(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】空気分離装置、ならびに、液化酸素および液化窒素の製造方法
(51)【国際特許分類】
F25J 3/04 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
F25J3/04 101
(21)【出願番号】P 2024020626
(22)【出願日】2024-02-14
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】中島 康広
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-274474(JP,A)
【文献】特開2002-318069(JP,A)
【文献】特開平06-241649(JP,A)
【文献】特開平05-010211(JP,A)
【文献】特開平11-173753(JP,A)
【文献】特開平06-273035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00
C01B 21/04
C10L 3/00
F17C 7/00-04
F25J 3/00-08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気を圧縮する第1圧縮機と、
前記第1圧縮機において圧縮された原料空気を冷却する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器を通った冷却原料空気が冷却原料空気導入配管を通じて導入される単式精留塔と、
前記冷却原料空気から分離され、前記単式精留塔から取り出された窒素ガスを液化するための窒素液化部と、
前記窒素液化部で液化された窒素を貯留する液化窒素貯槽と、
を備え、
前記第1熱交換器には、
液化水素が流通する第1冷熱供給配管と、
前記第1圧縮機において圧縮された圧縮原料空気が流通する原料空気配管と、
が配設され、
前記窒素液化部は、
前記単式精留塔の頂部から取り出される窒素ガスを圧縮する第2圧縮機と、
前記第2圧縮機で圧縮された窒素ガスを冷却する第2熱交換器と、
を含み、
前記第2熱交換器には、
前記第2圧縮機において圧縮された圧縮窒素ガスが流通する窒素ガス配管と、
液化水素が流通する第2冷熱供給配管と、
が配設され、
前記液化窒素貯槽と前記単式精留塔とに接続し、前記液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を前記単式精留塔に窒素還流液として供給するための窒素還流配管を備
え、
前記第1冷熱供給配管および前記第2冷熱供給配管は、液化水素供給配管からそれぞれ分岐して構成された配管であり、
前記第1冷熱供給配管および前記第2冷熱供給配管のそれぞれが水素ガス回収配管に接続する、
空気分離装置。
【請求項2】
前記第1冷熱供給配管は、前記第1熱交換器の温端と前記水素ガス回収配管との間に第1流量調整弁を備え、
前記第2冷熱供給配管は、前記第2熱交換器の温端と前記水素ガス回収配管との間に第2流量調整弁を備える、
請求項1に記載の空気分離装置。
【請求項3】
前記窒素還流配管に、前記液化窒素貯槽から取り出された液化窒素を送り出すポンプが備えられる、
請求項1または請求項2に記載の空気分離装置。
【請求項4】
前記単式精留塔において、
前記単式精留塔における前記窒素還流配管の接続部よりも下部、かつ、前記単式精留塔における前記冷却原料空気導入配管の接続部よりも上部に、再生用空気を取り出すための再生用空気取り出し配管が接続している、
請求項1または請求項2に記載の空気分離装置。
【請求項5】
請求項1に記載の空気分離装置において、
前記原料空気を前記第1圧縮機において50kPaG~70kPaGに昇圧する工程と、
前記第1熱交換器において冷却された、-183℃~-188℃、30kPaG~50kPaGである冷却原料空気を前記単式精留塔に導入する工程と、
前記単式精留塔において前記冷却原料空気から分離された窒素ガスを前記単式精留塔の頂部から取り出し、前記窒素液化部において窒素ガスを液化する窒素ガス液化工程と、
前記単式精留塔において前記冷却原料空気から分離された液化酸素を、前記単式精留塔の下部から取り出す液化酸素取り出し工程と、
を含む、
液化酸素および液化窒素の製造方法。
【請求項6】
前記窒素液化部は、
前記単式精留塔の頂部から取り出される窒素ガスを圧縮する第2圧縮機と、
前記第2圧縮機で圧縮された窒素ガスを冷却する第2熱交換器と、
を含み、
前記第2熱交換器には、
前記第2圧縮機において圧縮された圧縮窒素ガスが流通する窒素ガス配管と、
液化水素が流通する第2冷熱供給配管と、
が配設され、
前記窒素ガス液化工程は、前記第2熱交換器において、前記圧縮窒素ガスを液化水素の冷熱で冷却するステップを含む、
請求項5に記載の液化酸素および液化窒素の製造方法。
【請求項7】
前記空気分離装置は、前記液化窒素貯槽と前記単式精留塔とに接続し、前記液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を前記単式精留塔に窒素還流液として供給するための窒素還流配管を備え、
前記製造方法は、前記液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を前記単式精留塔に窒素還流液として供給する窒素還流液供給工程を含む、
請求項5または請求項6に記載の液化酸素および液化窒素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気分離装置、ならびに、液化酸素および液化窒素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気に含まれる成分を分離精製するための空気分離装置が知られている。この種の技術として、例えば特許文献1には、液化水素の冷熱を利用して原料空気を低温蒸留することによる、低純度酸素の製造装置が開示されている。特許文献1に開示された製造装置は、原料空気を圧縮する原料空気圧縮機と、精製原料空気の一部を低温で圧縮する低温圧縮機と、残部の精製原料空気を膨張させる膨張タービンと、を含む。特許文献1の空気分離装置における主熱交換器では、膨張させた低圧原料空気および低温圧縮した高圧原料空気と、低温蒸留で得られた流体及び冷熱供給源である液化水素と、が熱交換される。
【0003】
特許文献2には、液化水素を外部寒冷源として用いる空気分離装置が開示されている。特許文献2の空気分離装置は、複式精留塔を含む。複式精留塔の高圧精留塔から取り出された還流窒素は、液化水素を外部寒冷源とする熱交換器に通されることによって液化される。この熱交換器は、還流窒素が通される高温流路と液体水素が通される低温流路との間に、液化水素が蒸発して生じた水素ガスが通される中間温度流路が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許平10-274474号公報
【文献】特開平11-51558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気分離装置は原料空気圧縮機や窒素循環圧縮機など複数の圧縮機を備え、これらの圧縮機を動かすために多量の電力を要する。電力コストは空気分離装置にかかるコストの多くを占めるため、電力消費の少ない空気分離装置が望まれる。この現状に鑑み、本開示の目的の一つは、液体窒素および液体酸素を製品として取り出す空気分離装置であって、電力消費の少ない空気分離装置を提供することである。また、本開示の目的の一つは、少ない電力消費で実施できる液化酸素および液化窒素の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従う空気分離装置は、原料空気を圧縮する第1圧縮機と、前記第1圧縮機において圧縮された原料空気を冷却する第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通った冷却原料空気が冷却原料空気導入配管を通じて導入される単式精留塔と、前記冷却原料空気から分離され、前記単式精留塔から取り出された窒素ガスを液化するための窒素液化部と、前記窒素液化部で液化された窒素を貯留する液化窒素貯槽と、を備える。前記第1熱交換器には、液化水素が流通する第1冷熱供給配管と、前記第1圧縮機において圧縮された圧縮原料空気が流通する原料空気配管と、が配設される。前記窒素液化部は、前記単式精留塔の頂部から取り出される窒素ガスを圧縮する第2圧縮機と、前記第2圧縮機で圧縮された窒素ガスを冷却する第2熱交換器と、を含む。前記第2熱交換器には、前記第2圧縮機において圧縮された圧縮窒素ガスが流通する窒素ガス配管と、液化水素が流通する第2冷熱供給配管と、が配設される。前記空気分離装置は、前記液化窒素貯槽と前記単式精留塔とに接続し、前記液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を前記単式精留塔に窒素還流液として供給するための窒素還流配管を備える。
【0007】
本開示に従う液化酸素および液化窒素の製造方法は、原料空気を圧縮する第1圧縮機と、前記第1圧縮機において圧縮された圧縮原料空気が流通する原料空気配管と、液化水素が流通する第1冷熱供給配管とを含み、前記原料空気配管を流通する前記圧縮原料空気を、前記第1冷熱供給配管を流通する液化水素の冷熱によって冷却する第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通った冷却原料空気が冷却原料空気導入配管を通じて導入される単式精留塔と、前記冷却原料空気から分離され、前記単式精留塔から取り出された窒素ガスを液化するための窒素液化部と、前記窒素液化部で液化された窒素を貯留する液化窒素貯槽と、を備える空気分離装置において、実行される。液化酸素および液化窒素の製造方法は、前記原料空気を前記第1圧縮機において50kPaG~70kPaGに昇圧する工程と、前記第1熱交換器において冷却された、-183℃~-188℃、30kPaG~50kPaGである冷却原料空気を前記単式精留塔に導入する工程と、前記単式精留塔において前記冷却原料空気から分離された窒素ガスを前記単式精留塔の頂部から取り出し、前記窒素液化部において窒素ガスを液化する窒素ガス液化工程と、前記単式精留塔において前記冷却原料空気から分離された液化酸素を、前記単式精留塔の下部から取り出す液化酸素取り出し工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
液体窒素および液体酸素を製品として取り出す空気分離装置であって、電力消費の少ない空気分離装置が提供される。また、少ない電力消費で実施できる液化酸素および液化窒素の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示にかかる実施の形態である空気分離装置の配管系統を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示にかかる実施の形態である液化酸素および液化窒素の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態の概要]
初めに本開示にかかる空気分離装置、ならびに、液化酸素および液化窒素の製造方法の概要を列挙して説明する。本開示に従う空気分離装置は、原料空気を圧縮する第1圧縮機と、前記第1圧縮機において圧縮された原料空気を冷却する第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通った冷却原料空気が冷却原料空気導入配管を通じて導入される単式精留塔と、前記冷却原料空気から分離され、前記単式精留塔から取り出された窒素ガスを液化するための窒素液化部と、前記窒素液化部で液化された窒素を貯留する液化窒素貯槽と、を備える。前記第1熱交換器には、液化水素が流通する第1冷熱供給配管と、前記第1圧縮機において圧縮された圧縮原料空気が流通する原料空気配管と、が配設される。前記窒素液化部は、前記単式精留塔の頂部から取り出される窒素ガスを圧縮する第2圧縮機と、前記第2圧縮機で圧縮された窒素ガスを冷却する第2熱交換器と、を含む。前記第2熱交換器には、前記第2圧縮機において圧縮された圧縮窒素ガスが流通する窒素ガス配管と、液化水素が流通する第2冷熱供給配管と、が配設される。前記空気分離装置は、前記液化窒素貯槽と前記単式精留塔とに接続し、前記液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を前記単式精留塔に窒素還流液として供給するための窒素還流配管を備える。
【0011】
空気分離装置における冷熱源として、液化水素の冷熱を利用するものが知られている。例えば特許文献1の空気分離装置は、液化水素の蒸発昇温経路を備える。特許文献1の空気分離装置では、液化水素の冷熱は、まず窒素ガス凝縮装置において、蒸留塔の頂部から抜き出した窒素ガスの一部を冷却するために利用される。窒素ガス凝集装置を通過して昇温し、気体となった水素ガスの冷熱は、さらに過冷却装置および主熱交換器において、蒸留塔の頂部から抜き出した窒素ガスの一部を冷却するために利用される。冷却された窒素ガスは液化窒素となり、窒素還流液として蒸留塔に還流される。また、主熱交換器では、窒素ガス凝集経路および過冷却装置を経てやや昇温した水素ガスを利用して、原料空気が冷却される。特許文献2の空気分離装置では、液化水素の冷熱は、蒸留塔から取り出された還流窒素を液化するために使用される。
【0012】
発明者は、空気分離装置において液化水素の冷熱を利用し、消費電力の低減を図るための検討を行った。発明者は、液化水素の冷熱を窒素液化プロセスにおいて利用することに加えて、液化水素の冷熱を主熱交換器における原料空気の冷却に利用する構成に到達した。また、製品として液化窒素貯槽に貯蔵される液化窒素の一部を精留塔に還流する窒素還流液として利用する構成に到達した。そして、これらの構成によれば、低圧(例えば100kPaG以下)の原料空気を精留塔に導入して、酸素および窒素の分離を行うことが可能であることを見出した。これらの構成によって、本開示にかかる空気分離装置は、原料空気の圧縮にかかる消費電力を低減できる。
【0013】
前記空気分離装置は、液化水素供給配管と、水素ガス回収配管と、を備えてもよい。前記第1冷熱供給配管および前記第2冷熱供給配管は、いずれも、前記液化水素供給配管および前記水素ガス回収配管に接続してよい。前記第1冷熱供給配管は、前記第1熱交換器の温端と前記水素ガス回収配管との間に第1流量調整弁を備えてよい。前記第2冷熱供給配管は、前記第2熱交換器の温端と前記水素ガス回収配管との間に第2流量調整弁を備えてよい。
【0014】
上記の構成によれば、液化水素供給配管を介して液化水素が第1冷熱供給配管および第2冷熱供給配管にそれぞれ供給される。また、第1熱交換器および第2熱交換器において冷熱の一部が放出され、昇温して気体となった水素ガスは水素ガス回収配管を介して、供給先(客先)へ供給される。この構成によれば、液化温度(-253℃(大気圧下))の液化水素の冷熱を最大限活用した上で、蒸発後の水素ガスを供給先(客先)へ供給することが可能となる。
【0015】
前記空気分離装置は、前記窒素還流配管に、前記液化窒素貯槽から取り出された液化窒素を送り出すポンプが備えられてもよい。この構成によれば、液化窒素貯槽と精留塔との間に圧力差がある場合、液化窒素を適切に昇圧して、精留塔に窒素還流液として供給できる。
【0016】
前記空気分離装置は、前記単式精留塔において、前記単式精留塔における前記窒素還流配管の接続部よりも下部、かつ、前記単式精留塔における前記冷却原料空気導入配管の接続部よりも上部に、再生用空気を取り出すための再生用空気取り出し配管が接続していてもよい。この構成によれば、純度の高い窒素ガス(製品である液化窒素)および液化酸素(製品である液化酸素)の損失を減らしつつ、原料空気の乾燥装置を再生させるための気体を取り出すことができる。
【0017】
本開示に従う液化酸素および液化窒素の製造方法は、原料空気を圧縮する第1圧縮機と、前記第1圧縮機において圧縮された圧縮原料空気が流通する原料空気配管と、液化水素が流通する第1冷熱供給配管とを含み、前記原料空気配管を流通する前記圧縮原料空気を、前記第1冷熱供給配管を流通する液化水素の冷熱によって冷却する第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通った冷却原料空気が冷却原料空気導入配管を通じて導入される単式精留塔と、前記冷却原料空気から分離され、前記単式精留塔から取り出された窒素ガスを液化するための窒素液化部と、前記窒素液化部で液化された窒素を貯留する液化窒素貯槽と、を備える空気分離装置において、実行される。液化酸素および液化窒素の製造方法は、前記原料空気を前記第1圧縮機において50kPaG~70kPaGに昇圧する工程と、前記第1熱交換器において冷却された、-183℃~-188℃、30kPaG~50kPaGである冷却原料空気を前記単式精留塔に導入する工程と、前記単式精留塔において前記冷却原料空気から分離された窒素ガスを前記単式精留塔の頂部から取り出し、前記窒素液化部において窒素ガスを液化する窒素ガス液化工程と、前記単式精留塔において前記冷却原料空気から分離された液化酸素を、前記単式精留塔の下部から取り出す液化酸素取り出し工程と、を含む。
【0018】
この製造方法によれば、低圧力(50kPaG~70kPaG)の原料空気を液化水素の冷熱によって冷却し、単式精留塔に導入することで、液化酸素と液化窒素を製造できる。このため、原料空気の圧縮にかかる消費電力を低減できる。
【0019】
前記液化酸素および液化窒素の製造方法において、前記窒素液化部は、前記単式精留塔の頂部から取り出される窒素ガスを圧縮する第2圧縮機と、前記第2圧縮機で圧縮された窒素ガスを冷却する第2熱交換器と、を含んでよい。前記第2熱交換器には、前記第2圧縮機において圧縮された圧縮窒素ガスが流通する窒素ガス配管と、液化水素が流通する第2冷熱供給配管と、が配設されてよい。前記窒素ガス液化工程は、前記第2熱交換器において、前記圧縮窒素ガスを液化水素の冷熱で冷却するステップを含んでよい。液化水素の冷熱を窒素ガスの液化に利用することによって、消費電力を低減する効果がより高くなる。
【0020】
前記液化酸素および液化窒素の製造方法において、前記空気分離装置は、前記液化窒素貯槽と前記単式精留塔とに接続し、前記液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を前記単式精留塔に窒素還流液として供給するための窒素還流配管を備えてよい。前記製造方法は、前記液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を前記単式精留塔に窒素還流液として供給する窒素還流液供給工程を含んでよい。
【0021】
液化窒素貯槽から取り出される液化窒素を窒素還流液として利用することによって、精留塔から取り出した窒素ガスを冷却した液化窒素をただちに還流させる方式よりも、窒素還流液を安定に単式精留塔に供給できる。
【0022】
[実施の形態の具体例]
次に、本開示にかかる空気分離装置の具体的な実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。なお、本明細書では、明細書において説明される空気分離方法の中で配管を通る流体の方向に基づいて配管の「上流側」、「下流側」と称するが、実際の運用において、流体の流通方向はこれに制限されない。
【0023】
[空気分離装置]
図1は、本開示にかかる実施の1形態である空気分離装置の配管系統を示す系統図である。空気分離装置1は、原料空気の取得部Sから原料空気を装置内に導入する。空気分離装置1は、第1圧縮機としての原料空気の圧縮機11と、第1熱交換器としての主熱交換器21と、単式精留塔である蒸留塔31と、窒素液化部40と、液化窒素貯槽51と、を備える。また、空気分離装置1は、液化水素の冷熱を供給および回収する、水素配管系統80を備える。
【0024】
原料空気の圧縮機11で圧縮された原料空気は、配管12を通り、乾燥器13Aを経て主熱交換器21に導入される。配管12は、圧縮機11と主熱交換器21とを接続する配管である。圧縮機11は具体的には例えばブロワであってよい。圧縮機11は、容積式やターボ式の圧縮機でなくてもよいが、容積式やターボ式の圧縮機であってもよい。配管12は配管14に接続する。配管14は主熱交換器21を通る原料空気用配管である。配管14を通って主熱交換器21で冷却された原料空気は、冷却原料空気導入配管としての配管15を通じて、蒸留塔31に導入される。配管15は、配管14と接続し、主熱交換器21と蒸留塔31との間に配置される配管である。
【0025】
乾燥器13Aは、同種の乾燥器13Bと並列に設けられてよい。乾燥器13A、13Bは具体的には例えば、モレキュラーシーブを収容するカラムタイプの吸脱着器であってよい。乾燥器13A、13Bは、一方を原料空気の乾燥に供し、同時に他方を再生させることができる。
【0026】
主熱交換器21には、液化水素の供給元(例えば液化水素タンク)から、液化水素供給配管である配管88を通じて供給される液化水素が流通する、第1冷熱供給配管としての配管81が配設される。液化水素供給配管88の途上には、ポンプ87が設けられる。配管14を流通する原料空気は、主熱交換器21において、配管81を流通する液化水素と熱交換し、液化水素の冷熱によって冷却される。
【0027】
蒸留塔31は単式精留塔であり、鉛直方向の中央付近に原料空気導入口35を有する。言い換えると、配管15は蒸留塔31の中央付近に接続する。中央付近とは、例えば、蒸留塔31を鉛直方向に3つの領域に分けるとき、上部領域および下部領域に挟まれる領域である。蒸留塔31は、鉛直方向の下端または下端近傍に、液化酸素取り出し口を有する。原料空気から分離された液化酸素LO2は、配管32を通じて蒸留塔31から取り出され、液化酸素貯槽に貯蔵される。配管32にはポンプ33が備えられる。
【0028】
蒸留塔31は頂部に窒素ガス取り出し口36を有する。窒素ガス取り出し配管である配管37が蒸留塔31の頂部に接続する。配管37は、主熱交換器21を通って圧縮機41に至る。配管37を通る窒素ガスは、窒素液化部40において冷却および圧縮され、液化される。窒素液化部40は、第2圧縮機としての複数の圧縮機41,42,43、および、第2熱交換器としての熱交換器44とを含む。
【0029】
熱交換器44には、液化水素を供給する配管82が配設される。配管82は、液化水素供給配管88に接続している。熱交換器44において、液化水素の冷熱が配管45を流通する窒素ガスに供給され、窒素ガスが冷却される。すなわち、熱交換器44では液化水素と窒素ガスの間で熱交換が行われる。
【0030】
本開示にかかる空気分離装置1では、液化水素供給配管88が、主熱交換器21を通る配管81と熱交換器44を通る配管82とに接続する。また、配管81および配管82は、水素ガス回収配管としての配管83に接続する。熱交換器21、44において冷熱を放出し、昇温された水素は水素ガスとなって配管83から取り出される。配管81には流量調整弁84が設けられる。配管82には流量調整弁85が設けられる。流量調整弁84、85によって、熱交換器21、44を通過した水素ガスが適切な温度および圧力に調整される。
【0031】
窒素液化部40について説明する。窒素液化部40は、配管37に接続する配管45を含む。配管45の途上に、圧縮機42,43が備えられ、配管45を流通する窒素ガスを順次昇圧する。配管45における熱交換器44よりも下流側から、配管46が分岐する。配管46は、弁61を備える。配管46は熱交換器44を通過し、圧縮機42および圧縮機43の間で配管45に接続する。すなわち、配管45を流通する窒素ガスの一部が、配管46を通じて循環する。なお、空気分離装置1は3段階の圧縮機41,42,43を備えるが、圧縮機の数は圧縮機の性能と装置全体の規模に応じて変更できる。
【0032】
配管45は気液分離槽47に接続する。配管45にはジュールトムソン弁である弁62が備えられる。蒸留塔31から取り出され、主熱交換器21、圧縮機41,42,43、熱交換器44および弁62を経て気液分離槽47に至る窒素ガスは、液化された状態で気液分離槽47にて気体/液体に分離される。気液分離槽47の頂部に配管48が接続する。配管48を通じて、気液分離槽47の気相部を満たす窒素ガスが排出される。配管48は、熱交換器44を通って、配管45における圧縮機42の上流側に接続する。
【0033】
気液分離槽47は、配管49によって液化窒素貯槽51に接続されている。配管49の途上に、流量調整弁63が備えられる。液化窒素貯槽51に、製品である液化窒素LN2が貯蔵される。
【0034】
液化窒素貯槽51と蒸留塔31との間に、配管53が配設されている。配管53にはポンプ52が備えられている。液化窒素貯槽51から取り出された液化窒素が、配管53を通って窒素還流液として蒸留塔31に導入される。
【0035】
蒸留塔31と乾燥器13A,13Bとの間に、配管71が配設されている。配管71は主熱交換器21を通る。配管71は、原料空気導入口35よりも上方において、蒸留塔31に接続している。また、配管71は、窒素還流液の供給口54よりも下方において、蒸留塔31に接続している。すなわち、再生用空気を取り出すための再生用空気取り出し配管である配管71は、窒素還流配管の接続部よりも下部、かつ、冷却原料空気導入配管の接続部よりも上部に接続している。配管71から取り出される気体は、熱交換器21において配管14を通る原料空気と熱交換して昇温され、乾燥器13A、13Bの再生用気体として使用される。
【0036】
(液化酸素および液化窒素の製造方法)
本開示にかかる液化酸素および液化窒素の製造方法は、上述の空気分離装置を利用して実施されうる。以下に、空気分離装置1を用いて本開示にかかる液化酸素および液化窒素の製造方法を実施する場合の一例を説明する。
図2は、本開示にかかる実施の形態である液化酸素および液化窒素の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【0037】
図1および
図2を参照して、原料空気の取得部Sから取り込まれた常温(例えば-5℃~30℃)の空気は、まず昇圧工程として、圧縮機11で圧縮される(S10)。原料空気は30kPaG~100kPaGに昇圧されてよい。典型的には、原料空気は50kPaG~70kPaGに昇圧されてよい。原料空気の圧縮度は容積式やターボ式の圧縮機を必ずしも必要とせず、ブロワを用いて得られる圧力である。
【0038】
圧縮機11を出た原料空気は配管12および乾燥器13A(または乾燥器13B)を通過し、乾燥器において水分が除去される。原料空気は、配管12を通って主熱交換器21に至る。主熱交換器21において配管14を通る原料空気は、配管81を通る液化水素の冷熱と熱交換し、原料空気は約-190℃~-180℃に冷却される。典型的に、原料空気は約-188℃~-183℃程度に冷却される。液化水素の温度は-253℃(大気圧下)であり、十分な冷熱を原料空気に供給できる。
【0039】
主熱交換器21にて冷却された原料空気は、配管15を通って蒸留塔31に導入される(S11)。蒸留塔31は低圧精留塔であり、蒸留塔内の圧力は10kPaG~100kPaGであってよい。従来、空気分離装置においては高圧蒸留塔と低圧蒸留塔から構成される複合蒸留塔が主に使用されている。この点、本開示にかかる空気分離装置では、原料空気の圧縮度が低く、かつ、より低温まで冷却された原料空気を用いて、単式精留塔にて液体窒素と液体酸素を分離できる。
【0040】
蒸留塔31において、冷却された原料空気から酸素および窒素のそれぞれを分離する。この時、窒素還流液として、液化窒素貯槽51から取り出された液化窒素が配管53を通じて蒸留塔31に導入される。原料空気から分離された酸素は、蒸留塔31の下部から液化酸素として取り出される(S13)。原料空気から分離された窒素は、蒸留塔31の頂部から窒素ガスとして取り出される。取り出される窒素ガスの温度および圧力は特に限定されないが、例えば、圧力は25kPaG程度、温度は-196℃程度であってよい。蒸留塔31から取り出された窒素ガスは窒素液化部40において液化される(S12)。
【0041】
蒸留塔31から取り出されて配管37を通る窒素ガスは、主熱交換器21に導入される。配管37を通る窒素ガスは、主熱交換器21において原料空気を冷やすための冷熱源として使用される。次いで、配管45を通る窒素ガスは、圧縮機41,42,43で段階的に昇圧される。例えば、圧縮機41において0.4MPaG、圧縮機42において3.0MPaG、圧縮機43において5.0MPaGに昇圧することができる。圧縮された窒素ガスは、おおむね常温になる。
【0042】
配管45を通過する窒素ガスは次いで熱交換器44にて、配管82を通過する液化水素の冷熱によって冷却される。熱交換器44を通過した窒素ガスは、例えば-150℃程度まで冷却される。ジュールトムソン弁62にて圧力調整された窒素ガスは液化し、気液分離槽47に収容される。気液分離槽47から配管49を通じて取り出された液化窒素は、弁63によって流量調整され、液化窒素貯槽51に収容される。
【0043】
なお、熱交換器44を出た窒素ガスの一部は配管46に流入し、熱交換器44を経て昇温され、圧縮機43の下流において配管45を通過する窒素ガスに合流する。また、気液分離槽47の気相部から配管48を通じて取り出される窒素ガスは、熱交換器44を経て昇温され、圧縮機41の下流において配管45を通過する窒素ガスに合流する。つまり、配管48を通る窒素ガスの冷熱は熱交換器44で回収利用される。圧縮機41,42,43および液化水素の冷熱を利用する熱交換器44を備える窒素液化部40によって、窒素ガスが液化され、製品としての液化窒素が得られる。
【0044】
液化窒素貯槽51に貯蔵される液化窒素の一部が、配管53を通じて蒸留塔31に窒素還流液として供給される。窒素還流液としての液化窒素は、ポンプ52によって送出される。窒素還流液としての液化窒素は、蒸留塔31内部の圧力に合わせるよう、例えば30KPaG程度の圧力に調整される。
【0045】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 空気分離装置、11 圧縮機、12 配管、13A、13B 乾燥器、14、15、32、37、45、46、48、49、53、71 配管、21 主熱交換器、31 蒸留塔、33、52 ポンプ、35 原料空気導入口、36 窒素ガス取り出し口、40 窒素液化部、41、42,43 圧縮機、44 熱交換器、47 気液分離槽、51 液化窒素貯槽、52 ポンプ、54 供給口、61、62、63 弁、
80 水素配管系統、81、82、83、88 配管、84,85 流量調整弁、87 ポンプ。
【要約】 (修正有)
【課題】少電力で製品として液体窒素及び液体酸素を製造する空気分離装置及び空気分離方法を提供する。
【解決手段】原料空気の第1圧縮機11と、圧縮空気を冷却する第1熱交換器21と、圧縮、冷却後の空気が導入される単式精留塔31と、空気から分離された窒素ガスの窒素液化部40と、液化窒素貯槽51とを、を備える空気分離装置1であり、第1熱交換器には、液化水素が流通する第1冷熱供給配管80と、圧縮空気が流通する原料空気配管12と、が配設され、窒素液化部は、精留塔からの窒素ガスの第2圧縮機41~43と、第2圧縮機からの圧縮窒素ガスを冷却する第2熱交換器44と、を含み、第2熱交換器には、第2圧縮機からの圧縮窒素が流通する窒素ガス配管37と、液化水素が流通する第2冷熱供給配管82とが配設され、液化窒素貯槽と単式精留塔とに接続し、液化窒素貯槽からの液化窒素を単式精留塔に還流する窒素還流配管53を備える。
【選択図】
図1