(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
G01R15/18 B
(21)【出願番号】P 2021515895
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013546
(87)【国際公開番号】W WO2020217838
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2019083170
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕太
(72)【発明者】
【氏名】市橋 弘英
(72)【発明者】
【氏名】富田 満
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 学
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-300506(JP,A)
【文献】特開2005-332851(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0115403(US,A1)
【文献】特開2013-179233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0002236(US,A1)
【文献】特開2012-098305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0308797(US,A1)
【文献】特開2014-070914(JP,A)
【文献】特開2009-002736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気導体に流れる電流を検出する電流センサであって、
前記電気導体が貫通する中空部を有するコア
であって、前記中空部につながる隙間が部分的に形成されたC字形状を実質的に有するコアと、
前記コアに巻き付けられたコイルと、
前記コイルが巻き付けられて前記コアの前記隙間を囲む非磁性体によりなるボビンと、
を備え
、
前記コアは前記隙間を介して互いに対向しかつ互いに反対の方向を向く第1の端面と第2の端面とを有し、
前記コアの前記C字形状は、前記
中空部を囲むように前記第1の端面から前記第2の端面まで連続して延びており、
前記コアの前記隙間の少なくとも一部は前記コイル内に位置
し、
前記ボビンは、前記第1の端面と、前記第2の端面との間隔を埋める部位を備える、電流センサ。
【請求項2】
前記コアの前記第1の端面と前記第2の端面とは前記コイル内に位置する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記コアは、互いに接合された複数の分割コアを有する、請求項1
または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記複数の分割コアのうちの第一分割コアを収容する空間を有する第一本体部を有する第一筐体と、
前記複数の分割コアのうちの第二分割コアを収容する空間を有する第二本体部を有する第二筐体と、
をさらに備え、
前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで、前記第一分割コアと前記第二分割コアと前記コイルとが互いに固定されている、請求項
3に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記第二筐体は、前記第二本体部から空間に向かって突出して前記第二分割コアを位置決めするリブをさらに有し、
前記リブは、
前記第二本体部から前記空間に向かって突出する基部と、
前記基部から前記第二分割コアに向かって延び、前記第二分割コアに対向する対向面を有して前記第二分割コアを位置決めする位置決め部と、
を有し、
前記リブの前記位置決め部は、前記位置決め部の前記対向面から延びるスリットを介して前記第二本体部から離れている、請求項
4に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第一筐体は、前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで前記第二筐体の前記第二本体部に当接するように前記空間内に嵌合わされるように構成された突起部を有する、請求項
4または
5に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第一本体部と前記第一分割コアとの間に設けられたクッションをさらに備えた、請求項
4から
6のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで、前記第一分割コアの接合面は前記第二分割コアの接合面に接合し、
前記第一分割コアの前記接合面の端は面取りされている、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項9】
前記第一分割コアの前記接合面の両端は面取りされている、請求項
8に記載の電流センサ。
【請求項10】
前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで、前記第一分割コアの接合面は前記第二分割コアの接合面に接合し、
前記第二分割コアの前記接合面の端は面取りされている、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項11】
前記第二分割コアの前記接合面の両端は面取りされている、請求項
10に記載の電流センサ。
【請求項12】
電気導体に流れる電流を検出する電流センサであって、
前記電気導体が貫通する中空部を有するコアと、
前記コアに巻き付けられたコイルと、
を備えた電流センサであって、
前記コアは前記中空部につながる隙間が部分的に形成されたC字形状を実質的に有し、
前記コアの前記隙間の少なくとも一部は前記コイル内に位置し、
前記コアは、互いに接合された複数の分割コアを有し、
前記電流センサは、
前記複数の分割コアのうちの第一分割コアを収容する空間を有する第一本体部を有する第一筐体と、
前記複数の分割コアのうちの第二分割コアを収容する空間を有する第二本体部を有する第二筐体と、
をさらに備え、
前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで、前記第一分割コアと前記第二分割コアと前記コイルとが互いに固定されており、
前記第二筐体は、前記第二本体部から空間に向かって突出して前記第二分割コアを位置決めするリブをさらに有し、
前記リブは、
前記第二本体部から前記空間に向かって突出する基部と、
前記基部から前記第二分割コアに向かって延び、前記第二分割コアに対向する対向面を有して前記第二分割コアを位置決めする位置決め部と、
を有し、
前記リブの前記位置決め部は、前記位置決め部の前記対向面から延びるスリットを介して前記第二本体部から離れている、電流センサ。
【請求項13】
前記コアは前記隙間を介して互いに対向する一対の端面を有し、
前記コアの前記一対の端面は前記コイル内に位置する、請求項
12に記載の電流センサ。
【請求項14】
前記コイルが巻きつけられて前記コアの前記隙間を囲む非磁性体よりなるボビンをさらに備えた、請求項
12に記載の電流センサ。
【請求項15】
前記第一筐体は、前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで前記第二筐体の前記第二本体部に当接するように前記空間内に嵌合わされるように構成された突起部を有する、請求項
12に記載の電流センサ。
【請求項16】
前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで、前記第一分割コアの接合面は前記第二分割コアの接合面に接合し、
前記第一分割コアの前記接合面の端は面取りされている、請求項
12に記載の電流センサ。
【請求項17】
前記第一分割コアの前記接合面の両端は面取りされている、請求項
16に記載の電流センサ。
【請求項18】
前記第一筐体が前記第二筐体と一体化されることで、前記第一分割コアの接合面は前記第二分割コアの接合面に接合し、
前記第二分割コアの前記接合面の端は面取りされている、請求項
12に記載の電流センサ。
【請求項19】
前記第二分割コアの前記接合面の両端は面取りされている、請求項
18に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、一部にコイルが巻かれた環状のコアを貫通するように電気導体を配置した従来の電流センサを開示している。この電流センサにおいては、環状のコア内に電気導体を配置しやすくするために、環状のコアが分割されている。組立時においては、分割されたコアにまず電気導体が配置され、その後、コアが組み立てられることで、環状のコア内に電気導体が貫通するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
電流センサは、電気導体に流れる電流を検出する。この電流センサは、電気導体が貫通する中空部を有するコアと、コアに巻き付けられたコイルとを備える。コアは中空部につながる隙間が部分的に形成されたC字形状を実質的に有する。コアは隙間を介して互いに対向しかつ互いに反対の方向を向く第1の端面と第2の端面とを有する。コアのC字形状は、中空空間を囲むように第1の端面から第2の端面まで連続して延びている。コアの隙間の少なくとも一部はコイル内に位置する。
他の電流センサは、電気導体が貫通する中空部を有するコアと、コアに巻き付けられたコイルと、を備える。コアは中空部につながる隙間が部分的に形成されたC字形状を実質的に有する。コアの隙間の少なくとも一部はコイル内に位置する。コアは、互いに接合された複数の分割コアを有する。この電流センサは、複数の分割コアのうちの第一分割コアを収容する空間を有する第一本体部を有する第一筐体と、複数の分割コアのうちの第二分割コアを収容する空間を有する第二本体部を有する第二筐体とをさらに備える。第一筐体が第二筐体と一体化されることで、第一分割コアと第二分割コアとコイルとが互いに固定されている。第二筐体は、第二本体部から空間に向かって突出して第二分割コアを位置決めするリブをさらに有する。リブは、第二本体部から空間に向かって突出する基部と、基部から第二分割コアに向かって延び、第二分割コアに対向する対向面を有して第二分割コアを位置決めする位置決め部とを有する。リブの位置決め部は、位置決め部の対向面から延びるスリットを介して第二本体部から離れている。
【0005】
この電流センサは、外部ノイズの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る電流センサの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る電流センサの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す電流センサの線III-IIIにおける断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る電流センサのセンサユニットの斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るセンサユニットの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るセンサユニットの平面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係るコアの材料であるフェライトのBH曲線を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係るコアと、比較例のコアとの出力波形を比較した説明図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る電流センサのコアの隙間と出力の関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施の形態に係るコアにおける電流と出力を表すグラフである。
【
図12】
図12は、実施の形態に係るさらに他のコアの平面図である。
【
図13】
図13は、実施の形態に係るさらに他のコアの平面図である。
【
図14C】
図14Cは、実施の形態に係るコアの電気導体の影響を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施の形態に係る電流センサのコアと
出力とを示す説明図である。
【
図16】
図16は、実施の形態に係る電流センサのコアと出力とを示す説明図である。
【
図17】
図17は、実施の形態に係る電流センサのコアと出力とを示す説明図である。
【
図18】
図18は、実施の形態に係る他の電流センサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本開示の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0008】
[実施の形態]
[電流センサの構造]
図1は、実施の形態に係る電流センサ10の概略構成を示す斜視図である。
図2は電流センサ10の分解斜視図である。
図3は、
図1に示す電流センサ10の線III-IIIにおける断面図である。
図1では、検出対象であるワイヤ状の電気導体Wを破線で示している。なお、以降の説明においては、X軸方向を幅方向Xと称し、Y軸方向を厚み方向Yと称し、Z軸方向を上下方向Zと称する場合がある。
【0009】
電流センサ10は、電気導体Wを流れる交流電流を検出するCurrent Transformer(CT)方式の電流センサである。電流センサ10は、筐体20と、筐体20に収容されたセンサユニット30とを備えている。
【0010】
筐体20は、例えば非磁性体の樹脂により、全体として略直方体状に形成されている。筐体20は、厚み(Y軸方向での長さ)が全体として一定である。筐体20は、筐体21、22にZ軸方向で二分割されており、Z軸のマイナス側の方向の部位が筐体21であり、Z軸のプラス側の方向部位が筐体22である。
【0011】
筐体21は、Z軸のプラス側の方向が開放された空間21sを有する箱形状を有する本体部211と、筐体22に係止される一対の係止部212とを備えている。本体部211は、Y軸方向で互いに対向する一対の下壁部213と、X軸方向で互いに対向する一対の下壁部214と、底板部219とを有する。下壁部213、214は互いに繋がっており底板部219からZ軸のプラス側に延びる。下壁部213、214と底板部219とは空間21sを囲む。また、筐体21の内部には、下壁部213と平行な一対の内壁部215が設けられている。一対の内壁部215は、Y軸方向で所定の間隔をあけて配置されている。一対の内壁部215の間には、センサユニット30の一部が嵌め込まれ、固定される。また、一対の下壁部213には、半円弧形状を有する切欠き部213aが形成されている、一対の内壁部215には、半円弧状の切欠き部215aが形成されている。
【0012】
一対の係止部212は、一対の下壁部214の外側面からZ軸のプラス側の方向に延在する。一対の係止部212は、略U字形状を有する。一対の係止部212のそれぞれは、筐体22の複数の係合突起228a、228bに係合することで、筐体21と筐体22とを一体化して互いに固定する。
【0013】
筐体22は、Z軸のマイナス側の方向が開放された空間22sを有する箱形状を有する。筐体22は、Y軸方向で互いに対向する一対の上壁部223と、X軸方向で互いに対向する一対の上壁部224と、底板部229とを有する。上壁部223、224は互いに繋がっており底板部229からZ軸のマイナス側に延びる。上壁部223、224と底板部229とは空間22sを囲む。
【0014】
一対の上壁部223のそれぞれには半円弧状の切欠き部223aが形成されている。切欠き部223aは、筐体21と筐体22とが組み立てられた状態では、筐体21の切欠き部213aとともに
図1に示す貫通孔20hを形成する。貫通孔20h内に電気導体Wが挿通される。この状態では、筐体21の一対の内壁部215の切欠き部215a内にも電気導体Wが収容される。切欠き部213a、215a、223aは、電気導体Wを支持する支持部としても機能する。
【0015】
一対の上壁部224の内面には、センサユニット30をY軸方向で挟む一対の突起224aがそれぞれ形成されている。
図3では、一対の突起224aのうち、Y軸のプラス側の方向の突起224aのみを図示している。一対の突起224aはZ軸方向に延在している。一対の突起224aは、Y軸方向に互いに所定の間隔をあけて配置されている。一対の突起224aの間にはセンサユニット30の一部が嵌め込まれ、固定されている。
【0016】
また、一対の上壁部224の内面には、センサユニット30の上下方向の位置ずれを規制する規制凸部224bがそれぞれ設けられている。規制凸部224bは、一対の突起224aの間に配置されており、Z軸方向に延在している。規制凸部224bの下端面が、センサユニット30の上端面に当接することで、センサユニット30の上下方向Zの筐体20に対する位置ずれを規制する。
【0017】
一対の上壁部224のそれぞれの外側面には、三つの係合突起228a、228bが設けられている。三つの係合突起228a、228のうち、二つの係合突起228bは上壁部224の下端に設けられ、Y軸方向に互いに所定の間隔をあけて配置されている。二つの係合突起228bは、筐体21の係止部212をY軸方向で挟持する。一方、残りの一つの係合突起228aは、二つの係合突起228bのY軸方向の中央付近の上方に配置されている。係合突起228aは、筐体21の係止部212の上部を下方から支持する。三つの係合突起228a、228bがこのような状態で係止部212に係合することで、筐体21と筐体22との相対的な位置ずれを規制し、両者を一体化して互いに固定している。
【0018】
次に、センサユニット30について説明する。
図4は、実施の形態に係るセンサユニット30の概略構成を示す斜視図である。
図5は、実施の形態に係るセンサユニット30の分解斜視図である。
図6は、実施の形態に係るセンサユニット30の平面図である。
【0019】
図4から
図6に示すように、センサユニット30は、コア40と、ボビン50と、コイル60とを備えている。
【0020】
コア40は、例えばフェライトなどの磁性体によりなり、中空部40hと、中空部40hに繋がる隙間Sとを有するC字形状を実質的に有する。具体的には、コア40は、平面視で矩形枠形状を有する。隙間Sは、矩形枠形状の上枠部の中央に設けられている。コア40の外側の四隅の断面は、先端が尖った角部であり、内側の四隅の断面は円弧形状の角部である。なお、外側の四隅の断面は円弧形状を有していてもよいし、内側の四隅の断面が先端の尖った角部であってもよい。また、コア40の外形は、矩形枠形状でなくとも、その他の多角枠形状、円形枠形状、長円枠形状、楕円枠形状等の他の枠形状を有していてもよい。
【0021】
コア40は、互いに接合された複数の分割コア41、42、43よりなる。具体的には、分割コア41は、コア40の下部をなし、分割コア42、43はコア40の上部をなす。
【0022】
分割コア41は、上方が開放された略U字形状を有する。分割コア41の一対の先端面は、上方を向いた姿勢に形成されており、他の分割コア42、43と接合される接合面411、412である。一対の接合面411、412は、X軸とY軸とを含むXY平面に平行な平面である。接合面411は、X軸のマイナス側の方向に配置されており、接合面412は、X軸のプラス側の方向に配置されている。
【0023】
分割コア42は、略L字形状を有する。分割コア42の一端面は、分割コア41の接合面411に接合される接合面421である。分割コア42の接合面421は、XY面に平行な平面である。分割コア42の他端面422が、X軸のプラス側の方向を向く姿勢で、分割コア41の接合面411に接合されている。分割コア42の他端面422は、Y軸とZ軸とを含むYZ平面に平行な平面である。
【0024】
分割コア43は、略L字形状を有する。分割コア43は、分割コア42と同じ部材である。分割コア43の一端面は、分割コア41の接合面412に接合される接合面431である。分割コア43の接合面431は、XY面に平行な平面である。分割コア43の他端面432が、X軸のマイナス側の方向を向く姿勢で、分割コア41の接合面412に接合されている。分割コア43の他端面432は、YZ平面に平行な平面である。
【0025】
複数の分割コア41、42、43のうちの互いに隣接するそれぞれの対の分割コアは対向方向DXに平行な接合面をそれぞれ有する。詳細には、分割コア42の他端面422は、分割コア43の他端面432とX軸と平行な対向方向DXで対向している。コア40において分割コア42の他端面422と分割コア43の他端面432との間には隙間Sが形成されている。すなわち、コア42の他端面422は隙間Sを介して分割コア43の他端面432と対向方向DXで対向する。隙間Sの対向方向DXの間隔LX(X軸方向の長さ)は、電流センサ10の組立前に調整しておくことで、所望の感度特性を実現することが可能である。上述したように、分割コア41の接合面411と、分割コア42の接合面412の双方は、XY平面に平行な平面である。このため、分割コア41、42の接合面411、421同士をスライドさせて、分割コア42を移動することで分割コア42の他端面422の位置をX軸の方向に沿って調整する、つまり、隙間Sの間隔LXを調整することができる。これは、分割コア41の接合面412と、分割コア43の接合面431との関係においても同様である。本実施の形態では、一対の分割コア42、43の外側面が、分割コア41の外側面と面一となった状態で隙間Sの間隔LXが、所望の感度特性を実現する。なお、所望の感度特性を実現するためには、隙間S内に導電性の部材を配置しないことが望ましい。
【0026】
分割されたコアよりなる環状のコアには、組立により境界部分が生じている。この境界部分には、僅かなギャップがあるために、当該境界部分が電流検出に影響を与え、感度が低下することがある。
【0027】
実施の形態における電流センサ10では、前述のように、所望の感度特性を実現することが可能である。
【0028】
実施の形態では、分割コア41の接合面411と、分割コア42の接合面421の双方がXY平面に平行な平面である。しかしながら、分割コア41の接合面411と、分割コア42の接合面421の双方は、X軸の方向に平行に延設されつつ、Y軸の方向に対して傾斜していてもよい。この場合においても、分割コア41、42の接合面411、421同士をスライドさせて、分割コア42を移動させれば当該分割コア42の他端面422の位置をX軸方向に沿って調整することができる。分割コア41の接合面411と、分割コア42の接合面421の双方は、相互に面接触する限り湾曲面であってもよい。
【0029】
ボビン50は、樹脂等の非磁性体からなる。具体的には、ボビン50は、角筒状のボビン本体51と、ボビン本体51のX軸の方向の両端部から張り出した一対の鍔部52とを備えている。一対の鍔部52は、ボビン本体51の上記両端部からX軸に直角の方向の全周にわたって張り出している。ボビン本体51は、X軸の方向に延びる。ボビン本体51の外周には、X軸の方向に延びる巻回軸60cを中心にコイル60がボビン本体51に巻きつけられている。巻きつけられたコイル60は、一対の鍔部52の間に収容されている。ボビン50すなわちボビン本体51には、巻線軸60cに沿って一対の内部空間50sが設けられている。
【0030】
図3に示すように、ボビン本体51の内部の中央には、ボビン本体51の一対の内部空間50sを互いに遮断する内底部5
11が設けられている。ボビン本体51の一対の内部空間50sが開口する一対の開口50pには、分割コア42の端面422を含む端部と分割コア43の端面432を含む端部とが内底部5
11に付き当てられた状態でボビン本体部51に当接するようにそれぞれ嵌め込まれる。つまり、ボビン50は、コア40の一対の他端面422、432を係止し、かつ隙間Sを囲むように設けられている。これにより、分割コア42の他端面422と分割コア43の他端面432との間の隙間Sが内底部5
11によって規定される。内底部5
11における厚み(X軸方向の長さ)は、隙間Sの間隔LXに対応した値となっている。つまり、所望の感度特性を実現できる間隔LXとなるように、内底部5
11の厚みを予め調整する。
【0031】
コイル60は、導電性の配線であり、ボビン本体51に対して、多重に巻きつけられている。前述したように、ボビン本体51の一対の内部空間50s内には分割コア42の端部と分割コア43の端部とがそれぞれ圧入されて嵌め込まれているので、コア40の一対の他端面422、432は、コイル60の内方に配置されている。
【0032】
電流センサ10の動作を以下に説明する。電気導体Wに流れる交流電流によってコア40内に磁束が発生すると、コイル60には、当該磁束を打ち消すように交流電流が流れる。コイル60の両端部には、計測装置が接続されており、計測装置が、コイル60を流れる交流電流に基づいて、電気導体Wを流れる交流電流を検出し計測することができる。
【0033】
[電流センサの組立方法]
次に、電流センサ10の組立方法について説明する。電流センサ10の組立は、作業者または組立装置で行うことができるが、ここでは作業者が組み立てる場合について説明する。
【0034】
まず作業者は、ボビン本体51に所定の巻き数だけコイル60が巻き付けられたボビン50を準備する。作業者は、ボビン本体51の一対の開口50pに分割コア42の端部と分割コア43の端部とをそれぞれ嵌め込む。この際、作業者は、分割コア42の端面422及び分割コア43の端面432を内底部511に突き当てる。これにより、他端面422、432が間隔LXの隙間Sをあけて互いに対向する。
【0035】
その後、作業者は、筐体22に、一対の分割コア42、43及びボビン50を組み付ける。具体的には、作業者は、一体化された一対の分割コア42、43及びボビン50を、筐体22の下方から一対の突起224aの間に嵌め込む。このとき、作業者は、一対の分割コア42、43の上端面が、筐体22の規制凸部224bに当接するまで、一対の分割コア42、43及びボビン50を、筐体22に対してスライドさせる。これにより、一対の分割コア42、43及びボビン50が筐体22内で固定される。分割コア42、43はボビン50の内底部511に付き当たるように、かつボビン本体51に当接するように空間50sに圧入されて嵌め込まれてボビン50に強固に固定されている。したがって、筐体22に対してボビン50と分割コア42、43を容易に固定することができる。
【0036】
一方、作業者は、筐体21に分割コア41を組み付ける。具体的には、作業者は、分割コア41を、筐体21の上方から一対の内壁部215の間に嵌め込む。このとき、作業者は、分割コア41の下端面が、筐体21の内底面に当接するまで、分割コア41を、筐体21に対してスライドさせる。これにより、分割コア41が筐体21内で固定される。
【0037】
次いで、作業者は、筐体21と分割コア41に電気導体Wを組み付ける。具体的には、作業者は、電気導体Wを筐体21の切欠き部213a、215a内に収容する。これにより、電気導体Wは、切欠き部213a、215aによって支持されて、分割コア41の開放端部側に配置された状態となる。
【0038】
次いで、作業者は、電気導体Wを支持した状態の筐体21に筐体22を組み付ける。組み付け時においては、作業者は、筐体22の各上壁部224に備わる複数の係合突起228a、228bに、筐体21の係止部212を係合させる。これにより、筐体21と筐体22とが一体化される。筐体21と筐体22との内部では、分割コア41の接合面411に分割コア42の接合面421が接合され、分割コア41の接合面412に分割コア43の接合面431が接合されている。これにより、電流センサ10の組立が完了する。
【0039】
電流センサ10では、落下や運搬等の機械的な衝撃が加わって筐体21、22が互いに相対的に位置ずれすると、接着されておらずに互いに当接している分割コア41の接合面411、412と分割コア42、43の接合面421、431で分割コア41、42、43が割れて欠ける場合がある。電流センサ10では、前述のように三つの係合突起228a、228bが係止部212に係合することで、筐体21と筐体22との相対的な位置ずれを規制し、両者を一体化して互いに固定し、結果として分割コア41、42、43の相対的な変位を防止して分割コア41、42、43が欠けることを防止する。
【0040】
なお、本実施の形態では、接合面を接着せずに単に当接させていることで接合面が接合されているが、磁性を有する接着剤で接合面同士を接着してもよいし、接合面同士を溶着してもよい。接着後あるいは溶着後であっても、接着痕あるいは溶着痕を解析することで、接着前あるいは溶着前の接合面同士を特定することが可能である。なお、接合面同士を単に当接させている場合であれば、分割コアの分離によりコアを容易に分解でき、例えばメンテナンス時の作業性を高めることができる。
【0041】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る電流センサ10は、電気導体Wが貫通されるコア40と、コア40の周囲に巻きつけられるように配置されたコイル60とを備える。コア40は、複数の分割コア41、42、43が接合されることで、一部に隙間Sを有するC字形状を有する。複数の分割コア41、42、43の一対の接合面411、412、421、431(具体的には、接合面411及び接合面421の対、接合面412及び接合面431の対)は、隙間Sをなすコア40の一対の端面である他端面422、432が対向する対向方向DXに平行である。
【0042】
本発明者は、鋭意検討を重ねて、複数の分割コア41、42、43の境界部分よりも極度に大きな隙間Sをコア40の一部に設けることで、境界部分を無視できることを見出した。
図7は、実施の形態に係るコア40の材料の一例であるフェライトのBH曲線を示すグラフである。
【0043】
ここで、隙間Sのない比較例のコアを準備する。比較例のコアは、隙間Sがない以外は、本実施の形態に係るコア40と同等の構成である。比較例のコアの磁束密度は455~465mTの範囲の値L21を有する。この範囲では、BHカーブが曲線的に変化しており、BH曲線の接線L22の傾きは小さい。このため、比較例のコアでは、磁束密度が0.5T程度で磁気飽和するおそれがある。
【0044】
一方、本実施の形態に係る隙間Sを有するコア40の磁束密度は、180~190mTの範囲の値L23となる。このため、コア40では、BH曲線が直線的であり大きな傾きを有する領域R1で磁束密度が変化する。これにより、コア40では磁気飽和の発生を抑制することができる。
【0045】
図8は、実施の形態に係るコア40の出力V40と、比較例のコアの出力V1とを比較した説明図である。なお、出力V40、V1の波形は、電気導体Wに正弦波の電流(振幅15A、周波数5kHz)を流したときの波形である。
図8に示すように、比較例のコアの出力では、波形のピークが大きく歪んでいる。これは磁気飽和が発生しているためである。一方、実施の形態に係るコア40の出力V40では、波形のピークに歪みが発生していない。つまり、実施の形態に係るコア40では、比較例のコアと比べて磁気飽和が抑制されていることが分かる。
【0046】
また、本実施の形態に係る電流センサ10では、コア40をなす複数の分割コア41、42、43の一対の接合面411、412、421、431が、コア40の隙間Sをなす一対の他端面422、432の対向方向DXに平行である。これにより、複数の分割コア41、42、43の一対の接合面411、412、421、431を互いにスライドさせることで、隙間Sの対向方向DXの間隔LXを調整することができる。
【0047】
図9は、実施の形態に係る電流センサ10のコア40の隙間Sと出力V40の関係を示すグラフである。
図9に示すように、隙間Sの間隔LXが大きくなると、感度は低下していく傾向ではあるが、ある程度の大きさの間隔以上になると感度の低下が飽和している。つまり、隙間Sの間隔LXを調整するだけで、複数の分割コア41、42、43の境界部分の微少な隙間に影響されることなく、所望の感度特性を実現できる。
【0048】
以上のことから、本実施の形態に係る電流センサ10は、コア40に境界部分があったとしても、所望の感度特性を実現することができる。
【0049】
また、同一種のコア40であっても、隙間Sの間隔LXを調整すれば多様な感度特性を得ることができるので、他の種類の電流センサでの部品を共通化することも可能である。
【0050】
隙間Sを調整したことによって、分割コア42及び分割コア43の少なくとも一方が分割コア41に対して段差を持ってずれて配置される場合がある。
図10Aと
図10Bは、実施の形態に係るコア40の分割コア42及び分割コア43の少なくとも一方が分割コア41に対して段差を持ってずれて配置された状態を示す説明図である。具体的には、
図10Aでは、分割コア42及び分割コア43の両者が、分割コア41に対して幅方向Xにずれている。また、
図10Bでは、分割コア42及び分割コア43の両者が、分割コア41に対して厚み方向Yにずれている。本発明者は、分割コア42及び分割コア43の両者が、分割コア41に対するずれているずれ量を変更して、それぞれの電流-出力線を求めた。
図11は、本実施の形態に係るコア40におけるずれ量のそれぞれでの電流-出力線を表す。ここでは、コア40にずれがない場合の出力V41と、分割コア42及び分割コア43の両者が分割コア41に対して幅方向Xに0.5mmずれた場合の出力V42と、1.0mmずれた場合の出力V43とを示す。
図11は、分割コア42及び分割コア43の両者が分割コア41に対して厚さ方向Yに0.5mmずれた場合の出力V44と、厚さ方向Yに1.0mmずれた場合の出力V45とをさらに示す。
図11に示すように、いずれの場合においても、電流-出力線は概ね同一となっている。つまり、隙間Sを調整したことによって、分割コア42及び分割コア43の少なくとも一方が、分割コア41に対して段差を持ってずれて配置されたとしても、電流センサ10の感度特性に影響を及ぼさない。
【0051】
なお、隙間Sの間隔LXは、コア40の各種のパラメータを基準として決定することも可能である。隙間Sの間隔LXを決める基準となるパラメータとしては、例えば、電気導体Wの巻き数、電気導体Wの断面積、コア40の形状、電気導体Wからコア40までの距離、コア40の材質などが挙げられる。フェライト以外のコア40の材質としては、Ni-Zn系、Mn-Zn系、鉄系等が挙げられる。
【0052】
また、複数の分割コア41、42、43の数は3以上であり、各対の分割コアにおける一対の接合面411、412、421、431は、対向方向DXに平行である。
【0053】
複数の分割コア41、42、43の数が3以上であるので、組立時に、C字形状のコア40の内部を大きく開放することができる。このため、電気導体Wを、C字状のコア40内に容易に配置することができる。
【0054】
また、各対の分割コア(分割コア41及び分割コア42の対、分割コア41と分割コア43の対)における一対の接合面411、412、421、431が、対向方向DXに平行なので、いずれの対の分割コアにおいても、その一対の接合面411、412、421、431を互いにスライドさせれば、隙間Sの間隔LXを調整することができる。
【0055】
また、電流センサ10は、コイル60が巻き付けられる非磁性体のボビン50を有する。ボビン50は、コア40の一対の端面(他端面422、432)を係止し、かつ隙間Sを囲むように設けられている。
【0056】
これによれば、コイル60が巻きつけられた非磁性体のボビン50によって、コア40の一対の端面が係止されているので、調整後の隙間Sを安定して保持することができる。つまり、隙間Sの間隔LXを保持するための専用の部材が不要となり、部品点数の増加を抑制することができる。さらに、ボビン50は、非磁性体であるため、電流検出に対して影響も与えない。
【0057】
ここで、隙間Sを囲むように、コア40に対してコイル60を直接巻き付ける場合には、隙間Sがあるがゆえに巻き付け作業が困難となる。しかしながら、非磁性体のボビン50に対してコイル60を巻き付け、ボビン50によって隙間Sを囲むことにより、その作業性を高めることができる。
【0058】
また、電流センサ10は、複数の分割コア41、42、43のうち、一つの分割コア41を収容する筐体21と、複数の分割コア41、42、43のうち、他の1つ以上の分割コア42、43を収容する筐体22とを備える。筐体21と、筐体22とが一体化されることで、一つの分割コア41が、他の分割コア42、43と固定されている。
【0059】
これにより、筐体21及び筐体22内で複数の分割コア41、42、43が組立後に互いに位置ずれしにくくなる。したがって、コア40の隙間Sの間隔LXが長期的に安定化されるため、電流センサ10の感度特性を長期的に維持することができる。
【0060】
また、コア40は、複数の分割コア41、42、43が接合されることで形成されている。
【0061】
これにより、組立時においては、電気導体Wを囲むように複数の分割コア41、42、43を組み立ててコア40を形成することで、C字形状のコア40内に電気導体Wを貫通するように容易に配置することができる。
【0062】
[変形例]
なお、コアの構成は、上記実施の形態で説明された構成に限定されない。そこで、以下に、コアについての変形例を上記実施の形態との差分を中心に説明する。以降の説明では、上記実施の形態と同一部分については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0063】
(変形例1)
上記実施の形態では、電流センサ10は3つの分割コア41、42、43からなるコア40を備える。変形例1の電流センサは、二つの分割コア44、45からなるコア40Aを備える。
図12は、変形例1に係るコア40Aの平面図である。
図12は、
図6に対応する。
【0064】
図12に示すように、コア40Aは、二つの分割コア44、45から構成されている。分割コア44は、矩形枠形状のX軸のプラス側の方向の下部部分に隙間Saが設けられている。分割コア44の一対の先端面441、442のうち、一方の先端面441は、X軸のプラス側の方向を向き、他方の先端面442は、下方すなわちZ軸のマイナス側の方向を向いている。一方の先端面441はYZ平面に平行な平面である。他方の先端面442はXY平面に平行な平面である。一方の先端面441は、他方の分割コア45と接合される接合面である。
【0065】
分割コア45は、略L字形状を有する。分割コア45の一端面451は、分割コア44の先端面441に接合される接合面である。分割コア45の一端面451は、YZ面に平行な平面である。分割コア45の他端面452が上方を向く姿勢で、分割コア44の先端面441に接合されている。分割コア45の他端面452は、XY平面に平行な平面である。
【0066】
分割コア44の先端面442と、分割コア45の他端面452との間には隙間Saが形成されている。隙間Saをなす一対の端面(先端面442、他端面452)とは隙間Saを介してZ軸の対向方向DZで互いに対向する。隙間Saの間隔LZ(Z軸方向の長さ)は、組立前に調整しておくことで、所望の感度特性を実現することが可能である。上述したように、分割コア44の先端面441と、分割コア45の一端面451の双方は、YZ平面に平行な平面である。このため、分割コア44、45の接合面(先端面441、一端面451)を互いにスライドさせて、分割コア45を移動することで分割コア45の他端面452の位置をZ軸の方向に沿って調整することができ、隙間Saの間隔LZを調整することができる。
【0067】
また、変形例1に係るコア40Aでは、分割コア44の上部の周囲にコイル60が巻き付けられている。コイル60は、分割コア44の上部に直接的に巻き付けられていてもよいし、分割コア44の上部にボビンを介して間接的に巻き付けられていてもよい。
【0068】
(変形例2)
上記実施の形態では、電流センサ10は隙間Sが枠形状の上枠部の中央に設けられたコア40を備える。変形例2における電流センサは、隙間Sbが枠形状の下枠部の中央に設けられたコア40Bを備える。
図13は、変形例2に係るコア40Bの平面図である。
図13は、
図6に対応する。
【0069】
コア40Bは、平面視で矩形枠形状の下枠部の中央に位置する隙間Sbを有するC字形状を有する。具体的には、コア40Bは、コア40を上下で反転させた構造であり、コア40と同等の構造体である。また、変形例2に係るコア40Bでは、分割コア41の上部の周囲にコイル60が巻き付けられている。コイル60は、分割コア41の上部に直接的に巻き付けられていてもよいし、分割コア41の上部にボビンを介して間接的に巻き付けられていてもよい。
【0070】
[コイルの位置]
電流センサ10において、電気導体Wとは異なる他の電気導体がコア40の外方に存在する場合がある。他の電気導体が存在することにより、電気導体Wに対する電流検出の正確性が低下するおそれがある。しかし、コア40に対してコイル60を適切な位置に配置することで、他の電気導体の影響を抑制し、電気導体Wに対する電流検出の正確性を高めることが可能である。
【0071】
図14Aは、変形例1のコア40Aに対する他の電気導体W2、W3、W4、W5の影響を示す説明図である。
図14Bは、変形例2のコア40Bに対する他の電気導体W2、W3、W4、W5の影響を示す説明図である。
図14Cは、実施の形態に係るコア40に対する他の電気導体W2、W3、W4、W5の影響を示す説明図である。
図14Aから
図14Cに示すように、他の電気導体W2は、コア40、40A、40Bの上方に配置されている。他の電気導体W3は、コア40、40A、40BのX軸のプラス側の方向に配置されている。他の電気導体W4は、コア40、40A、40Bの下方に配置されている。他の電気導体W5は、コア40、40A、40BのX軸のマイナス側の方向に配置されている。
【0072】
図14Aから
図14Cに示す各グラフでは、隙間S、Sa、Sbを0~3mmで変動させた場合の、他の電気導体W2~W5が、電気導体Wを流れる電流の検出に及ぼす影響を示している。なお、変形例2及び実施の形態では、他の電気導体W5の影響は、他の電気導体W3と同等なので省略している。センサ出力が-20dBよりも大きくなっているものは、他の電気導体の影響が顕著に現れていることを示している。
【0073】
変形例1では、他の電気導体W5以外の電気導体W2~W4が、-20dBよりも大きくなっており、電気導体Wの電流の検出に影響が生じていることがわかる。変形例2では、他の電気導体W3以外の電気導体W2、W4が、-20dBよりも大きくなっており、電気導体Wの電流の検出に影響が生じていることがわかる。これらの影響は、隙間Sa、Sbに対して外部の電気導体W2~W5からの磁束が侵入することに起因すると推測される。
【0074】
一方、実施の形態では、他の電気導体W2~W4の全てで、出力は-20dB以下であり、変動も小さいことがわかる。これは、コア40の隙間Sを囲む位置にコイル60が巻き付けられているので、外部の電気導体W2~W5から隙間Sに向かう磁束を、コイル60が遮ることとなり、当該磁束の影響を抑制することができる。つまり、実施の形態に係るコア40は、他の電気導体W2~W5からの影響を抑制するうえで好ましい。
【0075】
次に、変形例1、2及び実施の形態に係るコア40、40A、40Bのそれぞれに対して、異なる位置にコイル60を配置した場合の、他の電気導体W2、W3、W4、W5の影響について検証する。
【0076】
図15から
図17は、各検証ケースのコア40、40A、40Bの状況と、各検証ケースのセンサの出力とを示す説明図である。各検証ケースのセンサの出力では、他の電気導体W2~W4が、電気導体Wに流れる電流の検出に及ぼす影響を示している。センサの出力を示すグラフでは、出力が小さいほど(棒グラフが長いほど)、電気導体Wの電流の検出に及ぼす影響が小さいことを示している。
【0077】
図15に示すように、ケースAでは、変形例2に係るコア40Bの上部にコイル60が巻き付けられている。ケースBでは、実施の形態に係るコア40の上部にコイル60が巻き付けられている。ケースCでは、変形例1に係るコア40Aの上部にコイル60が巻き付けられている。つまり、ケースA、Cでは隙間Sa、Sbが全体的にコイル60から露出しているが、ケースBでは隙間Sがコイル60によって全体的に覆われている。
【0078】
図15に示すように、ケースBは、ケースA、Cよりも、他の電気導体W2、W3、W4のいずれの影響が小さいことがわかる。
【0079】
図16に示すように、ケースDでは、変形例2に係るコア40Bの下部にコイル60が巻き付けられている。ケースEでは、実施の形態に係るコア40の下部にコイル60が巻き付けられている。ケースFでは、変形例1に係るコア40Aの下部にコイル60が巻き付けられている。つまり、ケースE、Fでは隙間S、Sbが全体的にコイル60から露出しているが、ケースDでは隙間Saがコイル60によって全体的に覆われている。
【0080】
図16に示すように、ケースDは、ケースEと比較すると他の電気導体W3の影響が大きいものの、その他の電気導体W2、W4の影響は小さい。また、ケースDは、ケースFに対しては、全ての他の電気導体W2、W3、W4の影響が小さいことがわかる。ケースDは、総合的に見るとケースE、Fよりも他の電気導体W2、W3、W4の影響が小さいと言える。
【0081】
図17に示すように、ケースGでは、変形例2に係るコア40BのX軸のプラス側の中央部分にコイル60が巻き付けられている。ケースHでは、実施の形態に係るコア40のX軸のプラス側の中央部分にコイル60が巻き付けられている。ケースIでは、変形例1に係るコア40AのX軸のプラス側の中央部分にコイル60が巻き付けられている。つまり、ケースG、Hでは隙間S、Saが全体的にコイル60から露出しているが、ケースIでは隙間Sbがコイル60によって全体的に覆われている。
【0082】
図17に示すように、ケースIは、ケースG、Hよりも、他の電気導体W2、W3、W4のいずれの影響が小さいことがわかる。
【0083】
実施の形態に係るコア40に関するケースB、E、Hに着目する。隙間Sがコイル60によって囲まれたケースBは、ケースEと比較すると他の電気導体W3の影響が大きいものの、その他の電気導体W2、W4の影響は小さい。また、ケースBは、ケースHに比較して、全ての他の電気導体W2、W3、W4の影響が小さいことがわかる。ケースBは、総合的に見るとケースE、Hよりも他の電気導体W2、W3、W4の影響が小さいと言える。
【0084】
変形例1に係るコア40Aに関するケースA、D、Gに着目する。隙間Saがコイル60によって囲まれたケースDは、ケースA、Gよりも、他の電気導体W2、W3、W4のいずれの影響が小さいことがわかる。
【0085】
また、変形例2に係るコア40Bに関するケースC、F、Iに着目する。隙間Sbがコイル60によって囲まれたケースIは、ケースCと比較すると他の電気導体W3の影響が大きいものの、その他の電気導体W2、W4の影響は小さい。また、ケースIは、ケースFに比較して、全ての他の電気導体W2、W3、W4の影響が小さいことがわかる。ケースIは、総合的に見るとケースC、Fよりも他の電気導体W2、W3、W4の影響が小さいと言える。
【0086】
このように、電流センサ10は、電気導体Wが貫通されるコア40(40A、40B)と、コア40(40A、40B)の周囲に巻きつけられるように配置されたコイル60とを備える。コア40(40A、40B)は、一部に隙間S、Sa、Sbを有するC字形状を有する。コイル60は、隙間S(Sa、Sb)を囲む位置に巻き付けられている。
【0087】
コア40(40A、40B)の隙間S(Sa、Sb)を囲む位置にコイル60が巻き付けられているので、外部の電気導体W2~W5から隙間S(Sa、Sb)に向かう磁束をコイル60が遮ることとなり、当該磁束の影響すなわち外部ノイズの影響を抑制することができる。
【0088】
また、隙間S(Sa、Sb)をなすコア40(40A、40B)の一対の端面(他端面422、432、先端面442、他端面452)は、コイル60内に配置されている。
【0089】
これにより、隙間S(Sa、Sb)の両端部がコイル60によって覆われることとなる。これにより、外部の電気導体W2~W5から隙間S(Sa、Sb)に向かう磁束を、コイル60がより確実に遮ることとなる。したがって、外部の電気導体W2~W5からの磁束の影響をより確実に抑制することができる。
【0090】
[他の実施の形態]
図18は、実施の形態に係る他の電流センサ510の斜視図である。
図19は、
図18に示す電流センサ510の線XIX-XIXにおける断面図である。
図20は、
図18に示す電流センサ510の線XX-XXにおける断面図である。
図18から
図20において、
図1から
図5に示す電流センサ10と実質的に同じ部分には同じ参照番号を付す。電流センサ510は、筐体520と、筐体520に収容されたセンサユニット530とを備える。
【0091】
図21は筐体520の斜視図である。
図21において、
図1と
図2に示す電流センサ10の筐体と実質的に同じ部分には同じ参照番号を付す。筐体520は、筐体520は、Z軸方向で二分割された筐体21、22と、筐体21を筐体22に繋ぐヒンジ551とを有する。詳細には、ヒンジ551は筐体21の本体部211の一対の下壁部214の一方を筐体22の本体部221の一対の上壁部224の一方に繋ぐ。
【0092】
筐体21は、Z軸のプラス側の方向が開放された空間21sを有する箱形状を有する本体部211と、筐体22に係止される係止部212とを備えている。係止部212はヒンジ551の反対側に位置する。詳細には、係止部212は、筐体21の本体部211の一対の下壁部214の他方に設けられている。内壁部215の間には、センサユニット530の一部である分割コア41が嵌め込まれ、固定される。
【0093】
筐体22は、Z軸のマイナス側の方向が開放された空間22sを有する箱形状を有する。筐体22は、Y軸方向で互いに対向する一対の上壁部223と、X軸方向で互いに対向する一対の上壁部224と、底板部229とを有する。上壁部223、224は互いに繋がっており底板部229からZ軸のマイナス側に延びる。上壁部223、224と底板部229とは空間22sを囲む。
【0094】
筐体22の一対の上壁部224の他方の外側面には係合突起228aが設けられている。
【0095】
筐体21の係止部212は、下壁部214の外側面からZ軸のプラス側の方向に延在する。係止部212は、略U字形状を有する。ヒンジ551を中心に筐体21を筐体22に対して相対的に回転させることにより係止部212は筐体22の係合突起228aに係合し、筐体21と筐体22とを一体化して互いに固定する。
【0096】
図3に示す電流センサ10では、分割コア42、43はボビン50の内底部5
11に付き当たるように、かつボビン本体51の空間50sに圧入されてボビン50に強固に固定されている。電流センサ510では、
図19に示すように、分割コア42、43は内底部5
11に突き当たっているものの、ボビン本体51から隙間50tを空けて空間50s内に収容されている。このように、筐体22に収容する前では分割コア42、43はボビン50に固定されていないが、センサユニット530の形状を維持するために分割コア42と分割コア43とボビン50とのそれぞれが筐体22に位置決めされて強固に固定される。
【0097】
図18から
図20に示すように、
電流センサ510では、筐体22の開口においてボビン50を覆う内蓋531が設けられている。内蓋531は筐体22内に導電性または磁性を有する異物が入ることを防止し、コイル60を保護してかつ電流センサ
510の検出精度が影響されることを防止できる。
【0098】
電流センサ510では、
図19と
図21に示すように、筐体22は、本体部221から空間22sに向かって突出して分割コア41(42)を位置決めするリブ610を有する。リブ610により分割コア41、42が筐体22とボビン50に対して位置決めされる。電流センサ510の組み立てでは、ボビン50と、ボビン50の空間50sに挿入された分割コア41、42とを筐体22圧入するように挿入することで分割コア42と分割コア43とボビン50とのそれぞれが筐体22に位置決めされて強固に固定される。その挿入の際に、分割コア41、42が筐体22を削って削りくずが発生し、リブ610の対向面612aと分割コア41(42)との間に挟まれるおそれがある。削りくずが発生リブ610の対向面612aと分割コア41(42)との間に挟まれると、リブ610に対する分割コア41、(42)の位置がずれてコア40の形状を維持できない、もしくは筐体21の係止部212が筐体22の係合突起228aに届かずに係合できくなる懸念がある。
【0099】
電流センサ510では、上記懸念を払拭するために、リブ610は、本体部221から空間22sに向かって突出する基部611と、基部611から分割コア41(42)に向かって延びる位置決め部612とを有する。位置決め部612は、分割コア41(42)に対向して当接する対向面612aを有する。位置決め部612は、対向面612aから延びるスリット613を介して本体部221から離れている。この構成により、分割コア41、42を筐体22に挿入する際に発生する削りくずがスリット613を通って移動するので、リブ610の対向面612aと分割コア41(42)との間に残ることを防止する。
【0100】
電流センサ510では、筐体21は、筐体21が筐体22と一体化されることで筐体22の本体部221に当接するように空間22s内に嵌合わされるように構成された突起部230a、230bを有する。突起部230aは筐体21のヒンジ部551が設けられておらずヒンジ部551の反対側の下壁部214から突出する。突起部230bは筐体21の底板部219から延びている。突起部230a、230bは、筐体21が筐体22と一体化されることで筐体22の本体部221の特に上壁部223に当接する。これにより、筐体21、22の相対的な互いの変位、特にヒンジ551を中心として筐体21、22が相対的な互いに反対方向に回転することを防止できる。この構成により、電流センサ10と同様、落下や運搬等の機械的な衝撃が加わっても筐体21、22を一体化して互いに固定し、結果として分割コア41、42、43の相対的な変位を防止し、分割コア41、42、43が欠けることを防止する。
【0101】
図22は、
図19に示す電流センサ510の拡大断面図である。電流センサ510は、筐体21の本体部211と分割コア41との間に設けられたクッション541をさらに備えることが好ましい。クッション541は本体部211の特に下壁部214と分割コア41との間で下壁部214と分割コア41とに当接する。これにより、分割コア41を筐体21に対して確実に位置決めして筐体21に固定することができ、分割コア41、42、43の割れを防止する。
【0102】
図23は、電流センサ510の他のセンサユニット530の斜視図である。
図23において
図4に示すセンサユニット30と実質的に同じ部分には同じ参照番号を付す。筐体21が筐体22と一体化されることで、分割コア41の接合面411は分割コア42の接合面421に接合し、分割コア41の接合面412は分割コア43の接合面431に接合する。分割コア41の接合面411のY軸の方向の両端411aは面取りされている。両端411aのうちの一方は面取りされていなくてもよい。分割コア41の接合面412のY軸の方向の両端412aは面取りされている。両端412aのうちの一方は面取りされていなくてもよい。これにより、落下や運搬等の機械的な衝撃が加わっても、分割コア41、42、43の角が互いに直接接触することを回避し、分割コア41、42、43が欠けることを防止する。
【0103】
図24は、電流センサ510のさらに他のセンサユニット630の斜視図である。
図24において
図23に示すセンサユニット530と実質的に同じ部分には同じ参照番号を付す。分割コア42の接合面421のY軸の方向の両端421aは面取りされている。両端421aのうちの一方は面取りされていなくてもよい。分割コア43の接合面431のY軸の方向の両端431aは面取りされている。両端431aのうちの一方は面取りされていなくてもよい。これにより、落下や運搬等の機械的な衝撃が加わっても、分割コア41、42、43の角が互いに直接接触することを回避し、分割コア41、42、43が欠けることを防止する。
【0104】
[その他]
以上、本開示に係る電流センサについて、上記実施の形態及び各変形例に基づいて説明したが、本開示は、上記の実施の形態及び各変形例に限定されるものではない。
【0105】
上記実施の形態では、コアの分割数が二つあるいは三つである場合を例示したが、コアの分割数は四つ以上であってもよい。また、他の電気導体W2~W5からの影響を抑制する点のみを考慮する場合、つまり、隙間Sの間隔LXの調整を考慮しない場合であれば、コアは分割されていなくてもよい。
【0106】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び各変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
10 電流センサ
20 筐体
21 筐体(第一筐体)
22 筐体(第二筐体)
30 センサユニット
40,40A,40B コア
41,42,43,44,45 分割コア
50 ボビン
51 ボビン本体
52 鍔部
511 内底部
60 コイル
211 本体部
212 係止部
213 下壁部
213a,215a,223a 切欠き部
214 下壁部
215 内壁部
221 本体部
223 上壁部
224 上壁部
224a 突起
224b 規制凸部
228a,228b 係合突起
411,412,421,431 接合面
422,432,452 端面
441,442 先端面
451 一端面
510 電流センサ
520 筐体
530 センサユニット
630 センサユニット
W 電気導体