IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人 千葉大学の特許一覧

特許7519616熱電変換素子、および熱電変換素子を備える物品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】熱電変換素子、および熱電変換素子を備える物品
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/856 20230101AFI20240712BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20240712BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240712BHJP
【FI】
H10N10/856
H10K85/00
H10K85/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020008491
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021118202
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178138(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021405(WO,A2)
【文献】特開2014-033189(JP,A)
【文献】特開2019-148023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0075917(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107638(US,A1)
【文献】国際公開第2014/010454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/856
H10K 85/00
H10K 85/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオフェン重合体を含む熱電変換層を有し、
前記熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍以上であり、
前記熱電変換層は、Fe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子、及びCe原子の合計の含有量が、前記チオフェン重合体に対して1500ppm以下である熱電変換素子。
【請求項2】
前記回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の7倍以上である請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項3】
チオフェン重合体を含む熱電変換層を有し、
前記熱電変換層の正反射率が、10%以上35%以下であり、
前記熱電変換層は、Fe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子、及びCe原子の合計の含有量が、前記チオフェン重合体に対して1500ppm以下である熱電変換素子。
【請求項4】
前記熱電変換層の正反射率が、15%以上30%以下である請求項3に記載の熱電変換素子。
【請求項5】
前記Fe原子、前記Cu原子、前記Mn原子、前記Cr原子、及び前記Ce原子の合計の含有量が、前記チオフェン重合体に対して、500ppm以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
【請求項6】
前記Fe原子、前記Cu原子、前記Mn原子、前記Cr原子、及前記Ce原子の合計の含有量が、前記チオフェン重合体に対して、100ppm以下である請求項に記載の熱電変換素子。
【請求項7】
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、アミノチオフェン、ヒドロキシチオフェン、及び、アルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
【請求項8】
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、及び、アルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体である請求項に記載の熱電変換素子。
【請求項9】
前記アルコキシチオフェンのアルコキシ基の炭素数が1以上6以下であり、前記アルキルチオフェンのアルキル基の炭素数が、2以上12以下である請求項又は請求項に記載の熱電変換素子。
【請求項10】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の熱電変換素子を備える物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換素子、および熱電変換素子を備える物品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換する熱電変換素子では、各種の無機材料が用いられている。一方、近年、有機材料を用いた熱電変換素子の研究が盛んに進められている。
中でも導電性高分子は、その素子中の電荷の局在により導電能を発現し、必然的に熱電変換能をも示すことから、高性能な材料として期待を集めている。そして、そのような導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン(例えばポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等)といった種々の導電性高分子が検討されている。
【0003】
具体的には、例えば、特許文献1には、「ポリチオフェン重合体と、カーボンナノチューブと、非共役高分子とを含有する熱電変換材料を、熱電変換層に用いた熱電変換素子。」が開示されている。
また、特許文献2には、「導電性高分子、カーボンナノチューブ、及びオニウム塩化合物を含有し、導電率異方性が1.5~10である熱電変換材料を利用した熱電変換素子。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5848284号
【文献】特開2013-098299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、本発明の課題は、チオフェン重合体を含む熱電変換層を有する熱電変換素子において、熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍未満、又は熱電変換層の正反射率が、10%未満である場合に比べ、熱電変換能に優れた熱電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1>
チオフェン重合体を含む熱電変換層を有し、
前記熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍以上である熱電変換素子。
<2>
前記回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の7倍以上である<1>に記載の熱電変換素子。
<3>
チオフェン重合体を含む熱電変換層を有し、
前記熱電変換層の正反射率が、10%以上35%以下である熱電変換素子。
<4>
前記熱電変換層の正反射率が、15%以上30%以下である<3>に記載の熱電変換素子。
<5>
前記熱電変換層は、Fe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子、及びCe原子の合計の含有量が、前記チオフェン重合体に対して1500ppm以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
<6>
前記Fe原子、前記Cu原子、前記Mn原子、前記Cr原子、及び前記Ce原子の合計の含有量が、前記チオフェン重合体に対して、500ppm以下である<5>に記載の熱電変換素子。
<7>
前記Fe原子、前記Cu原子、前記Mn原子、前記Cr原子、及前記Ce原子の合計の含有量が、前記チオフェン重合体に対して、100ppm以下である<6>に記載の熱電変換素子。
<8>
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、アミノチオフェン、ヒドロキシチオフェン、及び、アルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体である<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
<9>
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、及び、アルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体である<8>に記載の熱電変換素子。
<10>
前記アルコキシチオフェンのアルコキシ基の炭素数が1以上6以下であり、前記アルキルチオフェンのアルキル基の炭素数が、2以上12以下である<8>又は<9>に記載の熱電変換素子。
<11>
<1>~<10>のいずれか1項に記載の熱電変換素子を備える物品。
【発明の効果】
【0007】
<1>又は<2>に係る発明によれば、チオフェン重合体を含む熱電変換層を有する熱電変換素子において、熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍未満に比べ、熱電変換能に優れた熱電変換素子が提供される。
【0008】
<3>又は<4>に係る発明によれば、導電性基材と、チオフェン重合体を含む熱電変換層と、を有する熱電変換素子において、熱電変換層の正反射率が、10%未満である場合に比べ、熱電変換能に優れた熱電変換素子が提供される。
【0009】
<5>、<6>、又は<7>に係る発明によれば、熱電変換層において、Fe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子、及びCe原子の合計の含有量がチオフェン重合体に対して1500ppm超えである場合に比べ、熱電変換能に優れた熱電変換素子が提供される。
【0010】
<8>、<9>、又は<10>に係る発明によれば、チオフェン重合体を含む熱電変換層を有する熱電変換素子において、熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍未満、又は熱電変換層の正反射率が、10%未満である場合に比べ、熱電変換層が、チオフェン重合体として、アルコキシチオフェン、アミノチオフェン、ヒドロキシチオフェン、及び、アルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体を含み、熱電変換能に優れた熱電変換素子が提供される。
【0011】
<11>に係る発明によれば、チオフェン重合体を含む熱電変換層を有する熱電変換素子において、熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍未満、又は熱電変換層の正反射率が、10%未満である熱電変換素子を備える場合に比べ、熱電変換能に優れた熱電変換素子を備える物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
なお、段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
また、数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
[熱電変換素子]
本実施形態に係る熱電変換素子は、チオフェン重合体を含む熱電変換層を有する。
そして、本実施形態に係る熱電変換素子は、下記条件(1)および下記条件(2)の少なくとも一方を満たす。
条件(1):熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度が、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍以上である。
条件(2):熱電変換層の正反射率が、10%以上35%以下である。
【0014】
ここで、導電性高分子としてのチオフェン重合体を利用した熱電変換素子は、熱電変換層中の電荷の局在が、チオフェン重合体の分子の配向に強く影響を受けることから、分子の配向性が低いと発電量の再現性に乏しく、ばらつく傾向がある。そのため、熱電変換能が低い。
【0015】
一方、本実施形態に係る熱電変換素子は、チオフェン重合体を含む熱電変換層が上記条件(1)および下記条件(2)の少なくとも一方を満たすようにすることで、熱電変換層中のチオフェン重合体の配向性が高い状態となると考えられる。そのため、熱電変換層中の電荷の局在化が効率良く生じ、発電量の再現性が高く、ばらつきも少なくなる。
よって、本実施形態に係る熱電変換素子は、熱電変換能に優れる。
【0016】
以下、本実施形態に係る熱電変換素子の詳細について説明する。
【0017】
<熱電変換層>
(熱電変換層のX線回折スペクトル)
熱電変換層のX線回折スペクトルの、回折角(2θ)7.9°のピーク強度は、回折角(2θ)25.8°のピーク強度の5倍以上であるが、熱電変換能向上の観点から、6倍以上が好ましく、7倍以上がより好ましい。
【0018】
回折角(2θ)25.8°のピーク強度に対する回折角(2θ)7.9°のピーク強度比を上記範囲とするには、例えば、1)後述する金属成分(A)の量を制限する方法、2)湿式法で熱電変換層を形成する方法、3)湿式法の塗布液の種類を選択する方法等が挙げられる。
【0019】
熱電変換層のX線回折スペクトルの測定方法は、次の通りである。
薄膜X線回折装置 X’Pert MRD(マルバーン・パナリティカル社製)を用いて、基板上に作製した熱電変換層を、X線の入射角2θ/ωを変化させ回折スペクトルを測定し、各回折角のピーク強度を得る。
そして、得られたX線回折スペクトルから、回折角(2θ)7.9°のピーク強度と回折角(2θ)25.8°のピーク強度との強度比を求める。
【0020】
(熱電変換層の正反射率)
熱電変換層の正反射率は、10%以上35%以下であるが、熱電変換能向上の観点から、12%以上33%以下が好ましく、15%以上30%以下がより好ましい。
【0021】
正反射率を上記範囲とするには、例えば、1)後述する金属成分(A)の量を制限する方法、2)湿式法で熱電変換層を形成する方法、3)湿式法の塗布液の種類を選択する方法等が挙げられる。
【0022】
熱電変換層の正反射率の測定方法は、次の通りである。
紫外可視分光光度計 UV-2600(株式会社島津製作所製)に積分球を取り付け、鏡面板を標準として、正反射スペクトルを測定し、600nmの反射率を正反射率として求める。
【0023】
(熱電変換層の組成)
熱電変換層は、チオフェン重合体を含む。熱電変換層中のチオフェン重合体量は、熱電変換層全質量に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、また、90質量%以上が挙げられる。
【0024】
チオフェン重合体は、二以上のチオフェンが互いに結合して重合した重合体である。
チオフェン重合体は、単独のモノマーから重合されたものでも、複数種のモノマーから重合されたものでもよい。
【0025】
単独のモノマーから重合されたチオフェン重合体としては、下記一般式(TP)で示される化合物があげられる。
【0026】
【化1】
【0027】
一般式(TP)において、Rは、置換基であり、熱電変換能を付与できる限りにおいて限定されるわけではないが、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、シアノ基、又は、ハロゲンを示す。
より確実に膜に金属光沢をえる観点から、Rは、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、又は、ヒドロキシル基であることが好ましく、アルコキシ基、アルキル基、又はアミノ基がより好ましく、アルコキシ基、又はアルキル基がより好ましい。
n1は、1又は2の整数を示す。つまり、Rは一つのチオフェン環に一つであっても、二つであってもよい。n1が2の整数を示す場合、各チオフェン環のRは同じであっても異なっていてもよい。
nは、2以上の整数を示す。
【0028】
ここで、「チオフェン」は、硫黄を含む複素環式化合物であって、下記一般式(TP1)で示される化合物である。なお、下記一般式(TP1)中の、R、n1の定義は上記一般式(TP)と同様である。
【0029】
【化2】
【0030】
一般式(TP1)中、Rがアルコキシ基である場合、炭素数は1以上8以下(特に、炭素数1又は2)であることが好ましい。この場合、チオフェンとして具体的には、3-メトキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3-エトキシチオフェン、3,4-ジエトキシチオフェン、3-プロポキシチオフェン、3-ブトキシチオフェン、3-ヒドロキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン等を例示することができる。
特に、アルコキシ基の炭素数を1又は2とすることで、チオフェン重合体の層状配向構造を効果的に発現させることができる。
【0031】
一般式(TP1)中、Rがアルキル基である場合、炭素数は2以上12以下(特に、炭素数5以上12以下、炭素数4以上7以下、又は炭素数5以上7以下)であることが好ましい。この場合、チオフェンとして具体的には、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘプチルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3-ノニルチオフェン、3-デシルチオフェン、3-ウンデシルチオフェン、3-ドデシルチオフェン、等を例示することができる。
特に、アルキル基の炭素数を5以上7以下とすることで、チオフェン重合体の層状配向構造を効果的に発現させることができる。
【0032】
一般式(TP1)中、Rがアミノ基である場合、チオフェンとしては、3-アミノチオフェン、3,4-ジアミノチオフェン、3-メチルアミノチオフェン、3-ジメチルアミノチオフェン、3-チオフェンカルボキシアミド、4-(チオフェン-3-イル)アニリン等を例示することができる。またこの場合において、炭素が含まれる場合における炭素数も1又は2であることが好ましい.
【0033】
つまり、これらの中でも、チオフェン重合体は、熱電変換能向上の観点から、アルコキシチオフェン、アミノチオフェン、ヒドロキシチオフェン、及び、アルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体であることが好ましく、アルコキシチオフェン、及び、アルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体がより好ましい。
そして、同観点から、アルコキシチオフェンのアルコキシ基の炭素数は、1以上6以下が好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。アルキルチオフェンのアルキル基の炭素数は、2以上12以下が好ましく、4以上7以下であることがより好ましく、5以上7以下がさらに好ましい。
特に、チオフェン重合体としては、アルコキシ基の炭素数が1以上3以下となるアルコキシチオフェンがよい。
【0034】
チオフェン重合体は、熱電変換能向上の観点から、重量平均分子量の分布ピークが200以上30000以下(好ましくは500以上20000以下、より好ましくは10000以下)の範囲内にあるチオフェン重合体であることがよい。つまり、チオフェン重合体は、いわゆるオリゴマーであることがよい。
チオフェン重合体の分子量を上記の範囲に抑えることで、チオフェン重合体の層状配向構造を効果的に発現させることができる。
【0035】
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー(株)製、HPLC1100を用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel GMHHR-M+TSKgel GMHHR-M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行う。そして、重量平均分子量(Mw)は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0036】
チオフェン重合体は、例えば、酸化重合法又は電解重合によって得られる。
【0037】
-酸化重合法-
酸化重合法は、酸化剤を用いて液相及び固相の少なくともいずれかにおいて、チオフェンを重合する方法である。
【0038】
酸化剤としては、例えば、第二鉄塩、第二銅塩、セリウム塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸アンモニウム、三フッ化ホウ素、臭素酸塩、過酸化水素、塩素、臭素及びヨウ素を挙げることができ、
【0039】
これらの中でも第二鉄塩が好ましい。なお、第二鉄塩は、水和物であってもよい。
第二鉄塩の対となるイオンとしては、例えば、塩化物イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等を挙げられる。これらの中でも、イオンとして、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、及び、テトラフルオロホウ酸イオンの少なくともいずれかを用いると、金色に近い金属光沢を得ることができ好ましい。金色に近い金属光沢を得ることができる理由は、推測の域であるが、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンが重合の際、チオフェン重合体にドーパントとして組み込まれ、チオフェン重合体内に生成されるカチオン部位と結合して安定化し、規則正しい構造の形成に寄与するためであると考えられる。実際のところ金属光沢を有する膜を分析するとこれらが安定的に存在することが確認されている。
【0040】
酸化重合法は、溶媒中において行うことが好ましい。
溶媒は、酸化剤及びチオフェンを十分に溶解し効率的に重合させることができる溶媒が適用される。溶媒としては、高い極性を有し、ある程度の揮発性を有する有機溶媒であることが好ましい。
溶媒として具体的には、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、ニトロメタン、1-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、アニソール、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、トリクロロエチレン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、エタノール、ブタノール、ピリジン、ジオキサン、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、溶媒としては、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレンが好ましい。これら溶媒は、チオフェン重合体が可溶であり、熱電変換能向上の観点から好ましい。
【0041】
ここで、溶媒に対するチオフェン及び酸化剤の量は、適宜調整可能であり限定されるわけではないが、溶媒の重量を1とした場合、チオフェンの重量は0.00007以上7以下であることが好ましく、より好ましくは0.0007以上0.7以下であり、過塩素酸鉄(III)n水和物の場合、重量は0.0006以上6以下であることが好ましく、より好ましくは0.006以上0.6以下である。
【0042】
また、チオフェンと酸化剤との比としては、チオフェンの重量を1とした場合、酸化剤の重量は、0.1以上1000以下であることが好ましく、1以上100以下であることがより好ましい。
【0043】
チオフェンと酸化剤を溶媒に一度に加えてもよいが、溶媒にチオフェンを加えた溶液と、酸化剤を溶媒に加えた溶液の二種類の溶液を別途作製し、これらを加え合わせることで重合反応を行わせてもよい。
【0044】
酸化重合法で合成したチオフェン重合体は、溶液のまま使用してもよいし、溶媒を除去して粉末状のチオフェン重合体(チオフェン重合体粉末)として使用してもよい。
なお、酸化剤において上記過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、塩化物イオンを含むものを用いた場合、上記重合体に安定的に結合されているため残り、熱電変換能を安定的に維持することができる。
【0045】
-電解重合法-
電解重合法は、重合体の前駆体となる物質(モノマー)を、支持電解質を含む溶液に溶解し、その後モノマーを電極酸化することにより、導電体上に溶液不溶性重合体(その膜)を形成する手法をいう。
【0046】
電解重合法において、陽極酸化させる際、電位掃引法を用いることが好ましい。電位掃引法とは、支持電解質を含む溶液に一対の電極を浸漬し、一定の速度で電位を変化させつつ印加する処理をいう。
【0047】
電解溶液の溶媒としては、特に限定されるわけではないが、例えば水、アルコールの他、藤島昭、相澤益男、井上 徹、電気化学測定法、技報堂出版、上巻107-114頁、1984年に記載の溶媒を採用できる。また、種々の溶媒の混合溶媒も好ましい。
【0048】
電解溶液の支持電解質は、電気分解において必須の成分であり、溶媒に十分溶解し、電気分解されにくいカチオン又はアニオンを構成要素とする電解質が挙げられる。
支持電解質として具体的には、カチオンに注目すれば、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩が好ましく、アニオンに注目すれば、例えばハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、三フッ化ホウ素塩、六フッ化リン酸塩が好ましい。
支持電解質の濃度は、限定されるわけではないが、0.001M以上溶解度以下であることが好ましく、0.01M以上1M以下であることがより好ましい。
【0049】
電解溶液中におけるチオフェン(モノマー)の濃度は、限定されるわけではないが、0.1mM以上溶解度以下であることが好ましく、より具体的には1mM以上1M以下であることがより好ましい。
【0050】
電解重合は、溶液を入れた電解容器に導電体(動作電極として機能させる)を浸漬し、これに対向電極、必要に応じて電位の基準となる参照電極の3本の電極を用いる3電極式、又は、導電体と対向電極だけを用いる2電極式を採用することができる。
なお、導電体の電位を基準となる参照電極に対して厳密に規定することのできる3電極式は、本方法によって形成されるチオフェン重合体を含む熱電変換層を再現性良く作製することができる点においてより好ましい。
【0051】
動作電極としての導電体は、3電極式及び2電極式のいずれの場合においても、電極酸化に対して安定な物質であればよく、例えば、上記したように、酸化インジウムスズ(以下「ITO」と略記する。)、酸化錫等の導電膜が塗布された電極(透明ガラス電極、金属電極、グラシーカーボン電極等)を好適に用いることができる。また、対向電極としては、上記電極材料に加え、ステンレスや銅板などの金属電極を好適に用いることができる。また、参照電極は、例えば銀・塩化銀電極(Ag/AgCl電極)、飽和カロメル電極を好適に用いることができる。
【0052】
電解重合法における電位掃引法は、負電位と正電位の間で掃引することが好ましい。この場合、負電位は、-1.5V以上-0.01V以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは-1.0V以上-0.1V以下の範囲、さらに好ましくは-0.7V以上-0.2V以下の範囲である。また、正電位は、+1.0V以上+3.0V以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは+1.0V以上+2.0V以下の範囲、さらに好ましくは+1.0V以上+1.5V以下の範囲内である。
【0053】
電位掃引法は、掃引速度について、チオフェン重合体を含む熱電変換層を製造することができる限りにおいて限定されるわけではないが、0.1mV/秒以上10V/秒以下の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは1mV/秒以上1V/秒以下の範囲、さらに好ましくは2mV/秒以上300mV/秒以下の範囲内である。
【0054】
電解重合の時間としては、上記印加電圧の範囲内において1秒以上5時間以下の範囲内において行うことが好ましく、10秒以上1時間以下の範囲内において行うことがより好ましい。
【0055】
電解重合時の電気分解の温度としては、-20℃以上60℃以下の範囲内にあることが好ましい。
【0056】
電解重合時の電気分解は、大気中の成分物質が関与することの少ない反応でありまた比較的低電位で行われるため、大気中で行うことができる。電解液中の不純物の酸化など、生成した膜を汚染する可能性を回避する観点から、窒素ガスやアルゴンガス雰囲気中で行うことが好ましいが、汚染の心配はほとんど無い。しかしながらそれでもやはり、電解重合を形成する場合、溶液中に酸素が多く存在すると電極反応に影響を与えてしまうおそれがあるため、不活性ガス(窒素ガスやアルゴンガス)によるバブリングを行うことも有用である。
【0057】
(熱電変換層のその他組成)
熱電変換層は、Fe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子、及びCe原子の合計の含有量(以下、「金属成分(A)の含有量」とも称する)が、チオフェン重合体に対して1500ppm以下であることが好ましい。
【0058】
ここで、従来、チオフェン重合体を含む熱電変換層は、チオフェン重合体がスタックにより配向して、熱電変換能を発揮する。
しかし、不純物等の影響により、スタック状態が崩れると、チオフェン重合体の配向性が低下し、熱電変換能が低下することがある。チオフェン重合体のスタック状態の崩れは、不純物がチオフェン重合体の分子鎖の間に入ることで生じているものと推測される。
そして、チオフェン重合体のスタック状態の崩れを引き起こす不純物は、チオフェン重合体の合成時における、酸化重合に利用する酸化剤及び電解重合に利用する電解質の、金属成分である。
【0059】
そこで、熱電変換層は、金属成分(A)の含有量が、チオフェン重合体に対して1500ppm以下であることが好ましい。
そして、金属成分(A)の含有量を上記範囲にすると、チオフェン重合体の配向性が高まり、上記条件(1)および上記条件(2)を満たしやすくなる。その結果、熱電変換能が高まる。
【0060】
金属成分(A)の含有量(Fe原子、Cu原子、Mn原子Cr原子、Ce原子の合計の含有量)は、チオフェン重合体に対して1500ppm以下であるが、熱電変換能向上の観点から、500ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。
ただし、ドーピング状態を安定化させるために多少の金属分を含んでいてもよく、金属成分(A)の含有量は、1ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましい。
【0061】
金属成分(A)の含有量を上記範囲にするには、次の方法が挙げられる。
1)チオフェン重合体を合成後、得られたチオフェン重合体に対して、チオフェン重合体が不溶な溶剤(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール)による洗浄を加熱下で行う方法。
2)チオフェン重合体を合成後、得られたチオフェン重合体を良溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等)に溶解させた溶液を、アルコール等の貧溶剤に滴下し、チオフェン重合体を再沈殿する方法。
3)チオフェン重合体を合成後、得られたチオフェン重合体を良溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等)に溶解させた溶液にアルコール等の貧溶剤を滴下して、チオフェン重合体を逆再沈殿する方法。
【0062】
金属成分(A)の含有量は、次の通り測定する。
まず、測定対象が固体物である場合、測定対象を硝酸に溶解し、硝酸溶液を得る。
次に、硝酸溶液をマイクロウェーブ(最大到達温度=260℃)で灰化処理後、灰化物を水に溶解又は分散させた水溶液を得る。
そして、得られた水溶液に対して、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer ; ICP-OES)により、該当金属成分を定量する。
【0063】
熱電変換層は、ドーパントとして、オニウム塩化合物、酸化剤(ハロゲン、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、電解質アニオン等)、酸性化合物(ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物、スルホン酸化合物等)、熱励起アシスト剤(導電性高分子のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital;最低空軌道)よりもエネルギー準位の低いLUMOを有する化合物であって、チオフェン重合体にドープ準位を形成しない化合物)を含んでもよい。
熱電変換層は、その他成分として、酸化防止剤、対光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤等の周知の添加剤を含んでもよい。
【0064】
(その他構成)
本実施形態に係る熱電変換素子は、熱電変換層以外の構成を有していてもよい。
本実施形態に係る熱電変換素子の態様としては、具体的には、下記(1)~(2)等の周知の態様が挙げられる。
(1)導電性基材と、導電性基材上に設けられた熱電変換層と、を有する態様
(2)基材と、基材上に設けられた一対の電極と、一対の電極間に設けられた熱電変換層と、を有する態様
【0065】
導電性基材としては、表面に導電層(後述する電極の材料で構成された層)が形成された基材が挙げられる。
基材としては、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等が挙げられる。
電極としては、透明電極(ITO、ZnO等の電極)、金属電極(銀、銅、金、アルミニウム、クロム、ニッケルなどの電極)、炭素材料の電極(CNT、グラフェンなどの電極)、有機材料の電極(PEDOT、PSS等の電極)等が挙げられる。電極としては、導電性粒子含有導電性ペースト(銀、カーボンなどの導電性粒子を分散した導電性ペースト)、金属ワイヤー含有導電性ペースト(銀、銅、アルミニウムなどの金属ナノワイヤーを含有する導電性ペースト)等を使用した電極も挙げられる。
【0066】
なお、熱電変換層の厚さは、熱電変換能向上の観点から、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、1μm以上100μm以下がより好ましい。
【0067】
(物品)
本実施形態に係る物品は、本実施形態に係る熱電変換素子を備える物品である。
熱電変換素子を形成する対象の物品は、ウエアラブル温度センサー、及びこれらの電源等が挙げられる。
【実施例
【0068】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」又は「%」は、特に断りがないかぎり、質量基準である。
【0069】
(実施例1)
次の通り、チオフェン重合体粉末(A1)を得た。
3-メトシキチオフェン11.4gを三つ口フラスコに採取しアセトニトリル0.5Lに溶解し系内を窒素で置換した後、0℃に冷却した。そこに過塩素酸〔第二〕鉄(III)n水和物101gをアセトニトリル0.5Lに溶解させた反応液を5度以下に保ちながら滴下した。その後室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。その後メタノール1Lを加え、更に1時間攪拌した。チオフェン重合体を含む本液を遠心分離機により液-固体を分離し固形分を採取し減圧下60度で16時間乾燥し、チオフェン重合体粉末(A1)10.5gを得た。
【0070】
次に、得られたチオフェン重合体粉末(A1)を洗浄処理した。具体的には、次の通りである。
チオフェン重合体粉末(A1)2.0gをビーカーに取りメタノール50mlを加え45度にて1時間攪拌した。本液を遠心分離機により液-固体を分離し固形分を採取し、ビーカーに移し、更にメタノール50mlを加え45度にて1時間攪拌した。その後、遠心分離機により液-固体を分離し固形分を分離し固形分を採取し減圧下60度で16時間乾燥し、チオフェン重合体粉末(A2)1.8gを得た。
【0071】
次に、得られたチオフェン重合体粉末(A2)1部をニトロメタン99質量部に添加し、スターラーにて1時間攪拌したのち、22時間静置した。得られた溶液を塗布液(A)とした。
【0072】
次に、縦25mm×横10mmのITOガラス基板上に、塗布液(A1)をキャストし、25℃にて45分乾燥することで、厚さ1.5μmの熱電変換層を形成し、熱電変換素子Aを得た。
【0073】
(実施例2)
溶媒としてのニトロメタンに代えて、γブチロラクトンを用いた以外は、塗布液(A)と同様にして、塗布液(B)を得た。
そして、塗布液(B)を用い、かつ塗布液(B)をキャストしたのち、60℃にて45分乾燥した以外は、熱電変換素子Aと同様にして、熱電変換素子Bを得た。
【0074】
(比較例1)
チオフェン重合体粉末(A2)に代えて、洗浄処理を施していないチオフェン重合体粉末(A1)を用いた以外は、塗布液(A)と同様にして、塗布液(C)を得た。
そして、塗布液(C)を用いた以外は、熱電変換素子Aと同様にして、熱電変換素子Cを得た。
【0075】
(比較例2)
洗浄処理を施していないチオフェン重合体粉末(A1)を、縦25mm×横10mmのITOガラス基板上に加圧延伸し、厚さ0.6μmの熱電変換層を形成して、熱電変換素子Dを得た。
【0076】
(比較例3)
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホナート)水溶液(シグマアルドリッチ社:560596)を、塗布液(D)して準備した。
そして、塗布液(D)を用いた以外は、熱電変換素子Aと同様にして、熱電変換素子Dを得た。
【0077】
(比較例4)
ポリアニリン溶液(シグマアルドリッチ社:530670)にドデシルベンゼンスルホン酸(シグマアルドリッチ社:522953)でドーピングし、塗布液(E)を得た。
そして、塗布液(E)を用いた以外は、熱電変換素子Aと同様にして、熱電変換素子Dを得た。
【0078】
(評価)
-金属成分(A)の含有量-
各例の熱電変換素子の熱電変換層における、下記各種特性を既述の方法により測定した。
・X線回折スペクトルの、回折角(2θ)25.8°のピーク強度に対する回折角(2θ)7.9°のピーク強度比(表中、「XRDピーク強度比 7.9°/25.8°」と表記)
・正反射率
・金属成分(A)の含有量
【0079】
-熱電変換能-
各例の熱電変換素子の一方の端面の表面をカーボンヒーターにより60℃に加熱した。加熱により素子の両端部に発生した電位差(熱起電力)を、マルチメーター(フルーク社179)で測定した。そして、下記基準で評価した。
A(◎):極めて良好な発電性能あり
B(○):良好な発電性能あり
C(△):微小な発電性能あり
D(×):発電せず
【0080】
【表1】
【0081】
上記結果から、本実施例の熱電変換素子は、比較例の熱電変換素子に比べ、熱電変換能が高いことがわかる。