(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/295 20060101AFI20240712BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240712BHJP
G01S 7/481 20060101ALN20240712BHJP
【FI】
G02F1/295
G02F1/13 505
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2021501635
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050336
(87)【国際公開番号】W WO2020170596
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019026288
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佃 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】野村 幸生
(72)【発明者】
【氏名】稲田 安寿
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/193723(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363827(US,A1)
【文献】特開2003-241240(JP,A)
【文献】米国特許第08995038(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0299394(US,A1)
【文献】GU, Xiaodong et al.,Electro-Thermal Beam Steering Using Bragg Reflector Waveguide Amplifier,Japanese Journal of Applied Physics,日本,日本応用物理学会,2012年,Vol. 51,p. 020206-1 - 020206-3,DOI: 10.1143/JJAP.51.020206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/295
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向および前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って拡がる第1の反射面を備え、透光性を有する第1のミラーであって、配向膜が設けられていない第1のミラーと、
前記第1の反射面に対向する第2の反射面を備える第2のミラーであって、配向膜が設けられていない第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に位置する光導波層であって、
前記第2の方向に沿って並ぶ複数の非導波領域、および前記複数の非導波領域の間に位置する1つ以上の光導波領域を含み、
前記光導波領域は、液晶材料を含み、且つ前記第1の方向に沿って光を伝搬させる、光導波層と、
前記光導波層を介して互いに対向する2つの電極層であって、少なくとも一方が前記第2の方向に沿って並ぶ複数の電極を含む、2つの電極層と、を備え、
前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部
および前記配向膜が設けられていない前記第1のミラーの少なくとも一部に重なる電極を含む、光デバイス。
【請求項2】
前記2つの電極層に含まれる前記複数の電極の各々に接続された制御回路をさらに備え、
前記制御回路は、動作中、前記複数の電極のうちの一部の電極と他の少なくとも一部の電極とに電位差を設ける第1の動作、および前記2つの電極層の一方に含まれる電極と、前記2つの電極層の他方に含まれる電極との間に電位差を設ける第2の動作の少なくとも一方を実行する、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記2つの電極層の一方は、前記光導波層と前記第1の反射面との間、第1のミラーの内部、または、前記第1のミラーの前記第1の反射面とは反対の側の面上に位置し、
前記2つの電極層の他方は、前記光導波層と前記第2の反射面との間、第2のミラーの内部、または、前記第2のミラーの前記第2の反射面とは反対の側の面上に位置する、請求項1または2に記載の光デバイス。
【請求項4】
第1の方向および前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って拡がる第1の反射面を備え、透光性を有する第1のミラーであって、配向膜が設けられていない第1のミラーと、
前記第1の反射面に対向する第2の反射面を備える第2のミラーであって、配向膜が設けられていない第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に位置する光導波層であって、
前記第2の方向に沿って並ぶ複数の非導波領域、および前記複数の非導波領域の間に位置する1つ以上の光導波領域を含み、
前記光導波領域は、液晶材料を含み、且つ前記第1の方向に沿って光を伝搬させる、光導波層と、
前記光導波層を介して互いに対向する2つの電極層であって、少なくとも一方が前記第2の方向に沿って並ぶ複数の電極を含む、2つの電極層と、を備え、
前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部に重なる電極を含み、
前記1つ以上の光導波領域は、前記第2の方向における幅が5μm以下である光導波領域を含む、光デバイス。
【請求項5】
前記2つの電極層に含まれる各電極に接続された制御回路をさらに備え、
前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なり、
前記制御回路は、動作中、前記複数の電極のうちの隣接する任意の2つの電極に電位差を設ける第1の動作、および前記2つの電極層の一方に含まれる電極と、前記2つの電極層の他方に含まれる電極との間に電位差を設ける第2の動作の少なくとも一方を実行する、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる複数の第1の電極と、前記1つ以上の光導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる1つ以上の第2の電極とを含む、請求項1から4のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項7】
前記2つの電極層に含まれる各電極に接続された制御回路をさらに備え、
前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる複数の第1の電極と、前記1つ以上の光導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる1つ以上の第2の電極とを含み、
前記制御回路は、動作中、前記複数の第1の電極のうちの隣接する任意の2つの電極に電位差を設ける第1の動作、および前記2つの電極層の一方に含まれる電極と、前記2つの電極層の他方に含まれる電極との間に電位差を設ける第2の動作の少なくとも一方を実行する、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記2つの電極層の一方は、前記複数の電極を含み、
前記2つの電極層の他方は、単一の電極を含む、請求項1から7のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項9】
前記2つの電極層の両方が、前記複数の電極を含む、請求項1から7のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項10】
前記複数の非導波領域は、互いに隣り合う第1の非導波領域および第2の非導波領域を含み、
前記複数の電極は、互いに隣り合う2つの第1の電極を含み、
前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記2つの第1の電極の一方と前記第1の非導波領域は、互いに少なくとも部分的に重なり、
前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記2つの第1の電極の他方と前記第2の非導波領域は、互いに少なくとも部分的に重なる、請求項1から5のいずれかに記載の光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光で空間を走査(スキャン)できる種々のデバイスが提案されている。
【0003】
特許文献1は、ミラーを回転させる駆動装置を用いて、光によるスキャンを行うことができる構成を開示している。
【0004】
特許文献2は、2次元的に配列された複数のナノフォトニックアンテナ素子を有する光フェーズドアレイを開示している。それぞれのアンテナ素子は可変光遅延線(すなわち、位相シフタ)に光学的に結合される。この光フェーズドアレイでは、コヒーレント光ビームが導波路によってそれぞれのアンテナ素子に誘導され、位相シフタによって光ビームの位相がシフトされる。これにより、遠視野放射パターンの振幅分布を変化させることができる。
【0005】
特許文献3は、内部を光が導波する光導波層、および光導波層の上面および下面に形成された第1分布ブラッグ反射鏡を備える導波路と、導波路内に光を入射させるための光入射口と、光入射口から入射して導波路内を導波する光を出射させるために導波路の表面に形成された光出射口とを備える光偏向素子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/168266号
【文献】特表2016-508235号公報
【文献】特開2013-16591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の一態様は、比較的簡単な構成での新規な光デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る光デバイスは、第1の方向および前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って拡がる第1の反射面を備え、透光性を有する第1のミラーと、前記第1の反射面に対向する第2の反射面を備える第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に位置する光導波層であって、前記第2の方向に沿って並ぶ複数の非導波領域、および前記複数の非導波領域の間に位置する1つ以上の光導波領域を含み、前記光導波領域は、液晶材料を含み、且つ前記第1の方向に沿って光を伝搬させる、光導波層と、前記光導波層を介して互いに対向する2つの電極層であって、少なくとも一方が前記第2の方向に沿って並ぶ複数の電極を含む、2つの電極層と、を備え、前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部に重なる電極を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、比較的簡単な構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイスの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、1つの導波路素子の断面の構造および伝搬する光の例を模式的に示す図である。
【
図3A】
図3Aは、導波路アレイの出射面に垂直な方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、導波路アレイの出射面に垂直な方向とは異なる方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。
【
図4】
図4は、3次元空間における導波路アレイを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、導波路アレイおよび位相シフタアレイを、光出射面の法線方向(Z方向)から見た模式図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイスの斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、
図6Bに示す例において液晶材料がY方向に配向した第1の状態を模式的に示す図である。
【
図7B】
図7Bは、
図6Bに示す例において液晶材料がZ方向に配向した第2の状態を模式的に示す図である。
【
図8A】
図8Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイスの斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、
図8Bに示す例において液晶材料がY方向に配向した第1の状態を模式的に示す図である。
【
図9B】
図9Bは、
図8Bに示す例において液晶材料がZ方向に配向した第2の状態を模式的に示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイスの斜視図である。
【
図12A】
図12Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイスの斜視図である。
【
図14A】
図14Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイスの斜視図である。
【
図15A】
図15Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイスの斜視図である。
【
図16】
図16は、回路基板上に光分岐器、導波路アレイ、位相シフタアレイ、および光源などの素子を集積した光スキャンデバイスの構成例を示す図である。
【
図17】
図17は、光スキャンデバイスから遠方にレーザなどの光ビームを照射して2次元スキャンを実行している様子を示す模式図である。
【
図18】
図18は、測距画像を生成することが可能なLiDARシステムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
【0012】
本発明者らは、従来の光スキャンデバイスには、装置の構成を複雑にすることなく、光で空間をスキャンすることが困難であるという課題があることを見出した。
【0013】
例えば、特許文献1に開示されている技術では、ミラーを回転させる駆動装置が必要である。このため、装置の構成が複雑になり、振動に対してロバストでないという課題がある。
【0014】
特許文献2に記載の光フェーズドアレイでは、光を分岐して複数の列導波路および複数の行導波路に導入し、2次元的に配列された複数のアンテナ素子に光を誘導する必要がある。このため、光を誘導するための導波路の配線が非常に複雑になる。また、2次元スキャンの範囲を大きくすることができない。さらに、遠視野における出射光の振幅分布を2次元的に変化させるためには、2次元的に配列された複数のアンテナ素子の各々に位相シフタを接続し、位相シフタに位相制御用の配線を取り付ける必要がある。これにより、2次元的に配列された複数のアンテナ素子に入射する光の位相をそれぞれ異なる量変化させる。このため、素子の構成が非常に複雑になる。
【0015】
本発明者らは、従来技術における上記の課題に着目し、これらの課題を解決するための構成を検討した。本発明者らは、対向する一対のミラーと、それらのミラーに挟まれた光導波層とを有する導波路素子を用いることにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。導波路素子における一対のミラーの一方は、他方に比べて高い光透過率を有し、光導波層を伝搬する光の一部を外部に出射させる。出射した光の方向(または出射角度)は、後述するように、光導波層の屈折率もしくは厚さ、または光導波層に入力される光の波長を調整することにより、変化させることができる。より具体的には、屈折率、厚さ、または波長を変化させることにより、出射光の波数ベクトル(wave vector)の、光導波層の長手方向に沿った方向の成分を変化させることができる。これにより、1次元的なスキャンが実現される。
【0016】
さらに、複数の導波路素子のアレイを用いた場合には、2次元的なスキャンを実現することもできる。より具体的には、複数の導波路素子に供給する光に適切な位相差を与え、その位相差を調整することにより、複数の導波路素子から出射する光が強め合う方向を変化させることができる。位相差の変化により、出射光の波数ベクトルの、光導波層の長手方向に沿った方向に交差する方向の成分が変化する。これにより、2次元的なスキャンを実現することができる。なお、2次元的なスキャンを行う場合でも、複数の光導波層の屈折率、厚さ、または光の波長を異なる量変化させる必要はない。すなわち、複数の光導波層に供給する光に適切な位相差を与え、かつ、複数の光導波層の屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つを同期して同量変化させることにより、2次元的なスキャンを行うことができる。このように、本開示の実施形態によれば、比較的簡単な構成で、光による2次元スキャンを実現することができる。
【0017】
本明細書において、「屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つ」とは、光導波層の屈折率、光導波層の厚さ、および光導波層に入力される光の波長からなる群から選択される少なくとも1つを意味する。光の出射方向を変化させるために、屈折率、厚さ、および波長のいずれか1つを単独で制御してもよい。あるいは、これらの3つのうちの任意の2つまたは全てを制御して光の出射方向を変化させてもよい。以下の各実施形態において、屈折率または厚さの制御に代えて、または加えて、光導波層に入力される光の波長を制御してもよい。
【0018】
以上の基本原理は、光を出射する用途だけでなく、光信号を受信する用途にも同様に適用できる。屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つを変化させることにより、受信できる光の方向を1次元的に変化させることができる。さらに、一方向に配列された複数の導波路素子にそれぞれ接続された複数の位相シフタによって光の位相差を変化させれば、受信できる光の方向を2次元的に変化させることができる。
【0019】
本開示の実施形態による光スキャンデバイスおよび光受信デバイスは、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)システムなどの光検出システムにおけるアンテナとして用いられ得る。LiDARシステムは、ミリ波などの電波を用いたレーダシステムと比較して、短波長の電磁波(可視光、赤外線、または紫外線)を用いるため、高い分解能で物体の距離分布を検出することができる。そのようなLiDARシステムは、例えば自動車、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、所謂ドローン)、AGV(Automated Guided Vehicle)などの移動体に搭載され、衝突回避技術の1つとして使用され得る。本明細書において、光スキャンデバイスと光受信デバイスを「光デバイス」と総称することがある。また、光スキャンデバイスまたは光受信デバイスに使用されるデバイスについても「光デバイス」と称することがある。
【0020】
<光スキャンデバイスの構成例>
以下、一例として、2次元スキャンを行う光スキャンデバイスの構成を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複する説明を省略することがある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、本発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0021】
本開示において、「光」とは、可視光(波長が約400nm~約700nm)だけでなく、紫外線(波長が約10nm~約400nm)および赤外線(波長が約700nm~約1mm)を含む電磁波を意味する。本明細書において、紫外線を「紫外光」と称し、赤外線を「赤外光」と称することがある。
【0022】
本開示において、光による「スキャン」とは、光の方向を変化させることを意味する。「1次元スキャン」とは、光の方向を、当該方向に交差する方向に沿って直線的に変化させることを意味する。「2次元スキャン」とは、光の方向を、当該方向に交差する平面に沿って2次元的に変化させることを意味する。
【0023】
図1は、本開示の例示的な実施形態における光スキャンデバイス100の構成を模式的に示す斜視図である。光スキャンデバイス100は、複数の導波路素子10を含む導波路アレイを備える。複数の導波路素子10の各々は、第1の方向(
図1におけるX方向)に延びた形状を有する。複数の導波路素子10は、第1の方向に交差する第2の方向(
図1におけるY方向)に規則的に配列されている。複数の導波路素子10は、第1の方向に光を伝搬させながら、第1および第2の方向に平行な仮想的な平面に交差する第3の方向D3に光を出射させる。本実施形態では、第1の方向(X方向)と第2の方向(Y方向)とが直交しているが、両者が直交していなくてもよい。本実施形態では、複数の導波路素子10がY方向に等間隔で並んでいるが、必ずしも等間隔に並んでいる必要はない。
【0024】
なお、本願の図面に示される構造物の向きは、説明のわかりやすさを考慮して設定されており、本開示の実施形態が現実に実施されるときの向きをなんら制限するものではない。また、図面に示されている構造物の全体または一部分の形状および大きさも、現実の形状および大きさを制限するものではない。
【0025】
複数の導波路素子10のそれぞれは、互いに対向する第1のミラー30および第2のミラー40(以下、それぞれを単に「ミラー」と称する場合がある)と、ミラー30とミラー40の間に位置する光導波層20とを有する。ミラー30およびミラー40の各々は、第3の方向D3に交差する反射面を、光導波層20との界面に有する。ミラー30およびミラー40、ならびに光導波層20は、第1の方向(X方向)に延びた形状を有している。
【0026】
なお、後述するように、複数の導波路素子10の複数の第1のミラー30は、一体に構成されたミラーの複数の部分であってもよい。また、複数の導波路素子10の複数の第2のミラー40は、一体に構成されたミラーの複数の部分であってもよい。さらに、複数の導波路素子10の複数の光導波層20は、一体に構成された光導波層の複数の部分であってもよい。少なくとも、(1)各第1のミラー30が他の第1のミラー30と別体に構成されているか、(2)各第2のミラー40が他の第2のミラー40と別体に構成されているか、(3)各光導波層20が他の光導波層20と別体に構成されていることにより、複数の導波路を形成することができる。「別体に構成されている」とは、物理的に空間を設けることのみならず、間に屈折率が異なる材料を挟み、分離することも含む。
【0027】
第1のミラー30の反射面と第2のミラー40の反射面とは略平行に対向している。2つのミラー30およびミラー40のうち、少なくとも第1のミラー30は、光導波層20を伝搬する光の一部を透過させる特性を有する。言い換えれば、第1のミラー30は、当該光について、第2のミラー40よりも高い光透過率を有する。このため、光導波層20を伝搬する光の一部は、第1のミラー30から外部に出射される。このようなミラー30および40は、例えば誘電体による多層膜(「多層反射膜」と称することもある。)によって形成される多層膜ミラーであり得る。
【0028】
それぞれの導波路素子10に入力する光の位相を制御し、さらに、これらの導波路素子10における光導波層20の屈折率もしくは厚さ、または光導波層20に入力される光の波長を同期して同時に変化させることで、光による2次元スキャンを実現することができる。本発明者らは、そのような2次元スキャンを実現するために、導波路素子10の動作原理について分析を行った。その結果に基づき、複数の導波路素子10を同期して駆動することで、光による2次元スキャンを実現することに成功した。
【0029】
図1に示すように、各導波路素子10に光を入力すると、各導波路素子10の出射面から光が出射される。出射面は、第1のミラー30の反射面の反対側に位置する。その出射光の方向D3は、光導波層の屈折率、厚さ、および光の波長に依存する。本実施形態では、各導波路素子10から出射される光が概ね同じ方向になるように、各光導波層の屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つが同期して制御される。これにより、複数の導波路素子10から出射される光の波数ベクトルのX方向の成分を変化させることができる。言い換えれば、出射光の方向D3を、
図1に示される方向101に沿って変化させることができる。
【0030】
さらに、複数の導波路素子10から出射される光は同じ方向を向いているので、出射光は互いに干渉する。それぞれの導波路素子10から出射される光の位相を制御することにより、干渉によって光が強め合う方向を変化させることができる。例えば、同じサイズの複数の導波路素子10がY方向に等間隔で並んでいる場合、複数の導波路素子10には、一定量ずつ位相の異なる光が入力される。その位相差を変化させることにより、出射光の波数ベクトルの、Y方向の成分を変化させることができる。言い換えれば、複数の導波路素子10に導入される光の位相差をそれぞれ変化させることにより、干渉によって出射光が強め合う方向D3を、
図1に示される方向102に沿って変化させることができる。これにより、光による2次元スキャンを実現することができる。
【0031】
以下、光スキャンデバイス100の動作原理を説明する。
【0032】
<導波路素子の動作原理>
図2は、1つの導波路素子10の断面の構造および伝搬する光の例を模式的に示す図である。
図2では、
図1に示すX方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とし、導波路素子10のXZ面に平行な断面が模式的に示されている。導波路素子10において、一対のミラー30とミラー40が光導波層20を挟むように配置されている。光導波層20のX方向における一端から導入された光22は、光導波層20の上面(
図2における上側の表面)に設けられた第1のミラー30および下面(
図2における下側の表面)に設けられた第2のミラー40によって反射を繰り返しながら光導波層20内を伝搬する。第1のミラー30の光透過率は第2のミラー40の光透過率よりも高い。このため、主に第1のミラー30から光の一部を出力することができる。
【0033】
通常の光ファイバーなどの導波路では、全反射を繰り返しながら光が導波路に沿って伝搬する。これに対して、本実施形態における導波路素子10では、光は光導波層20の上下に配置されたミラー30および40によって反射を繰り返しながら伝搬する。このため、光の伝搬角度に制約がない。ここで光の伝搬角度とは、ミラー30またはミラー40と光導波層20との界面への入射角度を意味する。ミラー30またはミラー40に対して、より垂直に近い角度で入射する光も伝搬できる。すなわち、全反射の臨界角よりも小さい角度で界面に入射する光も伝搬できる。このため、光の伝搬方向における光の群速度は自由空間における光速に比べて大きく低下する。これにより、導波路素子10は、光の波長、光導波層20の厚さ、および光導波層20の屈折率の変化に対して光の伝搬条件が大きく変化するという性質を持つ。このような導波路を、「反射型導波路」または「スローライト導波路」と称する。
【0034】
導波路素子10から空気中に出射される光の出射角度θは、以下の式(1)によって表される。
【数1】
【0035】
式(1)からわかるように、空気中での光の波長λ、光導波層20の屈折率nwおよび光導波層20の厚さdのいずれかを変えることで光の出射方向を変えることができる。
【0036】
例えば、nw=2、d=387nm、λ=1550nm、m=1の場合、出射角度は0°である。この状態から、屈折率をnw=2.2に変化させると、出射角度は約66°に変化する。一方、屈折率を変えずに厚さをd=420nmに変化させると、出射角度は約51°に変化する。屈折率も厚さも変化させずに波長をλ=1500nmに変化させると、出射角度は約30°に変化する。このように、光の波長λ、光導波層20の屈折率nw、および光導波層20の厚さdのいずれかを変えることにより、光の出射方向を大きく変えることができる。
【0037】
そこで、本開示の実施形態における光スキャンデバイス100は、光導波層20に入力される光の波長λ、光導波層20の屈折率nw、および光導波層20の厚さdの少なくとも1つを制御することで、光の出射方向を制御する。光の波長λは、動作中に変化させず、一定に維持されてもよい。その場合、よりシンプルな構成で光のスキャンを実現できる。波長λは、特に限定されない。例えば、波長λは、一般的なシリコン(Si)により光を吸収することで光を検出するフォトディテクタまたはイメージセンサで高い検出感度が得られる400nmから1100nm(可視光から近赤外光)の波長域に含まれ得る。他の例では、波長λは、光ファイバーまたはSi導波路において伝送損失の比較的小さい1260nmから1625nmの近赤外光の波長域に含まれ得る。なお、これらの波長範囲は一例である。使用される光の波長域は、可視光または赤外光の波長域に限定されず、例えば紫外光の波長域であってもよい。
【0038】
出射光の方向を変化させるために、光スキャンデバイス100は、各導波路素子10における光導波層20の屈折率、厚さ、および波長の少なくとも1つを変化させる第1調整素子を備え得る。
【0039】
以上のように、導波路素子10を用いれば、光導波層20の屈折率nw、厚さd、および波長λの少なくとも1つを変化させることにより、光の出射方向を大きく変えることができる。これにより、ミラー30から出射される光の出射角度を、導波路素子10に沿った方向に変化させることができる。少なくとも1つの導波路素子10を用いることにより、このような1次元のスキャンを実現することができる。
【0040】
光導波層20の少なくとも一部の屈折率を調整するために、光導波層20は、液晶材料または電気光学材料を含んでいてもよい。光導波層20は、一対の電極によって挟まれ得る。一対の電極に電圧を印加することにより、光導波層20の屈折率を変化させることができる。
【0041】
光導波層20の厚さを調整するために、例えば、第1のミラー30および第2のミラー40の少なくとも一方に少なくとも1つのアクチュエータが接続されてもよい。少なくとも1つのアクチュエータによって第1のミラー30と第2のミラー40との距離を変化させることにより、光導波層20の厚さを変化させることができる。光導波層20が液体から形成されていれば、光導波層20の厚さは容易に変化し得る。
【0042】
<2次元スキャンの動作原理>
複数の導波路素子10が一方向に配列された導波路アレイにおいて、それぞれの導波路素子10から出射される光の干渉により、光の出射方向は変化する。各導波路素子10に供給する光の位相を調整することにより、光の出射方向を変化させることができる。以下、その原理を説明する。
【0043】
図3Aは、導波路アレイの出射面に垂直な方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。
図3Aには、各導波路素子10を伝搬する光の位相シフト量も記載されている。ここで、位相シフト量は、左端の導波路素子10を伝搬する光の位相を基準にした値である。本実施形態における導波路アレイは、等間隔に配列された複数の導波路素子10を含んでいる。
図3Aにおいて、破線の円弧は、各導波路素子10から出射される光の波面を示している。直線は、光の干渉によって形成される波面を示している。矢印は、導波路アレイから出射される光の方向(すなわち、波数ベクトルの方向)を示している。
図3Aの例では、各導波路素子10における光導波層20を伝搬する光の位相はいずれも同じである。この場合、光は導波路素子10の配列方向(Y方向)および光導波層20が延びる方向(X方向)の両方に垂直な方向(Z方向)に出射される。
【0044】
図3Bは、導波路アレイの出射面に垂直な方向とは異なる方向に光を出射する導波路アレイの断面を示す図である。
図3Bに示す例では、複数の導波路素子10における光導波層20を伝搬する光の位相が、配列方向に一定量(Δφ)ずつ異なっている。この場合、光は、Z方向とは異なる方向に出射される。このΔφを変化させることにより、光の波数ベクトルのY方向の成分を変化させることができる。隣接する2つの導波路素子10の間の中心間距離をpとすると、光の出射角度α
0は、以下の式(2)によって表される。
【数2】
【0045】
図2に示す例では、光の出射方向は、XZ平面に平行である。すなわち、α
0=0°である。
図3Aおよび
図3Bに示す例では、光スキャンデバイス100から出射される光の方向は、YZ平面に平行である。すなわち、θ=0°である。しかし、一般には、光スキャンデバイス100から出射される光の方向は、XZ平面にも、YZ平面にも平行ではない。すなわち、θ≠0°およびα
0≠0°である。
【0046】
図4は、3次元空間における導波路アレイを模式的に示す斜視図である。
図4に示す太い矢印は、光スキャンデバイス100から出射される光の方向を表す。θは、光の出射方向とYZ平面とがなす角度である。θは式(1)を満たす。α
0は、光の出射方向とXZ平面とがなす角度である。α
0は式(2)を満たす。
【0047】
<導波路アレイに導入する光の位相制御>
それぞれの導波路素子10から出射される光の位相を制御するために、例えば、導波路素子10に光を導入する前段に、光の位相を変化させる位相シフタが設けられ得る。本実施形態における光スキャンデバイス100は、複数の導波路素子10のそれぞれに接続された複数の位相シフタと、各位相シフタを伝搬する光の位相を調整する第2調整素子とを備える。各位相シフタは、複数の導波路素子10の対応する1つにおける光導波層20に直接的にまたは他の導波路を介して繋がる導波路を含む。第2調整素子は、複数の位相シフタから複数の導波路素子10へ伝搬する光の位相の差をそれぞれ変化させることにより、複数の導波路素子10から出射される光の方向(すなわち、第3の方向D3)を変化させる。以下の説明では、導波路アレイと同様に、配列された複数の位相シフタを「位相シフタアレイ」と称することがある。
【0048】
図5は、導波路アレイ10Aおよび位相シフタアレイ80Aを、光出射面の法線方向(Z方向)から見た模式図である。
図5に示される例では、全ての位相シフタ80が同じ伝搬特性を有し、全ての導波路素子10が同じ伝搬特性を有する。それぞれの位相シフタ80およびそれぞれの導波路素子10は同じ長さであってもよいし、長さが異なっていてもよい。それぞれの位相シフタ80の長さが等しい場合は、例えば、駆動電圧によってそれぞれの位相シフト量を調整することができる。また、それぞれの位相シフタ80の長さを等ステップで変化させた構造にすることにより、同じ駆動電圧で等ステップの位相シフトを与えることもできる。さらに、この光スキャンデバイス100は、複数の位相シフタ80に光を分岐して供給する光分岐器90と、各導波路素子10を駆動する第1駆動回路110と、各位相シフタ80を駆動する第2駆動回路210とをさらに備える。
図5における直線の矢印は光の入力を示している。別々に設けられた第1駆動回路110と第2駆動回路210とをそれぞれ独立に制御することにより、2次元スキャンを実現できる。この例では、第1駆動回路110は、第1調整素子の1つの要素として機能し、第2駆動回路210は、第2調整素子の1つの要素として機能する。
【0049】
第1駆動回路110は、各導波路素子10における光導波層20の屈折率および厚さの少なくとも一方を変化させることにより、光導波層20から出射する光の角度を変化させる。第2駆動回路210は、各位相シフタ80における導波路20aの屈折率を変化させることにより、導波路20aの内部を伝搬する光の位相を変化させる。光分岐器90は、全反射によって光が伝搬する導波路で構成してもよいし、導波路素子10と同様の反射型導波路で構成してもよい。
【0050】
なお、光分岐器90で分岐したそれぞれの光に対して位相を制御した後に、それぞれの光を位相シフタ80に導入してもよい。この位相制御には、例えば、位相シフタ80に至るまでの導波路の長さを調整することによるパッシブな位相制御構造を用いることができる。あるいは、位相シフタ80と同様の機能を有する電気信号で制御可能な位相シフタを用いても良い。このような方法により、例えば、全ての位相シフタ80に等位相の光が供給されるように、位相シフタ80に導入される前に位相を調整してもよい。そのような調整により、第2駆動回路210による各位相シフタ80の制御をシンプルにすることができる。
【0051】
上記の光スキャンデバイス100と同様の構成を有する光デバイスは、光受信デバイスとしても利用できる。光デバイスの動作原理、および動作方法などの詳細は、米国特許出願公開第2018/0224709号に開示されている。この文献の開示内容全体を本明細書に援用する。
【0052】
<応用例>
図16は、回路基板(たとえば、チップ)上に光分岐器90、導波路アレイ10A、位相シフタアレイ80A、および光源130などの素子を集積した光スキャンデバイス100の構成例を示す図である。光源130は、例えば、半導体レーザなどの発光素子であり得る。この例における光源130は、自由空間における波長がλである単一波長の光を出射する。光分岐器90は、光源130からの光を分岐して複数の位相シフタ
80における導波路に導入する。
図16に示す例において、チップ上には電極62Aと、複数の電極62Bとが設けられている。導波路アレイ10Aには、電極62Aから制御信号が供給される。位相シフタアレイ80Aにおける複数の位相シフタ80には、複数の電極62Bから制御信号がそれぞれ送られる。電極62A、および複数の電極62Bは、上記の制御信号を生成する不図示の制御回路に接続され得る。制御回路は、
図16に示すチップ上に設けられていてもよいし、光スキャンデバイス100における他のチップに設けられていてもよい。
【0053】
図16に示すように、全てのコンポーネントをチップ上に集積することで、小型のデバイスで広範囲の光スキャンが実現できる。例えば2mm×1mm程度のチップに、
図16に示される全てのコンポーネントを集積することができる。
【0054】
図17は、光スキャンデバイス100から遠方にレーザなどの光ビームを照射して2次元スキャンを実行している様子を示す模式図である。2次元スキャンは、ビームスポット310を水平および垂直方向に移動させることによって実行される。例えば、公知のTOF(Time Of Flight)法と組み合わせることで、2次元の測距画像を取得することができる。TOF法は、レーザを照射して対象物からの反射光を観測することで、光の飛行時間を算出し、距離を求める方法である。
【0055】
図18は、そのような測距画像を生成することが可能な光検出システムの一例であるLiDARシステム300の構成例を示すブロック図である。LiDARシステム300は、光スキャンデバイス100と、光検出器400と、信号処理回路600と、制御ユニット(例えば制御回路)500とを備える。光検出器400は、光スキャンデバイス100から出射され、対象物から反射された光を検出する。光検出器400は、例えば光スキャンデバイス100から出射される光の波長λに感度を有するイメージセンサ、またはフォトダイオードなどの受光素子を含むフォトディテクタであり得る。光検出器400は、受光した光の量に応じた電気信号を出力する。信号処理回路600は、光検出器400から出力された電気信号に基づいて、対象物までの距離を計算し、距離分布データを生成する。距離分布データは、距離の2次元分布を示すデータ(すなわち、測距画像)である。制御ユニット500は、光スキャンデバイス100、光検出器400、および信号処理回路600を制御するプロセッサである。制御ユニット500は、光スキャンデバイス100からの光ビームの照射のタイミングおよび光検出器400の露光および信号読出しのタイミングを制御し、信号処理回路600に、測距画像の生成を指示する。また、制御ユニット
500からは、光スキャンのために光スキャンデバイス
100の電極に印加する電圧も制御している。
【0056】
2次元スキャンにおいて、測距画像を取得するフレームレートとして、例えば一般的に動画でよく使われる60fps、50fps、30fps、25fps、24fpsなどから選択することができる。また、車載システムへの応用を考慮すると、フレームレートが大きいほど測距画像を取得する頻度が上がり、精度よく障害物を検知できる。例えば、60km/hでの走行時において、60fpsのフレームレートでは車が約28cm移動するごとに画像を取得することができる。120fpsのフレームレートでは、車が約14cm移動するごとに画像を取得することができる。180fpsのフレームレートでは車が、約9.3cm移動するごとに、画像を取得することができる。
【0057】
1つの測距画像を取得するために必要な時間は、ビームスキャンの速度に依存する。例えば、解像点数が100×100のイメージを60fpsで取得するためには1点につき1.67μs以下でビームスキャンをする必要がある。この場合、制御ユニット500は、600kHzの動作速度で、光スキャンデバイス100による光ビームの出射、および光検出器400による信号蓄積・読出しを制御する。
【0058】
<光受信デバイスへの応用例>
本開示の前述の各実施形態における光スキャンデバイスは、ほぼ同一の構成で、光受信デバイスとしても用いることができる。光受信デバイスは、光スキャンデバイスと同一の導波路アレイ10Aと、受信可能な光の方向を調整する第1調整素子とを備える。導波路アレイ10Aの各第1のミラー30は、第3の方向から第1の反射面の反対側に入射する光を透過させる。導波路アレイ10Aの各光導波層20は、第2の方向に第1のミラー30を透過した光を伝搬させる。第1調整素子が各導波路素子10における前記光導波層20の屈折率および厚さ、ならびに光の波長の少なくとも1つを変化させることにより、受信可能な光の方向を変化させることができる。さらに、光受信デバイスが、光スキャンデバイスと同一の複数の位相シフタ80、または80aおよび80bと、複数の導波路素子10から複数の位相シフタ80、または80aおよび80bを通過して出力される光の位相の差をそれぞれ変化させる第2調整素子を備える場合には、受信可能な光の方向を2次元的に変化させることができる。
【0059】
例えば
図16に示す光スキャンデバイス100における光源130を受信回路に置換した光受信デバイスを構成することができる。導波路アレイ10Aに波長λの光が入射すると、その光は位相シフタアレイ80Aを通じて光分岐器90へ送られ、最終的に一箇所に集められ、受信回路に送られる。その一箇所に集められた光の強度は、光受信デバイスの感度を表すといえる。光受信デバイスの感度は、導波路アレイ
10Aおよび位相シフタアレイ80Aに別々に組み込まれた調整素子によって調整することができる。光受信デバイスでは、例えば
図4において、波数ベクトル(図中の太い矢印)の方向が反対になる。入射光は、導波路素子10が延びる方向(図中のX方向)の光成分と、導波路素子10の配列方向(図中のY方向)の光成分とを有している。X方向の光成分の感度は、導波路アレイ10Aに組み込まれた調整素子によって調整できる。一方、導波路素子10の配列方向の光成分の感度は、位相シフタアレイ80Aに組み込まれた調整素子によって調整できる。光受信デバイスの感度が最大になるときの光の位相差Δφ、光導波層20の屈折率n
wおよび厚さdから、
図4に示すθおよびα
0がわかる。これにより、光の入射方向を特定することができる。
【0060】
(光導波層内の液晶材料の配向制御)
液晶材料を含む光導波層20に外部から電界を印加することにより、光デバイス100から出射される光の方向を変化させることができる。液晶を駆動させるためには、一般に、光導波層20内の少なくとも一部に配向処理が施される。従来の配向処理として、例えば、光導波層20内の当該少なくとも一部に、ポリイミドなどの樹脂層が設けられる。当該樹脂層は、配向膜と呼ばれる。ラビング処理などの方法によって当該配向膜上に所望のキズを付けると、液晶材料の配向方向はキズに沿って並ぶ。これにより、電界が与えられていないときの液晶材料の初期配向が実現される。
【0061】
一方、本開示では、後述するように、光が導波する領域は、ミラー30とミラー40との間であり、かつ、Y方向に隣り合う2つの誘電体部材の間に位置する。隣り合う2つの誘電体部材の間隔は狭く、5μm以下になる場合がある。この場合、当該隣り合う2つの誘電体部材に囲まれた領域に、配向膜を均一に形成したり、形成した当該配向膜にラビング処理を施したりすることは容易ではない。
【0062】
本発明者らは、以上の検討に基づき、以下の項目に記載の光デバイスに想到した。
【0063】
第1の項目に係る光デバイスは、第1の方向および前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って拡がる第1の反射面を備え、透光性を有する第1のミラーと、前記第1の反射面に対向する第2の反射面を備える第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に位置する光導波層であって、前記第2の方向に沿って並ぶ複数の非導波領域、および前記複数の非導波領域の間に位置する1つ以上の光導波領域を含み、前記光導波領域は、液晶材料を含み、且つ前記第1の方向に沿って光を伝搬させる、光導波層と、前記光導波層を介して互いに対向する2つの電極層であって、少なくとも一方が前記第2の方向に沿って並ぶ複数の電極を含む、2つの電極層と、を備える。前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部に重なる電極を含む。
【0064】
この光デバイスでは、2つの電極層の一方に含まれる電極、および/または他方に含まれる電極に印加された電圧によって形成される電界により、光導波領域に含まれる液晶材料の屈折率を変化させることができる。これにより、第1のミラーから出射される光の方向が変化する。
【0065】
第2の項目に係る光デバイスは、第1の項目に係る光デバイスにおいて、前記2つの電極層に含まれる前記複数の電極の各々に接続された制御回路をさらに備える。前記制御回路は、動作中、前記複数の電極のうちの一部の電極と他の少なくとも一部の電極とに電位差を設ける第1の動作、および前記2つの電極層の一方に含まれる電極と、前記2つの電極層の他方に含まれる電極との間に電位差を設ける第2の動作の少なくとも一方を実行する。
【0066】
この光デバイスでは、制御回路の上記の動作により、光導波領域に含まれる液晶材料の屈折率を連続的に変化させることができる。これに伴い、第1のミラーから出射される光の出射角度も連続的に変化する。
【0067】
第3の項目に係る光デバイスは、第1または第2の項目に係る光デバイスにおいて、前記2つの電極層の一方が、前記光導波層と前記第1の反射面との間、第1のミラーの内部、または、前記第1のミラーの前記第1の反射面とは反対の側の面上に位置し、前記2つの電極層の他方が、前記光導波層と前記第2の反射面との間、第2のミラーの内部、または、前記第2のミラーの前記第2の反射面とは反対の側の面上に位置する。
【0068】
この光デバイスでは、2つの電極層を上記の位置に設けることにより、第1または第2の項目に係る光デバイスと同じ効果を得ることができる。
【0069】
第4の項目に係る光デバイスは、第1から第3の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記1つ以上の光導波領域が、前記第2の方向における幅が5μm以下である光導波領域を含む。
【0070】
この光デバイスでは、光導波領域の第2の方向における幅が5μm以下であっても、第1または第3の項目に係る光デバイスと同じ効果を得ることができる。
【0071】
第5の項目に係る光デバイスは、第1の項目に係る光デバイスにおいて、前記2つの電極層に含まれる各電極に接続された制御回路をさらに備える。前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる。前記制御回路は、動作中、前記複数の電極のうちの隣接する任意の2つの電極に電位差を設ける第1の動作、および前記2つの電極層の一方に含まれる電極と、前記2つの電極層の他方に含まれる電極との間に電位差を設ける第2の動作の少なくとも一方を実行する。
【0072】
この光デバイスでは、複数の電極への制御回路の上記の動作により、光導波領域に含まれる液晶材料の屈折率を連続的に変化させることができる。これに伴い、第1のミラーから出射される光の出射角度も連続的に変化する。
【0073】
第6の項目に係る光デバイスは、第1から第4の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記複数の電極が、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる複数の第1の電極と、前記1つ以上の光導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる1つ以上の第2の電極とを含む。
【0074】
この光デバイスでは、複数の電極を上記のように設けることにより、第1から第4の項目のいずれかに係る光デバイスと同じ効果を得ることができる。
【0075】
第7の項目に係る光デバイスは、第1の項目に係る光デバイスにおいて、前記2つの電極層に含まれる各電極に接続された制御回路をさらに備える。前記複数の電極は、前記第1の反射面または前記第2の反射面に垂直な方向から見たとき、前記複数の非導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる複数の第1の電極と、前記1つ以上の光導波領域の少なくとも一部にそれぞれ重なる1つ以上の第2の電極とを含む。前記制御回路は、動作中、前記複数の第1の電極のうちの隣接する任意の2つの電極に電位差を設ける第1の動作、および前記2つの電極層の一方に含まれる電極と、前記2つの電極層の他方に含まれる電極との間に電位差を設ける第2の動作の少なくとも一方を実行する。
【0076】
この光デバイスでは、複数の電極への制御回路の上記の動作により、光導波領域に含まれる液晶材料の屈折率を連続的に変化させることができる。これに伴い、第1のミラーから出射される光の出射角度も連続的に変化する。
【0077】
第8の項目に係る光デバイスは、第1から第7の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記2つの電極層の一方が、前記複数の電極を含み、前記2つの電極層の他方が、単一の電極を含む。
【0078】
この光デバイスでは、2つの電極層を上記のように設けることにより、第1から第7の項目のいずれかに係る光デバイスと同じ効果を得ることができる。
【0079】
第9の項目に係る光デバイスは、第1から第7の項目のいずれかに係る光デバイスにおいて、前記2つの電極層の両方が、前記複数の電極を含む。
【0080】
この光デバイスでは、2つの電極層を上記のように設けることにより、第1から第7の項目のいずれかに係る光デバイスと同じ効果を得ることができる。
【0081】
以下において、実施形態1から実施形態6における光デバイス100を説明する。
【0082】
(実施形態1)
ここでは、光が導波する領域内の液晶材料を駆動させることにより、光スキャンを実施する例を説明する。
【0083】
図6Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイス100の斜視図である。
図6Bは、
図6Aに示す光デバイス100のYZ面における断面図である。
図6Aおよび
図6Bでは、簡単のために、光デバイス100の一部が示されている。なお、便宜上、互いに直交するX方向、Y方向、およびZ方向が示されているが、実際の光デバイス100の方向を限定するものではない。
【0084】
本実施形態における光デバイス100は、ミラー30およびミラー40と、光導波層20と、電極層60aおよび電極層60bと、を備える。光デバイス100は、不図示の制御回路をさらに備えてもよい。
【0085】
ミラー30は、X方向およびY方向に沿って拡がる第1の反射面32を備える。ミラー30は、透光性を有する。ミラー40は、第1の反射面32に対向する第2の反射面42を備える。ミラー30とミラー40とは、略平行になるように支持部材70によって支持されている。支持部材70は、例えば、SiO2などの誘電体材料、または樹脂から形成される。支持部材70は、柱状、または壁状の形状を有し得る。支持部材70は、ミラー30とミラー40との間の光導波層20以外の領域において、広範囲に配置される。光デバイス100は、ミラー30およびミラー40を貼り合わせて作製してもよい。
【0086】
光導波層20は、ミラー30とミラー40との間に位置する。光導波層20において、複数の誘電体部材24がY方向に沿って並んでいる。Z方向から見たとき、光導波層20のうち、複数の誘電体部材24に重なる領域を「複数の非導波領域20n」と称する。光導波層20のうち、Y方向に沿って並ぶ複数の非導波領域20nの間に位置する1つ以上の領域を、「1つ以上の光導波領域20g」と称する。言い換えれば、光導波層20は、複数の非導波領域20nと、1つ以上の光導波領域20gとを含む。1つ以上の光導波領域20gの平均屈折率は、複数の非導波領域20nの平均屈折率よりも高い。これにより、1つ以上の光導波領域20gは、X方向に沿って光を導波させることができる。1つ以上の光導波領域20gの各々は、液晶材料23を含む。複数の非導波領域20nは、それぞれ複数の誘電体部材24を含む。
図6Aおよび
図6Bに示す例では、誘電体部材24とミラー30との間にギャップが存在する。隣り合う任意の2つ光導波領域20gの一方を伝搬する光が、他方に漏れなければ、ギャップが存在していてもよい。当該ギャップが存在することにより、複数の誘電体部材24のZ方向における高さが同じでなくても、ミラー3
0およびミラー40を容易に貼り合わせることができる。
図6Aおよび
図6Bに示す光導波層20は、複数の誘電体部材24以外では、液晶材料23で満たされている
【0087】
電極層60aおよび電極層60bは、光導波層20を介して、互いに対向する。
図6Aおよび
図6Bに示す例では、一方の電極層60aが、Y方向に沿って並ぶ複数の電極を含み、他方の電極層60bが、単一の電極を含む。
図6Aに示すように、電極層60aにおける複数の電極のうち、一部の電極は、Y方向に延びる2つの平行な電極のうちの一方の電極から他方の電極に向けて突出し、他の部分の電極は、上記他方の電極から上記一方の電極に向けて突出し、上記一部の電極の間に位置していてもよい。
図6Aおよび
図6Bに示す例では、電極層60aは、ミラー30の第1の反射面32とは反対の側の面上に位置し、電極層60bは、ミラー40の第2の反射面42とは反対の側の面上に位置する。電極層60aは、光導波層20とミラー30の第1の反射面32との間、またはミラー30の内部に位置していてもよい。同様に、電極層60bは、光導波層20とミラー40の第2の反射面42との間、またはミラー40の内部に位置していてもよい。
図6Aおよび
図6Bに示す例では、電極層60aにおける複数の電極は、それぞれ、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nの少なくとも一部に重なる。より具体的には、電極層60aにおける複数の電極は、それぞれ、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nに含まれている。電極層60aにおける複数の電極は、1つ以上の光導波領域20g内を伝搬する光の波長に透光性を有する電極材料から形成され得る。当該電極材料は、例えば、ITOなどの透明電極である。ただし、光の透過を妨げなければ、どのような電極材料でもよい。電極層60aにおける複数の電極が、Z方向から見たとき、1つ以上の光導波領域20gに重ならなければ、当該電極材料は、Alなどの導電性の金属を含んでいてもよい。電極層60bにおける単一の電極は、透明電極および/または導電性の金属を含んでいてもよい。
【0088】
不図示の制御回路は、電極層60aおよび電極層60bに含まれる複数の電極の各々に接続されている。
図6Aおよび
図6Bに示す例では、不図示の制御回路は、Y方向に延びる2つの平行な電極のうちの1つを介して、電極層60aにおける複数の電極の各々に接続されている。当該制御回路は、電極層60aにおける複数の電極の各々、および電極層60bにおける単一の電極に、独立して任意の電圧を印加することができる。
図6Aおよび
図6Bに示す例では、電極層60aにおける複数の電極に、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。電極層60aにおける複数の電極、および電極層60bにおける単一の電極から所望の電界をミラー30とミラー40との間に生じさせることにより、ミラー30とミラー40との間に満たされた液晶材料23が駆動される。これにより、液晶材料23の屈折率が変化する。
【0089】
次に、本実施形態における液晶材料23の配向制御を、
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
【0090】
図7Aは、
図6Bに示す例において液晶材料23がY方向に配向した第1の状態を模式的に示す図である。
図7Bは、
図6Bに示す例において液晶材料23がZ方向に配向した第2の状態を模式的に示す図である。
図7Aおよび
図7Bに示す符号23oは、液晶材料23の配向状態を模式的に表している。電極層60aにおける複数の電極、および電極層60bにおける単一の電極に印加された電圧によって形成される電界により、ミラー30およびミラー40によって挟まれた液晶材料23の配向方向が制御される。
【0091】
図7Aに示す例では、電極層60aにおける複数の電極のうち、隣接する任意の2つの電極に電位差が設けられ、電極層60bにおける単一の電極は電気的に開放された状態にある。この状態では、
図7Aに示すように、隣接する2つの電極の間に生じる電位差により、Y方向にほぼ平行な電気力線が、1つ以上の光導波領域20g内に生じる。この電界により、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23はY方向に配向される。
【0092】
図7Bに示す例では、電極層60aにおける複数の電極がほぼ同電位であり、電極層60aにおける複数の電極と、電極層60aにおける単一の電極との間に電位差が設けられた状態にある。この状態では、
図7Bに示すように、ミラー30から、ミラー40に向かってZ方向にほぼ平行な電気力線が生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23は、Z方向に配向される。
図7Bに示す例では、電気力線がミラー30からミラー40に向かって生じているが、逆であってもよい。
【0093】
このように電極層60aにおける複数の電極、および電極層60bにおける単一の電極に電圧を印加することにより、
図7Aに示す第1の状態と、
図7Bに示す第2の状態とを任意に作り出すことができる。第1の状態と第2の状態とでは、1つ以上の光導波領域20gに含まれる液晶材料23の屈折率が異なる。第1の状態から第2の状態への推移、および、第2の状態から第1の状態への推移の過程において、液晶材料23の屈折率が連続的に変化する。これに伴い、ミラー30から出射される光の出射角度が変化する。その結果、光スキャンを実現することができる。
【0094】
第1の状態から第2の状態への推移、および、第2の状態から第1の状態への推移を実現するために、不図示の制御回路は、動作中、電極層60aにおける複数の電極のうちの一部の電極と他の少なくとも一部の電極とに電位差を設ける第1の動作、ならびに、電極層60aおよび電極層60bの一方に含まれる電極と、他方に含まれる電極との間に電位差を設ける第2の動作の少なくとも一方を実行する。
【0095】
電極層60aにおける各電極のY方向における幅は、1つの非導波領域20nのY方向における幅よりも狭くてもよい。これにより、
図7Aに示す第1の状態において、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりY方向に平行になる。
【0096】
図7Aおよび
図7Bに示す例とは反対に、ミラー30上の電極層60aが単一の電極を含み、ミラー40上の電極層60bが複数の電極を含んでいてもよい。この構成でも、
図7Aおよび
図7Bに示す例と同様の効果を得ることができる。
【0097】
なお、電極層60aにおける複数の電極のすべてが、それぞれ、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nの少なくとも一部に重なる必要はない。
図7Aおよび
図7Bに示す例と同様の効果が得られるのであれば、電極層60aにおける複数の電極の一部は、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nの少なくとも一部に重なる電極を含み、他の部分は、そのような電極を含んでいなくてもよい。
【0098】
(実施形態2)
以下の説明において、実施形態1に示す例と同じ構成については、説明を省略する。
【0099】
図8Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイス100の斜視図である。
図8Bは、
図8Aに示す光デバイス100のYZ面における断面図である。
図8Aおよび
図8Bでは、簡単のために、光デバイス100の一部が示されている。
【0100】
図8Aおよび
図8Bに示す例では、実施形態1に示す例とは異なり、電極層60bが、電極層60aと同様に、複数の電極を含む。電極層60aにおける複数の電極の各々、および電極層60bにおける複数の電極の各々に、独立して任意の電圧を印加することができる。
【0101】
次に、本実施形態における液晶材料23の配向制御を、
図9Aおよび
図9Bを参照して説明する。
【0102】
図9Aは、
図8Bに示す例において液晶材料23がY方向に配向した第1の状態を模式的に示す図である。
図9Bは、
図8Bに示す例において液晶材料23がZ方向に配向した第2の状態を模式的に示す図である。電極層60aにおける複数の電極、および電極層60bにおける複数の電極に印加した電圧によって形成される電界により、ミラー30およびミラー40によって挟まれた液晶材料23の配向方向が制御される。
【0103】
図9Aに示す例では、電極層60aにおける複数の電極のうち、隣接する任意の2つの電極に電位差が設けられ、電極層60bにおける複数の電極のうち、隣接する任意の2つの電極に電位差が設けられた状態にある。光導波層20を介して対向する2つの電極は、同電位であってもよい。この状態では、
図9Aに示すように、隣接する2つの電極の間に生じる電位差により、Y方向にほぼ平行な電気力線が、1つ以上の光導波領域20g内に生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23はY方向に配向される。
【0104】
図9Bに示す例では、電極層60aにおける複数の電極がほぼ同電位であり、電極層60bにおける複数の電極がほぼ同電位であり、電極層60aにおける複数の電極と、電極層60bにおける複数の電極との間に電位差が設けられた状態にある。この状態では、
図9Bに示すように、ミラー30から、ミラー40に向かってZ方向にほぼ平行な電気力線が生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23は、Z方向に配向される。
図9Bに示す例では、電気力線がミラー30からミラー40に向かって生じているが、逆であってもよい。
【0105】
このように電極層60aにおける複数の電極、および電極層60bにおける複数の電極に電圧を印加することにより、
図9Aに示す第1の状態と、
図9Bに示す第2の状態とを任意に作り出すことができる。第1の状態と第2の状態とでは、1つ以上の光導波領域20gの液晶材料23の屈折率が異なる。第1の状態から第2の状態への推移、および、第2の状態から第1の状態への推移の過程において、液晶材料23の屈折率が連続的に変化する。これに伴い、ミラー30から出射される光の出射角度が変化する。その結果、光スキャンを実現することができる。
【0106】
電極層60aにおける各電極のY方向における幅は、各非導波領域20nのY方向における幅よりも狭くてもよい。これにより、
図9Aに示す第1の状態において、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりY方向に平行になる。
【0107】
なお、電極層60bにおける複数の電極のすべてが、それぞれ、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nの少なくとも一部に重なる必要はない。
図9Aおよび
図9Bに示す例と同様の効果が得られるのであれば、電極層60bにおける複数の電極の一部は、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nの少なくとも一部に重なる電極を含み、他の部分は、そのような電極を含んでいなくてもよい。
【0108】
(実施形態3)
以下の説明において、実施形態1に示す例と同じ構成については、説明を省略する。
【0109】
図10Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイス100の斜視図である。
図10Bは、
図10Aに示す光デバイス100のYZ面における断面図である。
図10Aおよび
図10Bでは、簡単のために、光デバイス100の一部が示されている。
【0110】
図10Aおよび
図10Bに示す例では、実施形態1に示す例とは異なり、電極層60aにおける複数の電極が、複数の第1の電極60a1、および1つ以上の第2の電極60a2を含む。複数の第1の電極60a1は、
図6Aおよび
図6Bに示に電極層60aにおける複数の電極に相当する。1つ以上の第2の電極60a2は、それぞれ、Z方向から見たとき、1つ以上の光導波領域20gの少なくとも一部に重なる。より具体的には、1つ以上の第2の電極60a2は、それぞれ、Z方向から見たとき、1つ以上の光導波領域20gに含まれる。
【0111】
図10Aに示すように、1つ以上の第2の電極60a2は、複数の第1の電極60a1の隙間に配置された連続的な1つの電極の一部であってもよい。電極層60aにおける複数の電極の各々、および電極層60bにおける単一の電極に、独立して任意の電圧を印加することができる。
図10Aおよび
図10Bに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2には、同じ値の電圧が印加される。
【0112】
次に、本実施形態における液晶材料23の配向制御を、
図11Aおよび
図11Bを参照して説明する。
【0113】
図11Aは、
図10Bに示す例において液晶材料23がY方向に配向した第1の状態を模式的に示す図である。
図11Bおよび
図11Cは、
図10Bに示す例において液晶材料23がZ方向に配向した第2の状態を模式的に示す図である。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2、ならびに電極層60bにおける単一の電極に印加した電圧によって形成される電界により、ミラー30およびミラー40によって挟まれた液晶材料23の配向方向が制御される。
【0114】
図11Aに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1のうち、隣接する任意の2つの電極に電位差が設けられ、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2、および電極層60bにおける単一の電極は電気的に開放された状態にある。この状態では、
図11Aに示すように、隣接する2つの電極の間に生じる電位差により、Y方向にほぼ平行な電気力線が、1つ以上の光導波領域20g内に生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23はY方向に配向される。
【0115】
図11Bに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2がほぼ同電位であり、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける単一の電極との間に電位差が設けられた状態にある。この状態では、
図11Bに示すように、ミラー30から、ミラー40に向かってZ方向にほぼ平行な電気力線が生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23は、Z方向に配向される。
図11Bに示す例では、電気力線がミラー30からミラー40に向かって生じているが、逆であってもよい。
【0116】
図11Cに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1のうち、隣り合う任意の2つの電極に第1の電位差が設けられ、かつ、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける単一の電極との間に第2の電位差が設けられた状態にある。第1の電位差は、
図11Aに示す例における電位差よりも小さくてもよく、第2の電位差よりも小さくてもよい。この状態では、
図11Cに示すように、ミラー30から、ミラー40に向かってZ方向にほぼ平行な電気力線が生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23は、Z方向に配向される。
図11Cに示す例では、電気力線がミラー30からミラー40に向かって生じているが、逆であってもよい。
図11Cに示す状態も、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける単一の電極との間に生じる電界により、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23がZ方向に配向された第2の状態であると言うことができる。
【0117】
このように電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2、ならびに電極層60bにおける単一の電極に電圧を印加することにより、
図11Aに示す第1の状態と、
図11Bまたは
図11Cに示す第2の状態とを任意に作り出すことができる。第1の状態と第2の状態とでは、1つ以上の光導波領域20gの液晶材料23の屈折率が異なる。第1の状態から第2の状態への推移、および、第2の状態から第1の状態への推移の過程において、液晶材料23の屈折率が連続的に変化する。これに伴い、ミラー30から出射される光の出射角度が変化する。その結果、光スキャンを実現することができる。
【0118】
電極層60aにおける各第1の電極60a1のY方向における幅は、各非導波領域20nのY方向における幅よりも狭くてもよい。これにより、
図11Aに示す第1の状態において、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりY方向に平行になる。
【0119】
なお、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1のすべてが、それぞれ、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nの少なくとも一部に重なる必要はない。
図11Aおよび
図11Bに示す例と同様の効果が得られるのであれば、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1の一部は、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nの少なくとも一部に重なる電極を含み、他の部分は、そのような電極を含んでいなくてもよい。
【0120】
同様に、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2のすべてが、それぞれ、Z方向から見たとき、複数の光導波領域20gの少なくとも一部に重なる必要はない。
図11Aおよび
図11Bに示す例と同様の効果が得られるのであれば、電極層60aにおける複1つ以上の第2の電極60a2の一部は、Z方向から見たとき、複数の光導波領域20gの少なくとも一部に重なる電極を含み、他の部分は、そのような電極を含んでいなくてもよい。
【0121】
(実施形態4)
以下の説明において、実施形態3に示す例と同じ構成については、説明を省略する。
【0122】
図12Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイス100の斜視図である。
図12Bは、
図12Aに示す光デバイス100のYZ面における断面図である。
図12Aおよび
図12Bでは、簡単のために、光デバイス100の一部が示されている。
【0123】
図12Aおよび
図12Bに示す例では、実施形態3に示す例とは異なり、電極層60bにおける複数の電極が、電極層60aと同様に、複数の第1の電極60b1、および1つ以上の第2の電極60b2を含む。電極層60aにおける複数の電極の各々、および電極層60bにおける複数の電極の各々に、独立して任意の電圧を印加することができる。
図12Aおよび
図12Bに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。電極層60bにおける複数の電極についても、同様である。
【0124】
次に、本実施形態における液晶材料23の配向制御を、
図13Aおよび
図13Bを参照して説明する。
【0125】
図13Aは、
図12Bに示す例において液晶材料23がY方向に配向した第1の状態を模式的に示す図である。
図13Bおよび
図13Cは、
図12Bに示す例において液晶材料23がZ方向に配向した第2の状態を模式的に示す図である。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2、ならびに電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2に印加した電圧によって形成される電界により、ミラー30およびミラー40によって挟まれた液晶材料23の配向方向が制御される。
【0126】
図13Aに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1のうち、隣接する任意の2つの電極に電位差が設けられ、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2は電気的に開放された状態にある。電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2についても、同様である。この状態では、
図13Aに示すように、隣接する2つの電極の間に生じる電位差により、Y方向にほぼ平行な電気力線が、1つ以上の光導波領域20g内に生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23はY方向に配向される。
【0127】
図13Bに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2がほぼ同電位であり、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2がほぼ同電位であり、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2との間に電位差が設けられた状態にある。この状態では、
図13Bに示すように、ミラー30から、ミラー40に向かってZ方向にほぼ平行な電気力線が生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23は、Z方向に配向される。
図13Bに示す例では、電気力線がミラー30からミラー40に向かって生じているが、逆であってもよい。
【0128】
図13Cに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1のうち、隣り合う任意の2つの電極に第1の電位差が設けられ、かつ、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1のうち、隣り合う任意の2つの電極に第1の電位差が設けられ、かつ、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける1つ以上の第2の電極60b2との間に第2の電位差が設けられた状態にある。第1の電位差は、
図13Aに示す例における電位差よりも小さくてもよく、第2の電位差よりも小さくてもよい。この状態では、
図13Cに示すように、ミラー30から、ミラー40に向かってZ方向にほぼ平行な電気力線が生じる。これにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23は、Z方向に配向される。
図13Cに示す例では、電気力線がミラー30からミラー40に向かって生じているが、逆であってもよい。
図13Cに示す状態も、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける1つ以上の第2の電極60b2との間に生じる電界により、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23がZ方向に配向された第2の状態であると言うことができる。
【0129】
このように電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2、ならびに電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2に電圧を印加することにより、
図13Aに示す第1の状態と、
図13Bまたは
図13Cに示す第2の状態とを任意に作り出すことができる。第1の状態と第2の状態とでは、1つ以上の光導波領域20gの液晶材料23の屈折率が異なる。第1の状態から第2の状態への推移、および、第2の状態から第1の状態への推移の過程において、液晶材料23の屈折率が連続的に変化する。これに伴い、ミラー30から出射される光の出射角度が変化する。その結果、光スキャンを実現することができる。
【0130】
電極層60aにおける各第1の電極60a1のY方向における幅、および/または、電極層60bにおける各第1の電極60b1のY方向における幅は、各非導波領域20nのY方向における幅よりも狭くてもよい。これにより、
図13Aに示す第1の状態において、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりY方向に平行になる。
【0131】
(実施形態5)
以下の説明において、実施形態1に示す例と同じ構成については、説明を省略する。
【0132】
図14Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイス100の斜視図である。
図14Bは、
図14Aに示す光デバイス100のYZ面における断面図である。
図14Aおよび
図14Bでは、簡単のために、光デバイス100の一部が示されている。
【0133】
図14Aおよび
図14Bに示す例では、実施形態1に示す例とは異なり、電極層60aにおける複数の電極が、複数の第1の電極60a1、および複数の第3の電極60a3を含む。複数の第1の電極60a1は、
図6Aおよび
図6Bに示に電極層60aにおける複数の電極に相当する。複数の第3の電極60a3は、複数の第1の電極60a1に略直交する。複数の第1の電極60a1と複数の第3の電極60a3とを絶縁するために、複数の第1の電極60a1と複数の第3の電極60a3との間に絶縁層50aが位置する。電極層60aにおける複数の電極の各々、および電極層60bにおける単一の電極に、独立して任意の電圧を印加することができる。
図14Aおよび
図14Bに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。電極層60aにおける複数の第3の電極60a3にも、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。
【0134】
電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に、異なる2つの値の電圧を交互に印加することにより、液晶材料23のY方向の配向制御が可能になる。電極層60aにおける複数の第3の電極60a3に、異なる2つの値の電圧を交互に印加することにより、液晶材料23のX方向の配向制御が可能になる。すなわち、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および複数の第3の電極60a3により、液晶材料23のXY平面内での任意の方向の配向制御が可能になる。当然、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および複数の第3の電極60a3と、電極層60bにおける単一の電極との間に電位差を設けることにより、液晶材料23の配向方向をZ方向に並べることが可能になる。
【0135】
電極層60aにおける各第1の電極60a1のY方向における幅は、各非導波領域20nのY方向における幅よりも狭くてもよい。これにより、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりY方向に平行になる。同様に、電極層60aにおける各第3の電極60a3のX方向における幅は、電極層60aにおける各第1の電極60a1のY方向における幅と同程度に狭くてもよい。これにより、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりX方向に平行になる。
【0136】
(実施形態6)
以下の説明において、実施形態5に示す例と同じ構成については、説明を省略する。
【0137】
図15Aは、本開示の例示的な実施形態における光デバイス100の斜視図である。
図15Bは、
図15Aに示す光デバイス100のYZ面における断面図である。
図15Aおよび
図15Bでは、簡単のために、光デバイス100の一部が示されている。
【0138】
図15Aおよび
図15Bに示す例では、実施形態5に示す例とは異なり、電極層60bにおける複数の電極が、電極層60aと同様に、複数の第1の電極60b1、および複数の第3の電極60b3を含む。複数の第1の電極60b1と複数の第3の電極60b3とを絶縁するために、複数の第1の電極60b1と複数の第3の電極60b3との間に絶縁層50bが位置する。電極層60aにおける複数の電極の各々、および電極層60bにおける複数の電極の各々に、独立して任意の電圧を印加することができる。
図15Aおよび
図15Bに示す例では、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。電極層60aにおける複数の第3の電極60a3にも、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。電極層60bにおける複数の第1の電極60b1にも、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。電極層60bにおける複数の第3の電極60b3にも、異なる2つの値の電圧が交互に印加されるか、または、同じ値の電圧が印加される。
【0139】
電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に異なる2つの値の電圧を交互に印加し、および/または、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1に異なる2つの値の電圧を交互に印加することにより、液晶材料23のY方向の配向制御が可能になる。電極層60aにおける複数の第3の電極60a3に異なる2つの値の電圧を交互に印加し、および/または、電極層60bにおける複数の第3の電極60b3に異なる2つの値の電圧を交互に印加することにより、液晶材料23のX方向の配向制御が可能になる。すなわち、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および複数の第3の電極60a3、ならびに、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および複数の第3の電極60b3により、液晶材料23のXY平面内での任意の方向の配向制御が可能になる。当然、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および複数の第3の電極60a3と、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および複数の第3の電極60b3との間に電位差を設けることにより、液晶材料23の配向方向をZ方向の方向に並べることが可能になる。
【0140】
電極層60aにおける各第1の電極60a1のY方向における幅、および/または、電極層60bにおける各第1の電極60b1のY方向における幅は、各非導波領域20nのY方向における幅よりも狭くてもよい。これにより、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりY方向に平行になる。同様に、電極層60aにおける各第3の電極60a3のX方向における幅、および/または、電極層60bにおける各第3の電極60b3のX方向における幅は、電極層60aにおける各第1の電極60a1のY方向における幅、および/または、電極層60bにおける各第1の電極60b1のY方向における幅と同程度に狭くてもよい。これにより、1つ以上の光導波領域20g内に形成される電気力線が、よりX方向に平行になる。
【0141】
次に、実施形態1から実施形態6における光デバイス100の効果を説明する。
【0142】
1つ以上の光導波領域20gの各々のY方向における幅が広い場合、前述の従来の配向処理により、液晶材料23の初期の配向方向を決定することができる。しかし、1つ以上の光導波領域20gが、Y方向における5μm以下の幅の光導波領域を含む場合、従来の配向処理により、液晶材料23の初期の配向方向を決定することは容易ではない。このような場合でも、実施形態1から実施形態6における電極配置により、液晶材料23のYZ平面内、XY平面内、またはXYZ空間内の任意の方向の配向制御が可能になるという効果が得られる。
【0143】
(実施例1)
本実施例1では、実施形態1において説明した光デバイス100を用いて液晶材料23の配向状態を確認した。ミラー30およびミラー40には、Nb2O5およびSiO2の誘電体層が交互に積層された誘電体多層膜ミラーが用いられた。ミラー30の光透光性は、ミラー40の光透光性よりも高い。波長940nmの光の垂直入射では、ミラー30の反射率は99.6%に設計され、ミラー40の反射率は99.9%に設計された。複数の誘電体部材24は、SiO2から形成された。複数の誘電体部材24の各々のZ方向における高さは約1μmとし、Y方向における幅は約30μmとした。複数の誘電体部材24はY方向に沿って等間隔に配置された。1つ以上の光導波領域20gの各々のY方向における幅は5μmとした。ミラー30上に、フォトリソグラフィの技術を用いて、ITOから形成された電極パターンが設けられた。電極層60aにおける複数の電極のY方向における幅は、それぞれ、複数の非導波領域20nのY方向における幅よりも狭くした。電極層60aにおける複数の電極の各々のY方向における幅は約20μmとした。電極層60aにおける複数の電極のX方向における長さは、1つ以上の光導波領域20gのX方向における長さと略同じ長さとした。1つ以上の光導波領域20gは、アレイ状に配置された。電極層60aにおける複数の電極は、かみ合うように配置された2つの櫛歯状の電極から形成された。当該複数の電極は、それぞれ、Z方向から見たとき、複数の非導波領域20nに重なるように設けられた。電極層60bにおける単一の電極は、ミラー40上にITOを成膜することによって設けられた。
【0144】
図6Aおよび
図6Bには示していないが、光デバイス100は、厚さ0.625μmの石英基板上に設けられた。当該石英基板上に電極層60bにおける単一の電極が設けられ、当該単一の電極上に、ミラー40として誘電体多層膜が設けられ、ミラー40上に、複数の誘電体部材24、および樹脂から形成された支持部材70が設けられた。ミラー30およびミラー40は、支持部材70を介して貼り合わせることによって設けられた。支持部材70のZ方向における高さは、約2μmである。
図6Aおよび
図6Bには示していないが、ミラー30とミラー40との間に、液晶材料23が封入される領域を囲むように、UV硬化性の接着材が塗布された。ミラー30およびミラー40は、当該接着材をUV照射することによって貼りあわせられた。液晶材料23は、当該接着剤のうち、開放された一部の領域から真空注入された。液晶材料23には、BK7と呼ばれる材料が用いられた。液晶材料23の注入後、開放された当該一部の領域に接着剤を塗布することにより、液晶材料23が封止された。不図示の制御回路は、電極層60aにおける複数の電極、および電極層60bにおける単一の電極に、それぞれ電気的な配線を介して接続された。これにより、電極層60aにおける複数の電極、および電極層60bにおける単一の電極に、個別に電圧を給電することができる。
【0145】
液晶材料23の配向状態は、次のようにして確認した。偏光顕微鏡において、クロスニコル配置の2つの偏光板の間に、光デバイス100が、当該2つの偏光板に平行になるように設置された。光入射側の偏光板を透過する光の偏光方向を基準として、光デバイス100は、その光導波方向を上記の2つの偏光板に平行な面内に45°回転させて顕微鏡に設置された。光デバイス100を透過した光は、光出射側の偏光板を通して、顕微鏡によって像として確認することができる。
【0146】
図7Aにおいて説明した第1の状態を確認した。電極層60aにおける複数の電極に、交互に10Vの電位差が設定された。電極層60bにおける単一の電極は、電気的に開放された状態にある。この状態では、液晶材料
23がY方向に配向する。すなわち、入射側の偏光板を透過して光デバイス100を介した光の偏光方向が45°傾いた状態になる。これにより、光デバイス100を介した当該光の一部が出射側の偏光板を透過する。その結果、偏光顕微鏡によって観察された像は明るかった。
【0147】
次に、
図7Bにおいて説明した第2の状態を確認した。電極層60aにおける複数の電極に、同じ値の電圧が印加され、電極層60aにおける複数の電極と、電極層60bにおける単一の電極との間に、10Vの電位差が設けられた。この状態では、液晶材料
23がZ方向に配向する。これにより、入射側の偏光板を透過して光デバイス100を介した光は、その偏光方向を維持したまま、出射側の偏光板に到達する。2つの偏光板はクロスニコル配置であることから、光デバイス100を介した当該光は、出射側の偏光板を透過することができない。その結果、顕微鏡によって観察された像は暗かった。第1の状態、および第2の状態を切り替えることにより、1つ以上の光導波領域20gの明暗が反転することを確認した。
【0148】
(実施例2)
本実施例2では、実施形態2において説明した光デバイス100を用いて液晶材料23の配向状態を確認した。本実施例2では、実施例1とは異なり、電極層60bが複数の電極を含む。電極層60bにおける当該複数の電極は、電極層60aにおける複数の電極と同様に設計された。
【0149】
液晶材料23の配向状態の確認方法は、実施例1において説明した通りである。
【0150】
図9Aにおいて説明した第1の状態を確認した。電極層60aにおける複数の電極に交互に10Vの電位差が設定され、同様に、電極層60bにおける複数の電極に交互に10Vの電位差が設定された。このとき、偏光顕微鏡によって観察された像は明るかった。
【0151】
次に、
図9Bにおいて説明した第2の状態を確認した。電極層60aにおける複数の電極に、同じ値の電圧が印加され、電極層60bにおける複数の電極に、同じ値の電圧が印加され、電極層60aにおける複数の電極と、電極層60bにおける複数の電極との間に、10Vの電位差が設けられた。このとき、偏光顕微鏡によって観察された像は暗かった。
【0152】
したがって、第1の状態では、液晶材料23がY方向に沿って配向し、第2の状態では、液晶材料23がZ方向に沿って配向していることが確認できた。
【0153】
(実施例3)
本実施例3では、実施形態3において説明した光デバイス100を用いて液晶材料23の配向状態を確認した。本実施例3では、実施例1に加えて、電極層60aにおいて、2つの櫛歯状の電極の隙間に、他の電極が設けられた。当該2つの櫛歯状の電極が
図10Aおよび
図10Bに示す複数の第1の電極60a1に相当し、当該他の電極が
図10Aおよび
図10Bに示す1つ以上の第2の電極60a2に相当する。当該他の電極のX方向に延びる1つ以上の部分は、それぞれ、Z方向から見たとき、1つ以上の光導波領域20gの少なくとも一部に重なる。当該1つ以上の部分は、それぞれ1つ以上の光導波領域20gのY方向における幅の5μmよりも狭くした。当該複数の部分の各々のY方向における幅は3μmとした。
【0154】
液晶材料23の配向状態の確認方法は、実施例1において説明した通りである。
【0155】
図11Aにおいて説明した第1の状態を確認した。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に、交互に10Vの電位差が設定された。電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2、および電極層60bにおける単一の電極は、電気的に開放された状態にある。このとき、偏光顕微鏡によって観察された像は明るかった。
【0156】
次に、
図11Bにおいて説明した第2の状態を確認した。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2に、同じ値の電圧が印加され、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける単一の電極との間に、10Vの電位差が設けられた。このとき、偏光顕微鏡によって観察された像は暗かった。
【0157】
次に、
図11Aにおいて説明した第1の状態に戻した後、
図11Cにおいて説明した第2の状態を確認した。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に、交互に設けられた電圧差を10Vから1Vに低下させるとほぼ同時に、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける単一の電極との間に9.5Vの電位差が設けられた。この状態は、例えば、以下のようにして実現される。(1)電極層60aにおける複数の第1の電極60a1のうち、隣り合う任意の2つの電極の一方および他方にそれぞれ10Vおよび9Vの電圧が印加され、(2)電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2に9.5Vの電圧が印加され、(3)電極層60bにおける単一の電極に0Vの電圧が印加される。この状態でも、偏光顕微鏡によって観察された像は暗かった。したがって、
図11Bに示す構成であっても、
図11Cに示す構成であっても、第2の状態を実現するのに問題はない。
【0158】
(実施例4)
本実施例4では、実施形態4において説明した光デバイス100を用いて液晶材料23の配向状態を確認した。本実施例4では、実施例3とは異なり、電極層60bにおける複数の電極が、電極層60aと同様に、複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2を含む。電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2は、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2と同様に設計された。
【0159】
液晶材料23の配向状態の確認方法は、実施例1において説明した通りである。
【0160】
図13Aにおいて説明した第1の状態を確認した。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に交互に10Vの電位差が設定され、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1に交互に10Vの電位差が設定された。電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2、および電極層60bにおける1つ以上の第2の電極60b2は、電気的に開放された状態にある。このとき、偏光顕微鏡によって観察された像は明るかった。
【0161】
次に、
図13Bにおいて説明した第2の状態を確認した。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2に、同じ値の電圧が印加され、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2に、同じ値の電圧が印加され、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける複数の第1の電極60b1および1つ以上の第2の電極60b2との間に、10Vの電位差が設けられた。このとき、偏光顕微鏡によって観察された像は暗かった。
【0162】
次に、
図13Aにおいて説明した第1の状態に戻した後、
図13Cにおいて説明した第2の状態を確認した。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に交互に設けられた電圧差、および電極層60bにおける複数の第1の電極60b1に交互に設けられた電圧差を10Vから1Vに低下させるとほぼ同時に、電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2と、電極層60bにおける1つ以上の第2の電極60b2との間に9.5Vの電位差が設けられた。この状態は、例えば、以下のようにして実現される。(1)電極層60aにおける複数の第1の電極60a1のうち、隣り合う任意の2つの電極の一方および他方にそれぞれ10Vおよび9Vの電圧が印加され、(2)電極層60aにおける1つ以上の第2の電極60a2に9.5Vの電圧が印加され、(3)電極層60bにおける複数の第1の電極60b1のうち、電極層60aにおいて10Vおよび9Vの電圧が印加された一方および他方の電極に対向する電極にそれぞれ0.5Vおよび-0.5Vの電圧が印加され、(4)電極層60bにおける1つ以上の第2の電極60b2に0Vの電圧が印加される。この状態でも、偏光顕微鏡によって観察された像は暗かった。したがって、
図13Bに示す構成であっても、
図13Cに示す構成であっても、第2の状態を実現するのに問題はない。
【0163】
(実施例5)
本実施例5では、実施形態5および実施形態6において説明した光デバイス100の具体的な構成を説明する。本実施例5では、実施例1に加えて、複数の第1の電極60a1上にSiO
2から形成された絶縁層50aが設けられた。絶縁層50aのZ方向における厚さは約200μmである。絶縁層50a上に、複数の第3の電極60a3が、複数の第1の電極60a1に略直交するように設けられた。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および複数の第3の電極60a3の各々の幅は約20μmとし、隣接する任意の2つの電極の間隔は約50μmとした。
図14Aでは、複数の第3の電極60a3として3つの電極のみが示されているが、1つ以上の光導波領域20gのX方向における長さを調整するのと同様に、複数の第3の電極60a3の数を増やしてもよい。また、電極の幅および間隔についても、本実施例5と異なっていてもよい。
【0164】
電極層60aにおける複数の第3の電極60a3に異なる2つの値の電圧を交互に印加することにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23を光導波方向に平行なX方向に配向させることが可能になる。あるいは、電極層60aにおける複数の第3の電極60a3に、X方向に沿って順次電圧が高くなる、または低くなるように電圧を印加してもよい。また、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1に異なる2つの値の電圧を交互に印加することにより、1つ以上の光導波領域20g内の液晶材料23を光導波方向に平行なY方向に配向させることが可能になる。あるいは、電極層60aにおける複数の第1の電極60a1にY方向に沿って順次電圧が高くなる、または低くなるように電圧を印加してもよい。電極層60aにおける複数の第1の電極60a1および複数の第3の電極60a3に上記の電圧を同時に印加することにより、液晶材料23をXY平面内の任意の方向に配向させることも可能である。
【0165】
一方、実施形態6において説明した光デバイス100では、電極層60bにおける複数の電極が、電極層60aと同様に、複数の第1の電極60b1および複数の第3の電極60b3を含む。電極層60aおよび電極層60bの両方における複数の電極の各々に電圧を印加することにより、液晶材料23のより容易な配向制御が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本開示の実施形態における光デバイスは、例えば自動車、UAV、AGVなどの車両に搭載されるライダーシステムなどの用途に利用できる。
【符号の説明】
【0167】
10 :導波路素子
10A :導波路アレイ
20 :光導波層
20a :導波路
20g :光導波領域
20n :非導波領域
22 :光
23 :液晶材料
24 :誘電体部材
30 :第1のミラー
32 :第1の反射面
40 :第2のミラー
42 :第2の反射面
50a :絶縁層
50b :絶縁層
60a :電極層
60a1 :第1の電極
60a2 :第2の電極
60a3 :第3の電極
60b :電極層
60b1 :第1の電極
60b2 :第2の電極
60b3 :第3の電極
62A :電極
62B :電極
70 :支持部材
80 :位相シフタ
80A :位相シフタアレイ
90 :光分岐器
100 :光スキャンデバイス、光デバイス
101 :方向
102 :方向
110 :第1駆動回路
130 :光源
210 :第2駆動回路
300 :LiDARシステム
310 :ビームスポット
400 :光検出器
500 :制御ユニット、制御回路
600 :信号処理回路