(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】制御方法、プログラム、及び分散電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240712BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240712BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240712BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240712BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J7/35 K
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2020067046
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】小田 政志
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-010542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 3/46
H02J 7/35
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な分散電源の出力電力が、前記施設に存在する前記負荷での全消費電力と等しくなるように、前記分散電源の出力電力を制御する第1制御処理と、
前記第1制御処理の実行中に、前記系統電源の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う第2制御処理と
、
前記系統電源に出力される電力が閾値以上になると、前記系統電源への逆潮流が発生していると検知する逆潮流検知処理と、を含み、
前記系統安定化指令を受けている場合に、前記逆潮流検知処理では、前記閾値を、前記系統安定化指令で指示された前記系統電源への出力又は前記系統電源からの入力の指令値を加味した値とする、
制御方法。
【請求項2】
前記分散電源は、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電システムを含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記分散電源は、蓄電池を有する蓄電システムを含む、
請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第2制御処理では、前記蓄電システムが前記蓄電池から放電させる処理を少なくとも行う、
請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第2制御処理では、前記蓄電システムが前記蓄電池を充電する処理を少なくとも行う、
請求項3又は4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記第2制御処理では、前記施設が前記系統電源から電力の供給を受ける受電点を通過する電力が、前記系統安定化制御のために必要な電力となるように、前記分散電源の入出力を制御する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記受電点を通過する電力は、前記受電点での実測値に基づいている、
請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記逆潮流検知処理では、前記施設から前記系統電源に流れる電流を検知する電流センサの検知結果に基づいて、前記系統電源に出力される電力が閾値以上になると、前記系統電源への逆潮流が発生していると検知す
る、
請求項1~7のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記施設が前記系統電源から電力の供給を受ける受電点で電流を検知する電流センサの異常の有無を、前記分散電源の出力を変化させた場合の前記電流センサの検知結果に基づいて検知する異常検知処理を更に含み、
前記異常検知処理では、前記第1制御処理での前記分散電源の出力の第1目標値、及び前記第2制御処理での前記分散電源の出力の第2目標値の両方を合算した目標値に対して、前記分散電源の出力を変化させた場合の前記電流センサの検知結果に基づいて、前記電流センサの異常の有無を検知する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記施設が前記系統電源から電力の供給を受ける受電点で電流を検知する電流センサの異常の有無を、前記分散電源の出力を変化させた場合の前記電流センサの検知結果に基づいて検知する異常検知処理を更に含み、
前記異常検知処理は、
前記第1制御処理での前記分散電源の出力の第1目標値に対して前記分散電源の出力を変化させた場合の前記電流センサの検知結果に基づいて、前記電流センサの異常の有無を検知する第1検知処理と、
前記第2制御処理での前記分散電源の出力の第2目標値に対して前記分散電源の出力を変化させた場合の前記電流センサの検知結果に基づいて、前記電流センサの異常の有無を検知する第2検知処理と、を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項11】
コンピュータシステムに、
請求項1~10のいずれか1項に記載の制御方法を実行させるための、
プログラム。
【請求項12】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な分散電源の出力電力が、前記施設に存在する前記負荷での全消費電力と等しくなるように、前記分散電源の出力電力を制御する第1制御部と、
前記第1制御部による制御中に、前記系統電源の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う第2制御部と、
前記系統電源に出力される電力が閾値以上になると、前記系統電源への逆潮流が発生していると検知する逆潮流検知部と、を備え、
前記系統安定化指令を受けている場合に、前記逆潮流検知部では、前記閾値を、前記系統安定化指令で指示された前記系統電源への出力又は前記系統電源からの入力の指令値を加味した値とする、
分散電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御方法、プログラム、及び分散電源システムに関する。より詳細には、本開示は、分散電源の出力電力を制御するための制御方法、プログラム、及び分散電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、系統電源に系統連系する交流電路に接続された蓄電装置と、交流電路に流れる電流を検出する電流センサと、を備える系統連系蓄電システムを開示する。蓄電装置は、交流電路に接続されており、系統連系が可能である。蓄電装置から負荷に電力を供給する場合に、電流センサが逆潮を検出すると、蓄電装置は出力を制限して逆潮を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の系統連系蓄電システムでは、分散電源である蓄電装置から電力を出力する場合に、電流センサが逆潮を検出すると、蓄電装置が出力を制限して逆潮を防止するため、電力を系統電源に逆潮流する系統安定化制御を行うことができなかった。
【0005】
本開示の目的は、系統安定化制御を実行不能な事態を回避できる制御方法、プログラム、及び分散電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の制御方法は、第1制御処理と、第2制御処理と、逆潮流検知処理と、を含む。分散電源は、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記第1制御処理は、前記分散電源の出力電力が、前記施設に存在する前記負荷での全消費電力と等しくなるように、前記分散電源の出力電力を制御する。前記第2制御処理は、前記第1制御処理の実行中に、前記系統電源の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う。前記逆潮流検知処理では、前記系統電源に出力される電力が閾値以上になると、前記系統電源への逆潮流が発生していると検知する。前記系統安定化指令を受けている場合に、前記逆潮流検知処理では、前記閾値を、前記系統安定化指令で指示された前記系統電源への出力又は前記系統電源からの入力の指令値を加味した値とする。
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータシステムに、前記制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0008】
本開示の一態様の分散電源システムは、第1制御部と、第2制御部と、逆潮流検知部と、を備える。分散電源は、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記第1制御部は、分散電源の出力電力が、前記施設に存在する前記負荷での全消費電力と等しくなるように、前記分散電源の出力電力を制御する。前記第2制御部は、前記第1制御部による制御中に、前記系統電源の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う。前記逆潮流検知部は、前記系統電源に出力される電力が閾値以上になると、前記系統電源への逆潮流が発生していると検知する。前記系統安定化指令を受けている場合に、前記逆潮流検知部では、前記閾値を、前記系統安定化指令で指示された前記系統電源への出力又は前記系統電源からの入力の指令値を加味した値とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る分散電源システムを含む全体システムの概略的なシステム構成図である。
【
図2】
図2は、同上の分散電源システムの制御方法を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、同上の分散電源システムの制御方法を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、同上の分散電源システムが備える異常検知部の異常検知処理を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、同上の分散電源システムが負荷追従制御を行う場合の異常検知処理を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、同上の分散電源システムが系統安定化制御を行う場合の異常検知処理を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、同上の分散電源システムの異常検知処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、同上の分散電源システムの異常検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態の分散電源システム1は、
図1に示すように、第1制御部11と、第2制御部12と、を備える。分散電源40は、系統電源100から電力供給を受ける需要家の施設F1に設けられ、施設F1に存在する負荷L1に対して電力を供給可能である。第1制御部11は、分散電源40の出力電力が、施設F1に存在する負荷L1での全消費電力と等しくなるように、分散電源40の出力電力を制御する。第2制御部12は、第1制御部11による制御中に、系統電源100の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、系統電源100の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う。
【0013】
また、本実施形態の分散電源システム1が行う制御方法は、第1制御処理と、第2制御処理とを含む。第1制御処理では、分散電源40の出力電力が、施設F1に存在する負荷L1での全消費電力と等しくなるように、分散電源40の出力電力を制御する。第2制御処理では、第1制御処理の実行中に、系統電源100の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、系統電源100の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う。
【0014】
本実施形態の分散電源システム1は、系統電源100から電力供給を受ける需要家の施設であって、例えば、戸建の住宅のような施設F1(
図1参照)に適用される。なお、分散電源システム1が適用される施設F1は、戸建の住宅に限定されず、集合住宅(マンション)であってもよい。更に、施設F1は、住宅に限らず、非住宅、例えば、オフィスビル、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等であってもよい。施設F1に存在する負荷L1は、系統電源100又は分散電源40から供給される電力で動作する電気機器である。
【0015】
第1制御部11が行う第1制御処理は、分散電源40の出力電力が、施設F1に存在する負荷L1での全消費電力に等しくなるように、分散電源40の出力電力を制御する処理であり、第1制御処理を負荷追従制御とも言う。第1制御部11が第1制御処理を行っている状態では、分散電源40の出力電力の全量(100%)が施設F1において消費される状態(自家消費100%の状態)となる。この状態では系統電源100からの買電も、系統電源100への売電も発生していない。
【0016】
第2制御部12が行う第2制御処理は、第1制御処理の実行中に、系統安定化指令を受けた場合に、系統電源100の電力品質を安定化するための系統安定化制御を実行する処理である。系統電源100の電力品質を安定化するとは、例えば、系統電源100から供給される交流電圧の電圧変動及び周波数変動をそれぞれ抑制することを言う。系統安定化制御は、分散電源40を用いて、系統電源100の受給バランスを改善するために行う処理である。系統安定化制御は、系統電源100の供給電力が電力需要を下回る場合に、分散電源40が系統電源100に電力を出力(逆潮流)することによって、系統電源100による供給電力の不足を補う制御を含み得る。また、系統安定化制御は、系統電源100の供給電力が電力需要を上回る場合に、施設F1が系統電源100から受電する電力を増やすことによって、系統電源100の供給電力の余剰を低減する制御を含み得る。また、系統安定化制御は、負荷L1で消費される有効電力の過不足を調整する制御を含み得る。また、系統安定化制御は、系統電源100の系統電圧の高低を調整するための有効電力入出力調整と、系統電圧の周波数の高低を調整するための有効電力入出力調整と、系統電圧の高低を調整するための無効電力入出力調整との少なくとも1つを含み得る。
【0017】
分散電源システム1の第1制御部11が第1制御処理を実行している場合、分散電源40の出力電力を系統電源100に出力することはできないが、第1制御処理の実行中に系統安定化指令を受けた場合、第2制御部12が系統安定化制御を実行する。したがって、本実施形態の分散電源システム1によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0018】
(2)詳細
(2.1)構成
以下、本実施形態に係る分散電源システム1を含む全体システムについて図面を参照して詳しく説明する。
【0019】
本実施形態では、施設F1に、分散電源システム1と、負荷L1と、受信端末60と、が設けられている。
【0020】
負荷L1は、施設F1内で使用される1又は複数の電気機器を含む。1又は複数の電気機器は、系統電源100及び分散電源システム1のいずれかから電力供給を受けて動作する。
【0021】
受信端末60は、インターネット等のネットワークNT1を介して外部サーバ110と通信する通信機能を有している。外部サーバ110は、施設F1に電力を供給する電力事業者が運営するサーバ装置である。外部サーバ110は系統電源100の需給バランスを常時監視している。外部サーバ110は、系統電源100の供給電力と電力需要との差が所定の閾値を超えると、系統安定化のための制御指令をネットワークNT1経由で需要家の施設F1の受信端末60に出力する。ここで、系統電源100の供給電力が電力需要に比べて不足している場合、外部サーバ110は、例えば所定電力値の逆潮電力を系統電源100に逆潮流させる制御指令を受信端末60に出力する。一方、系統電源100の供給電力が電力需要に比べて過剰である場合、外部サーバ110は、例えば施設F1が系統電源100から受け取る電力を所定電力値だけ増やすように指示する制御指令を受信端末60に出力する。
【0022】
次に、分散電源システム1について説明する。
【0023】
分散電源システム1は、コントローラ10と、分散電源40と、インバータ50と、を備える。本実施形態では、施設F1に、分散電源40として、太陽光発電システム20(発電システム)と、蓄電システム30と、が設けられている。つまり、本実施形態では、分散電源40が、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電システムとして太陽光発電システム20を含んでいる。また、分散電源40が、蓄電池31を有する蓄電システム30を含んでいる。
【0024】
ここにおいて、蓄電システム30は、再生可能エネルギを利用した太陽光発電システム20等の発電システムに比べて出力が安定しており、蓄電池31の空き容量に充電を行うことも可能であるので、系統安定化制御のために蓄電システム30の容量が利用される。本実施形態では、上述のように、分散電源40が、蓄電システム30とは別の電源を含んでいる。具体的には、分散電源40が、再生可能エネルギである太陽光を受けて発電を行う太陽光発電システム20を含んでいる。なお、分散電源40は、太陽光以外の風力、水力、波力、潮力、又は地熱等の再生可能エネルギを利用して発電を行う発電システムを含んでもよいし、化石燃料を利用して発電を行う燃料電池等の発電システムを含んでもよい。
【0025】
太陽光発電システム20は、太陽電池21と、太陽電池21の出力電圧を電圧変換するPV(Photovoltaics)用コンバータ22(電力変換装置)とを備える。
【0026】
太陽電池21は、シリコン系又は化合物半導体系の複数の太陽電池セルを備え、複数の太陽電池セルは直列又は並列に接続されている。
【0027】
PV用コンバータ22は、太陽電池21の出力電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換してインバータ50に出力する。PV用コンバータ22は、例えば最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)方式で電力変換を行う機能を有している。最大電力点追従方式は、気象条件等の変化に応じて変動する最適動作点に追従しながら電力変換を行う機能である。
【0028】
蓄電システム30は、蓄電池31と、蓄電池用コンバータ32とを備える。
【0029】
蓄電池31は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池であるが、蓄電池31はリチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池等の他の二次電池でもよい。
【0030】
蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の充電及び放電を行う機能を有している。蓄電池31の充電時は、蓄電池用コンバータ32は、インバータ50から供給される直流電流の電流値又は直流電圧の電圧値を調整して蓄電池31を充電する。蓄電池31の充電を開始してから蓄電池31の充電電圧が最大電圧に上昇するまでの間、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31に一定の電流を流して蓄電池31を充電するCC(Constant Current)充電を行う。そして、蓄電池31の充電電圧が最大電圧に達すると、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の充電電圧を最大電圧とするように、蓄電池31に一定値の電圧を印加して蓄電池31を充電するCV(Constant Voltage)充電を行う。また、蓄電池31の放電時は、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の出力電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換して、インバータ50に出力する。
【0031】
インバータ50は、直流と交流とを変換する変換機能を有している。インバータ50は、PV用コンバータ22又は蓄電池用コンバータ32から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、負荷L1又は系統電源100に出力する。インバータ50から出力された交流電圧が系統電源100に出力されることによって、施設F1から系統電源100に電力が逆潮流される。また、インバータ50は、系統電源100から入力される交流電圧を直流電圧に変換して蓄電池用コンバータ32に出力し、蓄電池用コンバータ32に蓄電池31を充電させる。また、インバータ50は、PV用コンバータ22から入力される直流電圧を蓄電池用コンバータ32に出力し、蓄電池用コンバータ32に蓄電池31を充電させることもできる。
【0032】
コントローラ10は、分散電源40が備える太陽光発電システム20及び蓄電システム30と、インバータ50との動作を制御する。
【0033】
コントローラ10は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムがコントローラ10として機能する。本実施形態のコントローラ10は、上述した第1制御部11及び第2制御部12の機能を備え、更に、逆潮流検知部13、及び異常検知部14の機能を備えている。
【0034】
第1制御部11は、分散電源40の出力電力が、施設F1に存在する負荷L1での全消費電力と等しくなるように、分散電源40の出力電力を制御する。太陽光発電システム20は、日射量に応じて出力可能な電力を出力している。したがって、第1制御部11は、太陽光発電システム20と負荷L1での全消費電力との差分を、蓄電システム30からの出力(放電)又は蓄電システム30への入力(充電)で調整する。第1制御部11は、例えば、受電点PT1に流れる電流を検知する電流センサ80の検知結果に基づいて、蓄電システム30からの出力又は蓄電システム30への入力を制御する。受電点PT1は、施設F1と系統電源100との境界点である。電流センサ80が系統電源100から施設F1に流れる電流を検知すると、第1制御部11は、蓄電システム30からの出力を増やすことによって、系統電源100から施設F1に電流が流入しない状態に制御する。電流センサ80が施設F1から系統電源100に流れる電流を検知すると、第1制御部11は、蓄電システム30での充電を増やすことによって、施設F1から系統電源100に電流が出力されない状態に制御する。
【0035】
なお、受電点PT1において、系統電源100から施設F1に電流が流れる方向を順方向といい、順方向の電流が流れている状態、つまり系統電源100から買電している状態を順潮流ともいう。また、受電点PT1において、施設F1から系統電源100に電流が流れる方向を逆方向といい、逆方向の電流が流れている状態、つまり系統電源100に売電している状態を逆潮流ともいう。
【0036】
第2制御部12は、施設F1に設けられた受信端末60から系統安定化の制御指令(系統安定化指令)が入力されると、蓄電システム30を利用して系統安定化制御を行う。本実施形態では、第2制御部12が行う系統安定化制御が、蓄電システム30から系統電源100に電力を供給(逆潮流)する放電処理と、系統電源100から受け取った電力で蓄電システム30を充電する充電処理とを含む。
【0037】
ところで、
図2は、分散電源システム1が備えるインバータ50の入出力範囲PW1と、太陽光発電システム20の出力範囲PW2と、蓄電システム30の入出力範囲PW3の一例を示している。インバータ50の入出力範囲PW1は、例えば、負荷L1又は系統電源100への放電時(出力時)の最大値が5500W、蓄電システム30の充電時(入力時)の最大値が1500Wとなっている。太陽光発電システム20の出力範囲PW2は、例えば0~5500Wである。つまり、太陽光発電システム20の出力範囲PW2の最大値は、放電時におけるインバータ50の出力電力の最大値に等しい値となっている。蓄電システム30の入出力範囲PW3は蓄電池31の容量によって決定され、蓄電システム30からの放電電力の最大値は2000Wであり、蓄電システム30が充電する場合の充電電力の最大値は1500Wとなっている。
【0038】
ここにおいて、コントローラ10は、例えば、外部サーバ110からの系統安定化指令に基づいて、蓄電システム30の容量に対して、系統電源100への放電に利用する場合の調整用容量と、系統電源100からの充電に利用する場合の調整用容量とをそれぞれ設定している。これにより、蓄電システム30の入出力範囲PW3の一部が、系統安定化制御に利用可能な入出力範囲PW4に設定され、残りが需要家側で利用可能な入出力範囲PW5に設定される。なお、系統安定化制御に利用可能な入出力範囲PW4は、放電時の第1範囲(出力範囲)PW41と、充電時の第2範囲(入力範囲)PW42とに分けられる。
【0039】
第2制御部12は、外部サーバ110からの系統安定化指令に従って系統安定化制御を実行しており、系統電源100での実際の需給バランスに基づいて系統安定化制御を実行する。例えば、系統電源100の供給能力が電力需要に比べて不足する場合、第2制御部12は、系統電源100の需給バランスを均衡させるために、第1範囲PW41内で放電処理を実行し、蓄電システム30から放電させた電力を系統電源100に出力させる。すなわち、第2制御部12は、蓄電池用コンバータ32を制御して、蓄電池31から調整用容量に蓄積されたエネルギを放電させ、蓄電池31の出力電圧の電圧値を変換してインバータ50に出力する。インバータ50は、蓄電池用コンバータ32から入力された直流電圧を交流電圧に変換して系統電源100に供給する。
【0040】
また、系統電源100の供給能力が電力需要に比べて過剰である場合、第2制御部12は、系統電源100の需給バランスを均衡させるために第2範囲PW42内で充電処理を実行し、系統電源100からの電力で蓄電システム30の蓄電池31を充電する。すなわち、第2制御部12は、インバータ50に、系統電源100から入力される交流電圧を直流電圧に変換させて、蓄電池用コンバータ32に出力させる。蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31に充電電流を流し、第2範囲PW42内で蓄電池31を充電する。
【0041】
なお、第2制御部12は、系統電源100での需給バランスに基づいて系統安定化制御を実行しているが、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、系統安定化制御を実行してもよい。第2制御部12は、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つの実績値に基づき、分散電源40からの有効電力又は無効電力を制御することで、系統安定化制御を行えばよい。なお、第2制御部12が、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力を増やすと、系統電圧の電圧値が高くなり、系統電圧の周波数が高くなる。第2制御部12が、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力を減らすと、系統電圧の電圧値が低くなり、系統電圧の周波数が低くなる。また、分散電源40から見て進み位相の無効電力を系統電源100に注入すると、系統電圧の電圧値が低くなり、分散電源40から見て遅れ位相の無効電力を系統電源100に注入すると、系統電圧の電圧値が高くなる。したがって、第2制御部12は、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも一つの実績値に基づいて、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力又は無効電力を制御することで、系統安定化制御を行うことができる。
【0042】
逆潮流検知部13は、電流センサ80の検知結果に基づいて、系統電源100への逆潮流が発生しているか否かを検知する。電流センサ80は、例えばカレントトランスのような検知素子を含む。電流センサ80は、施設F1が系統電源100から電力の供給を受ける受電点PT1に流れる電流を検知しており、施設F1から系統電源100に流れる電流を検知することができる。逆潮流検知部13は、電流センサ80の検知結果に基づいて、系統電源100に出力される電力が閾値以上になると、系統電源100への逆潮流が発生していると検知する。第1制御部11が第1制御処理(負荷追従制御)を実行している場合、受電点PT1を通過する電力は理想的にはゼロになるので、逆潮流検知部13は、閾値を蓄電システム30の出力範囲に対して十分に小さい値(例えば15W程度)に設定する。受電点PT1を通過して系統電源100に出力される出力電力が閾値以下であれば、逆潮流検知部13は逆潮流が発生していないと判断し、出力電力が閾値を超えていると、逆潮流検知部13は逆潮流が発生していると判断する。第1制御部11が第1制御処理を実行している場合、第1制御部11は、受電点PT1を通過する電力がゼロになるように蓄電システム30の入出力を制御する。そして、第1制御処理の実行中に、逆潮流検知部13が逆潮流の発生を検知すると、蓄電システム30の出力電力を低下させることによって、逆潮流が発生していない状態に制御する。
【0043】
分散電源システム1が、外部サーバ110からの系統安定化指令に基づいて系統電源100に逆潮流する場合に、逆潮流検知部13が逆潮流を検知して、第1制御部11が分散電源40の出力電力を抑制する制御を行うと、第2制御部12による系統安定化制御が妨げられる。そこで、第2制御部12が外部サーバ110からの系統安定化指令に基づいて第2制御処理を行う場合、逆潮流検知部13は、上記の閾値を、系統安定化指令に基づく系統電源100への出力又は系統電源100からの入力の指令値を加味した値とする。すなわち、逆潮流検知部13は、施設F1から系統電源100に出力される出力電力が、指令値を加味した閾値以下であれば、逆潮流が発生していないと判断する。これにより、系統安定化制御を行うことで系統電源100への逆潮流が発生している場合でも、系統電源100への出力電力が、系統安定化制御の指令値を加味した閾値以下であれば、第1制御部11は、分散電源40の出力電力を抑制する制御を行わない。したがって、分散電源システム1は、系統電源100への逆潮流を実行することができる。
【0044】
異常検知部14は、電流センサ80の異常の有無を検知する。電流センサ80の異常とは、例えば、電流センサ80とコントローラ10との間を電気的に接続する電線の断線を含む。異常検知部14は、電流センサ80の出力から求めた電力が所定の判定値以下である状態が一定時間継続すると、電流センサ80に異常があると検知する。なお、第1制御部11が第1制御処理(負荷追従制御)を行っている場合、電流センサ80の出力の絶対値が判定値以下となり、電流センサ80に異常があると誤検知する可能性がある。そこで、異常検知部14は、電流センサ80の出力の絶対値が判定値以下である状態が一定時間継続すると、分散電源40の出力電力を短時間低下させており、この場合に電流センサ80の出力に変化がなければ、電流センサ80に異常があると検知する。
【0045】
(2.2)動作説明
本実施形態の分散電源システム1の動作を
図3~
図8等に基づいて説明する。
【0046】
図3は、分散電源システム1の基本的な動作を説明するフローチャートである。なお、
図3に示すフローチャートは、分散電源システム1の制御方法の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0047】
分散電源システム1のコントローラ10は、外部サーバ110から受信端末60を介して系統安定化指令を受信していない場合(ST1:No)、第1制御部11に第1制御処理を実行させる(ST3)。
【0048】
第1制御部11による第1制御処理は、分散電源40の出力電力が、施設F1に存在する負荷L1での全消費電力と等しくなるように、分散電源40の出力電力を制御する処理である。第1制御部11は、電流センサ80の検出結果に基づいて、受電点PT1を流れる電流がゼロになるように、換言すれば、受電点PT1を通過する電力がゼロになるように、分散電源40の出力電力を制御する。本実施形態では、太陽光発電システム20は日射量に応じた電力を出力するので、第1制御部11は、受電点PT1を通過する電力がゼロになるように、蓄電システム30の出力又は入力を制御する。なお、以下の説明において、受電点PT1を通過する電力を潮流電力と言う場合もある。
【0049】
負荷L1の全消費電力が太陽光発電システム20の出力電力よりも大きい場合、第1制御部11は、蓄電システム30から不足分の電力を出力させることによって、分散電源40の出力電力が、負荷L1での全消費電力と等しくなるように制御する。太陽光発電システム20の出力電力をP20、蓄電システム30の出力電力をP30、負荷L1の全消費電力をPL1とした場合、第1制御部11は、P20+P30=PL1となるように、蓄電システム30の出力電力P30を制御する。
【0050】
負荷L1の全消費電力PL1よりも太陽光発電システム20の出力電力P20が大きい場合、第1制御部11は、太陽光発電システム20の出力電力P20の余剰分を蓄電システム30に充電させることによって、分散電源40の出力電力が、負荷L1での全消費電力PL1と等しくなるように制御する。蓄電システム30での充電電力をP31とした場合、第1制御部11は、P20=P31+PL1となるように、蓄電システム30の充電電力P31を制御する。
【0051】
また、太陽光発電システム20の出力電力P20がゼロである場合、第1制御部11は、蓄電システム30から放電させることによって、分散電源40の出力電力が、負荷L1での全消費電力PL1と等しくなるように制御する。つまり、第1制御部11は、P30=PL1となるように、蓄電システム30の出力電力P30を制御する。
【0052】
このように、第1制御部11が第1制御処理を実行している場合は、分散電源40の出力電力が負荷L1での全消費電力PL1と等しくなるので、系統電源100からの売電、及び系統電源100への売電のいずれも発生していない状態となる。
【0053】
ところで、第1制御部11は、電流センサ80の検出結果に基づいて、系統電源100への逆潮流が発生しないように蓄電システム30の出力又は入力を制御しているので、分散電源システム1は電流センサ80の異常の有無を常時監視する必要がある。そこで、異常検知部14は、電流センサ80の異常の有無を検知する処理を定期的に行っており、異常検知部14による異常検知処理について
図4及び
図5に基づいて説明する。
【0054】
異常検知部14は、電流センサ80の検知結果に基づいて受電点PT1を通る潮流電力を算出する。異常検知部14は、潮流電力の絶対値が判定値以下である状態が一定時間以上継続した場合(ST11:Yes)、電流センサ80に異常が発生している可能性があるため、異常の有無を確定するために以下の処理を実行する。異常検知部14は、例えば蓄電システム30からの放電電流を所定の変化分(例えば1A)だけ引き下げる(ST12)。そして、異常検知部14は、所定の待機時間(例えば0.5秒)だけ待機した後(ST13)、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に変化があるか否かを判断する(ST14)。ここで、放電電流の変化分に応じた変化が潮流電力に発生していれば、異常検知部14は、電流センサ80が正常であると判断し(ST15)、蓄電システム30からの放電電流を元に戻す。一方、放電電流の変化分に応じた変化が潮流電力に発生していなければ、異常検知部14は、電流センサ80が異常であると判断し(ST16)、蓄電システム30からの放電電流を元に戻すとともに、電流センサ80の異常を報知する報知処理を行う。異常検知部14は、例えばスピーカから電流センサ80の異常を報知する報知音を出力させたり、モニタ装置に電流センサ80の異常を報知する文字又は記号を表示させたりすることで、電流センサ80の異常を報知する報知処理を行う。
【0055】
図5は、異常検知部14による異常検出処理を説明する説明図である。異常検知部14は、電流センサ80の出力から求めた潮流電力の絶対値が判定値(例えば15W)以下である状態が一定時間(例えば3秒間)継続した場合、蓄電システム30からの放電電流を1A低下させる。そして、蓄電システム30からの放電電流を1A低下させた時点t1から待機時間DT1が経過した時点t2において、異常検知部14は、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に、放電電流の低下分に応じた変化が有るか否かを判断する。そして、異常検知部14は、時点t2において求めた潮流電力に放電電流の低下分に応じた変化があれば、電流センサ80に異常があると検知し、潮流電力に放電電流の低下分に応じた変化が無ければ、電流センサ80に異常がないと検知する。
【0056】
一方、分散電源システム1のコントローラ10が外部サーバ110から受信端末60を介して系統安定化指令を受信した場合(ST1:Yes)、第2制御部12が第2制御処理を実行する(ST2)。第2制御処理は、施設F1に設けられた分散電源40を利用して系統電源100の電力品質を安定化する処理である。本実施形態では、分散電源40として太陽光発電システム20と蓄電システム30とを備えているが、太陽光発電システム20の出力は日射量に応じて変動するため、第2制御部12は、蓄電システム30を利用して系統電源100を安定化する制御を行う。すなわち、第2制御処理は、蓄電システム30が蓄電池31から放電させる処理を含んでもよく、蓄電池31から放電させることによって電力を系統電源100に逆潮流する。また、第2制御処理は、蓄電システム30が蓄電池31を充電する処理を含んでもよく、蓄電池31を充電することによって系統電源100から電力を受電する。
【0057】
第2制御部12が行う第2制御処理では、受電点PT1を通過する電力が、系統安定化制御のために必要な電力(系統安定化指令で指示された電力)となるように、分散電源40(本実施形態では蓄電システム30)の入出力を制御する。第2制御部12は、電流センサ80の検出結果に基づいて受電点PT1を通過する電力を求めており、受電点PT1を通過する電力は実測値に基づいている。太陽光発電システム20の発電電力がゼロである場合に、蓄電システム30の放電電力をP30、負荷L1の全消費電力をPL1、系統電源100への出力電力をPF1とすると、P30-PL1=PF1となる。第2制御部12は、系統電源100への出力電力PF1が、系統安定化指令で指示された電力値と等しくなるように、蓄電システム30の出力電力P30を制御する。
【0058】
なお、外部サーバ110からの系統安定化指令には、施設F1から系統電源100に電力を出力(逆潮流)するよう指示する放電指令と、施設F1において系統電源100からの電力を受け入れるように指示する充電指令とがある。系統安定化指令が放電指令であれば、第2制御部12は、第1範囲PW41内において放電指令で指示された電力値の電力を蓄電システム30から放電させることによって、系統電源100に逆潮流して、系統電源100の電力品質を安定化させる。一方、系統安定化指令が充電指令であれば、第2制御部12は、第2範囲PW42内において蓄電システム30により蓄電池31を充電させ、充電指令で指示された電力値の電力を施設F1が受電することによって、系統電源100の電力品質を安定化させる。
【0059】
このように、第2制御部12が第2制御処理を実行することによって系統電源100への逆潮流が発生した場合に、系統電源100への逆潮流が発生していることを逆潮流検知部13が検知して、第1制御部11が分散電源40の出力を抑制すると、第2制御処理が妨げられる。そこで、本実施形態の分散電源システム1では、第2制御部12が第2制御処理(系統安定化制御)を実行する場合、逆潮流検知部13は、閾値を、系統安定化指令で指示された指令値を加味した値とする。この指令値は、系統安定化指令で指示された系統電源100への出力の指令値、又は、系統安定化指令で指示された系統電源100からの入力の指令値である。
図6は、第2制御処理の実行中において電流センサ80の検知結果に基づいて求めた潮流電力の一例を示している。第2制御処理(系統安定化制御)の実行中は、逆潮流検知部13は、系統安定化指令で指示された指令値を加味した閾値PA1に基づいて、逆潮流が発生しているか否かを検知している。つまり、逆潮流検知部13は、第1制御処理を実行中の閾値に、系統安定化指令で指示された指令値を加えた値を閾値PA1として設定しており、この閾値PA1に基づいて逆潮流が発生しているか否かを判断する。したがって、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力が閾値PA1以下であれば、逆潮流検知部13は逆潮流を検知しないので、第1制御部11によって第2制御部12による第2制御処理が妨げられることはなく、第2制御部12は、系統安定化指令の指令値に応じて系統電源100への逆潮流を行うことができる。
【0060】
なお、第2制御処理において、需要家側で利用可能な入出力範囲PW5がゼロに設定されている場合、負荷L1の全消費電力PL1に分散電源40の出力電力を追従させる負荷追従制御は実行されないので、第2制御部12は電流センサ80の検知結果を利用しない。したがって、異常検知部14は、電流センサ80の異常を検知する処理を実行しない。
【0061】
一方、第2制御処理において、需要家側で利用可能な入出力範囲PW5がゼロ以外の所定の値に設定されている場合、第2制御部12は電流センサ80の検知結果を利用するため、異常検知部14が、電流センサ80の異常の有無を検知する処理を適宜のタイミングで実行する。
【0062】
ここで、第2制御処理の実行中に、異常検知部14が行う異常検知処理を
図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、
図7に示すフローチャートは、異常検知処理の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0063】
第2制御部12が、外部サーバ110から受信端末60を介して系統安定化指令を受信すると(ST21)、系統安定化指令に基づいて、系統安定化制御の指令値を求め(ST22)、蓄電システム30の出力電力の目標値(この目標値を第2目標値とも言う)を算出する(ST23)。また、第2制御部12は、需要家側で利用可能(つまり負荷追従制御に利用可能)な入出力範囲PW5の上限値を求め(ST24)、この上限値に基づいて蓄電システム30の出力電力の目標値(この目標値を第1目標値とも言う)を算出する(ST25)。そして、第2制御部12は、第1制御処理での分散電源(蓄電システム30)の出力の第1目標値と、第2制御処理での分散電源(蓄電システム30)の出力の第2目標値との両方を合算した目標値(この目標値を最終目標値とも言う)を算出する(ST26)。ここで、異常検知部14は、最終目標値に基づいて、電流センサ80の異常の有無を検知する処理を行う(ST27)。つまり、異常検知部14は、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力の絶対値と判定値とを比較し、潮流電力の絶対値が判定値以下である状態が一定時間継続すると、電流センサ80に異常が発生している可能性があると判断し、異常の有無を確定するために以下の処理を行う。すなわち、異常検知部14は、蓄電システム30の出力電力を、最終目標値に対して所定の変化分(例えば放電電流を1A低下させた場合の減少分)だけ低下させる。そして、異常検知部14は、所定の待機時間(例えば0.5秒)だけ待機した後、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に変化があるか否かを判断する。ここで、放電電流の低下分に応じた変化が潮流電力に発生していれば、異常検知部14は、電流センサ80が正常であると判断し、放電電流の低下分に応じた変化が潮流電力に発生していなければ、異常検知部14は、電流センサ80が異常であると判断する。ここで、異常検知部14が電流センサ80に異常があると検知すると、第2制御部12は、電流センサ80の異常を報知する報知処理を実行した後、最終目標値に基づいて、蓄電システム30の出力又は入力を制御する処理を実行する(ST28)。また、異常検知部14が電流センサ80に異常がないと検知した場合は、処理ST28に移行し、最終目標値に基づいて、蓄電システム30の出力又は入力を制御する処理を実行する。なお、異常検知部14が電流センサ80に異常があると検知した場合、報知処理を行った後に第2制御部12が第2制御処理を終了してもよい。
【0064】
このように、本実施形態では、異常検知部14が、電流センサ80の異常の有無を、分散電源40(具体的には蓄電システム30)の出力を変化させた場合の電流センサ80の検知結果に基づいて検知している。異常検知部14による異常検知処理では、第1制御処理での分散電源の出力の第1目標値、及び第2制御処理での分散電源の出力の第2目標値の両方を合算した最終目標値に対して、分散電源の出力を変化させた場合の電流センサ80の検知結果に基づいて、電流センサ80の異常の有無を検知する。これにより、系統安定化制御を実行している場合でも、異常検知部14が、電流センサ80の異常の有無を確実に検知することができる。
【0065】
なお、異常検知部14による異常検知処理は、
図7のフローチャートに示すような処理に限定されず、
図8のフローチャートに示すような処理でもよい。
図8のフローチャートに示す異常検知処理は、第1目標値及び第2目標値の各々に対して分散電源40の出力を変化させることにより電流センサ80の異常の有無を検知する点で
図7のフローチャートに示す異常検知処理と相違する。なお、
図8に示すフローチャートは、異常検知処理の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0066】
異常検知部14は、第2制御部12が処理ST23で第2目標値を算出すると、蓄電システム30の出力を第2目標値に対して所定の変化分だけ低下させた後、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力が所定の変化分だけ低下しているか否かを判断する。異常検知部14は、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に所定の変化分に応じた変化があれば、電流センサ80が正常であると検知し、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に所定の変化分に応じた変化がなければ、電流センサ80が異常であると検知する(第2検知処理)。
【0067】
また、異常検知部14は、第1制御部11が処理ST25で第1目標値を算出すると、蓄電システム30の出力を第1目標値に対して所定の変化分だけ低下させた後、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に所定の変化分に応じた変化があるか否かを判断する。異常検知部14は、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に所定の変化分に応じた変化があれば、電流センサ80が正常であると検知し、電流センサ80の検知結果から求めた潮流電力に所定の変化分に応じた変化がなければ、電流センサ80が異常であると検知する(第1検知処理)。
【0068】
このように、
図8のフローチャートに示した異常検知処理は第1検知処理と第2検知処理とを含んでいる。第1検知処理は、第1制御処理での分散電源40の出力の第1目標値に対して分散電源40の出力を変化させた場合の電流センサ80の検知結果に基づいて、電流センサ80の異常の有無を検知する処理である。第2検知処理は、第2制御処理での分散電源40の出力の第2目標値に対して分散電源40の出力を変化させた場合の電流センサ80の検知結果に基づいて、電流センサ80の異常の有無を検知する処理である。このように、異常検知部14は、第1目標値と第2の目標値の各々に対して、電流センサ80の異常の有無を検知する処理を行っているので、電流センサ80での異常を確実に検知できる。
【0069】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、分散電源システム1と同様の機能は、分散電源システム1の制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る分散電源システム1の制御方法は、上記の第1制御処理と、第2制御処理と、を含む。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記の第1制御処理と、第2制御処理と、を実行させるためのプログラムである。
【0070】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0071】
本開示における分散電源システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における分散電源システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0072】
また、分散電源システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは分散電源システム1に必須の構成ではなく、分散電源システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、分散電源システム1の少なくとも一部の機能、例えば、分散電源システム1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0073】
上記の実施形態において、異常検知部14は、電流センサ80の出力の絶対値が判定値以下である状態が一定時間継続すると、分散電源40の出力電力を短時間増加させ、この状態で電流センサ80の出力に変化がなければ、電流センサ80に異常があると検知してもよい。
【0074】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の制御方法は、第1制御処理と、第2制御処理とを含む。分散電源(40)は、系統電源(100)から電力供給を受ける需要家の施設(F1)に設けられ、施設(F1)に存在する負荷(L1)に対して電力を供給可能である。第1制御処理は、分散電源(40)の出力電力が、施設(F1)に存在する負荷(L1)での全消費電力と等しくなるように、分散電源(40)の出力電力を制御する。第2制御処理は、第1制御処理の実行中に、系統電源(100)の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、系統電源(100)の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う。
【0075】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0076】
第2の態様の制御方法では、第1の態様において、分散電源(40)は、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電システム(20)を含む。
【0077】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0078】
第3の態様の制御方法では、第1又は2の態様において、分散電源(40)は、蓄電池(31)を有する蓄電システム(30)を含む。
【0079】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0080】
第4の態様の制御方法では、第3の態様において、第2制御処理では、蓄電システム(30)が蓄電池(31)から放電させる処理を少なくとも行う。
【0081】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0082】
第5の態様の制御方法では、第3又は4の態様において、第2制御処理では、蓄電システム(30)が蓄電池(31)を充電する処理を少なくとも行う。
【0083】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0084】
第6の態様の制御方法では、第1~5のいずれかの態様において、第2制御処理では、施設(F1)が系統電源(100)から電力の供給を受ける受電点(PT1)を通過する電力が、系統安定化制御のために必要な電力となるように、分散電源(40)の入出力を制御する。
【0085】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0086】
第7の態様の制御方法では、第6の態様において、受電点(PT1)を通過する電力は、受電点(PT1)での実測値に基づいている。
【0087】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0088】
第8の態様の制御方法は、第1~7のいずれかの態様において、逆潮流検知処理を更に含む。逆潮流検知処理では、施設(F1)から系統電源(100)に流れる電流を検知する電流センサ(80)の検知結果に基づいて、系統電源(100)に出力される電力が閾値以上になると、系統電源(100)への逆潮流が発生していると検知する。系統安定化指令を受けている場合に、逆潮流検知処理では、閾値を、系統安定化指令で指示された系統電源(100)への出力又は系統電源(100)からの入力の指令値を加味した値とする。
【0089】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0090】
第9の態様の制御方法は、第1~8のいずれかの態様において、異常検知処理を更に含む。異常検知処理では、施設(F1)が系統電源(100)から電力の供給を受ける受電点(PT1)で電流を検知する電流センサ(80)の異常の有無を、分散電源(40)の出力を変化させた場合の電流センサ(80)の検知結果に基づいて検知する。異常検知処理では、第1制御処理での分散電源(40)の出力の第1目標値、及び第2制御処理での分散電源(40)の出力の第2目標値の両方を合算した目標値に対して、分散電源(40)の出力を変化させた場合の電流センサ(80)の検知結果に基づいて、電流センサ(80)の異常の有無を検知する。
【0091】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0092】
第10の態様の制御方法は、第1~8のいずれかの態様において、異常検知処理を更に含む。異常検知処理では、施設(F1)が系統電源(100)から電力の供給を受ける受電点(PT1)で電流を検知する電流センサ(80)の異常の有無を、分散電源(40)の出力を変化させた場合の電流センサ(80)の検知結果に基づいて検知する。異常検知処理は、第1検知処理と、第2検知処理とを含む。第1検知処理は、第1制御処理での分散電源(40)の出力の第1目標値に対して分散電源(40)の出力を変化させた場合の電流センサ(80)の検知結果に基づいて、電流センサ(80)の異常の有無を検知する処理である。第2検知処理は、第2制御処理での分散電源(40)の出力の第2目標値に対して分散電源(40)の出力を変化させた場合の電流センサ(80)の検知結果に基づいて、電流センサ(80)の異常の有無を検知する処理である。
【0093】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0094】
第11の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第1~10のいずれかの態様の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0095】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0096】
第12の態様の分散電源システム(1)は、第1制御部(11)と、第2制御部(12)と、を備える。分散電源(40)は、系統電源(100)から電力供給を受ける需要家の施設(F1)に設けられ、施設(F1)に存在する負荷(L1)に対して電力を供給可能である。第1制御部(11)は、分散電源(40)の出力電力が、施設(F1)に存在する負荷(L1)での全消費電力と等しくなるように、分散電源(40)の出力電力を制御する。第2制御部(12)は、第1制御部(11)による制御中に、系統電源(100)の電力品質を安定化させる系統安定化指令を受けると、系統電源(100)の電力品質を安定化するための系統安定化制御を行う。
【0097】
この態様によれば、系統安定化制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0098】
上記態様に限らず、上記の実施形態に係る分散電源システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、分散電源システム(1)の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0099】
第2~第10の態様に係る構成については、分散電源システム(1)の制御方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 分散電源システム
11 第1制御部
12 第2制御部
20 発電システム
30 蓄電システム
31 蓄電池
40 分散電源
80 電流センサ
100 系統電源
L1 負荷
PT1 受電点