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特許7519423網膜疾患を予防又は治療するための、有効成分としてCCN5を含む医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】網膜疾患を予防又は治療するための、有効成分としてCCN5を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240711BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240711BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240711BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240711BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20240711BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240711BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240711BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 15/863 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 15/869 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61K48/00
A61K31/7105
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K39/395 N
A61K35/12
A61K35/30
A61K35/28
A61K35/545
A61P27/02
A61P43/00 121
C12N15/12
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/863 Z
C12N15/869 Z
C12N5/10
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022193755
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2020564208の分割
【原出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2023051914
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0056499
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520440168
【氏名又は名称】オリーブス バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OLIVES BIOTHERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】パク, ウ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, エリ
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】Bagheri, A. et al.,Simultaneous application of bevacizumab and anti-CTGF antibody effectively suppresses proangiogenic and profibrotic factors in human RPE cells,Molecular Vision,2015年,Vol.21,p.378-390
【文献】Leask, A.,Yin and Yang Part Deux: CCN5 inhibits the pro-fibrotic effects of CCN2,Journal of Cell Communication and Signaling,2010年,Vol.4, No.3,p.155-156,doi:10.1007/s12079-010-0092-0
【文献】雑賀 司珠也,眼の線維化疾患とその遺伝子治療,和歌山医学,2007年,第58巻, 第4号,p.156-165
【文献】五十嵐 勉 ほか,眼科分野における遺伝子導入法の開発,日本医科大学医学会雑誌,2017年,第13巻, 第2号,p.88-96
【文献】Li, Y. et al.,Personalized Medicine: Cell and Gene Therapy Based on Patient-Specific iPSC-Derived Retinal Pigment Epithelium Cells,Advances in Experimental Medicine and Biology,2016年,Vol.854,p.549-555
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00-45/08
A61K 48/00
A61K 35/00-35/768
A61K 39/00-39/44
PubMed
医中誌WEB
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として
CCN5
を含む、湿性黄斑変性症を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項2】
前記CCN5が、配列番号3又は配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
有効成分として、
CCN5をコードするポリヌクレオチド
を含む、湿性黄斑変性症を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが、CCN5をコードするmRNAである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
有効成分として、
CCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルス
を含む、湿性黄斑変性症を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号2又は配列番号5のヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ウイルスが、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びワクシニアウイルスからなる群より選択されるいずれか1種のウイルスである、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、鼻腔内、吸入、局所的、経直腸、経口、眼内、硝子体内、及び皮内経路からなる群より選択されるいずれか1つの経路よって投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項9】
有効成分として、
CCN5と、
抗VEGF薬と
を含み、前記抗VEGF薬が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、又はアフリベルセプトである、湿性黄斑変性症を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項10】
有効成分として、
CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスと、
抗VEGF薬と
を含み、前記抗VEGF薬が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、又はアフリベルセプトである、湿性黄斑変性症を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項11】
有効成分として、
CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスと、
抗VEGF薬と
を含み、前記抗VEGF薬が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、又はアフリベルセプトである、湿性黄斑変性症を予防又は治療するためのキット。
【請求項12】
有効成分として、
CCN5をコードするポリヌクレオチドが導入された細胞
を含む、湿性黄斑変性症を予防又は治療するための組成物。
【請求項13】
前記CCN5が、ヒト由来CCN5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記細胞が、幹細胞又は網膜色素上皮(RPE)細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記幹細胞が、間葉幹細胞又はiPSCである、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてCCN5を含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜は、眼の最も奥深くの内壁を覆う、眼の硝子体に接触している薄い透明な膜である。網膜は、対象物の光学情報を電気シグナルへと変換して視神経を通して脳の視覚野へ画像を送る、視覚情報処理のための一次器官として機能する。網膜は、1億を超える光受容細胞と、網膜のアウトプットニューロンである100万を超える神経節細胞と、これらの細胞を接続するケーブルとして機能する多数のニューロンとで構成される洗練された組織である。色及び対象物を区別し、視力をもたらす、網膜の中心部である黄斑部(macular lutea)は、錐体細胞からなる光受容細胞層と神経節細胞層とで構成される。黄斑部において、画像の電気シグナルは、化学シグナルへと変換され、それは、次に、神経節細胞の軸索突起で形成された視神経を通って脳へと送られる。網膜の黄斑部以外の部分は、周辺部の認識を担い、暗闇において主要な役割を果たす。
【0003】
老化又は外的要因により、網膜に異常が生じると、この異常は、視力及び視野に問題を生じさせ、重症の場合、失明に至る。網膜の疾患としては、神経網膜が網膜色素上皮(RPE)細胞層から剥離して、網膜が眼底から持ち上がり、それによって視力障害を引き起こす網膜剥離;網膜の周りの組織に異常を引き起こす周辺網膜変性症;及び黄斑部に異常を引き起こす黄斑変性症が挙げられる。網膜が、網膜色素上皮から剥離すると、画像に関する光学情報を受け取ることができない。さらに、脈絡膜からの栄養供給が達成されず、結果として、ニューロンは適切に機能しない。この状態が持続する場合、永久的な網膜萎縮が生じ、失明に至る(Yoo、2015)。
【0004】
網膜色素上皮は、神経網膜と脈絡膜との間に位置しており、網膜機能を維持する上で極めて重要な役割を果たす、立方体状の、極性がある単層である。正常な網膜色素上皮は、形態的及び機能的非対称構造を有する。網膜色素上皮細胞の変形は、線維性眼疾患、例えば、増殖性硝子体網膜症(PVR)、糖尿病性網膜症(DR)、及び加齢黄斑変性症(AMD)などを引き起こす場合がある。病的状態において、網膜色素上皮細胞は変形し、それにより、これらの細胞は、それらの本来の形態を有さず、並びに開口分泌機能及び食作用機能も失う。
【0005】
一方、網膜色素上皮細胞の線維性変形によって視力障害が始まった場合、以前の視力への回復を達成することはできない。したがって、初期段階においてそのような変形を検出し治療することが重要である。網膜色素上皮細胞の線維性変形に関して、早期検出及びその治療は、視力喪失を最小限に抑えることができるが;しかしながら、現在、信頼性の高い治療は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
網膜色素上皮細胞の線維性変形によって引き起こされる疾患の治療薬を研究する一方、本発明者らは、CCN5が、形質転換成長因子-β(TGF-β)によって引き起こされた網膜色素上皮細胞の形態的又は機能的損傷を、正常な細胞のレベルへと回復させ、結果として、網膜疾患の予防又は治療に対して素晴らしい効果を有することを見出した。この発見に基づいて、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の目的は、有効成分としてCCN5を含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、有効成分として、CCN5又はその断片を含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチドを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、当該医薬組成物を個体に投与するステップを含む、網膜疾患を予防又は治療するための方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、有効成分として、CCN5又はその断片と;抗VEGF薬とを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスと;抗VEGF薬とを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスと;抗VEGF薬とを含む、網膜疾患を予防又は治療するためのキットを提供する。
【0015】
さらに、本発明は、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチドが導入された細胞を含む、網膜疾患を予防又は治療するための組成物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるCCN5、それをコードするポリヌクレオチド、又は当該ポリヌクレオチドを含有するウイルスは、TGF-β、EEF(EGTA、EGF、及びFGF2)、又は抗VEGF薬によって誘発される網膜色素上皮細胞の線維性変形を予防する。さらに、当該CCN5、それをコードするポリヌクレオチド、又は当該ポリヌクレオチドを含有するウイルスは、線維性変形によって引き起こされた網膜色素上皮細胞の形態的又は機能的損傷を、正常な細胞のレベルへと回復させることができる。したがって、有効成分として、当該CCN5、それをコードする当該ポリヌクレオチド、又は当該ポリヌクレオチドを含有するウイルスは、網膜疾患を予防又は治療するために効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】TGF-βによって誘発されるARPE-19細胞の線維性変形を研究するための実験プロセスを図式的に示す。
図1b】ARPE-19細胞が、示された濃度においてTGF-βで処理される場合のARPE-19細胞の線維性変形を顕微鏡下において観察することによって得られた結果を示す。
図1c】ARPE-19細胞が、示された濃度においてTGF-βで処理される場合に生じるタンパク質発現パターンにおける変化を特定することによって得られた結果を示す。
図1d】ARPE-19細胞にTGF-βによる処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して細胞の密着結合を観察することによって得られた結果を示す。
図2a】TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の線維性変形に対するAdCCN5の阻害効果を特定するための実験プロセスを図式的に示す。
図2b】ARPE-19細胞にAdLacZ又はAdCCN5による処理を施し、次いで、TGF-βで処理した場合に生じるARPE-19細胞の形態変化を顕微鏡下において観察することによって得られた結果を示す。
図2c】ARPE-19細胞にAdLacZ又はAdCCN5による処理を施し、次いで、TGF-βで処理した場合に生じる、ARPE-19細胞におけるCCN5、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現における変化を観察することによって得られた結果を示す。
図2d】ARPE-19細胞にAdLacZ又はAdCCN5による処理を施し、次いで、TGF-βで処理した場合に生じるARPE-19細胞における間葉マーカータンパク質及び上皮マーカータンパク質の転写の発現における変化を、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応実験により特定することによって得られた結果を示す。
図2e】ARPE-19細胞にAdLacZ又はAdCCN5による処理を施し、次いで、TGF-βを用いて処理した場合に生じるARPE-19細胞の免疫蛍光分析の画像を、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して観察することによって得られた結果を示す。
図2f】ARPE-19細胞にAdLacZ又はAdCCN5による処理を施し、次いで、TGF-βを用いて処理した場合に生じるARPE-19細胞の収縮性における変化を、コラーゲンゲル収縮アッセイにより観察することによって得られた結果を示す。
図3】ARPE-19細胞の線維性変形に対するCCN5の阻害効果を、TGF-β受容体阻害剤であるA83-01の阻害効果と比較することによって得られた結果を示す。
図4a】TGF-βで処理したARPE-19細胞の移動能力に対するAdCCN5の効果を特定することによって得られた結果を示す。
図4b】TGF-βで処理したARPE-19細胞におけるRPE65及びMerTKの発現に対するAdCCN5の効果を特定することによって得られた結果を示す。
図4c】TGF-βで処理したARPE-19細胞の食作用に対するAdCCN5の効果を、pHrodo Red BioParticlesを使用して特定することによって得られた結果を示す。
図4d】TGF-βで処理したARPE-19細胞の食作用に対するAdCCN5の効果を、TAMRA標識アポトーシス性胸腺細胞を使用して測定することによって得られた結果を示す。
図5】TGF-β-SMADシグナル伝達経路に対するAdCCN5の効果を特定することによって得られた結果を示す。
図6a】CCN5が、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の線維性変形を回復させることができるか否かを特定するための実験プロセスを図式的に示す。
図6b】ARPE-19細胞の変形がAdCCN5によって回復することを顕微鏡下において観察することによって得られた結果を示す。
図6c】ARPE-19細胞にTGF-βによる処理を施し、続いて、AdCCN5による処理を施し、次いで、当該ARPE-19細胞におけるCCN5、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現における変化を観察することによって得られた結果を示す。
図6d】ARPE-19細胞にTGF-βによる処理を施し、続いて、AdCCN5による処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して当該ARPE-19細胞を観察することによって得られた結果を示す。
図6e】ARPE-19細胞の収縮の正常化に対するAdCCN5の効果を、コラーゲンゲル収縮アッセイによって特定することによって得られた結果を示す。
図7a】ARPE-19細胞にTGF-βによる処理を施し、続いてAdCCN5による処理を施し、次いで、それらの移動能力が正常化されることを観察することによって得られた結果を示す。
図7b】ARPE-19細胞にTGF-βによる処理を施し、続いてAdCCN5による処理を施し、次いで、当該ARPE-19細胞におけるRPE65及びMerTKの発現が回復されることを観察することによって得られた結果を示す。
図7c】ARPE-19細胞にTGF-βによる処理を施し、次いで、pHrodo Red BioParticlesを使用して当該ARPE-19細胞の食作用に対するAdCCN5の効果を特定することによって得られた結果を示す。
図7d】ARPE-19細胞にTGF-βによる処理を施し、次いで、TAMRA標識アポトーシス性胸腺細胞を使用して、当該ARPE-19細胞の食作用に対するAdCCN5の効果を測定することによって得られた結果を示す。
図8a】TGF-βで処理したARPE-19細胞におけるA83-01の効果を特定するための実験プロセスを図式的に示す。
図8b】ARPE-19細胞において、TGF-βによって引き起こされたCCN5、CCN2、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現における変化をA83-01が正常化しないことを観察することによって得られた結果を示す。
図9a】Ccl2-/-マウスにおけるRPE変形に対するCCN5の回復効果を測定するためのプロセスを図式的に示す。
図9b】CCN5、RPE65、MerTK、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現における変化によって、Ccl2-/-マウスのRPE細胞に対するAAV9-CCN5の効果を特定することによって得られた結果を示す。
図9c】抗ZO-1抗体、抗CCN5抗体、抗RPE65抗体、又は抗α-SMA抗体で染色することにより、Ccl2-/-マウスのRPE細胞における密着結合の形成に対するAAV9-CCN5の効果を特定することによって得られた結果を示す。
図10a】ARPE-19細胞のEEF誘発線維性変形がAdCCN5によって予防することができるか否かを特定するためのプロセスを図式的に示す。
図10b】EEFで処理したARPE-19細胞における形態変化を、顕微鏡下において観察することによって得られた結果を示す。
図10c】AdCCN5処理したARPE-19細胞にEEFによる処理を施し、次いで、当該ARPE-19細胞におけるCCN5、CCN2、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現における変化を観察することによって得られた結果を示す。
図10d】AdCCN5で処理したARPE-19細胞にEEFによる処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して当該ARPE-19細胞を観察することによって得られた結果を示す。
図11a】ARPE-19細胞のベバシズマブ誘発線維性変形がAdCCN5によって予防されるか否かを特定するためのプロセスを図式的に示す。
図11b】ベバシズマブで処理したARPE-19細胞における形態変化を、顕微鏡下において観察することによって得られた結果を示す。
図11c】AdCCN5で処理したARPE-19細胞にベバシズマブによる処理を施し、次いで、当該ARPE-19細胞におけるCCN5、CCN2、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現における変化を観察することによって得られた結果を示す。
図11d】AdCCN5で処理したARPE-19細胞にベバシズマブによる処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して当該ARPE-19細胞を観察することによって得られた結果を示す。
図12a】ARPE-19細胞がTGF-βで処理され、次いでCCN5をコードする修飾されたmRNAで処理される場合に、ARPE-19細胞のTGF-β誘発線維性変形がCCN5によって回復されるか否かを特定するためのプロセスを図式的に示す。
図12b】TGF-βで処理したARPE-19細胞に、CCN5をコードする修飾されたmRNAによる処理を施し、次いで、当該ARPE-19細胞におけるCCN5、CCN2、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現における変化を観察することによって得られた結果を示す。
図12c】TGF-βで処理したARPE-19細胞に、CCN5をコードする修飾されたmRNAによる処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して当該ARPE-19細胞を観察することによって得られた結果を示す。
図13a】ARPE-19細胞のTGF-β誘発線維性変形がCCN5タンパク質によって回復されるか否かを特定するためのプロセスを図式的に示す。
図13b】TGF-βで処理したARPE-19細胞にCCN5タンパク質による処理を施し、次いで、当該ARPE-19細胞におけるCCN5、CCN2、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現を観察することによって得られた結果を示す。
図13c】TGF-βで処理したARPE-19細胞にCCN5タンパク質による処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して当該ARPE-19細胞を観察することによって得られた結果を示す。
図14a】ARPE-19細胞が、抗VEGF薬(ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプト)とCCN5タンパク質とによる同時処理を施される場合に、当該ARPE-19細胞の抗VEGF薬誘発線維性変形が当該CCN5タンパク質によって阻害されるか否かを測定するためのプロセスを図式的に示す。
図14b】ARPE-19細胞に、抗VEGF薬(ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプト)とCCN5タンパク質とによる同時処理を施し、次いで、当該ARPE-19細胞におけるCCN5、CCN2、間葉マーカータンパク質、及び上皮マーカータンパク質の発現を観察することによって得られた結果を示す。
図14c】ARPE-19細胞に、抗VEGF薬(ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプト)とCCN5タンパク質とによる同時処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して当該ARPE-19細胞を観察することによって得られた結果を示す。
図15a】iPSC由来RPE細胞がAAV2-CCN5で処理され、次いでTGF-βで処理される場合に、当該RPE細胞のTGF-β誘発線維性変形がCCN5によって阻害されるか否かを特定するための実験プロセスを図式的に示す。
図15b】iPSC由来RPE細胞にAAV2-CCN5による処理を施し、続いて、TGF-βによる処理を施し、次いで、抗ZO-1抗体、抗α-SMA抗体、及びファロイジンを使用して当該RPE細胞の画像を観察することによって得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の態様において、有効成分としてCCN5又はその断片を含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物が提供される。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「CCN5」は、血管病、血管新生、腫瘍形成、線維性疾患の誘発、及び細胞機能、例えば、細胞分化及び生存など、の調整において様々な役割を果たすCCNファミリー(CCN1~6)に属する細胞外マトリックス(ECM)関連タンパク質を意味する。CCN5タンパク質は、他のCCNファミリーのタンパク質とは異なり、C末端ドメインを有さず、WISP-2、HICP、Cop1、CTGF-Lなどと呼ばれる。さらに、当該CCN5タンパク質は、250のアミノ酸残基の単一のポリペプチド鎖からなる。
【0020】
本発明の網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物は、網膜色素上皮細胞の線維性変形を予防又は治療することができる。当該線維性変形は、TGF-β、EGTA、EGF、FGF-2、及び抗VEGF薬からなる群より選択されるいずれか1種によって誘発され得る。本発明の実施形態において、CCN5が、網膜色素上皮(RPE)細胞の変形のトリガーとして知られているTGF-βによって誘発されたRPE細胞の線維性変形を予防することが確認された。さらに、別の実施形態において、線維性変形を既に生じているRPE細胞を、CCN5が正常な細胞へと回復させることが確認された。
【0021】
本明細書において使用されるCCN5は、ヒト又は動物由来のCCN5であり得る。本発明の実施形態において、マウス又はヒト由来CCN5が、RPE細胞の線維性変形に対する阻害効果を有することが確認された。
【0022】
当該マウス由来CCN5は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり得る。さらに、当該マウス由来CCN5をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2のヌクレオチド配列を含み得る。さらに、本発明において、当該マウス由来CCN5は、成熟型であり得る。詳細には、当該マウス由来CCN5は、配列番号1のアミノ酸配列からシグナルペプチドに対応する位置1~23のアミノ酸を除外することによって得られる、位置24~251のアミノ酸配列(配列番号3)であり得る。
【0023】
当該ヒト由来CCN5は、配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり得る。さらに、当該ヒト由来CCN5をコードするポリヌクレオチドは、配列番号5のヌクレオチド配列を含み得る。さらに、本発明において、当該ヒト由来CCN5は、成熟型であり得る。詳細には、当該ヒト由来CCN5は、配列番号4のアミノ酸配列から、シグナルペプチドに対応する位置1~23のアミノ酸を除外することによって得られる、位置24~250のアミノ酸配列(配列番号6)であり得る。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「網膜疾患」は、網膜色素上皮細胞の変形又はその機能を失うことによって引き起こされた疾患を意味する。詳細には、当該網膜疾患は、増殖性硝子体網膜症、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、及び網膜浮腫からなる群より選択されるいずれか1つの疾患であり得る。ここで、当該網膜色素上皮(RPE)は、神経網膜と脈絡膜との間に位置され、並びに網膜機能を維持する上で重要な役割を果たす、立方体状の、極性がある単層である。
【0025】
増殖性硝子体網膜症は、糖尿病性網膜症の増悪の場合、又は網膜剥離手術において裂け目が完全に閉じられていない場合に、線維性細胞が、網膜表面上又は硝子体において増殖して、膜及び膜収縮を形成し、それにより網膜剥離が引き起こされる、疾患である。網膜剥離が生じると、網膜色素上皮細胞が放出され、線維性細胞へと形質転換され;当該線維性細胞が、膠細胞と組み合わされ、それが、網膜表面において増殖して、薄膜又は牽引帯(traction band)を形成する。この膜又は牽引帯が収縮すると、網膜全体が縮まるので、固定された皺が形成される。ここで、重症の場合、視神経乳頭を除いて網膜全体がファンネル形状になって剥離し得る。
【0026】
糖尿病性網膜症は、糖尿病によって引き起こされた末梢循環障害により、眼の網膜に生じる併発症である。当該疾患は、最初は症状がなく、黄斑部へのその浸潤が生じるに従って視力低下の症状を示し得る。糖尿病性網膜症は、進行期に応じて、単純網膜症、増殖前網膜症(pre-proliferative retinopathy)、及び増殖網膜症に分けられ得る。
【0027】
黄斑変性症は、年を取るに従って黄斑機能が低下し、そのため、視力が低下するか又は失われる疾患である。この疾患により、視力が低下し始めた場合、以前の視力への回復を達成することはできない。当該疾患は、加齢黄斑変性症と呼ばれ、高齢における視力喪失の主な原因である。黄斑変性症は、2つのタイプ:乾性黄斑変性症及び湿性黄斑変性症、に分けられる。黄斑変性症を患う患者の約90%は、乾性黄斑変性症を有し、この乾性黄斑変性症は、加齢による沈着物が網膜の下に蓄積するか、又は病斑、例えば、網膜色素上皮萎縮などを発症した場合に生じる。黄斑における視細胞が、ゆっくりと破壊されるため、黄斑機能は低下し、中心視覚は時間が経つにつれて低下する。湿性黄斑変性症の場合、症状は、黄斑部のより下の層を構築する脈絡膜における多くの新生血管の異常形成により生じる。湿性黄斑変性症は、乾性黄斑変性症より速く進行し、急激な視力低下につながり得、2か月から3年以内に失明に至り得る。
【0028】
脈絡膜血管新生は、異常な血管の形成によって脈絡膜が損傷し、それにより、視力障害が生じる疾患である。脈絡膜血管新生は、世界的な不可逆の視力喪失の主な原因の1つである。脈絡膜血管新生の場合、様々な治療の試みにもかかわらず、ほとんどの患者において視力の予後は好ましくない。
【0029】
網膜浮腫は、網膜が膨潤することを意味する。様々な理由から、網膜又は黄斑における毛細血管などの細い血管において、変性又は異常が生じたとき、出血が生じ得、結果として、網膜浮腫を生じ得る。浮腫が網膜に生じた場合、視力低下などの様々な症状が生じ得る。
【0030】
有効成分としてCCN5を含む、網膜疾患を予防又は治療するための当該医薬組成物において、有効成分としてのCCN5タンパク質は、当該医薬組成物の総重量に対して10~95重量%において含有され得る。本発明の医薬組成物は、有効成分に加えて、さらに、同じ又は同様の機能を示す1種又は複数種の有効成分も含んでもよい。本発明による医薬組成物は、上記において説明した有効成分に加えて、さらに、投与のために、1種又は複数種の薬学的に許容できる担体も含んでもよい。
【0031】
本発明の別の態様において、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチドを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物が提供される。
【0032】
当該ポリヌクレオチドは、CCN5をコードするmRNAであり得る。CCN5をコードする当該mRNAは、CCN5をコードするポリヌクレオチドである配列番号2又は配列番号5に対して相補的な配列であり得る。本発明の実施形態において、CCN5をコードする修飾されたmRNAは、RPE細胞を変形させるトリガーとして知られるTGF-β又はEEF(EGTA、EGF、及びFGF-2)によって誘発されたRPE細胞の線維性変形を、正常な細胞のレベルへと回復させることが確認された。修飾されたmRNAは、様々な形態において修飾されたmRNAを意味する。そのような修飾としては、mRNAの5’末端のキャッピング、mRNAの3’末端へのポリAテールの結合(ポリアデニル化)、並びに修飾されたヌクレオチド、例えば、5-メチルシチジン及び2-チオウリジンなど、の追加が挙げられる。
【0033】
本発明のさらなる別の態様において、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物が提供される。
【0034】
当該ポリヌクレオチドは、CCN5を表す配列番号1又は配列番号4のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であり得、及び当該ヌクレオチド配列は、配列番号2又は配列番号5であり得る。さらに、当該ポリヌクレオチドは、CCN5が発現されるように当該ポリヌクレオチドに作動的に連結されたプロモータを含み得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、用語「作動的に連結される」は、ヌクレオチド発現調節配列(例えば、プロモータ、シグナル配列、又は多くの転写因子結合部位)と、別のヌクレオチド配列との間の機能的結合を意味する。当該調節配列は、他の核酸配列の転写及び/又は翻訳を調整し得る。
【0036】
詳細には、CCN5をコードするポリヌクレオチドに結合したプロモータは、CCN5タンパク質遺伝子の転写を調整するように、好ましくは動物細胞において、より好ましくは哺乳動物細胞において、機能し得る。当該プロモータは、哺乳動物ウイルス由来のプロモータ及び哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモータを含む。
【0037】
当該プロモータは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、アデノウイルス後期プロモータ、ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ、SV40プロモータ、HSV tkプロモータ、RSVプロモータ、EF1αプロモータ、メタロチオネインプロモータ、β-アクチンプロモータ、ヒトIL-2遺伝子プロモータ、ヒトIFN遺伝子プロモータ、ヒトIL-4遺伝子プロモータ、ヒトリンホトキシン遺伝子プロモータ、及びヒトGM-CSF遺伝子プロモータからなる群より選択されるいずれか1種のプロモータであり得る。しかしながら、当該プロモータは、それらに限定されるわけではない。詳細には、当該プロモータは、CMVプロモータであり得る。
【0038】
当該ウイルスは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスシンプレックスウイルス、及びワクシニアウイルスからなる群より選択されるいずれか1種のウイルスであり得る。当該アデノ関連ウイルスは、特定のセロタイプに限定されるわけではなく、好ましくは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9のうちのいずれか1種であり得る。
【0039】
アデノ関連ウイルス(AAV)は、非分裂細胞に感染することができるため、及び様々なタイプの細胞に感染する能力を有するために、本発明の遺伝子デリバリーシステムとして好適である。AAVベクターの構築及び使用についての詳細は、米国特許第5,139,941号及び同第4,797,368号において詳細に開示されている。
【0040】
典型的には、AAVウイルスは、2つのAAV末端反復が両側に位置された関心対象の遺伝子配列を含むプラスミドと、末端反復を持たない野生型AAVコード配列を含む発現プラスミドとの同時形質移入によって作製され得る。
【0041】
当該網膜疾患は、上記において説明される通りであり、並びに、増殖性硝子体網膜症、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、及び網膜浮腫からなる群より選択されるいずれか1つの疾患であり得る。
【0042】
さらに、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスを含む、網膜疾患を予防又は治療するための当該医薬組成物の用量は、疾患のタイプ、疾患の重篤度、当該医薬組成物中に含有される有効成分及び他の成分のタイプ及び量、製剤のタイプ、並びに患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食事、投与の時間、投与経路、治療の継続期間、並びに同時に使用される薬を含む、様々な要因に応じて変わり得る。
【0043】
本発明のさらなる別の態様において、本発明による、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物を個体に投与するステップを含む、網膜疾患を予防又は治療する方法であって、当該医薬組成物が、有効成分として、CCN5又はその断片、CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスを含む、方法が提供される。
【0044】
有効成分として、CCN5又はその断片、CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスを含む、本発明による医薬組成物の用量は、疾患のタイプ、疾患の重篤度、当該医薬組成物中に含有される有効成分及び他の成分のタイプ及び量、製剤のタイプ、並びに患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、投与の時間、投与経路、治療の継続期間、並びに同時に使用される薬を含む、様々な要因に応じて変わり得る。
【0045】
しかしながら、有効成分としてCCN5を含む、網膜疾患を予防又は治療するための、本発明による医薬組成物において、CCN5タンパク質は、当該医薬組成物が所望の効果を示すように、0.0001~100mg/kgの有効量において含有され得る。ここで、当該投与は、1日に1回又は複数回実施され得る。
【0046】
さらに、本発明による医薬組成物中に含まれる組換えウイルスは、成人ベースにおいて1日あたり1.0×10~1.0×1015ウイルスゲノムの量において投与され得る。詳細には、本発明の医薬組成物の用量において、当該ウイルスは、成人ベースにおいて1日あたり1.0×10~1.0×1015、1.0×10~1.0×1013、1.0×10~1.0×1012、又は1.0×10~1.0×1010の量において投与され得る。
【0047】
さらに、本発明の医薬組成物は、それを必要とする個体に対して、当技術分野において既知の様々な方法によって投与され得る。当該個体は、哺乳動物、詳細にはヒトであり得る。投与経路は、投与方法、体液量、粘度などを考慮して、当業者によって適切に選択され得る。詳細には、当該投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、鼻腔内、吸入、局所的、経直腸、経口、眼内、硝子体内、及び皮内経路からなる群より選択されるいずれか1つの経路によって実施され得る。本発明の実施形態において、CCN5をコードするウイルスを、硝子体内において投与した。
【0048】
本発明のさらなる別の態様において、有効成分としてCCN5又はその断片と;抗VEGF薬とを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物が提供される。
【0049】
本明細書において使用される場合、用語「抗VEGF薬」は、血管内皮成長因子(VEGF)を阻害するために使用される薬を意味し、並びに、特定の癌又は加齢黄斑変性症を治療するために使用され得る。詳細には、当該抗VEFG薬は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、又はアフリベルセプトであり得る。
【0050】
アバスチンのブランド名において販売されているベバシズマブは、いくつかのタイプの癌及び特定の眼疾患を治療するために使用される薬である。癌に対しては、ベバシズマブは、静脈内へのゆっくりとした注入によって投与され、結直腸癌、肺癌、膠芽腫、腎細胞癌などに対して使用される。さらに、黄斑変性症に対しては、ベバシズマブは、眼への直接注射によって投与される。ベバシズマブが癌に対して使用される場合、一般的なその副作用としては、鼻出血、頭痛、高血圧、皮疹などが挙げられる。他のその重症副作用としては、消化管穿孔、出血、アレルギー反応、血餅、及び伝染病の増加したリスクが挙げられる。ベバシズマブが眼疾患に対して使用される場合、その副作用としては、視力喪失及び網膜剥離が挙げられる。ベバシズマブは、血管形成阻害因子であり、モノクローナル抗体系薬物に属する。ベバシズマブは、新生血管の成長を遅くすることによって機能する。
【0051】
ルセンティスのブランド名において販売されているラニビズマブは、ベバシズマブと同じ親マウス抗体から作製されたモノクローナル抗体断片(Fab)である。湿性加齢黄斑変性症を治療するために承認されている抗血管形成薬であるラニビズマブは、有効性、及び副作用の比率においてベバシズマブと同様である。
【0052】
アイリーアのブランド名において販売されているアフリベルセプトは、湿性黄斑変性症を治療するために米国及びヨーロッパにおいて承認された薬である。
【0053】
本発明のさらなる別の態様において、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスと;抗VEGF薬とを含む、網膜疾患を予防又は治療するための医薬組成物が提供される。
【0054】
さらに、本発明により、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチド、又はCCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルスと;抗VEGF薬とを含む、網膜疾患を予防又は治療するためのキットが提供される。
【0055】
ここで、CCN5をコードするポリヌクレオチド、CCN5をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えウイルス、及び抗VEGF薬は、上記において説明される通りである。
【0056】
本発明のさらなる別の態様において、有効成分として、CCN5をコードするポリヌクレオチドを導入された細胞を含む、網膜疾患を予防又は治療するための組成物が提供される。
【0057】
当該細胞は、CCN5をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入された細胞であり得る。詳細には、当該CCN5は、ヒト由来CCN5であり得る。
【0058】
さらに、当該細胞は、幹細胞又は網膜色素上皮細胞であり得る。当該幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)又は成体幹細胞であり得る。詳細には、当該成体幹細胞は、間葉幹細胞(MSC)、多能性幹細胞、又は羊膜上皮細胞であり得る。さらに、当該間葉幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、及び胎盤からなる群より選択されるいずれか1つに由来し得る。
【0059】
本発明の実施形態において、TGF-βによって誘発された線維性変形を有する、ヒト人工多能性幹細胞由来RPE細胞におけるCCN5の効果を確認する実験を実施した。上記の実験の結果、TGF-βによって誘発されたiPSC由来RPE細胞の線維性変形がCCN5によって予防されたことが確認された。
【0060】
したがって、本発明により、有効成分として、RPE細胞の線維性変形を予防又は治療するために、CCN5をコードするポリヌクレオチドを導入された細胞を含む、網膜疾患を予防又は治療するための組成物が提供され得る。さらに、本発明により、CCN5をコードするポリヌクレオチドが導入された細胞を含有する細胞治療薬が提供され得る。
【0061】
本発明において、「細胞治療薬」は、細胞及び組織の機能を回復させるために、一連の作用、例えば、エキソビボ増殖の実施並びに自家性、同種、又は異種の生細胞のスクリーニング、若しくはその他として細胞の生物学的特性の変更などを通じて得られる、治療、診断、及び予防の目的で使用される医薬製品を意味する。
【0062】
当該細胞治療薬は、使用された細胞の分化のタイプ及び程度に応じて、体細胞治療薬及び幹細胞治療薬に分類され得る。幹細胞治療薬は、胚性幹細胞治療薬及び成体幹細胞治療薬に分類され得る。
【実施例
【0063】
本発明は、以下において、実施例により詳細に説明される。しかしながら、以下の実施例は、本発明を単に説明するものであり、本発明は、それらに限定されない。
【0064】
I.実験用調製物及び実験方法
実施例1.動物モデル
C57BL/6野生型(WT)マウス(Damul Science、韓国)を用いてCcl2-/-マウス(Jackson Laboratories、米国)を10回戻し交配することによって、モデルマウスを作製した。18月齢のCcl2-/-マウスにAAV9-VLP又はAAV9-CCN5を注射した。全ての動物実験の方法及びプロトコルは、光州科学技術院(Gwangju Institute of Science and Technology)、生命科学研究科の動物実験委員会(the Institutional Animal Care and Use Committee of the School of Life Science)によって承認され、承認されたガイドライン(IACUC GIST-2015-24)に従って、そこの施設において実施した。ここで、VLPは、ウイルス様粒子を意味する。
【0065】
受け入れたAAV9-VLPを有する月齢が一致するWTマウスをコントロールとして使用した。当該マウスを、3:1の比のZoletil 50(Virbac、フランス)及びRompun(Bayer Korea、韓国)の腹腔内注射によって麻酔した。外科処置後、有害事象が生じないか確認するために、当該マウスを1日おきにモニタリングした。モニタリングの結果、有害な臨床症状は、他の器官において認められなかった。12週間後、当該マウスをCOで安楽死させ、眼を摘出した。
【0066】
実施例2.試薬
組換えTGF-β2をPeproTech Korea(韓国)から購入した。ARPE-19細胞を10ng/mlの当該組換えTGF-β2で処理した。Invitrogen(米国)から組換えEGF及びFGF-2を購入した。ARPE-19細胞を1mMのEGTA、10ng/mlのEGF、及び20ng/mlのFGF-2で処理した。さらに、ARPE-19細胞を、3種の抗VEGF薬であるベバシズマブ(0.25mg/ml、Genetech/Roche、米国)、ラニビズマブ(0.125mg/ml、Novartis Pharma Stein AG、スイス)、及びアフリベルセプト(0.5mg/ml、Bayer Pharma AG、ドイツ)で処理した。
【0067】
実施例3.アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター及びアデノウイルスの作製
作製及び精製のために、CMVプロモータを使用してヒトCCN5遺伝子を発現するAAV(セロタイプ2及び9)を、米国企業Virovek Inc.に要求することによって獲得した。そのようにして、AAV2-CCN5及びAAV9-CCN5を得た。さらに、アミノ末端ヘマグルチニン(HA)をタグ付けしたマウスCCN5を発現する組換アデノウイルスを作製及び精製する方法は、以前の研究(Yoon POら 「The opposing effects of CCN2 and CCN5 on the development of cardiac hypertrophy and fibrosis」, J Mol Cell Cardiol. 2010; 49(2): 294~303)に記載されている。この方法において、それぞれLacZ及びCCN5をコードする遺伝子を含有するアデノウイルスであるAdLacZ及びAdCCN5を作製した。
【0068】
実施例4.CCN5をコードする修飾されたmRNAの作製
作製及び精製のために、米国企業TriLink BioTechnologiesに要求することによって、CCN5をコードする修飾されたmRNAを獲得した。この修飾されたmRNAを5’末端においてCleanCapでキャッピングし、ポリAテールを3’末端に結合させた。さらに、この修飾されたmRNAは、5-メチルシチジン及び2-チオウリジンを含有する。
【0069】
実施例5.細胞培養
網膜色素上皮細胞株(ARPE-19; ATCC、米国)を、1%の抗生物質(Gibco、米国)と10%のウシ胎仔血清(FBS; HyClone、米国)とを含有した、ダルベッコ改変イーグル培地及びハムF12 栄養混合物培地(Ham’s F12 Nutrient Mixture medium)(DMEM/F12; Welgene、韓国)を使用して、5%のCOインキュベータにおいて37℃で培養した。当該培地を、1日おきに新鮮な培地と交換した。当該細胞が、培養プレートにおいてある程度まで培養されたとき、これらの細胞を、0.25%のトリプシン/0.02%のEDTA(Gibco、米国)を使用して、継代培養した。
【0070】
ヒトiPSC由来網膜色素上皮(RPE)細胞を、Axol Bioscience(米国)から入手した。当該細胞を、7:3の比で2%のB-27補足物質(Gibco,米国)と1%の抗生物質の抗かび薬(Gibco、米国)とを含有した、ダルベッコ改変イーグル培地及びハムF12栄養混合物培地(DMEM/F12;Gibco、米国)を使用して、5%のCOインキュベータにおいて37℃で培養した。当該細胞を、マトリゲル(Corning Life Science、米国)で予めコーティングした8ウェルチャンバースライド(Corning Life Science、米国)に、1ウェルあたり100,000細胞において播種し、当該培地を毎日新鮮な培地と交換した。
【0071】
培養した細胞を、以下の2つのグループに分け、薬物処理を施した:一方は、間葉細胞への網膜色素上皮細胞の分化誘導が抑圧されたグループ;及び、もう一方は、間葉細胞への分化を誘導された網膜色素上皮細胞を、正常な網膜色素上皮細胞へと戻したグループ。当該ARPE-19細胞を無血清培地において24時間増殖させた。次いで、当該細胞を、50感染多重度(MOI)においてAdCCN5で処理し、続いて、10ng/mlのTGF-β2(PeproTech Korea、韓国)によって処理するか、又はTGF-β2で処理し、その後にAdCCN5で処理した。
【0072】
実施例6.ウェスタンブロット法
インビトロ実験のために、当該培養したARPE-19細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、冷RIPA緩衝液(1%のNP-40、50mMのトリス-HCl[pH7.4]、150mMのNaCl、及び10mMのNaF)とプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、ドイツ)とによる混合溶液に懸濁させた。当該細胞懸濁液に、超音波発生器による処理を、2秒オン/1秒オフのサイクルで5%の振幅において5分間施した。
【0073】
インビボ実験のために、眼をCcl2-/-マウスから摘出した。網膜/脈絡膜/強膜複合体のみを各眼から取り出し、冷RIPA緩衝液に入れた。当該複合体に、超音波発生器による処理を、1/8インチマイクロチップを使用して、2秒オン/2秒オフのオン-オフサイクルで、5%の振幅で10秒間施した。当該細胞溶解物を、13,000rpmで20分間、遠心分離処理した。タンパク質が溶解している上澄みを採取し、その中のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸タンパク質アッセイキット(BCA、Thermo Fisher Scientific、米国)を使用して測定した。同量のタンパク質試料を、5×SDS緩衝液と混合し、SDS-PAGE電気泳動にかけた。次いで、当該タンパク質を、二フッ化ポリビニリデン膜(Millipore、米国)に移した。当該膜を、5%のスキムミルクを含有するトリス緩衝液において1時間ブロックし、次いで、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。次いで、当該膜を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP、Jackson ImmunoResearch)でコンジュゲートした二次抗体と共にインキュベートし、化学ルミネセンス基質(Amersham)で処理し、ImageQuant LAS 4,000Mini画像表示装置(GE Healthcare)によって現像した。ImageJソフトウェア(NIH)を使用して、タンパク質定量分析を実施した。
【0074】
実施例7.免疫蛍光染色
各ウェルがカバーガラスを備える12ウェル培養プレートに播種して増殖させた細胞を、4%のホルムアルデヒドで固定し、0.2%のTriton X-100で10分間処理した。当該細胞を、PBS中における5%ウシ血清アルブミンの希釈溶液でブロックし、抗ZO-1及び抗α-SMA抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。二次抗体に対して、当該細胞を、FITCコンジュゲート二次抗体又はAlexa Fluor 594コンジュゲート二次抗体を用いて、f-アクチン染色に対してはテキサスレッドコンジュゲートファロイジン(Invitrogen、米国)を用いて、及び核染色に対してはHoechst 33342(Invitrogen、米国)を用いて、室温で1時間インキュベートした。当該結果を、落射蛍光顕微鏡(Zeiss、ドイツ)を使用して観察した。網膜フラットマウント実験のために、当該眼をマウスから摘出し、各眼を4%のホルムアルデヒドで24時間固定した。RPE/脈絡膜/強膜複合体を、半透過性溶液及びブロッキング溶液を含有する溶液で、それぞれ2時間及び1時間、室温において処理し、次いで、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。当該複合体をPBSで洗浄し、二次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。PBSによる洗浄を実施し、DAPI(Sigma Aldrich、米国)によって核染色を実施した。当該RPE/脈絡膜/強膜複合体を、再びPBSで洗浄し、Fluoromount(Sigma Aldrich、米国)によってマウントした。観察は、蛍光顕微鏡下で実施した。
【0075】
一方、本発明において使用した一次抗体についての情報を下記の表1に示す。
【表1】
【0076】
実施例8.RNA抽出及び定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
トリゾール(Invitrogen、米国)試薬を使用してRNAを抽出し、逆転写キット(Promega、米国)を使用してcDNAを合成し、SYBRグリーン(TAKARA、日本)を使用してリアルタイプポリメラーゼ連鎖反応を実施した。RNAのレベルを、増幅反応曲線を分析することによって分析し、この分析は、トリプリケート又はクワドルプリケートにおいて実施した。遺伝子の相対発現レベルを、18代rRNAへの正常化によって定量化した。
【0077】
実施例9.コラーゲンゲル収縮アッセイ
以前に説明されるように、コラーゲンゲル収縮アッセイを実施した(Liu Yら 「Induction by latanoprost of collagen gel contraction mediated by human tenon fibroblasts: role of intracellular signaling molecules」, Investigative ophthalmology & visual science, 2008; 49(4): 1429~36)。詳細には、培養したARPE-19細胞を、1.2mg/mlのコラーゲン溶液(Invitrogen、米国)と混合し、1NのNaOHを加えて当該コラーゲン溶液のpHを中性化した。コラーゲンゲル懸濁液(1×10細胞/ウェル、500μL)を24ウェル培養プレートに加え、37℃で1時間、重合させた。コラーゲンゲルが形成されると、当該ゲルが培地に懸濁されるように、その端部をピペットチップで除去した。次いで、様々な試薬の処理を実施し、コラーゲンゲル収縮の程度を、ImageJソフトウェアを使用して測定及び分析した。
【0078】
実施例10.細胞移動能力のインビトロ分析
細胞移動能力を測定するために、ARPE-19細胞を12ウェル培養プレート上に位置させ、各ウェルはカバーガラスを備え、培養された細胞がカバーガラスの全領域を覆うまで当該細胞を培養した。試薬による処理を実験設計に従って実施し、次いで、当該細胞を200μLチップを使用して引っ掻いた。24時間後、当該細胞をDAPIで染色し、蛍光顕微鏡下において観察した。その後、細胞移動距離をImageJソフトウェアを使用して測定した。
【0079】
実施例11.食作用アッセイ
ARPE-19細胞を、1ウェルあたり5×10細胞の密度において24ウェル培養プレートに播種し、AdLacZ又はAdCCN5及びTGF-βによって処理した。食細胞活性に対するTAMRA標識アポトーシス胸腺細胞又は1mg/mlのpHrodo Red BioParticles(Invitrogen、米国)による処理の効果を観察するために、それらの処理を、5%COインキュベータにおいて、37℃でそれぞれ6時間及び4時間実施した。
【0080】
TAMRA標識アポトーシス胸腺細胞を作製するために、5~6週齢のC57BL/6マウスから胸腺を採取し、単一の胸腺細胞を分離するために、5mlの注射器ピストン及び細胞ストレーナを使用して解離させた。当該胸腺細胞を、50μMのTAMRA-SE(Invitrogen、米国)を用いて、細胞インキュベータにおいて37℃で30分間染色した。その後、当該胸腺細胞を、10%のウシ胎仔血清及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを含有するRPMIにおいて、37℃の条件下で20分間インキュベートすることによって脱染色し、完全RPMI(complete RPMI)によって1回洗浄した。CO細胞インキュベータにおいて50μMのデキサメタゾン(Calbiochem、ドイツ)を用いて37℃で4時間処理することによって、当該胸腺細胞のアポトーシスを誘発させた。その後、当該細胞を完全RPMIで3回洗浄し、2×10のアポトーシス胸腺細胞を300μlの食細胞培養培地に再懸濁させた。
【0081】
当該アポトーシス胸腺細胞懸濁液を、ARPE-19細胞と共に細胞インキュベータにおいてインキュベートした。その後、当該食細胞を冷PBSで5回洗浄し、トリプシン処理し、完全培養培地に懸濁させた。次いで、FACSCanto(商標) IIフローサイトメータ(BD、米国)を使用して分析を実施した。
【0082】
そのようなARPE-19細胞を、前方散乱/側方散乱プロットに従ってゲートすることにより、食作用を実施したARPE-19細胞と、そうでないARPE-19細胞とを区別した。ゲーティングのためにマーカーM1を使用し、次いで、1試料あたり20,000個の生細胞からの蛍光ポジティブ事象の割合を計算した。FlowJoソフトウェアを使用して、データを分析した。
【0083】
実施例12.AAV9-CCN5及びAAV9-VLPの硝子体内注射
AAV9-CCN5を、手術用顕微鏡(Leica Microsystems Ltd.、ドイツ)の下、33G針を使用して硝子体内に注射した。もう一方の眼は、AAV9-VLPコントロールとして機能した。
【0084】
実施例13.統計分析
定量的遺伝子発現分析を3回以上繰り返した。実験結果は、平均±標準偏差の形で表現され、スチューデントt検定を使用して、統計分析を実施した。統計的有意性は、アスタリスクで示される(*、p<0.05、又は**、p<0.01)。
【0085】
II.ARPE-19細胞におけるCCN5の効果の特定
実験的実施例1.ARPE細胞の線維性変形に対するCCN5の阻害効果の特定
ARPE-19は、ヒトRPEから分化するように自然に誘導された細胞株である。成熟ARPE-19細胞は、丸石様単層を形成し、上皮細胞に対して特異的なマーカータンパク質を発現する。培養されたARPE-19細胞を、5ng/ml又は10ng/mlにおいて2日間、TGF-βによって処理した(図1a)。結果を図1bから1dに示す。
【0086】
図1bに示されるように、TGF-βによる処理の後、当該ARPE-19細胞は、線維芽細胞様形態を獲得した。特に、図1cに示されるように、TGF-βによる処理は、ヒト由来CCN5タンパク質の発現レベルを著しく低下させることが特定された。並行して、間葉マーカータンパク質、α-SMA、ビメンチン、フィブロネクチン、及びI型コラーゲンの発現は増加され、その一方で、上皮マーカータンパク質、ZO-1、及びオクルジンの発現は、著しく低下した。さらに、免疫蛍光染色により、TGF-βによって処理した場合、α-SMA及びf-アクチンの発現が増加され、密着結合の形成は阻害されることが特定された(図1d)。これらの結果から、TGF-βによる処理は、ARPE-19細胞の線維性変形を誘発することが見出された。したがって、後続の実験において、当該ARPE-19細胞を10ng/mlのTGF-βで48時間処理して、線維性変形を誘発させた。
【0087】
当該ARPE-19細胞に、マウス由来CCN5又はコントロールとしてのAdLacZを発現する組換えアデノウイルス(AdCCN5)を感染させた。感染の2日後、当該細胞をTGF-βで処理した(図2a)。結果を図2b~2dに示す。
【0088】
図2bに示されるように、AdCCN5は、TGF-βによって誘発される形態変化を著しく阻害した。さらに、図2cに示されるように、ウェスタンブロット法は、AdCCN5が、TGF-βによって誘発された、間葉マーカータンパク質及び上皮マーカータンパク質の発現における変化を正常化することを示した。これらの変化は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応実験によっても特定された(図2d)。さらに、ZO-1に対する免疫蛍光染色により、密着結合がTGF-βによって破壊される現象が、マウス由来AdCCN5によって阻害されることが見出された;並びにTGF-βによって誘発された、α-SMAの発現の増加及びf-アクチンの形成が、AdCCN5によって阻害されることが特定された。
【0089】
一方、α-SMAの発現の増加による収縮能力の増加は、上皮細胞の線維性変形における顕著な特徴であった。コラーゲンゲル収縮アッセイは、TGF-βによって引き起こされた細胞収縮性の増加が、マウス由来AdCCN5によって著しく減少することを示した。これらの結果を図2fに示す。
【0090】
A83-01は、ALK5阻害剤に対して構造的類似性を有する、TGF-β受容体の阻害剤である。ヒト由来CCN5が、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の線維性変形をA83-01と同じレベルまで阻害することが、ウェスタンブロット法によって認められた(図3)。
【0091】
上記の結果から、CCN5が、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の線維性変形を予防することが見出された。
【0092】
実験的実施例2.ARPE-19細胞の機能低下に対するCCN5の予防効果の特定
TGF-βは、形態変化と同様にARPE-19細胞の機能低下も引き起こす。当該ARPE-19細胞に、2日間、マウス由来AdCCN5又はAdLacZを感染させ、次いで、再び2日間、TGF-βで処理した。当該細胞単層を引っ掻いた。24時間後、当該細胞単層を顕微鏡下において確認した。結果を図4aに示す。図4aに示されるように、TGF-βは、ARPE-19細胞の移動能力を増加させ、ARPE-19細胞の移動は、AdCCN5によって著しく阻害された。
【0093】
酵素RPE65は、正常な視力にとって必須であり、並びに、オールトランスレチナール(all-trans retinal)を11シスレチナール(11-cis retinal)へと変換する働きをする。さらに、タンパク質MerTKは、RPE細胞の食細胞活性において重要な役割を果たす。ウェスタンブロット法は、酵素RPE65及びタンパク質MerTKの発現レベルが、TGF-βによる処理後に著しく低下したこと、及び並びにそのような低下が、マウス誘発AdCCN5によって阻害されることを示した。これらの結果を図4bに示す。
【0094】
RPE細胞の食作用機能を、pH感受性フルオロフォア標識物質、pHrodo Red標識BioParticles、及びTAMRA標識アポトーシス胸腺細胞を使用して観察した。当該フルオロフォア標識物質は、酸性ファゴソームによって飲み込まれる場合に活性化される。RPE細胞を、これらのフルオロフォア標識物質と共にインキュベートし、フローサイトメトリによって分析した。結果を図4c及び4dに示す。
【0095】
図4c及び4dに示されるように、RPE細胞の食細胞活性は、TGF-βによって著しく低下され、この現象は、マウス由来AdCCN5によって大いに阻害された。上記の結果から、AdCCN5が、TGF-βによって誘発されるARPE-19細胞の機能低下を予防することが見出された。
【0096】
実験的実施例3.TGF-β-SMADシグナル伝達経路に対するCCN5の阻害効果の特定
ウェスタンブロット法を使用して、ヒト由来CCN5が、TGF-β-SMADシグナル伝達経路に対して効果を有するか否かを特定した。結果を図5に示す。
【0097】
図5に示されるように、TGF-βは、TGF-β受容体であるTGF-βRIIの発現レベルと、TGF-βによって誘発される上皮間葉移行に関与する転写因子であるSNAI1及びSNAI2の発現レベルとを増加させた。しかしながら、これらの転写因子の発現は、AdCCN5によって大いに低下した。さらに、AdCCN5による処理は、TGF-βによって引き起こされるSMAD2のリン酸化の増加を阻害し、並びにTGF-βによって引き起こされるSMAD4の発現の増加を阻害した。さらに、AdCCN5による処理は、TGF-βによって引き起こされるSMAD7の発現の低下を阻害した。CCN2は、RPE細胞の線維性変形に関与する線維化促進分子であり、並びにTGF-βシグナル伝達の下流標的である。CCN2の発現レベルは、TGF-βによって増加され、そのような増加は、AdCCN5によって阻害された。上記の結果から、CCN5は、TGF-β-SMADシグナル伝達経路を阻害することが見出された。
【0098】
実験的実施例4.ARPE-19細胞の線維性変形に対するCCN5の回復効果の特定
ヒト由来CCN5が、TGF-βによって既に形成されているARPE-19細胞の線維性変形を回復させることができるか否かを確認するために実験を行った。このために、ARPE-19細胞を、TGF-βで2日間処理し、続いて、AdCCN5又はAdLacZを感染させた(図6a)。結果を図6b~6eに示す。
【0099】
図6bに示されるように、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞における形態変化は、AdCCN5によって原形へと回復した。さらに、ウェスタンブロット法は、AdCCN5が、共にTGF-βによって誘発される、間葉マーカータンパク質(α-SMA、ビメンチン、及びフィブロネクチン)の発現増加及びTGF-βによって誘発される上皮マーカータンパク質(ZO-1及びオクルジン)の発現低下の両方を、著しく正常化することを示した(図6c)。さらに、免疫蛍光染色は、TGF-βによって破壊された密着結合が、AdCCN5によって著しく回復すること、並びにAdCCN5が、TGF-βによって引き起こされたα-SMAの発現増加を正常化することを示した。さらに、ファロイジン染色は、AdCCN5が、TGF-βによって引き起こされたf-アクチンのレベル増加を正常化することを明らかにした(図6d)。さらに、コラーゲンゲル収縮アッセイは、TGF-βによって引き起こされた細胞収縮の増加が、AdCCN5によって著しく減少することを示した(図6e)。上記の結果から、CCN5は、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の線維性変形を回復させることができることが見出された。
【0100】
実験的実施例5.ARPE-19細胞の機能低下に対するCCN5の回復効果の特定
ARPE-19細胞をTGF-βで2日間処理し、次いで、ヒト由来AdCCN5又はAdLacZを感染させた。次いで、ARPE-19細胞の機能について分析した。結果を図7a~7dに示す。
【0101】
図7aに示されるように、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の移動能力の向上は、AdCCN5によって著しく減少した。図7bに示されるように、AdCCN5は、TGF-βによって低下されたタンパク質RPE65及びMerTKの発現を正常化した。さらに、フローサイトメトリ分析は、TGF-βによって低下した食細胞活性がAdCCN5によって著しく回復することを示した(図7c及び7d)。上記の結果から、CCN5が、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の機能欠損を正常へと回復させることができることが見出された。
【0102】
TGF-βによるARPE-19細胞の処理の2日後、TGF-β阻害剤である式1のA83-01(Sigma-Aldrich、米国)による処理を実施した(図8a)。
【化1】

結果を図8bに示す。図8bに示されるように、CCN5とは異なり、A83-01は、間葉マーカータンパク質(α-SMA、ビメンチン、及びフィブロネクチン)並びに上皮マーカータンパク質(ZO-1及びオクルジン)の発現における異常な変化を正常化しなかった(図8b)。上記の結果から、TGF-βシグナル変換の阻害は、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞における線維性変形を予防することができ、並びに既に形成されている線維性変形を回復させることができないことが見出された。
【0103】
実験的実施例6.RPEの線維性変形に対するCCN5のインビボでの回復効果の特定
高齢のCcl2-/-マウスは、RPEの線維性変形を含む乾性加齢黄斑変性症の特徴を有する。硝子体内注射を使用して、18月齢のCcl2-/-マウスの右眼にヒト由来CCN5を発現する組換えアデノ関連ウイルス(AAV9-CCN5)を注射し、左眼にはコントロールウイルス(AAV9-VLP)を注射した。注射の12週間後、当該眼を摘出してRPE層を入手し、分析を実施した(図9a)。結果を図9b及び9cに示す。
【0104】
図9bに示されるように、CCN5の発現は、正常(WT)なマウスの眼のRPE層と比較して、Ccl2-/-マウスの眼のRPE層では著しく低下し、そのような低下は、AAV9-CCN5によって回復された。間葉マーカータンパク質(α-SMA、ビメンチン、及びフィブロネクチン)の発現は、Ccl2-/-マウスのRPEにおいて著しく増加し、その一方で、上皮マーカータンパク質(ZO-1及びオクルジン)及びRPE機能関連マーカータンパク質(RPE65及びMerTK)の発現は、大いに低下した。そのような変化は、AAV9-CCN5によって、正常な状態へと回復した。
【0105】
さらに、RPE細胞の密着結合の独特な特徴を特定するために、RPE/脈絡膜/強膜複合体を調べた。結果を図9cに示す。
【0106】
図9cに示されるように、AAV9-VLPを注射された18月齢の正常なマウスのRPEにおいて示されるような秩序だった六方晶系の形状の密着結合の構造が、コントロールウイルスを注射された同月齢のCcl2-/-マウスのRPEにおける異常な形状へと変形していることが認められた。逆に、AAV9-CCN5を硝子体内に注射された同月齢のCcl2-/-マウスのRPE細胞では、密着結合は正常な形状へと回復していることが特定された。さらに、同時に、タンパク質RPE65の発現の低下が正常化され、α-SMAの発現も低下した(図9c)。上記の結果から、高齢のCcl2-/-マウスのRPEにおいて示される線維性変形が、CCN5によって回復されることが見出された。
【0107】
実験的実施例7.密着結合の破壊によって引き起こされるARPE-19細胞の線維性変形に対するCCN5の予防効果
細胞密着結合は、RPE機能にとって重要であり、密着結合の破壊は、様々な眼の疾患に密接に相互関連している。RPE細胞がEGTA、EGF、及びFGF-2(以下においては、EEF)の組み合わせによって処理される場合、当該RPE細胞の密着結合は破壊され、結果として、RPEの正常な形態及び機能が失われる。
【0108】
ARPE-19細胞にヒト由来AdCCN5又はAdLacZを2日間感染させ、次いで、再びEEFで2日間処理した(図10a)。結果を図10b~10dに示す。図10bに示されるように、AdCCN5は、EEF処理によって誘発された形態変化を著しく阻害した。ウェスタンブロット法は、AdCCN5が、共にEEFの組み合わせによって誘発される、CCN2及び間葉マーカータンパク質(α-SMA、ビメンチン、及びフィブロネクチン)の発現の増加及び上皮マーカータンパク質(ZO-1及びオクルジン)の発現の低下の両方を阻害することを示している(図10c)。CCN5の発現がEEFによって低下することは、注目に値する結果である。さらに、免疫蛍光染色は、AdCCN5が、EEFによって誘発された密着結合の破壊を阻害し、並びに、EEFによって誘発されたα-SMAの発現の増加を阻害することを示した。ファロイジン染色は、AdCCN5が、EEFによって形成されたf-アクチンを阻害することを示した(図10d)。上記の結果から、CCN5が、EEFによって誘発された密着結合の破壊によって引き起こされるARPE-19細胞の線維性変形を予防することが見出された。
【0109】
実験的実施例8.ベバシズマブによって誘発されるARPE-19細胞の線維性変形に対するCCN5の予防効果
新生血管形成を阻害する抗VEGF薬の使用は、湿性加齢黄斑変性症を治療するために広く使用される方法である。しかしながら、この方法は、RPE細胞において形態的及び機能的変化を引き起こす副作用を有する。ベバシズマブは、様々な癌又は湿性加齢黄斑変性症を治療するために一般的に使用される第一世代の抗VEGF薬である。この実験的実施例において、ベバシズマブがARPE-19細胞の線維性変形を誘発するか否か、及びそのような有害な結果が、ヒト由来CCN5によって予防されるか否かを調べた。特異的実験プロセスが実施例2に示されており、この実験プロセスは、図11aに図式的に示されている。当該実験結果を図11b~11dに示す。
【0110】
図11bに示されるように、ARPE-19細胞がベバシズマブで処理される場合、当該細胞の形態は変化し、この現象は、AdCCN5によって阻害された。ウェスタンブロット法は、AdCCN5が、共にベバシズマブによって誘発される、間葉マーカータンパク質(α-SMA、ビメンチン及びフィブロネクチン)の発現の増加及び上皮マーカータンパク質(ZO-1及びオクルジン)の発現の低下の両方を阻害することを示した(図11c)。CCN5の発現が、ベバシズマブによって低下することは、注目に値する結果である。さらに、免疫蛍光染色は、AdCCN5が、ベバシズマブによって誘発される密着結合の破壊を阻害することを示した(図11d)。上記の結果から、CCN5が、ベバシズマブによって誘発されるARPE-19細胞の線維性変形を予防することが見出された。
【0111】
実験的実施例9.CCN5をコードする修飾されたmRNA及びCCN5タンパク質の効果
ヒト由来CCN5をコードする修飾されたmRNA(以後、modRNA-CCN5と称する)又は精製されたヒト由来CCN5タンパク質を使用して、図12a及び13aに図式的に示された実験プロセスに従って実験を実施した。結果を図12b~12c及び図13b~13cに示す。
【0112】
ウェスタンブロット法は、ARPE-19細胞において、modRNA-CCN5及び精製されたCCN5タンパク質が、TGF-βによって誘発される、間葉マーカータンパク質(α-SMA、ビメンチン、及びフィブロネクチン)の発現の増加を阻害し、並びに同じくTGF-βによって誘発される、上皮マーカータンパク質(ZO-1及びオクルジン)の発現の減少を正常なレベルへと回復させることを示した(図12b及び13b)。さらに、免疫蛍光染色は、当該modRNA-CCN5及び精製されたCCN5タンパク質が、TGF-βによって破壊された密着結合を正常な状態へと回復させることを示した(図12c及び図13c)。当該結果は、CCN5が、修飾されたmRNA及び精製されたタンパク質の形態において移入される場合でさえ、それらは、TGF-βによって誘発されたARPE-19細胞の線維性変形を回復させる優れた効果を有することを示している。
【0113】
実験的実施例10.抗VEGF薬(ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプト)によって誘発されるARPE-19細胞の線維性変形に対するCCN5の予防効果
抗VEGF薬であるベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプトが、ARPE-19細胞の線維性変形を等しく誘発するか否か、及びこの変形が、ヒト由来CCN5によって予防されるか否かについて調べた(図14a)。実験プロセスを図14aに図式的に示し、実験結果は、図14b及び14cに示す。
【0114】
図14bに示されるように、抗VEGF薬であるベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプトは、等しくCCN5の発現を低下させ、CCN2の発現を増加させ、この現象は、CCN5タンパク質によって阻害された。ウェスタンブロット法は、CCN5が、共に抗VEGF薬によって誘発される、間葉マーカータンパク質(α-SMA、ビメンチン、及びフィブロネクチン)の発現の増加及び上皮マーカータンパク質(ZO-1及びオクルジン)の発現の低下の両方を阻害することを示した(図14c)。さらに、免疫蛍光染色は、CCN5が、いずれも抗VEGF薬によって誘発される、密着結合の破壊、α-SMAの発現の増加、及びf-アクチンの形成を阻害することを示した(図14c)。これらの結果は、抗VEGF薬によって誘発されるARPE-19細胞の線維性変形が、CCN5によって予防されることを示している。
【0115】
実験的実施例11.TGF-βによって誘発されるiPSC由来RPE細胞の線維性変形に対するCCN5の予防効果
TGF-βによって誘発されるRPE細胞の線維性変形に対するヒト由来CCN5の予防効果を特定する実験を、ヒトiPSC由来RPE細胞において実施した。当該iPSC由来RPE細胞を播種し、2週間後、当該細胞にAAV2-CCN5を感染させた。次いで、25日間培養を実施し、次いで、TGF-βによる処理を3日間実施した(図15a)。細胞を播種した2週間以内に、当該iPSC由来RPE細胞は、密集した丸石形状を示した。1カ月後、当該細胞は、円蓋形を形成しつつ、RPE細胞特異的な着色を示し始めた。当該結果を図15bに示す。
【0116】
免疫蛍光染色は、AAV2-CCN5が、いずれもTGF-βによって誘発される、密着結合の破壊、α-SMAの発現の増加、及びf-アクチンの形成を阻害することを示した。上記の結果は、TGF-βによって誘発される、iPSC由来RPE細胞の線維性変形が、CCN5によって予防されることを示している。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c
図15a
図15b
【配列表】
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