(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】基板保持装置およびはんだ印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 15/26 20060101AFI20240711BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20240711BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B41F15/26 A
B41F15/08 303E
H05K3/34 505D
(21)【出願番号】P 2022550300
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035505
(87)【国際公開番号】W WO2022059178
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 直樹
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-196928(JP,A)
【文献】特開2015-098087(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193773(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022109(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/094546(WO,A1)
【文献】特開2010-149503(JP,A)
【文献】特開平07-052358(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0121250(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/26
B41F 15/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って基板を搬入および搬出する基板搬送部と、
前記搬送路よりも上方に配置されて、前記基板を保持可能なクランプレールと、
前記搬送路よりも下方に配置されて、昇降可能なバックアップテーブルと、
前記バックアップテーブルを昇降させる昇降駆動源と、
水平面内の第一方向の長さが前記バックアップテーブルよりも長く形成され
、前記基板の大きさに応じて使い分けられるように前記バックアップテーブルに
着脱可能に載置され、前記バックアップテーブルの上昇に伴い前記基板を押し上げて前記クランプレールに保持させるバックアップブロックと、
前記バックアップテーブルに対する前記バックアップブロックの前記第一方向の移動を規制する規制部と、
を備える基板保持装置。
【請求項2】
前記第一方向は、前記搬送路が延在する方向に一致している、請求項
1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記基板搬送部は、前記第一方向に直交する第二方向に離間して配置され前記基板の縁を支持して搬送する一対のコンベア搬送部、および、前記基板の大きさに応じて一対の前記コンベア搬送部の離間距離を調整する調整部を有し、
前記バックアップブロックは、前記第二方向に並べて用いられる個数が可変とされている、
請求項
2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
搬送路に沿って基板を搬入および搬出する基板搬送部と、
前記搬送路よりも上方に配置されて、前記基板を保持可能なクランプレールと、
前記搬送路よりも下方に配置されて、昇降可能なバックアップテーブルと、
水平面内の第一方向の長さが前記バックアップテーブルよりも長く形成されて前記バックアップテーブルに載置され、前記バックアップテーブルの上昇に伴い前記基板を押し上げて前記クランプレールに保持させるバックアップブロックと、
前記バックアップテーブルに対する前記バックアップブロックの前記第一方向の移動を規制する規制部と、を備え
、
前記第一方向は、前記搬送路が延在する方向に一致しており、
前記基板搬送部は、前記第一方向に直交する第二方向に離間して配置され前記基板の縁を支持して搬送する一対のコンベア搬送部、および、前記基板の大きさに応じて一対の前記コンベア搬送部の離間距離を調整する調整部を有し、
前記バックアップブロックは、前記第二方向に並べて用いられる個数が可変とされている、
基板保持装置。
【請求項5】
前記基板搬送部は、一方の前記コンベア搬送部を移動させて前記離間距離を自動で調整する自動調整機構、前記離間距離を狭く調整するときに一方の前記コンベア搬送部の移動前方に前記バックアップブロックが有るか否かを検出するブロック検出センサ、および前記ブロック検出センサの検出結果に応じて前記自動調整機構を制御する制御部を有し、
前記規制部は、前記バックアップブロックが前記ブロック検出センサに干渉しないように、前記バックアップブロックの前記第一方向の移動を規制する、
請求項
3または4に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記ブロック検出センサは、一方の前記コンベア搬送部の両端付近に離隔して設けられる投光部および受光部からなり、前記投光部から出た検出光が前記バックアップブロックに遮られて前記受光部に到達しなくなることを検出する、請求項
5に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記規制部は、前記バックアップテーブルに対する前記バックアップブロックの前記第一方向の移動可能範囲を規定値以下に規制する、請求項1
~6のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項8】
前記規定値は、前記バックアップブロックが前記第一方向に移動しても他部材に干渉しないことを条件として設定される、請求項
7に記載の基板保持装置。
【請求項9】
前記規制部は、前記バックアップテーブルおよび前記バックアップブロックの一方に設けられた規制ピン、および、前記バックアップテーブルおよび前記バックアップブロックの他方に設けられて前記規制ピンの移動可能範囲を前記規定値以下に規制する規制部位を有する、請求項
7または
8に記載の基板保持装置。
【請求項10】
前記規制ピンは、前記バックアップブロックの前記第一方向に離隔した二箇所に下向きに設けられて前記バックアップテーブルを挟み込み、
前記規制部位は、前記バックアップテーブルの前記第一方向に離隔した二つの側面である、
請求項
9に記載の基板保持装置。
【請求項11】
前記バックアップテーブルは、強磁性材料で形成され、
前記バックアップブロックは、底部に永久磁石をもつ、
請求項1~
10のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の基板保持装置と、
印刷孔が形成されたマスクを前記基板保持装置の上方に保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部に対して前記基板保持装置を相対的に上昇させて、前記基板を前記マスクに密着させる昇降駆動装置と、
前記マスクの上面でペースト状はんだを移動させて前記基板に印刷するスキージと、
を備えるはんだ印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板を所定位置に保持する基板保持装置、および、この基板保持装置を組み込んで構成されるはんだ印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。さらに、対基板作業を実施するはんだ印刷機、部品装着機、リフロー機、および基板検査機などを並べて配置し、対基板作業ラインを構成することが一般的になっている。これらの対基板作業機は、搬入した基板を所定位置に保持した状態で対基板作業を実施する。基板を所定位置に保持する基板保持装置の構成は、対基板作業機の種類や作業内容、基板の生産進捗状態などに応じて変形され得る。この種の基板保持装置に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のスクリーン印刷機には、基板保持装置が組み込まれている。基板保持装置は、レールフレームおよび移動用ベルトなどで構成された基板搬送装置と、バックアップテーブル、バックアップテーブル上に着脱可能に取り付けられるバックアップブロック、およびバックアップテーブルを昇降させる昇降機構などで構成されたバックアップ装置と、クランプ位置に配置されたクランププレートと、を備える。基板搬送装置によって搬入された基板は、バックアップテーブルの上昇に伴ってバックアップブロックに押し上げられ、クランププレートにクランプされる。このようにして、基板保持装置は、基板を所定のクランプ位置に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業対象となる基板が大型である場合に、基板の下面を支持するバックアップブロックも大型であることが好ましい。仮に、大型の基板に対して小型のバックアップブロックを用いると、基板の下面の広い領域を支持することができず、基板が撓みあるいは傾斜した状態で対基板作業を実施することとなり、作業品質が低下するおそれがある。この作業品質の低下は、基板の概ね全面にわたってスキージが移動するはんだ印刷機において顕在化しがちである。
【0006】
また、バックアップブロックは、着脱の手間を簡略化するために、バックアップテーブルの上面に単に置くだけで用いられることが一般的となっている。このため、大型のバックアップブロックを用いるときに、このバックアップブロックがバックアップテーブルの上面で移動して、他部材に干渉するおそれがある。
【0007】
それゆえ、本明細書は、バックアップブロックと他部材との干渉を防止することができる基板保持装置、および、この基板保持装置を組み込んで構成されるはんだ印刷機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、搬送路に沿って基板を搬入および搬出する基板搬送部と、前記搬送路よりも上方に配置されて、前記基板を保持可能なクランプレールと、前記搬送路よりも下方に配置されて、昇降可能なバックアップテーブルと、水平面内の第一方向の長さが前記バックアップテーブルよりも長く形成されて前記バックアップテーブルに載置され、前記バックアップテーブルの上昇に伴い前記基板を押し上げて前記クランプレールに保持させるバックアップブロックと、前記バックアップテーブルに対する前記バックアップブロックの前記第一方向の移動を規制する規制部と、を備える基板保持装置を開示する。
【0009】
また、本明細書は、前記した基板保持装置と、印刷孔が形成されたマスクを前記基板保持装置の上方に保持するマスク保持部と、前記マスク保持部に対して前記基板保持装置を相対的に上昇させて、前記基板を前記マスクに密着させる昇降駆動装置と、前記マスクの上面でペースト状はんだを移動させて前記基板に印刷するスキージと、を備えるはんだ印刷機を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示する基板保持装置やはんだ印刷機では、大型の基板に対応するために、第一方向の長さがバックアップテーブルよりも長い大型のバックアップブロックを用いる。その上で、バックアップテーブルに対するバックアップブロックの第一方向の移動が規制部によって規制されるため、バックアップブロックと他部材との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】基板保持装置の前側の部材を取り去った正面断面図である。
【
図4】バックアップブロックを斜め下方から見上げた斜視図である。
【
図5】バックアップテーブルおよびバックアップブロックの一部分を斜め下方から見上げた斜視図である。
【
図6】基板保持装置の制御の構成を示すブロック図である。
【
図7】基板保持装置が基板を保持した状態を示す左側面図である。
【
図8】基板の大きさが小さく変更される場合に、取り外すバックアップブロックの個数が不足した状態の具体例を表す基板保持装置の左側面図である。
【
図9】基板保持装置を組み込んで構成される実施形態のはんだ印刷機を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態の基板保持装置1の全体構成
実施形態の基板保持装置1の全体構成について、
図1~
図3を参考にして説明する。本実施形態において、基板保持装置1は、はんだ印刷機に組み込まれており、これに限定されず、他種の対基板作業機に組み込まれてもよい。
図1の右上の矢印に示されるように、基板保持装置1の前後左右を便宜的に定める。
図1において、基板Kは、破線のハッチングで示される位置まで搬入され、次に押し上げられて所定位置に保持される。基板保持装置1は、フレーム2、基板搬送部3、クランプレール4、バックアップテーブル5、バックアップブロック6、規制部7(
図2参照)、および制御部8(
図6参照)などで構成されている。
【0013】
フレーム2は、鉄などの金属材料を用いて上面に凹部をもつ略矩形板状に形成され、水平二方向に延在する。
図2に示されるように、フレーム2の左右の縁には、前後方向に延びる第一ガイドレール21が設けられる。フレーム2の上方に、フレーム2に平行してサブフレーム22が設けられる。サブフレーム22は、フレーム2よりも小さめの略矩形板状に形成され、フレーム2に固定される。サブフレーム22の左右の縁には、前後方向に延びる第二ガイドレール23が設けられる。
【0014】
基板搬送部3は、搬送路311、321に沿って基板Kを搬入および搬出する。基板搬送部3は、固定側コンベア搬送部31、可動側コンベア搬送部32、自動調整機構33、ブロック検出センサ34、および基板幅制御部81などで構成される。固定側コンベア搬送部31は、フレーム2の前部の上面に固定されており、左右方向に延在する。可動側コンベア搬送部32は、フレーム2の後部の上面に配置されて前後方向に移動可能とされ、左右方向に延在する。
【0015】
固定側コンベア搬送部31は、支持板310、搬送路311を構成する部材(
図3参照)、駆動プーリ、2個の支持プーリ、テンションプーリ、コンベアベルト316(
図3参照)、および搬送用モータ317で構成される。支持板310は、左右方向に延在する板材であり、フレーム2の前部に立てて固定される。支持板310の後面の上部に、左右方向に延在する搬送路311が設けられる。駆動プーリ、2個の支持プーリ、テンションプーリ、およびコンベアベルト316は、支持板310の後面に配置される。
【0016】
搬送路311、駆動プーリ、2個の支持プーリ、テンションプーリ、およびコンベアベルト316は、可動側コンベア搬送部32の側と同一の構成であり、可動側コンベア搬送部32のそれらと前後対称に配置される。搬送用モータ317は、支持板310の前面の右寄り下部に配置される。搬送用モータ317の出力軸は、支持板310を突き抜けて駆動プーリに接続される。
【0017】
可動側コンベア搬送部32は、
図1および
図2に示されるように、支持板320、搬送路321を構成する部材、駆動プーリ322、2個の支持プーリ323、324、テンションプーリ325、コンベアベルト326、および搬送用モータ327で構成される。支持板320は、左右方向に延在する門型の形状の板材であり、フレーム2の後部に立てて配置される。支持板320の門型の内部には、後述するバックアップテーブル5が進入可能となっている。
図2に示されるように、支持板320は、門型の内側に、左右一対のスライダ328を有する。左右のスライダ328の各々は、サブフレーム22の第二ガイドレール23に係合して、前後方向にスライド移動可能となっている。
【0018】
支持板320の前面の上部に、左右方向に延在する搬送路321が設けられる。駆動プーリ322は、支持板320の前面の右寄り下部に配置される。支持プーリ323は、支持板320の前面の左上端に配置される。支持プーリ324は、支持板320の前面の右上端に配置される。テンションプーリ325は、支持板320の前面の支持プーリ324の左下方の位置に配置される。コンベアベルト326は、環状であり、時計回りに順番に支持プーリ323、搬送路321の上面、支持プーリ324、駆動プーリ322、およびテンションプーリ325に係合されている。テンションプーリ325は、コンベアベルト326の環状の外側から内向きに緊張力を作用させ、コンベアベルト326の弛みを防止する。
【0019】
搬送用モータ327は、支持板320の後面の右寄り下部に配置される。搬送用モータ327の出力軸は、支持板320を突き抜けて駆動プーリ322に接続される。二つの搬送用モータ317、327は、制御部8からの制御により同期して動作する。これにより、二つのコンベアベルト316、326は、
図2の時計回りに輪転駆動される。
【0020】
二つのコンベアベルト316、326は、基板Kの縁を支持した状態で、搬送路321に沿って基板Kを
図2の左方から右方に搬送する。なお、二つの搬送用モータ317、327は、逆回転が可能とされており、コンベアベルト316、326は、基板Kを逆方向にも搬送できるように構成されている。基板保持装置1の左右方向は、搬送路311、321が延在する方向であり、これを第一方向と呼称する。また、基板保持装置1の前後方向は、第一方向と直交する第二方向になる。
【0021】
自動調整機構33は、搬送する基板Kの大きさに応じて、固定側コンベア搬送部31と可動側コンベア搬送部32の間の第二方向の離間距離を自動で調整する。具体的に、自動調整機構33は、可動側コンベア搬送部32を第二方向に平行移動させて、離間距離を自動で調整する。自動調整機構33は、左右一対のボールねじ331およびナット332、ならびに調整用モータ333などで構成される。
【0022】
左右一対のボールねじ331は、支持板310の左右に寄った位置に自転可能に支持される。左右のボールねじ331は、後方に延在して、可動側コンベア搬送部32の支持板320まで達している。一方、左右一対のナット332は、支持板320の門型の内側のスライダ328の上側に配置される。ナット332は、小さなボールを介してボールねじ331に螺合している。したがって、ボールねじ331およびナット332は、ボールねじ送り機構を構成する。
【0023】
調整用モータ333は、支持板310の前側の左右方向の中央に設けられる。調整用モータ333の出力軸は、伝達ベルト334を用いて左右のボールねじ331に回転連結される。基板幅制御部81からの制御にしたがって、調整用モータ333が回転すると、左右のボールねじ331が同期して回転駆動される。これにより、左右のナット332が同期して前後方向に移動する。したがって、可動側コンベア搬送部32は、固定側コンベア搬送部31との平行状態を保ちつつ第二方向に移動する。調整用モータ333は、正転および逆転の切り替えが可能であり、可動側コンベア搬送部32は、固定側コンベア搬送部31との離間距離を増減する双方向に移動可能とされている。
【0024】
ブロック検出センサ34は、自動調整機構33が離間距離を狭く調整するときに、可動側コンベア搬送部32の移動前方にバックアップブロック6(詳細後述)が有るか否かを検出する。ブロック検出センサ34は、光電センサと呼ばれる検出方式のセンサであり、対向して配置される投光部341および受光部342からなる。投光部341は、可動側コンベア搬送部32の支持板320の折り曲げられた左側面32Aの内側の上部に設けられる。受光部342は、支持板320の折り曲げられた右側面32Bの内側の上部に設けられる。
【0025】
投光部341は、受光部342に向けて検出光を照射する。受光部342は、投光部341から出た検出光が到達しているか否かを検出する。したがって、ブロック検出センサ34は、検出光がバックアップブロック6に遮られて受光部342に到達しない状態を検出することができる。なお、投光部341および受光部342は、逆に配置されても同等の検出性能を有する。また、ブロック検出センサ34として、他の検出方式のセンサ、例えば、磁界を放出して近傍の鉄製のバックアップブロック6による磁界の変化を検出するセンサなどを用いることができる。
【0026】
基板幅制御部81は、
図6に示されるように、制御部8内に設けられる。基板幅制御部81は、オペレータにより設定された基板Kの第二方向の幅寸法に基づいて、自動調整機構33を制御する。基板幅制御部81は、ブロック検出センサ34から検出結果を受け取り、検出結果に応じて自動調整機構33の制御を変更する。つまり、基板幅制御部81は、離間距離を狭く調整するときに、可動側コンベア搬送部32の移動前方にバックアップブロック6が検出されると自動調整機構33を停止させる。これによれば、可動側コンベア搬送部32がバックアップブロック6に衝突する不具合を未然に回避することができる。この作用については、後の動作の説明の中で再度述べる。
【0027】
クランプレール4は、前後一対で設けられる。クランプレール4は、搬送路311、321よりも上方の所定位置の高さに配置され、基板Kをクランプして保持する。クランプレール4は、前後のクランプフレーム41、42、およびクランプ操作機構46が付属されている。各々のクランプフレーム41、42は、左右に離隔して立つ二つの脚部431と、二つの脚部431の上端同士を結ぶ架橋部432と、を有する門型に形成されている。脚部431は、板材で形成される。架橋部432は、上方に開口する溝形状の部材で形成される。架橋部432の上面の高さは、前記した所定位置の高さに一致する。
【0028】
前側のクランプフレーム41の二つの脚部431は、フレーム2の前左端および前右端に固定される。後側のクランプフレーム42の二つの脚部431は、向かい合う内側の下部にそれぞれスライダ433を有する。
図2に示されるように、左右のスライダ433の各々は、フレーム2の第一ガイドレール21に係合して、前後方向にスライド移動可能となっている。後側のクランプフレーム42は、可動側コンベア搬送部32に結合されており、可動側コンベア搬送部32と一体的に第二方向に移動する。
【0029】
クランプレール4は、左右方向に延在する細長い板状の部材である。クランプレール4の上面は、印刷孔を有するマスクに接触可能とされている。クランプレール4は、マスクを吸引して密着性を高めるために、その上面に複数の吸引穴(図略)をもつ。前後一対のクランプレール4の向かい合う側面は、基板Kをクランプするクランプ面となっている。
【0030】
クランプレール4は、クランプフレーム41、42の架橋部432の上側に配置され、第二方向への移動が可能となっている。架橋部432の溝形状の内部には、吸引ポンプ45(
図3参照)が配置される。吸引ポンプ45は、基板Kがマスクの下側に配置されると動作し、前記した吸引穴から空気を吸引して、マスクを基板Kに密着させる。
【0031】
また、架橋部432の左右両側に、クランプ操作機構46が配置される。クランプ操作機構46は、制御部8からのクランプ指令が無い場合に前後のクランプレール4の離間距離を大きく維持し、クランプ指令を受け取ったときにクランプレール4の離間距離を小さく制御する。換言すると、前後のクランプレール4は、クランプ指令によって相互に接近する方向に移動し、基板Kを前後に挟んでクランプし、保持する。クランプ操作機構46として、エア圧を用いるシリンダ操作機構や、電磁力を用いる電磁操作機構などを用いることができる。
【0032】
バックアップテーブル5は、第一方向および第二方向に延在する概ね矩形板状の部材である。バックアップテーブル5は、搬送路311、321よりも下方に配置される。バックアップテーブル5は、固定側コンベア搬送部31の支持板310の後側に位置するとともに、可動側コンベア搬送部32が前側に移動するときに支持板320の門型の内側に進入するように構成されている。バックアップテーブル5は、フレーム2の下側に設けられた昇降用モータ51(
図6参照)に駆動されて昇降する。本実施形態において、バックアップテーブル5は、鉄やステンレス合金などの強磁性材料で形成される。バックアップテーブル5の上側に、バックアップブロック6が載置される。
【0033】
2.バックアップブロック6および規制部7の詳細構造
次に、バックアップブロック6および規制部7の詳細構造について、
図1~
図5を参考にして説明する。バックアップブロック6は、バックアップテーブル5の上昇に伴い基板Kの下面を支持しつつ押し上げて、基板Kをクランプレール4に保持させる。バックアップブロック6は、硬質樹脂や金属などで形成される概ね棒形状の部材である。バックアップブロック6は、大型の基板K、特に第一方向の長さ寸法が大きな基板Kに対応するために用いられる。バックアップブロック6の第一方向の長さは、バックアップテーブル5よりも長く形成される。
【0034】
なお、小型の基板Kに対しては、バックアップテーブル5よりも短いバックアップブロック(図略)が用いられる。小型の基板Kに対して大型のバックアップブロック6を用いると、後述するマスク保持部91にバックアップブロック6が干渉して好ましくない。このように、本実施形態では、基板Kの大きさ(第一方向の長さ寸法)に応じて、第一方向の長さが相違する複数種類のバックアップブロック6を使い分ける。
【0035】
バックアップブロック6の上面61は、基板Kの支持および押し上げに適した平面となっている。
図2に示されるように、バックアップブロック6の上面61の全長L1は、バックアップテーブル5よりも長く、さらに、クランプレール4よりも長い。バックアップブロック6の底部は、第一方向の両端および中央部分が切り欠かれて二つの底面62に分かれている。二つの底面62の遠方端を結んだ底部の全長L2は、バックアップテーブル5よりも長い。また、バックアップブロック6は、九箇所が円形に繰り抜かれて、軽量化されている。
【0036】
図4に示されるように、バックアップブロック6の二つの底面62の各々に、下方に開口する埋め込み穴63が設けられる。二つの埋め込み穴63には、それぞれ永久磁石64が埋め込まれている。永久磁石64の下端は、底面62よりもわずかに高い位置に設定される。したがって、永久磁石64は、強磁性材料で形成されたバックアップテーブル5に直接的に接触することなく、磁力の遠隔作用によりバックアップブロック6の移動を抑制する。永久磁石64の磁力の強さおよび埋め込み高さを調整することにより、バックアップブロック6の着脱操作を阻害することなく、バックアップブロック6の移動を抑制することができる。
【0037】
図3に示されるように、複数のバックアップブロック6は、第二方向に並べられて用いられる。これにより、複数のバックアップブロック6は、固定側コンベア搬送部31と可動側コンベア搬送部32の間の大部分の領域を占める。さらに、バックアップブロック6は、基板Kの大きさに応じ、並べて用いられる個数が可変とされている。なお、バックアップブロック6の相互間に若干の隙間が許容される。
【0038】
規制部7は、バックアップテーブル5に対するバックアップブロック6の第一方向の移動を規制する。定量的には、規制部7は、バックアップテーブル5に対するバックアップブロック6の第一方向の移動可能範囲を規定値D(
図2に示す)以下に規制する。規定値Dは、バックアップブロック6が第一方向に移動しても他部材に干渉しないことを条件として設定される。
【0039】
本実施形態において、バックアップブロック6に最も干渉しやすい部材は、ブロック検出センサ34の投光部341および受光部342である。したがって、規定値Dは、バックアップブロック6が第一方向に移動してもブロック検出センサ34に干渉しないことを条件として設定される。換言すると、規制部7は、バックアップブロック6がブロック検出センサ34に干渉しないように、バックアップブロック6の第一方向の移動を規制する。仮に、ブロック検出センサ34よりもバックアップブロック6に接近して配置される他部材が存在する場合、その他部材に対して規定値Dが設定される。
【0040】
規制部7は、バックアップブロック6に設けられた規制ピン71、および、バックアップテーブル5に設けられた規制部位72からなる。
図2および
図4に示されるように、規制ピン71は、バックアップブロック6の第一方向に離隔した二つの底面62の遠方端付近に、二つずつ下向きに設けられている。一方、規制部位72は、バックアップテーブル5の第一方向に離隔した二つの側面とされている。左右の規制ピン71は、バックアップテーブル5を挟み込んで配置されており、換言すると、規制部位72の外側に離間して配置される。
【0041】
そして、バックアップブロック6がバックアップテーブル5に対して正確に左右対称に載置されたとき、左右それぞれにおける規制ピン71と規制部位72との離間距離が規定値Dとなる。規定値Dは、左右対称に載置されたバックアップブロック6と投光部341との離間距離よりも小さく、かつ、左右対称に載置されたバックアップブロック6と受光部342との離間距離よりも小さい。規制部位72がバックアップテーブル5の二つの側面とされているので、大型の基板Kに対応するためにバックアップブロック6を新規に製作した場合でも、バックアップテーブル5の改造は不要である。
【0042】
なお、規制部7は、バックアップブロック6に下向きに設けられた規制ピンと、バックアップテーブル5に設けられて第一方向に延びる長穴と、によって構成されてもよい。この構成では、規制ピンが長穴に係入して長穴の範囲内で移動するので、バックアップブロック6の第一方向の移動が規制される。また、上記と逆に、バックアップブロック6の底部に長穴が設けられ、バックアップテーブル5の上面に規制ピンが立てて設けられてもよい。その他にも、規制部7の構成は、様々に変形することができる。
【0043】
3.基板保持装置1の制御の構成
次に、基板保持装置1の制御の構成について、
図6を参考にして説明する。
図6に示される制御部8は、コンピュータ装置によって構成される。図示されるように、制御部8は、基板搬送部3の一部となる基板幅制御部81を含む。基板幅制御部81は、自動調整機構33の調整用モータ333、およびブロック検出センサ34に接続されている。基板幅制御部81は、ブロック検出センサ34がバックアップブロック6を検出した検出結果に基づいて、調整用モータ333を停止させる。
【0044】
また、制御部8は、搬送用モータ317、327を駆動して、基板Kの搬送を制御する。さらに、制御部8は、昇降用モータ51を駆動して、バックアップテーブル5の昇降を制御する。また、制御部8は、吸引ポンプ45を駆動して吸引穴から空気を吸引させることにより、マスクをクランプレール4に密着させる。さらに、制御部8は、クランプ操作機構46にクランプ指令を送って駆動し、クランプレール4に基板Kを保持させる。
【0045】
4.基板保持装置1の動作および作用
次に、基板保持装置1の動作および作用について、
図7および
図8を参考にして説明する。基板保持装置1が動作を開始する以前に、バックアップテーブル5上にバックアップブロック6が載置されていない場合を想定する。まず、作業対象となる基板Kの大きさに応じて、自動調整機構33により可動側コンベア搬送部32の位置が調整される。これにより、固定側コンベア搬送部31と可動側コンベア搬送部32の間の離間距離が適正化され、さらに、後側のクランプレール4の前後方向の位置が適正化される。
【0046】
次に、オペレータは、バックアップテーブル5上にバックアップブロック6を並べて載置する。このとき、一番後ろに並ぶバックアップブロック6は、投光部341と受光部342の間に位置する可能性が有る。それでも、バックアップブロック6は、規制部7の作用により第一方向に規定値Dの範囲内で移動するだけなので、投光部341や受光部342に干渉することはない。
【0047】
その次に、オペレータは、基板保持装置1に稼働を指令する。すると、基板搬送部3の搬送用モータ317、327が動作し、コンベアベルト316、326が輪転して基板Kを搬送路311、321に沿って搬入する。次に、昇降用モータ51が動作し、
図7の矢印M1に示されるように、バックアップテーブル5が上昇する。これにより、バックアップブロック6は、基板Kの下面を支持し、さらに基板Kをクランプレール4と同じ高さまで押し上げる。
【0048】
次に、クランプ操作機構46が動作し、前側および後側のクランプレール4が互いに接近する方向に移動する。これにより、
図7の矢印M2に示されるように、前後のクランプレール4は、基板Kを前後に挟んでクランプし、保持する。稼働の途中で、バックアップブロック6は、第一方向に移動する可能性が有るが、やはり規定値Dの範囲内で移動するだけなので、投光部341や受光部342には干渉しない。
【0049】
次に、保持された基板Kに対して、所定の対基板作業、すなわちクリーム状はんだの印刷作業が実施される。対基板作業が終了すると、クランプレール4が互いに離隔する方向に移動して基板Kを解放し、バックアップテーブル5が下降する。これにより、基板Kは、コンベアベルト316、326の上に戻される。コンベアベルト316、326は、基板Kを搬送路311、321に沿って搬出する。これで、1枚の基板Kに対する作業が終了する。
【0050】
また、作業対象となる基板Kの大きさが大きく変更される場合、自動調整機構33により、固定側コンベア搬送部31と可動側コンベア搬送部32の間の離間距離が広く再調整され、さらに、後側のクランプレール4の位置が後方に再調整される。オペレータは、バックアップテーブル5上に追加のバックアップブロック6を並べて載置し、その後に基板保持装置1に再稼働を指令する。
【0051】
一方、作業対象となる基板Kの大きさが小さく変更される場合、オペレータは、余分なバックアップブロック6を取り外す操作、および、残されたバックアップブロック6を固定側コンベア搬送部31の側に寄せる操作を行う必要がある。その後、自動調整機構33により、固定側コンベア搬送部31と可動側コンベア搬送部32の間の離間距離が狭く再調整され、さらに、後側のクランプレール4の位置が前方に再調整される。次いで、オペレータは、基板保持装置1に再稼働を指令する。
【0052】
オペレータが上記した二つの操作を適正に行なった場合、可動側コンベア搬送部32の移動前方の所定の移動距離の範囲内にバックアップブロック6は存在しない。したがって、ブロック検出センサ34は、バックアップブロック6を検出せず、離間距離の再調整は良好に終了する。
【0053】
ここで、二つの操作が適正に行われなかった場合を想定する。例えば、オペレータがバックアップブロック6を取り外さない状態や、取り外す個数が不足した状態、あるいは残されたバックアップブロック6の相互間に隙間がある状態で、自動調整機構33が動作した場合を想定する。具体例を示す
図8において、
図3に示された状態から3個のバックアップブロック6を取り外すべきときに2個しか取り外しておらず、破線で示されたバックアップブロック6が余分に残っている。
【0054】
この場合、可動側コンベア搬送部32の所定の移動距離の範囲内にバックアップブロック6が存在している。このため、可動側コンベア搬送部32が所定の移動距離だけ前進する途中で、破線により示されるブロック検出センサ34は、バックアップブロック6を検出する。したがって、この時点で、基板幅制御部81により自動調整機構33の調整用モータ333が停止される。これによれば、可動側コンベア搬送部32がバックアップブロック6に衝突する不具合を未然に回避することができる。
【0055】
この後、基板幅制御部81は、調整エラーの旨を通知する。通知を確認したオペレータは、現状を調査して、余分なバックアップブロック6を取り外し、自動調整機構33を再度動作させる。自動調整機構33は、再度の動作により、可動側コンベア搬送部32を所定の移動距離だけ前進させて、再調整を終了する。
【0056】
実施形態の基板保持装置1では、大型の基板Kに対応するために、第一方向の長さがバックアップテーブル5よりも長い大型のバックアップブロック6を用いる。その上で、バックアップテーブル5に対するバックアップブロック6の第一方向の移動が、規制部7によって規定値Dの範囲内に規制される。このため、バックアップブロック6とブロック検出センサ34などの他部材との干渉を防止することができる。
【0057】
5.実施形態のはんだ印刷機9
次に、実施形態のはんだ印刷機9について、
図9を参考にして説明する。はんだ印刷機9は、上述した実施形態の基板保持装置1と、マスク保持部91と、昇降駆動装置93と、スキージ98と、を備える。
【0058】
マスク保持部91は、基板保持装置1の上方に配置される。マスク保持部91は、印刷孔が形成されたマスク92を水平状態に保持する。マスク92は、基板Kより大きめのサイズとされる。マスク保持部91は、例えば、額縁形状の2つの保持体の間に、長方形のマスク92の四辺を挟んで保持する。
【0059】
昇降駆動装置93は、基板保持装置1の下側に配置される。昇降駆動装置93は、基台94、一対の楔型駆動部材95、および昇降駆動部96で構成される。楔型駆動部材95は、水平な底面および傾斜した上面をもつ楔形状に形成されている。一対の楔型駆動部材95は、基台94の上部に向かい合うように配置されており、相互に接近する方向、および離隔する方向に移動可能である。一方、基板保持装置1は、楔型駆動部材95の傾斜した上面に摺動する傾斜底面97をもつ。基板保持装置1は、楔型駆動部材95の上に昇降可能に載置されている。
【0060】
昇降駆動部96は、一対の楔型駆動部材95を駆動する。昇降駆動部96に駆動されて相互に接近する一対の楔型駆動部材95は、傾斜した上面で基板保持装置1の傾斜底面97を押し上げる。これにより、前後のクランプレール4の間に保持された基板Kは、上昇してマスク92に密着する。
【0061】
スキージ98は、マスク92の上側に配置され、移動機構99に駆動されてマスク92の上面を移動する。これにより、スキージ98は、マスク92の上面でペースト状はんだを移動させ、ペースト状はんだを印刷孔から基板Kに印刷する。このとき、大型の基板Kの下面の広い領域が大型のバックアップブロック6によって支持されているので、印刷品質が安定する。
【0062】
6.実施形態の応用および変形
なお、実施形態の基板保持装置1において、自動調整機構33、ブロック検出センサ34、および基板幅制御部81が省略され、可動側コンベア搬送部32の位置を手動で調整する調整部が設けられてもよい。この構成で、バックアップブロック6は、第二方向に並べて用いられる個数が可変とされる。さらに、クランプレール4は、基板Kを前後にクランプするのでなく、バックアップブロック6との間に基板Kを上下にクランプする構成であってもよい。
【0063】
また、実施形態のはんだ印刷機9において、昇降駆動装置93は、楔型駆動部材95を用いない別の構成、例えばボールねじ送り機構を用いた構成でもよい。さらに、昇降駆動装置93は、基板保持装置1を上昇させる代わりに、マスク保持部91およびスキージ98を下降させてもよい。実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:基板保持装置 2:フレーム 3:基板搬送部 31:固定側コンベア搬送部 32:可動側コンベア搬送部 311、321:搬送路 316、326:コンベアベルト 33:自動調整機構 34:ブロック検出センサ 341:投光部 342:受光部 4:クランプレール 41、42:クランプフレーム 46:クランプ操作機構 5:バックアップテーブル 6:バックアップブロック 64:永久磁石 7:規制部 71:規制ピン 72:規制部位 8:制御部 81:基板幅制御部 9:はんだ印刷機 91:マスク保持部 93:昇降駆動装置 98:スキージ K:基板 D:規定値