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特許7519419正極活物質、正極及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】正極活物質、正極及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240711BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240711BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240711BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01G11/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022169567
(22)【出願日】2022-10-24
(65)【公開番号】P2023066395
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0145309
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】ベ ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドゥ ヨル
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ス ジュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョン ハン
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン ウ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195790(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065566(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
H01G 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともニッケル及びチタンを含有するリチウム複合酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム複合酸化物は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子であり、
前記リチウム複合酸化物の断面TEMイメージから選ばれた一次粒子の短軸方向に対するEDXラインスキャン(line scanning)を通じて得られたチタンのline sum spectrumから計算されたチタンの含量(mol%)が下記の式1を満た
前記一次粒子は、下記化1で表される、正極活物質。
[式1]
1.4≦{(a1+a2)/2}/b1≦2.502
(ここで、前記断面TEMイメージから選ばれた一次粒子の短軸径をrとすると、
a1は、前記line sum spectrumの始点から0~0.05rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
a2は、前記line sum spectrumの始点から0.95r~rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
b1は、前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)である。)
[化1]
Li Ni 1-(x+y+z) Ti M1 M2
(ここで、
M1は、Co、Mn及びAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、Zr、Co、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、B、Nb、Gd及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.40、0≦z≦0.20である。)
【請求項2】
前記リチウム複合酸化物のうちチタンは、リチウムを除いた全体の金属元素を基準に0.2mol%超過3.3mol%未満で存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム複合酸化物のうちチタンの少なくとも一部は、前記一次粒子内にドーピングされた状態で存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)は、0.083mol%超過0.832mol%未満である、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム複合酸化物は、コバルト、マンガン及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1つの金属元素をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記一次粒子は、コア及び前記コアの表面のうち少なくとも一部に存在するシェルを含むコアシェル粒子として、
前記シェル内には、下記化2で表される金属酸化物が存在する、請求項1に記載の正極活物質。
[化2]
LiTiM3c
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Gd及びNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0<b≦8、0≦c≦8、2≦d≦13である。)
【請求項7】
前記シェル内にはチタン酸化物及びリチウムチタン酸化物から選ばれる少なくとも1つが存在する、請求項に記載の正極活物質。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項9】
請求項に記載の正極を使用するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質、正極及びこれを含むリチウム二次電池に関し、より具体的に、少なくともニッケル及びチタンを含有するリチウム複合酸化物を含むが、前記チタンが前記リチウム複合酸化物内にドーピングされるとともに、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在する正極活物質であって、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の出力効率と高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を同時に向上させることができる正極活物質、正極及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することで電力を貯蔵するものである。このような電池の代表的な例としては、正極及び負極においてリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされる際の化学電位(chemical potential)の差によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として用い、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填して製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が用いられており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnOなどの複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質の中で、LiCoOは、寿命特性及び充放電効率に優れているため、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界により高価であるため、価格競争力に限界があるという短所を持っている。
【0006】
LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れており、価格が安いという長所があるが、容量が小さく、高温特性に劣るという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属間のカチオン混合(cation mixing)問題により合成が難しく、それに伴いレート(rate)特性において大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオン混合の深化度合いに応じて多量のLi副産物が発生することになり、これらLi副産物の殆どは、LiOH及びLiCOの化合物からなり、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極製造後の充放電の進行に伴うガス発生の原因となる。残留LiCOは、セルのスウェリング現象を増加させてサイクルを減少させるだけでなく、電池が膨らむ原因となる。
【0008】
一方、より高仕様のリチウム二次電池を製造するため、正極活物質のうちNiの含量が多いhigh-Ni型の正極活物質が注目されている。しかし、このようなhigh-Ni型の正極活物質は、前述したLiNiO系正極活物質のようにカチオン混合による問題点を伴っているため、high-Ni型の正極活物質を主な遷移金属元素以外の金属元素でドーピングやコーティングすることにより、正極活物質の安定性を高めようとする試みが続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が市場を牽引する役割を果たしている中で、リチウム二次電池に使用される正極材の需要も持続的に変化している。
【0010】
例えば、従来は、安全性確保などの観点からLFPを用いたリチウム二次電池が主に使用されてきたが、近年、LFPに対して重量当たりのエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0011】
これにより、より高仕様のリチウム二次電池に使用される正極活物質は、より厳しい作動条件下でも適切に期待される安定性及び信頼性をすべて満たす必要がある。
【0012】
このような諸般の環境を考慮し、本発明は、少なくともニッケル及びチタンを含有するリチウム複合酸化物を含むが、前記チタンが前記リチウム複合酸化物内にドーピングされるとともに、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在する正極活物質であって、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の出力効率と高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を同時に向上させることができる正極活物質を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、本願で定義される正極活物質を含む正極を提供することである。
【0014】
また、本発明のさらに他の目的は、本願で定義される正極を使用するリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、少なくともニッケル及びチタンを含有するリチウム複合酸化物を含むが、前記チタンが前記リチウム複合酸化物内にドーピングされるとともに、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在する正極活物質であって、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の出力効率と高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を同時に向上させることができる正極活物質が提供される。
【0016】
具体的に、前記リチウム複合酸化物は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記リチウム複合酸化物の断面TEMイメージから選ばれた一次粒子の短軸方向に対するEDXラインスキャン(line scanning)を通じて得られたチタンのline sum spectrumから計算されたチタンの含量(mol%)が下記の式1を満たすことができる。
【0017】
[式1]
1.4≦{(a1+a2)/2}/b13.25
【0018】
(ここで、前記断面TEMイメージから選ばれた一次粒子の短軸径をrとすると、
a1は、前記line sum spectrumの始点から0~0.05rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
a2は、前記line sum spectrumの始点から0.95r~rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
b1は、前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)である。)
【0019】
一実施例において、前記リチウム複合酸化物のうちチタンは、リチウムを除いた全体の金属元素を基準に0.2mol%超過3.3mol%未満で存在してもよい。
【0020】
前記リチウム複合酸化物のうちチタンは、リチウムを除いた全体の金属元素を基準に0.2mol%より多量で存在することにより、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の電気化学的特性を示す全般的な指標(例えば、充電容量、放電容量、充放電効率、 サイクル容量維持率、インピーダンス特性、出力効率など)が改善でき、特に高温寿命特性を向上させることができる。
【0021】
一実施例において、前記リチウム複合酸化物のうちチタンの少なくとも一部は、前記一次粒子内にドーピングされた状態で存在してもよい。
【0022】
このとき、前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)は、0.083mol%超過0.832mol%未満であることが好ましい。
【0023】
前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内に存在するチタンは、前記一次粒子内にドーピングされた状態で存在するチタンに対応されてもよく、前記line sum spectrumの始点から、0.05r~0.95rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準にチタンの平均含量(mol%)が0.083mol%を超える量で存在することにより、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の出力効率を向上させることができる。
【0024】
前記リチウム複合酸化物は、コバルト、マンガン及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1つの金属元素をさらに含んでもよい。
【0025】
具体的に、前記一次粒子は、下記化1で表される。
【0026】
[化1]
LiNi1-(x+y+z)TiM1M2
(ここで、
M1は、Co、Mn及びAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、Zr、Co、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、B、Nb、Gd及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なり、
0.51.5、00.50、00.40、00.20である。)
【0027】
一実施例において、前記一次粒子は、コア及び前記コアの表面のうち少なくとも一部に存在するシェルを含むコアシェル粒子として、前記シェル内には、下記化2で表される金属酸化物が存在してもよい。
【0028】
[化2]
LiTiM3c
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Gd及びNdから選ばれる少なくとも1つであり、
10、0<b8、08、213である。)
【0029】
前記金属酸化物は、チタン酸化物及びリチウムチタン酸化物から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0030】
前記コアの表面のうち少なくとも一部に前記化2で表される金属酸化物が存在することにより、前記一次粒子の表面のうちチタンの含量が所定以上に存在するようにすることができる。これにより、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池のインピーダンス特性及び高温サイクル容量維持率を向上させることができる。
【0031】
また、本発明の他の態様によれば、本願で定義される正極活物質を含む正極が提供される。
【0032】
また、本発明のさらに他の態様によれば、本願で定義される正極を使用するリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、リチウム複合酸化物内にチタンがドーピングされた状態で存在するとともに、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在することにより、リチウム二次電池の出力効率と高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を同時に向上させることが可能である。
【0034】
このとき、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在するチタンの含量に対して、前記リチウム複合酸化物内にドーピングされたチタンの含量が所定の割合以上の場合、前記リチウム複合酸化物の表面抵抗が増加し、インピーダンス特性及びサイクル容量維持率が低下する場合がある。
【0035】
また、前記リチウム複合酸化物内にドーピングされたチタンの含量に対して、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在するチタンの含量が所定の割合以上の場合、前記リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池の出力効率が低下する場合がある。
【0036】
本発明によれば、前記リチウム複合酸化物内にドーピングされたチタンの含量と表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在するチタンの含量を制御して出力効率、インピーダンス特性及び高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を含むリチウム二次電池の電気化学特性に関連する全般的な指標を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージであり、前記図1における矢印の方向は、一次粒子の短軸方向に沿ったline scanning方向を示したものであり、破線は、line sum spectrum区間を示したものである。
図2図1に示すline scanning方向によるチタンのline sum spectrumを示したものである。
図3図1と異なる角度で撮影した実施例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージ及びチタンに対するEDX mapping結果を示したものである。
図4】比較例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージであり、前記図4において矢印の方向は、一次粒子の短軸方向に沿ったline scanning方向を示したものである。
図5図4に示すline scanning方向によるチタンのline sum spectrumを示したものであり、破線は、line sum spectrum区間を示したものである。
図6図4と異なる角度で撮影した比較例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージ及びチタンに対するEDX mapping結果を示したものである。
図7】比較例4による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージであり、前記図7において矢印の方向は、一次粒子の短軸方向に沿ったline scanning方向を示したものであり、破線は、line sum spectrum区間を示したものである。
図8図7に示すline scanning方向によるチタンのline sum spectrumを示したものである。
図9図7と異なる角度で撮影した比較例4による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージ及びチタンに対するEDX mapping結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明による正極活物質及び前記正極活物質を含むリチウム二次電池について、より詳細に説明する。
【0039】
正極活物質
本発明の一態様によれば、少なくともニッケル及びチタンを含有するリチウム複合酸化物を含む正極活物質が提供される。また、前記リチウム複合酸化物は、ニッケル及びチタンの他にリチウムを含み、リチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーションが可能な層状結晶構造を有する複合金属酸化物である。
【0040】
本願で定義される正極活物質に含まれる前記リチウム複合酸化物は、少なくとも1つの一次粒子(primary particle)を含む二次粒子(secondary particle)であってもよい。このとき、前記一次粒子は、結晶子(crystallite)として表すことができる。
【0041】
ここで、「少なくとも1つの一次粒子を含む二次粒子」は、「複数の一次粒子が凝集して形成された粒子」または「単一の結晶子からなる非凝集された単粒子」をすべて含むものと解釈されるべきである。
【0042】
前記一次粒子及び前記二次粒子は、それぞれ独立して棒状、楕円状及び/又は不定形であってもよい。
【0043】
前記一次粒子及び前記二次粒子のサイズを示す指標として平均長軸の長さを使用する場合、前記リチウム複合酸化物を構成する前記一次粒子の平均長軸の長さは0.1μm~5μmであってもよく、前記二次粒子の平均長軸の長さは、1μm~30μmであってもよい。前記二次粒子の平均長軸の長さは、前記二次粒子を構成する前記一次粒子の数によって異なり得、前記正極活物質内には様々な平均長軸の長さを有する粒子が含まれてもよい。
【0044】
前記リチウム複合酸化物が「単一の結晶子からなる非凝集された単粒子」であるか、または「比較的少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、「単一の結晶子からなる非凝集された単粒子」または「比較的少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」内に含まれる一次粒子のサイズ(平均粒径)は、「数十~数百個またはそれ以上の一次粒子が凝集して形成された二次粒子」内に含まれる一次粒子(平均粒径)より大きくてもよい。
【0045】
このように、「単一の結晶子からなる非凝集された単粒子」であるか、または「比較的少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」であるリチウム複合酸化物は、一般に「数十~数百個またはそれ以上の一次粒子が凝集して形成された二次粒子」を製造する場合に対して、強い熱処理条件(高い熱処理温度/長時間熱処理)が要求される。相対的に高温(例えば800℃以上)で長時間熱処理を行う場合、粒子成長(結晶成長)が促進されて単一の粒子のサイズが大きくなるとともに、粒子の凝集度が低くなった正極活物質が得られることが知られている。
【0046】
例えば、前記リチウム複合酸化物が「単一の結晶子からなる非凝集された単粒子」であるか、または「比較的少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、前記一次粒子の平均長軸の長さは0.5μm~20μmの範囲内に存在してもよい。一方、前記リチウム複合酸化物が「複数(数十~数百個またはそれ以上)の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、前記一次粒子の平均長軸の長さは、0.1μm~5μmの範囲内に存在してもよい。
【0047】
一実施例において、前記リチウム複合酸化物のうちチタンの少なくとも一部は、前記一次粒子内にドーピングされた状態で存在してもよい。
【0048】
前記一次粒子内にドーピングされたチタンの含量は、前記リチウム複合酸化物の水酸化物前駆体と混合されるチタン原料物質の含量から算出されるか、または前記一次粒子に対するTEM-EDXまたはEP-EDX分析を通じて測定されてもよい。
【0049】
また、本発明によれば、前記リチウム複合酸化物内にチタンがドーピングされた状態で存在するとともに、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在することにより、前記リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池の出力効率と高温寿命特性(サイクル容量維持率)を同時に向上させることが可能である。
【0050】
上述した効果を達成するため、前記リチウム複合酸化物のうちチタンは、リチウムを除いた全体の金属元素を基準に0.2mol%より多い量で存在することが好ましい。このとき、前記リチウム複合酸化物のうちチタンの含量は、前記リチウム複合酸化物に対するICP分析を通じて測定されたbulk組成から確認できる。
【0051】
前記リチウム複合酸化物のうちチタンは、リチウムを除いた全体の金属元素を基準に0.2mol%より多量で存在することにより、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の電気化学的特性を示す全般的な指標(例えば、充電容量、放電容量、充放電効率、サイクル容量維持率、インピーダンス特性、出力効率など)が改善され得る。
【0052】
一方、前記リチウム複合酸化物のうち、チタンは、リチウムを除いた全体の金属元素を基準に3.3mol%より少ない量で存在することが好ましい。前記リチウム複合酸化物のうちチタンの含量が過度に多くなると、かえって前記リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池の充電容量、放電容量及び充放電効率が低下する場合がある。
【0053】
前記リチウム複合酸化物は、コバルト、マンガン及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1つの金属元素をさらに含んでもよい。また、前記リチウム複合酸化物を構成する一次粒子も、コバルト、マンガン及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1つの金属元素をさらに含んでもよい。
【0054】
具体的に前記一次粒子は、下記化1で表される。また、複数の一次粒子が凝集した二次粒子のbulk組成も、下記化1で表される。
【0055】
[化1]
LiNi1-(x+y+z)TiM1M2
(ここで、
M1は、Co、Mn及びAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、Zr、Co、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、 F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、B、Nb、Gd及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なり、
0.51.5、00.50、00.40、00.20である。)
【0056】
前記リチウム複合酸化物は、前記化1において、Ni、M1、M2及びTiの濃度(mol%)が下記の関係式1を満たすhigh-Ni型のリチウム複合酸化物であってもよい。
[関係式1]
Ni/(Ni+M1+M2+Ti)80.0
【0057】
また、前記リチウム複合酸化物がコバルトを含む場合、前記リチウム複合酸化物のうちリチウムを除いた全体の金属元素を基準に10mol%以下、好ましくは、5mol%以下、より好ましくは、3mol%以下であるhigh-Ni/low-Co型のリチウム複合酸化物であってもよい。
【0058】
一般に、リチウム複合酸化物のうちニッケルの含量が増加するほど、Li/Ni cation mixingによる構造的不安定性がもたらされることが知られている。また、リチウム複合酸化物のうちコバルトの含量が少ないほど、初期過電圧(抵抗)が増加し、これによってレート特性の低下は避けられないことが知られている。
【0059】
しかし、本願で定義される正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物は、前記リチウム複合酸化物内にチタンがドーピングされた状態で存在するとともに、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在することにより、high-Ni型のリチウム複合酸化物またはhigh-Ni/low-Co型のリチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池の出力効率と高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を同時に向上させることが可能である。
【0060】
一方、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在するチタンの含量に対して、前記リチウム複合酸化物内にドーピングされたチタンの含量が所定の割合以上の場合、前記リチウム複合酸化物の表面抵抗が増加し、インピーダンス特性及びサイクル容量維持率が低下する場合がある。
【0061】
また、前記リチウム複合酸化物内にドーピングされたチタンの含量に対して、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在するチタンの含量が所定の割合以上の場合、前記リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池の出力効率が低下する場合がある。
【0062】
これにより、本願で定義される前記リチウム複合酸化物は、後述するように、前記リチウム複合酸化物内にドーピングされたチタンの含量と表面のうち少なくとも一部に酸化物の形態で存在するチタンの含量を制御して出力効率、インピーダンス特性及び高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を含むリチウム二次電池の電気化学特性に関連する全般的な指標を向上させることができる。
【0063】
具体的に、本願で定義される前記リチウム複合酸化物は、前記リチウム複合酸化物の断面TEMイメージから選ばれた一次粒子の短軸方向に対するEDXラインスキャン(line scanning)を通じて得られたチタンのline sum spectrumから計算されたチタンの含量(mol%)が下記の式1を満たすことができる。
【0064】
[式1]
1.4≦{(a1+a2)/2}/b13.25
【0065】
(ここで、前記断面TEMイメージから選ばれた一次粒子の短軸径をrとすると、
a1は、前記line sum spectrumの始点から0~0.05rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
a2は、前記line sum spectrumの始点から0.95r~rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
b1は、前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)である。)
【0066】
すなわち、a1とa2は、前記line sum spectrumを基準にそれぞれ前記一次粒子の表面部(一次粒子の短軸径の5%に該当する長さ)内のチタンの平均含量(mol%)を示すものであり、b1は、前記line sum spectrumを基準に前記一次粒子の中心部(一次粒子の短軸径の90%に該当する長さ)内のチタンの平均含量(mol%)を示すものである。
【0067】
前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準としたチタンの平均含量(mol%)は、0.083mol%超過0.832mol%未満、好ましくは、0.3mol%超過0.7mol%未満であってもよい。
【0068】
前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内に存在するチタンは、前記一次粒子内にドーピングされた状態で存在するチタンに対応されてもよい。
【0069】
このとき、前記一次粒子内にドーピングされた状態で存在するチタンの含量は、前記リチウム複合酸化物の水酸化物前駆体と混合された後の熱処理(製造例1の第1の熱処理に該当)されるチタン含有原料物質の含量と必ずしも一致するものではない。
【0070】
すなわち、前記リチウム複合酸化物の水酸化物前駆体と混合された後に熱処理されるチタン含有原料物質のうちチタンの一部は、前記line sum spectrumの始点から0~0.05r及び0.95r~rの領域内に存在してもよい。
【0071】
前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準にチタンの平均含量(mol%)が0.083mol%を超える量で存在することにより、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の電気化学的特性に関連する指標のうち出力効率を向上させることができる。
【0072】
一方、前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準にチタンの平均含量(mol%)は、0.832mol%未満であることが好ましい。前記領域内にチタンの平均含量が多くなるほど、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の出力効率をさらに向上させることができるが、逆に、前記リチウム複合酸化物の表面抵抗の低下効果が少なく、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池のインピーダンス特性及びサイクル容量維持率を改善することは困難である場合がある。
【0073】
また、前記line sum spectrumの始点から0~0.05rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)と0.95r~rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)の平均は、0.227mol%超過2.699mol%未満、好ましくは、0.8mol%超過1.2mol%未満であってもよい。
【0074】
前記line sum spectrumの始点から0~0.05r及び0.95r~rの領域内に存在するチタンは、前記一次粒子の表面にコーティングされるか、または一次粒子の最外郭に隣接する領域にドーピングされた状態で存在するチタンに対応されてもよい。
【0075】
このとき、前記一次粒子の表面にコーティングされるか、または一次粒子の最外郭に隣接する領域にドーピングされた状態で存在するチタンの含量は、前記リチウム複合酸化物と混合された後の熱処理(製造例1の第2の熱処理に該当)されるチタン含有原料物質の含量と必ずしも一致するものではない。
【0076】
すなわち、前記リチウム複合酸化物と混合された後に熱処理されるチタン含有原料物質のうちチタンの少なくとも一部は、前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの範囲内に存在してもよい。
【0077】
前記line sum spectrumの始点から0~0.05rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)と、0.95r~rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)の平均が0.227mol%より少ない量で存在する場合、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池のインピーダンス特性及びサイクル容量維持率を改善させることが困難である場合がある。
【0078】
一方、前記line sum spectrumの始点から0~0.05rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)と0.95r~rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)の平均が2.669mol%より多い量で存在する場合、かえって、前記正極活物質を用いたリチウム二次電池の電気化学的特性に関連する指標のうち出力効率が低下する場合がある。前述したように、前記一次粒子内にドーピングされた状態で存在するチタンの含量は、前記リチウム複合酸化物の水酸化物前駆体と混合された後の熱処理(製造例1の第1の熱処理に該当)されるチタン含有原料物質の含量及び前記リチウム複合酸化物と混合した後の熱処理(製造例1の第2の熱処理に該当)されるチタン含有原料物質の含量と前記一次粒子の短軸方向に対するline sum spectrumの始点から0~0.05rの領域、0.05r~0.95rの領域及び0.95r~rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)は、正確に一致しない場合がある。
【0079】
これによって、本発明は、チタン含有原料物質の使用量を考慮する代わりに、前記line sum spectrum上でそれぞれの領域内に存在するチタンの含量を測定し、それぞれの領域内でチタンの含量と前記リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池の電気化学的特性(特に、高温寿命特性)間の有意な相関関係を導き出した。
【0080】
まとめると、前記で定義される{(a1+a2)/2}/b1が式1の範囲を満たすことを前提として、前記リチウム複合酸化物のうちチタンの含量がリチウムを除いた全体の金属元素を基準に0.2mol%超過3.3mol%未満の範囲で存在し、前記一次粒子の短軸方向に対するline sum spectrumの始点から0~0.05rの領域、0.05r~0.95rの領域及び0.95r~rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)が所定の範囲内に存在することにより、出力効率、インピーダンス特性及び高温寿命特性(高温サイクル容量維持率)を含むリチウム二次電池の電気化学特性に関連する全般的な指標を同時に改善することが可能である。
【0081】
前記リチウム複合酸化物及び前記一次粒子内のチタンの含量が前述した範囲を満たすにもかかわらず、{(a1+a2)/2}/b1が1.4より小さい場合、前記リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池のc-rateなどの出力効率は改善できるが、その他の指標(例えば、充電容量、放電容量、充放電効率、インピーダンス特性、寿命特性など)の改善効果が微々たるものとなる。
【0082】
一方、前記リチウム複合酸化物及び前記一次粒子内のチタンの含量が前述した範囲を満たすにもかかわらず、{(a1+a2)/2}/b1が3.25より大きい場合、前記リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池のEIS及びサイクル容量維持率は改善できるが、充電容量、放電容量及び充放電効率と出力特性(c-rate)の改善効果が微々たるものとなる。
【0083】
前記一次粒子は、コア及び前記コアの表面のうち少なくとも一部に存在するシェルを含むコア-シェル粒子として定義できる。このとき、前記シェル内には、下記化2で表される金属酸化物が存在してもよい。
【0084】
[化2]
LiTiM3c
【0085】
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Gd及びNdから選ばれる少なくとも1つであり、
10、0<b8、08、213である。)
【0086】
すなわち、前記シェルは、前記化2で表される金属酸化物が存在する領域として定義できる。
【0087】
前述したように、前記一次粒子がコア-シェル粒子として定義される場合、前記式1において、a1及びa2は、前記コア-シェル粒子の最外郭から0~0.05rの領域内にリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり(このとき、a1及びa2は、それぞれline sum spectrumを基準にline scanningの始点と終点に位置する領域内でのチタンの含量を指す。)b1は、前記コア-シェル粒子の最外郭から0.05r~0.95rの領域内でリチウムを除いた全体金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)である。
【0088】
前記シェル内には、チタン酸化物及びリチウムチタン酸化物から選ばれる少なくとも1つが存在してもよい。また、前記チタン酸化物及び/又は前記リチウムチタン酸化物は、M3と複合化された金属酸化物であってもよい。
【0089】
前記金属酸化物は、前記一次粒子と物理的及び/又は化学的に結合した状態であってもよい。また、前記金属酸化物は、前記一次粒子と固溶体を形成した状態で存在してもよい。
【0090】
二次粒子を基準として見ると、前記金属酸化物は、前記二次粒子内に位置する前記一次粒子の間の界面及び/又は前記二次粒子の表面に部分的または全体的に存在してもよい。前記金属酸化物が一次粒子及び/又は二次粒子の表面に部分的に存在する場合、前記シェルは、アイランド(island)形態として存在してもよい。
【0091】
リチウム二次電池
本発明のさらに他の態様によれば、正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活物質層は、本発明の様々な実施例による正極活物質を含んでもよい。したがって、正極活物質は、前述のとおりであるので、便宜上具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述されない構成についてのみ説明する。
【0092】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素又はアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられてもよい。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で使用されてもよい。
【0093】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0094】
このとき、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれてもよい。前記含量範囲に含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0095】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0096】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0097】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法によって製造されてもよい。具体的には、前記正極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより製造してもよい。
【0098】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に使用される溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して、前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解又は分散させ、その後、正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を持たせる程度であれば十分である。
【0099】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別途の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されてもよい。
【0100】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前述の正極を含む電気化学素子が提供されてもよい。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0101】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と前記負極との間に介在するセパレータ及び電解質を含んでもよい。ここで、前記正極は、前述の通りであるので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0102】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極及び前記セパレータの電極組立体を収納する電池容器及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含んでもよい。
【0103】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含んでもよい。
【0104】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有してもよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で使用されてもよい。
【0105】
前記負極活物質層は、前記負極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーとを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0106】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使用されてもよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物、SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物、またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が使用されてもよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料としては、低結晶炭素及び高結晶性炭素などがすべて用いられてもよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては無定形、板状、鱗片状、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0107】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80~99wt%で含まれてもよい。
【0108】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分として、通常、負極活物質層の全重量を基準に0.1~10wt%で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0109】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分として、負極活物質層の全重量を基準に10重量%以下、好ましくは、5重量%以下で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料などが用いられてもよい。
【0110】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥することにより製造されるか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0111】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0112】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するもので、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに電解液含湿能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するため、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に単層または多層構造として使用されてもよい。
【0113】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0114】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでもよい。
【0115】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒、ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒、シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒、ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい。)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてもよい。これらの中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用すると電解液の性能が優秀になりうる。
【0116】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO)、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動しうる。
【0117】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他に、電池の寿命特性向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤がさらに1種以上含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれてもよい。
【0118】
前記のように本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0119】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特に制限がないが、缶を用いた円筒状、角状、ポーチ(pouch)状またはコイン(coin)状などであってもよい。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用できるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用されてもよい。
【0120】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及び/又はこれを含む電池パックを提供しうる。
【0121】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool)と、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車と、または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として利用できる。
【0122】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらの実施例によって制限されるとは解釈されない。
【0123】
製造例1.正極活物質の製造
(a)公知の共沈法(co-precipitation method)により硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを80:10:10のモル比で混合した前駆体水溶液を用いてNi0.80Co0.10Mn0.10(OH)水酸化物前駆体を製造した。
【0124】
(b)前記酸化物前駆体、LiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.03)及びTiOを混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持し、720℃まで毎分2℃ずつ昇温し、720℃で12時間第1の熱処理を行ってリチウム複合酸化物を得た。
【0125】
(c)前記リチウム複合酸化物及びTiOを混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持し、700℃まで毎分2℃ずつ昇温し、700℃で8時間第2の熱処理を行って表面にTiでコーティングされたリチウム複合酸化物を得た。
【0126】
前記段階(b)で使用したTiOの含量(前記水酸化物前駆体のうち金属元素を基準に換算したmol%)、前記段階(c)で使用したTiOの含量(前記リチウム複合酸化物のうちリチウムを除いた金属元素を基準に換算したmol%)及び前記段階(c)を通じて最終的に得られた正極活物質に対してICP分析を通じて確認した全体の組成は、下記の表1に示した。
【0127】
【表1】
【0128】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造例1により製造された正極活物質をそれぞれ92wt%、人造黒鉛4wt%、PVDFバインダー4wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmのアルミニウム薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥してリチウム二次電池用正極を製造した。
【0129】
前記正極に対してリチウムホイルを対電極(counter electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)をセパレータとし、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15M濃度で存在する電解液を用いてコイン電池を製造した。
【0130】
実験例1.正極活物質の組成分析
製造例1により製造された正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物のうちコバルトの濃度変化を確認するため、TEM/EDX分析を行った。
【0131】
まず、製造例1により製造された正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物をそれぞれ選別した後、前記リチウム複合酸化物をFIB(Ga-ion source)を用いて断面処理した後、走査型電子顕微鏡を用いて断面TEMイメージを撮影した。
【0132】
次に、前記断面TEMイメージから確認される複数の一次粒子のうち10個を選別した後、選別された一次粒子に対するEDX分析を通じてターゲット遷移金属であるチタンをmappingし、一次粒子の短軸方向に対するline scanningを通じて前記一次粒子の短軸方向に沿ってチタンの濃度変化を確認した。
【0133】
図1は、実施例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージであり、前記図1において矢印の方向は、一次粒子の短軸方向に沿ったline scanning方向を示したものであり、破線は、line sum spectrum区間を示したものである。図2は、図1に示すline scanning方向によるチタンのline sum spectrumを示したものである。図3は、図1とは異なる角度で撮影した実施例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージ及びチタンに対するEDX mapping結果を示したものである。
【0134】
図1図3を参照すると、一次粒子のコアに該当する領域内にチタンが存在することが確認でき、これは一次粒子内にチタンがドーピングされた状態であることを示すものである。また、一次粒子のシェルに該当する領域内にチタンが存在し、一次粒子のコアに該当する領域と比較すると、相対的に多い量のチタンが存在することが確認できる。前記の結果は、前記一次粒子の表面にチタンがコーティングされたことを意味する。
【0135】
図4は、比較例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージであり、前記図4において矢印の方向は、一次粒子の短軸方向に沿ったline scanning方向を示したものである。図5は、図4に示すline scanning方向によるチタンのline sum spectrumを示したものであり、破線は、line sum spectrum区間を示したものである。図6は、図4と異なる角度で撮影した比較例1による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージ及びチタンに対するEDX mapping結果を示したものである。
【0136】
図4図6を参照すると、一次粒子のコアに該当する領域内にチタンが存在するが、実施例1による正極活物質と比較すると、一次粒子内にドーピングされたチタンが極少量であることが確認できる。また、一次粒子のコアに該当する領域と比較すると、ほとんどのチタンが前記一次粒子の表面に存在することが確認できる。
【0137】
図7は、比較例4に記載の正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージであり、前記図7において矢印の方向は、一次粒子の短軸方向に沿ったline scanning方向を示したものであり、破線は、line sum spectrum区間を示したものである。図8は、図7に示すline scanning方向によるチタンのline sum spectrumを示したものである。図9は、図7と異なる角度で撮影した比較例4による正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物の断面TEMイメージ及びチタンに対するEDX mapping結果を示したものである。
【0138】
図7図9を参照すると、一次粒子のコアに該当する領域と一次粒子のシェルに該当する領域内にチタンがほぼ均一に存在することが確認できる。
【0139】
前述した方法によって製造例1により製造された正極活物質に含まれるリチウム複合酸化物(一次粒子)内にコアに該当する領域とシェルに該当する領域内のチタンの濃度の平均値を算出し、算出結果は、下記の表2に示した。
【0140】
【表2】
【0141】
ここで、前記断面TEMイメージから選ばれた一次粒子の短軸径をrとすると、
a1は、前記line sum spectrumの始点から0~0.05rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
a2は、前記line sum spectrumの始点から0.95r~rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)であり、
b1は、前記line sum spectrumの始点から0.05r~0.95rの領域内でリチウムを除いた全体の金属元素を基準に測定されたチタンの平均含量(mol%)である。
【0142】
実験例2.リチウム二次電池の電気化学的特性評価
充電容量、放電容量及び充放電効率
製造例2で製造されたリチウム二次電池(コインセル)に対して電気化学分析装置(Toyo,Toscat-3100)を用いて25℃、電圧範囲3.0V~4.25V、0.2Cの放電率を適用して充放電実験を行い、充電容量、放電容量及び充放電効率を測定した。
【0143】
高温寿命特性(サイクル容量維持率)
同じリチウム二次電池に対して25℃、電圧範囲3.0V~4.4V、0.1C/0.1Cの条件で2回充/放電を行い、45℃、電圧範囲3.0V~4.4V、0.1C/0.1Cの条件で1回充/放電を行った後、45℃、電圧範囲3.0V~4.4V、1.0C/1.0Cの条件で50回充/放電を行った後、初期容量に対して50サイクル目の放電容量の割合(サイクル容量維持率;capacity retention)を測定した。
【0144】
インピーダンス(EIS;Electrochemical Impedance Spectroscopy)特性
同じリチウム二次電池に対して1Cの条件で充電後、電気化学インピーダンス分光法を用いて周波数(10kHz~0.01Hz、10mV)の範囲内で抵抗を測定してRct(電荷移動抵抗)値を算出した。
【0145】
出力効率
同じリチウム二次電池に対して電気化学分析装置(Toyo,Toscat-3100)を用いて25℃、電圧範囲3.0V~4.3V、0.1C~5.0Cの放電率を適用した充放電実験を通じて5.0C/0.1Cの出力効率(C-rate)を測定した。
【0146】
前記測定結果は、下記表3に示した。
【表3】
【0147】
前記表3において、実施例1~実施例3及び比較例1~比較例4の結果を参照すると、{(a1+a2)/2}/b1値が3.25より大きい比較例1及び比較例2の場合、EIS及びサイクル容量維持率が実施例1~実施例3より良い指標を示すが、充電容量、放電容量及び充放電効率と出力効率(c-rate)の改善効果が微々たるものとなることが確認できる。
【0148】
また、{(a1+a2)/2}/b1値が1.4より小さい比較例3及び比較例4の場合、出力効率(c-rate)を除いたすべての指標において実施例1~実施例3より改善効果が微々たるものとなることが確認できる。
【0149】
すなわち、比較例1~比較例4に対して実施例1~実施例3による正極活物質を用いたリチウム二次電池は、電気化学的特性に関連する様々な指標において全般的な改善効果を示すことができることが確認できる。
【0150】
前記表3において、実施例4~実施例6及び比較例7~比較例10の結果を参照すると、{(a1+a2)/2}/b1値が3.25より大きい比較例7及び比較例8の場合、EIS及びサイクル容量維持率が実施例4~実施例6より良い指標を示すが、充電容量、放電容量及び充放電効率と出力効率(c-rate)の改善効果が微々たるものとなることが確認できる。
【0151】
また、{(a1+a2)/2}/b1値が1.4より小さい比較例9及び比較例10の場合、出力効率(c-rate)を除いたすべての指標において実施例1~実施例3より低下したことが確認できる。
【0152】
すなわち、比較例1~比較例4による正極活物質を用いたリチウム二次電池より実施例1~実施例3による正極活物質を用いたリチウム二次電池は、電気化学的特性に関連する様々な指標において全般的な改善効果を示すことができることが確認できる。
【0153】
一方、表2の結果を参照すると、比較例5及び比較例6による正極活物質を構成する一次粒子のコア及びシェル内にチタンの含量が過度に少ないか、または過度に多いことが確認できる。
【0154】
比較例5による正極活物質の{(a1+a2)/2}/b1値が3.25より小さいが、表3の結果を参照すると、前記一次粒子のコア及びシェル内にチタンの含量が過度に少ない比較例5による正極活物質を用いたリチウム二次電池は、電気化学的特性に関連する様々な指標において全般的に改善効果が微々たるものとなることが確認できる。
【0155】
また、比較例6による正極活物質の{(a1+a2)/2}/b1値が3.25より小さいが、表3の結果を参照すると、前記一次粒子のコア及びシェル内にチタンの含量が過度に多い比較例6による正極活物質を用いたリチウム二次電池は、充電容量、放電容量及び充放電効率の改善効果が微々たるものとなることが確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9