(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】通流部材及び反応容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20240711BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240711BHJP
B01J 8/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N1/10 N
G01N1/00 101G
B01J8/06
(21)【出願番号】P 2022206237
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 直哉
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-285367(JP,A)
【文献】特開2002-263477(JP,A)
【文献】特開平06-086928(JP,A)
【文献】実開平01-065639(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0079563(US,A1)
【文献】特開2007-161709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
G01N 1/00
B01J 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された原料液を触媒層を通過させて反応液として流出させる反応容器を、第1反応部及び第2反応部と共に構成する通流部材において、
第1触媒層が内部に設けられ、前記第1触媒層に上方から前記原料液を供給するための第1供給口及び前記第1触媒層を流下した前記原料液から生じる反応液を下方に流出させる第1流出口を備える前記第1反応部と、第2触媒層が内部に設けられ、前記第2触媒層に上方から前記反応液を供給するための第2供給口及び当該第2触媒層を流下した前記反応液を外部に流出させるための第2流出口を備え、前記第1反応部の下方に設けられる前記第2反応部と、の間に設けられ、
前記第1反応部内から前記第2反応部内へ向けて前記反応液を流下させる流路を形成する流路形成部と、
前記反応液を前記流路の外側に取り出すための液取り出し部と、
を備え、
当該液取り出し部は、前記流路を流下する前記反応液の一部を受け止める液受け部と、
前記液受け部から前記反応液を前記流路の外側に取り出すために、前記流路形成部に設けられる取り出し口と、を有する通流部材。
【請求項2】
前記取り出し口を開閉する開閉部を備える請求項1記載の通流部材。
【請求項3】
流路形成部には、一端側が前記流路における前記液受け部よりも上方の位置に開口し、他端側が前記流路の外側に開口して前記取り出し口を形成する側管が設けられ、
前記開閉部は、前記側管に設けられるバルブである請求項2記載の通流部材。
【請求項4】
前記流路の形成方向が鉛直向きの状態で、
前記側管は、前記流路の外側から当該流路へ向かうにつれて下るように傾斜する請求項3記載の通流部材。
【請求項5】
前記液受け部は、前記原料液を貯留する凹部を形成する請求項1記載の通流部材。
【請求項6】
前記凹部よりも上方に、前記流路の一部を塞ぐ閉塞部が設けられ、
前記閉塞部は、前記流路の形成方向に見て当該凹部から外れた位置に設けられる請求項5記載の通流部材。
【請求項7】
前記流路形成部には前記流路の外部から計測機器を装着するための装着部が設けられる請求項1記載の通流部材。
【請求項8】
前記計測機器は温度計であり、
前記装着部は前記温度計を前記流路の外部から差し込んで当該流路に配置するために、前記流路と当該流路の外側とを接続する接続孔である請求項7記載の通流部材。
【請求項9】
供給された原料液を触媒層を通過させて反応液として流出させる反応容器において、
第1触媒層が内部に設けられ、前記第1触媒層に上方から前記原料液を供給するための第1供給口及び前記第1触媒層を流下した前記原料液から生じる反応液を下方に流出させる第1流出口を備える第1反応部と、
第2触媒層が内部に設けられ、前記第2触媒層に上方から前記反応液を供給するための第2供給口及び当該第2触媒層を流下した前記反応液を外部に流出させるための第2流出口を備え、前記第1反応部の下方に設けられる第2反応部と、
前記第1反応部と前記第2反応部との間に設けられ、前記第1反応部内から前記第2供給口へ向けて前記反応液を流下させるための流路を形成する流路形成部と、前記反応液を前記流路の外側に取り出すための液取り出し部と、を備える通流部材と、
を備え、
当該液取り出し部は、前記流路を流下する前記反応液の一部を受け止める液受け部と、
前記液受け部から前記反応液を前記流路の外側に取り出すために、前記流路形成部に設けられる取り出し口と、を有する反応容器。
【請求項10】
前記第1反応部と、当該第1反応部の下方に接続される前記流路形成部との組が複数設けられると共に、当該組が縦方向に互いに接続されて形成される複合体の下方に前記第2反応部が接続され、
前記複合体における上側から2段目以降の組の前記第1反応部には、前記原料液の代わりに前記反応液が供給される請求項
9記載の反応容器。
【請求項11】
前記第1反応部、前記第2反応部、前記流路形成部は各々筒体であり、互いに連接され、
前記流路形成部の上端部には、第1反応部の下端部に形成される下部側フランジに接続される第1フランジが設けられ、
前記流路形成部の下端部には、第1反応部の上端部あるいは第2反応部の上端部に形成される上部側フランジに接続される第2フランジが設けられる請求項
10記載の反応容器。
【請求項12】
前記下部側フランジと前記第1フランジとの間、前記上部側フランジと前記第2フランジとの間にはガスケットが設けられ、
前記ガスケットには前記流路と、前記第1反応部内または前記第2反応部内と、を仕切るようにメッシュが設けられる請求項11記載の反応容器。
【請求項13】
前記反応液の通流方向において、
前記第1反応部の前記第1触媒層を収容する第1流路の長さは、
前記第2反応部の前記第2触媒層を収容する第2流路の長さよりも小さい請求項
9記載の反応容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された原料液を、触媒層を通過させることで反応液として流出させる反応容器を構成する通流部材、及び反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造用の装置を設計するにあたり、医薬品原料を含む原料液について、触媒の存在下での反応速度を取得するための試験が行われる。この試験は例えば、触媒層が内部に充填された反応容器であるカラムと、当該カラムへの原料液の供給機構と、を備える試験装置を用いて行う。試験では例えば上記のカラムは内部の流路が鉛直方向に伸びる姿勢とされる。そして、供給機構によってカラムの上方から原料液が供給される。この原料液は触媒層に接して反応し、反応液としてカラムの下方から流出する。この原料液の供給に並行して、カラム内の温度調整が行われる。そして、カラム内が定常状態とされた際の反応液がサンプリングされる。上記のカラム内の温度調整は、例えば加温・冷却装置内にカラムが配置されることで行われる。
【0003】
この試験についてさらに詳しく述べると、上記のカラムとしては原料液の通過する時間が互いに異なるものが多数用意される。即ち、用意される各カラム間では、原料液の滞留時間(原料液についての触媒の存在下での反応時間でもある)が互いに異なる。具体的には例えば流路径が同じで、且つ長さが互いに異なるカラムが用意される。作業者は試験装置にてカラムを順次交換し、その交換の度に上記したサンプリングが行われる。そして分析装置を用いて、サンプリングされた各反応液中に残留している医薬品原料の濃度が検出され、各反応液についてのカラム内における滞留時間と検出された医薬品原料の濃度とに基づいて、上記した反応速度が算出される。
【0004】
上記した試験による反応速度の取得は、作業者によるカラムの交換作業を行うこと、及びカラムの交換の度にカラム内が定常状態になるまで待つ必要が有ることから、手間がかかる。特許文献1では、2つの流体が供給される混合器と、混合器を通過した流体が流通する反応管と、混合器の前後の流路で流体の温度を測定する複数の温度測定部と、を備え、各温度測定部により測定される温度に基づいて流体の反応状態を示す反応パラメータを推定する反応解析システムが示されている。しかし当該システムの構成は、原料液と触媒層とを反応させる上記の試験装置の構成とは異なるものであって、既述した問題を解決できる技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、原料液を反応容器内の触媒層を通過させて反応液を得て分析を行うにあたり、反応時間が各々異なる反応液の分析を容易に行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
通流部材である本発明(第1発明)は、供給された原料液を触媒層を通過させて反応液として流出させる反応容器を、第1反応部及び第2反応部と共に構成する通流部材において、
第1触媒層が内部に設けられ、前記第1触媒層に上方から前記原料液を供給するための第1供給口及び前記第1触媒層を流下した前記原料液から生じる反応液を下方に流出させる第1流出口を備える前記第1反応部と、第2触媒層が内部に設けられ、前記第2触媒層に上方から前記反応液を供給するための第2供給口及び当該第2触媒層を流下した前記反応液を外部に流出させるための第2流出口を備え、前記第1反応部の下方に設けられる前記第2反応部と、の間に設けられ、
前記第1反応部内から前記第2反応部内へ向けて前記反応液を流下させる流路を形成する流路形成部と、
前記反応液を前記流路の外側に取り出すための液取り出し部と、
を備え、
前記液取り出し部は、前記流路を流下する前記反応液の一部を受け止める液受け部と、
前記液受け部から前記反応液を前記流路の外側に取り出すために、前記流路形成部に設けられる取り出し口と、を有する。
【0008】
第2発明は、前記取り出し口を開閉する開閉部を備える第1発明の通流部材である。
第3発明は、流路形成部には、一端側が前記流路における前記液受け部よりも上方の位置に開口し、他端側が前記流路の外側に開口して前記取り出し口を形成する側管が設けられ、
前記開閉部は、前記側管に設けられるバルブである第1または第2発明の通流部材である。
【0009】
第4発明は、前記流路の形成方向が鉛直向きの状態で、
前記側管は、前記流路の外側から当該流路へ向かうにつれて下るように傾斜する第3発明の通流部材である。
第5発明は、前記液受け部は、前記原料液を貯留する凹部を形成する第1ないし第4発明のうちいずれか一つの発明の通流部材である。
第6発明は、前記凹部よりも上方に、前記流路の一部を塞ぐ閉塞部が設けられ、
前記閉塞部は、前記流路の形成方向に見て当該凹部から外れた位置に設けられる第5発明の通流部材である。
【0010】
第7発明は、前記流路形成部には前記流路の外側から計測機器を装着するための装着部が設けられる第1ないし第6発明のうちいずれか一の発明の通流部材である。
第8発明は、前記計測機器は温度計であり、
前記装着部は前記温度計を前記流路の外部から差し込んで当該流路に配置するために、前記流路と当該流路の外側とを接続する接続孔である第7発明の通流部材である。
【0011】
反応容器である本発明(第9発明)は、
供給された原料液を触媒層を通過させて反応液として流出させる反応容器において、
第1触媒層が内部に設けられ、前記第1触媒層に上方から前記原料液を供給するための第1供給口及び前記第1触媒層を流下した前記原料液から生じる反応液を下方に流出させる第1流出口を備える第1反応部と、
第2触媒層が内部に設けられ、前記第2触媒層に上方から前記反応液を供給するための第2供給口及び当該第2触媒層を流下した前記反応液を外部に流出させるための第2流出口を備え、前記第1反応部の下方に設けられる第2反応部と、
前記第1反応部と前記第2反応部との間に設けられ、前記第1反応部内から前記第2供給口へ向けて前記反応液を流下させるための流路を形成する流路形成部と、前記反応液を前記流路の外側に取り出すための液取り出し部と、を備える通流部材と、
を備え、
前記液取り出し部は、前記流路を流下する前記反応液の一部を受け止める液受け部と、
前記液受け部から前記反応液を前記流路の外側に取り出すために、前記流路形成部に設けられる取り出し口と、を有する反応容器である。
【0012】
第10発明は、前記第1反応部と、当該第1反応部の下方に接続される前記流路形成部との組が複数設けられると共に、当該組が縦方向に互いに接続されて形成される複合体の下方に前記第2反応部が接続され、
前記複合体における上側から2段目以降の組の前記第1反応部には、前記原料液の代わりに前記反応液が供給される第9発明の反応容器である。
【0013】
第11発明は、前記第1反応部、前記第2反応部、前記流路形成部は各々筒体であり、互いに連接され、
前記流路形成部の上端部には、第1反応部の下端部に形成される下部側フランジに接続される第1フランジが設けられ、
前記流路形成部の下端部には、第1反応部の上端部あるいは第2反応部の上端部に形成される上部側フランジに接続される第2フランジが設けられる第9発明または第10発明の反応容器である。
第12発明は、前記下部側フランジと前記第1フランジとの間、前記上部側フランジと前記第2フランジとの間にはガスケットが設けられ、
前記ガスケットには前記流路と、前記第1反応部内または前記第2反応部内と、を仕切るようにメッシュが設けられる第11発明の反応容器である。
第13発明は、前記反応液の通流方向において、
前記第1反応部の前記第1触媒層を収容する第1流路の長さは、
前記第2反応部の前記第2触媒層を収容する第2流路の長さよりも小さい第9ないし12のいずれか一つの発明の反応容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原料液を反応容器内の触媒層を通過させて反応液を得て分析を行うにあたり、反応時間が各々異なる反応液の分析を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医薬品の製造のための触媒反応装置の構成図である。
【
図2】前記試験装置を構成する反応容器の縦断側面図である。
【
図3】前記反応容器を構成する通流部材の斜視図である。
【
図7】前記通流部材の他の例を示す縦断斜視図である。
【
図8】前記通流部材のさらに他の例を示す概略図である。
【
図9】前記通流部材の変形例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る一実施形態である反応容器2を含む触媒反応装置1について、
図1の構成図を参照して説明する。触媒反応装置1は背景技術の項目で説明した、医薬品製造を行うための試験装置である。この触媒反応装置1の構成の概要を述べると、触媒反応装置1を構成する反応容器2は、縦長の円筒状のカラムとして構成される。この反応容器2内の流路21には触媒が充填されることで触媒層30が形成されている。
【0017】
医薬品原料を含む原料液が、反応容器2の上側から当該反応容器2へ供給されて流路21を流下し、触媒層30を通過する。この触媒層30の通過中に、原料液中の医薬品原料は当該触媒層30の作用によって化学反応し、当該原料液は反応生成物を含む反応液として反応容器2の下部から流出する。本実施形態では反応容器2内には原料液の他にH2(水素)ガスが供給され、上記の化学反応として水素添加反応が行われる。なお、反応容器2内には、H2ガスの濃度調整用ガスであるN2(窒素)ガスも供給される。
【0018】
上記の触媒層30については流路21において、間隔を空けて4つ設けられている。見方によっては、反応容器2における触媒層が流路21の形成方向において4つに分割され、分割された各々が触媒層30を形成していると言える。そして触媒層30と触媒層30との間には、反応容器2外へと流下する反応液の一部を受け止めて保持する液受け部53が設けられている。
【0019】
このように触媒層30及び液受け部53が設けられることから、反応容器2の下部から流出した反応液、各液受け部53から取り出された反応液は、触媒層30に接触した時間(即ち、触媒層30を構成する触媒の存在下での反応時間)が互いに異なる。作業者はこれらの反応液をサンプリングし、残留する医薬品原料の濃度を検出することで、医薬品原料の水素添加反応の速度を算出することができる。後述するように反応容器2については、各液受け部53に保持された反応液を作業者が反応容器2の外部からサンプリングすることができるように構成されている。なお、液受け部53に保持される反応液の他に、反応容器2の下端から外部に流出した反応液もサンプリング対象である。
【0020】
ところで本明細書では触媒層30を通過した原料液について、反応液として記載する。補足して説明すると、例えば反応性が低い条件下で原料液が反応容器2内に供給されることによって、未反応の状態の原料液が液受け部53に保持されたり、反応容器2の下部から流出したりすることが考えられるが、その原料液についても反応液とする。つまり本明細書における反応液には、反応容器2に供給する前の原料液と同じ組成の液が含まれる。
【0021】
以下、触媒反応装置1の構成について具体的に説明する。触媒反応装置1は、処理液供給機構7とガス供給機構8と、を備えている。処理液供給機構7は、原料液供給管71、ポンプ72、バルブ73及びタンク74を備える。原料液供給管71の下流端は、反応容器2に接続されており、原料液供給管71の上流側に向けて、ポンプ72、バルブ73がこの順に介設されている。原料液供給管71の上流端にはタンク74が接続されており、当該タンク74には原料液が貯留されている。バルブ73が開かれた状態でポンプ72の動作により、原料液が所定の速度で反応容器2に供給される。
【0022】
ガス供給機構8は、ガス供給管81と、ガス供給管82、83、バルブ84、85、H2ガス貯留部86及びN2ガス貯留部87を備えている。ガス供給管81の下流端は、原料液供給管71における下流端とポンプ72との間の部位に接続されている。ガス供給管81の上流側は分岐して、ガス供給管82、83を形成している。ガス供給管82の上流端はバルブ84を介してH2ガス貯留部86に接続されており、ガス供給管83の上流端はバルブ85を介してN2ガス貯留部87に接続されている。H2ガス貯留部86及びN2ガス貯留部87は例えばガスボンベにより構成されている。ポンプ72による原料液の反応容器2への供給中に、バルブ84、85が開かれることで原料液供給管71にH2ガス及びN2ガスが供給される。それにより、原料液はH2ガス、N2ガスと共に反応容器2に供給される。
【0023】
反応容器2について、縦断側面図である
図2も参照して詳しく説明する。反応容器2は使用される際(即ち、原料液が供給される際)に、例えば背景技術の項目で説明したカラムと同様に、加温・冷却装置内に配置されることで加温または冷却が行われる。なお、加温を行う場合には、加温・冷却装置としては例えばオーブンを用いることができる。以降、反応容器2がそのように使用される際の状態であるものとして説明する。従って、反応容器2及び当該反応容器2を構成する各部材についての姿勢や向きについての説明は、反応容器2が使用される際における姿勢や向きについての説明である。
【0024】
反応容器2は、触媒層30を各々収容する4つの反応部3と、液受け部53を各々収容する3つの通流部材5と、を備える。これらの反応部3及び通流部材5の概略構成について述べる。反応部3は円筒体をなす管壁31を備える。この管壁31内が原料液あるいは反応液の流路32として構成され、当該流路32に触媒層30が設けられる。そして、通流部材5は円筒体をなす管壁51を備える。管壁51は流路形成部であり、当該管壁51内が反応液の流路52として構成され、当該流路52に液受け部53が設けられる。流路32、52は、例えば互いに同径である。
【0025】
4つの反応部3の管壁31及び3つの通流部材5の各管壁51が、平面視で各々の中心軸が揃うと共に鉛直方向に伸びるように互いに連接されることで、既述したように円筒状の反応容器2が構成されている。なお、この管壁31、51の接続により、反応部3の流路32と、通流部材5の流路52とは互いに接続され、上記した反応容器2の流路21を形成し、流路21の形成方向(流路32、52の形成方向でもある)は鉛直軸に沿う。反応部3と通流部材5とは鉛直方向に交互に配列されており、反応容器2の上端部及び下端部は、反応部3によって各々構成されている。従って3つの各通流部材5の各々は、反応部3に上方、下方から挟まれて設けられている。以降は説明の便宜上、反応部3については上方から3A、3B、3C、3D、通流部材5については上方から5A、5B、5Cとして、互いに区別して記載する場合が有る。
【0026】
続いて、反応部3について詳しく説明する。反応部3Aには、流路32の上側の開口を塞ぐ上蓋33が設けられる。原料液供給管71の下流端は当該上蓋33に接続され、上蓋33に設けられた貫通孔33Aを介して、原料液が反応容器2内に原料液が供給される。また反応部3Dには、流路32の下側の開口を塞ぐように下蓋34が設けられる。下蓋34には流出管35の上流端が接続され、下蓋34に設けられる貫通孔34Aを介して、反応液が流出管35に流出する。この流出した反応液が作業者によりサンプリングされて、上記の反応速度の算出に利用される。また、流出管35には温度計23が設けられ、流出管35内の温度が検出される。この温度計23については、通流部材5に設けられる温度計23と共に説明する。
【0027】
反応部3A、3Dに上蓋33、下蓋34が夫々設けられることを除いて、反応部3A~3Dは互いに同様に構成されている。それによって反応部3A~3Dの各々で反応液が同様に通流し、各所からサンプリングされる反応液について触媒層30に接している時間(反応時間)のみが異なるようにすることが図られている。各反応部3の流路32には、上端部から下端部に亘って触媒が充填されることで上記した触媒層30が形成され、原料液あるいは反応液は、この触媒層30の触媒同士の隙間を流下する。なお、上記したように上蓋33、下蓋34の有無の違いを除いて反応部3A~3Dは同様の構成であるため、この触媒層30の容積についても反応部3A~3Dで同じである。
【0028】
円筒体である管壁31の上端部、下端部は当該円筒体の外部へ向けて各々突出することで、フランジ37を形成している。反応部3Aの上側のフランジ37、反応部3Dの下側のフランジ37は、夫々上蓋33、下蓋34に接続される。それ以外の反応部3A~3Dの各フランジ37については、通流部材5に設けられる後述のフランジ63またはフランジ64に接続される。
【0029】
続いて通流部材5について、
図3の斜視図、
図4の縦断斜視図も参照して説明する。通流部材5については触媒層30が設けられないため医薬品原料の水素添加反応には寄与しないので、この通流部材5としては液受け部53により反応液を保持し、作業者によるサンプリングが行えればよい。そのため反応容器2の大型化が防止されるように、通流部材5は短管として構成されており、その筒長は反応部3の筒長よりも短い。
【0030】
液受け部53について説明する。液受け部53は、横壁54A、55A及び縦壁54B、55Bを備え、1つの凹部54と、2つの凹部55とを形成するように設けられている。凹部54、55は上方に向けて開口し、流路52において同じ高さに設けられている。凹部54、55間では形状が異なり、凹部54は、凹部55に左右から挟まれて位置する。なお凹部54、55の深さとしては、後に試験を行う手順で説明するように、反応液が供給され続けた際に凹部54、55内にて反応液の置換が起きるように、比較的小さく設定される。
【0031】
凹部54、55についてさらに説明すると、流路52を上下に区画するように水平板状の仕切りが設けられるとして、前後に伸びるスリット状の貫通孔が左右に間隔を空けて2つ形成されることで、この仕切りが3つに分割される。この分割された仕切りが凹部54、55の横壁54A、55Aをなし、横壁55A、54A、55Aの順で左右に並ぶ。そして横壁54Aの右端及び左端が鉛直に上方へと延伸されることで縦壁54Bを形成し、各縦壁54Bと管壁51とによって、凹部54の側壁が構成される。また、左側の横壁54Aの右端、右側の横壁54Aの左端が各々鉛直に上方へと延伸されることで縦壁54Bを形成する。縦壁54Bと管壁51とによって、凹部55の側壁が構成される。
【0032】
縦壁54Bと縦壁55Bとが、隙間56を介して対向する。流路52において一部の反応液は、凹部54、55へと落下し、当該凹部54、55にて溜められ、その溜まった反応液のうちの一部が凹部54、55から溢れて隙間56を介して下方へと流下する。流路52において他の一部の反応液は直接隙間56へ落下し、当該隙間56を介して下方へと流下する。
【0033】
また、通流部材5には管壁51を貫通する側管61が設けられている。従って、側管61の一端、他端は、流路52、流路52の外側に夫々開口する。この側管61は、液受け部53と共に、サンプリングを行うための液取り出し部を構成する。側管61は直管であり、管壁51の外側から流路52に向うにつれて下るように傾斜している。そして、側管61の一端は、流路52における液受け部53よりも上方の位置に開口している。側管61の管壁51の外側における部位は、凹部54、55から反応液を取り出してサンプリングするための取り出し口を形成し、当該部位にバルブ62が介設されている。作業者がバルブ62を開閉することで、この取り出し口が開閉される。反応容器2への原料液の供給中は反応容器2内に異物が混入しないようにバルブ62が閉鎖され、液受け部53からの反応液のサンプリングの際に、バルブ62が開放される。
【0034】
その液受け部53からのサンプリングについて説明すると、バルブ62を開いた状態で、作業者は反応容器2の外側から注射器22を側管61内に挿入させる。そして、注射針を凹部54あるいは凹部55に進入させて、反応液を吸引してサンプリングを行う。なお、注射針については凹部54、55に進入させることができるように、例えば
図2に示すような曲がったものを使用する。
【0035】
そのように上側が開放される凹部54、55内に注射器を進入させることを容易とするために、側管61については、既述したように流路52側が、流路52の外側に対して下方に位置するように傾斜して設けられる。また、このように側管61が傾斜することは、当該側管61内における反応液の貯留が防止されるという観点から好ましい。詳しく述べると、仮に側管61が水平であるか、流路52側よりも流路52の外側の方が下方に位置するように傾斜する場合には、流路52を通流する反応液が当該側管61に流入して溜まることになる。
【0036】
そのように反応液が溜まると、サンプリングのためにバルブ62を開いた際に溜まった反応液が側管61から反応容器2の外部へと流れ出てしまうので、サンプリング前にその反応液を器具により受け止めて除去する作業が必要になる。また、側管61の長さや傾斜角度によっては、反応容器2内が定常状態になる前に流路52に供給された反応液が側管61内にバルブ62を開放するまで残る。つまり、流路52に反応液が供給され続けることで、側管61における流路52側寄りでは新たな反応液が流入して置換がなされるとしても、流路52の外側寄りではこのような置換が起こらず、定常状態になる前に供給された反応液が滞留する。その場合はサンプリングのためのバルブ62の解放後においても、定常状態になる前の反応液が側管61内に付着して残り、注射器22を側管61内に挿入した際に、注射針に付着して凹部54、55内に持ち込まれ、凹部54、55内の反応液と共に吸引されてしまうおそれがある。以上のように、作業の手間を削減する観点、及び反応液における医薬品原料の濃度の検出精度を高める観点から、側管61については、流路52側が、流路52の外側に対して下方に位置するように傾斜させて、反応液の貯留を防止することが好ましい。
【0037】
円筒体である管壁51の上端部、下端部は当該円筒体の外部へ向けて夫々突出することで、フランジ63、64を形成する。第1フランジであるフランジ63、第2フランジであるフランジ64には、流路52の開口を囲むように当該開口に沿った円環状の溝65が各々形成されており、この溝65には円環状のガスケット66が設けられる。ガスケット66にはメッシュ67が設けられており、当該メッシュ67は、ガスケット66に囲まれる円形領域を上下に仕切るように張られている。なお、メッシュ67はガスケット66に接続されず、ガスケット66から離れた構成であってもよい。
【0038】
ガスケット66を介して通流部材5のフランジ63、64と、反応部3A~3Dのフランジ37とが接続され、反応部3と通流部材5との間からの反応液の漏洩が防止される。このようにガスケット66、各フランジ63、64、37が配置されるので、メッシュ67は、反応部3の流路32(即ち反応部3内)と、通流部材5の流路52と、を仕切る。メッシュ67により、触媒層30を構成する触媒が、当該触媒が設けられる反応部3とは別の反応部3や通流部材5に移動してしまうことが防止される。
【0039】
また、通流部材5の管壁51には貫通孔68が設けられている。この貫通孔68は、流路52と流路52の外側とを接続する接続孔であって、当該貫通孔68を介して管壁51の外側から流路52に温度計23が差し込まれる。従って、貫通孔68は計測機器である温度計23を通流部材5に取り付けるための装着部をなす。温度計23により、流路52の温度が検出される。従って、通流部材5A~5Cの温度計23と、流出管35の温度計23とを合わせて、計4つの温度計が装置に設けられる。反応部3A~3Dに対応するように温度計23は設けられており、作業者は反応部3A~3Dの出口の温度を対応する温度計23の検出温度によって各々監視し、反応容器2内が定常状態であるか否かを判断することができる。任意の反応部3の下方で直近の温度計23が、当該反応部3の出口に対応する温度計である。従って反応部3A、3B、3C、3Dの出口に、通流部材5A、5B、5C、流出管35の温度計23が夫々対応する。
【0040】
各温度計23については反応部3の流路32に設けてもよいが、その場合は温度計23が触媒層30に進入することになる。そのため温度計23の周辺領域での反応液の流れが、流路32の他の領域での反応液の流れと異なるものとなり、それに起因して反応部3での反応時間が予定された時間と異なってしまうことを招き、反応速度の算出結果の精度が低下することが懸念される。そのため、触媒層30が設けられていない通流部材5に温度計23を設ける構成は、反応速度の算出を精度高く行う観点から好ましい。
【0041】
ところで反応部3と、当該反応部3の下方に隣接して設けられる通流部材5とを組とする。つまり反応部3A及び通流部材5A、反応部3B及び通流部材5B、反応部3C及び通流部材5Cが各々組であり、縦方向として鉛直方向に隣接していることになる。この3つの互いに隣接する組をまとめて複合体とすると、反応容器2はこの複合体の下方に隣接して反応部3Dが設けられる構成である。
【0042】
組を形成する反応部3A~3Cは第1反応部に相当し、これら反応部3A~3Cの流路32の上端部、下端部は、夫々第1供給口、第1流出口として構成される。組をなさない反応部3Dは第2反応部に相当し、当該反応部3Dの流路32の上端部、下端部は、夫々第2供給口、第2流出口として構成される。上記のように触媒層30に接した原料液を反応液とするため、上から1段目の組をなす反応部3Aの第1供給口には原料液が供給され、上から2段目以降の組をなす第1反応部である反応部3B、3C及び第2反応部である反応部3Dには、前記反応液が供給される。そして、反応部3Dの第2流出口は、反応液を反応容器2の外部(流出管35)へ流出させる。反応部3A~3Cに設けられる触媒層30は第1触媒層、反応部3Dに設けられる触媒層は第2触媒層であり、反応部3A~3Cの流路32は第1流路、反応部3Dの流路32は第2流路に相当する。なお、反応部3A~3Cの下方側のフランジ37は下部側フランジに該当する。第1反応部(反応部3A~3C)、第2反応部(反応部3D)の上方側のフランジ37は、上部側フランジに該当する。
【0043】
触媒反応装置1を用いた試験の手順を説明する。反応容器2を加温・冷却装置内に格納し、当該加温・冷却装置内が所定の温度になるように調整する。そして、処理液供給機構7、ガス供給機構8から反応容器2内へ原料液の供給と、H2ガス及びN2ガスの供給と、を行う。原料液は反応部3の触媒層30を通過して反応液となり、当該反応液は反応容器2内の流路21を流下して、反応容器2から流出管35へと流出する。
【0044】
このように反応容器2内で反応液が通流する間、通流部材5においては、液受け部53の凹部54、55に反応液が供給されて貯留される。原料液が反応容器2に供給され続けることにより、凹部54、55に溜まった反応液のうちの一部は当該凹部54、55から溢れ出て、凹部54、55間の隙間56を介して下方の反応部3へと流下する。凹部54、55の深さが比較的小さいことにより、上記のように溢れる反応液としては、凹部54、55における底部側に位置していた反応液も含まれる。即ち、凹部54、55においては反応液が貯留された状態が保たれつつ、貯留される反応液は新たなものに置換され続ける。
【0045】
原料液及び各ガスの反応容器2への供給を開始してから所定の時間が経過し、作業者が各温度計23の検出温度が適正な温度になっていることを確認したら、反応容器2内が定常状態になったものとして、作業者は原料液及び各ガスの反応容器2への供給を停止する。そして、作業者は、流出管35に流出した反応液を任意の手法でサンプリングし、また、既述した手法で通流部材5A~5Cの液受け部53から反応液をサンプリングする。なお反応容器2への原料液の供給停止後も、通流部材5A~5Cの流路42には上方から反応液が落下する可能性が有るので、液受け部53からのサンプリングは速やかに行うものとする。そしてサンプリングした各反応液中の医薬品原料の濃度を分析装置により検出する。
【0046】
反応部3A~3D間で触媒層30の容積が同じであるため、流出管35からサンプリングした反応液の反応時間をXとすると、反応液が通過する触媒層30の数の違いにより、通流部材5A、5B、5Cからサンプリングした反応液の反応時間については夫々1/4X、2/4X、3/4Xとすることができる。これらの4つの互いに異なる反応時間と、サンプリングした各反応液から検出した医薬品原料の濃度とから、医薬品原料の水素添加反応の速度が決定される。
【0047】
以上に述べたように触媒反応装置1では、反応時間が互いに異なる4つの反応液のサンプルを、背景技術の項目で述べた反応容器2の交換を行うことなく、容易に取得することができる。従って、上記の水素添加反応の速度の決定に要する手間が削減される。ところで仮にサンプリングを行うための液取り出し部(液受け部53及び側管61)が通流部材5に設けられる代わりに反応部3に設けられるものとする。その場合、既述の温度計23を反応部3に設けた場合と同様に触媒層30での反応液の流れにばらつきが生じ、その結果として反応速度の算出精度が低下するおそれが有る。従って、反応容器2については、通流部材5に液受け部53及び側管61が設けられる構成とされていることで4つの反応液のサンプルを容易に取得できる効果の他に、取得される反応液のサンプルから反応速度の算出を精度高く行うことができるという効果が奏される。
【0048】
なお、反応容器2の流路21は鉛直軸に沿うものとして述べたが、反応液の流下、液受け部53における貯留に支障が無い範囲で、鉛直軸に対して傾いていてもよい。本発明の反応容器を構成する通流部材5の個数、反応部3の個数としては既述の例に限られない。具体的には、上記した通流部材5及び反応部3の組の数について任意の数とすることができる。例えばこの組の数については複数であることに限られず、1つでもよい。つまり、1つの通流部材5及び当該通流部材5を挟む2つの反応部3のみから反応容器が形成されていてもよい。また、反応容器2は円筒体をなすことに限られず、角筒体であってもよい。
【0049】
また、本発明の反応容器の下端部としては、反応部3により構成することには限られず、通流部材5により構成してもよい。具体的には、例えば既述した反応容器2の反応部3Dに下方から隣接するように通流部材5Dを設ける。そして、流出管35を接続した下蓋34については、反応部3Dの下部に設ける代わりに、通流部材5Dの下部に設ける。そして流出管35からの反応液のサンプリングに代えて、通流部材5Dからサンプリングを行うようにする。
【0050】
また、各反応部3についての触媒層30の容積が互いに異なる構成としてもよい。そのような構成として、例えば各反応部3間で流路32について、径の大きさが同じで且つ、反応液の通流方向における長さが互いに異なるようにする。具体的に
図5の模式図では、その構成の一例として、当該流路32の長さについて3A<3B<3C<3Dとしている。従って
図5に示す例では、各第1反応部の第1流路と、第2反応部の第2流路との間では、第1流路の方が長さが短く、且つ複数の第1反応部の第1流路間では上方側の第1流路ほど長さが短いという構成になっている。なお、このように各流路32が構成されることで、流路32の形成方向における触媒層30の長さも3A<3B<3C<3Dである。反応初期では反応後期に比べて反応の進行速度が大きい(即ち、医薬品原料についての濃度変化が大きい)場合が有る。その場合に本構成によって、取得される各サンプルについて異なる濃度の原料が含まれるようにし、実施する試験の回数を少なくすることができる。
【0051】
試験を行うにあたって、反応容器2は加温・冷却装置内に配置されることには限られない。加温・冷却装置内に配置されない場合に反応容器2の温度調整を行うために、例えば
図6で示すように反応部3にジャケット38を設けることができる。ジャケット38は上側のフランジ37と下側のフランジ37との間において管壁31を囲んで設けられており、ジャケット38内には流体の流路が形成されている。当該流路の上流端、下流端には流体の供給管、流体の排出管が夫々接続されており、流体の供給源から所定の温度に調整された流体が供給管を介して、ジャケット38の流路に供給され、排出管より排出される。図中のジャケット38の近傍の矢印は、その流体の通流方向を示す。反応容器2への原料液の供給中にそのような流体の通流がなされることで、反応部3の流路32の温度を調整することができる。なお、ジャケット38内の流路、流体の供給源、供給管、排出管についての図示は省略している。
【0052】
以下、通流部材5の変形例について説明する。通流部材5に設けられる液受け部53の形状は任意であり、上記した凹部54、55を形成することに限られない。例えば、流路52に液受け部として水平板を設け、原料液の供給終了後は、作業者がこの水平板上に残る液滴を吸引してサンプリングを行うようにしてもよい。しかし、十分な量の反応液をサンプリング可能とするために、液受け部については凹部を形成するものであることが好ましい。また、側管61が通流部材5の管壁51を貫通する構成としたが、このような構成とすることにも限られない。例えば、管壁51に反応液の取り出し口をなす貫通孔が形成され、その貫通孔が、管壁51の外側から着脱自在の蓋によって塞がれる構成であってもよい。
【0053】
そして、通流部材5については、
図7の縦断側面図に示す閉塞部57が設けられていてもよい。この閉塞部57は、流路52において凹部54、55よりも上方の位置に、前後に伸びて流路52の一部を塞ぐように2つ設けられており、これらの閉塞部57は、左右に互いに離れて同じ高さに位置している。2つの閉塞部57は各々水平板状に形成されており、各閉塞部57の前端、後端は各々管壁51に接して支持されている。流路52の形成方向(鉛直方向)に見ると、閉塞部57は直下の隙間56全体を被覆する。従って、閉塞部57は前記流路の形成方向に見て凹部54、55から外れた位置に設けられ、さらに具体的には液受け部53が設けられない領域全体に亘って設けられている。そして、閉塞部57の左右の一端、他端は、凹部54の端、凹部55の端に夫々重なって位置している。流路52において反応液は、凹部54、55へと直接流下するか、あるいは閉塞部57上に流下した後に閉塞部57の端へと伝わってから凹部54、55へと流下する。
【0054】
閉塞部57を設ける理由を述べる。反応容器2は種々の反応に用いることができ、また、原料液としては様々な種類のものを用いることができる。そして、使用する原料液及び試験を行う環境によっては、原料液について、触媒層30に接することでの反応と共に、触媒層30に接しない状態での無触媒熱分解反応が進行する。そのように無触媒熱分解反応が進行する場合に閉塞部57が設けられないとすると、液受け部53に流下して凹部54、55で滞留してから流路52の隙間56に供給された反応液と、隙間56に直接流下した反応液との間で、無触媒熱分解反応の進行度が異なる。つまり、各通流部材5で反応が一様に進行しない反応液同士が混ざって下方に供給されることになる。そうなると、算出される反応速度の精度が低下するおそれが有る。ただし、このような無触媒熱分解反応が進行しない場合には、
図4等で示すように閉塞部57を設けなくてよい。なお、閉塞部57については水平板とすることに限られず、傾斜板等の任意の形状とすることができる。
【0055】
ところで、通流部材5の管壁51に外側から反応液の成分の分析を行うインライン式の分析装置が接続される構成としてもよい。
図8の概略図を用いて説明する。この分析装置は例えば、透過光、散乱光を利用することで、反応液中の医薬品原料の濃度を光学的に取得するものであって、光源91と、透過光及び散乱光を受光する検出器92と、を備えるものとする。管壁51の側壁には短管である枝管93、94が接続され、互いに対向するように流路52に開口している。これらの枝管93、94について、流路52側とは逆側の端部にフランジ95が形成されている。一方のフランジ95、他方のフランジ95に対して、ネジ等の固定具を利用して光源91、検出器92が夫々接続されている。従ってフランジ95は、分析装置を流路52に外側から管壁51に取り付けるための取り付け部をなす。以上の構成により、光源91から流路52を介して検出器92へ光(図中に点線の矢印で表示)が照射されることで、流路52を流下する反応液の成分の分析が行われる。
【0056】
分析装置がプローブ型であり、温度計23と同様に外側から貫通孔68を介してプローブが流路52に差し込まれ、吸光度等が測定される構成であって、その測定結果から医薬品濃度の検出が行われるとする。そのように分析装置が構成される場合、プローブが差し込まれる貫通孔68が取り付け部をなす。
【0057】
このように、反応容器2には通流部材5として触媒層30が設けられない領域が形成され、その領域が、液受け部53及び側管61からなる液取り出し部、あるいは分析装置を設ける領域として利用される。液取り出し部が設けられるにあたっては、上記のように液取り出し部が触媒層30での反応液の流れに影響を与えてしまうことが防止されることになる。一方、
図8に示す分析装置を設けるにあたっては、触媒層30による光路の遮蔽によって分析が不可になってしまうことが防止されることになる。そして、既述したように通流部材5は、反応容器2内の状態を監視する計測機器である温度計65を設置する領域としても利用され、触媒層30の液流れに影響を与えることが防止される。この計測機器としては温度計65に限られず、例えば流路52の圧力を監視するための圧力計であってもよい。当該圧力計については、温度計65を装着する場合と同様に管壁51に貫通孔68を設けて、管壁51の外側からこの貫通孔68に差し込むことで設ければよい。なお、温度計65や圧力計は、通流部材5に液取り出し部が設けられる場合であっても、分析装置が設けられる場合であっても当該通流部材5に設けることができる。
【0058】
図9は、通流部材5のさらなる変形例である通流部材50を示す縦断側面図であり、この通流部材50は反応容器2において通流部材5の代わりに設けられるものとする。通流部材50について、通流部材5との差異点を中心に説明すると、流路52には横壁54A、55A及び縦壁54B、55Bが設けられておらず、凹部54、55が形成されていない。その代わりに、通流部材5の管壁51を貫通する流出用側管41が設けられている。流出用側管41は直管であり、管壁51の外側から流路52に向うにつれて上昇するように傾斜し、流路52において開口している。流路52に供給される反応液の一部は、流出用側管41の側方を通過して下方の反応部3へと流れ、反応液の他の一部は流出用側管41に流入することで反応容器2の外部へ流出する。従って、反応容器2に原料液を供給すると、流出管35の他に流出用側管41からも反応液が流出する。作業者は反応容器2内が定常状態になったら、流出管35、流出用側管41から流出する反応液を各々サンプリングする。
【0059】
このように流出用側管41は通流部材50において液受け部及び反応液の取り出し口を形成しており、受けた反応液を流路52内にて貯留せず、反応容器2の外部へと流出させる構成である。従って本発明における液受け部としては、流路52に反応液を貯留する構成であることに限られない。ただし、各反応部3を流れる反応液の量に差違が生じることになり、各反応部3における医薬品原料の反応性にばらつきが生じてしまうおそれが有る。つまり反応時間とそれ以外の要因とによって、サンプリングされる反応液間において残留する医薬品原料の濃度の差違が生じるおそれが有るので、液受け部としては試験の精度を高くするために、既述した液受け部53のように流路52にて反応液を貯留する構成とすることが好ましい。
【0060】
なお、流路52の外側において流出用側管41にバルブが介設される構成とし、反応容器2に原料液を供給する間はこのバルブを閉じて反応液を貯留し、サンプリング時にこのバルブを開放するようにしてもよい。しかし側管61に関する説明で述べたように、そのような構成とすると内部に溜まった反応液の置換が起こり難くなるおそれが有る。従って、反応容器2に設ける液受け部としては、液受け部53のように貯留された反応液を流路52に留める凹部を形成するものであることが好ましい。即ち、貯留された反応液が流路52に留まり、流路52の外側へは移動しないように構成することが好ましい。
【0061】
ところで水素添加反応を行う反応容器2を例に挙げて説明したが、反応容器2はそのような反応を行うことに限られず、触媒の存在下で複数種の液体同士を混合して化学反応させるものであってもよいし、触媒の存在下での熱分解反応を行うものであってもよい。さらに原料液として医薬品原料を含むものとして示したが、任意の化合物を含むものであってもよい。従って、本技術は医薬品製造分野への適用に限られるものではない。
【0062】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせ等がなされてもよい。
【符号の説明】
【0063】
2 反応容器
21 流路
3 反応部
30 触媒層
5 通流部材
51 管壁
52 流路
53 液受け部
61 側管