(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】コイル部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20240712BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240712BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240712BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H01F27/32 140
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/28 156
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2020121046
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】本田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 敦
(72)【発明者】
【氏名】財田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大坪 睦泰
(72)【発明者】
【氏名】井上 透
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092422(JP,A)
【文献】特開2020-035966(JP,A)
【文献】特開2017-152634(JP,A)
【文献】特開2006-032560(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102726(WO,A1)
【文献】特開2017-112354(JP,A)
【文献】特開2018-207093(JP,A)
【文献】特開2017-107971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/32
H01F 17/04
H01F 27/28
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性体粉末とバインダ材料とを含有する複合磁性材料によって形成された成形体と、
表面に絶縁被膜が施された平板状の銅製の導線を巻回し、前記成形体に埋め込まれたコイルと、前記成形体の両端面に設けられた外部電極と、を備えたコイル部品であって、前記コイルは巻回部とコイル端部とを有し、
更に前記コイルの巻回部と前記成形体の端面との間にはコの字状の絶縁壁
が配されており、
前記絶縁壁は、前記成形体の端面にて成形体より露出する切断面を有しており、
前記コイル端部は、前記絶縁壁の上に折り返
されて前記切断面に沿って配され、更に前記成形体の端面に銅製の導線を露出しており、前記外部電極は、前記コイル端部および前記絶縁壁の切断面と接しているコイル部品。
【請求項2】
前記絶縁壁の前記コイル端部が折り返される面には段差部が設けられ、前記段差部の凹部に前記コイル端部が配置されている請求項1記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線を巻いてコイルが形成され、コイルが磁性体粉末とバインダ材料とを含有する複合磁性材料で形成された成形体内に埋設されたコイル部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年携帯電話や車載デバイスにおける電子部品に対する小型化のニーズが高まっている。これに対し、コイルを磁性材料の内部に埋設することによって、小さいサイズにおいても所定のインダクタンス値が得られるように設計されたコイル部品が開発されている。またパワー用途に用いられる場合、直流抵抗値が低く、高い電圧に耐えられるよう絶縁耐圧性が高いコイル部品が求められる場合がある。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常コイルには絶縁被膜を施した導線を用いているが、この絶縁被膜にピンホール等が発生した場合、外部電極との間で絶縁破壊が生じてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、金属磁性体粉末とバインダ材料とを含有する複合磁性材料によって形成された成形体と、この成形体に埋め込まれたコイルと、成形体の両端面に設けられた外部電極と、を備えたコイル部品であって、コイルは平角状の導線を巻回したものであり、コイルは巻回部とコイル端部とを有し、巻回部と成形体の端面との間にコの字状の絶縁壁を有し、コイル端部を絶縁壁の上に折り返し、外部電極は、コイル端部および絶縁壁の切断面と接しているように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、コイル端部と外部電極との電気的接続を安定させて直流抵抗値を小さくできるとともに、巻回部と外部電極との絶縁性を絶縁壁により確実なものとすることができ、信頼性の高いコイル部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の側断面図
【
図2】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の分解斜視図
【
図3】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の外部電極を設ける前の透視斜視図
【
図4】本発明の一実施の形態における別のコイル部品の外部電極を設ける前の透視斜視図
【
図5】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【
図6】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【
図7】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【
図8】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【
図9】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態におけるコイル部品について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明におけるコイル部品の側断面図、
図2は同コイル部品の分解斜視図、
図3は同コイル部品の外部電極を設ける前の透視斜視図である。
【0011】
平角線をアルファ巻にしたコイル11を、金属磁性体粉とバインダ材料とを混合して形成された成形体12に埋設し、その両端面に外部電極13を設けたコイル部品であって、成形体12のサイズは幅約1.9mm、長さ約2.4mm、高さ約1.0mmとなっている。
【0012】
成形体12の金属磁性体粉には鉄粉あるいは鉄合金の粉末が用いられ、バインダ材料としてはシリコーン樹脂が用いられている。
【0013】
コイル11は平板状の銅製の導線の表面に絶縁被膜が施されたものを、幅方向がコイル11の巻軸と平行になるように2段に巻回されたもので、導線の厚みは約0.05mm、幅は約0.3mmとなっている。コイル11は巻回された巻回部14とコイル端部15とからなり、巻回部14と成形体端面16との間にはコの字の絶縁壁17が設けられ、コイル端部15は絶縁壁17の上に折り返されている。
【0014】
絶縁壁17は液晶ポリマーの成形品により構成され、コイル端部15が折り返されて重なる部分に高さ約0.03mmの段差部18が設けられ、この段差部18にコイル端部15が配置されている。このようにすることにより、コイル端部15の位置決めを正確に行うことができる。なお段差部18の高さは、コイル11の厚さの半分以上とすることが望ましい。このようにすることにより、位置決めを確実なものとすることができる。
【0015】
成形体12の両端面16はダイシングによる切断面となっており、コイル端部15および絶縁壁17も切断面となっており、その上に外部電極13が設けられている。コイル11は絶縁被膜で覆われているが、端面16部分ではコイル端部15も切断面となっているため、銅製の導線が露出し、その上に外部電極13が設けられるため、電気的に接続される。
【0016】
以上のように構成することにより、外部電極13とコイル端部15との電気的接続を確保し、直流抵抗値を下げるとともに、コイル11の巻回部14と外部電極13との間の絶縁を確実なものとすることができ、信頼性に優れたコイル部品を得ることができる。
【0017】
図4は本発明の一実施形態における別のコイル部品の外部電極を設ける前の透視斜視図である。このコイル部品では巻回部14からコイル端部15に折り返した部分が側面23側に膨らむようにし、折り返した部分の一部が切断面となって側面23に露出し、この露出した部分を外部電極13が覆うように構成したものである。このようにすることにより、端面16部分だけでなく側面23部分でも外部電極13とコイル端部15との間で電気的接続をとることができ、直流抵抗値をさらに下げることができる。
【0018】
次に本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法について説明する。
【0019】
まず
図5のように、樹脂成形により絶縁壁17となるものを形成する。成形樹脂として
液晶ポリマーを用い、両側の絶縁壁17を連結部19で連結したものが一列につながった状態になるように成形する。成形樹脂は
図5の矢印のように連結部19の方から注入する。このとき連結したものの両端部には突起部20を設けておくことが望ましい。
【0020】
次に表面に絶縁被膜を形成した平角導線をアルファ巻することによりコイル11を形成し、
図6のように絶縁壁17の間にコイル11を挿入する。コイル11は連結部19とは反対側の方から挿入する。導線の厚みは約0.05mm、幅は約0.3mmで、絶縁被膜としてはポリアミドイミド樹脂を用いている。
【0021】
次に
図7のようにコイル11の端部を捩じりながら絶縁壁17の上に折り返すことによりコイル端部15を形成する。
【0022】
次に
図8のように、連結した状態で枠体21の中に入れる。このとき枠体21の内側に凹部22を設けておき、突起部20がはめ込まれるようにしておくことが望ましい。このようにすることにより位置ずれを防ぐことができる。
【0023】
次に枠体21に固定した状態で、上下から磁性シートを挟み込んだ状態で圧力を加えて成形し、加熱することにより磁性シートを硬化させる。なお、この場合熱プレス機により圧力と熱を同時に加えて硬化させても良い。このときコイル、絶縁壁および枠体の周囲の隙間は磁性シートの変形および圧入によって埋めつくされ、複合磁性材料はコイル11、絶縁壁17、枠体21と密着し、硬化して一体化する。このよう工程を経てコイル11および絶縁壁17は複合磁性材料の内部に埋設される。
【0024】
次に
図9のように、コイル部品の側面となる辺のみを回転式のダイシングブレード24で切断して短冊状にする。ダイシングブレード24の厚みは約0.3mmのものを使用し、連結部19をダイシングにより除去する。
【0025】
次に短冊状にした成形体を絶縁膜塗布剤に漬け熱硬化させることにより、表面全体に絶縁膜を形成する。絶縁膜塗布剤としてはポリイミドを有機溶剤で希釈したものを用いることができる。
【0026】
次に複数の短冊状の成形体の端を合わせるようにしてそれぞれが互いに平行になるように整列させ、コイル部品の端面16となる部分でダイシングする。このときコイル端部15および絶縁壁17の一部も同時に切断する。このようにダイシングして個片化することにより、端面16ではコイル端部15および絶縁壁17が露出した状態となる。
【0027】
次に個片化した成形体の両端面に銀ペーストを塗布して硬化し、その上にニッケル、錫のメッキを行い、外部電極を形成し、コイル部品を得る。成形体の上下面および側面は絶縁膜を形成しているため外部電極にメッキを施すことができる。また端面ではダイシングによりコイル端部は導線が露出した状態になっているため、絶縁被膜を剥離しなくても導線と外部電極との電気的接続を安定して得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のコイル部品は、コイル端部と外部電極との電気的接続を安定させて直流抵抗値を小さくできるとともに、巻回部と外部電極との絶縁性を絶縁壁により確実なものとすることができるため信頼性の高いコイル部品を得ることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0029】
11 コイル
12 成形体
13 外部電極
14 巻回部
15 コイル端部
16 端面
17 絶縁壁
18 段差部
19 連結部
20 突起部
21 枠体
22 凹部
23 側面
24 ダイシングブレード