(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池、電池モジュール、電池パックおよび電気装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240711BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240711BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240711BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0587
H01M10/0567
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2022541903
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2021097528
(87)【国際公開番号】W WO2022252093
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】鄒 海林
(72)【発明者】
【氏名】陳 培培
(72)【発明者】
【氏名】彭 暢
(72)【発明者】
【氏名】梁 成都
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-158376(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111934027(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112234252(CN,A)
【文献】国際公開第2020/158223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極アセンブリおよび前記アセンブリを含浸するための電解液を含むリチウムイオン電池であって、
前記電極アセンブリは、負極シート、セパレーターおよび正極シートを含み、前記負極シート、前記セパレーターおよび前記正極シートは、捲回方向に沿って捲回構造に捲回され、前記捲回構造は、円弧状折り曲げ部を含み、
前記円弧状折り曲げ部は、少なくとも第1の折り曲げ部および第2の折り曲げ部を含み、
前記第1の折り曲げ部は、前記負極シートが捲回されてなる最内側円弧状折り曲げ部であり、前記第1の折り曲げ部は、負極集電体および当該負極集電体の少なくとも凸面に位置する負極材料層を含み、
前記第2の折り曲げ部は、前記第1の折り曲げ部の外側に位置し、かつ前記セパレーターを介して前記第1の折り曲げ部に隣接しており、前記第2の折り曲げ部は、正極集電体および当該正極集電体の少なくとも凹面に位置する正極材料層を含み、
前記リチウムイオン電池のコーナーリチウム析出係数をβとすると、βは下記式Iを満たし、かつ、0.015≦β≦0.95であり、
β=R/(R+L) 式I
(そのうち、Rは、前記第1の折り曲げ部の前記負極集電体の凸面の最小曲率半径であり、Lは、前記第1の折り曲げ部の前記負極集電体の凸面と前記第2の折り曲げ部の前記正極集電体の凹面との間の最も短い距離である。)
前記電解液は、フルオロスルホン酸塩
系物質を含み、かつ、
前記電解液における前記フルオロスルホン酸塩系物質の質量百分含有量w%の範囲は0.02%~25%であり、
前記電解液における前記フルオロスルホン酸塩
系物質の質量百分含有量w%と前記コーナーリチウム析出係数βとは、下記の式IIを満たす、
0.01≦w×β≦20 式II
リチウムイオン電池。
【請求項2】
0.02≦w×β≦5である請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
0.15≦β≦0.8である請求項1または2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記Rの範囲は2μm~5000μmである請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記Lの範囲は20μm~900μmである請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記フルオロスルホン酸塩の構造式は(FSO
3)
xM
x+(M
x+は、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、Mg
2+、Ca
2+、Ba
2+、Al
3+、Fe
2+、Fe
3+、Ni
2+およびNi
3+から選ばれる1種または2種以上である。)で
ある、
請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記電解液は、さらにフルオロエチレンカーボネートおよび/または1,3-プロパンスルトンを含み、電解液における前記フルオロエチレンカーボネートおよび/または1,3-プロパンスルトンの質量百分含有量が0.01%~15%である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記負極材料層の空隙率は20%~50%である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池を含む電池モジュール。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池または請求項
9に記載の電池モジュールから選ばれる1種以上を含む電池パック。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池、請求項
9に記載の電池モジュール、または、請求項
10に記載の電池パックから選ばれる1種以上を含む電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学電池分野に関し、特にリチウムイオン電池、電池モジュール、電池パックおよび電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、その動作電位が高く、寿命が長く、環境にやさしいという特徴から最も人気のあるエネルギー貯蔵システムとなり、現在、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、スマートグリッドなどの分野で広く用いられている。しかし、現在のリチウムイオン電池の航続能力は、より高いニーズを満たすことが困難であり、電気自動車の「航続距離不安」という問題を解消するために、より高いエネルギー密度を有するリチウムイオン電池の開発が急務となっている。
【0003】
しかしながら、捲回式構造のリチウムイオン電池では、設計された電池のエネルギー密度が高くなるにつれ、負極シートの捲回コーナーもリチウム析出現象が発生しやすくなる。リチウムデンドライトの生成が進むと、セパレーターが突き破られ、電池の短絡が起こり、電池の安全性能が低下する。
【0004】
このことから、捲回式電池のエネルギー密度向上とリチウム析出の防止とは背反するものであることが分かる。そこで、高いエネルギー密度を兼ね備え、かつリチウム析出を効果的に防止できるリチウムイオン電池の設計および開発が、急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、捲回式構造の電池のエネルギー密度を飛躍的に向上させることができるととともに、高エネルギー密度での負極シートのコーナーリチウム析出現象を防止でき、かつ、電池の電気化学的性能および安全性能を向上させることができるリチウムイオン電池を開発および設計することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願は、電極アセンブリおよび前記アセンブリを含浸するための電解液を含むリチウムイオン電池であって、
前記電極アセンブリは、負極シート、セパレーターおよび正極シートを含み、前記負極シート、前記セパレーターおよび前記正極シートは、捲回方向に沿って捲回構造に捲回され、前記捲回構造は、円弧状折り曲げ部を含み、
前記円弧状折り曲げ部は、少なくとも第1の折り曲げ部および第2の折り曲げ部を含み、
前記第1の折り曲げ部は、前記負極シートが捲回されてなる最内側円弧状折り曲げ部であり、前記第1の折り曲げ部は、負極集電体および当該負極集電体の少なくとも凸面に位置する負極材料層を含み、
前記第2の折り曲げ部は、前記第1の折り曲げ部の外側に位置し、かつ前記セパレーターを介して前記第1の折り曲げ部に隣接しており、前記第2の折り曲げ部は、正極集電体および当該正極集電体の少なくとも凹面に位置する正極材料層を含み、
前記リチウムイオン電池のコーナーリチウム析出係数をβとすると、βは下記式Iを満たし、かつ、0.015≦β≦0.95であり、
β=R/(R+L) 式I
(そのうち、Rは、前記第1の折り曲げ部の前記負極集電体の凸面の最小曲率半径であり、Lは、前記第1の折り曲げ部の前記負極集電体の凸面と前記第2の折り曲げ部の前記正極集電体の凹面との間の最も短い距離である。)
前記電解液は、フルオロスルホン酸塩系および/またはジフルオロリン酸塩系物質を含み、かつ、
前記電解液における前記フルオロスルホン酸塩系および/またはジフルオロリン酸塩系物質の質量百分含有量w%と前記コーナーリチウム析出係数βとは、下記の式IIを満たす、
0.01≦w×β≦20 式II
リチウムイオン電池を提供する。
【0007】
リチウムイオン電池のwとβが前述した条件を満たす場合、設計および開発されたリチウムイオン電池は、高エネルギー密度と、高エネルギー密度での負極凸面リチウム析出の抑制とを両立し、かつ、電池の電気化学的性能と安全性能を向上させることができる。
【0008】
本願に係るリチウムイオン電池においては、好ましくは0.02≦w×β≦5である。wとβが当該条件を満たす場合、電池のエネルギー密度がさらに増加し、かつ、負極凸面のリチウム析出状況を改善することができる。
【0009】
本願に係るリチウムイオン電池においては、好ましくは0.15≦β≦0.8である。βが所定範囲内に制御されている場合、電池のエネルギー密度および負極凸面リチウム析出をさらに改善することができる。
【0010】
本願に係るリチウムイオン電池において、Rの範囲は2μm~5000μmであり、任意に好ましくは50μm~500μmの範囲である。Rが所定範囲内に制御されている場合、電池のエネルギー密度および負極凸面リチウム析出をさらに改善することができる。
【0011】
本願に係るリチウムイオン電池において、Lの範囲は、20μm~900μmであり、任意に好ましくは50μm~500μmの範囲である。Lが所定範囲内に制御されている場合、電池のエネルギー密度、負極凸面リチウム析出および出力特性(比較的に低い電池内部抵抗)をさらに改善することができる。
【0012】
本願に係るリチウムイオン電池において、前記フルオロスルホン酸塩の構造式は、(FSO3)xMx+(Mx+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+およびNi3+から選ばれる1種または2種以上である。)である。
【0013】
前記ジフルオロリン酸塩の構造式は、(F2PO2)yMy+(My+はLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+およびNi3+から選ばれる1種または2種以上である。)である。
【0014】
本願に係るリチウムイオン電池において、前記電解液における前記フルオロスルホン酸塩系及び/またはジフルオロリン酸塩系物質の質量百分含有量w%の範囲は0.02%~25%であり、好ましくは0.02%~20%の範囲であり、任意により好ましくは0.05%~10%の範囲にあり、任意にさらに好ましくは0.1%~5%の範囲にある。wが所定範囲内に制御されている場合、電池のエネルギー密度、負極凸面リチウム析出および出力特性(比較的に低い電池内部抵抗)をさらに改善することができる。
【0015】
本願に係るリチウムイオン電池において、前記電解液は、好ましくはフルオロエチレンカーボネートおよび/または1,3-プロパンスルトンをさらに含み、電解液における前記フルオロエチレンカーボネートおよび/または1,3-プロパンスルトンの質量百分含有量が0.01%~15%であり、任意に0.05%~5%であり、さらに任意に0.1%~2%である。これにより、電池の常温サイクル性能および高温サイクル性能をさらに改善することができる。
【0016】
本願に係るリチウムイオン電池において、前記負極材料層の空隙率は20%~50%であり、より好ましくは30%~50%である。これにより、電池のエネルギー密度および負極凸面リチウム析出をさらに改善することができる。
【0017】
本願は、本願に係るリチウムイオン電池を含むことを特徴とする電池モジュールをさらに提供する。
【0018】
本願は、本願に係るリチウムイオン電池または本願に係る電池モジュールのうちの1種以上を含むことを特徴とする電池パックをさらに提供する。
【0019】
本願は、本願に係るリチウムイオン電池、本願に係る電池モジュールまたは本願に係る電池パックのうちの1種以上を含むことを特徴とする電気装置をさらに提供する。
【発明の効果】
【0020】
本願で得られるリチウムイオン電池によれば、電池エネルギー密度を向上させることができるだけでなく、高エネルギー密度電池のリチウム析出状況を改善することもできる。換言すれば、本願発明によれば、最内周負極凸面コーナーのリチウム析出が抑制された高エネルギー密度捲回式リチウムイオン電池が得られる。本願に係るリチウムイオン電池は、高エネルギー密度捲回式の構造であるが、上記特定の技術的特徴を備えることにより、最内周負極凸面コーナーリチウム析出を抑制することができ、これにより容量の損失を抑制し、リチウムイオン電池の安全性をより向上させることができる。
【0021】
ここで、上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示的なものであり、本願を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本願の1つの実施形態のリチウムイオン電池の電極アセンブリの円弧状折り曲げ部の概略図である。
【
図2】本願の1つの実施形態のリチウムイオン電池の概略図である。
【
図3】
図1に示す本願の1つの実施形態のリチウムイオン電池の分解図である。
【
図4】本願の1つの実施形態の電池モジュールの概略図である。
【
図5】本願の1つの実施形態の電池パックの概略図である。
【
図6】
図5に示す本願の1つの実施形態の電池パックの分解図である。
【
図7】本願の1つの実施形態のリチウムイオン電池を電源とする装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面と実施例を組み合わせて本発明をさらに説明する。
【0024】
以下、図面を参照しながら本願に係るリチウムイオン電池、電池モジュール、電池パックおよび装置の具体的な実施形態について適当に詳しく説明する。但し、詳細な説明の必要がない事項は省略する場合がある。例えば、既によく知られている事項についての詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する繰り返し説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを回避し、当業者の理解を容易にするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0025】
簡潔にするために、本願は、いくつかの数値範囲を具体的に開示している。ただし、任意の下限を任意の上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限を他の任意の下限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限を他の任意の上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成することができる。さらに、個別に開示された各点または単一の値は、それ自体が下限または上限として、他の点または単一の値と組み合わせて、または他の下限または上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成し得る。
【0026】
本願において、負極集電体の外側に位置する面を「負極集電体の凸面」と呼ぶ、すなわち、当該「負極集電体の凸面」は、負極集電体の捲回中心から遠い側の面である。本願において、負極集電体の内側に位置する面を「負極集電体の凹面」と呼ぶ、すなわち、当該「負極集電体の凹面」は、負極集電体の捲回中心に近い側の面である。
【0027】
本願において、正極集電体の外側に位置する面を「正極集電体の凸面」と呼ぶ、すなわち、当該「正極集電体の凸面」は、正極集電体の捲回中心から遠い側の面である。本願において、正極集電体の内側に位置する面を「正極集電体の凹面」と呼ぶ、すなわち、当該「正極集電体の凹面」は、正極集電体の捲回中心に近い側の面である。
【0028】
前述したように、本願において、説明の便宜上、「正極」、「負極」、「集電体」および「セパレーター」の円弧状折り曲げ部に位置する部分の面について、内側に位置する面、すなわち、捲回中心に近い側の面を「凹面」と呼び、外側に位置する面、すなわち、捲回中心から遠い側の面を「凸面」と呼ぶ。
【0029】
本発明は、高エネルギー密度でリチウム析出現象が発生しない捲回式リチウムイオン電池に関する。
【0030】
捲回して形成されたリチウムイオン電池は、内から外へ負極-セパレーター-正極-セパレーター-負極-セパレーター-正極の順に構成されてなる捲回構造を有し、当該捲回構造は不可避な円弧状折り曲げ部(捲回構造の両端)を有するため、該円弧状折り曲げ部において、負極と該負極の凸面に隣接している正極の各ペアに対して、負極凸面の曲率半径は、隣接している正極凹面の曲率半径よりも小さい、すなわち、正極凹面の長さは、対応する負極凸面の長さよりも長い。このように、単位面積当りの正極シート材料と負極シート材料の容量が一致している場合、円弧状折り曲げ部において負極シート容量が正極容量より低い場合があり、充電時に負極材料は、正極からマイグレートしてきたリチウムイオンを受けきれず、その余剰のリチウムイオンは負極表面に「集まる」こととなり、電池の充電に伴い、その「集まる」リチウムイオンは、電子を得てリチウム金属を形成し、徐々に堆積してリチウムデンドライトになる(すなわち、コーナーリチウム析出現象)。形成されたリチウムデンドライトは、セパレーターを突き抜きやすく、正負極の短絡を招き、電池の熱暴走を引き起こし、安全性にリスクを招く。
【0031】
本発明者らは、捲回式リチウムイオン電池のエネルギー密度を増加するためには、正負極材料の塗布厚みを増やし、初期空巻セパレーターの周数を減らすことが有効で実用的な案であることを見出した。しかしながら、本発明者らが多数の実験を通じて、正負極シートへの正負極材の塗布厚みが厚く、初期空巻セパレーターの周数が少ないほど、円弧状折り曲げ部における負極シート(特に最内周負極シート)のリチウム析出がより深刻になることがわかった。したがって、捲回式リチウムイオン電池において、活性材料の増加によるエネルギー密度の向上とリチウム析出の防止とは背反の関係にあり、電池エネルギー密度が向上すると、同時に電池の安全性能が劣化する。
【0032】
これを踏まえ、本願は、捲回構造自体、シート塗布厚み、電解液組成などの各方面の総合的な制御から考えて、高エネルギー密度を有しながらリチウム析出現象が発生しないリチウムイオン電池を設計及び開発した。本願に係るリチウムイオン電池は、優れた電気化学性能と安全性能を有する。また、本願で提出される理論関係式は、1種類の電池構造の設計に適用されるものに限られず、他のニーズに応じて電池の形状が変更される場合や裸セルの捲回方式が変更される場合にも同様に適用される。
【0033】
[リチウムイオン電池]
本願は、電極アセンブリおよび前記電極アセンブリを含浸するための電解液を含むリチウムイオン電池であって、
前記電極アセンブリは、負極シート、セパレーターおよび正極シートを含み、前記負極シート、前記セパレーターおよび前記正極シートは、捲回方向に沿って捲回構造に捲回され、前記捲回構造は、円弧状折り曲げ部を含み、
前記円弧状折り曲げ部は、少なくとも第1の折り曲げ部および第2の折り曲げ部を含み、
前記第1の折り曲げ部は、前記負極シートが捲回されてなる最内側円弧状折り曲げ部であり、前記第1の折り曲げ部は、負極集電体および少なくとも当該負極集電体の凸面に位置する負極材料層を含み、
前記第2の折り曲げ部は、前記第1の折り曲げ部の外側に位置し、かつ前記セパレーターを介して前記第1の折り曲げ部に隣接しており、前記第2の折り曲げ部は、正極集電体および少なくとも当該正極集電体の凹面に位置する正極材料層を含み、
前記リチウムイオン電池のコーナーリチウム析出係数をβとすると、βは下記式Iを満たし、かつ、0.015≦β≦0.95であり、
β=R/(R+L) 式I
(そのうち、Rは、前記第1の折り曲げ部の前記負極集電体の凸面の最小曲率半径であり、Lは、前記第1の折り曲げ部の前記負極集電体の凸面と前記第2の折り曲げ部の前記正極集電体の凹面との間の最も短い距離である。)
前記電解液は、フルオロスルホン酸塩系および/またはジフルオロリン酸塩系物質を含み、かつ、
前記電解液における前記フルオロスルホン酸塩系および/またはジフルオロリン酸塩系物質の質量百分含有量w%と前記コーナーリチウム析出係数βとは、下記の式IIを満たす、
0.01≦w×β≦20 式II
リチウムイオン電池を提供する。
【0034】
本願に係るリチウムイオン電池とは、捲回式構造のリチウムイオン電池を指し、前記捲回式構造は、正負極シートが内から外へ負極-セパレーター-正極-セパレーター-負極-セパレーター-正極の順に捲回工程で捲回されてなる電極アセンブリである。
【0035】
図1は、本願の1つの実施形態のリチウムイオン電池の電極アセンブリの円弧状折り曲げ部(すなわち、捲回構造のコーナー)の概略図である。
図1で示すように、本願に係る電極アセンブリは、負極シート、セパレーターおよび正極シートを含み、かつ、負極シート、セパレーターおよび正極シートが捲回方向に沿って捲回構造に捲回されており、当該捲回構造は、円弧状折り曲げ部を含み、かつ、当該円弧状折り曲げ部は、少なくとも第1の折り曲げ部および第2の折り曲げ部を含む。
【0036】
第1の折り曲げ部は、負極シートが捲回されてなる最内側円弧状折り曲げ部(6)であり、当該第1の折り曲げ部は、負極集電体(62)および当該負極集電体の少なくとも凸面に位置する負極材料層(62a)を含む。第2の折り曲げ部は、前記第1の折り曲げ部の外側に位置し、かつ前記セパレーター(61)を介して前記第1の折り曲げ部に隣接しており、当該第2の折り曲げ部は、正極集電体(63)および少なくとも当該正極集電体の凹面に位置する正極材料層(63a)を含む。
【0037】
前記負極集電体には、凹面に位置する負極材料層(62b)を有してもよい。
【0038】
前記正極集電体には、凸面に位置する正極材料層(63b)を有してもよい。
【0039】
本願に係るリチウムイオン電池は、塗布プロセスによって負極シートを生産する際、負極シートの容量は、通常、正極からのリチウムイオンを完全に受け入れることができるように設計される。しかしながら、正極、負極およびセパレーターを一緒に捲回した後、セパレーターを介して隣り合う一対の負極シートおよび正極シートについて、円弧状折り曲げ部で負極凸面のアーク長が正極凹面のアーク長よりも短い場合があり、この場合、負極シートは、正極シートからのリチウムイオンを受け入れきれないため、円弧状折り曲げ部において負極がリチウムを深刻に析出することが非常に生じやすくなり、電池の安全性能および電気化学的性能を劣化させる。
【0040】
本願に係るリチウムイオン電池の設計および開発において、本発明者らは、円弧状折り曲げ部の最内周負極凸面にリチウム析出が発生しなければ、他の外周の負極凸面もリチウム析出現象が発生しないことを見出した。そこで、本発明者らは、第1の折り曲げ部の負極集電体の凸面最小曲率半径Rと、第1の折り曲げ部の負極集電体の凸面と第2の折り曲げ部の正極集電体の凹面との最も短い距離Lとを総合的に制御することにより、高エネルギー密度及び負極のリチウム析出に密接に関するコーナーリチウム析出係数βを特定した。本願に係るリチウムイオン電池のエネルギー密度およびコーナーリチウム析出へのβ、RおよびLの具体的な影響について、以下のように分析する。
【0041】
コーナーリチウム析出係数βに関して、コーナーリチウム析出係数βは、リチウムイオン電池のエネルギー密度およびコーナーのリチウム析出状況へのRおよびLの総合的な影響を特徴付ける。負極集電体凸面のアーク長と正極集電体凹面のアーク長はそれぞれのベース材表面の曲率半径に比例するため、βが小さいほど、負極集電体の凸面のアーク長は、隣接する正極集電体の凹面のアーク長より短く、リチウム析出がしやすいことを意味し、したがって、βは、実際に高エネルギー密度電池全体としてのリチウム析出リスクを特徴付ける。
【0042】
本願において、円弧状折り曲げ部リチウム析出の低減および電池高エネルギー密度の両立の観点から、βの範囲は0.015≦β≦0.95であり、前記範囲にあるリチウムイオン電池は、高いエネルギー密度を兼ね備えながら、円弧状折り曲げ部の負極凸面のリチウム析出状況が発生しない。β値が0.015未満であるとき、すなわち、実際の捲回過程の初期段階、空卷セパレーターの周数は少なすぎ、電池エネルギー密度の向上に寄与する正負極シートにより多くの捲回空間を確保することができるが、第1の折り曲げ部負極集電体凸面のアーク長が隣接する第2の折り曲げ部の正極集電体凹面のアーク長より短いため、負極凸面の深刻なリチウム析出のリスクを大きく増加し、逆に、β値が0.95を超えるとき、負極凸面のリチウム析出は発生しないが、β値が高すぎるため、電池エネルギー密度の向上に寄与する正負極シートの捲回空間が損なわれ、これによって電池エネルギー密度が大幅に低下する。
【0043】
βについての上記の議論に基づいて、本発明者らは、多数の実験を通じて、以下のことを発見した。すなわち、0.015≦β≦0.95を満たす電池アセンブリが所定の電解液を組み合わせる時、本願に係る高エネルギー密度リチウムイオン電池の負極凸面リチウム析出のリスクを大幅に低下させることができる。βが小さいほど、円弧状折り曲げ部の負極凸面は、対応する正極の凹面より短く、充電状態でより多くのリチウムイオンは負極凸面に集まり、リチウムデンドライトの生成が促進される。したがって、リチウムイオンの負極界面でのマイグレーション能力および負極凸面のリチウム析出を改善するために、より高い含有量のフルオロスルホン酸塩およびジフルオロリン酸塩添加剤が必要である。本発明者らは、多数の研究を通じて、電解液におけるリチウム析出を改善するための添加剤としてのフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩の含有量w%と最内周コーナーリチウム析出係数βとの相互関係は、電池の体積エネルギー密度、負極凸面コーナーリチウム析出および電池内部抵抗に非常に重大な影響を与えることを発見した。電解液における添加剤の質量含有量w%と最内周コーナーリチウム析出係数βが関係式0.01≦w×β≦20を満たすとき、電池が高いエネルギー密度を有することを確保できると共に、負極凸面のリチウム析出状況を緩和することもできる。
【0044】
したがって、リチウム析出を抑制する添加剤としてのフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩を含有する電解液をリチウムイオン電池に適用し、より具体的に、これを電極の活性材料層の厚みが大きくかつ最内周曲率半径の小さい高エネルギー密度電池に適用することにより、高エネルギー密度とコーナーリチウム析出の抑制との両立が難しいという問題を解決できる。
【0045】
いくつの実施形態においては、任意に、0.02≦w×β≦5である。
【0046】
w×β範囲が0.02~5の範囲内にある場合、開発および設計された高エネルギー密度のリチウムイオン電池は、リチウム析出が全く発生せず、負極表面にはグレースポットも発生しない。
【0047】
いくつの実施形態においては、任意に、0.15≦β≦0.8である。
【0048】
β範囲が0.15~0.8である場合、開発および設計された電池は、高エネルギー密度を有する前提下で、基本的にリチウム析出状況が発生しないことを確保できる。
【0049】
いくつの実施形態において、任意に、Rの範囲は2μm~5000μmであり、任意に50μm~500μmである。
【0050】
いくつの実施形態において、任意に、Lの範囲は20μm~900μmであり、任意に50μm~500μmである。
【0051】
本願は、w%および/またはβを調整することにより、w×βを適切な値に調整することができる。さらに、βについて、前述したように、β=R/(R+L)、したがって、R及び/またはLを調整することにより適当なβ値を得ることができる。
【0052】
R値について、Rは、第1の折り曲げ部の負極集電体の凸面の最小曲率半径であり、セパレーターや負極シートを空巻きすることによりR値を増加させることができる(円筒電池では、中間の空洞の体積を増加することによりR値を増加させることもできる)。
【0053】
電池エネルギー密度の向上および負極凸面リチウム析出の低減の観点から、Rの範囲は2μm~5000μmであり、好ましくは50μm~500μmである。同じ体積の電池に対して、R値が小さいほど、体積エネルギー密度は高く、R値が大きいほど、非活性空間の割合は大きく、体積エネルギー密度は低い。R値が2μm未満であるとき、現在の捲回プロセスでは実現できない一方、負極凸面リチウム析出も相対的に深刻であり、逆に、Rの値が5000μmを超えるとき、この場合の電池エネルギー密度は、出荷要求を満たさない。
【0054】
L値に関して、Lは、第1の折り曲げ部の負極集電体の凸面と第2の折り曲げ部の正極集電体の凹面との間の最も短い距離である。Lの物理的意味は、第1の折り曲げ部の負極集電体凸面の負極活物質層の厚み、セパレーターの厚み、第2の折り曲げ部の正極集電体凹面の正極活物質層の厚みという3者の合計であるが、実際には、セパレーター自体の厚みは他の2つの厚みに比べて無視できるため、きつく巻かれた電池構造に対して、L値は、実際に第1の折り曲げ部の負極集電体凸面の負極活物質層の厚みと第2の折り曲げ部の正極集電体凹面の正極活物質層の厚みとの合計を特徴付けており、したがって、電池エネルギー密度へのL値の影響は、顕著である。
【0055】
電池エネルギー密度の向上および負極凸面リチウム析出の低減の観点から、Lの範囲は、20μm~900μmであり、好ましくは50μm~500μmである。Lが20μm未満であるとき、電池体積エネルギー密度は低い。逆に、Lが900μmを超えるとき、正極活性層の厚みおよび負極活性層の厚みは厚くなり過ぎて、リチウムイオンのマイグレーション経路が長く、正極からのリチウムイオンが素早く負極活性層に吸蔵することができず、リチウム析出のリスクを増加させる一方、電池分極は大きくなり、電池内部抵抗は大きくなる。
【0056】
いくつの実施形態において、任意に、フルオロスルホン酸塩の構造式は、(FSO3)xMx+(Mx+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+およびNi3+から選ばれる1種または2種以上である。)であり、ジフルオロリン酸塩の構造式は(F2PO2)yMy+(My+は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+およびNi3+から選ばれる1種または2種以上である。)である。
【0057】
このような電解液およびその所定成分の含有量により、高エネルギー密度での負極凸面リチウム析出を抑制できる理由について、本発明者らは、以下のように推測する。
【0058】
電極アセンブリにおいて、最内周の負極凸面リチウム析出のリスクはより大きく、塗布厚みの増加も負極凸面のリチウム析出をさらに劣化させる。電解液に所定のフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩系無機添加剤を添加することにより、負極表面に形成されたSEI膜のマイクロ構造を改善でき、無機-有機ネットワークが互いに嵌合しているSEI膜を形成する。改善されたSEI膜は、高いリチウムイオン伝導率を有するため、負極凸面に堆積されてきたリチウムイオンが、負極凸面に「集まる」のではなく、電界の作用で速やかに負極シートの本体の大きな面、例えば、円弧状の折り曲げ部以外の部位にマイグレートし、これによって、負極各所でのリチウム吸蔵がより均一になって、負極凸面でのリチウムデンドライトの発生を効果的に抑制する。
【0059】
本願に係る無機-有機ネットワークが互いに嵌合しているSEI膜が、電池の高エネルギー密度での負極凸面リチウム析出の抑制に寄与する理由について、本発明者は、以下のように推測する。
【0060】
フルオロスルホン酸塩およびジフルオロリン酸塩は、化成の際に負極表面で還元されて低抵抗のSEI膜を形成できる。このような低抵抗のSEI膜には、2つの理由がある。その一つは、フルオロスルホン酸塩またはジフルオロリン酸塩の還元無機生成物は、優れたリチウムイオン伝導率を有するためSEIのリチウムイオン輸送能力を向上させることができることであり、他の一つは、無機物リッチなSEIは、より薄くてより安定であるため、リチウムイオンがSEIを横断する経路を低減することができることである。負極は、低抵抗なSEI膜を有するため、受け入れきれなかったリチウムが電界強度の作用で速やかにリチウムが吸蔵されていない箇所にマイグレートし、これによって負極各所でのリチウム吸蔵が均一になって、負極のリチウム析出の発生を効果的に抑制する。
【0061】
したがって、リチウム析出を抑制する添加剤としてのフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩を含有する電解液をリチウムイオン電池に適用し、より具体的に、これを電極の活性材料層厚みが大きくかつ最内周曲率半径の小さい高エネルギー密度電池に適用することにより、高エネルギー密度とコーナーリチウム析出の抑制との両立が難しいという問題を解決できる。
【0062】
いくつの実施形態において、任意に、電解液におけるフルオロスルホン酸塩系及び/またはジフルオロリン酸塩系物質の質量百分含有量w%の範囲は、0.02%~25%であり、好ましい範囲は0.02%~20%であり、より任意に、0.05%~10%であり、さらに任意に、0.1%~5%である。
【0063】
本願の発明者らは、実際の研究において、電解液にフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩添加剤の過剰添加が電解の粘度を増加させ、電解液の導電率を劣化させて、電池の内部抵抗の増加を招き、逆に、フルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩添加剤が少なすぎると、負極凸面リチウム析出を抑制する作用が働かないことを発見した。
【0064】
いくつの実施形態において、任意に、電解液は、さらにフルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/または1,3-プロパンスルトン(PS)を含み、電解液におけるフルオロエチレンカーボネート及び/または1,3-プロパンスルトンの質量百分含有量は0.01%~15%であり、任意に0.05%~5%であり、さらに任意に0.1%~2%である。
【0065】
本願の発明者らは、さらに下記の事項を発見した。すなわち、本願に係るフルオロスルホン酸塩およびジフルオロリン酸塩を含有する電解液にFEC及び/またはPSをさらに添加して負極に成膜することは、負極界面の安定性をさらに向上させることができるため、常温サイクル性能および高温サイクル性能をさらに改善できる。かつ、電解液におけるFEC及び/またはPSの含有量が0.01%~15%であるとき、電池のサイクル性能改善は、より顕著である。しかし、添加されたフルオロエチレンカーボネート及び/または1,3-プロパンスルトンの含有量が高いとき、フルオロエチレンカーボネート及び/または1,3-プロパンスルトンが高温で正極に酸化成膜しやすく、正極の分極増加を招き、リチウムイオン電池の高温サイクル性能の発揮に不利である。
【0066】
本願に係るリチウムイオン電池において、電解液はリチウム塩を含み、当該リチウム塩の種類は、特別な限定がなく、実際のニーズに応じて選択することができる。具体的に、リチウム塩はLiN(CmF2m+1SO2)(CnF2n+1SO2)、LiPF6、LiBF4、LiBOB、LiAsF6、Li(CF3SO2)2N、LiCF3SO3、LiClO4から選ばれたいずれの1種または2種以上の組み合わせであってもよく、そのうち、m、nは、自然数であり、例えば、1~5である。
【0067】
本願に係るリチウムイオン電池において、電解液は、有機溶媒を含む。有機溶媒の種類は、特別な限定がなく、実際のニーズに応じて選択することができる。具体的に、有機溶媒として、様々な鎖状カーボネート、環状カーボネート、カルボン酸エステルから選ばれた1種または2種以上を含んでもよい。そのうち、鎖状カーボネート、環状カーボネート、カルボン酸エステルの種類は、特別な限定がなく、実際のニーズに応じて選択することができる。好ましくは、有機溶媒として、さらに炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、テトラヒドロフランから選ばれた1種または2種以上をさらに含む。
【0068】
電解液における有機溶媒の含有量は、前記フルオロスルホン酸塩系及び/またはジフルオロリン酸塩系物質の質量百分含有量w%等によって適当に調整することができる。
【0069】
本願に係るリチウムイオン電池において、電解液は、さらに他の添加剤を含んでもよい。当該他の添加剤として、具体的な目的に応じて適当に選択でき、例えば、硫酸エステル化合物、亜硫酸エステル化合物、ジスルホン酸化合物、ニトリル化合物、芳香族化合物、イソシアネート化合物、ホスファゼン化合物、環状酸無水物化合物、亜リン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、ホウ酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物から選ばれた少なくとも1種を含有してもよい。電解液におけるこれらの他の添加剤の含有量は、0.01%~10%であり、好ましくは0.1%~5%であり、より任意に、0.1%~2%である。
【0070】
いくつの実施形態において、任意に、負極材料層の空隙率は、20%~50%であり、より任意に、30%~50%である。
【0071】
本願に係るリチウムイオン電池において、負極活性層の空隙率は、20%~50%である。リチウムイオン電池の比較的高いエネルギー密度を維持するうえ、負極材料層の空隙率が大きいほど、充電の際に正極から負極へマイグレートするリチウムがより早く負極活性層内部にマイグレートして負極表面へのリチウム析出を緩和することができるが、電極アセンブリの体積エネルギー密度が低下する。負極活性層の空隙率を20%~50%に限定することにより、負極凸面のリチウム析出を緩和することができると共に、電池も比較的に高い体積エネルギー密度を有する。異なる粒子径の負極材料の採用および異なる圧力での負極シートのコールドプレスにより、負極活性層空隙率の調整を実現できる。
【0072】
本願に係るリチウムイオン電池において、負極シートは、負極集電体および負極集電体に設けられている負極活性材料を含む負極活性層を含み、前記負極材料層は、負極集電体の表裏両面のいずれの一面に設けられてもよく,負極集電体の表裏両面に設けられてもよい。本願に係るリチウムイオン電池において、好ましくは負極シートが負極集電体およびそれぞれ当該負極集電体の表裏両面に設けられる負極活性層を含む。捲回された後、負極集電体の表裏両面に設けられた負極材料層は、当該負極集電体の凹面(すなわち、内側)および凸面(すなわち、外側)に位置する負極材料層となる。
【0073】
負極活性層に含まれる負極活性材料について、その種類は、具体的な限定がなく、リチウム電池分野に従来の活性材料を採用してもよく、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンミクロスフェア、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン-炭素複合体、チタン酸リチウムから選ばれた1種または複数種であってもよい。
【0074】
本願に係るリチウムイオン電池において、負極活性層は、導電剤およびバインダーをさらに含んでもよい。そのうち、導電剤およびバインダーの種類や含有量は、具体的な限定がなく、通常、リチウム電池の負極材料層に用いられる汎用な導電剤およびバインダーの種類および含有量を用いてもよく、実際のニーズに応じて選択することができる。
【0075】
また、本願に係るリチウム電池において、負極集電体の種類も具体的な限定がなく、リチウム電池に用いられる汎用な負極集電体を用いてもよく、実際のニーズに応じて選択することもできる。
【0076】
本願に係るリチウムイオン電池において、正極シートは、正極集電体および正極集電体に設けられている正極活性材料を含む正極材料層を含み、前記正極材料層は、正極集電体の表裏両面のいずれの一面に設けられてもよく、正極集電体の表裏両面に設けられてもよい。本願に係るリチウムイオン電池において、好ましくは、正極シートが正極集電体および当該正極集電体のそれぞれ表裏両面に位置する正極材料層を含む。捲回された後、正極集電体の表裏両面に設けられた正極材料層は、当該正極集電体の凹面(すなわち、内側)および凸面(すなわち、外側)に位置する正極材料層となる。
【0077】
本願に係るリチウムイオン電池において、正極材料層に含まれる正極活性材料について、当該正極活性材料は、リチウムイオンを脱離・吸蔵することができる材料から選ばれたものである。具体的に、正極活性材料は、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及び前述した化合物に他の遷移金属又は非遷移金属を添加してなる化合物から選ばれた1種または2種以上であってもよいが、本願は、これらの材料に限定されず、リチウム電池分野に汎用な正極活性材料を用いてもよい。
【0078】
本願に係るリチウムイオン電池において、正極材料層は、導電剤およびバインダーをさらに含んでもよい。そのうち、導電剤およびバインダーの種類や含有量は、具体的な限定がなく、リチウム電池の正極材料層に用いられる汎用な導電剤およびバインダーの種類および含有量を用いてもよく、実際のニーズに応じて選択することができる。
【0079】
また、本願に係るリチウム電池において、正極集電体の種類も具体的な限定がなく、リチウム電池に用いられる汎用な正極集電体を用いてもよく、実際のニーズに応じて選択することもできる。
【0080】
本願に係るリチウムイオン電池において、セパレーターは、正極シートと負極シートの間に配置され、隔離の役割を果たす。そのうち、セパレーターの種類は、具体的な限定がなく、従来の電池に用いられるいずれのタイプのセパレーター材料であってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンから作製されたフィルム、および、これらの多層複合フィルムが挙げられるが、これらに限られない。
【0081】
本願では、リチウムイオン電池の形状は、特別な限定がなく、円筒形、方形または他の任意の形であってもよい。例えば、
図2は、方形構造のリチウムイオン電池5の1つの例である。
【0082】
いくつの実施形態において、
図3を参照すると、外装は、ケース51と蓋板53とを含む。そのうち、ケース51は、底板と、底板に接続されている側板とを備え、底板と側板は、囲まれて収容キャビティを形成している。ケース51は、収容キャビティに連通している開口を有し、蓋板53は、当該収容キャビティを閉じられるように前記開口を覆うように設けることができる。正極シート、負極シートおよびセパレーターは、捲回プロセスまたは積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前述の収容キャビティ内に封止されている。電解液は、電極アセンブリ52に含浸されている。リチウムイオン電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つまたは複数であってもよく、当業者は、具体的な実際のニーズに応じて選択することができる。
【0083】
また、以下に、図面を適当に参照して本願に係るリチウムイオン電池、電池モジュール、電池パックおよび装置について説明する。
【0084】
[電池モジュール]
いくつの実施形態において、本願の第1の態様のリチウムイオン電池は、電池モジュールに組み立てもよく、電池モジュールに含まれるリチウムイオン電池の数は、1つまたは複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの用途および容量に応じて選択してもよい。
【0085】
図4は、電池モジュール4の1つの例である。
図4を参照すると、電池モジュール4において、複数のリチウムイオン電池5は、電池ジュール4の長手方向に沿って順に並べて設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置されてもよい。さらに、当該複数のリチウムイオン電池5は、留め具によって固定されてもよい。
【0086】
任意に、電池モジュール4は、複数のリチウムイオン電池5を収容する収容空間を有するハウジングを備えていてもよい。
【0087】
[電池パック]
いくつの実施形態において、本願に係る電池モジュールは、電池パックに組み立ててもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、当業者が電池パックの用途および容量に応じて選択することができる。
【0088】
図5および
図6は、電池パック1の1つの例である。
図4および
図5を参照すると、電池パック1は、電池筐体および電池筐体に設けられる複数の電池モジュール4を含んでもよい。電池筐体は、上筐体2と下筐体3を含み、上筐体2は、下筐体3に覆設可能であり、かつ、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成している。複数の電池モジュール4は、電池筐体内に任意の方式で配置してもよい。
【0089】
[電気装置]
また、本願は、本願が提供されるリチウムイオン電池、電池モジュールまたは電池パックのうちの1種以上を含む電気装置をさらに提供する。前記リチウムイオン電池、電池モジュール、または、電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよく、また、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0090】
前記電気装置として、使用のニーズに応じてリチウムイオン電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0091】
図7は、装置の1つの例である。当該装置は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、または、プラグインハイブリッド電気自動車などである。当該装置のリチウムイオン電池に対する高出力および高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを使用することができる。
【0092】
装置のもう1つの例として、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、通常、薄型化が要求され、電源としてリチウムイオン電池を使用できる。
【0093】
実施例
以下、実施例と組み合わせて本願をさらに説明する。これらの実施例は本願を説明するためにのみ使用され、本願の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0094】
実施例および比較例のリチウムイオン電池は、すべて下記の方法で製造した。
【0095】
(1)正極シートの製造
正極活性材料LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、導電剤であるアセチレンブラック、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、重量比94:3:3で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、十分に攪拌し、均一に混合して正極スラリーを得た。そして、正極スラリーを、正極集電体に均一に塗り、そして、乾燥、コールドプレス、スリットを経て正極シートを得た。正極スラリーの塗布重量を調整することにより異なる厚みの正極シートを得ることができた。
【0096】
(2)負極シートの製造
活物質である人造石墨、導電剤であるアセチレンブラック、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を重量比95:2:2:1で溶媒である脱イオン水に溶解し、溶媒である脱イオン水と均一に混合して負極スラリーを作製した。そして、負極スラリーを負極集電体である銅箔上に均一に塗り、乾燥して負極フィルムを得、そして、コールドプレス、スリットを経て負極シートを得た。負極スラリーの塗布重量を調整することにより異なる厚みの負極シートを得ることができた。
【0097】
(3)セパレーターの製造
本願に用いられるセパレーターは、ポリエチレンフィルムであった。
【0098】
(4)電極アセンブリの製造
実施例1-1:
厚み2μmの負極銅箔ベース材に厚み66μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。最後に内から外へそれぞれ負極、セパレーター、正極、セパレーターの順に一緒に捲回してR=2μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0099】
実施例1-2:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み66μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。最後に内から外へそれぞれ負極、セパレーター、正極、セパレーターの順に捲回してR=5μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0100】
実施例1-3:
厚み4μmの負極銅箔ベース材に厚み66μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを1周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=25μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0101】
実施例1-4:
厚み8μmの負極銅箔ベース材に厚み66μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを3周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=50μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0102】
実施例1-5:
厚み8μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み66μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを1周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0103】
実施例1-6:
厚み8μmの負極銅箔ベース材に厚み66μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを13周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=190μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0104】
実施例1-7:
厚み7μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み66μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを8周捲回し、次に負極を挿入して3周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=500μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0105】
実施例1-8:
厚み7μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み66μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを6周捲回し、次に負極を挿入して4周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=780μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0106】
実施例1-9:
厚み7μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み66μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み62μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを3周捲回し、次に負極を挿入して9周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=1500μm、L=135μmの電極アセンブリを得た。
【0107】
実施例1-10:
厚み9μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み100μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み93μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを15周捲回し、次に負極を挿入して12周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=3000μm、L=200μmの電極アセンブリを得た。
【0108】
実施例1-11:
厚み9μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み151μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み142μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを20周捲回し、次に負極を挿入して14周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=5000μm、L=300μmの電極アセンブリを得た。
【0109】
実施例2-1:
厚み7μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み2.6μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み2.4μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、5μmであった。まず、セパレーターを8周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=10μmの電極アセンブリを得た。
【0110】
実施例2-2:
厚み10μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み6.7μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み6.3μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを5周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=20μmの電極アセンブリを得た。
【0111】
実施例2-3:
厚み10μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み22μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み21μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを4周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=50μmの電極アセンブリを得た。
【0112】
実施例2-4:
厚み12μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み48μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み45μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを2周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=100μmの電極アセンブリを得た。
【0113】
実施例2-5:
実施例1-5と同様に電極アセンブリを製造した。
【0114】
実施例2-6:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み94.4μmの負極材料層を塗布し、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み88.6μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを6周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=190μmの電極アセンブリを得た。
【0115】
実施例2-7:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み120μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み113μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーター6周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=240μmの電極アセンブリを得た。
【0116】
実施例2-8:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み228μmの負極材料層を塗布し、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み216μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを6周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=450μmの電極アセンブリを得た。
【0117】
実施例2-9:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み254μmの負極材料層を塗布し、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み239μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを6周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=500μmの電極アセンブリを得た。
【0118】
実施例2-10:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み460μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み433μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを6周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=900μmの電極アセンブリを得た。
【0119】
実施例2-11:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み564μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み529μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを6周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=1100μmの電極アセンブリを得た。
【0120】
実施例3-1~実施例3-10:
実施例1-5と同様に電極アセンブリを製造した。
【0121】
実施例3-11:
厚み5μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み27.3μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み25.7μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを4周捲回し、次に負極を挿入し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=95μm、L=60μmの電極アセンブリを得た。
【0122】
実施例3-12:
厚み8μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み38μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み35μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを4周捲回し、次に負極を挿入して4周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=500μm、L=80μmの電極アセンブリを得た。
【0123】
実施例3-13:
厚み7μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み100μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み93μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを9周捲回し、次に負極を挿入して17周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回してR=4000μm、L=200μmの電極アセンブリを得た。
【0124】
実施例3-14:
実施例3-13と同様に電極アセンブリを製造した。
【0125】
実施例4-1~実施例4-15:
実施例1-5と同様に電極アセンブリを製造した。
【0126】
実施例5-1~実施例5-7:
実施例1-5と同様に電極アセンブリを製造した。
【0127】
比較例1:
厚み5μmの負極銅箔ベース材に厚み73μmの負極材料層を塗布し、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み55μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。最後に内から外へそれぞれ負極、セパレーター、正極の順に一緒に捲回して比較例1の電極アセンブリを得た。
【0128】
比較例2:
厚み8μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み73μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み55μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを1周捲回し、次に負極および正極を挿入し、一緒に捲回して最後に比較例2の電極アセンブリを得た。
【0129】
比較例3:
厚み8μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み73μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み55μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを1周捲回し、次に負極を挿入して6周捲回し、そして正極を挿入し、一緒に捲回して最後に比較例3の電極アセンブリを得た。
【0130】
比較例4:
厚み8μmの負極銅箔ベース材の両面に厚み30μmの負極材料層を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み23μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7μmであった。まず、セパレーターを4周捲回し、次に負極および正極を挿入し、一緒に捲回して最後に比較例4の電極アセンブリを得た。
【0131】
比較例5:
厚み8μmの負極銅箔ベース材に厚み218.5μmの負極材料層を塗布し、そのうち、最内周では凸面のみに負極材料を塗布したが、他の領域では両面に負極材料を塗布し、厚み13μmの正極アミノ箔ベース材の両面に厚み164.5μmの正極材料層を塗布し、セパレーターは、7.2μmであった。まず、セパレーターを6周捲回し、そして負極および正極を挿入し、一緒に捲回して最後に比較例5の電極アセンブリを得た。
【0132】
(5)電解液の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内(H2O<0.1ppm、O2<0.1ppm)に有機溶媒であるEC/EMCを体積比3/7で均一に混合し、12.5%のLiPF6リチウム塩を添加し、有機溶媒に溶解させ、表に示す添加剤を加えて均一になるように攪拌して対応する電解液を得た。
【0133】
(6)リチウムイオン電池の製造
電極アセンブリを電池ケースに置き、乾燥した後電解液を注入し、そして化成、静置等の工程を経てリチウムイオン電池を作製した。
【0134】
次に電極アセンブリに関するパラメータの測定過程を説明する。
【0135】
[1]第1の折り曲げ部の負極集電体の凸面の最小曲率半径R(μm)の測定方法
ISO 15708:22《非破壊検査照射法コンピュータ断層撮影(Non-destructive testing-Radiation methods-Computed tomography)》を参照して電池X線コンピュータ断層分析を行い、設備はWaygate Technologies nanomelx neo 180であった。まず、電極アセンブリを高精度数値制御プログラマブルサンプルスキャンターンテーブルに固定し、設備をオンにし、phoenix datos x acquisitionソフトウェアを用いて2次元投影を収集した。2次元投影収集が終了したら、幾何学補正を行い、次に、3次元体積再構成を行い、これによりセルアセンブリの3次元構造を損傷することなく得た。次に、CADソフトウェアを利用して最内周負極の凸面のベース材表面の曲率半径を測定し、最小値をRとした。
【0136】
[2]第1の折り曲げ部の負極集電体凸面と第2の折り曲げ部の正極集電体凹面との最も短い距離L(μm)
電極アセンブリを解体した後、マイクロメーターで負極シート厚みH2、負極集電体厚みH3を測定し、正極シート厚みH4、正極集電体厚みH5およびセパレーター厚みH6を測定した。計算式L(μm)=(H2-H3+H4-H5)/2+H6に基づいて算出した。
【0137】
[3]負極活性層の空隙率
負極活物質層を直径10cmの小さな円形に打ち抜き、マイクロメーターで厚みを測定して見かけ体積V1を算出し、GB/T24586-2009に準拠して真密度測定計(AccuPyc 1340)で真の体積V2を測定した。ある質量のサンプルを秤量し、真密度計に入れ、試験システムを密閉し、プログラムに従って窒素ガスを導入し、試料室及び膨張室の気体圧力を検出し、ベールの法則に従って機器によって自動的に真の体積V2が算出され、空隙率=(V1-V2)/V1*100%とした。
【0138】
次にリチウムイオン電池の測定方法を説明する。
【0139】
[1]第1の折り曲げ部の負極凸面のリチウム析出状況
化成後の電池を25℃において、1.5Cで4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vで0.05C未満の電流となるまで定電圧充電し、1Cで2.8Vまで放電し、20ラップをサイクルした後、再度1.5Cで4.2Vまで定電流充電し、そして4.2Vで0.05C未満の電流となるまで定電圧充電して満充電電池を得た。
【0140】
20ラップをサイクルした後の電池を解体し、最も内側(最内周)の負極凸面のリチウム析出状況を観察し、下記の表における「負極凸面リチウム析出状況」の欄に記録した。
【0141】
観察後の評価基準は以下の通りであった。
【0142】
リチウム析出なし:コーナー領域の満充電負極の表面は金黄色であり、無塵紙で拭いたが、紙上にグレー色の金属リチウム粉はなかった。
【0143】
僅かなリチウム析出:コーナー領域の満充電負極の表面は暗黄色であり、無塵紙で拭いて、紙上にグレー色の金属リチウム粉はあった。
【0144】
グレースポット:コーナー領域の満充電負極の表面の一部はグレー色であり、金黄色の透過はなかった。
【0145】
深刻なリチウム析出:コーナー領域の満充電負極の表面はすべてグレー色であり、金黄色の透過はなかった。
【0146】
本願において、負極凸面リチウム析出の好ましい順番は、リチウム析出なし>グレースポット>僅かなリチウム析出>深刻なリチウム析出であった。
【0147】
[2]体積エネルギー密度
25℃において、リチウムイオン電池を1Cで4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vで電流が0.05C未満になるまで定電圧充電し、その後0.33Cで2.8Vまで放電し、放電エネルギーQを得た。ノギスでセル外殻の長さ、幅、高さを測定し、体積Vを算出し、体積エネルギー密度=Q/Vとした。体積エネルギー密度の単位はWhL-1である。
【0148】
[3]電池内部抵抗
25℃において、リチウムイオン電池を1Cで4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vで電流が0.05C未満になるまで定電圧充電し、そして1Cで30min放電し、すなわち、セルの電量を50%SOCに調整した。そして、TH2523A交流内部抵抗測定器の正ペン、負ペンをそれぞれ電池の正極、負極に接触させ、内部抵抗測定器で電池の内部抵抗値を読み取った。
【0149】
[4]電池常温サイクル性能試験
25℃において、リチウムイオン電池を1Cで4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vで電流が0.05C未満になるまで定電圧充電し、その後リチウムイオン電池を1Cで2.8Vまで定電流放電し、これを充放電の1サイクルとする。このように繰り返して充電および放電を行い、リチウムイオン電池の1000サイクル後の容量維持率を算出した。
【0150】
リチウムイオン電池の25℃で1000サイクル後の容量維持率(%)=(第1000サイクルの放電容量/初期サイクルの放電容量)×100%
【0151】
[5]電池高温サイクル性能試験
45℃において、リチウムイオン電池を1Cで4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vで電流が0.05C未満になるまで定電圧充電し、その後リチウムイオン電池を1Cで2.8Vまで定電流放電し、これを充放電の1サイクルとする。このように繰り返して充電および放電を行い、リチウムイオン電池の800サイクル後の容量維持率を算出した。
【0152】
リチウムイオン電池の45℃で1000サイクル後の容量維持率(%)=(第800サイクルの放電容量/初期サイクルの放電容量)×100%
【0153】
【0154】
表1から次のことが分かる。
【0155】
実施例1-1~実施例1-11から分かるように、R値の増加につれて、リチウムイオン電池の体積エネルギー密度は下がり、したがって、高エネルギー密度電池を得るためには、R値はあまり大きくなりすぎてはならず、R値が減少するにつれて、第1折り曲げ部の負極凸面で僅かなリチウム析出現象が見られたので、R値は小さすぎてもならない。R値は、2μm~5000μmが好ましく、50μm~500μmがより好ましく、この範囲にある場合、リチウムイオン電池の高エネルギー密度を確保しつつ、深刻なリチウム析出現象が発生しないようにすることができる。
【0156】
表1から明らかなように、実施例に比べて、全ての比較例のリチウム析出状況とエネルギー密度は同時に改善されていなかった。
【0157】
実施例1-2と比較して、比較例1は、電解液にフルオロスルホン酸塩/ジフルオロリン酸塩が含有されない点、すなわち、電解液におけるフルオロスルホン酸塩/ジフルオロリン酸塩の質量百分含有量w%が0である点のみが異なる。その結果、「負極膜層コーナーリチウム析出状況」の評価結果において、比較例1は「深刻なリチウム析出」であり、実施例1-2の「僅かなリチウム析出」と比較して、良好なコーナーリチウム析出抑制効果は得られなかった。
【0158】
比較例1~3を比較すると、同様に電解液にフルオロスルホン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が含有されない場合、比較例2は、L値を下げることによってβ値が大幅に向上した結果、比較例2の「負極膜層コーナー析出状況」の評価結果は「僅かなリチウム析出」となり、「コーナーリチウム析出」がある程度改善されたことを表明したことが分かった。しかし、比較例2は、Lを下げることによってβ値の向上を図ったため、結果として比較例1や比較例3に比べて、「体積エネルギー密度」は、下がった。
【0159】
比較例4から分かるように、R値が低すぎたり、β値が低すぎたりすると、「負極膜層コーナーリチウム析出状況」の評価結果は、「深刻なリチウム析出」となり、良好なコーナーリチウム析出抑制効果は、得られなかった。
【0160】
比較例5から分かるように、R値が大きすぎると、体積エネルギー密度は、下がりすぎて、リチウムイオン電池の「高エネルギー密度」の要求を満たせなかった。
【0161】
【0162】
表2から分かるように、L値が小さすぎると、リチウム電池の体積エネルギー密度が低すぎ、L値の増加につれ、リチウム電池の体積エネルギー密度が増加するが、一方、L値が大きすぎると、負極膜層のコーナーで僅かなリチウム析出現象が発生し、かつ、電池内部抵抗が大きすぎた。表におけるデータから、L値は20μm~900μmが好ましく、50μm~500μmがより好ましいことが分かった。
【0163】
より具体的には、実施例2-1から分かるように、L値が小さすぎると、正極活性層の厚みおよび負極活性層の厚みが薄すぎるため、リチウム電池の体積エネルギー密度が低すぎ、実施例2-11から分かるように、L値が大きすぎると、正極活性層および負極活性層の厚みが厚すぎて、リチウムイオンのマイグレーション経路が長くなり、負極被膜層コーナーで僅かなリチウム析出現象が発生し、電池内部抵抗が大きすぎ、実施例2-2~実施例2-10から分かるように、L値は20μm~900μmが好ましく、50μm~500μmがより好ましい。
【0164】
【0165】
表3から次のことが分かる。
【0166】
実施例3-1~3-13から分かるように、電解液にフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩を添加することにより、コーナーリチウム析出抑制効果を向上させることができる。
【0167】
実施例3-1~3-10から分かるように、電解液におけるフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩の質量百分含有量w%を増加する(すなわち、w値を増加する)と、電池内部抵抗の増大を招いた。また、実施例3-14から分かるように、電解液におけるフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩の質量百分含有量w%が低すぎると、コーナーリチウム析出抑制効果は、顕著ではなかった。
【0168】
表3の実施例3-1~3-14から分かるように、本願発明において、フルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩のw%は、0.02%~25%であり、好ましくは0.02%~20%であり、より好ましくは0.05%~10%であり、さらに好ましくは0.1%~5%である。また、表3の実施例3-9と実施例3-11との比較から分かるように、L値を下げることにより、電池内部抵抗を低下させることもできる。
【0169】
【0170】
表4から次のことが分かる。
【0171】
実施例4-7~4-15から分かるように、フルオロスルホン酸塩および/またはジフルオロリン酸塩を含有する電解液にフルオロエチレンカーボネートおよび/または1,3-プロパンスルトンを添加する場合、リチウムイオン電池の高低温サイクル性能をさらに改善することができる。
【0172】
本願において、フルオロスルホン酸塩および/またはジフルオロリン酸塩を含有する電解液にフルオロエチレンカーボネートおよび/または1,3-プロパンスルトンを添加する場合、電解液におけるフルオロエチレンカーボネートおよび/または1,3-プロパンスルトンの質量百分含有量は、電池サイクル性能を改善する観点から、0.01%~15%であり、好ましくは0.05%~5%であり、より好ましくは0.1%~2%である。
【0173】
【0174】
表5から分かるように、リチウムイオン電池において、リチウムイオン電池の比較的に高いエネルギー密度(560~580WhL-1)を維持した上、第1の折り曲げ部における負極凸面リチウム析出状況に応じて、負極材料層の空隙率を好ましくは20%~50%、より好ましくは30%~50%にすることができる。
【0175】
まとめると、表1の実施例1-1~1-11、表2の実施例2-1~2-11、表3の実施例3-1~3-14、表4の4-1~4-15および表5の5-1~5-7から分かるように、電解液におけるフルオロスルホン酸塩及び/またはジフルオロリン酸塩の質量比率wと前記最内周コーナーリチウム析出係数βとの積が0.01~20、特に0.05~10の範囲内にある場合、電池の高いエネルギー密度を確保しつつ、負極凸面コーナー部リチウム析出の抑制に十分な添加剤を確保することができる。また、フルオロスルホン酸塩および/またはジフルオロリン酸塩の使用量が適度である場合、リチウムイオン電池の良好な常温内部抵抗を確保する。
【0176】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。本願の範囲に属する実施例は、当然にその全てを網羅するものではなく、上記実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の構成の範囲内において、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏する実施形態は、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。また、本願の要旨を逸脱しない範囲で、当業者が思いつく各種変形を実施形態に施したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0177】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 リチウムイオン電池
51 ケース
52 電極アセンブリ
53 上蓋アセンブリ
6 円弧状折り曲げ部
61 セパレーター
62 負極集電体
62a、62b 負極材料層
63 正極集電体
63a、63b 正極材料層