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特許7519613キャパシタ、電気回路、回路基板、機器、及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】キャパシタ、電気回路、回路基板、機器、及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20240712BHJP
   H01G 4/10 20060101ALI20240712BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H01G4/33
H01G4/33 102
H01G4/10
H01G4/30 544
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023539775
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012325
(87)【国際公開番号】W WO2023223677
(87)【国際公開日】2023-11-23
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022081901
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 諒介
(72)【発明者】
【氏名】網井 圭
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-528856(JP,A)
【文献】特開2006-054465(JP,A)
【文献】特表2015-506089(JP,A)
【文献】国際公開第2020/218617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/33
H01G 4/10
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と、
第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に配置された誘電体と、を備え、
前記誘電体は、Hf1-x-ySixGayzで表される組成を有する酸化物を含み、
前記組成において、zは前記酸化物の電気的中性を保つための値であり、
前記組成は、0.01≦x、0.05≦y≦0.11、及び0.09≦x+y≦0.15の条件を満たす、
キャパシタ。
【請求項2】
前記酸化物は、蛍石構造を含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記酸化物は、正方晶相及び直方晶相からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のキャパシタを備えた、電気回路。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のキャパシタを備えた、回路基板。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のキャパシタを備えた、機器。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載のキャパシタを備えた、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャパシタ、電気回路、回路基板、機器、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HfO2にドーパントを添加して誘電特性を変化させることが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、Si、Al、及びZr等の元素がドーピングされたHfO2膜が反強誘電性を示すことが記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、第1電極層と、誘電体層と、第2電極層とを備えたキャパシタが記載されている。誘電体層は第1電極層上に形成されている。第2電極層は誘電体層上に形成されている。誘電体層は金属酸化物を含み、その金属酸化物は、Hfの一部がBi及び5価以上の元素によって置換されたHfO2を含む。誘電体層は反強誘電体性を有する。このため、誘電体層は、バイアス電界を印加することによって高い誘電率を示す。
【0005】
非特許文献2には、Mg、Ba、Sr、Y、La、Nd、Sm、Er、Al、Ga、In、Co、及びNi等のドーパントのHfO2の強誘電性への影響が記載されている。GaがドープされたHfO2は強誘電性を有している。
【0006】
非特許文献3には、Hf1-xx2膜(ここで、B=Zr、Si、Al、Gd、La、Y等)において強誘電性がみられることが記載されている。
【0007】
非特許文献4には、0.1CeO2-0.9HfO2薄膜が強誘電性を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2019/208340号
【非特許文献】
【0009】
【文献】M.H.Park et al, Advanced Materials, 2015, 27, 1811-1831
【文献】S. Starschich et al, Journal of Materials Chemistry C, 2017, 5, 333
【文献】Hyo Jeong Kim et al, Phys. Status Solidi RRL 2021, 15, 2100028
【文献】T. Shiraishi et al, Applied Physics Letters, 2019, 114, 232902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1及び特許文献1に記載の技術は、大容量かつ高効率な充放電の観点から再検討の余地を有する。そこで、本開示は、Hfを含む酸化物を誘電体に用いつつ、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利なキャパシタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のキャパシタは、
第一電極と、
第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に配置された誘電体と、を備え、
前記誘電体は、Hf1-x-ySixGayzで表される組成を有する酸化物を含み、
前記組成において、zは前記酸化物の電気的中性を保つための値であり、
前記組成は、0.01≦x、0.05≦y≦0.11、及び0.09≦x+y≦0.15の条件を満たす。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、Hfを含む酸化物を誘電体に用いつつ、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利なキャパシタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示のキャパシタの一例を示す断面図である。
図2A図2Aは、本開示の電気回路の一例を模式的に示す図である。
図2B図2Bは、本開示の回路基板の一例を模式的に示す図である。
図2C図2Cは、本開示の機器の一例を模式的に示す図である。
図2D図2Dは、本開示の蓄電デバイスの一例を模式的に示す図である。
図3図3は、本開示のキャパシタの別の一例を示す断面図である。
図4図4は、実施例1に係るキャパシタの誘電体のX線回折(XRD)プロファイルを示すグラフである。
図5図5は、実施例1に係るキャパシタの誘電体における分極と電界強度との関係を示すグラフである。
図6図6は、実施例1に係るキャパシタの誘電体における比誘電率と電界強度との関係を示すグラフである。
図7図7は、比較例1に係るキャパシタの誘電体における分極と電界強度との関係を示すグラフである。
図8図8は、比較例1に係るキャパシタの誘電体における比誘電率と電界強度との関係を示すグラフである
図9図9は、比較例2に係るキャパシタの誘電体における分極と電界強度との関係を示すグラフである。
図10図10は、実施例1から5及び比較例1から9に係るキャパシタの誘電体におけるSiの組成比及びGaの組成比と、誘電体の誘電特性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本開示の基礎となった知見)
例えば、反強誘電体では、所定の電界強度の範囲において、電界強度の増加に伴い電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量が大きくなる。このような電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の非線形な関係は、その誘電体を備えたキャパシタにおいて大容量な充放電を可能にする観点から有利である。一方、このような非線形な関係のためにHfO2にドーパントを添加させて得られた誘電体を備えたキャパシタにおいて、ヒステリシスロスが発生しうる。ヒステリシスロスにより、充電のために電圧を上昇させて貯蔵された電荷量に対して、放電にて出力される電荷量が少なくなる。このようなヒステリシスロスの発生は、キャパシタの充電により貯蔵されたエネルギーに対して放電においてキャパシタから出力可能なエネルギーが小さくなるというエネルギー損失の問題を生じさせる。このことは、高効率なキャパシタの充放電の観点から有利とは言い難い。
【0015】
上記の文献によれば、Si、Al、Y、La、及びCe等の元素をHfO2に添加することにより、明瞭な強誘電性又は反強誘電性が発現すると理解される。一方、GaをHfO2に添加した報告では、わずかな強誘電性が確認されているに過ぎない。添加によりわずかな強誘電性がみられるにすぎないGaを、SiとともにHfO2に添加した報告はされていない。
【0016】
このような事情に鑑み、本発明者らは、Hfを含む酸化物を誘電体に用いつつ、大容量かつ高効率な充放電が可能なキャパシタを実現できないか鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは、Hfを含む所定の組成を有する酸化物を含む誘電体を用いて、キャパシタにおいて、電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の非線形な関係と、ヒステリシスロスの抑制とを実現できることを見出した。この新たな知見に基づき、本発明者らは本開示のキャパシタを案出した。
【0017】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係るキャパシタは、
第一電極と、
第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極との間に配置された誘電体と、を備え、
前記誘電体は、Hf1-x-ySixGayzで表される組成を有する酸化物を含み、
前記組成において、zは前記酸化物の電気的中性を保つための値であり、
前記組成は、0.01≦x、0.05≦y≦0.11、及び0.09≦x+y≦0.15の条件を満たす。
【0018】
第1態様によれば、電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の関係が非線形な関係になりやすい。加えて、キャパシタの充放電においてヒステリシスロスが抑制されやすい。このため、第1態様に係るキャパシタは、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利である。
【0019】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係るキャパシタでは、前記酸化物は、蛍石構造を含んでいてもよい。第2態様によれば、電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の関係が非線形な関係によりなりやすい。
【0020】
本開示の第3態様において、例えば、第2態様に係るキャパシタでは、前記酸化物は、正方晶相及び直方晶相からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。第3態様によれば、電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の関係が非線形な関係によりなりやすい。
【0021】
本開示の第4態様に係る電気回路は、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様に係るキャパシタを備えている。第4態様によれば、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利な電気回路を提供できる。
【0022】
本開示の第5態様に係る回路基板は、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様に係るキャパシタを備えている。第5態様によれば、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利な回路基板を提供できる。
【0023】
本開示の第6態様に係る機器は、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様に係るキャパシタを備えている。第6態様によれば、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利な機器を提供できる。
【0024】
本開示の第7態様に係る蓄電デバイスは、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様に係るキャパシタを備えている。第7態様によれば、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利な蓄電デバイスを提供できる。
【0025】
(実施の形態)
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本開示のキャパシタの一例を示す断面図である。図1に示す通り、キャパシタ1aは、第一電極11と、第二電極12と、誘電体20とを備えている。誘電体20は、第一電極11と第二電極12との間に配置されている。誘電体20は、Hf1-x-ySixGayzで表される組成を有する酸化物を含んでいる。この組成において、zはこの酸化物の電気的中性を保つための値である。加えて、この組成は、0.01≦x、0.05≦y≦0.11、及び0.09≦x+y≦0.15の条件を満たす。これにより、キャパシタ1aにおいて電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の関係が非線形な関係になりやすく、キャパシタ1aの充放電においてヒステリシスロスが抑制されやすい。このため、キャパシタ1aは、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利である。
【0027】
上記の組成におけるzは、酸化物の電気的中性が保たれる限り特定の値に限定されない。zは、例えば、yの値及び誘電体20の作製プロセスによって変動しうる。zは、例えば、1.9≦z<2の条件を満たす。
【0028】
誘電体20の上記の酸化物の構造は特定の構造に限定されない。この酸化物は、例えば蛍石構造を含む。この場合、キャパシタ1aにおいて、電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の関係が非線形な関係によりなりやすい。酸化物の全体が蛍石構造を有していてもよく、酸化物の一部が蛍石構造を有していてもよい。
【0029】
誘電体20の上記の酸化物が蛍石構造を含む場合、この酸化物は、正方晶相及び直方晶相からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。この場合、キャパシタ1aにおいて、電界強度の変化量に対する誘電体の分極の変化量の関係が非線形な関係によりなりやすい。酸化物の全体が正方晶相及び直方晶相からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、酸化物の一部が正方晶相及び直方晶相からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
【0030】
キャパシタ1aにおいて、第一電極11、第二電極12、及び誘電体20の形状は特定の形状に限定されない。図1に示す通り、第一電極11、第二電極12、及び誘電体20のそれぞれは、例えば層状に形成されている。
【0031】
第一電極11の厚みは特定の値に限定されない。第一電極11の厚みは、例えば50nm以上である。これにより、キャパシタ1aにおいて内部抵抗が小さくなりやすい。第一電極11の厚みは、例えば500nm以下である。これにより、複数のキャパシタ1aを集積して使用する場合に全体の容量密度が大きくなりやすい。
【0032】
第一電極11の材料は特定の材料に限定されない。第一電極11は、例えば、Pt、Au、Al、Ta、及びZr等の金属を含んでいてもよい。第一電極11は、TiN及びTaN等の導電性の窒化物を含んでいてもよい。第一電極11は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、及びZnO等の導電性の酸化物を含んでいてもよい。第一電極11が酸化雰囲気で形成される場合、第一電極11は、望ましくは、Pt、Au、ITO、及びZnOからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。第一電極11が還元雰囲気で形成される場合、第一電極11は、望ましくは、Pt、Au、Al、Ta、Zr、TiN、及びTaNからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
【0033】
第二電極12の厚みは特定の値に限定されない。第二電極12の厚みは、例えば50nm以上である。これにより、キャパシタ1aにおいて内部抵抗が小さくなりやすい。第二電極12の厚みは、例えば500nm以下である。これにより、複数のキャパシタ1aを集積して使用する場合に全体の容量密度が大きくなりやすい。
【0034】
第二電極12の材料は特定の材料に限定されない。第二電極12は、例えば、Pt、Au、Al、Ta、及びZr等の金属を含んでいてもよい。第二電極12は、ドープされた多結晶シリコンを含んでいてもよい。第二電極12は、TiN及びTaN等の導電性の窒化物を含んでいてもよい。第二電極12は、ITO、ATO、及びZnO等の導電性の酸化物を含んでいてもよい。第二電極12は、ポリアニリン及びポリピロール等の導電性の有機ポリマーを含んでいてもよい。第二電極12が酸化雰囲気に曝される場合、第二電極12は、望ましくは、Pt、Au、ITO、ATO、及びZnOからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。第二電極12が還元雰囲気に曝される場合、第二電極12は、望ましくは、Pt、Au、Al、Ta、Zr、TiN、TaN、及びドープされた多結晶シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。例えば、第二電極12を形成した後にアニール処理を行って誘電体20において結晶化を促す場合に、第二電極12の周囲に供給されるガスによって第二電極12が酸化雰囲気又は還元雰囲気に曝されうる。アニール処理において第二電極12が酸化雰囲気に曝される場合、第二電極12は、より望ましくは、Pt、ITO、ATO、及びZnOからなる群より少なくとも1つを含む。アニール処理において第二電極12が還元雰囲気に曝される場合、第二電極12は、より望ましくは、Pt、TiN、及びTaNからなる群より少なくとも1つを含む。
【0035】
図1に示す通り、キャパシタ1aは、例えば支持体30をさらに備えている。第一電極11は、例えば、支持体30上に配置されている。これにより、第一電極11、誘電体20、及び第二電極12を含む積層体が支持体30によって支持され、キャパシタ1aの機械的強度が高くなりやすい。支持体30は、例えば、第一電極11を形成するための基材として使用されうる。キャパシタ1aにおいて、支持体30は省略されてもよい。
【0036】
支持体30は、特定の支持体に限定されない。支持体30は、導電体であってもよいし、半導体であってもよいし、絶縁体であってもよい。支持体30が導電体である場合、支持体30と第一電極11とが一体化されていてもよい。
【0037】
支持体30の厚みは特定の値に限定されない。支持体30の厚みは、50nm以上500nm以下であってもよいし、500nmより大きくてもよい。
【0038】
図2Aに示す通り、例えば、キャパシタ1aを備えた電気回路3を提供できる。電気回路3は、キャパシタ1aを備える限り、特定の回路に限定されない。電気回路3は、能動回路であってもよいし、受動回路であってもよい。電気回路3は、放電回路であってもよいし、平滑回路であってもよいし、デカップリング回路であってもよいし、カップリング回路であってもよい。電気回路3は、キャパシタ1aを備えているので、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利である。
【0039】
図2Bに示す通り、例えば、キャパシタ1aを備えた回路基板5を提供できる。回路基板5は、キャパシタ1aを備えているので、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利である。例えば、回路基板5は、キャパシタ1aを含む電気回路3を備えている。
【0040】
図2Cに示す通り、例えば、キャパシタ1aを備えた機器7を提供できる。機器7は、キャパシタ1aを備えているので、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利である。機器7は、例えば、キャパシタ1aを含む回路基板5を備えている。機器7は、電子機器であってもよいし、通信機器であってもよいし、信号処理装置であってもよいし、電源装置であってもよい。機器7は、サーバーであってもよいし、ACアダプタであってもよいし、アクセラレータであってもよいし、液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイであってもよい。機器7は、USB充電器であってもよいし、ソリッドステートドライブ(SSD)であってもよいし、PC、スマートフォン、及びタブレットPC等の情報端末であってもよいし、イーサーネットスイッチであってもよい。
【0041】
図2Dに示す通り、例えば、キャパシタ1aを備えた蓄電デバイス9を提供できる。蓄電デバイス9は、キャパシタ1aを備えているので、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利である。図2Dに示す通り、例えば、蓄電デバイス9を用いて、蓄電システム50を提供できる。蓄電システム50は、蓄電デバイス9と、発電装置2とを備えている。蓄電システム50において、発電装置2における発電に伴い得られる電気が蓄電デバイス9に蓄えられる。発電装置2は、例えば、太陽光発電又は風力発電のための装置である。蓄電デバイス9は、例えば、リチウムイオン電池及び鉛蓄電池等の二次電池を備えたデバイスである。
【0042】
キャパシタ1aの製造方法の一例を説明する。まず、支持体30の主面上に第一電極11を形成する。第一電極11の形成には、例えば、真空プロセス、めっき、又は塗布を適用しうる。真空プロセスの例は、DCスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、パルスレーザー堆積(PLD)、原子層堆積(ALD)、及び化学気相成長(CVD)である。支持体30として、アルミニウム箔及びジルコニウム箔等の金属箔を用い、支持体30と第一電極11とが一体的に構成されていてもよい。一例として、支持体30としてのc面サファイア単結晶基板上にRFマグネトロンスパッタリング法によってPt(111)膜をエピタキシャル成長させてもよい。
【0043】
次に、第一電極11の上に、誘電体20又は誘電体20の前駆体として、Hf1-x-ySixGayzで表される組成を有する酸化物を含む膜が形成される。誘電体20又は誘電体20の前駆体は、第一電極11の形成と同様に真空プロセスを用いて形成できる。もしくは、Chemical Solution Deposition(CSD)法を用いた、ディップコーティング、スピンコーティング、及びダイコーティング等の湿式プロセスによって、誘電体20又は誘電体20の前駆体が形成されてもよい。
【0044】
例えば、RFマグネトロンスパッタリング法によって誘電体20のための膜を形成した場合、その膜はアモルファスでありうる。アモルファスのままでは膜の比誘電率が小さいので、例えば、この膜に対してRapid Thermal Anneal(RTA)処理がなされ、結晶化が促される。
【0045】
次に、誘電体20の上に第二電極12が形成される。第二電極12の形成には、第一電極11と同様に、真空プロセス、めっき、又は塗布を適用しうる。このようにして、キャパシタ1aを製造できる。
【0046】
図3は、本開示のキャパシタの別の一例を示す断面図である。図3に示すキャパシタ1bは、特に説明する部分を除き、キャパシタ1aと同様に構成されている。キャパシタ1aの構成要素と同一又は対応するキャパシタ1bの構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。キャパシタ1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、キャパシタ1bにも当てはまる。
【0047】
図3に示す通り、キャパシタ1bにおいて、第一電極11の少なくとも一部は多孔質である。このような構成によれば、第一電極11の表面積が大きくなりやすく、キャパシタ1bの静電容量が高くなりやすい。このような多孔質の構造は、例えば、金属箔のエッチング及び粉末の焼結処理等によって形成できる。
【0048】
図3に示す通り、例えば、第一電極11の多孔質な部位の表面上に誘電体20の膜が形成されている。この場合、誘電体20の成膜方法として、原子層堆積法(ALD法)又はCVD法及びミストCVD法等の化学気相法を採用できる。
【0049】
第一電極11は、例えば、Al、Ta、Nb、Zr、Hf、及びBi等の弁金属を含んでいる。第二電極12は、例えば、銀含有ペーストの固化物、グラファイト等のカーボン材料、又は上記固化物及びカーボン材料の双方を含んでいてもよい。
【0050】
キャパシタ1a及び1bは、電解キャパシタであってもよい。この場合、例えば、第一電極11と第二電極12との間に電解質13が配置されている。誘電体20と第二電極12との間に電解質13が配置されていてもよい。キャパシタ1bにおいて、電解質13は、例えば、第一電極11の多孔質な部位の周囲の空隙を充填するように配置されている。
【0051】
電解質は、例えば、酸化マンガン、電解液、及び導電性高分子からなる群より選択される少なくとも一つを含む。導電性高分子の例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、及びこれらの誘導体である。電解質は、酸化マンガン等のマンガン化合物であってもよい。電解質は、固体電解質を含んでいてもよい。
【実施例
【0052】
以下、本開示を実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
RFマグネトロンスパッタリング法によって、c面サファイア単結晶基板上に100nmの厚みを有するPt(111)膜をエピタキシャル成長させ、Pt電極を得た。次に、RFマグネトロンスパッタリング法によって、Pt電極上に20nmの厚みを有するHf含有層を形成した。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.053であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.056であった。次に、Hf含有層が形成されたサファイア単結晶基板を700℃の窒素雰囲気で30秒間加熱し、RTA処理を行った。これにより、Hf含有層の構造は、アモルファス構造から、反強誘電性を示す正方晶相又は強誘電性を示す直方晶相を有するように変化したと理解される。その後、真空蒸着法によって、Hf含有層の上に100nmの厚みを有するAu膜を形成し、Au電極を得た。このようにして、実施例1に係るキャパシタを作製した。
【0054】
マルバーンパナリティカル社製のX線回折(XRD)装置Aerisを用いて、実施例1に係るキャパシタのHf含有層の結晶構造を評価した。XRDにおいて、Cu‐Kα線(波長λ=0.15418nm)をX線として用いた。図4に、実施例1に係るキャパシタのHf含有層のXRDプロファイルを示す。図4において、縦軸はXRDの強度を示し、横軸は回折角を示す。図4において、符号「m」で示されるピークは単斜晶に由来し、符号「o/t/c」で示されるピークは、直方晶、正方晶、及び立方晶からなる群より選ばれる少なくとも1つに由来する。図4によれば、実施例1に係るキャパシタのHf含有層は、単斜晶をわずかに含むものの、主たる相は、直方晶、正方晶、及び立方晶からなる群より選ばれる少なくとも1つの蛍石構造であると理解された。
【0055】
リガク社製の波長分散型蛍光X線分析(WDXRF)装置ZSX-Primusを用いて、実施例1に係るキャパシタのHf含有層の組成を決定した。この組成をHf1-x-yxy2で表したときの元素A、元素B、xの値、及びyの値を表1に示す。
【0056】
ラジアントテクノロジー社製の強誘電体テスターPremier IIを用いて、実施例1に係るキャパシタに対してPolarization-Electric field測定を行って、実施例1に係るキャパシタのP-Eカーブを得た。このP-Eカーブに基づいて実施例1に係るキャパシタの誘電特性を評価した。図5は、実施例1に係るキャパシタのP-Eカーブであり、Hf含有層における分極と電界強度との関係を示す。図5において、縦軸は分極を示し、横軸は電界強度を示す。P-Eカーブにおいて、P-Eカーブ、第一直線、及び第二直線によって囲まれる部分の面積SPE[μC・MV/cm3]を求めた。第一直線は、電界強度が0[MV/cm2]以上であり、かつ、分極が0[μC/cm2]である条件を満たす直線である。第二直線は、電界強度が0[MV/cm2]であり、かつ、分極が0[μC/cm2]以上である条件を満たす直線である。図5に示す通り、実施例1に係るキャパシタにおいて、昇圧時(充電)及び降圧時(放電)において大きなヒステリシスロスは発生しておらず、エネルギー損失を低減できることが示唆された。キャパシタのヒステリシスロスに関し、面積SPEが15[J/cm3]以下である場合を「A」と評価し、それ以外の場合を「X」と評価した。結果を表1に示す。
【0057】
電界強度を増加させて得られたP-Eカーブにおいて、電界強度を変数とする分極の微分値を求めて実施例1に係るキャパシタのHf含有層の比誘電率を決定した。図6は、実施例1に係るキャパシタのHf含有層の比誘電率と電界強度との関係を示す。図6に示す通り、0MV/cm(電圧印加なし)の電界強度におけるHf含有層の比誘電率は約30であったのに対し、3.0MV/cmから3.5MV/cmの電界強度におけるHf含有層の比誘電率は約50に増加している。このように、実施例1に係るキャパシタにおいて、分極及び電界強度は非線形な関係を有していた。キャパシタにおける分極と電界強度との関係の非線形性に関し、各電界強度における比誘電率の最小値に対する最大値の比が1.5以上である場合に非線形性ありと評価し、それ以外の場合に非線形なしと評価した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.078であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.061であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るキャパシタを作製した。実施例2に係るキャパシタの、Hf含有層の結晶構造、Hf含有層の組成、及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例3)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.035であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.061であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るキャパシタを作製した。実施例3に係るキャパシタの、Hf含有層の結晶構造、Hf含有層の組成、及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例4)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.035であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.102であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係るキャパシタを作製した。実施例4に係るキャパシタの、Hf含有層の結晶構造、Hf含有層の組成、及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例5)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.014であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.102であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係るキャパシタを作製した。実施例5に係るキャパシタの、Hf含有層の結晶構造、Hf含有層の組成、及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
Si及びGaを含まないHfO2の組成を有するようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るキャパシタを作製した。比較例1に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。図7は、比較例1に係るキャパシタの誘電体における分極と電界強度との関係を示すグラフ(P-Eカーブ)である。図7において、縦軸は分極を示し、横軸は電界強度を示す。図8は、比較例1に係るキャパシタのHf含有層の比誘電率と電界強度との関係を示す。図8において、縦軸は比誘電率を示し、横軸は電界強度を示す。
【0063】
(比較例2)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.053であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るキャパシタを作製した。比較例2に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。図9は、比較例2に係るキャパシタのHf含有層の分極と電界強度との関係を示す。図9において、縦軸は分極を示し、横軸は電界強度を示す。
【0064】
(比較例3)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.077であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係るキャパシタを作製した。比較例3に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例4)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.153であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例4に係るキャパシタを作製した。比較例4に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例5)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.078であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.026であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例5に係るキャパシタを作製した。比較例5に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例6)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.113であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.061であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例6に係るキャパシタを作製した。比較例6に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例7)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.106であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例7に係るキャパシタを作製した。比較例7に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例8)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.078であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.102であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例8に係るキャパシタを作製した。比較例8に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0070】
(比較例9)
Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Siの原子数の比が0.035であった。Hf含有層において、Hf、Si、及びGaの原子数(総数)に対して、Gaの原子数の比が0.153であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例9に係るキャパシタを作製した。比較例9に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0071】
(比較例10)
Hf含有層において、Hf、Ti、及びNbの原子数(総数)に対して、Tiの原子数の比が0.016であった。Hf含有層において、Hf、Ti、及びNbの原子数(総数)に対して、Nbの原子数の比が0.005であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例10に係るキャパシタを作製した。比較例10に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(比較例11)
Hf含有層において、Hf、Sr、及びNbの原子数(総数)に対して、Srの原子数の比が0.005であった。Hf含有層において、Hf、Sr、及びNbの原子数(総数)に対して、Nbの原子数の比が0.003であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例11に係るキャパシタを作製した。比較例11に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例12)
Hf含有層において、Hf、Gd、及びNbの原子数(総数)に対して、Gdの原子数の比が0.059であった。Hf含有層において、Hf、Gd、及びNbの原子数(総数)に対して、Nbの原子数の比が0.006であった。このようにHf含有層の形成のためのRFマグネトロンスパッタリングの条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例12に係るキャパシタを作製した。比較例12に係るキャパシタの、Hf含有層の組成及び誘電特性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0074】
表1に示す通り、実施例1から5に係るキャパシタにおいて、分極及び電界強度に関し非線形な関係が認められた。加えて、実施例1から5に係るキャパシタにおいてヒステリシスロスは小さかった。このため、実施例1から5に係るキャパシタが大容量かつ高効率な充放電の観点から有利であると示唆された。一方、比較例1、6から12に係るキャパシタでは、分極及び電界強度において非線形な関係が認められなかった。例えば、比較例1に係るキャパシタでは、図7及び図8に示す通り、Hf含有層は常誘電体的な誘電特性を有していた。比較例2から5に係るキャパシタでは、分極及び電界強度において非線形な関係が認められたものの、ヒステリシスロスが大きかった。例えば、比較例2に係るキャパシタでは、図9に示す通り、Hf含有層は反強誘電体的な誘電特性を有するものの、ヒステリシスロスが大きく、高効率な充放電の観点から有利であるとは言い難かった。
【0075】
図10は、実施例1から5及び比較例1から9に係るキャパシタのHf含有層におけるSiの組成比及びGaの組成比と、誘電体の誘電特性との関係を示すグラフである。図10において、縦軸は、Hf含有層における、Hf、Si、及びGaの原子数に対するGaの原子数の比yである。横軸は、Hf含有層における、Hf、Si、及びGaの原子数に対するSiの原子数の比xである。図10において、「○」のプロットは実施例を示し、「×」のプロットは比較例を示す。図10に示す通り、キャパシタの誘電体に含まれる、Hf1-x-ySixGayzの組成の酸化物が0.01≦x、0.05≦y≦0.11、及び0.09≦x+y≦0.15の条件を満たすと、大容量かつ高効率な充放電が可能となりやすい。
【0076】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示のキャパシタは、大容量かつ高効率な充放電の観点から有利である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10