aを通過しない冷却風CWの流路44内の経路の全長と同じかそれよりも短くてもよい。この場合でも、第1流路断面積が第2流路断面積及び第3流路断面積よりも小さいことから、第1部分44Aの第1平均流速は、第2部分44Bの第2平均流速及び第3部分44Cの第3平均流速よりも小さくなる。
【0077】
・単電池10は、リチウムイオン二次電池に限定されず、ニッケル水素二次電池等であってもよい。また、電解液として非水電解液ESではなく水系の電解液を用いた二次電池であってもよい。
【0078】
・リチウムイオン二次電池である単電池10は、自動搬送機や荷役用の特殊自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車等の他、コンピュータ、その他の電子機器に搭載されるものであってもよく、これ以外のシステムを構成するものであってもよい。例えば、船舶、航空機等の移動体に設けられるものであってもよく、発電所から変電所等を介して二次電池が設置されたビルや家庭等に電力を供給する電力供給システムであってもよい。
【0079】
[実施例]
以下、実施例、比較例について説明する。なお、以下の実施例は、上記実施形態の効果を説明するための一例であって、本発明を限定するものではない。
【0080】
[評価1]
評価1では、実施例1~3及び比較例1,2を用いて、単電池10の電池容量(Ah)に対する距離D(mm)の値を変えたときの電極体20に生じる温度ムラを評価した。単電池10の電池容量(Ah)に対する距離D(mm)の値(mm/Ah)は、実施例1では1.57、実施例2では1.96、実施例3では2.51、比較例1では1.40、比較例2では0.94とした。実施例1~3及び比較例1,2では、非水電解液ESの液面の位置を下湾曲部33の上端と同じ程度の高さとした。また、冷却風CWの流量は、第2流量と第3流量とがほぼ等しく、かつ、第1流量が第2流量及び第3流量の60%程度になるように設定した。そして、実施例1~3及び比較例1,2の各々で単電池10の放電を行った後、偏平部31、上湾曲部32、及び下湾曲部33の各々で測定した温度(℃)の温度差の最大値を評価した。なお、偏平部31、上湾曲部32、及び下湾曲部33の各々で測定した温度の温度差の最大値が3.0℃以下のものを好ましい形態として判定した。評価1の評価結果を表1に示す。なお、放電前において、偏平部31、上湾曲部32、及び下湾曲部33の各々で測定した温度の温度差は、略ゼロである。
【0081】
【0082】
表1に示すように、実施例1~3では、何れも温度差の最大値が3.0℃以下であった。特に、実施例2では、温度差の最大値が2.0℃以下であり、さらに、実施例3では、温度差の最大値が1.0℃以下であった。これに対して、比較例1,2では、何れも温度差の最大値が3.0℃よりも大きかった。以上より、単電池10の電池容量(Ah)に対する距離D(mm)の値が大きくなるほど、電極体20のなかでの温度差の最大値が小さくなる、すなわち、電極体20に生じる温度ムラが小さくなることが確認された。
【0083】
[評価2]
評価2では、実施例4,5及び比較例3,4を用いて、第1冷却効率を第2冷却効率よりも低めた場合と、第1冷却効率を第2冷却効率と同じにした場合とで、電極体20に生じる温度ムラを評価した。実施例4,5及び比較例3,4では、単電池10の電池容量(Ah)に対する距離D(mm)の値を1.57(mm/Ah)とした。また、非水電解液ESの液面の位置を下湾曲部33の上端と同じ程度の高さとした。そして、第1流量、第2流量、及び第3流量の各々に対して、「流量1」または「流量2」の何れかの流量を設定した。なお、「流量1」は、「流量2」に対して60%の流量である。そして、実施例4,5及び比較例3,4の各々で単電池10の放電を行った。そして、偏平部31、上湾曲部32、及び下湾曲部33の各々における放電後の温度(℃)を測定した。なお、放電後の偏平部31、上湾曲部32、及び下湾曲部33の各々で測定した温度の温度差(℃)の最大値が3.0℃以下のものを好ましい形態として判定した。なお、放電前において、偏平部31、上湾曲部32、及び下湾曲部33の各々で測定した温度の温度差は、略ゼロである。
【0084】
実施例4及び実施例5では、第1流量及び第3流量を「流量1」とし、かつ、第2流量を「流量2」とした。比較例3,4では、第1流量、第2流量、及び第3流量を「流量2」とした。また、実施例4及び比較例3では、放電時の周囲温度を常温(15℃~25℃程度)とした。また、実施例5及び比較例4では、放電時の周囲温度を高温(40℃~50℃程度)とした。評価2の評価結果を表2に示す。
【0085】
【0086】
表2に示すように、実施例4,5では、放電後における各部の温度差の最大値が3℃以下であった。これに対して、比較例3,4では、放電後における各部の温度差の最大値が3℃超(4℃~5℃)であった。したがって、第1冷却効率を第2冷却効率よりも低くすることで、電極体20の温度ムラが小さくなることが確認された。
【符号の説明】
【0087】
CW…冷却風
1…組電池
10…単電池
11…ケース
11B…ケース側壁
11B1…第1対向部
11B2…第2対向部
11B3…第3対向部
13A,13B…外部端子
20…電極体
21…正極シート
24…負極シート
27…セパレータ
31…偏平部
31S…平面
32…上湾曲部
32S…上湾曲面
33…下湾曲部
33S…下湾曲面
40…スペーサ
41…基板部
42…突出部
43…リブ
44…流路
44A…第1部分
44B…第2部分
44C…第3部分