(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】漏れ電流検出機能を備えた電気外科発電機
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022195075
(22)【出願日】2022-12-06
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ラミン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フェージング,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デイクストラ,イェレ
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04102341(US,A)
【文献】特開2014-115201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科器具(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気外科発電機であって、
前記電気外科器具(16)の接続のための出力部(14)に出力ライン(4)を介して印加される高周波交流電圧を発生させる高電圧用のインバータ(3)と、
前記出力部(14)に接続された前記電気外科器具(16)のための漏れ電流検出装置(6)と、を備え、
前記漏れ電流検出装置(6)は、電圧測定装置(7)と非対称検出器(8)とを備え、
前記電圧測定装置(7
)の入力部
は、前記出力ライン(4)のアクティブライン(41)及びニュートラルライン(42)に対して
それぞれ容量結合部(71,72)を介し
て接続され、
前記電圧測定装置(7)は、
2つの電圧を測定するように構成されたバイポーラの分圧器(73)を備え
、
前記分圧器(73)は、前記アクティブライン(41)に対して前記容量結合部(71)を介して接続された上側接続部(78)と、前記ニュートラルライン(42)に対して前記容量結合部(72)を介して接続された下側接続部(79)と、前記上側接続部(78)と前記下側接続部(79)とを接続する中央タップ(77)とを有し、且つ、前記上側接続部(78)と前記中央タップ(77)との間のインピーダンスと、前記下側接続部(79)と前記中央タップ(77)との間のインピーダンスとの比率が所定の固定比率になるように構成されており、
前記2つの電圧は、前記上側接続部(78)と前記中央タップ(77)との間の上側電圧と、前記下側接続部(79)と前記中央タップ(77)との間の下側電圧とであり、
前記非対称検出器(8)は、前
記上側電圧を、前
記下側電圧と比較し、前記下側電圧に対する前記上側電圧の比率が前記所定の固定比率からずれている場合、漏れ電流のための障害信号を出力するように構成されている、電気外科発電機。
【請求項2】
前記非対称検出器(8)は、
前記下側電圧に対する前記上側電圧の比率と前記所定の固定比率とのずれが所定の最小閾値(85’)未満であるときには前記障害信号を出力しないように構成されている、請求項1に記載の電気外科発電機。
【請求項3】
前記最小閾値(85’)は、前記電気外科発電機(1)の動作モード及び/又は前記電気外科器具(16)に応じて、調整可能である、請求項2に記載の電気外科発電機。
【請求項4】
前記最小閾値(85’)は、前記電気外科器具に割り当てられて前記最小閾値(85’)のための値が記憶されるメモリにおいて、器具依存的に規定されている、請求項3に記載の電気外科発電機。
【請求項5】
前記非対称検出器(8)には、漏れ電流のための極性検出器(87)が設けられている、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項6】
前記極性検出器(87)は、
前記アクティブ
ライン(41)または
前記ニュートラル
ライン(42)に漏れ電流が生じているかどうかを知らせるように、ディスプレイ装置(89,89’)と交信する、請求項
5に記載の電気外科発電機。
【請求項7】
前記非対称検出器(8)は、2つの入力部を有する比較器(83)を備え、前記2つの入力部のうち、一方の入力部に前記上側接続部(78)が接続され、他方の入力部に前記下側接続部(79)が接続されている、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項8】
前記比較器(83)は、演算増幅器によって、アナログ技術を用いて構成されている、請求項
7に記載の電気外科発電機。
【請求項9】
前記非対称検出器(8)は、下流側に接続されたシュミットトリガ(85)を備えた差算出部(88)として構成されている、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項10】
前記非対称検出器(8)は、ADコンバータ(84,84’)を有する、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項11】
前記ADコンバータ(84,84’)は、前記非対称検出器(8)の入力側に配置されている、請求項
10に記載の電気外科発電機。
【請求項12】
前記容量結合部(71,72)は、前記分圧器(73)に比べて、少なくとも100倍だけ高インピーダンスにあり、前記分圧器(73)は高電圧にさらされないように配置されている、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項13】
前記分圧器(73)は容量性である、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項14】
前記中央タップ(77)は、固定電位に接続されている、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項15】
前記固定電位は、接地電位である、請求項
14に記載の電気外科発電機。
【請求項16】
前記漏れ電流検出装置(6)は、漏れ電流の大きさを特定するための装置(80)と交信する、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【請求項17】
前記分圧器(73)は、対称分圧器である、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波交流電圧を電気外科器具に出力するように構成された電気外科発電機に関する。前記電気外科発電機は、出力ラインを介して電気外科器具の接続用の出力部に印加される高周波交流電圧を生成する高電圧用インバータと、前記出力部に接続された電気外科器具用の漏れ電流検出装置とを備える。
【背景技術】
【0002】
電気手術または高周波手術において、人体の組織に高周波交流電圧を入力し、特に、これによる加熱によって組織を切断ないし切り取るために、電気メスなどの電気外科器具が使用される。このことの利点の1つは、切断と同時に、影響を受けた血管を閉じることによって止血することも可能であり、電気外科器具は、例えば凝固などのさらなる用途も想定されることである。
【0003】
この目的のためには、かなりの電力が必要であり、特に、200kHz~4000kHzの周波数、通常は約400kHzの電力が必要である。このような周波数において、身体組織は、オーム抵抗のように作用する。ただし、比電気抵抗は組織の種類に大きく依存し、筋肉、脂肪、または骨の比電気抵抗は互いに大きく異なり、具体的には最大で1000倍ほど異なる。このことの影響として、動作中において、電気メスの負荷インピーダンスは、切断される組織に応じて急速かつ大幅に変化する可能性があり、実質的に無限大から始まり、器具が組織に近づくにつれて、仮想短絡に至ることがある。このことは、電気外科発電機と、特に、そのための高電圧設備とに、他の技術分野では生じない特別かつ独自の要求を課すことになる。
【0004】
これらの独自の要求を満足するために、電気外科発電機は、通常、電気外科器具に電力供給するためのインバータを有するように構成され、電気外科器具には整流電流が供給される。インバータは、典型的には、LC共振回路を有する自励式のシングルエンド発電機として具体化される。この構成は価値があることが証明されている。さらに、本願出願人は、インバータとしてマルチレベルインバータを提供する電気外科発電機の設計を開発した。したがって、発生する交流電圧の周波数、振幅、および波形は、実質的に自由に調整され得る。必要とされる高電圧は、出力トランスによって実現される。
【0005】
電気外科発電機によって出力され得る高出力電圧を考慮すると、患者を保護することが特に重要である。このことには、特に電気外科発電機の一方の電極から他方の電極への、患者における電流の通過を制御することが含まれる。この場合、電気外科器具に接続された電極は、通常、アクティブ電極と呼ばれる。実施形態によっては、他方の電極も同様に、電気外科器具に接続されるか、又は、電気回路を閉じるために表面接触電極を介して患者に接続されてもよい。このことが完全になされ、漏れ電流が発生しないことが重要である。漏れ電流の発生は、患者にとって危険になり得る。
【0006】
したがって、電気外科発電機の安全な動作のためには、漏れ電流の発生が迅速かつ確実に検出されることが重要である。この目的のために、電気外科発電機の出力接続部に電流センサを設けることが知られている。これらのセンサは、発電機の内部構造による憂慮すべき影響を避けるために、接続部のすぐ近くに配置されることが好ましい。既知の電気外科発電機の場合、電流測定の目的で、アクティブ電極に流れる電流と表面電極を介して戻る電流との差を確認する一種の障害電流測定を実行することが典型的な方法である。この目的のために、変圧器の原理に従って動作する電流センサ(変流器)が知られている。この構成の欠点は、センサシステムが、複雑であり、特定の構造的スペース要求を有することである。なぜなら、センサシステムは、通常、誤測定を避けるために出力部のすぐ近くに配置される必要があるためである。
【0007】
本発明は、漏れ電流の簡単で確実な検出を可能にする改良された電気外科発電機を提供するという課題に対処する。
【発明の概要】
【0008】
本発明に係る解決策は、独立請求項の特徴に存在する。従属請求項は、有利な展開に関する。
【0009】
電気外科器具に高周波交流電圧を出力するように構成された電気外科発電機が、電気外科器具の接続のための出力部に出力ラインを介して印加される高周波交流電圧を発生させる高電圧用のインバータと、前記出力部に接続された電気外科器具のための漏れ電流検出装置と、を備える場合において、本発明は、電圧測定装置と非対称検出器とを備えるように構成された漏れ電流検出装置を提供する。前記電圧測定装置は、その入力部によって、前記出力ラインのアクティブライン及びニュートラルラインに対して容量結合部を介してそれぞれ接続される。前記電圧測定装置は、所定の固定分圧比(固定比率)を有するバイポーラの分圧器を備える。前記電圧測定装置は、前記容量結合部が適用される上側接続部及び下側接続部と、中央タップとを備える。前記非対称検出器は、前記上側接続部と前記中央タップとの間の上側電圧を、前記下側接続部と前記中央タップとの間の下側電圧と比較し、前記下側電圧に対する前記上側電圧の比率が前記所定の固定分圧比(固定比率)からずれている場合、漏れ電流のための障害信号を出力するように構成されている。
【0010】
本発明の本質は、出力ラインにおける2つのラインにおいて、電圧の測定を実行するという概念である。このことは、分圧比が所定の固定比率である分圧器を使用して、異なる電圧測定という意味で行われる。したがって、2つの測定信号が、ライン毎に1つずつ得られる。これらの測定信号は、非対称検出器に送られ、非対称検出器は、2つの測定電圧が所定の固定比率内にあるかどうかをチェックする。所定の固定比率内にない場合は、2つの測定電圧のうちの一方が想定値から逸脱していることを意味する。このことは、影響を受けたラインでの漏れ電流の発生によって起こり得る。漏れ電流の発生は、例えば、手術を受ける患者が(保護導体によって)接地された金属部分に触れているという事実が原因で、当該ライン上に接地への低インピーダンスパス(地絡)があることを示す。その結果、潜在的に危険な漏れ電流が発生する。
【0011】
この場合、本発明では、漏れ電流の発生により、バイポーラ分圧器を用いた電圧測定の結果が変化するという洞察が利用され、当該変化は、非対称検出器によって検出されて信号で伝えられる。信号伝達は、電気外科発電機の使用者(外科医)への警告であり、さらに、出力されるAC電圧の例えば自動化された迅速なシャットダウンのための開始信号として機能し得る。これにより、患者を効果的に保護できる。
【0012】
本発明に係る、バイポーラ分圧器を有する電圧測定装置によれば、差動タイプの測定が行われ、これにより、干渉に対する顕著な耐性を示す。したがって、本発明に係る電圧測定装置は、従来技術とは異なり、出力ラインのどこにでも配置可能であり、出力部に直接配置される必要はない。変圧器の原理に従って動作する変流器などの、複雑な測定トランスデューサは必要ない。これにより、配置に関してより多くの設計の自由度がもたらされ、電気外科発電機の構造が簡素化され、本発明に係る漏れ電流検出装置の統合も簡素化される。その結果、漏れ電流を検出する従来の方法よりもロバスト性および信頼性が高くなり、患者の保護がさらに向上する。
【0013】
使用されるいくつかの用語の説明が以下に示される。バイポーラ分圧器を有する電圧測定装置は、2つの電圧を同じ方法で測定する電圧測定装置を意味すると理解される。理想的には、当該電圧測定装置は、測定を定義するコンポーネントに関して対称的に構築され、これにより、測定ゲインと周波数応答に関して同一の比率が存在する。当該電圧測定装置の特別なケースは、両側で同一のインピーダンスを有する対称分圧器である。対称分圧器は必須ではなく、この場合、少なくとも分圧器のインピーダンスが互いに、(分圧器の所望の分圧比によって決定されるような)所定の固定比率内にあれば十分である。ここで関係するインピーダンスは、特に、上側接続部と中央タップとの間、および、中央タップと下側接続部との間に配置されるインピーダンスである。前記固定比率は、バイポーラ分圧器のインピーダンスの比率(例えば2:1)によって定義される。インピーダンスの大きさが等しい場合、つまり分圧器が対称である場合、固定比率は1:1である。バイポーラ分圧器が対称分圧器である場合のこの特別なケースは、特にクリアなレイアウトを有する回路構造を提供可能であるため、好ましい実施形態である。
【0014】
非対称検出器によって行われる比較は、通常、電圧レベル(振幅および/または二乗平均平方根値)の比較であり、当該比較は、単に等価であるかどうかだけでなく、場合によっては所定の固定比率が存在するかどうかをチェックするという意味で広く理解されるべきである。この意味において、等価でない場合、または所定の固定比率が存在しない場合に、非対称性が存在する。非対称検出器は、このこと(等価であるか、又は所定の固定比率が存在するか)をチェックするように構成されている。
【0015】
電気外科発電機の分野において、「高周波」は、典型的には200kHz~4000kHzの範囲の周波数を意味すると理解される。「高電圧」は、通常、最大10kV、好ましくは最大5000Vの電圧を意味すると理解される。
【0016】
電気外科発電機によって提供される電力は、典型的には1~500ワットの範囲であり、負荷インピーダンスは大きく変化してもよく、これに応じて出力電圧および電力出力も同様に大きく急速に変化し得る。
【0017】
非対称検出器は、最小閾値を有してもよく、最小閾値未満では、障害信号がまだ出力されない。障害信号は、最小閾値を超えた場合にのみ出力される。したがって、特定の許容閾値が定義(規定)され得る。これにより、漏れ電流がまだ低く、危険ではない場合に生じ得るような微小の偏差が発生した場合には、障害信号がまだ始動されないようにすることができる。これにより、不要な早期シャットダウンが防止される。
【0018】
最小閾値は、好ましくは電気外科発電機の動作モードおよび/または接続される器具に応じて、調整可能であってもよい。このことには、電気外科発電機の異なる動作モード、特に、異なるプログラムモードが、患者にとって異なる程度のリスクを意味するという洞察が利用される。この点に関して、大きなデューティサイクルを有するクロックモードの場合、高いパルス状のピーク電圧が達成される。このことは、より高い脅威を構成する可能性があるため、最小閾値をより低く設定する必要がある。これに応じて、他のモードについては、より寛大な設定がなされ得る。さまざまな構成の電気外科器具に対して、同じことが、適宜必要な変更を加えて適用される。この場合、最小閾値を決定する際に、電気外科器具の異なる設計、ひいては患者に及ぼすリスクがさらに考慮され得る。特に、最小閾値は、器具に依存する方法で定義され得る。好ましくは、器具に割り当てられ、最小閾値の値が記憶されるメモリに、最小閾値が定義され得る。前記メモリは、器具上または電気外科発電機内に設けられてもよい。
【0019】
出力ラインは、しばしば、その出力部において、アクティブ電極用およびニュートラル電極用の接続部を備えている。ニュートラル電極は、通常、用途に応じて、広い範囲で患者に接続されるように設けられる。この場合、器具につながるアクティブ電極と、患者につながる大面積のニュートラル電極とについて、異なる最小閾値が調整可能であれば便利である。このことは、本発明に係る電圧測定装置の場合、異なる最小閾値の設定によってなされ得ることが好ましい。
【0020】
本発明のさらなる特定の利点によれば、非対称検出器は、漏れ電流用の極性検出器をさらに備える。これにより、出力ラインにおける2つのラインのうちのいずれにおいて漏れ電流が発生しているかを識別することが可能になる。特に、アクティブ電極またはニュートラル電極のいずれで漏れ電流が発生するかを迅速に知らせることが可能であり、これにより、外科医は、対応する対策を開始しやすくなる。好ましくは、この目的のために、非対称検出器は、アクティブ電極またはニュートラル電極のいずれで漏れ電流が発生するかを適宜知らせるように、ディスプレイ装置と交信(相互作用)する。
【0021】
1つの適切な実施形態において、非対称検出器は、2つの入力部を有する比較器を有し、当該2つの入力部のうちの一方に前記上側接続部が接続され、他方の入力部に前記下側接続部が接続される。比較器により、信頼性が高く、それほど複雑ではない方法で非対称性を検出することが可能になる。特に、アナログ技術を使用して比較器を構成することが可能である。これにより、迅速な処理と高い信頼性が得られる。このことは、比較器が演算増幅器によって実現される場合に特に当てはまる。非対称検出器の別の適切な実現として、非対称検出器は、下流側に接続された閾値切換部(閾値スイッチ)、特にシュミットトリガを有する差算出部を備えてもよい。
【0022】
非対称検出器は、ADコンバータ(アナログ/デジタル変換器、ADC)を有することが好ましい。これにより、デジタル信号処理の利点が得られる。このことは、アナログ信号とは対照的に耐干渉性に関する利点(漏れ電流のような弱くて小さな振幅の信号に関して特に重要である。)を提供し、これにより、測定精度が向上しつつ、後続の信号処理ユニットの配置に関する柔軟性も、干渉プルーフデジタル信号が供給されていることにより向上する。このように向上する柔軟性は、特に電気外科発電機内の構造的配置に関して適用可能であり、このことは、出力出口での限られたスペースを考慮すると、意義深い実用上の利点である。構造的配置とは関係なく高い(デジタル)信号品質が維持されるため、従来は必要であった(アナログ)信号品質と構造的配置との間の妥協は、もはや必要ではない。
【0023】
特に、非対称検出器の入力側にADコンバータ(アナログ/デジタル変換器、ADC)が配置されることが好ましい。前置増幅後に適用可能である場合、上側接続部および下側接続部に直接配置されることが特に好ましく、これにより、信号経路に沿ってかなり早い段階でデジタル信号への変換を達成できる。この目的のために、便宜上、2つのADコンバータが設けられてもよいし、二重のADコンバータが設けられてもよい。これにより、干渉のないデジタル信号への移行が、漏れ電流の信号を生成した直後にすでに行われているという利点がもたらされる。好ましくは、このことは、非対称検出の前に実行され、これにより、すでにデジタル領域にある非対称の分析が可能になる。これにより、デジタル信号処理の利点は、非対称検出のためにすでに実現され得る。
【0024】
さらに、シグナルチェーンにおけるできるだけ早い段階でアナログ/デジタル変換が行われることで、非対称検出器および/または信号処理のための他の後続ユニットにおいて、高度な分析機能、特にスペクトル分析や周波数ドメインでの分析を実現できるという利点がもたらされる。このようなスペクトル分析により、特に高調波周波数成分が評価され得る。この目的のために、非対称検出器は、高度な分析機能、特にスペクトル分析用、または周波数ドメインでの分析用に構成されてもよい。これにより、評価精度、ひいては検出精度が向上しつつ、さまざまな種類の電気外科器具に対する柔軟性も向上する。
【0025】
さまざまな種類の電気外科器具(対応する電気外科発電機が製造された後にのみ利用可能になる器具を含む)に対する柔軟性は、電気外科器具に応じて異なる閾値を提供することによって向上し得る。当該閾値は、デジタル信号処理による特に簡単で好ましい方法において考慮され得る。このことは、例えば、電気外科発電機に記憶された器具の個々の閾値によって、又は、それぞれの器具のメモリに値として記憶された対応する最小閾値によって、達成され得る。これにより、ADコンバータは、将来の器具に関しても、さまざまな最小閾値を簡素に実現することができる。これにより、電気外科発電機の柔軟性と将来の保証性が向上する。
【0026】
容量結合部は、分圧器に対して、高インピーダンスで構成されることが好ましく、より好ましくは少なくとも100倍、特に少なくとも1000倍の高インピーダンスで構成されてもよい。便宜上、容量結合部は、ピコファラッドの範囲、好ましくは最大で20ピコファラッドのコンデンサを有する。このような高インピーダンスの容量結合部は、(アクティブライン及びニュートラルラインから見て)容量結合部の背後に配置された分圧器が「高電圧フリー」である、つまり高電圧にさらされないという利点をさらに提供する。したがって、高電圧のロバスト性要素(特定のコンデンサ)は必要ない。このことは、一方で高電圧のロバスト性と、他方で精密公差および分圧比の決定精度との間でしばしば目的の矛盾が生じるため、重要な実用上の利点である。
【0027】
便宜上、分圧器は容量方式(容量性)で構成される。これにより、DC電流の影響が回避され、特に容量結合部との相互作用において、好ましい周波数応答動作が可能になる。さらに、抵抗分圧器と比較して、容量性の実施形態によれば、特に、望ましくないDC電流に対して、さらなる分離が提供される。
【0028】
有利には、分圧器の中央タップは、固定電位(固定された電位、一定電位)に接続される。これにより、電圧測定用の仮想の接地(グランド)、すなわち、明確な基準電位(接地電位)が作成される。特に、中央タップを保護導体に接続し、これによって電気的に接地(保護接地、保護グランド、保護アース)するための準備(対策)がなされ得る。このことには、漏れ電流が流れる可能性のある同じ電位に中央タップが接続されるという利点がある。好都合なことに、この目的のために、測定電子機器も接地(保護接地、保護グランド、保護アース)される。
【0029】
さらに、漏れ電流検出装置が、電流の大きさ、特に漏れ電流の大きさを決定するための別個の装置と交信(相互作用)するように準備(対策)がなされ得る。特に患者の安全のために、漏れ電流が存在することを迅速かつ確実に検出することが特に重要である。二次的な考慮事項は、漏れ電流の原因となる障害の位置を特定するための貴重な追加情報を提供するために、漏れ電流のある程度の大きさを確認できるという更なる利点があることである。例として、そのような装置は、電気外科発電機の動作コントローラと交信(相互作用)するように構成される。動作コントローラに一般的に存在する出力ラインにおける電流の測定値に基づいて、前記装置は、非対称検出器による漏れ電流の検出の直前と直後の電流出力全体の電流測定値を互いに比較することができ、これに基づいて、漏れ電流の大きさの測定値を特定(判断)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、次の添付図面を参照する有利な例示的実施形態に基づいて、本発明がより詳細に説明される。
【0031】
【
図1】接続された電気外科器具を備えた1つの例示的な実施形態に係る電気外科発電機の概略図を示す。
【
図2】
図1の電気外科発電機に関するブロック図を示す。
【
図3】漏れ電流検出装置を備えた測定センサの例示的な回路図を示す。
【
図4b】
図3に関する非対称検出器の別の例を示す。
【
図5】漏れ電流がない場合における測定電圧に関する図を示す。
【
図6】漏れ電流がある場合における測定電圧に関する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、本発明の1つの例示的な実施形態に係る電気外科発電機が示されている。参照符号1で全体的に示される電気外科発電機は、電気外科器具16用の接続部(出力接続部)14が設けられたハウジング11を備える。図示された例示的な実施形態において、電気外科器具は電気メスである。電気メスは、高電圧接続ケーブル15を介して電気外科発電機1の接続部14に接続される。別の接続ケーブル15’が手術台98に導かれ、手術台98で対電極16’に接続される。対電極16’は、手術を受ける患者99における広い領域にわたって配置されるように構成される。電気外科器具16への電力出力は、電力コントローラ12によって変更され得る。
【0033】
次に、特に
図2を参照して、電気外科発電機1の構造が説明される。電気外科発電機1に電力を供給するために、DC電圧源(直流電圧源)2が設けられている。DC電圧源2は、供給システム接続ケーブル13を介して公共電力供給システムに接続されてもよいし、高電圧電源ユニット(高電圧電源(HVPS))を介して給電されてもよい。電源ユニット22は、整流器を備え、図示の例示的な実施形態ではDC電圧リンク回路(直流電圧リンク回路)24に給電する。なお、電源ユニット22からの電力供給は必須ではなく、特に、車両に設置された電気外科用発電機の場合、又は、移動病院または仮設病院に設けられる電気外科発電機の場合、例えばDC電圧(直流電圧)の直接供給など、他のタイプのDC電圧源2も考えられることに留意されたい。
【0034】
DC電圧の大きさは、典型的には10ボルトと約500ボルトとの間であり、最新の電気外科用発電機の場合は、しばしば48ボルトである。DC電圧の大きさは、固定されても可変であってもよく、特に、高電圧を生成するインバータの設計に依存する。DC電圧の絶対的な大きさは、特に、電力セット、電気外科器具16の種類、および/または、電気外科器具16の負荷インピーダンスに依存してもよく、ひいては、治療される組織の種類に依存する。
【0035】
インバータ3は、DC電圧源2によって給電され、供給されたDC電圧から、200kHzと4MHzとの間の範囲の周波数を有する数キロボルトの高電圧範囲における高周波AC電圧(高周波交流電圧)を生成する。提供されるインバータ3は、例えば、発振器によって自励方式で駆動される、いわゆるシングルエンドのコンバータであってもよく、この場合は、一般に、可変電圧のDC電圧源2によって電力供給される。本実施形態の電気外科発電機は、概念的簡素という利点を提供可能であり、概して、生成された高電圧を、機器内部の出力ライン4を介して電気外科器具16のための接続部14に直接印加する。ただし、これに代えて、インバータ3は、狭義のインバータとして構成されてもよい。この場合、電力および出力される電圧の設定は、インバータ自体によって行われるため、可変DC電圧源2は必要なく、むしろ固定電圧(例えば48V)を有するもので十分である。当該インバータは、いわゆる電流弁としてパワー半導体スイッチを有する。パワー半導体スイッチは、高周波の高電圧を生成する目的で、例えばPWM制御として知られているパルス幅変調を用いて、それ自体知られている方法でインバータコントローラ31によって駆動される。したがって、当該インバータによって生成される高周波高電圧は、周波数と波形に関して実質的に自由に調整可能である。当該インバータによって生成され高周波電圧は、典型的には、ローパスフィルタと、発電機内部の出力ライン4への昇圧用の出力変圧器(図示せず)とを介して、電気外科器具16のための接続部14に出力される。
【0036】
さらに、インバータ3によって生成される高電圧の電圧および電流は、電圧センサ17および電流センサ18によって測定され、測定信号は、処理ユニット19に送られる。処理ユニット19は、出力される電圧、電流、および電力に関する対応するデータを、電気外科発電機1の動作コントローラ10に適用する。電力コントローラ12も、動作コントローラ10に接続されている。動作コントローラ10はさらに、いわゆる様々なモードを設定するように構成されており、これらのモードは通常、記憶された電圧/時間プロファイルを含む。ただし、これらのモードは、出力される高周波高電圧の波形を含む事前定義を含んでもよい。
【0037】
生成される高周波高電圧は、アクティブ電極(活性電極)用のライン(アクティブライ、上側ライン)41と、ニュートラル電極(中性電極)用のライン(ニュートラルライン、下側ライン)42とを有する出力ライン4を介して、接続部14に印加される。電気外科発電機によって出力される電圧の高周波により、寄生容量がライン41、42に作用する。寄生容量は、
図3において容量素子48、49によって表される。
【0038】
電気外科器具16は、接続部14に接続される。図示の例示的な実施形態において、電気外科器具16は、アクティブ電極を有するライン41に接続されたモノポーラ(単極)器具である。ただし、バイポーラ(双極)器具(図示せず)の使用も可能である。電気回路を閉じるために、対電極16’が接続ケーブル15’を介してライン42に接続される。対電極16’は手術台98上に位置しており、手術を受ける患者99は手術台の上に横たわっている。対電極16’は、適切な位置において広域にわたって患者99に接続される(このことは、
図1において単に象徴的に示されている)。次に、外科医が電気外科器具16を患者99上に配置すると、患者99の身体組織を介して電気回路が閉じられる。器具16先端に直接位置する身体組織は、そこに作用する接触抵抗の結果として加熱され、使用される電気外科器具16に応じて、切断、焼灼、凝固などされる。
【0039】
電気回路が、他の場所、特に患者99の身体部分を介して(も)閉じられているかどうかは重大である。当該場所には、制御されない漏れ電流が発生する。このことは、患者の安全、場合によっては医療関係者の安全にとっても、相当なリスクである。このことを検出するために、漏れ電流検出装置6が設けられている。
【0040】
ここで、さらなる説明のために
図3が参照される。
図3において、インバータ3は、図の左側部分にAC電圧源(交流電圧源)として象徴的に示されている。該電圧源の電圧は、それぞれアクティブ電極用およびニュートラル電極用のライン41、42を有する出力ライン4を介して、電気外科器具16用の接続ケーブル15に出力される。電気回路は、さらなる接続ケーブル15’を介して閉じられる。
図3には、電気外科器具16および対電極16’も、負荷抵抗器として象徴的に表されている。
【0041】
漏れ電流検出装置6は、バイポーラ型の分圧器73を有するバイポーラ型の電圧測定装置7と、非対称検出器8とを備える。電圧測定装置7は、出力ライン4におけるアクティブ電極用およびニュートラル電極用のライン41、42上で電圧測定を実行するように構成されている。例示的な実施形態において、電圧測定装置7のバイポーラ分圧器は、一例として、1:1の分圧比を有する対称分圧器73として構成される。対称分圧器73は、中央タップ77で互いに接続された上側測定キャパシタンス部74及び下側測定キャパシタンス部75を有する容量性分圧器として構成される。それぞれの測定キャパシタンス部74、75の他方の接続部は、分圧器73の上側接続部78および下側接続部79にそれぞれ配置されている。測定キャパシタンス部の静電容量の大きさは、ナノファラッド(nF)の範囲の大きさであり、例えば約10nFである。
【0042】
ライン41、42の電圧を可能な限り摂動なく測定するために、対称分圧器73は、高インピーダンス結合を介してライン41、42に接続される。高インピーダンス結合は、低静電容量を有する2つのコンデンサ、すなわち、ライン41と分圧器73の上側接続部78との接続部としての第1のコンデンサ(第1の容量結合部)71、および、ライン42と分圧器73の下側接続部79との接続部としての第2のコンデンサ(第2の容量結合部)72によって実現される。2つのコンデンサ71、72は、ピコファラッド範囲の静電容量、例えば約3pFの静電容量を有する。
【0043】
上側接続部78および下側接続部79は、出力接続部として分圧器73から引き出されている。上側接続部78および下側接続部79は、下流側に接続された非対称検出器8の入力部81、82に適用される。非対称検出器8は、上側接続部78および下側接続部79のそれぞれにおいて分圧器73からもたらされる2つの電圧を互いに比較し、これらの電圧が所定の固定比(本実施例では分圧器が対称であるため、固定比は1:1である)を有するかどうか、つまり、同じ大きさの振幅(または二乗平均平方根値)を有するかどうかをチェックするように構成される。なお、電圧測定装置7および非対称検出器8の実施形態では、両方の電圧が正確に同一の大きさを有することは必須ではなく、両方の電圧が予め規定(事前定義)された固定比率(一定比率)を有するように構成されてもよいことに留意されたい。以下、簡単にするために、両方の電圧の大きさが等しくなるように意図されている場合のみが説明されるが、以下の説明は、必要に応じて変更を加えることで、他の事前定義された固定比率にも適用可能である。非対称検出器8の入力部81、82は、比較器83の正および負の入力部にそれぞれ接続される。比較器83は、2つの印加電圧をこれらの大きさに関して比較し、一方の電圧が他方よりも高いか否かを知らせる対応する出力信号を出力するように構成される。実施形態に応じて、比較器83の出力信号は、偏差に比例してもよいし、デジタルであってもよい。すなわち、比較器83の出力信号は、等価が存在するか否かに関する情報のみを提供する。
【0044】
この場合、比較器83の出力は、障害信号として直接機能することができ、例えば音響信号発生器、又は警告ホーン9形態の信号装置に適用(印加)され得る。
【0045】
制御動作中、対称分圧器73によって上側接続部78および下側接続部79において出力される電圧は、
図5にも示されているように、大きさが等しい。
図5において、曲線Iは、上側接続部78に存在する電圧U
Hのプロファイルを示し、曲線IIは、下側接続部79に存在する電圧U
Lのプロファイルを示す。図示の例では、障害状況が存在しない条件、特に、電気外科器具16のライン(接続ケーブル)15、15’の領域、又は、患者99及びその支持体(手術台)98に地絡がない条件において、2つの電圧は、大きさが等しく、インバータ3によって出力される電圧V1の半分に対応する。比較器83は、電圧の大きさが等しく、障害信号を出力しないことを確認する。
【0046】
障害状況が存在する場合、すなわち、例えば、患者99の身体の一部分が接地された要素(接地された金属部分)に接触する場合などは、状況は異なる。この場合、接地に対する寄生インピーダンス97が形成され、寄生インピーダンス97を介して漏れ電流が流れる。したがって、電圧測定装置7によって確認される上側接続部78および下側接続部79における電圧は、もはや大きさが等しくなくなる。
図6に示すように、ライン41の電圧、すなわち上側接続部の電圧は、漏れ電流のせいで低下する。結果として、曲線Iで表されるU
Hの電圧プロファイルは、ゼロラインに近づいていく。対照的に、曲線IIによって表される下側接続部79における電圧U
Lは維持される。
図6から明らかなように、漏れ電流が発生すると、電圧の大きさは等しくならず、相当な差が生じる。このことは、非対称検出器8の比較器83によって確認される。非対称検出器8(比較器83)は、警告ホーン9に送られる対応する障害信号を出力し、これにより、漏れ電流の存在について容易に知覚可能な警告信号を外科医に提供する。同時に、障害信号は、電気外科発電機1の動作コントローラ10に接続されてもよく、これにより、電気外科発電機1は、例えば、インバータ3の迅速なシャットダウン(停止)によって、検出された障害状況に反応することができる。
【0047】
わずかな偏差の場合にはまだ障害信号が始動されないようにすることが意図される場合、閾値切換部(閾値スイッチ)として、シュミットトリガ85が設けられてもよい。シュミットトリガ85は、調整可能な閾値(閾値信号)85’を有する。このようにして、障害信号が始動される前に、上側接続部78と下側接続部79との電圧差について許容される大きさを設定することが可能である。
【0048】
便宜上、極性検出器87がさらに設けられる。極性検出器87の入力部は比較器83に接続されている。したがって、比較器83の結果からの信号を使用することで、漏れ電流がアクティブ電極を有する上側ライン41から離れて流れているのか、若しくは接続ライン(接続ケーブル)15から離れて流れているのか(いわゆる「AE」障害)を確認したり、あるいは、漏れ電流がニュートラル電極を有する下側ライン42から離れて流れているのか、若しくは接続ライン(接続ケーブル)15’ から離れて流れているのか(いわゆる「NE」障害)を確認したりすることができる。これに応じて、極性検出器87は、信号灯(ディスプレイ)89、89’を駆動し、AE障害またはNE障害の存在を適宜知らせる。
【0049】
図4aおよび
図4bに、代替実施形態として、非対称検出器8の変形例がそれぞれ示されている。
図4aに係る変形例の場合、2つのADコンバータ(アナログ/デジタル変換器)84、84’が設けられる。上側接続部78は、ADコンバータ84に接続され、該ADコンバータ84は、接続ライン(接続ケーブル)15におけるアクティブ電極の電圧のための電圧信号を、対応する第1のデジタル信号に変換する。下側接続部79は、ADコンバータ84’に接続され、該ADコンバータ84’は、ライン(接続ケーブル)15’に存在するようなニュートラル電極の電圧のための電圧信号を、対応するデジタル信号に変換する。これらの2つのデジタル信号は、差要素86の入力部に印加される。差要素86は、デジタル技術、例えばマイクロプロセッサ技術を使用して構成される。2つのデジタル変換された電圧信号間の差の大きさを確立するためのチェックが行われる。当該差の大きさが同様にデジタル的に調整可能な閾値(
図4aには図示せず)を超えると、差要素86の出力が活性化される。差要素86の出力は、好ましくは音響の警告装置(警告ホーン)9に接続するための出力と、ディスプレイ89、89’が接続される2つのさらなる出力とを有する。ディスプレイ89、89’は、漏れ電流がアクティブ電極「AE」に割り当てられるべきか、若しくはニュートラル電極「NE」に割り当てられるべきかを示す。
【0050】
図4bは、簡素化した変形例を示している。この変形例において、上側接続部78における電圧および下側接続部79における電圧のための分圧器73からもたらされる信号は、例えばコンパレータ回路など、統合された差形成ユニット88を有するシュミットトリガ85に印加される。ここでも、
図3のシュミットトリガ85の場合のように、シュミットトリガのスイッチング閾値は、調整可能な閾値信号85’によって調整され得る。
【0051】
このようにして、本発明によれば、追加の費用をほとんどかけることなく、漏れ電流が発生するかどうかの確実な検出が可能になる。さらに、本発明によれば、ほとんど費用をかけずに、極性、すなわち前記漏れ電流がアクティブ電極「AE」またはニュートラル電極「NE」のいずれで発生するかを確認することができる。
【0052】
警告ホーン9に加えて、非対称検出器8によって出力される障害信号は、動作コントローラ10と相互作用する別個の装置80に印加されてもよい。当該装置80は、非対称検出器8が漏れ電流の発生を検出した場合に、漏れ電流の大きさを確認するように適切に構成されている。このことは、例えば、動作コントローラ10による次の手順でなされ得る。とにかくそこに存在し、測定センサ(電流センサ)18から生じるような出力ラインの電流の測定値に基づいて、前記装置80は、非対称検出器8による漏れ電流の検出の直前と直後の電流出力全体の電流測定値を相互に比較し、これらを必要に応じてディスプレイ装置を介して出力する。