(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】核酸を検出する組み合わせ、方法及びキット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20240711BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20240711BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6851 Z ZNA
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2023518921
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 CN2020117163
(87)【国際公開番号】W WO2022061593
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】523104890
【氏名又は名称】マキュラ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ユーハン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, チウピン
(72)【発明者】
【氏名】フー, フイファン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0209291(US,A1)
【文献】特表2016-512041(JP,A)
【文献】特表2008-545430(JP,A)
【文献】特開2020-019738(JP,A)
【文献】国際公開第2016/138080(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103290108(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端が標的配列の特異的検出部位と相補することができる上流プライマーと、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端も同一の特異的検出部位と相補することができる下流プライマーと、
第1検出基及び第2検出基が修飾されており、前記第1検出基と第2検出基が距離の変化によりシグナルの変化を生成するシグナルオリゴヌクレオチドと、を含み、
前記シグナルオリゴヌクレオチドは、前記上流プライマー及び/又は下流プライマーの一部として設計されかつ前記標的配列結合領域の上流に位置するか、又は、前記上流プライマー及び/又は下流プライマーは標的配列結合領域の上流にさらにシグナル検出領域を含み、前記シグナルオリゴヌクレオチドは前記上流プライマー及び/又は下流プライマーから独立しかつ前記シグナル検出領域と同じ配列を有するように設計され、
前記シグナル検出領域は、前記上流プライマー及び/又は下流プライマーの標的配列結合領域の上流に位置し、標的配列と相補ペアリングできないように設計される、核酸を検出するための
組成物。
【請求項2】
前記上流プライマー及び/又は下流プライマーは標的配列結合領域の上流にさらにシグナル検出領域を含み、前記シグナルオリゴヌクレオチドは前記上流プライマー及び/又は下流プライマーから独立するように設計され、
前記シグナルオリゴヌクレオチドは、5’から3’まで順に第1茎領域、ループ領域、第2茎領域及びアンカー領域を含むように設計され、
前記第1茎領域は第2茎領域と部分的又は完全に相補するように設計され、前記アンカー領域は前記シグナルオリゴヌクレオチドの3’端に位置しかつ前記シグナル検出領域と完全又は部分的に同じになるように設計され、
前記第1検出基は前記第1茎領域に修飾され、前記第2検出基は前記第2茎領域、前記第2茎領域とアンカー領域との間又は前記アンカー領域の非3’末端に修飾される、
請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記第2茎領域とアンカー領域との間に1-5個の塩基間隔が存在する、
請求項2に記載の
組成物。
【請求項4】
前記第1検出基は前記第1茎領域に位置し、前記第2検出基は前記第2茎領域とアンカー領域との間に位置する、
請求項2に記載の
組成物。
【請求項5】
前記上流プライマー及び/又は下流プライマーは標的配列結合領域の上流にさらにシグナル検出領域を含み、前記シグナルオリゴヌクレオチドは前記上流プライマー及び/又は下流プライマーから独立するように設計され、
前記シグナルオリゴヌクレオチドはフレキシブルオリゴヌクレオチドとして設計され、
前記第1検出基及び第2検出基は前記シグナルオリゴヌクレオチドの非3’末端に位置する、
請求項1に記載の
組成物。
【請求項6】
前記第1検出基と第2検出基との距離は5-25ntである、
請求項5に記載の
組成物。
【請求項7】
前記上流プライマー及び/又は下流プライマーは標的配列結合領域の上流にさらにシグナル検出領域を含み、前記シグナルオリゴヌクレオチドは前記上流プライマー及び/又は下流プライマーから独立するように設計され、
前記
組成物はさらに第2プライマーを含み、前記第2プライマーの全部又は一部の配列は前記シグナル検出領域と同じであり、
前記シグナル検出領域上の前記シグナルオリゴヌクレオチドと同じ領域は前記第2プライマーと同じ領域の下流に位置し、
前記シグナルオリゴヌクレオチドの加水分解により前記距離の変化を生成する、
請求項1に記載の
組成物。
【請求項8】
前記シグナルオリゴヌクレオチドは前記上流プライマー及び/又は下流プライマーの一部として設計されかつ前記標的配列結合領域の上流に位置し、
前記シグナルオリゴヌクレオチドは5’から3’まで順に第1茎領域、ループ領域及び第2茎領域を含み、
前記第1茎領域は第2茎領域と部分的に又は完全に相補するように設計され、
前記第1検出基は第1茎領域に位置し、前記第2検出基は前記第2茎領域に位置する、
請求項1に記載の
組成物。
【請求項9】
前記特異的検出部位は変異部位である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の
組成物、
および増幅試薬を被験者からのサンプルと混合するステップと、
前記サンプルに存在する可能性のある標的配列を増幅するステップと、
生成されたシグナル変化を取得するステップと、
得られたシグナルの変化から、サンプル中に標的核酸が存在するか否かを判断するステップと、を含む、
核酸を検出する方法。
【請求項11】
前記サンプル中に標的核酸が存在するか否かを判断すると同時に標的核酸を定量する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルは末梢血又は他の断片化核酸標的を含むサンプルタイプである、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記被験者は癌に罹患しているか又は癌に罹患している疑いがある被験者である、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸はctDNAである、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に定義された
組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子生物学の分野に関し、具体的には核酸の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、組織病理学的診断は腫瘍診断のゴールドスタンダード及び臨床治療の基礎である。ところが、病理組織を取得しにくく、サンプリングしにくく、かつ連続的にサンプリングして腫瘍患者の遺伝子変異状況を持続的に監視しにくい。したがって患者末梢血中の循環腫瘍DNA(ctDNA)の遺伝子変異を検出することにより腫瘍患者に対する早期スクリーニング、投薬指導、予後判断及び再発監視を実現することができる。しかし末梢血サンプルはバックグラウンドが複雑で、ctDNA含有量が少ないため、低存在度及び希少配列の検出に対して、特異性及び感度が極めて高い検出方法及び検出キットを必要とする。
【0003】
現在、従来の遺伝子変異検出試薬は、多くはTaqMan加水分解プローブ法又は増幅阻止システム(Amplification Refractory Mutation System、ARMS)が採用されている。なかでも、TaqMan加水分解プローブ法の方法は、一対の特異的PCRプライマー、及び一本のテンプレートに相補的な特異的プローブを設計する必要があり、かつプローブの結合部位が二本のプライマーの間に位置しており、プローブの5’端と3’端にそれぞれ一つの蛍光基(供与体)及び一つのクエンチング基(受容体)が標識され、TaqManプローブが完全な遊離状態を呈する場合、蛍光基とクエンチング基との距離が近く、クエンチング基が蛍光基の励起光作用での励起蛍光を吸収し、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer、FRET)が発生し、それにより機器が蛍光シグナルを検出できなくなる。PCR増幅過程において、Taq DNAポリメラーゼはその5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を利用して標的配列に結合されたプローブを切断し、蛍光報告基とクエンチング基との距離が遠くなり、それにより蛍光シグナルを放出する。
【0004】
一方、ARMS法は、DNAポリメラーゼが3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くという特徴を利用し、プライマーの3’末端塩基が標的核酸配列と正確に相補的にペアリングすることができなければ、標的核酸配列が効果的に増幅されることができない。理論的に、遺伝子変異検出を行う場合、汎用プローブとそれと合わせて変異型プライマー及び野生型プライマーを必要とし、ここで変異型プライマーの3’末端は変異型遺伝子と完全にマッチングするが、野生型遺伝子とマッチングしない。変異遺伝子の検出を行う場合、変異型プライマーと野生型テンプレートは完全にペアリングすることができないため、プライマーの延伸が阻止され、それにより変異遺伝子の検出が図れる。
【0005】
腫瘍患者の末梢血のctDNAに対して液体生検を行う場合、ctDNAが高度な断片化を呈するため、その断片の長さが90bp-160bpの間に分布しており、従来の研究により、標的配列の長さが短いほど、ctDNAの検出率が高いことを見出した(Andersen et al.,2015)。しかし、現在のctDNA検出技術は、TaqMan加水分解プローブ法を採用してもARMS法を採用しても、いずれも標的配列が長すぎるという問題が存在する。特許CN105349654Bに記載されたEGFR遺伝子変異を検出するためのプローブ、プライマー、検出系及びキットは、EGFR変異遺伝子を検出するために必要な標的配列の長さは70bp-134bpの間にあり、ここでエクソン18上の変異部位の検出に必要な増幅標的配列の長さは100bp-116bpであり、エクソン19上の変異部位の検出に必要な増幅標的配列の長さは70bp-84bpであり、エクソン20上の変異部位の検出に必要な増幅標的配列の長さは85bp-134bpであり、エクソン21上の変異部位の検出に必要な増幅標的配列の長さは109bp-121bpである。長い増幅標的配列の長さは必ず断片化ctDNAテンプレートの検出率を低下させ、それにより検出感度に影響を与える。
【0006】
なお、現在ARMS法における変異型プライマーは、常に非特異的なテンプレート増幅を完全に阻止することができず、検出時に偽陽性の結果を生成しやすく、特にエンドポイント検出のシステム、例えばデジタルPCRシステムにおいて、変異型と野生型のエンドポイント増幅時の蛍光シグナルは常に区別しにくいため、検出の特異性が十分ではない。
【0007】
以上より、遺伝子検出の分野において、核酸検出感度及び特異性をさらに改善する需要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題に対して、本発明者らはARMS法に基づいてそのプライマー及びプローブの設計方式を検討したところ、本発明に至った。
【0009】
一側面においては、本発明は、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端が標的配列の特異的検出部位と相補することができる上流プライマーと、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端も同一の特異的検出部位と相補することができる下流プライマーと、
第1検出基及び第2検出基が修飾されており、前記第1検出基と第2検出基が距離の変化によりシグナルの変化を生成するシグナルオリゴヌクレオチドと、を含み、
前記シグナルオリゴヌクレオチドは、前記上流プライマー及び/又は下流プライマーの一部として設計されかつ前記標的配列結合領域の上流に位置するか、又は、前記上流プライマー及び/又は下流プライマーは標的配列結合領域の上流にさらにシグナル検出領域を含み、前記シグナルオリゴヌクレオチドは前記上流プライマー及び/又は下流プライマーから独立しかつ前記シグナル検出領域と同じ配列を有するように設計され、
前記シグナル検出領域は、標的配列と相補ペアリングできないように設計される、核酸を検出するための組み合わせを提供する。
【0010】
このような設計を採用することにより、本発明は以下の有益な効果を達成した。
【0011】
一方では、標的配列特異的プローブの代わりにシグナルオリゴヌクレオチドを使用する上で、本発明は上流プライマーと下流プライマーの両方の3’末端がいずれも標的配列上のある特異的検出部位とマッチングする。二種類の方式が互いに協働することにより、標的配列の長さに対する需要が理論上の最低値まで低下することは以下の実施例に実証されるように、標的配列の長さが40bpを超えないことが可能になる。前記のように、高度な断片化核酸サンプル(例えばctDNA)の検出において、より短い標的配列の長さはより高い検出率を有し、それにより検出の感度が大幅に向上する。
【0012】
他方では、本発明の組み合わせ及び反応系は交差反応をよく回避することができ、例えば、変異型標的核酸配列を検出する場合、野生型又は他の近似又は相同性を有する標的核酸の交差反応がない。特に野生型と変異型を同時に検出する場合、両者の交差反応が小さく、希少な変異の検出により有利である。
【0013】
別の一方では、本発明の組み合わせは100bp未満の短い断片DNAを検出することに用いることができ、様々なサンプルタイプの核酸検出に適用することができる。
【0014】
さらに一方では、本発明の組み合わせは一つの反応管で同時に変異型及び野生型の標的核酸配列を検出することができ、野生型及び変異型遺伝子を別々の管に分けて定性検出又は定量検出する必要がなく、特に希少サンプル、例えば末梢血ctDNAサンプルの検出に適用される。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明の組み合わせの各プライマー対は、異なる遺伝子変異タイプに対するように設計されている。シグナルオリゴヌクレオチドがプライマーの一部として設計される場合、各プライマー対に対応するシグナルオリゴヌクレオチドプローブは互いに同じであってもよいが、それらの標的配列結合領域は異なる変異型遺伝子と相補的である。シグナルオリゴヌクレオチドがプライマーから独立して存在する場合、各プライマー対のシグナル検出領域は互いに同じであってもよいが、それらの標的配列結合領域は異なる変異型遺伝子と相補的である。同様に、本発明の組み合わせはさらに追加の複数組のプライマー対を含むことができる。
【0016】
複数組の上流プライマー及び下流プライマーの標的配列結合領域を利用することにより複数種の標的を特異的に識別し、その後にシグナルオリゴヌクレオチドにより検出する。多重検出において、タイピングを必要としない遺伝子変異タイプに対して、異なる上流プライマー及び下流プライマーを設計すればよく、シグナルオリゴヌクレオチドを共用することができ、異なる遺伝子変異タイプの検出が図られ、プローブの使用量を減少させることができる。一方では、コストを節約することができ、臨床使用に有利である。他方では、反応系内のプローブの数が多すぎることによるバックグラウンド干渉を顕著に低減することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記組み合わせはさらに他の核酸を特異的に標的化することができる上流プライマー及び/又は下流プライマーを含む。例えば、本発明の組み合わせの上流プライマー及び下流プライマーが変異型遺伝子に対するように設計される場合、すなわち、上流プライマー及び下流プライマーの3’末端はいずれも標的配列上の特異的検出部位(すなわち、変異による検出対象の変異型遺伝子が他の遺伝子と区別される部位)とマッチングし、変異型遺伝子を増幅することができる。さらに、本発明の組み合わせは、3’末端に野生型遺伝子とマッチングする部位が設置され、野生型遺伝子と特異的にアニーリングすることができる野生型上流プライマー、及び/又は、3’末端に野生型遺伝子とマッチングする部位が設置され、野生型遺伝子と特異的にアニーリングすることができる野生型下流プライマーをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明の標的配列結合領域に1-5個のミスマッチ塩基が設置されてもよく、それは標的配列と相補的にペアリングしない。例えば、標的配列結合領域の3’末端の後ろから数えて第2位又は第3位にミスマッチ塩基が設置されてもよい。
【0019】
第1形態において、本発明の組み合わせは、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端が標的配列の特異的検出部位と相補することができる上流プライマーと、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端も同一の特異的検出部位と相補することができる下流プライマーと、
5’から3’まで順に第1茎(stem)領域、ループ(loop)領域、第2茎領域及びアンカー(anchor)領域を含むように設計され、かつ第1検出基及び第2検出基が修飾されており、前記第1検出基が前記第1茎領域に修飾され、前記第2検出基が前記第2茎領域、前記第2茎領域とアンカー領域との間又は前記アンカー領域の非3’末端に修飾され、前記第1検出基と第2検出基が距離の変化によりシグナルの変化を生成するシグナルオリゴヌクレオチドと、を含み、
前記上流プライマー及び/又は下流プライマーは標的配列結合領域の上流にシグナル検出領域を含み、前記シグナル検出領域は標的配列と相補的ペアリングできないように設計され、
前記第1茎領域は第2茎領域と部分的又は完全に相補するように設計され、前記アンカー領域は前記シグナルオリゴヌクレオチドの3’端に位置しかつ前記シグナル検出領域と完全又は部分的に同じになるように設計される。
【0020】
理解されるように、アンカー領域はシグナル検出領域と完全又は部分的に同じになるように設計されるため、それはシグナル検出領域の相補的な配列とアニーリングして延伸することができ、それにより上流プライマー及び下流プライマーの増幅産物を増幅する。また、第1茎領域は第2茎領域と部分的に又は完全に相補するように設計され、それにより第2茎部と共にステムループの茎部を構成することができる。
【0021】
第1形態の組み合わせを使用する場合、第1茎領域と第2茎領域は相補的であり、ステムループの茎部を構成し、シグナルオリゴヌクレオチドが完全な「ステムループ」構造を呈する場合、第1検出基と第2検出基との距離が近く、蛍光共鳴エネルギー移動効率が高い。シグナルオリゴヌクレオチドの第1茎領域がDNAポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性により加水分解され、又はシグナルオリゴヌクレオチドの「ステムループ」構造が開かれた場合、第1検出基と第2検出基との間の距離が遠くなり、蛍光共鳴エネルギー移動効率が低下し、蛍光シグナルの変化を引き起こし、それにより機器により検出される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明のシグナルオリゴヌクレオチドは「ステムループ」構造を形成することができ、該ステムループ構造は本発明のプライマーのアニーリング温度(例えば75℃と高い場合)で依然として安定した構造を有する(即ち、「ステムループ」が開かれない)。
【0023】
本発明において、第1茎領域の長さは6-20ntであってもよい。
【0024】
本発明において、第2茎領域の長さは6-20ntであってもよい。
【0025】
本発明において、ループ領域は例えば長さが3-25ntの塩基配列であってもよく、また例えばC3、C6、C9及びC12からなる群から選択されるスペーサー修飾であってもよく、さらに例えばポリエチレングリコールから選択されてもよい。
【0026】
本発明において、第2茎領域とアンカー領域との間に0-5個の塩基間隔が存在してもよい。
【0027】
具体的な実施形態において、アンカー領域の長さは15-30ntであってもよい。
【0028】
例示的な実施形態において、第1検出基は第1茎領域に位置し、第2検出基は前記第2茎領域に位置するようにされてもよい。第1検出基は第1茎領域に位置し、第2検出基はアンカー領域の非3’末端に位置するようにされてもよい。第1検出基は第1茎領域に位置し、第2検出基は第2茎領域とアンカー領域との間に位置するようにされてもよい。第2検出基は第1茎領域に位置し、第1検出基は第2茎領域に位置するようにされてもよい。第2検出基は第1茎領域に位置し、第1検出基はアンカー領域の非3’末端に位置するようにされてもよい。又は、第2検出基は第1茎領域に位置し、第1検出基は第2茎領域とアンカー領域との間に位置するようにされてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、第1検出基又は第2検出基は第1茎領域の5’端に位置するようにされてもよい。
【0030】
第2形態において、本発明の組み合わせは、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端が標的配列の特異的検出部位と相補することができる上流プライマーと、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端も同一の特異的検出部位と相補することができる下流プライマーと、
シグナルオリゴヌクレオチドと、を含み、前記シグナルオリゴヌクレオチドはフレキシブルオリゴヌクレオチドとして設計され、その全部又は一部の配列がシグナル検出領域と同じであり、かつ前記シグナルオリゴヌクレオチドが第1検出基及び第2検出基が修飾されており、前記第1検出基と第2検出基が距離の変化によりシグナルの変化を生成し、前記第1検出基と第2基が前記シグナルオリゴヌクレオチドの非3’末端に位置し、
前記シグナル検出領域は上流プライマー及び/又は下流プライマーの標的配列結合領域の上流に位置し、かつ前記シグナル検出領域は標的配列と相補的ペアリングできないように設計される。
【0031】
理解されるように、シグナルオリゴヌクレオチドはシグナル検出領域と完全又は部分的に同じになるように設計されるため、それはシグナル検出領域の相補的配列とアニーリングして延伸することができ、それにより上流プライマー及び下流プライマーの増幅産物を増幅する。
【0032】
第2形態の組み合わせを使用する場合、上流プライマー及び下流プライマーは標的配列と特異的に結合しかつ延伸して予備増幅産物を生成した後、シグナルオリゴヌクレオチドは予備増幅産物と相補的にペアリングしてPCR増幅を行うことができ、第1検出基と第2検出基をPCRにより生成された二本鎖増幅産物に組み込み、第1検出基と第2検出基との距離を変化させ、蛍光シグナルの変化を引き起こし、それにより機器により検出される。
【0033】
具体的な実施形態において、シグナルオリゴヌクレオチドの長さは15-30ntであってもよい。
【0034】
例示的な実施形態において、第1検出基は5’端又は任意の非3’末端の位置に位置し、第2検出基と第1検出基は5-25ntの間隔を隔てかつ3’末端に位置しない。
【0035】
第3形態において、本発明の組み合わせは、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端が標的配列の特異的検出部位と相補することができる上流プライマーと、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端も同一の特異的検出部位と相補することができる下流プライマーと、
全部又は一部の配列がシグナル検出領域と同じであり、かつ第1検出基及び第2検出基が修飾されており、前記第1検出基及び第2検出基がシグナルオリゴヌクレオチドの加水分解により生成された距離の変化によりシグナルの変化を生成するシグナルオリゴヌクレオチドと、
全部又は一部の配列がシグナル検出領域と同じである第2プライマーと、を含み、
前記シグナル検出領域は上流プライマー及び/又は下流プライマーの標的配列結合領域の上流に位置し、前記シグナル検出領域は標的配列と相補的ペアリングできないように設計され、かつ前記シグナル検出領域上の前記シグナルオリゴヌクレオチドと同じ領域は前記第2プライマーと同じ領域の下流に位置する。
【0036】
理解されるように、当該形態において、シグナルオリゴヌクレオチドはTaqManプローブとされており、それはシグナル検出領域の相補的配列とハイブリダイズしてペアリングすることができる。また、第2プライマーはシグナル検出領域と完全又は部分的に同じになるように設計されるため、それはシグナル検出領域の相補的配列とアニーリングして延伸することができ、それにより上流プライマー及び下流プライマーの増幅産物を増幅する。
【0037】
第3形態の組み合わせを使用する場合、上流プライマー及び下流プライマーは標的配列と特異的に結合しかつ延伸して予備増幅産物を生成した後、第2プライマー及びシグナルオリゴヌクレオチドは予備増幅産物と相補的にペアリングすることができ、第2プライマーにより延伸される場合、シグナルオリゴヌクレオチドを加水分解して第1検出基を放出し、蛍光シグナルの変化を引き起こし、それにより機器により検出される。
【0038】
当業者であれば、適切な第2プライマーを設計して選択することができ、上流プライマー及び下流プライマーの予備増幅産物を増幅することができればよい。
【0039】
本発明の第3形態におけるシグナルオリゴヌクレオチドに対して、当業者は一般的なTaqMan加水分解プローブの設計原則に応じて設計することができ、ハイブリダイゼーション領域がシグナル検出領域の相補領域に位置すればよい。
【0040】
一つの具体的な実施形態において、第1検出基と第2検出基はそれぞれシグナルオリゴヌクレオチドの5’末端及び3’末端に位置する。
【0041】
第4形態において、本発明の組み合わせは、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端が標的配列の特異的検出部位と相補することができる上流プライマーと、
3’端に標的配列結合領域が設置され、前記標的配列結合領域の3’末端も同一の特異的検出部位と相補することができる下流プライマーと、
第1検出基及び第2検出基が修飾されており、前記第1検出基と第2検出基が距離の変化によりシグナルの変化を生成するシグナルオリゴヌクレオチドと、を含み、
前記シグナルオリゴヌクレオチドは前記上流プライマー及び/又は下流プライマーの一部として設計されかつ標的配列結合領域の上流に位置し、前記シグナルオリゴヌクレオチドは5’から3’まで順に第1茎領域、ループ領域及び第2茎領域を含み、前記第1検出基は前記第1茎領域に位置し、前記第2検出基は前記第2茎領域に位置し、
前記第1茎領域は第2茎領域と部分的に又は完全に相補するように設計される。
【0042】
理解されるように、第1茎領域は第2茎領域と部分的又は完全に相補するように設計され、それにより第2茎部と共にステムループの茎部を構成することができる。
【0043】
第4形態の組み合わせを使用する場合、シグナルオリゴヌクレオチドが完全な「ステムループ」構造を呈する場合、第1検出基と第2検出基との距離が近く、蛍光共鳴エネルギー移動効率が高い。第1茎領域がDNAポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性により加水分解されるか、又はシグナルオリゴヌクレオチドの「ステムループ」構造が開かれた場合、第1検出基と第2検出基との間の距離が遠くなり、蛍光共鳴エネルギー移動効率が低下し、蛍光シグナルの変化を引き起こし、それにより機器により検出される。
【0044】
シグナルオリゴヌクレオチドを上流プライマー及び/又は下流プライマー内に設計することにより、本発明はさらに従来のARMS法におけるプローブの使用を節約し、検出性能を満たすと同時にコストを低減する。
【0045】
例示的な実施形態において、第1検出基は第1茎領域に位置し、第2検出基は前記第2茎領域に位置するようにされてもよい。又は、第2検出基は第1茎領域に位置し、第1検出基は第2茎領域に位置する。
【0046】
なお、本発明は、
本発明の組み合わせ、増幅試薬をサンプルと混合するステップと、
サンプルに存在する可能性のある標的配列を増幅するステップと、
生成されたシグナル変化を取得するステップと、
得られたシグナルの変化から、サンプル中に標的核酸が存在するか否かを判断するステップと、を含む、核酸を検出する方法をさらに提供する。
【0047】
具体的な実施形態において、サンプルに標的核酸が存在するか否かを判断すると同時に標的核酸を定量する。
【0048】
いくつかの実施形態において、増幅ステップの前に、サンプル混合物を異なる反応ユニットに割り当てるステップをさらに含む。任意選択的に、異なる反応ユニットに割り当てる前に、二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性するステップをさらに含んでもよい。
【0049】
具体的には、得られた蛍光シグナルに基づいて判断することは、第1検出基と第2検出基との間の蛍光共鳴エネルギー移動が存在するか又は存在しないかを検出することを指す。
【0050】
具体的な実施形態において、増幅はPCRによる増幅を含み、例えば、予備変性,変性、アニーリング及び延伸の複数のサイクルを含むことができる。
【0051】
好ましい実施形態において、前記測定対象テンプレートはctDNAでありかつ前記サンプルは末梢血である。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記サンプルは癌に罹患しているか又は癌に罹患している疑いがある被験者に由来する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の一形態でデジタルPCRプラットフォームにおいてEGFR遺伝子18エクソンの点突然変異(c.2156G>C、p.G719>A変異)を検出する場合の結果を示す。
【
図2】比較例1において異なる断片長さの方案の、高値、中央値及び低値のサンプル定量データに対する線形回帰分析結果を示す。
【
図3】本発明の他の形態でQ-PCR検出プラットフォームにおいてEGFR遺伝子18エクソンの点突然変異(c.2156G>C、p.G719>A変異)を検出する場合の結果を示す。
【
図4】本発明の別の形態でデジタルPCRプラットフォームにおいてEGFR遺伝子点突然変異(c.2369C>T,p.T790>M)を検出する場合の結果を示す。
【
図5】比較例2において異なる断片長さの方案の、高値及び低値サンプル定量データに対する線形回帰分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に具体的な実施形態及び実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明し、本発明の利点及び様々な効果はこれにより明らかになる。当業者に理解されるように、これらの具体的な実施形態及び実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労力を要さずに想到し得る他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0055】
明細書全体において、特に説明しない限り、本明細書で使用される用語は本分野で一般的に使用される意味であると理解されるべきである。したがって、別の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は本発明の属する分野の当業者の一般的な理解と同じ意味を有する。矛盾が存在する場合、本明細書は優先的である。
【0056】
本明細書において、用語「核酸」はヌクレオチドモノマーの一本鎖及び/又は二本鎖ポリマーを指し、ヌクレオチド間リン酸ジエステル結合又はヌクレオチド間類似体により接続された2’-デオキシリボヌクレオチド(DNA)及びリボヌクレオチド(RNA)を含むがそれらに限定されない。核酸中のヌクレオチドモノマーは、「ヌクレオチド残基」と呼ばれてもよい。核酸は完全にデオキシリボヌクレオチドで構成され、完全にリボヌクレオチドで構成されるか又はデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドとの嵌合混合物で構成され、かつヌクレオチド類似体を含むことができる。ヌクレオチド単量体単位は、本明細書に記載のヌクレオチドのうちのいずれか一つを含むことができ、ヌクレオチド、及び/又はヌクレオチド類似体(例えば修飾ヌクレオチド)を含むがそれらに限定されない。核酸の大きさは通常、数ヌクレオチド残基から数千ヌクレオチド残基まで異なっている。ここで、「オリゴヌクレオチド」は通常、長さが相対的に短い(例えば80未満)ヌクレオチド重合体を指す。特に指摘しない限り、核酸配列を呈するたびに、だれでも分かるように、ヌクレオチドは左から右へ5’から3’までの順序となっている。特に指摘しない限り、「A」はアデニン、「C」はシトシン、「G」はグアニン、「T」はチミン、「U」はウラシルを表す。
【0057】
本分野の慣用用語によれば、核酸の長さは塩基対(「bp」と略称される)、ヌクレオチド(「nt」と略称される)又はキロベース(「kb」と略称される)で表すことができる。
【0058】
本明細書において、「塩基相補的ペアリング」とは、AとT、AとU及びGとCの対応関係が互いに水素結合で接続される現象を指す。それに応じて、「ミスマッチ塩基」とは、「塩基相補的ペアリング」に規定された以外の他の全てのペアリング状況、例えばAとC、AとG、TとG、又はTとCがペアリングすることを指す。
【0059】
前記のように、本発明の標的配列結合領域に1-5個のミスマッチ塩基を設置することができ、ミスマッチは3’末端の塩基と共同作用することができ、プライマーのその3’末端の相補しないテンプレートでの増幅率を顕著に低下させる。このようなミスマッチ塩基を設けることは当業者の能力範囲内に属する。いくつかの実施形態において、上流プライマー及び/又は下流プライマーの後ろから第3位にミスマッチを導入する。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は核酸変異を検出することである。
【0061】
本発明において、「変異」は、塩基置換変異、挿入変異及び欠失変異から選択することができる。例示的な実施形態では、変異は塩基置換変異であり、すなわち検出対象の二種類の標的配列(野生型及び変異型)の間に塩基数の差がなく、一つ又は複数の塩基のタイプが異なる。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の変異はモノヌクレオチド変異である。
【0063】
本発明において、「特異的検出部位」とは、標的核酸を他の核酸と区別することができる塩基部位を指し、例えば、点突然変異の状況に対して、野生型核酸と変異型核酸との間又は異なる変異型核酸の間に変異塩基が存在すると、「特異的検出部位」は即ち当該変異塩基となる。核酸タイピング(例えばいくつかのウイルスをタイピングする)状況に対して、変異と類似して、異なる型の核酸の間に一つ又は複数の塩基差異が存在すると、「特異的検出部位」は即ちそのうちのある差異塩基となる。
【0064】
「上流プライマー及び下流プライマーの3’末端は標的配列の特異的検出部位と相補することができる」とは、すなわち上流プライマー及び下流プライマーの3’末端はいずれも標的核酸の同一の特異的検出部位と相補する。例えば、点突然変異の状況に対して、本発明の組み合わせにおいて、上流プライマー及び下流プライマーの3’末端はいずれも該変異塩基と相補する。核酸タイピングの状況に対して、本発明の組み合わせにおいて、上流プライマーの3’末端はある差異塩基と相補し、下流プライマーの3’末端も該差異塩基と相補する。このような設計を採用するため、プライマーの3’末端が特異的検出部位と相補しない場合、プライマーの延伸が阻止され、それにより標的配列の検出が図れる。
【0065】
本明細書において、用語「プライマー」はこのようなオリゴヌクレオチドを表す。それはテンプレート依存性DNAポリメラーゼによりDNA合成を「開始」することができ、すなわち例えばオリゴヌクレオチドの3’-端が遊離の3’-OH基を提供し、テンプレート依存性DNAポリメラーゼにより多くの「ヌクレオチド」を前記3’-OH基に連結し、3’から5’のリン酸ジエステル結合を確立し、これによりデオキシヌクレオシド三リン酸を使用すると共に、これによりピロリン酸を放出する。
【0066】
本明細書において、用語「標的配列」、「標的核酸」、「標的核酸配列」又は「標的」は交換して使用することができ、かつ増幅、検出又は増幅して検出しようとする核酸配列部分を意味し、それはハイブリダイゼーション、アニーリング又は増幅条件下で、プローブ又はプライマーとアニーリング又はハイブリダイゼーションを行うことができる。
【0067】
用語「ハイブリダイゼーション」は二つの核酸の間の塩基対合相互作用を表し、それは二本鎖の形成に繋がる。理解されるように、ハイブリダイゼーションを実現するにはそれらが全長において100%の相補性を有することを要求しない。
【0068】
本明細書において、用語「上流プライマー」は、順方向プライマーとも呼ばれ、負鎖に沿って途切れずに延長するオリゴヌクレオチドである。本発明で使用される用語「下流プライマー」は、逆方向プライマーとも呼ばれ、正鎖に沿って途切れずに延長するオリゴヌクレオチドである。ここで、正鎖はすなわちSense Strand、センス鎖であり、コード鎖とも呼ばれ、一般的に二本鎖DNAの上端に位置し、方向は左から右へ5’-3’となり、塩基配列は該遺伝子mRNAと基本的に同じである。該鎖と結合するプライマーは逆方向プライマーとなる。負鎖はすなわちアンチセンス鎖であり、非コード鎖とも呼ばれ、正鎖と相補し、該鎖と結合するプライマーは順方向プライマーとなる。理解すべきことは、センス鎖とアンチセンス鎖の指定が交換する場合、対応する順方向及び逆方向プライマーの命名もそれに伴って交換することができる。
【0069】
本明細書において、「上流」、「…上流に位置する/にある」、「上流に…を有する」等は、核酸配列を説明するコンテキストでは同一核酸配列において指示領域よりも5’端に近い部分を示し、例えば指示領域に隣接してもよく、指示領域と一つ又は複数の塩基の間隔を有してもよい。それに応じて、本明細書で使用される用語「下流」、「…下流に位置する/にある」、「下流は…を有する」等は、核酸配列を説明するコンテキストでは同一の核酸配列において指示領域よりも3’端に近い部分を示し、例えば指示領域に隣接してもよく、指示領域と一つ又は複数の塩基の間隔を有してもよい。理解すべきことは、別途に説明しない限り、説明された核酸が二本鎖核酸である場合、「上流」及び「下流」の表現は通常、センス鎖の5’端及び3’端を基準とする。
【0070】
本明細書において、用語「Taqmanプローブ(TaqMan probe)」と「加水分解プローブ(hydrolysis probe)」は交換して使用することができる。TaqmanプローブはReal-time PCR技術プラットフォームで開発された蛍光検出技術であり、プローブの5’端は第1検出基を含み、3’端は第2検出基を含む。プローブが完全である場合、第1検出基から放射された蛍光シグナルは第2検出基に吸収され、PCR増幅を行うと、Taq DNAポリメラーゼの5’端から3’端までのエキソヌクレアーゼ活性はプローブを酵素切断して分解し、第1検出基と第2検出基を分離させ、蛍光シグナルを発させ、それにより蛍光シグナルの蓄積とPCR産物の完全な同期を達成する。
【0071】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のうちのいずれか一種であってもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば5×SSC、5×Denhardt溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば5×SSC、5×Denhardt溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば5×SSC、5×Denhardt溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件下で、所望温度が高いほど相同性の高いポリヌクレオチド、例えばDNAを効果的に得ることができる。ハイブリダイゼーションのストリンジェント度に影響を与える要因は様々であり、例えば温度、プローブ濃度、プローブ長さ、イオン強度、時間、塩濃度などであるが、当業者はこれらの要素を適切に選択することにより類似するストリンジェント度を得ることができる。
【0072】
本明細書において、「フレキシブルオリゴヌクレオチド」とは、オリゴヌクレオチドが一本鎖状態で分子のフレキシブル性によりそれをカール状にし、ハイブリダイゼーション又はアニーリング延伸により二本鎖状態になった後、水素結合作用によりそれを比較的剛性の二重螺旋構造に固定し、フレキシブルオリゴヌクレオチドに標識された第1検出基と第2検出基との間の距離を変化させ、それにより検出可能なシグナルを生成することを指す。例えば、US9845492B2の記載を参照してフレキシブルオリゴヌクレオチドを獲得することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の第1検出基及び第2検出基の一方は蛍光基であってもよく、他方は消光基又は蛍光基と蛍光共鳴エネルギー移動によりシグナル変化を生成できる他の基であってもよい。
【0074】
例示的な実施形態において、蛍光共鳴エネルギー移動によりシグナル変化を生成する基はCy3又はCy5であってもよく、これはそれらの間がFRET作用により蛍光シグナル変化を生成することができるためである。
【0075】
本発明において、蛍光基は例えばFAM、HEX、VIC、ROX、Cy3、Cy5及びCy5.5からなる群から選択することができる。
【0076】
本発明において、消光基は例えばTAMRA、BHQ1、BHQ2、BHQ3、DABCYL、QXL及びDDQIからなる群から選択することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、シグナルオリゴヌクレオチドと上流プライマー及び下流プライマーの予備増幅産物はアニーリングして延伸し、第1検出基及び第2検出基は延伸により生成された二本鎖増幅産物に組み込まれ、これにより距離の変化(増加)が発生する。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明の組み合わせはキットであってもよく、前記キットはさらに増幅試薬を含む。
【0079】
本発明において、用語「増幅試薬」はPCRに用いられる試薬を指し、dNTP、DNAポリメラーゼ、及びいくつかのPCR反応を促進する試薬、例えばKCl、MgCl2、Tris-HCl、ジチオスレイトール(DTT)等を含むが、それらに限定されない。
【0080】
本発明において、組み合わせ及びキット中の各成分は個別に分けて包装する形式で存在してもよく、又は予め混合する形式で存在してもよい。
【0081】
本発明において、「予備変性」及び「変性」の目的は二本鎖DNAで対をなす相補的な塩基の間の水素結合を破壊し、それにより二本鎖が二本の一本鎖に分離することを可能にすることである。例えば、二本鎖DNAを含む混合物を加熱する方法により一本鎖を形成することができ、例えば混合物を90℃、92℃、95℃又は98℃に加熱して二本鎖DNAを解離する。解離が完了した後、それを室温又は室温以下に冷却する。また例えば、一本鎖の形成はさらに溶液イオン強度(例えば、酸、塩基、塩等を添加する)を変更することにより二本鎖DNAの間の水素結合を破壊することができ、酵素(例えば、ヘリカーゼ)を用いて二本鎖DNAを一本鎖DNAに解離することを実現することができる。また、ホットスタートポリメラーゼに関する反応において、「予備変性」ステップではさらに該ポリメラーゼに対して熱活性化を行う。デジタルPCRプラットフォームに関する場合に、一本鎖に変性した後、「予備変性」はさらに該一本鎖をドップレット/マイクロウェルに割り当てることにより、反応に関与する有効な標的数を増加させ、それにより反応感度を向上させる操作を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、増幅は二つのサイクル増幅段階に分けることができ、第1サイクル段階のサイクル数は3-15個のサイクルであってもよい。第2サイクル増幅段階のサイクル数は30-50個のサイクルであってもよい。
【0083】
増幅に適用される手順及び一般的な反応条件(例えば温度、時間)は当業者によく知られている。いくつかの例示的な実施形態において、具体的な反応条件は以下のとおりであってもよい。92℃-96℃で5-15分間予備変性する。92℃-95℃で10-60秒変性し、55℃-75℃でアニーリングして30-90秒延伸し、合計で3-15個のサイクルを行う。92℃-95℃で10-60秒変性し、45℃-65℃でアニーリングして30-90秒延伸し、合計で35-50個のサイクルを行う。4℃-15℃で反応を終了する。選択可能に、熱サイクルステップの後に不活性化ステップをさらに含むことができ、例えば94℃-98℃、5-15分間である。別の例示的な実施形態において、増幅は90℃-96℃で5-15分間予備変性すること、90℃-95℃で10-60秒変性し、50℃-75℃でアニーリングして30-90秒延伸し、35-50個のサイクルを行うこと、4℃-15℃で反応を終了することを含む。選択可能に、熱サイクルステップの後に不活性化ステップをさらに含むことができ、例えば94℃-98℃、5-15分間である。具体的な実施形態において、増幅は95℃で10分間予備変性すること、94℃で30秒間変性し、55℃でアニーリングして60秒間延伸し、合計で45個のサイクルを行うこと、10℃で反応を終了することを含む。
【0084】
サンプル中の標的配列のみを予備増幅する場合、上流プライマー又は下流プライマーの反応系における濃度は例えば15nM-150nMであってもよく、好ましくは30nM-90nMであり、より好ましくは45nMである。そうでなければ、上流プライマー又は下流プライマーの反応系における濃度は例えば150nM-1800nMであってもよく、好ましくは300nM-900nMであり、より好ましくは450nMである。
【0085】
シグナルオリゴヌクレオチドが独立して存在する場合、その反応系における濃度は例えば150nM-1500nMであってもよく、好ましくは300nM-600nMであり、より好ましくは450nMである。
【0086】
本発明において、「第1」及び「第2」などの表現は単に目的を説明するために用いられ、限定された物質を区別するために用いられ、いかなる方式で順序又は主従を限定するものではない。
【0087】
本発明において、測定対象サンプルは末梢血サンプル、他のヒト由来又は微生物由来の遊離核酸サンプル、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)サンプル、新鮮組織サンプル、尿サンプル、灌流液サンプル、脳脊髄液サンプル、人工培養の細胞株サンプル、人工合成のプラスミドサンプル及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0088】
以下に具体的な実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例1 ddPCRプラットフォームでEGFR遺伝子18エクソン点突然変異c.2156G>C、p.G719>Aを検出する
【0090】
サンプルの作製
QIAGEN社のQIAamp DNA Mini and Blood Mini Kitを使用して該キットの取り扱い説明書に従ってHEK-293T細胞DNAを抽出し、HEK-293T細胞DNAと上海生工により提供されたG719AプラスミドDNAをそれぞれ超音波で切断して磁気ビーズでスクリーニングして精製し、野生型テンプレート(HEK-293T細胞系DNA)と変異型テンプレート(G719AプラスミドDNA)を得て、二種類のテンプレートを一定の割合で混合し、EGFR遺伝子G719A点突然変異を含有する擬似臨床サンプルを得る。同時に断片化野生型DNAを使用して陰性対照(Neg)を作製し、TE Bufferを使用してテンプレートなし対照(NTC)とする。
【0091】
プライマー及びシグナルオリゴヌクレオチドの設計
EGFR 18エクソン点突然変異に対して上流プライマー、下流プライマー及びシグナルオリゴヌクレオチドを設計し、その配列は表1に示すとおりである。
【0092】
【0093】
ここで、変異型上流プライマー(SEQ ID NO:1)の全長は40bpであり、その3’端の第1個から第20個までの塩基は標的配列結合領域となり、その5’端の第1個から第20個までの塩基はシグナルオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:3)の3’端の第1個から第20個までの塩基(アンカー領域)と同じである。変異型下流プライマー(SEQ ID NO:2)プライマーの全長は17bpであり、標的配列と結合する。シグナルオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:3)プライマーの全長は37bpであり、その3’端の第1個から第20個までの塩基はアンカー領域となり、5’端の第1個から第8個までの塩基はその第1茎領域となり、5’端の第9個から第16個までの塩基はその第2茎領域となる。
【0094】
反応系の作製は下記表2に示すとおりである。
【0095】
【0096】
配置が完了した後、測定対象テンプレートを含有する20μLの反応液を金属浴に置き、95℃で1min変性し、次に直ちに2~8℃の冷蔵庫に置いて2~3min冷却する。
【0097】
冷却後の20μLのPCR反応液をドップレット発生カードのサンプル孔に添加し、次に70μLのドップレット発生オイル(Bio-Rad、1863005)をドップレット発生カード(Bio-Rad、1864008)のオイル孔に添加し、最後にシールストリップ(Bio-Rad、1863009)を用いてドップレット発生カードをシールする。
【0098】
作製されたドップレット発生カードをドップレット発生器に入れ、ドップレットの生成を開始する。約2分間後、ドップレットの作製が完了し、カードスロットを取り出し、最上列の孔から約40μLのドップレットを96ウェルPCRプレート(Bio-Rad、1200192)に注意深く移動する。
【0099】
増幅読み取り
96ウェルプレートを膜封止処理した後、PCRサーマルサイクラー(Bio-Rad、PX1 PCR Plate Sealer)に置き、標的核酸配列の特異的富化、富化後のテンプレートの特異的増幅及び蛍光シグナルの検出を順に行う。反応手順は以下のとおりである。95℃で10分間予備変性する。94℃で30秒間変性し、65℃でアニーリングして60秒間延伸し、合計で45個のサイクルを行う。98℃で10分間不活化する。10℃で反応を終了する。
【0100】
反応過程において、まずPCR反応の最初のいくつかのサイクルにおいて、変異型上流プライマー及び変異型下流プライマーにより標的核酸配列が特異的に増幅される。増幅後、上流プライマーの「シグナル検出領域」と相補的な配列が追加され、後続のシグナルオリゴヌクレオチドがペアリング識別を行うために用いられる。
【0101】
上記反応が完了した後、シグナルオリゴヌクレオチド及び変異型下流プライマーは対応する富化後のテンプレートとペアリングして増幅することができ、変異型下流プライマーがアンカー領域に増幅する時、DNAポリメラーゼはその5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を利用して第1茎領域を加水分解し、蛍光基と消光基を分離させ、蛍光シグナルを発させ、それにより変異型テンプレートを検出する。
【0102】
データ分析
Bio-Rad社のQuantaSoftデジタルPCR分析ソフトウェアを用いてデータ分析を行い、結果を
図1に示す。ここで、「E02」はテンプレートなし対照(NTC)の検出結果であり、「F02」は陰性対照(Neg)の検出結果であり、「H02」は擬似臨床サンプルの結果である。
図1から分かるように、陰性対照及びテンプレートなし対照においていずれも非特異的増幅がなく、擬似臨床サンプルにおいてc.2156G>C、p.G719>A変異を特異的に識別することができる。
【0103】
比較例1
前述した実施例1において、上流プライマーと下流プライマーはいずれもEGFR遺伝子18エクソン点突然変異を特異的に識別した。二つのプライマーがいずれも変異遺伝子を特異的に識別する方案と単一のプライマーのみが変異遺伝子を特異的に識別する方案の検出効果上の区別を考察するために、以下の実験を行った。
【0104】
サンプルの作製
野生型テンプレート(HEK-293T細胞株DNA)と変異型テンプレート(G719AプラスミドDNA)の作製過程は実施例1と同じである。二種類のテンプレートを異なる割合で混合し、EGFR遺伝子G719A点突然変異を含有する高値サンプル(理論濃度393コピー/μL)、中央値サンプル(理論濃度44コピー数/μL)、低値サンプル(理論濃度4コピー/μL)を得る。同時に断片化野生型DNAを使用して陰性対照(Neg)を作製し、TE Bufferを使用してテンプレートなし対照(NTC)とする。
【0105】
プライマー及びシグナルオリゴヌクレオチドの設計
二つのプライマーがいずれも変異遺伝子を特異的に識別する方案は表1の設計を採用する。単一のプライマーが変異遺伝子を特異的に識別する方案は表3に示す設計を採用する。
【0106】
【0107】
表3における下流プライマー及びシグナルオリゴヌクレオチドは、表1と同様である。また、一組の上流プライマーを設計しており、これらの上流プライマーは点突然変異を特異的に識別しない。
【0108】
二種類の方案はいずれも同じ変異型下流プライマーを採用しているが、異なる変異型上流プライマー/上流プライマーにより、対応する標的配列の長さが異なり、具体的には表4に示すとおりである。
【0109】
【0110】
反応系の作製は下記の表5に示すとおりである。
【表5】
【0111】
ドップレットを生成する前に、作製された測定対象テンプレートを含有する20μLの反応液を金属浴に置き、95℃で1min変性した後、直ちに2~8冷蔵庫に2~3min置く。
【0112】
冷却された20μLのPCR反応液をドップレット発生カードのサンプル孔に添加し、次にドップレット発生カードのオイル孔に70μLのドップレット発生オイルを添加し、最後にシールストリップを用いてドップレット発生カードをシールする。
【0113】
作製されたドップレット発生カードをドップレット発生器に入れ、ドップレットの生成を開始する。約2分間後、ドップレットの作製が完了し、カードスロットを取り出し、最上列の孔から約40μLのドップレットを96ウェルPCRプレートに注意深く移動する。
【0114】
増幅読み取り
96ウェルプレートに膜封止処理を行った後、PCRサーマルサイクラーに置いてPCR増幅を行う。使用される手順は以下のとおりである。95℃で10分間予備変性する。94℃で30秒変性し、55℃でアニーリングして60秒延伸し、合計で48個のサイクルを行う。98℃で10分間不活化する。10℃で反応を終了する。
PCR増幅が終了した後、96ウェルプレートをドップレット分析装置に置いてFAM/HEXチャネルを選択してシグナルを読み取る。
【0115】
統計分析
QuantaSoft分析ソフトウェアを用いて蛍光シグナルの強度、数を分析し、EGFR遺伝子18エクソン点突然変異型のコピー数及び濃度を得て、結果を表6に示す。
【0116】
【0117】
表6から分かるように、標的配列の断片が短いほど、サンプル定量に対する能力が高くなり、すなわちG719A変異型断片を検出する能力が高くなる。
【0118】
表6におけるデータを線形回帰分析し、分析結果は
図2に示すとおりである。変異型高値サンプル、中央値サンプル、低値サンプルを検出する場合、その検出能力は標的配列の長さと負の相関を呈することが分かる。標的配列が短いほど、変異型の断片が多く検出され、検出能力が高くなり、逆に、検出能力が低くなる。
【0119】
実施例2 Q-PCRプラットフォームでEGFR遺伝子18エクソン点突然変異G719Aを検出する
【0120】
サンプルの作製
QIAGEN社のQIAamp DNA Mini and Blood Mini Kitを使用して該キットの取り扱い説明書に従ってHEK-293T細胞DNAを抽出し、HEK-293T細胞DNAと上海生工により提供されたG719AプラスミドDNAをそれぞれ超音波で切断して磁気ビーズでスクリーニングして精製し、野生型テンプレート(HEK-293T細胞系DNA)と変異型テンプレート(G719AプラスミドDNA)を得て、二種類のテンプレートを一定の割合で混合し、EGFR遺伝子G719A点突然変異を含有する擬似臨床サンプルを得る。同時に断片化野生型DNAを使用して陰性対照(Neg)を作製し、TE Bufferを使用してテンプレートなし対照(NTC)とする。
【0121】
反応の作製
プライマー及びシグナルオリゴヌクレオチドの設計
EGFR 18エクソン点突然変異に対して上流プライマー、下流プライマー、第2プライマー及びシグナルオリゴヌクレオチドを設計し、その配列は表7に示すとおりである。
【0122】
【0123】
反応系の作製は下記表8に示すとおりである。
【表8】
【0124】
増幅読み取り
PCR管に蓋をした後にサンプルを軽く均一に混合し、その後に一旦遠心分離した後に室温に置いて5min静置する。再びPCR管をミニ遠心機に置き、一旦遠心分離した後に蛍光定量PCR装置(ABI 7500リアルタイム蛍光定量PCRシステム)のトレイに移す。使用される手順は以下のとおりである。95℃で5分間予備変性する。94℃で30秒変性し、60℃でアニーリングして30秒延伸し、合計で10個のサイクルを行い、採光しない。56℃でアニーリングして30秒延伸し、合計で30個のサイクルを行い、採光し、10℃で反応を終了する。
【0125】
データ分析
Q-PCR検出プラットフォームを用いてデータ分析を行い、結果は
図3に示すとおりである。
図3から分かるように、陰性対照及びテンプレートなし対照においていずれも非特異的増幅がなく、擬似臨床サンプルにおいてG719Aフラグメントを特異的に識別することができる。
【0126】
実施例3 ddPCRプラットフォームでEGFR遺伝子点突然変異c.2369C>T、p.T790>Mを検出する
【0127】
サンプルの作製
QIAGEN社のQIAamp DNA Mini and Blood Mini Kitを使用して該キットの取り扱い説明書に従ってHEK-293T細胞DNA及びNCI-H1975細胞系DNAを抽出し、二種類の細胞系DNAをそれぞれ超音波で切断して磁気ビーズでスクリーニングして精製し、EGFR野生型テンプレート(HEK-293T細胞系DNA)及びEGFR T790M変異型テンプレート(NCI-H1975細胞系DNA)を得て、二種類のテンプレートを一定の割合で混合し、EGFR遺伝子T790M点突然変異を含有する擬似臨床サンプルを得る。同時に断片化野生型DNAを使用して陰性対照(Neg)を作製し、TE Bufferを使用してテンプレートなし対照(NTC)とする。
【0128】
プライマー配列は表9に示すとおりである。
【表9】
【0129】
反応系の作製は下記の表10に示すとおりである。
【表10】
【0130】
配置が完了した後、測定対象テンプレートを含有する20μLの反応液を金属浴に置き、95℃で1min変性し、次に直ちに2~8℃の冷蔵庫に置いて2~3min冷却する。
【0131】
冷却された20μLのPCR反応液をドップレット発生カードのサンプル孔に添加し、次にドップレット発生カードのオイル孔に70μLのドップレット発生オイルを添加し、最後にシールストリップを用いてドップレット発生カードをシールする。
【0132】
作製されたドップレット発生カードをドップレット発生器に入れ、ドップレットの生成を開始する。約2分間後、ドップレットの作製が完了し、カードスロットを取り出し、最上列の孔から約40μLのドップレットを96ウェルPCRプレートに注意深く移動する。
【0133】
増幅読み取り
96ウェルプレートに膜封止処理を行った後、PCRサーマルサイクラーに置いてPCR増幅を行う。使用される手順は以下のとおりである。95℃で10分間予備変性する。94℃で30秒変性し、56℃でアニーリングして60秒延伸し、合計で48個のサイクルを行う。98℃で10分間不活化する。10℃で反応を終了する。
PCR増幅が終了した後、96ウェルプレートをドップレット分析装置に置いてFAM/HEXチャネルを選択してシグナルを読み取る。
【0134】
データ分析
Bio-Rad社のQuantaSoftデジタルPCR分析ソフトウェアを用いてデータ分析を行い、結果を
図4に示す。ここで、「A02」はテンプレートなし対照(NTC)の検出結果であり、「A03」は陰性対照(Neg)の検出結果であり、「F01」は擬似臨床サンプルの結果である。本発明の方案はddPCR検出プラットフォームで陰性対照及びテンプレートなし対照においていずれも非特異的増幅がなく、H1975サンプルにおいてT790Mフラグメントを特異的に識別することができる。
【0135】
比較例2
前述した実施例3において、上流プライマー及び下流プライマーはいずれもEGFR遺伝子20エクソン点突然変異を特異的に識別する。本発明の方案の変異型F、変異型Rはいずれも該変異部位を特異的に識別する。二つのプライマーがいずれも変異遺伝子を特異的に識別する場合及び単一のプライマーのみが点突然変異遺伝子を特異的に識別する場合の検出効果上の区別を考察するために、以下の実験を行った。
【0136】
サンプルの作製
野生型テンプレート(HEK-293T細胞株DNA)及び変異型テンプレート(NCI-H1975細胞株DNA)の作製過程は実施例3と同じである。二種類のテンプレートを異なる割合で混合し、EGFR遺伝子T790M点突然変異を含有する高値サンプル(理論濃度150コピー/μL)、低値サンプル(理論濃度15コピー/μL)を得る。同時に断片化野生型DNAを使用して陰性対照(Neg)を作製し、TE Bufferを使用してテンプレートなし対照(NTC)とする。
【0137】
プライマーの設計
二つのプライマーがいずれも点突然変異を特異的に識別する方案は表10の設計を採用する。単一のプライマーが点突然変異を特異的に識別する方案は表11に示す設計を採用する。
【0138】
【0139】
表11における変異型上流プライマー及び野生型上流プライマーは、表10と同様である。なお、一組の下流プライマーを設計しており、これらの下流プライマーは点突然変異を特異的に識別しない。
【0140】
二種類の方案はいずれも同様の変異型上流プライマー及び野生型上流プライマーを採用しているが、異なる変異型下流プライマー/下流プライマーにより、対応する標的配列の長さが異なり、具体的には表12に示すとおりである。
【0141】
【0142】
反応系の作製は表13に示すとおりである。
【表13】
【0143】
作製された測定対象テンプレートを含有する20μLの反応液を金属浴に置き、95℃で1min変性した後、直ちに2~8℃の冷蔵庫に2~3min置く。
【0144】
冷却された20μLのPCR反応液をドップレット発生カードのサンプル孔に添加し、次にドップレット発生カードのオイル孔に70μLのドップレット発生オイルを添加し、最後にシールストリップを用いてドップレット発生カードをシールする。
【0145】
作製されたドップレット発生カードをドップレット発生器に入れ、ドップレットの生成を開始する。約2分間後、ドップレットの作製が完了し、カードスロットを取り出し、最上列の孔から約40μLのドップレットを96ウェルPCRプレートに注意深く移動する。
【0146】
増幅読み取り
96ウェルプレートに膜封止処理を行った後、PCRサーマルサイクラーに置いてPCR増幅を行う。使用される手順は以下のとおりである。95℃で10分間予備変性する。94℃で30秒変性し、56℃でアニーリングして60秒延伸し、合計で48個のサイクルを行う。98℃で10分間不活化する。10℃で反応を終了する。
PCR増幅が終了した後、96ウェルプレートをドップレット分析装置に置いてFAM/HEXチャネルを選択してシグナルを読み取る。
【0147】
データ分析
QuantaSoft分析ソフトウェアを用いて蛍光シグナルの強度、数を分析し、EGFR遺伝子20エクソンT790M変異型のコピー数及び濃度を得て、結果は表14に示すとおりである。
【0148】
【0149】
表14から分かるように、標的配列の断片が短いほど、サンプル定量に対する能力が高くなり、すなわちT790M変異型断片を検出する能力が高くなる。
【0150】
表14におけるデータを線形回帰分析し、分析結果は
図5に示すとおりである。変異型高値サンプル、低値サンプルを検出する場合、その検出能力は標的配列の長さと負の相関を呈することが分かる。標的配列が短いほど、変異型断片が多く検出され、検出能力が高くなり、逆に、検出能力が低くなる。
【配列表】