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特許7519471ポリアミドの回収方法及び該回収方法により得られたポリアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ポリアミドの回収方法及び該回収方法により得られたポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
C08J11/08 CFG
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022581599
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2020140812
(87)【国際公開番号】W WO2022001054
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】202010611058.5
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520070792
【氏名又は名称】金発科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】KINGFA SCI. & TECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.33 Kefeng Road, Science City, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong 510663, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】常 歓
(72)【発明者】
【氏名】葉 南▲ビャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 成
(72)【発明者】
【氏名】周 沃華
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲シン▼▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 秀梅
(72)【発明者】
【氏名】蘇 楡鈞
(72)【発明者】
【氏名】唐 磊
(72)【発明者】
【氏名】黄 険波
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-521153(JP,A)
【文献】特開2017-124553(JP,A)
【文献】特開2012-107244(JP,A)
【文献】特開平07-179651(JP,A)
【文献】特開2008-187963(JP,A)
【文献】特開2019-006871(JP,A)
【文献】特表2001-514695(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051161(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/060828(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J11/00-11/28
B29B17/00-17/04
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド廃棄物を配合溶剤に加え、50℃~溶液の還流温度に加熱して溶解するまで撹拌し、脱色処理し、濾過してポリアミド溶液を得るステップと、ポリアミド溶液を脱イオン水に加え、脱イオン水中でポリアミドを沈殿析出させ、分離して回収ポリアミドを得るステップと、を含み、
前記配合溶剤は、フェノール10~30重量部とトルエン15~40重量部とを含み、ポリアミド廃棄物と配合溶剤との重量比が1:10~1:2であることを特徴とするポリアミドの回収方法。
【請求項2】
ポリアミドに配合溶剤を加えた後、100℃~溶液の還流温度に加熱して撹拌溶解し、その後の脱色と濾過処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの回収方法。
【請求項3】
脱色処理時に脱色剤を加え、脱色剤とポリアミド廃棄物との重量比を(1:8)~(1:12)の範囲とし、溶液を50℃~溶液の還流温度に昇温して0.5~2時間保持してから、50℃未満まで降温した後、濾過してポリアミド溶液を得ることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの回収方法。
【請求項4】
ポリアミド溶液と脱イオン水との重量比が1:5~1:50であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの回収方法。
【請求項5】
前記配合溶剤は、メタノール0~5重量部、o-クレゾール0~20重量部、ベンジルアルコール0~20重量部の1種又は2種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの回収方法。
【請求項6】
ポリアミドを析出する温度範囲が0℃~50℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの回収方法。
【請求項7】
前記脱色剤は活性炭、活性白土から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のポリアミドの回収方法。
【請求項8】
前記ポリアミド廃棄物は脂肪族ポリアミド廃棄物、半芳香族ポリアミド廃棄物から選ばれる少なくとも1種であり、前記脂肪族ポリアミド廃棄物は、PA6廃棄物、PA66廃棄物、PA12廃棄物、PA1010廃棄物、PA1012廃棄物から選ばれる少なくとも1種であり、前記半芳香族ポリアミド廃棄物は、PA6T廃棄物、PA10T廃棄物、PA10T10I廃棄物、PA10T1010廃棄物、PA10T1012廃棄物、PA10T6T廃棄物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの回収方法。
【請求項9】
ポリアミド廃棄物を配合溶剤に加える前に、粉砕ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境にやさしい高分子材料の技術分野に関し、特に、ポリアミドの回収方法及び該回収方法により得られるポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは4つの主なエンジニアリングプラスチックのうちの1つであり、広く利用されているが、使用済みのポリアミドは通常、ゴミとしてそのまま廃棄され、量が膨大であり、エネルギーの浪費と環境汚染の原因となっている。そこで、世界的に回収ポリアミドのリサイクルが課題とされているが、今でも回収方法は非常に簡単であり、一部は再造粒後に特性が深刻に低下したため、ローエンド製品分野に応用される以外、残りはほとんど焼却処理されて燃焼時に放出される熱エネルギーが利用されており、このため、エネルギー利用効率が低い一方で、ポリアミド分子中にN元素を含むため、燃焼過程で窒素化合物が放出されて環境を深刻に汚染する。溶液によるポリアミドの回収は、ポリマーのエネルギーを最大限に利用することができると同時に、特性が低下しないことを確保し、このため、環境に優しく、汚染が小さい。
【0003】
CN109810284AはPA12の回収方法を提供しており、S1、PA12廃棄物を複合溶剤系に加え、撹拌溶解し、S2、反応系を60~90℃まで加熱して、水浴で2~5h保温し、PA12廃棄物を十分に溶解し、S3、反応後の溶液を遠心分離し、上層の清液に脱イオン水を加えてPA12沈殿を析出させ、S4、PA12沈殿を真空乾燥し、溶剤を完全に除去してPA12粉末を得る。この発明の溶剤系は、ギ酸5~28%、塩酸1~10%、酢酸25~35%、残部の脱イオン水であり、ポリアミドと極性の強い水素イオン、酸素根イオンとの水素結合を利用してポリアミドを溶解する典型的な強プロトン型溶剤である。しかし、ギ酸、塩酸、酢酸はすべて非常に強い腐食性と揮発性を持ち、酸性が非常に強く、設備を腐食しやすく、また、脱イオン水を加えてポリアミドを析出させるステップで発生する廃水は非常に強い酸性を有し、アルカリで中和してから下水処理を行う必要があり、環境に優しくない。強酸性環境下で溶解するとアミド結合の一部が加水分解し、ポリアミドの主鎖が破壊され、低分子量ポリアミドへの転化が行われ、回収ポリアミドの特性を著しく弱め、固体を分離する方法は遠心分離であり、このプロセスは大量生産に適さず、コストが高い。
【0004】
中国特許CN101058695Aは、主体硬化物がポリアミド(PA)、ポリアミド(PA6)、ポリアミド(PA66)、ポリアミド(PA610)、ポリアミド(PA1010)、ポリアミド(PA12)のいずれかである金属用塗料を開示しており、主溶剤は、m-クレゾール、m-p-クレゾール、メチルフェノール、フェノールのうちの1種又は2種以上であり、助溶剤は、キシレン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルののうちの1種又は2種以上である。その配合溶剤はポリアミドをよく溶解するが、ポリアミドだけでなく他の塗料組成物も溶解する必要があるため、主溶剤の量は助溶剤の量よりも多くなる。ポリアミドの回収に使用すると、析出過程で析出できないポリアミドも少量あり、収率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フェノール/トルエンを配合溶剤の主成分とするので、揮発性と刺激性が少なく、環境にやさしく、汚染が少なく、設備に対する腐食性が少なく、しかもポリアミドの析出に有利であり、得られたポリアミドの結晶性が良く、キャッピング(end-capping)率が向上し(フェノールをキャッピング剤とする)、耐老化性と加水分解耐性/アルコール分解耐性が向上し、回収ポリアミドの利用価値を高め、回収ポリアミドの利用分野を拡大するのに有利であるポリアミド廃棄物の回収方法及び該方法により得られるポリアミドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術的解決手段によって実現される。
【0007】
ポリアミド廃棄物を配合溶剤(mixed solvent)に加え、50℃~溶液の還流温度に加熱して溶解するまで撹拌し、脱色処理し、濾過してポリアミド溶液を得るステップと、ポリアミド溶液を脱イオン水に加え、脱イオン水中でポリアミドを沈殿析出させ、分離して回収ポリアミドを得るステップと、を含み、
前記配合溶剤は、フェノール10~30重量部とトルエン15~40重量部とを含み、ポリアミド廃棄物と配合溶剤との重量比が1:10~1:2であるポリアミドの回収方法。
【0008】
ポリアミド廃棄物がすべて溶解した後、そのまま次のステップに進んでもよいし、室温(20℃~40℃)まで温度を下げてから次のステップに進んでもよく、溶解したポリアミドが配合溶液中で温度低下によって析出することはない。溶液を脱色処理した後、濾過する。一般的には、脱色剤を用いて脱色し、脱色後のポリアミドの澄明な溶液(この場合の状態では、他の色が薄く残っている可能性があるが、懸濁粒子は肉眼では観察されない)が脱イオン水に流入し、貧溶剤(poor solvent)である脱イオン水の作用でポリアミドが析出する。このとき、フェノール/トルエン/水系では、ポリアミドは結晶性の高い状態で粒子として析出させることができ、より優れた結晶性を有する。
【0009】
好ましくは、ポリアミドに配合溶剤を加えた後、100℃~溶液の還流温度に加熱して撹拌溶解し、その後の脱色と濾過処理を行う。好ましい温度では、フェノールはポリアミドの末端基と縮合反応を起こし、キャッピング率を向上させることができる。
【0010】
脱色処理時に脱色剤を加え、脱色剤とポリアミド廃棄物との重量比を(1:8)~(1:12)の範囲とし、溶液を50℃~溶液の還流温度に昇温して0.5~2時間保持してから、50℃未満まで降温した後、濾過してポリアミド溶液を得る。脱色剤は、活性炭、活性白土等から選ばれるが、これらに限定されない。
【0011】
好ましくは、前記配合溶剤は、メタノール0~5重量部、o-クレゾール0~20重量部、ベンジルアルコール0~20重量部のうちの1種又は2種以上をさらに含む。
【0012】
フェノール/トルエン溶剤系に他の溶剤を加えると、ポリアミドの多くの特性を改善し、メタノールを一定量加えると、溶融指数を高めて、ポリアミドの流動性を強化し、o-クレゾール又はベンジルアルコールを一定量加えると、ポリアミドの加水分解耐性、アルコール分解耐性及び耐熱老化性を向上させることができる。
【0013】
ポリアミド溶液と脱イオン水との重量比は1:5~1:50である。
【0014】
ポリアミドを析出する温度範囲が0℃~50℃である。
【0015】
本発明の方法に用いられる配合溶剤、割合及び溶解方法は、ポリアミド廃棄物のほぼ全てを溶解するために用いることができる。前記ポリアミド廃棄物は、脂肪族ポリアミド廃棄物、半芳香族ポリアミド廃棄物から選ばれる少なくとも1種であり、前記脂肪族ポリアミド廃棄物は、PA6廃棄物、PA66廃棄物、PA12廃棄物、PA1010廃棄物、PA1012廃棄物から選ばれる少なくとも1種であり、前記半芳香族ポリアミド廃棄物は、PA6T廃棄物、PA10T廃棄物、PA10T1010廃棄物、PA10T1012廃棄物、PA10T10I廃棄物、PA10T6T廃棄物から選ばれる少なくとも1種である。
【0016】
ポリアミド廃棄物を配合溶剤に加える前に、粉砕ステップをさらに含む。ポリアミド廃棄物を粉砕することにより溶解速度を上げることができ、また、ポリアミド廃棄物の表面に、本発明の配合溶剤に不溶な他の材料が含まれている場合には、粉砕することにより、ポリアミド廃棄物の溶解を促進することができる。
【0017】
本発明の回収方法により、ポリアミド中のカルボキシル含有量の範囲を低減し、結晶性を向上させることができる。上記のポリアミドの回収方法により得られるポリアミドは、ポリアミド中の末端カルボキシル含有量が10~40mol/tの範囲であり、結晶半値幅が6~12℃の範囲であり、結晶エンタルピーが-40~60J/gの範囲である。
【発明の効果】
【0018】
現有技術と比較して、本発明は次のような有益な効果を有する。
【0019】
従来技術と比較して、本発明は、低揮発性低刺激性のフェノール/トルエン溶剤系を使用するため、設備に対して腐食がなく、環境に優しく、重要なことに、溶剤中のフェノールはポリアミドに対して「二次」キャッピングを行うことができ、キャッピング率を上げて、末端のカルボキシルの含有量を下げて、耐老化性を高めることができ、ポリアミド溶液を脱イオン水に加えることにより、ポリアミドを十分に析出させることができ、析出効率が高く、得られるポリアミドの結晶性が良好である。さらに、ベンジルアルコール、o-クレゾール、メタノールなどの溶剤成分を加えることにより、ポリアミド回収材料に高流動性、加水分解耐性、アルコール分解耐性、耐熱老化性などの他の特性をもたらし、ポリアミド回収材料の応用分野を広げることを考察した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を詳細に説明する。以下の実施例は、当業者が本発明をさらに理解することを容易にするが、いかなる形態でも本発明を限定するものではない。なお、当業者にとっては、本発明の概念から逸脱することなく、若干の変形及び改良が加えられてもよい。これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0021】
本発明に使用される原料の由来は次のとおりである。
【0022】
ポリアミド廃棄物PA12:暖房パイプ、自動車エンジンの周辺部品などの回収材料に由来し、少量のトナーを含み、理論的にはPA12の含有量は約95%~97%である。
【0023】
ポリアミド廃棄物PA66:機械設備中の歯車、軸受などの部品からの回収材料であり、強化用ガラス繊維を含み、理論的にはPA66の含有量は約65%~70%である。
【0024】
ポリアミド廃棄物PA10T:エンジン周辺部品由来の回収材料であり、強化ガラス繊維を含み、理論的には、PA10T含有量は60~70%である。
フェノール:工業的純粋
トルエン:工業的純粋
メタノール:工業的純粋;
ベンジルアルコール:工業的純粋
o-クレゾール:工業的純粋。
【0025】
各特性の試験方法:
(1)末端カルボキシル含有量:電位滴定計を用いてポリマーの末端アミノと末端カルボキシル含有量を測定する。サンプル0.45gの材料を計量し、すでに予熱して溶解したo-クレゾール50mLを加えて加熱してサンプルを溶解するまで還流し、50℃の水槽に置いて50℃まで冷却した後、ホルムアルデヒド溶液0.5mLを加え、マグネットを入れて溶液を撹拌し、全自動電位滴定器の電極試験部分を溶液中に浸漬し、すでに較正したKOH-エタノール溶液で末端カルボキシル含有量を滴定して試験した。
(2)結晶半値幅:標準ASTM D3418-2003を参照し、窒素雰囲気保護下、流速20mL/minで、試験するときに、10℃/minの昇温速度で30℃から350℃まで昇温し、350℃で5min保持し、その後10℃/minの降温速度で50℃まで降温し、この時の結晶曲線中の結晶ピーク温度は融点で、結晶半値幅は結晶ピークが1/2の結晶ピークの高さである場合の温度範囲である。
(3)結晶エンタルピー:標準ASTM D3418-2003を参照し、窒素雰囲気保護下、流速20mL/minで、試験するときに10℃/minの昇温速度で30℃から350℃まで昇温し、350℃で5min保持し、その後10℃/minの降温速度で50℃まで降温し、この時の結晶ピークの面積は結晶エンタルピーの数値である。
(4)溶融指数:標準ASTM D1238-2010を参照し、標準化溶融指数計を用い、190℃と1.0kgの荷重圧力下で、10min以内に標準キャピラリから流出した材料の溶融指数品質を試験する。
(5)加水分解耐性:回収したポリアミドを標準試験片として射出成形し、加水分解処理前後の材料試験片の引張強さ及び曲げ強さを試験し、加水分解処理条件として、試験片を100℃の水中に置き、3時間水煮し、水煮前の機械的性質と比較して引張強さ及び曲げ強さの保持率を算出し、その保持率をパーセンテージで表す。
(6)アルコール分解耐性:回収したポリアミドを標準試験片として射出成形し、アルコール分解処理前後の材料試験片の引張強さ及び曲げ強さを試験し、アルコール分解処理条件として、試験片を70℃のエタノール中に置き、3時間加熱浸漬処理し、アルコール分解処理前の機械的性質と比較して、引張強さ及び曲げ強さの保持率を算出し、その保持率をパーセンテージで表す。
(7)耐熱老化性:回収したポリアミドを標準試験片として射出成形し、老化処理前後の材料試験片の引張強さ及び曲げ強さを試験し、老化処理条件として、試験片を100℃のオーブン内に置き、12時間ベークし、ベーク前の機械的特性と比較して、引張強さ及び曲げ強さの保持率を算出し、その保持率をパーセンテージで表す。
【0026】
実施例1
ポリアミド廃棄物PA12 100gをフェノール100g/トルエン200gの配合溶剤に加え、100℃に加熱して撹拌溶解し、活性炭10gを加え、100℃で0.5時間保温撹拌し、40℃に降温した後、濾過してポリアミド溶液を得て、このポリアミド溶液を脱イオン水3000gに緩やかに加え、ポリアミドを沈殿析出させた。ポリアミドを乾燥させた後、他の特性の試験を行った。
【0027】
実施例2
配合溶剤にはさらにメタノール20gを加えた以外、実施例1と同様であった。
【0028】
実施例3
配合溶剤にはさらにo-クレゾール50gを加えた以外、実施例1と同様であった。
【0029】
実施例4
配合溶剤にはさらにベンジルアルコール30gを加えた以外、実施例1と同様であった。
【0030】
実施例5
ポリアミド廃棄物PA12 100gをフェノール100g/トルエン200gの配合溶剤に加え、60℃に加熱して撹拌溶解した以外、実施例1と同様であった。
【0031】
実施例6
ポリアミド廃棄物PA66 100gをフェノール80g/トルエン160gの配合溶剤に加え、80℃に加熱して撹拌溶解し、活性炭10gを加え、さらに100℃に昇温して0.5時間保温撹拌し、30℃に降温した後、濾過してポリアミド溶液を得て、このポリアミド溶液を脱イオン水3000gに緩やかに加え、ポリアミドを沈殿析出させた。ポリアミドを乾燥させた後、他の特性の試験を行った。
【0032】
実施例7
ポリアミド廃棄物PA10T 100gをフェノール90g/トルエン160g/メタノール20gの配合溶剤に加え、80℃に加熱して撹拌溶解し、活性炭10gを加え、80℃で0.5時間保温撹拌し、40℃に降温した後、濾過してポリアミド溶液を得て、このポリアミド溶液を脱イオン水3000gに緩やかに加え、ポリアミドを沈殿析出させた。ポリアミドを乾燥させた後、他の特性の試験を行った。
【0033】
実施例8
配合溶剤にはさらにメタノール15g、o-クレゾール50g、ベンジルアルコール30gを加えた以外、実施例1と同様であった。
【0034】
比較例1
ポリアミド廃棄物PA12 100gを複合溶剤1500g(ギ酸15%、塩酸10%、酢酸35%、水40%)に加え、80℃で4h撹拌溶解した後、遠心分離し(回転速度4000R/min)、上層の清液を脱イオン水1500gに加え、PA12沈殿を析出させ、沈殿を乾燥させた後、他の特性の試験を行った。
【0035】
比較例2
ポリアミド廃棄物PA12 100gをフェノール200gに加え、100℃に加熱して撹拌溶解し、活性炭10gを加え、0.5時間保温撹拌し、60℃に降温した後、濾過してポリアミド溶液を得て、このポリアミド溶液を脱イオン水3000gに緩やかに加え、ポリアミドを沈殿析出させた。ポリアミドを乾燥させた後、特性の試験を行った。
【0036】
比較例3
ポリアミド廃棄物PA12 100gを、o-クレゾール100g/トルエン200gの配合溶剤に加え、100℃に加熱して撹拌溶解し、活性炭10gを加え、0.5時間保温撹拌し、40℃に降温した後、濾過してポリアミド溶液を得て、このポリアミド溶液を脱イオン水3000gに緩やかに加え、ポリアミドを沈殿析出させた。ポリアミドを乾燥させた後、他の特性の試験を行った。
【0037】
表1:実施例と比較例の各試験の結果
【0038】
表1の続き:
【0039】
実施例1、2より、回収溶剤にメタノールを加えて相乗的に作用させることで、回収ポリアミドの溶融指数を効果的に上昇させるだけでなく、その他の特性を維持、向上できることが分かった。
【0040】
実施例1、3及び4より、回収溶剤にo-クレゾール、ベンジルアルコールをそれぞれ加えて相乗的に作用させることで、回収ポリアミドの加水分解耐性、耐熱老化性、アルコール分解耐性を著しく向上できることが分かった。
【0041】
実施例1と比較例1から分かるように、回収溶剤として配合酸性溶剤を用いると、回収ポリアミドは、カルボキシル末端基の含有量が多く、結晶性が低下するだけでなく、加水分解耐性、耐熱老化性、アルコール分解耐性が低下し、このときの高溶融指数は、ポリアミド回収プロセスにおいて分子鎖の一部が切断されたことによるものである。
【0042】
実施例1と比較例2から分かるように、単一フェノールを回収溶剤とすることで、回収ポリアミドの結晶性も低下し、加水分解耐性、耐熱老化性、アルコール分解耐性が大幅に低下した。
【0043】
実施例1と比較例合3から分かるように、o-クレゾール/トルエン配合溶剤を用いると、回収ポリアミドは、末端カルボキシル含有量が高く、加水分解耐性、耐熱老化性、アルコール分解耐性が悪かった。
本発明の特許請求の範囲に記載されていた態様は以下を包含する。
〔1〕ポリアミド廃棄物を配合溶剤に加え、50℃~溶液の還流温度に加熱して溶解するまで撹拌し、脱色処理し、濾過してポリアミド溶液を得るステップと、ポリアミド溶液を脱イオン水に加え、脱イオン水中でポリアミドを沈殿析出させ、分離して回収ポリアミドを得るステップと、を含み、
前記配合溶剤は、フェノール10~30重量部とトルエン15~40重量部とを含み、ポリアミド廃棄物と配合溶剤との重量比が1:10~1:2であることを特徴とするポリアミドの回収方法。
〔2〕ポリアミドに配合溶剤を加えた後、100℃~溶液の還流温度に加熱して撹拌溶解し、その後の脱色と濾過処理を行うことを特徴とする〔1〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔3〕脱色処理時に脱色剤を加え、脱色剤とポリアミド廃棄物との重量比を(1:8)~(1:12)の範囲とし、溶液を50℃~溶液の還流温度に昇温して0.5~2時間保持してから、50℃未満まで降温した後、濾過してポリアミド溶液を得ることを特徴とする〔1〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔4〕ポリアミド溶液と脱イオン水との重量比が1:5~1:50であることを特徴とする〔1〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔5〕前記配合溶剤は、メタノール0~5重量部、o-クレゾール0~20重量部、ベンジルアルコール0~20重量部の1種又は2種以上をさらに含むことを特徴とする〔1〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔6〕ポリアミドを析出する温度範囲が0℃~50℃であることを特徴とする〔1〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔7〕前記脱色剤は活性炭、活性白土から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする〔3〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔8〕前記ポリアミド廃棄物は脂肪族ポリアミド廃棄物、半芳香族ポリアミド廃棄物から選ばれる少なくとも1種であり、前記脂肪族ポリアミド廃棄物は、PA6廃棄物、PA66廃棄物、PA12廃棄物、PA1010廃棄物、PA1012廃棄物から選ばれる少なくとも1種であり、前記半芳香族ポリアミド廃棄物は、PA6T廃棄物、PA10T廃棄物、PA10T10I廃棄物、PA10T1010廃棄物、PA10T1012廃棄物、PA10T6T廃棄物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする〔1〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔9〕ポリアミド廃棄物を配合溶剤に加える前に、粉砕ステップをさらに含むことを特徴とする〔1〕に記載のポリアミドの回収方法。
〔10〕ポリアミド中、末端カルボキシル含有量が10~40mol/tの範囲であり、結晶半値幅が6~12℃の範囲であり、結晶エンタルピーが-40~60J/gの範囲であることを特徴とする〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のポリアミドの回収方法により得られるポリアミド。