(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/36 20180101AFI20240712BHJP
【FI】
F24F11/36
(21)【出願番号】P 2020096657
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】広田 正宣
(72)【発明者】
【氏名】重田 明広
(72)【発明者】
【氏名】川端 立慈
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-035171(JP,A)
【文献】特開2019-060557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒配管を有する熱交換器と、前記熱交換器に空気を通過させる送風機と、冷媒を検知する冷媒漏洩センサと、ユーザに対して所定の情報を表示する表示部と、制御部とが設けられた室内機を備え、
前記室内機は、前記送風機によって吸い込まれる空気を吸い込む吸い込み口と、前記吸い込み口を覆うグリルと、前記グリルを開閉させる開閉機構とを備え、
前記制御部は、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記グリルを開放させる
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記室内機は、前記送風機によって送り出される空気を吹き出す吹き出し口と、前記吹き出し口から吹き出す空気の方向を制御するフラップとを備え、
前記制御部は、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したとき以前に行っていた動作とは異なる所定の動作を前記送風機とフラップとに実行させる
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、暖房運転または冷房運転を行っているときに、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記暖房運転または前記冷房運転から前記送風機を駆動させる送風運転に切り替えさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内機の熱交換器に冷媒を循環させることで熱の吸熱と放熱が行なえる空気調和機において、冷媒の漏洩を検知する冷媒漏洩センサと、空気調和を行う室内にいるユーザに向けて所定の表示を行う表示板とが設けられた室内機を備えた空気調和機が知られている。
このような空気調和機では、冷媒回路から冷媒が漏洩していることを冷媒漏洩センサが検知した場合、表示板に冷媒が漏洩していること、及びユーザが冷媒の漏洩に対して取るべき対応が表示される。この空気調和機では、ユーザが表示板に表示されたこの表示を見ることによって、冷媒漏洩に対して迅速な対応をとることを可能にしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空気調和機では、表示板が室内機に一体に設けられ、ユーザの目線よりも上方である天井付近に当該室内機が設けられていた場合、表示板に表示された表示にユーザが気付かず、冷媒漏洩に対する対応が遅れる虞があった。
本発明は、冷媒漏洩にユーザが気付くまでにかかる時間を短縮できる空気調和機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、冷媒配管を有する熱交換器と、前記熱交換器に空気を通過させる送風機と、冷媒を検知する冷媒漏洩センサと、ユーザに対して所定の情報を表示する表示部と、制御部とが設けられた室内機を備え、前記室内機は、前記送風機によって吸い込まれる空気を吸い込む吸い込み口と、前記吸い込み口を覆うグリルと、前記グリルを開閉させる開閉機構とを備え、前記制御部は、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記グリルを開放させることを特徴とする空気調和機である。
【0006】
これによれば、空気調和装置は、冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したとき以前に行っていた動作とは異なる動作を行うことで、被調和空間内の人に室内機を見上げさせ、表示部の表示を視認させることができる。このため、空気調和装置は、ブザーなどの報知装置を新たに設けることなく、既存の駆動部を用いて冷媒漏洩とそれに対する対応を被調和空間内の人に報知することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷媒漏洩にユーザが気付くまでにかかる時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気調和装置の室内機の構成を示す斜視図
【
図4】空気調和装置の所定の動作を示すフローチャート
【
図5】空気調和装置の他の所定の動作を示すフローチャート
【
図6】空気調和装置の他の所定の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、冷媒配管を有する熱交換器と、前記熱交換器に空気を通過させる送風機と、冷媒を検知する冷媒漏洩センサと、ユーザに対して所定の情報を表示する表示部と、制御部とが設けられた室内機を備え、前記制御部は、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したとき以前に行っていた動作とは異なる所定の動作を前記室内機に実行させる。
これによれば、空気調和装置は、冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したとき以前に行っていた動作とは異なる動作を行うことで、被調和空間内の人に室内機を見上げさせ、表示部の表示を視認させることができる。このため、空気調和装置は、ブザーなどの報知装置を新たに設けることなく、既存の駆動部を用いて冷媒漏洩とそれに対する対応を被調和空間内の人に報知することができる。
【0010】
第2の発明は、前記室内機は、前記送風機によって送り出される空気を吹き出す吹き出し口と、前記吹き出し口から吹き出す空気の方向を制御するフラップとを備え、前記制御部は、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したとき以前に行っていた動作とは異なる所定の動作を前記送風機とフラップとに実行させる。
これによれば、空気調和装置は、通常運転では起こりえないような風が被調和空間内の人に向かい、当該人に室内機を見上げさせ、表示部の表示を視認させることができる。このため、空気調和装置は、ブザーなどの報知装置を新たに設けることなく、既存の駆動部を用いて冷媒漏洩とそれに対する対応を被調和空間内の人に報知することができる。
【0011】
第3の発明は、前記室内機は、前記送風機によって吸い込まれる空気を吸い込む吸い込み口と、前記吸い込み口を覆うグリルと、前記グリルを開閉させる開閉機構とを備え、前記制御部は、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記グリルを開放させる。
これによれば、空気調和装置は、グリルを被調和空間内の人の目線付近にまで下降させることで、被調和空間内の人に室内機を見上げさせ、表示部の表示を視認させることができる。このため、空気調和装置は、ブザーなどの報知装置を新たに設けることなく、既存の駆動部を用いて冷媒漏洩とそれに対する対応を被調和空間内の人に報知することができる。
【0012】
第4の発明は、前記制御部は、暖房運転または冷房運転を行っているときに、前記冷媒漏洩センサが所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、前記表示部に所定の表示をさせると共に、前記暖房運転または前記冷房運転から前記送風機を駆動させる送風運転に切り替えさせる。
これによれば、空気調和装置は、暖房運転による温風、または冷房運転による冷風から熱交換が行われていない風を被調和空間内に送風し、被調和空間内の人に室内機を見上げさせ、表示部の表示を視認させることができる。このため、空気調和装置は、ブザーなどの報知装置を新たに設けることなく、既存の駆動部を用いて冷媒漏洩とそれに対する対応を被調和空間内の人に報知することができる。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空気調和装置1の室内機10の構成を示す斜視図である。
図2は、室内機10の縦断面図である。
図2では、吸い込みグリル35が昇降装置40によって降下した状態を示している。
空気調和装置1(
図3)は、室内機10に収められた室内熱交換器30と、室外機60に収められた圧縮機や減圧装置、室外熱交換器等と、膨張弁や切換え弁等とで形成された冷凍サイクルを備え、この冷凍サイクルに冷媒を流通させることで、室内機10が設けられた被調和空間の空調を行う空気調和機である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の空気調和装置1が備える室内機10は、4方向に送風可能な所謂天井埋込型の室内ユニットである。この室内機10は、
図2に示すように、建屋の天井11と、この天井11の下方に設置された天井板12との間の天井空間13に設置されるものである。
室内機10は、下面が開放された箱型に形成された室内機本体14を備えており、室内機本体14の外側角部には、吊り用金具18が取り付けられている。室内機本体14は、吊り用金具18に連結された吊りボルト15で天井11から吊り下げられた状態で設置される。この室内機本体14の内側には、発泡スチロール製の断熱部材16が、室内機本体14の側板17の内面に接した状態で配置され、側板17における結露を防止している。
【0015】
室内機本体14の上板の下面には、ファンモータ21が取り付けられており、このファンモータ21には、ファンモータ21の駆動により回転駆動される回転シャフト22が下方に延在するように設けられている。この回転シャフト22の下端部分には、ターボファン23が取り付けられており、このファンモータ21とターボファン23とで送風機20を構成している。
【0016】
ターボファン23は、環状の板状に形成された主板24を備えている。主板24の中心部分には、下方に延出する逆円錐台形状のモータ収容部25が形成されている。
モータ収容部25には、ファンモータ21が収容されており、ファンモータ21の回転シャフト22は、下方に延在しモータ収容部25の底面に連結されている。そして、ファンモータ21を回転駆動させることにより、回転シャフト22を介してターボファン23を回転動作させるように構成されている。
【0017】
主板24の下方には、シュラウド26が設けられており、シュラウド26は、周面が弧状に形成された環状に形成されている。主板24とシュラウド26の内周面との間には、周方向に所定間隔をもって配置される複数の羽根部材27が一体に形成されている。
シュラウド26の下方には、オリフィス28が配置されており、オリフィス28は、周面が弧状に形成された環状に形成されている。
【0018】
この送風機20と断熱部材16との間には、送風機20の側方を取り囲むように、平面視でほぼ四角形状に曲折形成された室内熱交換器30が配置されている。
室内熱交換器30は、冷房運転時には、冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時、冷媒の凝縮器として機能する室内熱交換器30である。室内熱交換器30は、室内機本体14の内部に吸い込まれる室内の空気と冷媒との熱交換を行って、冷房運転時には、空調室内の空気を冷却し、暖房運転時には、室内の空気を加熱することができるように構成されている。
【0019】
室内熱交換器30の下側には、室内熱交換器30の下面に対応するようにドレンパン31が配置されている。このドレンパン31は、室内熱交換器30で発生するドレン水を受けるためのものである。また、ドレンパン31の中央部分には、送風機20の吸い込み口32が形成されている。
【0020】
室内機10において、室内熱交換器30の近傍には、冷媒漏洩センサ29が配置されている。本実施形態の冷媒漏洩センサ29は、ドレンパン31に取り付けられ、室内熱交換器30とオリフィス28との間の空間に配置されている。冷媒漏洩センサ29は、冷媒の濃度を検知するものである。
【0021】
室内機本体14の下面には、室内機本体14の下側開口を覆うように、ほぼ四角形状の化粧パネル33が取り付けられている。
化粧パネル33の中央部分には、ドレンパン31の吸い込み口32に連通する吸い込み口34が形成されており、化粧パネル33の吸い込み口34部分には、吸い込み口34を覆う吸い込みグリル35が着脱可能に取り付けられている。吸い込みグリル35の室内機本体14側には、空気中の塵などを除去するためのフィルタ36が設けられている。
【0022】
室内機本体14には、吸い込みグリル35を複数の吊紐42によって昇降自在に支持する昇降装置40が設けられている。本実施形態の昇降装置40は、オリフィス28の内側の空間に設けられており、当該昇降装置40から延びる各吊紐42の他端は、吸い込みグリル35に連結されている。
昇降装置40は、各吊紐42を繰り出すことによって、吸い込みグリル35、及びフィルタ36を所定の位置まで降下させる。これによって、例えば、フィルタ36や吸い込みグリル35の清掃や交換を作業者が容易に行うことを可能とする。
昇降装置40は、各吊紐42を巻き上げることによって、吸い込みグリル35を吸い込み口34を閉塞する位置まで上昇させる。すなわち、昇降装置40は、吸い込みグリル35を開閉させる開閉機構として機能する。
【0023】
化粧パネル33の吸い込み口34の外側であって、化粧パネル33の各辺に沿った位置には、空調後の空気を室内に送る吹き出し口37がそれぞれ形成されている。各吹き出し口37には、風向を変更するフラップ38がそれぞれ設けられている。
各フラップ38の長手方向の両端部には、いずれも不図示の支持軸が設けられており、この支持軸を吹き出し口37の両端辺に支持させることにより、支持軸を中心として回動自在に形成されている。また、各フラップ38の裏面(室内機本体14側の面)の長手方向における略中央には、不図示のヒンジが設けられている。これらのヒンジには、いずれもフラップ駆動モータ39(
図3)が取り付けられている。各フラップ38は、それぞれのヒンジがフラップ駆動モータ39によって駆動されることによって、それぞれ独立して回動駆動される。すなわち、フラップ駆動モータ39は、フラップ38の駆動部として機能する。各フラップ38は、各フラップ駆動モータ39によって回動駆動されることによって、吹き出し口37の開閉、及び吹き出し口37に対する角度が調節される。
【0024】
本実施形態の室内機10では、送風機20が駆動されることで、被調和空間内の空気が吸い込み口34から吸い込まれる。吸い込まれた空気は、フィルタ36を通過した後に室内熱交換器30を通過して熱交換され、空調後の空気が風として吹き出し口37から被調和空間内に送られる。
【0025】
化粧パネル33の1つの吹き出し口37の外側であって、化粧パネル33の1辺に沿った位置には、表示パネル44が設けられている。
この表示パネル44は、所謂液晶パネルである。表示パネル44には、空気調和装置1の状態に関する情報や、当該状態に対する対応等といった各種の情報が文字情報として表示される。すなわち、表示パネル44は、ユーザ等の空気調和装置1の被調和空間にいる人に対して各種の情報を表示する表示部として機能する。
【0026】
化粧パネル33の1つの角部には、人感センサ46が取り付けられている。人感センサ46は、被調和空間内に人が存在するか否か、または人の位置を検出するものである。
【0027】
室内機10には、不図示の冷媒配管が接続される複数の配管接続部19が設けられている。室内機10は、この配管接続部19のそれぞれに接続された冷媒配管によって室外機60と連結されている。空気調和装置1の冷凍サイクルは、室内機10と、室外機60とが冷媒配管によって連結されることで形成されている。
【0028】
この冷凍サイクルにおいて、室内熱交換器30の両側に位置する冷媒配管の所定の位置には、いずれも室内機10への冷媒の流量を調節する開閉弁70(
図3)が設けられている。本実施形態の開閉弁70は、電動弁や電磁弁等で構成されている。各開閉弁70は、冷媒配管内を冷媒が流通する開状態と、冷媒配管内の冷媒の流れを遮断する閉状態とを切り替え可能である。さらに、これらの開閉弁70は、停電時には、自動で閉状態となるように構成されている。
なお、開閉弁70は、開状態と閉状態との間の状態を設定可能な弁であってもよい。
【0029】
次に、本実施形態における制御構成について説明する。
図3は、空気調和装置1の制御構成を示すブロック図である。
図3に示すように、室内機10は、制御装置50を備えている。制御装置50は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスとを有したコンピュータを備え、室内機10の各部を制御する制御部として機能する。なお、制御装置50は、複数のプロセッサ、又は、半導体チップにより実現してもよい。
制御装置50は、有線または無線で、空気調和装置1の各部と信号の送受信を行う通信部を備えている。これによって、制御装置50は、空気調和装置1の各部から送信された信号を受信し、また、空気調和装置1の各部に信号を送信することで、当該空気調和装置1の冷凍サイクルを形成する各部の運転を制御する。
具体的には、制御装置50は、室外機60の運転制御、開閉弁70や各部に設けられた不図示の膨張弁、切換え弁の開度および開閉の制御を行う。
【0030】
制御装置50は、室内機10の各部の制御を行う。
具体的には、制御装置50は、表示パネル44と、ファンモータ21と、昇降装置40と、各フラップ駆動モータ39とに接続されている。
制御装置50は、表示パネル44に所定の情報を表示させる。また、制御装置50は、ファンモータ21の駆動を制御し、送風機20の駆動を制御する。これによって、制御装置50は、室内機10の送風量を制御する。
制御装置50は、昇降装置40の駆動を制御する。これによって、制御装置50は、室内機10の吸い込み口32の開閉を制御する。また、本実施形態では、制御装置50は、被調和空間における吸い込みグリル35の上下方向の位置を調節可能である。
【0031】
制御装置50は、各フラップ駆動モータ39の駆動を制御する。これによって、制御装置50は、各フラップ38の開閉や開度、及び吹き出し口37の長手方向に直交する方向における吹き出される風の方向を調節する。本実施形態では、室内機10は、制御装置50が各フラップ38の角度を調節することによって、風を横方向からほぼ真下方向に吹き出すことが可能である。
【0032】
制御装置50には、被調和空間の人を検出する人感センサ46が接続されている。制御装置50は、人感センサ46による被調和空間における人の有無の検出結果が入力されることで、ファンモータ21、及びフラップ駆動モータ39の動作を制御することが可能となっている。
例えば、制御装置50は、人感センサ46により検出される人の有無、または人の位置に応じて被調和空間に送風できるように、フラップ38の吹き出し口37に対する角度制御を行う。これによって、室内機10は、被調和空間内の人に向けて、あるいは被調和空間内の人を避けて、送風することが可能である。
【0033】
このように、本実施形態の空気調和装置1は、センサ等から入力された信号に基いて、各部を調節することによって、被調和空間の空調を行う通常運転を実施する。なお、本実施形態において、通常運転とは、室内熱交換器30に冷媒を供給した状態で、送風機20を駆動する運転モード(通常運転モード)で空気調和装置1を運転することをいう。通常運転には、所謂暖房運転及び冷房運転が含まれる。
【0034】
制御装置50には、冷媒漏洩センサ29が接続されている。制御装置50は、冷媒漏洩センサ29から送信された検知信号を受信し、この検知信号に応じて室内機10の各部を制御する。
具体的には、制御装置50は、冷媒漏洩センサ29の検知信号を受信して、室内機10において、冷媒漏洩が生じているか否かを判定する。
本実施形態の制御装置50は、冷媒漏洩センサ29からの検知信号を取得することで、室内機10における冷媒濃度を取得する。そして、制御装置50は、取得した冷媒濃度が所定値よりも高いか否かを判定する。制御装置50は、取得した冷媒濃度が所定値よりも高いと判定すると、漏洩対策動作を実行させる。
【0035】
漏洩対策動作では、制御装置50は、室外機60に収められた圧縮機を停止させ、各開閉弁70を閉状態とさせる。これによって、空気調和装置1は、冷媒漏洩の抑制を図ることができる。
さらに、制御装置50は、表示パネル44に、冷媒が漏洩していること、及び冷媒漏洩に対して被調和空間にいる人が取るべき対応を表示させる。これによって、空気調和装置1は、被調和空間にいる人に対して、冷媒漏洩が生じていることを報知することができると共に、冷媒漏洩に対して取るべき対応を報知することができる。
【0036】
制御装置50は、空気調和装置1の運転モードや、冷媒漏洩センサ29によって検知される冷媒濃度といった、空気調和装置1の運転に係る各種のデータを記憶する不図示の記憶部を備えている。
【0037】
本実施形態の室内機10は、上述の通り、天井埋込型の室内ユニットであり、表示パネル44は、被調和空間の上方、すなわち被調和空間にいる人の通常の視界よりも上方に配置されている。このため、表示パネル44に冷媒が漏洩していること、及び冷媒漏洩に対して被調和空間にいる人が取るべき対応が表示された場合に、被調和空間にいる人が当該表示に気付かない、あるいは、気付くまでに時間がかかり、冷媒漏洩に対する対応が遅れる虞がある。
そこで、制御装置50は、上述した漏洩対策動作を実行した後に、被調和空間にいる人に対して、表示パネル44に視線を誘導させるために、通常運転とは異なる所定の動作を行う。
【0038】
具体的には、制御装置50は、表示パネル44に、冷媒が漏洩していること、及び冷媒漏洩に対して被調和空間にいる人が取るべき対応を表示させ、所定時間が経過した後に、下記の3つの所定の動作の内のいずれか1つを行う。
1つ目の所定の動作では、制御装置50は、送風機20と各フラップ38とに通常運転とは異なる動作を行わせることによって、被調和空間内の人の視線を表示パネル44に向かわせる。
具体的には、制御装置50は、ファンモータ21を制御して、短時間での風量の強弱の変化を送風機20に実行させる。また、制御装置50は、人感センサ46からの信号に基づき、フラップ駆動モータ39を制御して、被調和空間内の人に風が向かうようにフラップ38を回動させる。
これによって、通常運転では起こりえないような風が被調和空間内の人に向かい、当該人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させることができる。
【0039】
なお、この1つ目の所定の動作では、上述した動作に限らず、例えば、制御装置50は、ファンモータ21を制御して、異音が発生しやすい回転数で送風機20を運転させてもよい。
また例えば、制御装置50は、人感センサ46からの信号に基き、フラップ駆動モータ39を制御して、被調和空間内の人に風が向かうようにフラップ38を回動させてもよい。
また例えば、制御装置50は、フラップ駆動モータ39を制御して、フラップ38の短時間での角度変化、すなわちフラップ38のスイング動作を実施させてもよい。これによって、通常運転では起こりえないような風を被調和空間内の人に向かわせる、あるいは異音を発生させることができ、被調和空間内の人に室内機10を見上げさせることができる。
【0040】
2つ目の動作では、制御装置50は、吸い込みグリル35を下降させることによって、被調和空間内の人の視線を表示パネル44に向かわせる。
具体的には、制御装置50は、昇降装置40の駆動を制御して、吸い込み口34を閉塞している吸い込みグリル35を下降させる。これによって、吸い込みグリル35を被調和空間内の人の目線付近にまで下降させ、当該人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させることができる。
【0041】
なお、この2つ目の所定の動作では、上述した動作に限らず、例えば、制御装置50は、昇降装置40の駆動を制御して、吸い込みグリル35の下降と上昇を連続して行う上下動を行ってもよい。
【0042】
3つ目の動作では、制御装置50は、通常運転に替えて送風運転を空気調和装置1に実施させる。この送風運転では、例えば、不図示の膨張弁が閉じられた状態で、送風機20が駆動される。すなわち、空気調和装置1の送風運転中には、熱交換が行われていない空気が送風機20により吹き出される。
具体的には、制御装置50は、空気調和装置1の冷凍サイクルの駆動を制御して、熱交換が行われていない空気を送風機20に吹き出させる。これによって、空気調和装置1の暖房運転による温風、または冷房運転による冷風から熱交換が行われていない風を被調和空間内に送風し、当該空間内の人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させることができる。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
空気調和装置1の通常運転では、室内機10の送風機20が駆動し、吸い込みグリル35、及びフィルタ36を通じて被調和空間内の空気が室内機10の内部に導入される。
室内機10の内部に導入された空気は、室内熱交換器30で熱交換された後に、フラップ38により風向が調整され、吹き出し口37を通じて被調和空間に吹き出される。
【0044】
次いで、
図4を参照しながら、空気調和装置1の制御装置50が冷媒漏洩センサ29が検知した冷媒漏洩を被調和空間内の人に報知するときの1つ目の所定の動作について説明する。
図4は、空気調和装置1の所定の動作を示すフローチャートである。
空気調和装置1が運転しているときにおいて、制御装置50は、所定の頻度で冷媒漏洩センサ29が検知した冷媒濃度を取得し、所定値よりも高い濃度であるか否かを判定する(ステップSA1)。
制御装置50は、冷媒漏洩センサ29が検知した冷媒濃度が所定値よりも高い濃度であると判定した場合(ステップSA1:YES)、所定部に漏洩対策動作を実行させる。
同時に、表示パネル44に、冷媒が漏洩していること、及び冷媒漏洩に対して被調和空間にいる人が取るべき対応を表示させる(ステップSA2)。
【0045】
次いで、制御装置50は、室内機10に1つ目の所定の動作を実行させる。具体的には、制御装置50は、短時間での風量の強弱の変化と、被調和空間内の人に風が向かうようにフラップ38を回動させることを室内機10に実行させる(ステップSA3)。
【0046】
これによって、被調和空間内にいる人が空気調和装置1の所定の動作に気付き、(ステップSA4)、室内機10を見上げる。
そして、被調和空間にいる人が表示パネル44を視認し、冷媒漏洩に気付く(ステップSA5)。さらに、表示パネル44に表示に基いて、被調和空間にいる人は、冷媒漏洩に対する対応を行う(ステップSA6)。
このように、通常運転では起こりえないような所定の動作を空気調和装置1に実施させることで、被調和空間にいる人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させ、冷媒漏洩に対する対応を実行させることができる。
【0047】
次いで、
図5を参照しながら、空気調和装置1の制御装置50が冷媒漏洩センサ29が検知した冷媒漏洩を被調和空間内の人に報知するときの2つ目の所定の動作について説明する。
図5は、空気調和装置1の2つ目の所定の動作を示すフローチャートである。
図5において、
図4に示すフローチャートと同じステップについては同一のステップ番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0048】
制御装置50は、室内機10に2つ目の所定の動作を実行させる。具体的には、制御装置50は、昇吸い込みグリル35を下降させる(ステップSB1)。これによって、空気調和装置1は、当該人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させる。
【0049】
次いで、
図6を参照しながら、空気調和装置1の制御装置50が冷媒漏洩センサ29が検知した冷媒漏洩を被調和空間内の人に報知するときの3つ目の所定の動作について説明する。
図6は、空気調和装置1の3つ目の所定の動作を示すフローチャートである。
図6において、
図4に示すフローチャートと同じステップについては同一のステップ番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
制御装置50は、室内機10に3つ目の所定の動作を実行させる。具体的には、制御装置50は、空気調和装置1の冷凍サイクルの駆動を制御して、通常運転である冷房運転、または暖房運転から熱交換が行われていない空気を送風機20に吹き出させる送付運転を実施させる(ステップSC1)。これによって、空気調和装置1は、当該人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、室内機10は、送風機20によって送り出される空気を吹き出す吹き出し口37と、吹き出し口37から吹き出す空気の方向を制御するフラップ38とを備える。そして、制御装置50は、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、表示パネル44に所定の表示をさせると共に、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したとき以前に行っていた通常運転とは異なる所定の動作を送風機20とフラップ38とに実行させる構成とした。
【0052】
これによれば、空気調和装置1は、通常運転では起こりえないような風が被調和空間内の人に向かい、当該人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させることができる。このため、空気調和装置1は、ブザーなどの報知装置を新たに設けることなく、既存の駆動部を用いて冷媒漏洩とそれに対する対応を被調和空間内の人に報知することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、室内機10は、送風機20によって吸い込まれる空気を吸い込む吸い込み口34と、吸い込み口を覆う吸い込みグリル35と、吸い込みグリル35を開閉させる昇降装置40とを備えている。そして、制御装置50は、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、表示パネル44に所定の表示をさせると共に、吸い込みグリル35を下降させる構成とした。
これによれば、空気調和装置1は、吸い込みグリル35を被調和空間内の人の目線付近にまで下降させることで、被調和空間内の人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、制御装置50は、暖房運転または冷房運転を行っているときに、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、表示パネル44に所定の表示をさせると共に、暖房運転または冷房運転から送風機20を駆動させる送風運転に切り替えさせる構成とした。
これによれば、空気調和装置1は、暖房運転による温風、または冷房運転による冷風から熱交換が行われていない風を被調和空間内に送風し、被調和空間内の人に室内機10を見上げさせ、表示パネル44の表示を視認させることができる。
【0055】
上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0056】
上述した実施形態では、3つ目の所定の動作として、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、制御装置50は、空気調和装置1に、暖房運転、または冷房運転から送風運転に切り替えさせるとした。しかしながらこれに限らず、漏洩量が小量な場合、暖房運転から冷房運転、あるいは冷房運転から暖房運転に切り替えることで、被調和空間内の人に室内機10を見上げさせてもよい。またこの場合、送風運転から暖房運転、または冷房運転冷に切り替えることで、被調和空間内の人に室内機10を見上げさせてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、制御装置50は、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、被調和空間にいる人に対して、表示パネル44に視線を誘導させるために、通常運転とは異なる3つの所定の動作のいずれかを空気調和装置1に実施させるとした。しかしながらこれに限らず、制御装置50は、3つの所定の動作の内の複数、又は全てを平行して実施してもよい。例えば、制御装置50は、空気調和装置1に、暖房運転、または冷房運転から送風運転に切り替えさせると共に、送風機20と各フラップ38とに通常運転とは異なる動作を行わせてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、通常運転を行っている空気調和装置1において、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、制御装置50は、3つの所定の動作のいずれかを実施させるとした。しかしながらこれに限らず、送風運転を行っている空気調和装置1において、冷媒漏洩センサ29が所定値よりも高い濃度の冷媒を検知したときに、制御装置50は、1つ目、あるいは2つ目の所定の動作を実施してもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、表示パネル44は、室内機10に設けられているとしたが、これに限らず、被調和空間内に設置されるリモートコントローラや、被調和空間内の壁面等に設けられていてもよい。
また、空気調和装置1は、表示パネル44に限らず、ランプ等の他の形態の表示部を備えていてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、室内機10は、4方向に送風可能な天井埋込型の室内ユニットであるとしたが、これに限らず、例えば、2方向に送風可能な天井埋込型や、天吊り型、壁掛け型、床置き型等、他の形態の室内ユニットであってもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、制御装置50は、室内機10に設けられているとしたが、これに限らず、空気調和装置1の他の場所、あるいは空気調和装置1の外部に設けられていてもよい。
【0062】
また、
図3に示した各部は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、制御装置50、室外機60、及び、室内機10の他の各部の具体的な細部構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0063】
また、例えば、
図4-
図6に示す動作のステップ単位は、制御装置50の各部の動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る空気調和装置は、冷媒漏洩にユーザが気付くまでにかかる時間を短縮できる空気調和装置として、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 空気調和装置
10 室内機
20 送風機
29 冷媒漏洩センサ
30 室内熱交換器(熱交換器)
34 吸い込み口
35 吸い込みグリル(グリル)
37 吹き出し口
38 フラップ
40 昇降装置(開閉機構)
44 表示パネル
50 制御装置(制御部)
60 室外機