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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】加熱処理装置、および加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20240711BHJP
   F26B 3/28 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
F26B5/04
F26B3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023111945
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2021207892の分割
【原出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023133315
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021043417
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 杏太
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】今岡 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小林 憲明
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-205991(JP,A)
【文献】特開2014-135393(JP,A)
【文献】特開2003-075061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
F26B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、支持部により支持されるワークを処理する処理領域と、
前記チャンバの内部に設けられ、前記処理領域を囲うように設けられる均熱部と、
前記チャンバの内部に設けられ、前記処理領域内の前記ワークを加熱する加熱部と、
前記均熱部により囲われた前記処理領域の外側に設けられ、冷却ガスを供給する第1のノズルと、
前記均熱部により囲われた前記処理領域の内側に設けられ、前記ワークを直接冷却する冷却ガスを供給する第2のノズルと、
前記第1のノズルおよび前記第2のノズルを制御するガス制御部と、
前記チャンバの内部を排気し、前記チャンバの内圧が第1の圧力となるよう制御する圧力制御部を有する排気部と、を有し、
前記排気部は、前記加熱部による前記ワークの加熱時に前記チャンバの内圧が前記第1の圧力となるよう制御し、
前記ガス制御部は、前記加熱部による前記ワークの加熱の後、前記第1のノズルからの前記冷却ガスの供給を開始し、前記チャンバの内圧が第2の圧力となったときに前記第2のノズルからの前記冷却ガスの供給を開始するよう制御し、
前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも大気圧に近い圧力であることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項2】
前記均熱部は、
均熱板支持部と、
前記均熱板支持部によって支持される複数の板状の部材である均熱板と、を有し、
前記処理領域は、前記複数の均熱板同士の間に設けられた隙間を介し、前記チャンバの内部の空間と繋がっていることを特徴とする請求項1記載の加熱処理装置。
【請求項3】
前記チャンバの内部において、前記処理領域は鉛直方向に間を空けて複数重ねて配置され、
前記加熱部および前記第1のノズルは、複数の前記処理領域の前記間に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記第2のノズルは、前記ワークの裏面に対して平行に前記冷却ガスを供給することを特徴とする請求項1または2記載の加熱処理装置。
【請求項5】
チャンバ内において、均熱部で囲われた処理領域内に支持されたワークを加熱処理する加熱処理方法であって、
前記チャンバの内部空間を第1の圧力まで減圧する排気工程と、
前記ワークを加熱部により加熱処理する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程の後、前記均熱部により囲われた前記処理領域の外側に設けられ、冷却ガスを供給する第1のノズルから前記冷却ガスを供給することにより、前記均熱部を冷却する第1の冷却工程と、
前記加熱処理工程の後、前記均熱部により囲われた前記処理領域の内側に設けられ、前記ワークを直接冷却する第2のノズルから前記冷却ガスを供給することにより、前記ワークを冷却する第2の冷却工程と、を有し、
前記第2の冷却工程は、前記チャンバ内の内圧が第2の圧力となったときに開始し、
前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも大気圧に近い圧力であることを特徴とする加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加熱処理装置、および加熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機膜形成装置は、例えば、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能なチャンバと、チャンバの内部に設けられ、ワークを加熱するヒータと、を備えている。この様な有機膜形成装置は、有機材料と溶媒を含む溶液が塗布された基板を、大気圧よりも減圧された雰囲気において加熱し、溶液に含まれている溶媒を蒸発させることで、有機膜を形成する。(例えば、特許文献1を参照)
ここで、溶液を加熱した際に、溶液に含まれていた物質が昇華(気化)する場合がある。昇華物に含まれている成分は、加熱されたワークよりも温度の低いチャンバの内壁などに固体となって付着する場合がある。チャンバの内壁などに付着した固体が、チャンバの内壁などから剥がれると、パーティクルなどの異物となってワークの表面に付着するおそれがある。
【0003】
そのため、定期的に、あるいは必要に応じて、チャンバの内壁などに付着した固体を除去するクリーニングが行われる。例えば、半導体製造装置などの、有機膜形成装置とは異なる技術分野においては、チャンバを密閉した状態で、チャンバの内部の排気と、チャンバの内部へのクリーニングガスの供給と、を順次実行することで、チャンバの内部にある異物を排出する技術が提案されている。(特許文献2を参照)
ところが、有機膜形成装置において、半導体製造装置のようなクリーニング(例えば、チャンバを密閉した状態で、チャンバの内部の排気と、チャンバの内部へのクリーニングガスの供給と、を順次実行するクリーニング)を行っても、異物の充分な除去ができないことが判明した。
そこで、チャンバの内部にある、パーティクルなどの異物の充分な除去が可能な有機膜形成装置、および有機膜形成装置のクリーニング方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-184229号公報
【文献】特開2002-184708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、チャンバの内部にある異物の充分な除去が可能な有機膜形成装置、および有機膜形成装置のクリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る加熱処理装置は、チャンバと、前記チャンバの内部に設けられ、支持部により支持されるワークを処理する処理領域と、前記チャンバの内部に設けられ、前記処理領域を囲うように設けられる均熱部と、前記チャンバの内部に設けられ、前記処理領域内の前記ワークを加熱する加熱部と、前記均熱部により囲われた前記処理領域の外側に設けられ、前記均熱部を冷却する冷却ガスを供給する第1のノズルと、前記均熱部により囲われた前記処理領域の内側に設けられ、前記ワークを直接冷却する冷却ガスを供給する第2のノズルと、前記第1のノズルおよび前記第2のノズルを制御するガス制御部と、前記チャンバの内部を排気し、前記チャンバの内圧が第1の圧力となるよう制御する圧力制御部を有する排気部と、を有し、前記排気部は、前記加熱部による前記ワークの加熱時に前記チャンバの内圧が前記第1の圧力となるよう制御し、前記ガス制御部は、前記加熱部による前記ワークの加熱の後、前記第1のノズルからの前記冷却ガスの供給を開始し、前記チャンバの内圧が第2の圧力となったときに前記第2のノズルからの前記冷却ガスの供給を開始するよう制御し、前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも大気圧に近い圧力であることを特徴とする。
実施形態に係る加熱処理方法は、チャンバ内において、均熱部で囲われた処理領域内に支持されたワークを加熱処理する加熱処理方法であって、前記チャンバの内部空間を第1の圧力まで減圧する排気工程と、前記ワークを加熱部により加熱処理する加熱処理工程と、前記加熱処理工程の後、前記均熱部により囲われた前記処理領域の外側に設けられ、冷却ガスを供給する第1のノズルから前記冷却ガスを供給することにより、前記均熱部を冷却する第1の冷却工程と、前記加熱処理工程の後、前記均熱部により囲われた前記処理領域の内側に設けられ、前記ワークを直接冷却する第2のノズルから前記冷却ガスを供給することにより、前記ワークを冷却する第2の冷却工程と、を有し、前記第2の冷却工程は、前記チャンバ内の内圧が第2の圧力となったときに開始し、前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも大気圧に近い圧力であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、チャンバの内部にある異物の充分な除去が可能な有機膜形成装置、および有機膜形成装置のクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る有機膜形成装置を例示するための模式斜視図である。
図2】ワークの処理工程を例示するためのグラフである。
図3】クリーニング部の作用を例示するための模式断面図である。
図4】排気部によるパーティクルの排出と、クリーニング部によるパーティクルの排出とを組み合わせた場合のグラフである。
図5】クリーニング部によるパーティクルの排出のみを行った場合のグラフである。
図6】クリーニング部によるパーティクルの排出のみを行った場合のグラフである。
図7】他の実施形態に係るクリーニング部を例示するための模式断面図である。
図8】他の実施形態に係るクリーニング部を例示するための模式断面図である。
図9】他の実施形態に係る有機膜形成装置を例示するための模式斜視図である。
図10】他の実施形態に係るクリーニング部を例示するための模式断面図である。
図11】他の実施形態に係る有機膜形成装置を例示するための模式斜視図である。
図12】他の実施形態に係るクリーニング部を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る有機膜形成装置1を例示するための模式斜視図である。
なお、図1中のX方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する三方向を表している。本明細書における上下方向は、Z方向とすることができる。
【0011】
有機膜を形成する前のワーク100は、基板と、基板の上面に塗布された溶液と、を有する。
基板は、例えば、ガラス基板や半導体ウェーハなどとすることができる。ただし、基板は、例示をしたものに限定されるわけではない。
溶液は、例えば、有機材料と溶剤を含んでいる。有機材料は、溶剤により溶解が可能なものであれば特に限定はない。溶液は、例えば、ポリアミド酸を含むワニスなどとすることができる。ただし、溶液は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0012】
図1に示すように、有機膜形成装置1には、例えば、チャンバ10、排気部20、処理部30、冷却部40、クリーニング部50、およびコントローラ60が設けられている。
【0013】
コントローラ60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを備えている。コントローラ60は、例えば、コンピュータなどとすることができる。コントローラ60は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、有機膜形成装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0014】
チャンバ10は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造を有している。チャンバ10は、箱状を呈している。チャンバ10の外観形状には特に限定はない。チャンバ10の外観形状は、例えば、直方体とすることができる。チャンバ10は、例えば、ステンレスなどの金属から形成することができる。
【0015】
Y方向において、チャンバ10の一方の端部にはフランジ11を設けることができる。フランジ11には、Oリングなどのシール材12を設けることができる。チャンバ10の、フランジ11が設けられた側の開口11aは、扉13により開閉可能となっている。図示しない駆動装置により、扉13がフランジ11(シール材12)に押し付けられることで、チャンバ10の開口11aが気密になるように閉鎖される。図示しない駆動装置により、扉13がフランジ11から離隔することで、チャンバ10の開口11aが解放され、開口11aを介したワーク100の搬入または搬出が可能となる。また、チャンバ10の開口11aが解放されることで、後述するクリーニング部50によるクリーニングが可能となる。
すなわち、チャンバ10は、ワーク100を搬入または搬出する開口11aを有し、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能となっている。扉13は、チャンバ10の開口11aを開閉可能となっている。
【0016】
Y方向において、チャンバ10の他方の端部にはフランジ14を設けることができる。フランジ14には、Oリングなどのシール材12を設けることができる。チャンバ10の、フランジ14が設けられた側の開口は、蓋15により開閉可能となっている。例えば、蓋15は、ネジなどの締結部材を用いてフランジ14に着脱可能に設けることができる。メンテナンスなどを行う際には、蓋15を取り外すことで、チャンバ10の、フランジ14が設けられた側の開口を露出させる。
【0017】
チャンバ10の外壁、および扉13の外面には冷却部16を設けることができる。冷却部16には、図示しない冷却水供給部が接続されている。冷却部16は、例えば、ウォータージャケット(Water Jacket)とすることができる。冷却部16が設けられていれば、チャンバ10の外壁の温度や、扉13の外面の温度が所定の温度よりも高くなるのを抑制することができる。
【0018】
排気部20は、チャンバ10の内部を排気する。排気部20は、例えば、第1の排気部21、第2の排気部22、および第3の排気部23を有する。
第1の排気部21は、例えば、チャンバ10の底面に設けられた排気口17に接続されている。
第1の排気部21は、例えば、排気ポンプ21aと、圧力制御部21bとを有する。
排気ポンプ21aは、大気圧から所定の圧力まで粗引き排気を行う排気ポンプとすることができる。そのため、排気ポンプ21aは、後述する排気ポンプ22aよりも排気量が多い。排気ポンプ21aは、例えば、ドライ真空ポンプなどとすることができる。
【0019】
圧力制御部21bは、例えば、排気口17と排気ポンプ21aとの間に設けられている。圧力制御部21bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部21bは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0020】
なお、排気口17と圧力制御部21bとの間には、排気された昇華物をトラップするためのコールドトラップ24が設けられている。また、排気口17とコールドトラップ24との間にバルブ25が設けられている。バルブ25は、後述の冷却工程において、流体101がコールドトラップ24に流入するのを防ぐ役割を果たす。
【0021】
第2の排気部22は、例えば、チャンバ10の底面に設けられた排気口18に接続されている。
第2の排気部22は、例えば、排気ポンプ22aと、圧力制御部22bを有する。
排気ポンプ22aは、排気ポンプ21aによる粗引き排気の後、さらに低い所定の圧力まで排気を行う。排気ポンプ22aは、例えば、高真空の分子流領域まで排気可能な排気能力を有する。例えば、排気ポンプ22aは、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
【0022】
圧力制御部22bは、例えば、排気口18と排気ポンプ22aとの間に設けられている。圧力制御部22bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部22bは、例えば、APCなどとすることができる。なお、排気口18と圧力制御部21bとの間には、第1の排気部21と同様に、コールドトラップ24およびバルブ25を設けることができる。
【0023】
なお、以上においては、排気口17および排気口18がチャンバ10の底面に設けられる場合を例示したが、排気口17および排気口18は、例えば、チャンバ10の天井面に設けることもできる。排気口17および排気口18がチャンバ10の底面、または天井面に設けられていれば、チャンバ10の内部に、チャンバ10の底面、または天井面に向かう気流を形成することができる。
【0024】
ここで、有機材料と溶媒を含む溶液が塗布されたワーク100を加熱した際に、溶液に含まれていた物質が昇華(気化)する場合がある。昇華物に含まれている成分は、加熱されたワーク100よりも温度の低いチャンバ10の内壁などに固体となって付着する場合がある。チャンバ10の内壁などに付着した固体が、チャンバ10の内壁などから剥がれると、パーティクルなどの異物となってワーク100の表面に付着するおそれがある。
【0025】
この場合、チャンバ10の内部に、チャンバ10の底面、または天井面に向かう気流が形成されていれば、昇華物やパーティクルなどの異物を、気流に乗せてチャンバ10の外部に排出し易くなる。そのため、パーティクルなどの異物が、ワーク100に付着するのを抑制することができる。
【0026】
処理部30は、例えば、フレーム31、加熱部32、支持部33、均熱部34、均熱板支持部35、および、カバー36を有する。
処理部30の内部には、処理領域30aおよび処理領域30bが設けられている。処理領域30a、30bは、ワーク100に処理を施す空間となる。ワーク100は、処理領域30a、30bの内部に支持される。処理領域30bは、処理領域30aの上方に設けられている。なお、2つの処理領域が設けられる場合を例示したがこれに限定されるわけではない。1つの処理領域のみが設けられるようにすることもできるし、3つ以上の処理領域が設けられるようにすることもできる。本実施の形態においては、一例として、2つの処理領域が設けられる場合を例示するが、1つの処理領域、および、3つ以上の処理領域が設けられる場合も同様に考えることができる。
【0027】
処理領域30a、30bは、加熱部32と加熱部32との間に設けられている。処理領域30a、30bは、均熱部34(上部均熱板34a、下部均熱板34b、側部均熱板34c、側部均熱板34d)により囲まれている。
【0028】
後述するように、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bは、複数の板状の部材が複数の均熱板支持部35によって支持されることで形成される。このため、処理領域30aとチャンバ10の内部の空間は、上部均熱板34a同士の間、および下部均熱板34b同士の間などに設けられた隙間を介して繋がっている。また、上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34cとの間、および上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34dとの間にも隙間が形成されている。そのため、チャンバ10の内壁と処理部30との間の空間の圧力が減圧されると、処理領域30aの内部の空間も減圧される。なお、処理領域30bは、処理領域30aと同様の構造であるので、説明は省略する。
【0029】
チャンバ10の内壁と処理部30との間の空間の圧力が減圧されていれば、処理領域30a、30bから外部に放出される熱を抑制することができる。すなわち、加熱効率や蓄熱効率を向上させることができる。そのため、後述するヒータ32aに印加する電力を低減させることができる。また、ヒータ32aに印加する電力を低減させることができれば、ヒータ32aの温度が所定の温度以上となるのを抑制することができるので、ヒータ32aの寿命を長くすることができる。
【0030】
また、蓄熱効率が向上するので、処理領域30a、30bの温度を迅速に上昇させることができる。そのため、急激な温度上昇を必要とする処理にも対応が可能となる。また、チャンバ10の外壁の温度が高くなるのを抑制することができるので、冷却部16を簡易なものとすることができる。
【0031】
フレーム31は、細長い板材や形鋼などからなる骨組み構造を有している。フレーム31の外観形状は、チャンバ10の外観形状と同様とすることができる。フレーム31の外観形状は、例えば、直方体とすることができる。
【0032】
加熱部32は、複数設けられている。加熱部32は、処理領域30a、30bの下部、および処理領域30a、30bの上部に設けることができる。処理領域30a、30bの下部に設けられた加熱部32は、下部加熱部となる。処理領域30a、30bの上部に設けられた加熱部32は、上部加熱部となる。下部加熱部は、上部加熱部と対向している。なお、複数の処理領域が上下方向に重ねて設けられる場合には、下側の処理領域に設けられた上部加熱部は、上側の処理領域に設けられた下部加熱部と兼用することができる。
【0033】
加熱部32は、チャンバ10の内部に設けられ、ワーク100を加熱する。
例えば、処理領域30aに支持されたワーク100の下面(裏面)は、処理領域30aの下部に設けられた加熱部32により加熱される。処理領域30aに支持されたワーク100の上面(表面)は、処理領域30aと処理領域30bとにより兼用される加熱部32により加熱される。
【0034】
処理領域30bに支持されたワーク100の下面(裏面)は、処理領域30aと処理領域30bとにより兼用される加熱部32により加熱される。処理領域30bに支持されたワーク100の上面(表面)は、処理領域30bの上部に設けられた加熱部32により加熱される。
この様にすれば、加熱部32の数を減らすことができるので消費電力の低減、製造コストの低減、省スペース化などを図ることができる。
【0035】
複数の加熱部32のそれぞれは、少なくとも1つのヒータ32aと、一対のホルダ32bを有する。なお、以下においては、複数のヒータ32aが設けられる場合を説明する。
ヒータ32aは、棒状を呈し、一対のホルダ32bの間をY方向に延びている。複数のヒータ32aは、X方向に並べて設けることができる。複数のヒータ32aは、例えば、等間隔に設けることができる。ヒータ32aは、例えば、シーズヒータ、遠赤外線ヒータ、遠赤外線ランプ、セラミックヒータ、カートリッジヒータなどとすることができる。また、各種ヒータを石英カバーで覆うこともできる。
【0036】
なお、本明細書においては、石英カバーで覆われた各種ヒータをも含めて「棒状のヒータ」と称する。また、「棒状」の断面形状には限定がなく、例えば、円柱状や角柱状なども含まれる。
また、ヒータ32aは、例示をしたものに限定されるわけではない。ヒータ32aは、大気圧よりも減圧された雰囲気においてワーク100を加熱することができるものであればよい。すなわち、ヒータ32aは、放射による熱エネルギーを利用するものであればよい。
【0037】
上部加熱部および下部加熱部における複数のヒータ32aの仕様、数、間隔などは、加熱する溶液の組成(溶液の加熱温度)、ワーク100の大きさなどに応じて適宜決定することができる。複数のヒータ32aの仕様、数、間隔などは、シミュレーションや実験などを行うことで適宜決定することができる。
【0038】
また、複数のヒータ32aが設けられた空間は、ホルダ32b、上部均熱板34a、下部均熱板34b、側部均熱板34c、および側部均熱板34dにより囲まれている。上部均熱板34a同士の間、下部均熱板34b同士の間には隙間が設けられている。そのため、後述する冷却部40から、複数のヒータ32aが設けられた空間に供給された冷却ガスの一部が処理領域30aあるいは、処理領域30bに流入する。しかし、複数のヒータ32aが設けられた空間は、ほぼ閉鎖された空間と見なすことができる。したがって、複数のヒータ32aが設けられた空間に冷却部40から冷却ガスを供給することで、複数のヒータ32a、上部均熱板34a、下部均熱板34b、側部均熱板34c、および側部均熱板34dを冷却することができる。
【0039】
一対のホルダ32bは、X方向(例えば、処理領域30a、30bの長手方向)に延びている。一対のホルダ32bは、Y方向において、互いに対向している。一方のホルダ32bは、フレーム31の、扉13側の端面に固定されている。他方のホルダ32bは、フレーム31の、扉13側とは反対側の端面に固定されている。一対のホルダ32bは、例えば、ネジなどの締結部材を用いてフレーム31に固定することができる。一対のホルダ32bは、ヒータ32aの端部近傍の非発熱部を保持する。一対のホルダ32bは、例えば、細長い金属の板材や形鋼などから形成することができる。一対のホルダ32bの材料には特に限定はないが、耐熱性と耐食性を有する材料とすることが好ましい。一対のホルダ32bの材料は、例えば、ステンレスなどとすることができる。
【0040】
支持部33は、チャンバ10の内部に設けられ、ワーク100を支持する。例えば、支持部33は、上部加熱部と下部加熱部との間にワーク100を支持する。支持部33は、複数設けることができる。複数の支持部33は、処理領域30aの下部、および、処理領域30bの下部に設けられている。複数の支持部33は、棒状体とすることができる。
【0041】
複数の支持部33の一方の端部(上方の端部)は、ワーク100の下面(裏面)に接触する。そのため、複数の支持部33の一方の端部の形状は、半球状などとすることが好ましい。複数の支持部33の一方の端部の形状が半球状であれば、ワーク100の下面に損傷が発生するのを抑制することができる。また、ワーク100の下面と複数の支持部33との接触面積を小さくすることができるので、ワーク100から複数の支持部33に伝わる熱を少なくすることができる。
【0042】
ワーク100は、大気圧よりも減圧された雰囲気において、放射による熱エネルギーにより加熱されるので、上部加熱部からワーク100の上面までの距離、及び下部加熱部からワーク100の下面までの距離は、放射による熱エネルギーがワーク100に到達できる距離となっている。
【0043】
複数の支持部33の他方の端部(下方の端部)は、例えば、一対のフレーム31の間に架け渡された複数の棒状部材または板状部材などに固定することができる。この場合、複数の支持部33は、棒状部材などに着脱可能に設けることが好ましい。この様にすれば、メンテナンスなどの作業が容易となる。
【0044】
複数の支持部33の数、配置、間隔などは、ワーク100の大きさや剛性(撓み)などに応じて適宜変更することができる。
複数の支持部33の材料には特に限定はないが、耐熱性と耐食性を有する材料とすることが好ましい。複数の支持部33の材料は、例えば、ステンレスなどとすることができる。
【0045】
均熱部34は、複数の上部均熱板34a、複数の下部均熱板34b、複数の側部均熱板34c、および、複数の側部均熱板34dを有する。複数の上部均熱板34a、複数の下部均熱板34b、複数の側部均熱板34c、および、複数の側部均熱板34dは、板状を呈している。
【0046】
複数の上部均熱板34aは、上部加熱部において下部加熱部側(ワーク100側)に設けられている。複数の上部均熱板34aは、複数のヒータ32aと離隔して設けられている。すなわち、複数の上部均熱板34aの上側表面と複数のヒータ32aの下表面との間には隙間が設けられている。複数の上部均熱板34aは、X方向に並べて設けられている。複数の上部均熱板34a同士の間には隙間が設けられている。隙間が設けられていれば、熱膨張による寸法差を吸収することができる。そのため、上部均熱板34a同士が干渉して変形が生じるのを抑制することができる。また、前述したように、この隙間を介して、処理領域30a、30bの空間の圧力を減圧することができる。
【0047】
複数の下部均熱板34bは、下部加熱部において上部加熱部側(ワーク100側)に設けられている。複数の下部均熱板34bは、複数のヒータ32aと離隔して設けられている。すなわち、複数の下部均熱板34bの下側表面と複数のヒータ32aの上側表面との間には隙間が設けられている。複数の下部均熱板34bは、X方向に並べて設けられている。複数の下部均熱板34b同士の間には隙間が設けられている。隙間が設けられていれば、熱膨張による寸法差を吸収することができる。そのため、下部均熱板34b同士が干渉して変形が生じるのを抑制することができる。また、この隙間を介して、処理領域30a、30bの空間の圧力を減圧することができる。
【0048】
側部均熱板34cは、X方向において、処理領域30a、30bの両側の側部のそれぞれに設けられている。側部均熱板34cは、カバー36の内側に設けることができる。また、前述したように、側部均熱板34cは、上部均熱板34aあるいは、下部均熱板34bとの間に隙間が設けられている。この隙間を介して、処理領域30a、30bの空間の圧力を減圧することができる。
【0049】
側部均熱板34dは、Y方向において、処理領域30a、30bの両側の側部のそれぞれに設けられている。扉13側に設けられる側部均熱板34dは、カバー36と間隔をあけて扉13に設けることができる。蓋15側に設けられる側部均熱板34dは、カバー36の内側に設けることができる。また、前述したように、側部均熱板34dは、上部均熱板34aあるいは、下部均熱板34bとの間に隙間が設けられている。この隙間を介して、処理領域30a、30bの空間の圧力を減圧することができる。
【0050】
本実施形態では、上部均熱板34a同士の間、および下部均熱板34b同士の間などに設けられた隙間は、上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34cとの間、および上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34dとの間に設けられた隙間よりも大きくなるように形成されている。その理由については後述する。
【0051】
前述したように、複数のヒータ32aは、棒状を呈し、所定の間隔を空けて並べて設けられている。ヒータ32aが棒状である場合、ヒータ32aの中心軸から放射状に熱が放射される。この場合、ヒータ32aの中心軸と加熱される部分との間の距離が短くなるほど加熱される部分の温度が高くなる。そのため、複数のヒータ32aに対して対向するようにワーク100が保持された場合には、ヒータ32aの直上または直下に位置するワーク100の領域は、複数のヒータ32a同士の間の空間の直上または直下に位置するワーク100の領域よりも温度が高くなる。すなわち、棒状を呈する複数のヒータ32aを用いてワーク100を直接加熱すると、加熱されたワーク100の温度に面内分布が生じる。
【0052】
ワーク100の温度に面内分布が生じると、形成された有機膜の品質が低下するおそれがある。例えば、温度が高くなった部分に泡が発生したり、温度が高くなった部分において有機膜の組成が変化したりするおそれがある。
【0053】
本実施の形態に係る有機膜形成装置1には、前述した複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bが設けられている。そのため、複数のヒータ32aから放射された熱は、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bに入射し、これらの内部を面方向に伝搬しながらワーク100に向けて放射される。その結果、ワーク100の温度に面内分布が生じるのを抑制することができ、ひいては形成された有機膜の品質を向上させることができる。
【0054】
複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bは、入射した熱を面方向に伝搬させるので、これらの材料は、熱伝導率の高い材料とすることが好ましい。複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bは、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどとすることができる。なお、アルミニウムや銅などの酸化しやすい材料を用いる場合には、酸化しにくい材料を含む層を表面に設けることが好ましい。
【0055】
複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bから放射された熱の一部は、処理領域の側方に向かう。そのため、処理領域の側部には、前述した側部均熱板34c、34dが設けられている。側部均熱板34c、34dに入射した熱は、側部均熱板34c、34dを面方向に伝搬しながら、その一部がワーク100に向けて放射される。そのため、ワーク100の加熱効率を向上させることができる。
【0056】
側部均熱板34c、34dの材料は、前述した上部均熱板34aおよび下部均熱板34bの材料と同じとすることができる。
【0057】
なお、以上においては、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bが、X方向に並べて設けられる場合を例示したが、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bの少なくとも一方は、単一の板状部材とすることもできる。
【0058】
複数の均熱板支持部35は、X方向に並べて設けられている。均熱板支持部35は、X方向において、上部均熱板34a同士の間の直下に設けることができる。複数の均熱板支持部35は、ネジなどの締結部材を用いて一対のホルダ32bに固定することができる。一対の均熱板支持部35は、上部均熱板34aの両端を着脱自在に支持する。なお、複数の下部均熱板34bを支持する複数の均熱板支持部35も同様の構成を有することができる。
【0059】
一対の均熱板支持部35により、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが支持されていれば、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが熱膨張したとしても、上部均熱板34aと下部均熱板34bが干渉するのを抑制することができる。そのため、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが変形するのを抑制することができる。
【0060】
カバー36は、板状を呈し、フレーム31の上面、底面、および側面を覆っている。すなわち、カバー36によりフレーム31の内部が覆われている。ただし、扉13側のカバー36は、例えば、扉13に設けることができる。
【0061】
カバー36は処理領域30a、30bを囲っているが、フレーム31の上面と側面の境目、フレーム31の側面と底面の境目、扉13の付近には、隙間が設けられている。
【0062】
また、フレーム31の上面および底面に設けられるカバー36は複数に分割されている。また、分割されたカバー36同士の間には隙間が設けられている。すなわち、処理部30(処理領域30a、処理領域30b)の内部空間は、これらの隙間を介して、チャンバ10の内部空間に連通している。そのため、処理領域30a、30bの圧力が、チャンバ10の内壁とカバー36との間の空間の圧力と同じとなるようにすることができる。カバー36は、例えば、ステンレスなどから形成することができる。
【0063】
冷却部40は、加熱部32が設けられた領域に冷却ガスを供給する。例えば、冷却部40は、冷却ガスにより、処理領域30a、30bを囲む均熱部34を冷却し、冷却された均熱部34により高温状態にあるワーク100を間接的に冷却する。また、例えば、冷却部40は、ワーク100に冷却ガスを供給して、高温状態にあるワーク100を直接的に冷却することもできる。
【0064】
つまり、冷却部40は、ワーク100を、間接的および直接的に冷却することができる。また、冷却部40は、後述するクリーニング工程において、後述するクリーニングガスGを処理領域30a、30bに供給するクリーニング部50としての役割を有することができる。
【0065】
冷却部40は、例えば、第1のガス供給経路40aと、第2のガス供給経路40bとを有する。
まず、第1のガス供給経路40aについて説明する。第1のガス供給経路40aは、ノズル41、ガス源42、ガス制御部43および切替バルブ54を有する。
【0066】
図1に示すように、ノズル41は、複数のヒータ32aが設けられた空間に接続することができる。ノズル41は、例えば、カバー36を貫通し、側部均熱板34cやフレーム31などに取り付けることができる。ノズル41は、Y方向において、複数個設けることができる(図3参照)。なお、ノズル41の数や配置は適宜変更することができる。例えば、X方向において、処理部30の一方の側にノズル41を設けることもできるし、処理部30の両側にノズル41を設けることもできる。
【0067】
ガス源42は、ノズル41に冷却ガスを供給する。ガス源42は、例えば、高圧ガスボンベ、工場配管などとすることができる。また、ガス源42は、複数設けることもできる。
【0068】
冷却ガスは、加熱されたワーク100と反応し難いガスとすることが好ましい。冷却ガスは、例えば、窒素ガス、希ガスなどとすることができる。希ガスは、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどである。冷却ガスが窒素ガスであれば、ランニングコストの低減を図ることができる。ヘリウムガスの熱伝導率は高いので、冷却ガスとしてヘリウムガスを用いれば、冷却時間の短縮を図ることができる。
冷却ガスの温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以下とすることができる。
【0069】
ガス制御部43は、ノズル41とガス源42との間に設けられている。ガス制御部43は、例えば、冷却ガスの供給と停止や、冷却ガスの流速および流量の少なくともいずれかの制御を行うことができる。
【0070】
また、冷却ガスの供給タイミングは、ワーク100に対する加熱処理が完了した後とすることができる。なお、加熱処理の完了とは、有機膜が形成される温度を所定時間維持した後とすることができる。
【0071】
切替バルブ54は、第1のガス供給経路40aと第2のガス供給経路40bとを切り替えるためのバルブである。切替バルブ54は、ノズル41とガス制御部43との間であって、チャンバ10の外部に設けられる。
【0072】
次に、第2のガス供給経路40bについて説明する。第2のガス供給経路40bは、後述するクリーニング工程において、チャンバ10の内部をクリーニングするために設けられている。第2のガス供給経路40bは、チャンバ10の開口11aを介して、チャンバ10の内部にあるパーティクルなどの異物を、チャンバ10の外部に排出する。例えば、第2のガス供給経路40bは、処理領域30a、30bの内部にクリーニングガスGを供給して、チャンバ10の開口11aに向かう気流を形成する。
【0073】
本実施形態では、第2のガス供給経路40bが本発明の「クリーニング部」としても機能する。以下、第2のガス供給経路40bをクリーニング部50と呼ぶこともある。
【0074】
クリーニング部50は、例えば、ノズル41、ガス源52、ガス制御部53、および切替バルブ54を有する。この場合、クリーニング部50は、第1のガス供給経路40aと切替バルブ54を介して接続されている。
【0075】
ガス源52は、複数のノズル41にクリーニングガスGを供給する。ガス源52は、例えば、高圧ガスボンベ、工場配管などとすることができる。また、ガス源52は、複数設けることもできる。
【0076】
クリーニングガスGは、加熱されたチャンバ10の内壁や、チャンバ10の内部にある要素と反応し難いガスとすることが好ましい。クリーニングガスGは、例えば、クリーンドライエア、窒素ガス、炭酸ガス(CO2)、希ガスなどとすることができる。希ガスは、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどである。この場合、クリーニングガスGがクリーンドライエアや窒素ガスであれば、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0077】
クリーニングガスGは、前述した冷却ガスと同じとすることもできるし、異なるものとすることもできる。クリーニングガスGを、冷却ガスと同じとする場合には、ガス源52およびガス源42のいずれかを設けるようにすることもできる。
クリーニングガスGの温度は、例えば、室温(例えば、25℃)とすることができる。
【0078】
ガス制御部53は、切替バルブ54とガス源52との間に設けられている。ガス制御部53は、例えば、クリーニングガスGの供給と、供給の停止とを制御することができる。また、ガス制御部53は、例えば、クリーニングガスGの流速および流量の少なくともいずれかの制御を行うこともできる。クリーニングガスGの流速や流量は、チャンバ10の大きさや、ノズル41の形状、数、配置などに応じて適宜変更することができる。クリーニングガスGの流速や流量は、例えば、実験やシミュレーションを行うことで適宜求めることができる。
【0079】
次に、有機膜形成装置1の動作について例示をする。
図2は、ワーク100の処理工程を例示するためのグラフである。
図2に示すように、有機膜の形成工程は、ワークの搬入工程と、昇温工程と、加熱処理工程と、冷却工程、ワークの搬出工程と、クリーニング工程とを含む。
まず、ワークの搬入工程では、開閉扉13がフランジ11から離隔し、ワーク100がチャンバ10の内部空間に搬入される。チャンバ10の内部空間にワーク100が搬入されると、排気部20によりチャンバ10の内部空間が所定の圧力まで減圧される。
【0080】
チャンバ10の内部空間が所定の圧力まで減圧されると、ヒータ32aに電力が印加される。すると、図2に示すように、ワーク100の温度が上昇する。ワーク100の温度が上昇する工程を昇温工程と呼ぶ。本実施形態では、昇温工程が二回(昇温工程(1)、(2))実施される。なお、所定の圧力は、溶液中のポリアミド酸がチャンバ10の内部空間に残留する酸素と反応して酸化されない圧力であればよい。所定の圧力は、例えば、1×10-2~100Paとすればよい。つまり、第2の排気部22で排気することは、必ずしも必要ではなく、第1の排気部21で排気が開始された後、チャンバ10の内部空間が10~100Paの範囲内の圧力となったら、加熱部32によるワーク100の加熱を開始するようにしてもよい。
【0081】
昇温工程の後、加熱処理工程が行われる。加熱処理工程は、所定の温度を所定時間維持する工程である。本実施形態では、加熱処理工程(1)および加熱処理工程(2)を設けることができる。
加熱処理工程(1)は、例えば、第1の温度でワーク100を所定時間加熱し、溶液に含まれている水分やガスなどを排出させる工程とすることができる。第1の温度は、例えば、100℃~200℃とすればよい。
【0082】
加熱処理工程(1)を実施することで、溶液に含まれている水分やガスが完成品である有機膜に含まれることを防ぐことができる。なお、溶液の成分などによっては第1の加熱処理工程は、温度を変えて複数回実施することもできるし、第1の加熱処理工程を省くこともできる。
【0083】
加熱処理工程(2)は、溶液が塗布された基板(ワーク100)を、所定の圧力および温度で所定時間維持し、有機膜を形成する工程である。第2の温度は、イミド化が起きる温度とすればよく、例えば、300℃以上とすればよい。本実施形態では、分子鎖の充填度の高い有機膜を得るため、400℃~600℃で加熱処理工程(2)を実施している。
【0084】
冷却工程は、有機膜が形成されたワーク100の温度を低下させる工程である。本実施形態では加熱処理工程(2)の後に行われる。ワーク100は、搬出可能な温度まで冷却される。例えば、搬出されるワーク100の温度が常温であれば、ワーク100の搬出が容易である。ところが、有機膜形成装置1においては、ワーク100は、連続的に加熱処理される。そのため、ワーク100を搬出するたびにワーク100の温度を常温にすると、次のワーク100を昇温させる時間が長くなる。すなわち、生産性が低下するおそれがある。搬出するワーク100の温度は、例えば、50℃~90℃とすればよい。この搬出温度を第3の温度とする。
【0085】
コントローラ60は、第1の排気部21のバルブ25を閉じる。そして、冷却部40を制御して、複数のヒータ32aが設けられた空間に冷却ガスを供給することで、間接的および直接的にワーク100の温度を低下させる。
【0086】
そのため、上部均熱板34a同士の間、および下部均熱板34b同士の間などに設けられた隙間は、上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34cとの間、および上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34dとの間に設けられた隙間よりも大きい。このようにすることで、冷却部40が冷却ガスを供給する場合、ワーク100に向かう冷却ガスの量を増加させることができる。また、処理領域30a、30bから排気される冷却ガスの量を減少させることができる。したがって、ワーク100を効率的に冷却することができる。
【0087】
また、有機膜が形成された直後においては、チャンバ10の内圧が大気圧よりも低い、すなわち、チャンバ10の内部にガスが少ない状態となっている。そのため、冷却ガスをチャンバ10の内部に供給しても、供給された冷却ガスにより、昇華物に含まれていた成分が固体となったものが飛散するのを抑制することができる。
【0088】
コントローラ60は、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計の出力が大気圧と同じ圧力となったら、第2の排気部22のバルブ25を閉じ、第3の排気部23のバルブ25を開け、冷却ガスを常時排気する。
【0089】
コントローラ60は、不図示の温度計の検出値が200℃以下となったら切替バルブ54を制御し、複数のヒータ32aが設けられた空間にクリーニングガスGを供給するようにしてもよい。クリーニングガスGがCDAであって、冷却ガスがN2や希ガスで有った場合、N2や希ガスの使用量を低減することができる。
【0090】
ワークの搬出工程では、有機膜が形成されたワーク100の温度が第3の温度となったら、チャンバ10内に導入していた冷却ガスあるいはクリーニングGの供給を停止する。そして、開閉扉13がフランジ11から離隔し、上記ワーク100が搬出される。
【0091】
前述したように、昇華物が、加熱されたワーク100よりも温度の低い要素に接触すると、昇華物に含まれている成分が固体となって、当該要素に付着する場合がある。
【0092】
しかしながら、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bは加熱されているので、昇華物に含まれていた成分が、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bに付着するのを抑制することができる。また、前述したように、チャンバ10の内部には、排気口17または排気口18が設けられたチャンバ10の底面(または、天井面)に向かう気流が形成されているので、昇華物は、この気流に乗ってチャンバ10の外に排出される。
【0093】
前述の通り、昇華物は、チャンバ10の外に排出されると考えられていたので、昇華物に含まれていた成分がワーク100に付着するのを抑制することができると考えられていた。そのため、従来は、上記ワーク100を搬出した後、次のワーク100がチャンバ10内に搬入され、上記の工程が繰り返されていた。
【0094】
しかし、実際は、少量の昇華物がチャンバ10の内壁に付着していることが判明した。有機膜の形成工程を繰り返すとことで、少量の昇華物がチャンバ10の内壁に付着することも繰り返される。その結果、昇華物から生じた固体が大きくなる。昇華物から生じた固体は、ある程度大きくなると、チャンバ10の内壁から剥がれる。チャンバ10の内壁から剥がれた固体は、パーティクルなどの異物となってワーク100の表面に付着するおそれがある。
【0095】
一般的には、チャンバの内壁に昇華物が付着することを防止するための防着板を設け、定期的に防着板を交換することが行われている。しかし、この方法は、交換作業が煩雑である。そこで、本発明者らは、昇華物から生じた固体を、チャンバ10の内壁などから除去するクリーニングについて検討を行った。
【0096】
次に、クリーニング部50の作用とともに、本実施の形態に係る有機膜形成装置のクリーニング方法について説明する。
図3は、クリーニング部50の作用を例示するための模式断面図である。
なお、煩雑となるのを避けるために、チャンバ10の内部に設けられる要素などを省略して描いている。
【0097】
図3に示すように、クリーニング部50は、チャンバ10の開口11aが解放されている際に(扉13がフランジ11から離隔した際に)、チャンバ10の内部にクリーニングガスGを供給する。例えば、コントローラ60は、チャンバ10の開口11aが解放されている際に、ガス制御部53を制御して、ノズル41から加熱部32内に向けてクリーニングガスGを流す。クリーニングガスGは、加熱部32内からチャンバ10の内部へと供給される。
【0098】
前述の通り、上部均熱板34a同士の間、および下部均熱板34b同士の間などに設けられた隙間は、上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34cとの間、および上部均熱板34a(下部均熱板34b)と側部均熱板34dとの間に設けられた隙間よりも大きい。したがって、クリーニング部50がクリーニングガスGを供給する場合、処理領域30a、30bに供給されるクリーニングガスGの量を増加させることができる。
【0099】
チャンバ10の内部に供給されたクリーニングガスGは、チャンバ10の開口11aを介してチャンバ10の外部に排出される。この際、チャンバ10の内部にある昇華物やパーティクルなどの異物がクリーニングガスGの気流に乗って、チャンバ10の外部に排出される。なお、ヒータ32a、ホルダ32b、均熱部34および均熱板支持部35が熱膨張により擦れる。これらが擦れることで、微小の金属片が発生する。この金属片も異物に含まれる。また、チャンバ10の内部に気流が形成されれば、チャンバ10の内壁や、チャンバ10の内部に設けられている要素に付着している昇華物の成分(固体)を剥離させるとともに、チャンバ10の外部に排出させることができる。
【0100】
この場合、定期的に、あるいは必要に応じて、チャンバ10の内部にクリーニングガスGを供給することができる。すなわち、ワーク100の処理を行う工程とは別にクリーニング工程を設け、クリーニング工程において、チャンバ10の内部にクリーニングガスGを供給することができる。
【0101】
また、処理済みのワーク100をチャンバ10から搬出し、次に処理を行うワーク100をチャンバ10に搬入するまでの間に、チャンバ10の内部にクリーニングガスGを供給することもできる。すなわち、ワーク100の処理を行う一連の工程であっても、チャンバ10の内部にワーク100が無い場合には、クリーニング部50によるクリーニングを行うことができる。
【0102】
クリーニング部50が設けられていれば、チャンバ10の内部にある昇華物やパーティクルなどの異物をクリーニングガスGの気流に乗せて、チャンバ10の外部に排出することができる。また、チャンバ10の内壁などに付着している昇華物の成分(固体)を剥離させるとともに、チャンバ10の外部に排出させることができる。
すなわち、クリーニング部50が設けられていれば、チャンバ10の内部にある異物の充分な除去が可能となる。
【0103】
次に、クリーニング部50の効果についてさらに説明する。
図4は、排気部20によるパーティクルの排出と、クリーニング部50によるパーティクルの排出とを組み合わせた場合のグラフである。
排気部20によるパーティクルの排出においては、チャンバ10の内部を減圧し、減圧したチャンバ10の内部を大気圧に戻す作業を10回繰り返した。
クリーニング部50によるパーティクルの排出においては、排気部20によるパーティクルの排出を行った後に、複数のノズル41から同時にクリーニングガスGを供給した。つまり、クリーニング部50によるパーティクルの排出を行う前に、排気部20によるパーティクルの排出を予め行った。
【0104】
図4から分かるように、排気部20によるパーティクルの排出と、クリーニング部50によるパーティクルの排出とを行えば、種々のサイズのパーティクルを排出させることができる。
【0105】
図5は、クリーニング部50によるパーティクルの排出のみを行った場合のグラフである。
クリーニング部50によるパーティクルの排出においては、複数のノズル41から同時にクリーニングガスGを供給した。
図5から分かるように、クリーニング部50によるパーティクルの排出のみを行っても、種々のサイズのパーティクルを排出させることができる。
【0106】
ここで、図4図5の比較を行う。図4図5の比較から分かるように、排気部20によるパーティクルの排出を予め行っても、行わなくても、クリーニング部50によるパーティクルの排出の開始直後に排出されるパーティクルの数に大きな違いはない。このことは、排気部20によるパーティクルの充分な除去は困難であることを意味する。すなわち、チャンバ10を密閉した状態で、チャンバ10の内部の排気と、チャンバ10の内部へのガスの供給と、を順次実行するクリーニングを行えば、パーティクルなどの異物をある程度除去できたとしても、パーティクルなどの異物の充分な除去はできない。
これに対して、クリーニング部50によるクリーニングを行えば、図5から分かるように、チャンバ10の内部にある異物の充分な除去が可能となる。
【0107】
ここで、クリーニング部50によるパーティクルの排出開始からの経過時間が3minから5minの間の種々のサイズのパーティクルの検出量を図4図5で比較する。図4図5の比較から分かるように、クリーニング部50によるパーティクルの排出開始からの経過時間が3minから5minの間において、図4の方が、パーティクルの検出量が少ない。したがって、クリーニング部50によるパーティクルの排出時間を短くすることができる。つまり、排気部20によるパーティクルの排出と、クリーニング部50によるパーティクルの排出とを行うことがより好ましい。けれども、排気部20によるパーティクルの排出をワーク100がチャンバ10内にある状態で行うと、ワーク100の表面にパーティクルが付着するおそれがある。排気部20によるパーティクルの排出と、クリーニング部50によるパーティクルの排出とを行うことは、有機膜形成装置1の待機中に行うことが好ましい。
【0108】
図6も、クリーニング部50によるパーティクルの排出のみを行った場合のグラフである。
ただし、図6の場合は、複数のノズル41からクリーニングガスGを順次供給した。例えば、任意の複数のノズル41からクリーニングガスGを所定の時間供給し、当該複数のノズル41からのクリーニングガスGの供給を停止した後に、他の複数のノズル41からクリーニングガスGを所定の時間供給した。この場合、上方に設けられた複数のノズル41から順にクリーニングガスGを供給してもよいし、下方に設けられた複数のノズル41から順にクリーニングガスGを供給してもよいし、任意の複数のノズル41から順にクリーニングガスGを供給してもよい。また、クリーニングガスGを供給する際に用いるノズル41は、1つであってもよい。
【0109】
図6から分かるように、クリーニング部50によるパーティクルの排出開始から経過時間が3minの間において、パーティクルの検出量が減少している。しかし、クリーニング部50によるパーティクルの排出開始からの経過時間が4minにおいて、パーティクルの検出量が増加している。これは、当該複数のノズル41から他の複数のノズル41へとクリーニングガスの供給を変更したことで、チャンバ10内でのクリーニングガスGの気流が変化したためと考えられる。チャンバ10内でのクリーニングガスGの気流が変化することで、それまでのクリーニングガスGの気流では排出できなかったパーティクルがチャンバ10の外部へと排出されたと考えられる。
【0110】
したがって、図5図6の比較から分かるように、当該複数のノズル41から他の複数のノズル41へとクリーニングガスGを順次供給すれば、排出されるパーティクルの数を大幅に増やすことができる。このことは、チャンバ10の内部にある異物をさらに効果的に除去することができることを意味する。
【0111】
図7は、他の実施形態に係るクリーニング部50aを例示するための模式断面図である。
前述したクリーニング部50と同様に、クリーニング部50aは、例えば、複数のノズル41、ガス源52、およびガス制御部53を有する。
また、図6に示すように、クリーニング部50aは、検出部56をさらに有することができる。
【0112】
検出部56は、チャンバ10の開口11aに対向する位置に設けることができる。検出部56は、チャンバ10の開口11aから排出されたクリーニングガスGに含まれているパーティクルなどの異物を検出する。検出部56は、例えば、パーティクルカウンタなどとすることができる。
【0113】
検出部56が設けられていれば、クリーニングの終点を検出することができる。例えば、コントローラ60は、検出部56により検出された異物の数が所定の値以下となった場合には、ガス制御部53を制御して、クリーニングガスGの供給を停止し、クリーニング作業を終了させることができる。
クリーニングの終点を検出することができれば、時間管理などによりクリーニングを終了させる場合に比べて、クリーニングガスGの消費量を低減させることが可能となる。また、チャンバ10の内部にある異物をより適切に除去することができる。
【0114】
図8は、他の実施形態に係るクリーニング部50bを例示するための模式断面図である。
前述したクリーニング部50と同様に、クリーニング部50bは、例えば、複数のノズル41、ガス源52、およびガス制御部53を有する。
また、図8に示すように、クリーニング部50bは、検出部56、および筐体55をさらに有することができる。
【0115】
筐体55は、気密構造を有し、チャンバ10の開口11aに対向する位置に設けることができる。検出部56は、筐体55の内部に設けることができる。筐体55は、例えば、ミニエンバイロメント(局所清浄環境)とすることができる。
【0116】
前述したように、チャンバ10から排出されたクリーニングガスGにはパーティクルなどの異物が含まれている。そのため、チャンバ10から排出された異物が、有機膜形成装置1が設置されている雰囲気中に拡散する場合がある。拡散したパーティクルなどの異物が、有機膜形成装置1の周辺にある装置や要素に到達すると、汚染や故障などが発生するおそれがある。また、作業者がパーティクルなどの異物やクリーニングガスGを吸い込むのは好ましくない場合もある。
【0117】
筐体55が設けられていれば、チャンバ10から排出された異物やクリーニングガスGが、有機膜形成装置1が設置されている雰囲気中に拡散するのを抑制することができる。
【0118】
図9は、他の実施形態に係る有機膜形成装置1aを例示するための模式斜視図である。
前述したクリーニング部50と同様に、クリーニング部150は、例えば、複数のノズル41、ガス源52、およびガス制御部53を有する。
また、図9に示すように、クリーニング部150は、もう一つのクリーニング部50cをさらに有することができる。
【0119】
クリーニング部50cは、ノズル51、ガス源52、およびガス制御部53を有する。
図9に示すように、ノズル51は、チャンバ10の側面に接続することができる。ノズル51は、チャンバ10の側面に複数設けることができる。本実施形態のノズル51は、先端が閉塞された筒状を呈している。ノズル51の閉塞された先端は、ノズル51が設けられたチャンバ10の側面と対向するチャンバ10の側面まで伸びている。ノズル51の側面には、複数のノズル孔51aが設けられている。なお、ノズル51の数や配置は適宜変更することができる。例えば、チャンバ10の側面に複数のノズル51をY方向に並べて設けることもできる。チャンバ10の対向する側面の両方にノズル51を設けることもできる。チャンバ10の対向する側面の両方を貫通するノズル51を設けることもできる。複数のノズル51をX方向に並べて蓋15に設けることもできる。
【0120】
図10は、他の実施形態に係るクリーニング部150を例示するための模式断面図である。
図10に示すように、ノズル51のノズル孔51aからクリーニングガスGをチャンバ10内に導入することができる。クリーニング部50cを設けることで、ノズル41で形成されるクリーニングガスGの気流を補強することができる。あるいは、ノズル41で形成されるクリーニングガスGの気流とは異なる気流を発生させることができる。そのため、ノズル41で形成されるクリーニングガスGの気流では排出できなかったパーティクルがチャンバ10の外部へと排出される。したがって、排出されるパーティクルの数を大幅に増やすことができる。このことは、チャンバ10の内部にある異物をさらに効果的に除去することができることを意味する。
【0121】
また、冷却工程において、クリーニング部50cから冷却ガスをチャンバ内に供給することもできる。冷却ガスの供給タイミングが、有機膜が形成された直後、または、チャンバ10の内圧を大気圧に戻す途中とすれば、冷却時間と、大気圧に戻す時間を重複させることができる。すなわち、実質的な冷却時間の短縮を図ることができる。なお、チャンバ10の内壁には、昇華物が付着している。したがって、昇華物がチャンバ10の内壁から剥がれて処理領域30a、30bの内部に流れ込むのを防ぐため、クリーニング部50cからの冷却ガスの供給量は、冷却部40からの冷却ガスの供給量よりも少なくすることが好ましい。
【0122】
なお、本実施の形態では1つのノズル51に複数のノズル孔を設けたが、これに限定されない。例えば、1つのノズル51に1つのノズル孔としてもよい。この場合、ノズル51は、開口した先端にフランジが設けられた筒状を呈する。そして、ノズル51は、チャンバ10の側面の孔と気密に接続する。つまり、チャンバ10の側面の孔がノズル孔51aとして機能してもよい。あるいは、ノズル51が蓋15に設けられた孔と気密に接続する場合、蓋15に設けられた孔がノズル孔51aとして機能してもよい。
【0123】
図11は、他の実施形態に係る有機膜形成装置1bを例示するための模式斜視図である。
前述したクリーニング部150と同様に、クリーニング部250は、例えば、複数のノズル41、ガス源52、クリーニング部50cおよびガス制御部53を有する。
また、図11に示すように、クリーニング部250は、もう一つの冷却部140をさらに有することができる。
【0124】
冷却部140は、処理領域30a、30bの内部にあるワーク100に冷却ガスを供給する。つまり、冷却部140は、高温状態にあるワーク100を直接的に冷却する。
冷却部140は、ノズル41に変えてノズル141を有する点で冷却部40と相違する。
【0125】
ノズル141は、処理領域30a、30bの内部に少なくとも1つ設けることができる(図12参照)。ノズル141は、例えば、蓋15およびカバー36を貫通し、側部均熱板34dやフレーム31などに取り付けることができる。本実施形態では、ワーク100の裏面に冷却ガスを供給できる位置にノズル141が取り付けられる。また、ノズル141は、X方向に複数個設けることができる。あるいは、ノズル141は、先端が閉塞された筒状とすることができる。そして、ノズル141の側面に複数の孔が設けられ、チャンバ10の側面から挿入されるようにしてもよい。
【0126】
冷却工程において、冷却ガスは、ノズル141からワーク100に対して平行に吐出される。なお、図12においては、扉13は開いた状態になっているが、次に述べる冷却工程においては、扉13は閉められた状態となっている。冷却ガスは、ノズル141からワーク100の裏面(すなわち、支持部33で支持されている面)に対して略平行に供給される。これにより、ワーク100と支持部33との間に冷却ガスが満たされ、ワーク100を直接的に冷却することができる。また、ノズル141から供給され、ワーク100の裏面を経由した冷却ガスは、不図示の排出口からチャンバ10の外へ排出される。排出口は、チャンバ10の天井部分に複数(例えば4つ)設けられる。冷却工程においてチャンバ10に冷却ガスが供給されると、チャンバ10内の熱はチャンバ10の上方へ移動するため、天井部分に設けられた排出口により効率的に排熱することができる。さらに、複数のノズル141のうち、チャンバ10内の下方側に位置するノズル141から順に冷却ガスを供給することで、チャンバ10内にチャンバ10の天井側へ向かう気流が作られる。これによって、チャンバ10内のパーティクルを効率よく排出口から排出することができる。
【0127】
ここで、冷却工程が開始されると、冷却ガスが供給されることにより、大気圧よりも低かったチャンバ10の内圧が徐々に大気圧に近づく。このとき、チャンバ10の内圧が急激に大気圧に近づくと、支持部33に支持されたワーク100が圧力変動によって動いてしまい、支持部33と擦れてパーティクルが発生する。そこで、まず、冷却工程開始後、チャンバ10の内圧が所定圧力となるまでの間は、ノズル41からのみ冷却ガスを供給して、ワーク100を間接的に冷却する。ノズル41から供給される冷却ガスは、直接ワーク100に供給されることなく、均熱部34に供給される。これにより、チャンバ10の内圧は、ワーク100の近傍の圧力が急激に変化することを避けながら徐々に上がっていく。その後チャンバ10の内圧が所定圧力となったら、ノズル141からも冷却ガスを供給して、ワーク100を直接冷却する。所定圧力は、ノズル141から冷却ガスを供給することによる圧力変動によってワーク100が移動することのない圧力であり、予め実験等によって求める。ノズル141からの冷却ガスの供給は、ある程度チャンバ10の内圧が上がった後であるため、ワーク100が圧力変動によって動くことがない。これによって、ワーク100と支持部33が擦れることによるパーティクル発生を効果的に抑制することができる。
【0128】
また、チャンバ10の開口11a側端部に、チャンバ10の底面から天井に向かってエアを吹きだす不図示のノズルを複数設けるようにしても良い。この様にすれば、チャンバ10の底面から天井へ向かう気流を形成することができるので、ノズル141およびノズル41によって吹き飛ばされたパーティクルを排出口に効率的に運び、且つ、排出することができる。なお、この不図示のノズルにより形成される気流は、扉13が開いているときにはチャンバ10の外からパーティクルが侵入するのを防ぐエアカーテンとしての役割も果たす。
【0129】
なお、チャンバ10の天井から底面に向かってエアを吹きだす不図示のノズルを複数設けるようにしても良い。そして、エアカーテンとして用いるときには(扉13が開いているときには)、チャンバ10の天井から底面へ向かう気流を形成するようにしても良い。この場合には、有機膜形成装置1の設置されるクリーンルーム内のダウンフローと同じ向きにエアが流れるエアカーテンを形成できるため、より効果的にチャンバ10内へのパーティクル侵入を防止することができる。
【0130】
また、チャンバ10の底面から天井に向かってエアを吹きだす不図示のノズルは、開口11a側のみならず、蓋15側にも設けるようにしても良い。冷却ノズル141から吐出される冷却ガスは、吐出された後にワーク100の裏面を経由して扉13側へ進んでいくとともに徐々に流速が減速していく。冷却ガスが扉13に衝突し、蓋15側に衝突する頃には冷却ガスの流速はかなり遅くなっており、蓋15側の壁面において冷却ガスが淀みやすくなる。そうすると、蓋15側の壁面にパーティクルが付着したままになり、この蓋15側壁面に付着したパーティクルが、次に処理されるワークに付着してしまうことになる。蓋15側の壁面に沿って、チャンバ10の底面から天井に向かってエアを吹きだすノズルを設けることにより、壁面に付着したパーティクルを効率的に排出口から排出することができる。
【0131】
ワーク100を間接的および直接的に冷却する場合には、冷却工程において、冷却部40および冷却部140から冷却ガスを供給する。つまり、冷却部140のノズル141を用いて、ワーク100を直接的に冷却することができる。このようにすることで、実質的な冷却時間の短縮を図ることができる。
【0132】
図12は、他の実施形態に係るクリーニング部250を例示するための模式断面図である。
冷却部140を設けることで、ノズル141からもクリーニングガスGを処理領域30a、30bの内部に供給することができるようになる。そのため、ノズル41で形成されるクリーニングガスGの気流を補強することができる。したがって、ノズル41で形成されるクリーニングガスGの気流では排出できなかったパーティクルがチャンバ10の外部へと排出される。したがって、排出されるパーティクルの数を大幅に増やすことができる。このことは、チャンバ10の内部にある異物をさらに効果的に除去することができることを意味する。
【0133】
以上に説明した様に、本実施の形態に係る有機膜形成装置のクリーニング方法は、ワーク100を搬入または搬出する開口11aを有し、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能なチャンバ10を有する有機膜形成装置のクリーニング方法である。
本実施の形態に係る有機膜形成装置のクリーニング方法においては、チャンバ10の開口11aが解放されている際に、チャンバ10の内部に、チャンバ10の開口11aに向かって流れるクリーニングガスGの流れを形成する。
【0134】
また、複数のノズル41からクリーニングガスGを順次供給することで、クリーニングガスGの流れを形成する。
【0135】
また、チャンバ10の開口11aから排出されたクリーニングガスGに含まれている異物の数が所定の値以下となった場合には、クリーニングガスGの流れの形成を停止する。
チャンバ10の開口11aに向かって流れるクリーニングガスGの流れを形成する際には、チャンバ10の内部にワーク100が支持されていない。
【0136】
また、複数のノズル51または複数のノズル141あるいはその両方からクリーニングガスGを順次供給することで、複数のノズル41からクリーニングガスGを順次供給することで形成されたクリーニングガスGの流れを補強してもよい。あるいは、複数のノズル51または複数のノズル141あるいはその両方からクリーニングガスGを順次供給することで、複数のノズル41からクリーニングガスGを順次供給することで形成されたクリーニングガスGの流れとは異なる流れを形成してもよい。
【0137】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、有機膜形成装置1の形状、寸法、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
例えば、クリーニング工程を行う際に、チャンバ10の開口11aだけでなく、第3の排気部23も解放してもよい。このようにすることで、第3の排気部からもクリーニングガスGが排出されるので、チャンバ10の内部にある異物の充分な除去がより可能となる。
【符号の説明】
【0138】
1 有機膜形成装置、10 チャンバ、11a 開口、20 排気部、30 処理部、30a 処理領域、30b 処理領域、32 加熱部、32a ヒータ、50 クリーニング部、50a クリーニング部、50b クリーニング部、51 ノズル、52 ガス源、53 ガス制御部、54 切替バルブ、55 筐体、60 コントローラ、100 ワーク、G クリーニングガス
図1
図2
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図4
図5
図6
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