(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】毛切断装置
(51)【国際特許分類】
A45D 26/00 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
A45D26/00 G
(21)【出願番号】P 2020105678
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日井 秀紀
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518816(JP,A)
【文献】特表2016-514491(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051219(WO,A1)
【文献】特表2017-500063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0244912(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部を含む光導波路を有し、皮膚から突出する毛に光を放出することで前記毛の切断を行う光放出モジュールと、
前記光導波路の周囲にあり、前記皮膚と接触する接触面と、
外部から進入する外光を含み得る前記接触面の側からの光を受光する受光部と、
前記受光部が受光する光強度に応じて、前記光放出モジュールからの光出力を停止させる制限部と、
前記光放出モジュールから放出される特定の波長領域の光を反射、又は吸収し、かつ前記特定の波長領域以外の光を透過するフィルタ部と、
を備える、
毛切断装置。
【請求項2】
前記光放出モジュールを覆うように構成され、かつ、前記コア部の少なくとも一部を外部に露出させる開口部を有するカバーを更に備え、
前記受光部は、前記カバーにおける前記開口部よりも内側に配置される、
請求項1に記載の毛切断装置。
【請求項3】
前記開口部の開口面の垂直方向において、前記開口面から前記受光部までの第1距離は、前記開口面から前記光導波路までの第2距離よりも大きい、
請求項2に記載の毛切断装置。
【請求項4】
前記フィルタ部は、前記受光部の受光面を覆うように配置される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の毛切断装置。
【請求項5】
前記制限部は、前記光強度が一定値を超えることに加えて、前記光強度に関する設定条件に基づいて、前記光放出モジュールからの光出力を停止させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の毛切断装置。
【請求項6】
前記皮膚の近接状態又は接触状態を検知するためのセンサ部を更に備え、
前記制限部は、前記光強度に加えて、前記センサ部に対する前記皮膚の近接又は接触に関する検知結果に応じて、前記光放出モジュールからの光出力を停止させる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の毛切断装置。
【請求項7】
前記光強度が所定値未満となった場合に、前記光放出モジュールからの光出力を実行する実行部を更に備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載の毛切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、毛切断装置に関し、より詳細には、毛に光を作用させることで毛を切断する毛切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を利用して毛を切断するように構成された装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、レーザ光源と、ファイバ光学系と、を含んでいる。レーザ光源は、毛を効果的に切断するために所定の発色団を標的とするように選択された波長を有するレーザ光を、発生させるように構成されている。ファイバ光学系は、近位端と遠位端と外壁と、遠位端に向かって配置されて側壁の一部に沿って延在する切断領域と、を有する。ファイバ光学系は、近位端においてレーザ光源からレーザ光を受け取り、そのレーザ光を近位端から遠位端に向かって導光し、切断領域が毛に接触すると毛に向かって切断領域から光を放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、光を利用した毛切断装置の実用化にあたり、使い勝手の改善が求められる。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、使い勝手が改善された毛切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の毛切断装置は、光放出モジュールと、接触面と、受光部と、制限部と、フィルタ部と、を備える。前記光放出モジュールは、コア部を含む光導波路を有し、皮膚から突出する毛に光を放出することで前記毛の切断を行う。前記接触面は、前記光導波路の周囲にあり、前記皮膚と接触する。前記受光部は、外部から進入する外光を含み得る前記接触面の側からの光を受光する。前記制限部は、受光部が受光する光強度に応じて、前記光放出モジュールからの光出力を停止させる。前記フィルタ部は、前記光放出モジュールから放出される特定の波長領域の光を反射、又は吸収し、かつ前記特定の波長領域以外の光を透過する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、使い勝手が改善された毛切断装置を提供できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る毛切断装置の正面図である。
【
図2】
図2は、同上の毛切断装置の断面図であり、毛切断部材が装置本体に取り付けられた状態の図である。
【
図3】
図3は、同上の毛切断装置の断面図であり、同上の毛切断部材が同上の装置本体に対して分離した状態の図である。
【
図4】
図4は、同上の毛切断装置の要部の背面図であり、特に同上の毛切断部材及び同上の装置本体におけるレセプタクル部を示す図である。
【
図5】
図5Aは、同上の毛切断部材の模式的な断面図である。
図5Bは、同上の毛切断部材の模式的な正面図である。
【
図6】
図6Aは、同上の毛切断装置における要部の構成を示す概略断面図である。
図6Bは、
図6Aの要部の拡大図である。
【
図7】
図7Aは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出する前のシーンを示す概略断面図である。
図7Bは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出するシーンを示す概略断面図である。
図7Cは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛の切断後のシーンを示す概略断面図である。
【
図8】
図8Aは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出する前のシーンを示す概略断面図である。
図8Bは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出するシーンを示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、同上の毛切断装置の制御回路の概略構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10Aは、同上の毛切断装置における皮膚の接触状態、及び非接触状態に対する光出力に関するグラフである。
図10Bは、同上の毛切断装置における接触状態及び非接触状態に対する受光部の電圧変化に関するグラフである。
【
図11】
図11は、同上の毛切断装置の動作例1を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、同上の毛切断装置の動作例2を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、同上の毛切断装置の第1変形例の模式的な外観図である。
【
図14】
図14は、同上の毛切断装置の第2変形例の模式的な正面図である。
【
図15】
図15A~15Cは、同上の毛切断装置の第3変形例の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)概要
以下、本実施形態に係る毛切断装置1の概要について、
図1~
図5Bを参照して説明する。毛切断装置1は、毛91(
図6A参照)に光を作用させることで毛91を切断する装置である。毛切断装置1での切断対象となる毛91は、一例として人の「ひげ」等であるが、特に限定されず、人等の皮膚92から突出する様々な毛(例えば腕又は脚の体毛等)を含む。
図6Aでは、毛91及び皮膚92を想像線(二点鎖線)で示す。
【0010】
要するに、毛切断装置1は、物理的な「刃」にて毛91を切断する一般的な「かみそり」又は「はさみ」等とは異なり、「刃」の代わりに光エネルギを毛91に与えることで、毛91の切断を行う。そのため、毛切断装置1では、一般的な、「かみそり」又は「はさみ」等に比較して、毛91の周囲の皮膚92等にダメージを与えにくく、さらに、刃こぼれ等の物理的な劣化も生じにくい。
【0011】
本実施形態に係る毛切断装置1は、
図1~
図3に示すように、毛切断部材3と、装置本体2とを備えている。ここでは一例として、毛切断部材3は、毛切断装置1のヘッドに相当し、装置本体2がグリップに相当する。また一例として、毛切断部材3は、装置本体2に対して着脱可能に取り付け可能となっている。ただし、本開示の毛切断装置1において、毛切断部材3が装置本体2に対して着脱可能であることは必須の構成ではなく、毛切断部材3と装置本体2とが一体的に組み付けられていて取り外しできなくてもよい。
【0012】
本実施形態に係る毛切断装置1は、
図1、
図5A、及び
図5Bに示すように、光放出モジュールM1と、センサ部S1と、を備えている。ここでは一例として、光放出モジュールM1及びセンサ部S1は、毛切断装置1のヘッドである毛切断部材3に設けられている。
【0013】
光放出モジュールM1は、
図3に示すように、コア部41を含む光導波路4を有している。光放出モジュールM1は、皮膚92から突出する毛91に光を放出することで毛91の切断を行う。
【0014】
センサ部S1は、皮膚92の接触状態を検知するための部位である(
図5A参照)。センサ部S1は、皮膚92の近接状態を検知するための部位でもよい。
【0015】
毛切断部材3が装置本体2に取り付けられた状態において、装置本体2内に設けられている光源21(
図2参照)で発生した光が、光導波路4の先端面(受光面40A:
図2参照)に入力されることにより、光導波路4内を光が伝達する。本実施形態では一例として、光源21はレーザ光源であって、光導波路4内を伝達する光はレーザ光である。
【0016】
本実施形態では、上述の通り、毛切断装置1がセンサ部S1を備えていることで、例えば毛切断装置1に対する皮膚92の接触状態(又は近接状態)に関する検知結果を用いた制御が実現可能となる。具体的には、センサ部S1によって、皮膚92が接触したことが検知されると、光源21の光出力を開始させたり、皮膚92が離れたことが検知されると、光源21の光出力を停止又は低下させたりするといった光出力制御が実現可能となる。結果的に、使い勝手が改善された毛切断装置1を提供できる、という利点がある。
【0017】
また本実施形態に係る毛切断方法は、光放出ステップと、検知ステップと、を含む。光放出ステップでは、コア部41を含む光導波路4を有する光放出モジュールM1から、皮膚92から突出する毛91に光を放出させることで、毛91の切断を行う。検知ステップでは、センサ部S1に対する皮膚92の近接状態又は接触状態を検知する。ここでは、上記の光放出ステップ及び検知ステップを含む毛切断方法は、毛切断装置1上で用いられる。
【0018】
この構成においても、毛切断方法が検知ステップを含むことで、皮膚92の接触状態(又は近接状態)に関する検知結果を用いた制御が実現可能となる。結果的に、使い勝手が改善された毛切断方法を提供できる、という利点がある。
【0019】
また本実施形態では、毛切断装置1は、
図5A及び
図5Bに示すように、(上述した)光放出モジュールM1と、接触面(モジュール側接触面501及びカバー側接触面301)と、受光部X1と、を備えている。接触面は、光導波路4の周囲にあり、皮膚92と接触する。ここでいう「接触面」は、例えば、毛切断部材3のカバー30における開口部31の周囲の面を含み、またセンサ部S1の接触面S10も含み得る。
【0020】
受光部X1は、接触面(501,301)の側からの光を受光する。ここでは一例として、受光部X1は、カバー30内の、開口部31に連通していて光放出モジュールM1を収容する収容空間SP1(
図5A参照)に配置される。「接触面の側からの光」は、毛切断装置1の外部から進入する外光を含み得る。
【0021】
開口部31は、コア部41の少なくとも一部を外部に露出させる。本実施形態のようにカバー30に開口部31が設けられている場合、「接触面の側からの光」は、開口部31の(仮想的な)開口面310よりも外側から収容空間SP1内に入る外光を含み得る。なお、本開示の毛切断装置1において、カバー30に開口部31が設けられている構成は必須ではない。
【0022】
本実施形態では、上述の通り、毛切断装置1が受光部X1を備えていることで、例えば接触面(501,301)の側からの光強度に関する検知結果を用いた制御が実現可能となる。結果的に、使い勝手が改善された毛切断装置1を提供できる、という利点がある。
【0023】
また本実施形態に係る毛切断方法は、(上述した)光放出ステップと、取得ステップと、を含む。取得ステップでは、光導波路4の周囲にあり皮膚92と接触する接触面(501,301)の側からの光強度に関する情報を取得する。ここでは、上記の光放出ステップ及び取得ステップを含む毛切断方法は、毛切断装置1上で用いられる。
【0024】
この構成においても、毛切断方法が取得ステップを含むことで、接触面(501,301)の側からの光強度に関する検知結果を用いた制御が実現可能となる。結果的に、使い勝手が改善された毛切断方法を提供できる、という利点がある。
【0025】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る毛切断装置1の詳細について、
図1~
図12を参照して説明する。
【0026】
以下では一例として、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を設定し、特に、光導波路4の長さに沿った軸を「X軸」、毛切断部材3のカバー30の開口部31と皮膚92とが対向したときの対向方向に沿った軸を「Y軸」とする。X軸、Y軸、及びZ軸は、いずれも仮想的な軸であり、図面中の「X」、「Y」、「Z」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。また、これらの方向は毛切断装置1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。光導波路4の光軸C1(
図2参照)の方向は、X軸に沿った方向である。
【0027】
(2.1)定義
本開示でいう「毛」は、皮膚92から突出する様々な毛91、つまり皮膚92から延びる様々な毛を含み、例えば、人(人間)の髪の毛、ひげ、眉毛、すね毛、鼻毛又は耳毛等の種々の体毛を含む。さらに、例えば、犬又は猫等のほ乳類、その他の動物においても、その皮膚92から突出する様々な毛91が、本開示でいう「毛」に含まれる。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1は、これらの毛91を切断対象とする装置である。また、本開示でいう「皮膚」には、人工皮膚等も含む。本実施形態では一例として、毛切断装置1の切断対象となる毛91が、人の皮膚92から突出する毛、特に成人男性の「ひげ」である場合について説明する。つまり、毛切断装置1の切断対象となる毛91は、人の顔の皮膚92から生えた毛である。顔の皮膚92等を含む人の皮膚92を「肌」ともいう。
【0028】
また、本開示でいう毛91の「切断」は、毛91を切断すること全般を含み、例えば、毛91を根元で切る(つまり、毛をそる)こと、適当な長さで毛91を切り揃えること、及び毛先のみを切ること等を含む。そのため、本開示でいう「毛切断装置」には、例えば、毛91をそるための装置である「シェーバ」又は「てい毛装置」、及び適当な長さで毛を切るための装置である「トリマ」、「バリカン」又は「はさみ」等が含まれる。さらには、本開示でいう毛91の「切断」は、毛91を略平面状の切断面にて2つに切断することだけでなく、毛91の切断部に損傷を与えて毛91を切断部にて破断すること等も含む。本実施形態では一例として、毛切断装置1が、切断対象となる毛91(ひげ)を根元で切る(つまり、毛をそる)ことに適した装置(シェーバ)である場合について説明する。
【0029】
また、本開示でいう「レーザ光」は、誘導放出によって発生する光(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)を意味する。レーザ光を発生する光源21としては、例えば、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザ(LD:Laser Diode)等がある。レーザ光は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が発生する光に比較して、干渉性(coherence)が高く、出力(パワー密度)が高く、単色性(単一波長)が高く、かつ指向性が高い、という特性を持つ。
【0030】
また、本開示でいう「光導波路」は、光を通すことで光を所望の経路に沿って導く光学部材を意味する。光導波路の具体例としては、互いに屈折率の異なるコア及びクラッドを有し、コアをクラッドで覆った光ファイバ等がある。光ファイバは、コアとクラッドとの界面での光の全反射を利用して、コアの内部に光を通すことで所望の経路に沿って光を導くことが可能である。ここで、光導波路は、特に、通信用の信号(光信号)を通す伝送路に限らず、光を所望の経路に沿って導く光学部材全般を意味する。
【0031】
また、本開示でいう「保持」は、2つの物体同士が互いの位置関係を保ち続けるように、一方の物体が他方の物体を支持することを意味する。ここで、2つの物体同士の相対的な位置関係は、多少、変化してもよく、一方の物体と他方の物体とが堅牢に固定されていなくてもよい。つまり、保持部材5は、光導波路4と保持部材5との位置関係が多少変化する態様で、光導波路4を保持していてもよい。
【0032】
また、本開示でいう「屈折率」は、真空中の光速度を媒質中の光速度(より正確には位相速度)で除した値である。屈折率は、基本的に、物質に依存して決まっており、例えば、空気の屈折率は「1.0003」であって、水の屈折率は「1.3334」である。同じ物質であっても、屈折率は入射する光の波長によって異なることがあるが、本開示では、特に断りがない限り、屈折率は波長404.7nmの光(水銀のh線)について示すこととする。
【0033】
また、本開示でいう「パワー密度」は、単位面積(1cm2)あたりの光強度を意味する。パワー密度の単位は「kW/cm2」又は「J/(s・cm2)」である。光導波路4の断面において光強度の分布にばらつきがある場合でも、光導波路4を通る光強度を光導波路4のコア部41の断面積で除することにより、コア部41の断面全域において平均化された平均的なパワー密度が求まる。本開示では、特に断りがない限り、このように求まる平均的なパワー密度を「パワー密度」とする。
【0034】
(2.2)全体構成
ここではまず、本実施形態に係る毛切断装置1の全体構成について、
図1~
図3、
図6A、及び
図6Bを参照して説明する。
【0035】
毛切断装置1は、上述したように、毛切断部材3と、装置本体2とを備えている。
【0036】
毛切断部材3は、光放出モジュールM1と、接続部材としてフェルール71と、ホルダ部H1と、センサ部S1と、受光部X1と、フィルタ部B1(
図5A参照)と、を備えている。ホルダ部H1には、光放出モジュールM1及びフェルール71の各々の一部がそれぞれ挿入される。
【0037】
また毛切断部材3は、固定部材F1、接着部材G1、カバー30、及び、固定キャップ34を更に備えている。光放出モジュールM1は、光導波路4と保持部材5とを有している。保持部材5は、光導波路4の後述するコア部41の一部を露出した形態で光導波路4を保持する。また光放出モジュールM1は、固定ブロック32を更に有している。
【0038】
装置本体2は、毛切断部材3のフェルール71が機械的に接続される(接続対象部として)レセプタクル部81と、光源21と、光学系22と、ケース20と、を備えている。光源21は、コア部41に導入される光を発生する。光学系22は、光源21とレセプタクル部81との間に配置される。ケース20は、光源21及び光学系22を収容する。
【0039】
光導波路4は、光放出部40(
図6A及び
図6B参照)を有しており、光源21で発生した光が入力されることによって、光放出部40から光を出力する。毛切断装置1は、光源21で発生した光を、光導波路4に入力し、光導波路4の光放出部40から毛91に放出することで、毛91の切断を行う。
【0040】
より詳細には、毛切断装置1は、光放出部40の屈折率として、切断対象である毛91の屈折率に近い値を採用している。これにより、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出し、この光のエネルギで毛91が切断される。一方で、光放出部40に毛91が接触しておらず、光放出部40に空気(屈折率:1.0)のみが接するような状態では、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れ量が小さく抑えられる。
【0041】
ところで、本実施形態では、毛切断部材3が毛切断装置1のヘッドに相当し、装置本体2がグリップに相当する。装置本体2のケース20は、一例として、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。
【0042】
毛切断部材3は、長尺である。毛切断部材3は、X軸に沿って長さを有する。毛切断部材3のカバー30は、
図5Aに示すように、その内部に光放出モジュールM1を収容している。またカバー30は、開口部31を有している。言い換えると、毛切断装置1は、光放出モジュールM1を覆うように構成され、かつ、コア部41の少なくとも一部を外部に露出させる開口部31を有するカバー30を備えている。
【0043】
カバー30は、一例として、X軸に沿って長さを有する細長い角筒状に形成されている。本実施形態では、毛切断部材3のフェルール71と、ケース20のレセプタクル部81と、が接続されることにより、毛切断装置1は、Z軸の一方側から見て、全体として略I字状の外観を構成している。
【0044】
言い換えると、毛切断部材3及びケース20は、それぞれ長尺である。毛切断装置1は、使用形態として、スティック状の形態を有している。スティック状の形態とは、フェルール71がレセプタクル部81に結合された状態において、毛切断部材3の長手方向とケース20の長手方向とが一方向に沿った形態である。
【0045】
本実施形態では一例として、ケース20及びカバー30は、いずれも合成樹脂製である。
【0046】
このように、全体として略I字状の外観を有する毛切断装置1は、「直刃かみそり」と同じように使用される。つまり、ユーザは、切断対象となる毛91(ここでは「ひげ」)を切断する(ここでは「そる」)際に、毛切断装置1のグリップ、つまりケース20を片手で握ることで、毛切断装置1を把持する。この状態で、ユーザは、毛切断装置1のヘッド、つまり毛切断部材3のY軸方向の一面をユーザの皮膚92に接触させ、毛切断部材3を皮膚92に沿わせてZ軸方向に移動させることにより、毛切断部材3の光放出部40にて毛91を切断する。このとき、ユーザは、毛切断部材3のうちのY軸の負の向きを向いた面を皮膚92に接触させ、かつ毛切断部材3をZ軸の正の向きに移動させることによって、毛切断部材3(ヘッド)の進行方向の前方(つまりZ軸の正の向き)に位置する毛91を切断する。
【0047】
毛切断装置1は、使用形態として、スティック状の形態(略I字状の形態)に加えて、別の形態を有してもよい。例えば、装置本体2は、レセプタクル部81の近傍に、所定の角度範囲内で回転可能な軸部を有して、毛切断部材3とケース20とが、略I字状の形態から、略L字状の形態となるように変形可能でもよい。この場合、ユーザは、毛切断装置1の使用形態を、スティック状の形態とL字状の形態とから択一的に変更できる。
【0048】
装置本体2は、レセプタクル部81、光源21、光学系22、及びケース20に加えて、制御回路6、電池23、ファン24、ヒートシンク25及び操作部26を更に有している。
【0049】
制御回路6、光学系22、電池23、ファン24及びヒートシンク25は、いずれもケース20内に収容されている。操作部26は、ケース20の一面(Y軸の負の向きを向いた面)に設けられている。毛切断部材3に含まれる光導波路4は、フェルール71と共に、受光面40A(
図2参照)側の一端部が、レセプタクル部81に接続されることで、ケース20内の光学系22と対向するように配置される。
【0050】
光源21は、電気エネルギを光エネルギに変換することで、光導波路4に入力される光を発生する。本実施形態では、光源21は、レーザ光源である。つまり、光源21で発生する光は、誘導放出によって発生するレーザ光である。ここでは、光源21は、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザからなる。
【0051】
また、光源21で発生する光の波長は、400nm以上である。つまり、光源21は、400nmよりも長波長側にピーク波長又はドミナント波長を有するレーザ光を発生する。本実施形態では、光源21で発生する光の波長は、700nm以下である。例えば波長が400nm以上450nm以下の範囲にある光であれば、皮膚92に存在するアクネ菌等に対する殺菌作用が期待できる。また、波長が450nm以上700nm以下の範囲にある光であれば、皮膚92の活性化作用が期待できる。
【0052】
制御回路6は、少なくとも光源21を制御する回路である。制御回路6は、光源21に電力を供給することで光源21を発光(点灯)させる。さらに、制御回路6は、光源21の点灯/消灯の切り替え、及び光源21の出力(明るさ又は波長等)の調節等を行う。制御回路6は、プリント配線板(基板)と、プリント配線板に実装された複数の電子部品と、を含んでいる。制御回路6は、光源21の他、ファン24及び操作部26等の制御も行う。制御回路6について詳しくは、「(2.6)制御回路」の欄で説明する。
【0053】
光学系22は、光源21とレセプタクル部81との間に配置されており、光源21からの光を光導波路4へと導く。光学系22は、複数のレンズを含んでいる。
図3の例では、光学系22は、第1レンズ221、第2レンズ222、第3レンズ223及び第4レンズ224を含んでいる。ただし、
図3は、個々のレンズの形状及び配置を厳密には示しておらず、光学系22を模式的に示しているに過ぎない。
【0054】
電池23は、制御回路6、光源21及びファン24等の駆動用の電力を供給する電源として機能する。本実施形態では一例として、電池23は、充電及び放電が可能な、リチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)等の二次電池である。
【0055】
ファン24は、光源21の冷却用の冷却ファンである。具体的には、ファン24は、ケース20内においてヒートシンク25を通る気流を発生することにより、ヒートシンク25の放熱を促進する。
【0056】
ヒートシンク25は、熱伝導率が比較的に高い材質、例えば、アルミニウム等で構成されている。ヒートシンク25は、光源21と熱的に結合されており、主として光源21の放熱を行う。
【0057】
操作部26は、ユーザの操作を受け付けて、ユーザの操作に応じた電気信号を制御回路6に出力する。本実施形態では一例として、操作部26は、プッシュスイッチ又はスライドスイッチ等のメカニカルスイッチを少なくとも1つ有している。
【0058】
開口部31(
図1参照)は、カバー30のうち、ユーザの皮膚92に接触する面(つまりY軸の負の側を向いた面)に配置される。開口部31は、X軸に沿って長さを有する長方形状に形成されている。この開口部31を通して、カバー30の内側の空間(収容空間SP1:
図5A参照)と外側の空間とがつながることになる。
【0059】
光導波路4の一部、保持部材5及び固定ブロック32は、カバー30内に収容されている。毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、光導波路4の受光面40Aは、装置本体2のケース20内において、光学系22の第4レンズ224と近接して対向する。要するに、毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、光導波路4は、光学系22を介して、光源21と光学的に結合される。その結果、光源21からの光は、光導波路4(コア部41)を通って伝播される。本実施形態ではコア部41に加えて、保持部材5及び固定ブロック32も、開口部31を通してカバー30の外部に露出する。
【0060】
光導波路4は、光源21で発生した光を通すことで、光源21からの光を所望の経路に沿って導く光学部材である。本実施形態では一例として、光導波路4は光ファイバである。この光導波路4は、コア部41及びクラッド部42を有しており、クラッド部42は、コア部41の少なくとも一部(ここでは一部)を覆っている。またコア部41は、クラッド部42の外周の側に偏芯して配置される。ここでは一例として、コア部41は、クラッド部42の外周部に配置されて、コア部41の一部が外周部から露出する。具体的には
図6Bに示すように、コア部41の、周方向における一部の領域が、クラッド部42の外周面420よりも外側に突出するように偏芯して配置される。
【0061】
光導波路4は、X軸方向における一端面(受光面40A)から、他端面(終端面40B)にわたって、コア部41の周方向における一部の領域が、クラッド部42の外周面420よりも外側に突出するように偏芯して配置されている。
【0062】
光導波路4は、クラッド部42の外周を保護する保護シース(樹脂製の被覆部材)を更に有してもよい。つまり、本実施形態の光導波路4として用いられる光ファイバは、コア部41とクラッド部42との二重構造であるが、クラッド部42の外側に位置する保護シースを加えて、三重構造を有してもよい。ただし、光導波路4の、少なくとも開口部31から露出される部位は、保護シースが除去されてコア部41及びクラッド部42が露出されることが好ましい。
【0063】
保持部材5は、光導波路4を保持する部材である。ここでは保持部材5は、光導波路4のうち、長手方向における一部と接触して保持する。以下、
図3に示すように、光導波路4を、X軸方向に沿って3つの領域(第1領域401、第2領域402、第3領域403)に分割して説明する。
【0064】
光導波路4の第1領域401は、
図3に示すように、保持部材5と接触して保持される領域である。光放出部40は、第1領域401の範囲内にある。
【0065】
光導波路4の第2領域402及び第3領域403は、保持部材5からX軸の負の方向にはみ出た領域である。第3領域403は、フェルール71内で接着部材G1によって接着されて固定される領域である。第3領域403は、フェルール71によって位置決めされる領域となる。
【0066】
第2領域402は、第1領域401と第3領域403との間の領域であり、保持部材5とフェルール71との間に介在する。第2領域402は、湾曲した部位である。第2領域402は、ホルダ部H1内で固定部材F1によって固定されている。すなわち、光導波路4は、第1領域401と第3領域403とがY軸方向において「ずれた」形態で配置されている。したがって、コア部41の光軸に関して、第1領域401における光軸C1(
図2参照)と、第3領域403における光軸とは、互いに非同軸である。
【0067】
保持部材5は、固定ブロック32に固定されている。保持部材5は、固定ブロック32に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。これにより、光導波路4(第1領域401)は、保持部材5を介して固定ブロック32に間接的に固定されることになる。
【0068】
固定ブロック32は、カバー30に固定されている。固定ブロック32は、合成樹脂製であって(金属製でもよい)、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。固定ブロック32は、カバー30に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。固定ブロック32には、上述したように保持部材5が固定されている。そのため、光導波路4(第1領域401)は、保持部材5及び固定ブロック32を介してカバー30に間接的に固定されることになる。
【0069】
ここで、毛切断部材3は、光導波路4の光放出部40、保持部材5及び固定ブロック32の全てが、開口部31を通してカバー30の外部に露出する。具体的には、固定ブロック32は、カバー30における開口部31の長さ(X軸)に沿って配置されている。そして、保持部材5は、固定ブロック32における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に固定されている。しかも、固定ブロック32及び保持部材5は、開口部31の短手方向(Z軸方向)において、毛切断装置1(毛切断部材3)の進行方向の前方側に隙間を確保するように、毛切断装置1の進行方向の後方側(つまりZ軸の負の側)に寄せて配置されている。
【0070】
また、固定ブロック32及び保持部材5は、Y軸の負の向きを向いた面が、カバー30におけるY軸の負の向きを向いた面と面一になるように、配置されている。さらに、光導波路4(光放出部40)は、
図6Aに示すように、保持部材5における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に固定されている。
【0071】
また
図2及び
図3では図示を省略しているが、毛切断装置1は、例えば、電池23用の充電回路、又は、毛切断装置1の動作状態を表示するための表示部等の構成要素を更に備えていてもよい。
【0072】
(2.3)毛切断部材
(2.3.1)毛切断部材の構成
次に、毛切断部材3のより詳細な構成について、
図1~
図6Bを参照して説明する。
【0073】
図1は、毛切断装置1の、Y軸方向の負の側から正の向きに見た図(正面図)である。
図4は、毛切断部材3が、装置本体2のレセプタクル部81から分離した状態の、Y軸方向の正の側から負の向きに見た図(背面図)である。
【0074】
図5Aは、光放出モジュールM1を収容するカバー30をその長手方向における略中央でY-Z平面に沿って切った断面図(
図5BのA-A線断面図)である。
図5Bは、光放出モジュールM1を収容するカバー30を、Y軸方向の負の側から正の向きに見た図(正面図)である。
図6Aは、毛切断部材3における光導波路4及び保持部材5周辺の構成を示す概略断面図である。
図6Bは、
図6Aの要部の拡大図である。
【0075】
本実施形態では、毛切断部材3は、上述の通り、光放出モジュールM1と、フェルール71と、ホルダ部H1と、固定部材F1と、接着部材G1と、カバー30と、固定キャップ34と、センサ部S1と、受光部X1と、フィルタ部B1と、を備えている。
【0076】
光放出モジュールM1は、光導波路4と保持部材5と固定ブロック32とを有している。特に光導波路4は、皮膚92から突出する毛91に光を放出することで毛91の切断を行うように配置される。
【0077】
(2.3.2)光導波路
光放出モジュールM1の光導波路4は、上述したように、毛91に光を放出することで毛91の切断を行う光放出部40を有している。本実施形態では、光導波路4は、コア部41と、クラッド部42と、を有する光ファイバである。
【0078】
クラッド部42は、受光面40Aから終端面40Bにわたって、一部を除くコア部41の周囲を覆っている。ここで、コア部41及びクラッド部42は、いずれも比較的に高い光透過性を有している。ただし、コア部41とクラッド部42とでは屈折率が異なっており、コア部41の屈折率は、クラッド部42の屈折率よりも大きい。この構成により、受光面40Aからコア部41に入射した光は、コア部41とクラッド部42との界面での全反射又は屈折により、極力、コア部41のみを通るようにして光導波路4の先端部(受光面40Aとは反対側にある終端面40Bを含む端部)まで到達する。
【0079】
光導波路4は、例えば、コア部41及びクラッド部42のいずれもが合成石英からなる。例えば、コア部41は合成石英製であって、クラッド部42は、コア部41とは屈折率が異なる、不純物を添加した合成石英製である。本実施形態では一例として、ファイバ入射NA(Numerical Aperture)が「0.1」の場合、コア部41の屈折率は「1.4698」であって、クラッド部42の屈折率は「1.4309」である。また、ファイバ入射NAが「0.2」の場合、コア部41の屈折率は「1.4698」であって、クラッド部42の屈折率は「1.309」である。ここで挙げるNA及び屈折率は、あくまで一例に過ぎず、コア部41の屈折率とクラッド部42の屈折率との差等を規定する趣旨ではない。
【0080】
コア部41は、
図3に示すように、クラッド部42の外周の側に偏芯して配置される。受光面40Aから見て、コア部41及びクラッド部42は、それぞれ円形状である。ただし、受光面40Aから見て、コア部41は、その外周部がカットされてD字状に形成されていてもよい。受光面40Aは、フェルール71の端面710と面一である。
【0081】
本実施形態では一例として、コア部41の径は、約10μmであり、クラッド部42の径は、約50μm~125μmであるとするが、これらの数値に限定されない。
【0082】
コア部41は、クラッド部42の外周部に配置されて、コア部41の一部が外周部から露出する。したがって、光導波路4を通る光が、その露出する一部を通じて外部に漏れやすくなる。
【0083】
光導波路4のうち、保持部材5にて覆われる部位は、毛91に光を漏らすことができないため、毛91に光を放出する光放出部40として機能しない。本実施形態ではコア部41のうち、クラッド部42に覆われずに露出し、さらにホルダ部H1及びフェルール71にも覆われずに露出した部位が、光放出部40となる。
図6A及び
図6B等においては、光放出部40を含む光導波路4、及び保持部材5を、Y-Z平面で切った断面を示す。
【0084】
光放出部40の屈折率は、皮膚92の表面921(
図6A参照)の屈折率よりも小さい。ここで、人の皮膚92(肌)は、表皮、真皮及び皮下組織等を含んでいる。ここでいう皮膚92の表面921は、これら皮膚92を構成する複数の要素のうち最も外側に位置する表皮、又は表皮の表面を意味する。
【0085】
すなわち、光放出部40は、コア部41及びクラッド部42を有する光導波路4(光ファイバ)のうちのコア部41からなるので、コア部41の屈折率は皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなるように設定される。一例として、人の皮膚92の表面921の屈折率は「1.4770」であると仮定する。そうすると、光放出部40であるコア部41の屈折率が上述したように「1.4698」であれば、光放出部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率より小さい、という条件は満足する。
【0086】
より詳細には、本実施形態では、光放出部40の屈折率は、1.47以下である。要するに、光放出部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなるように、光放出部40の屈折率は「1.4700」以下の範囲に設定されている。これにより、皮膚92の表面921の屈折率に多少のばらつきがあっても、光放出部40の屈折率は、皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなる。つまり、皮膚92の表面921の屈折率が「1.4770」よりもわずかに小さい場合でも、光放出部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率よりも小さい、という条件は満足できる。
【0087】
さらに、ここでいう皮膚92の表面921の屈折率は、毛91の屈折率よりも小さい。つまり、皮膚92の表面921と、皮膚92から突出する切断対象である毛91と、光放出部40(コア部41)と、の三者で屈折率を比較すると、毛91の屈折率が最も大きく、次に皮膚92の表面921の屈折率が大きく、光放出部40の屈折率が最も小さい。一例として、毛切断装置1での切断対象である人の毛91(ここでは「ひげ」)の屈折率は「1.5432」であると仮定する。そうすると、人の皮膚92の表面921の屈折率が「1.4770」であれば、皮膚92の表面921の屈折率が毛91の屈折率よりも小さい、という条件は満足する。
【0088】
要するに、本実施形態では、屈折率の関係としては「光放出部<皮膚<毛」のように、光放出部40(コア部41)よりも皮膚92の表面921の方が屈折率は大きく、皮膚92の表面921よりも毛91の方が更に屈折率は大きくなる。つまり、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さく、かつ皮膚92の表面921の屈折率よりも小さい。
【0089】
このように毛切断装置1においては、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さいので、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出すことになる。したがって、光放出部40から毛91に漏れ出した光のエネルギで、毛91が切断されることになる。毛91が切断される原理(メカニズム)については「(2.4)使用例」の欄で詳しく説明する。一方で、光放出部40に毛91が接触しておらず、光放出部40に空気(屈折率:1.0)のみが接するような状態では、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れ量が小さく抑えられる。
【0090】
さらに、屈折率の関係として、より好ましくは、光放出部40の屈折率と、切断対象である毛91の屈折率との差は、極力小さい方がよい。つまり、皮膚92の表面921と、毛91と、光放出部40と、の三者では、屈折率が上述したような大小関係を満たしつつも、その差は極力小さいことが好ましい。これにより、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率に近い値となり、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出しやすくなる。
【0091】
ここでは一例として、光放出部40(コア部41)の屈折率は「1.4698」、皮膚92の表面921の屈折率は「1.4770」、毛91の屈折率は「1.5432」であり、光放出部40の屈折率と皮膚92の表面921の屈折率とは同程度であると言える。ここで、「屈折率が同程度」とは、互いに異なる2つの屈折率があった場合において、大きい方の屈折率の±5%の範囲内に、小さい方の屈折率が含まれる程度に、両者が近しい値をとることをいう。この場合、例えば、光の入射角(皮膚92の表面921の法線との間の角度)を80度(入射NAは約0.17)とすると、毛91の屈折率の-5%の屈折率をもつ物体と毛91の屈折率をもつ物体との界面での反射率(s偏光)が13.2%、光放出部40と毛91との界面での反射率(s偏光)が12.5%、皮膚92と毛91との界面での反射率(s偏光)が11.3%となる。このように、屈折率が-5%変化しても、反射率は2%しか変化しない。つまり、本実施形態では、光放出部40の屈折率(1.4698)及び皮膚92の表面921の屈折率は、毛91の屈折率(1.5432)の±5%の範囲にあるため、同程度にあると言える。
【0092】
ちなみに、「(2.1)定義」の欄で説明したように、同じ物質であっても屈折率は波長によって異なるが、上述した屈折率の関係は、少なくとも光源21から出力される光の波長の範囲においては不変である。すなわち、少なくとも光源21から出力される光の波長の範囲(例えば、400nm以上700nm以下の範囲)においては、屈折率は「光放出部<皮膚<毛」との関係を満たす。
【0093】
さらに、クラッド部42の屈折率は光放出部40であるコア部41の屈折率よりも小さいので、上述した条件を満たす場合には、コア部41、クラッド部42、皮膚92の表面921、及び毛91の四者の中では、クラッド部42の屈折率が最小となる。つまり、四者の屈折率の関係は「クラッド部<コア部<皮膚<毛」となる。
【0094】
ところで、本実施形態に係る毛切断装置1では、少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。すなわち、コア部41及びクラッド部42を有する光導波路4においては、コア部41の内部を光が通ることになるため、コア部41の断面における単位面積(1cm2)あたりの光強度が、50kW以上となる。ここで、光導波路4を通る光のパワー密度は、常に、50kW/cm2以上である必要はなく、少なくとも毛91の切断を行う際(毛91の切断時)において、50kW/cm2以上であればよい。
【0095】
本実施形態では一例として、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、50kW/cm2以上300kW/cm2以下である。また、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、毛91を切断可能な70kW/cm2以上であることが好ましく、75kW/cm2以上であることがより好ましい。さらに、毛91を素早く(例えば0.1s程度で)切断可能とするならば、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、100kW/cm2以上であることがより好ましい。さらに、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、民生品として応用可能なレーザの光出力、及びファイバ径等を考慮すると200kW/cm2以下であることが好ましい。本実施形態では一例として、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、初期値が100kW/cm2であると仮定する。
【0096】
詳しくは「(2.4)使用例」の欄及び「(3)作用」の欄で説明するが、この程度のパワー密度であれば、毛切断装置1は、光放出部40から毛91に放出する光で毛91を効率的に切断しやすい。
【0097】
また、本実施形態では、光導波路4を通る光のパワー密度は可変である。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1は、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値に固定されているわけではなく、光導波路4を通る光のパワー密度が変更可能に構成されている。ここでは特に、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度が、初期値(100kW/cm2)に固定されるのでなく、初期値から変更可能である。毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、50kW/cm2以上の範囲で可変であることが好ましい。光導波路4を通る光のパワー密度は、連続的に変化してもよいし、段階的(非連続的)に変化してもよい。
【0098】
また、本実施形態では、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力を調整することによって、調整されている。ここでいうパワー密度の「調整」は、規定値にパワー密度を設定する態様と、上述したようにパワー密度を変化させる態様と、の両方の態様を含んでいる。要するに、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値に固定される場合には、パワー密度が初期値(100kW/cm2)となるように、光源21からの出力の大きさが決定される。一方、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値から所望の値に変化させられる場合には、パワー密度が変化後の所望の値となるように、光源21からの出力の大きさが決定される。光源21からの出力の大きさを決定するための構成について詳しくは、「(2.6)制御回路」の欄で説明する。
【0099】
(2.3.3)保持部材
次に、光放出モジュールM1の保持部材5の詳細について、
図6A及び
図6Bを参照して説明する。
【0100】
保持部材5は、光導波路4を保持する部位である。特に保持部材5は、光導波路4のコア部41の一部を露出した形態で光導波路4を保持する。つまり、光導波路4は、コア部41の一部が保持部材5によって遮光されて光の漏れが阻害されないように保持される。
【0101】
光導波路4は、保持部材5における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に、少なくとも光放出部40を露出させる態様で、保持部材5に保持されている。このように保持された光導波路4のコア部41は、毛91に光を放出することで毛91の切断を行う、光放出部40として機能する。
【0102】
保持部材5は、固定ブロック32に固定されているので、光導波路4(光放出部40)は、保持部材5及び固定ブロック32を介してカバー30に間接的に固定されることになる。
【0103】
ここで、光導波路4の光放出部40、保持部材5及び固定ブロック32の全てが、開口部31を通してカバー30の外部に露出している。しかも、開口部31内では、固定ブロック32及び保持部材5は、開口部31の短手方向(Z軸方向)において、毛切断装置1の進行方向の後方側(つまりZ軸の負の側)に偏って配置されている(
図5A参照)。そのため、保持部材5から見て、毛切断装置1の進行方向の前方側(つまりZ軸の正の側)には、開口部31の周縁との間に隙間が確保され、この隙間を通して、開口部31内に切断対象である毛91を取り込むことが可能である。言い換えれば、保持部材5のうちの光放出部40が露出するように光導波路4が保持された面、つまり毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面と、開口部31の周縁との間には、
図6Aに示すように、切断対象の毛91を導入可能である。
【0104】
切断対象である毛91は、
図6Aに示すように、保持部材5で保持された光放出部40と対向する位置に、開口部31からカバー30内に導入される。この状態では、保持部材5にて保持されている光導波路4は、光放出部40を、切断対象である毛91に突き合わせる格好になる。これにより、光導波路4は、切断対象である毛91に光放出部40を接触させることが可能である。
【0105】
保持部材5は、基台51と、接着部材52と、を有している。接着部材52は、基台51に対して光導波路4を接着する。基台51及び接着部材52は、いずれも光透過性を有する合成樹脂製である。特に、基台51は金型を用いて成形される樹脂成形品である。これに対して、接着部材52は、接着剤であるペースト状の樹脂が硬化した硬化物である。つまり、接着部材52は、基台51と光導波路4とを接合するための接着剤の硬化物である。
【0106】
基台51は、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。基台51は、固定ブロック32における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。本実施形態では、基台51の屈折率は、コア部41(光放出部40)の屈折率以上である。
【0107】
また基台51は、
図6Bに示すように、対向面511と、側面512と、背面513と、裏面514と、の4面を有している。基台51の長さ(X軸)に直交する断面は、これら4面を四辺とする略矩形状となる。対向面511は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対向する面である。側面512は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対して交差する面であって、対向面511と隣接する面である。背面513は、対向面511とは反対側を向いた面であって、側面512と隣接する面である。裏面514は、側面512とは反対側を向いた面であって、背面513と隣接する面である。ここでは光導波路4が、側面512に保持されている。
【0108】
接着部材52は、基台51に対して光導波路4を接着する。本実施形態では、基台51の側面512に光導波路4が保持されるように、接着部材52は、基台51の側面512に設けられ、基台51と光導波路4との接合を行う。ここで、接着部材52は、基台51の長手方向(X軸方向)の全長にわたって配置されている。そのため、光導波路4は、基台51の長手方向の全長にわたって、接着部材52にて基台51に接着されることになる。
【0109】
本実施形態では、接着部材52は、光放出部40のうち、クラッド部42と直接的に接触する。そのため、接着部材52は、その屈折率に関する制限を受けにくく、材質の選択肢が広くなる。つまり、光放出部40(コア部41)の屈折率が「1.4698」であるとすれば、接着部材52の屈折率は「1.4698」よりも大きくてもよい。光放出部40と接着部材52との間に、光放出部40の屈折率より小さいクラッド部42が介在する。そのため、たとえ接着部材52の屈折率が、光放出部40より大きくても、クラッド部42が光の漏れ量を適度に制限することができ、必要以上にコア部41から光が漏れ出すことによる光のパワー密度の低下を抑制できる。もちろん、接着部材52の屈折率は、光放出部40の屈折率と同等、又は、光放出部40の屈折率以下でもよい。
【0110】
また基台51のうち、光導波路4が保持される側面512に、光導波路4の位置決めを行う位置決め部53(溝)が形成されている。位置決め部53は、基台51の長手方向(X軸方向)の全長にわたって形成されている。光導波路4は、クラッド部42が、位置決め部53としての溝内に収容されるようにして、基台51の側面512に保持される。
【0111】
毛切断部材3は、光導波路4の周囲にあり、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面(モジュール側接触面501、及びカバー側接触面301:
図5A参照)を有している。光導波路4は、モジュール側接触面501からの高さL0(
図6B参照)が100μm以下となるように、保持部材5に保持されている。ここではモジュール側接触面501は、基台51の対向面511、及び、固定ブロック32におけるY軸の負の向きを向いた面に相当する。カバー側接触面301は、カバー30におけるY軸の負の向きを向いた面に相当する。本実施形態では、光導波路4は、カバー側接触面301からの高さも、モジュール側接触面501からの高さと略同じである。
【0112】
このような接触面(501,301)からの光導波路4の高さL0は、毛91の切断時における皮膚92の表面921からの光導波路4の高さに等しい。すなわち、本実施形態では、高さL0が、100μm以下に設定されることで、毛91の切断時における皮膚92の表面921から光導波路4までの距離(高さ)は100μm以下となる。ただし、ここでは高さL0は1μm以上であり、ゼロ(0)ではない。そのため、毛91の切断時において、皮膚92の表面921から光導波路4を離すことができる。したがって、例えば、皮膚92の表面921にニキビ等の隆起物があっても、隆起物による光導波路4の引っ掛かりが生じにくい。
【0113】
(2.3.4)カバーと固定キャップ
カバー30は、上述の通り、合成樹脂製であり、全体としてX軸に沿って長尺の角柱状に形成されている。カバー30は、中空であり、開口部31を有している。カバー30は、その内部に、開口部31を介して、光導波路4の光放出部40を露出する形態で、光放出モジュールM1を収容している。ここでは、カバー30は、光放出モジュールM1全体を収容しているのではなく、光放出モジュールM1のうち、ホルダ部H1よりもX軸の正の向きに突出した部位を収容している。光放出モジュールM1の固定ブロック32は、カバー30に固定されている。
【0114】
カバー30は、X軸の負の向きにおける一端面に挿入口300(
図3参照)を有している。光放出モジュールM1は、カバー30の挿入口300から挿入されて収容される。またカバー30は、挿入口300の周縁において、フランジ部320を有している。
【0115】
固定キャップ34は、例えば金属製であるが、特に限定されず、合成樹脂製でもよい。固定キャップ34は、X軸に沿った軸を有する筒状である。固定キャップ34は、X軸の負の向きを向いた一端面が開放され、当該一端面とは反対側の端面(X軸の正の向きを向いた面)に、カバー30を挿通可能な孔部340(
図1参照)を有している。固定キャップ34は、その内周面に、レセプタクル部81にあるねじ部810(ねじ山)が螺合可能なねじ溝341を有している。
【0116】
カバー30は、フランジ部320を介して、ホルダ部H1と固定される。ここでは、ホルダ部H1内の固定部材F1がフランジ部320に接着することで、カバー30は、光放出モジュールM1を収容した形態で、ホルダ部H1に固定される。
【0117】
固定キャップ34は、孔部340にカバー30を通すように、X軸の負の向きに移動させてカバー30に被せられ、さらにホルダ部H1の、周方向における全体を概ね覆うように配置される。固定キャップ34は、孔部340の内周部がカバー30のフランジ部320に接触して、更なるX軸の負の向きへの移動が規制される。固定キャップ34は、
図3に示す状態において、カバー30及びホルダ部H1に対して回転可能である。
【0118】
本実施形態では、固定キャップ34が、レセプタクル部81からのフェルール71の抜けを規制する規制構造(ここではねじ溝341)を有している。固定キャップ34のねじ溝341に、装置本体2のレセプタクル部81にあるねじ部810が螺合されることで、レセプタクル部81からのフェルール71の抜けが規制される。したがって、意図せずにフェルール71が抜けることを抑制しやすい。結果的に、フェルール71を含む毛切断部材3の全体が、装置本体2から脱落しにくくなる。
【0119】
(2.3.5)フェルール
フェルール71は、光導波路4の受光面40A側の端部を保持する形態で光放出モジュールM1と一体的に結合され、かつ光導波路4に導入される光に対するコア部41の位置を一意に決める接続部材である。フェルール71は、レセプタクル部81に対して機械的に接続可能である。フェルール71がレセプタクル部81に対して接続されることで、コア部41には、レセプタクル部81の側から光が導入される。
【0120】
フェルール71は、例えば、X軸に沿って長尺な円筒状の部材であり、X軸方向における両端面が開放されている。フェルール71は、例えば、ジルコニア等のセラミック焼結体によって形成されている。フェルール71は、X軸に沿って見て、円環状である。フェルール71の外径は、例えば、2.5mmであるが、この数値に限定されない。
【0121】
フェルール71は、光導波路4の受光面40A側の端部に装着される。フェルール71の内径は、光導波路4の外径よりも大きく、フェルール71は、接着部材G1を介して、光放出モジュールM1と一体的に結合される。
【0122】
接着部材G1は、光導波路4及びフェルール71を接着する。接着部材G1は、接着剤であるペースト状の樹脂が硬化した硬化物である。つまり、接着部材G1は、フェルール71の内周面と、光導波路4の外周面とを接合するための接着剤の硬化物である。クラッド部42は、その外周面の一部が、フェルール71の内周面と接触するように配置される。接着部材G1の屈折率は、コア部41の屈折率よりも小さい。そのため、コア部41から接着部材G1への必要以上の光の漏れを抑制しやすい。
【0123】
次に、フェルール71の結合先となる装置本体2のレセプタクル部81について
図3及び
図4を参照して説明する。レセプタクル部81は、例えば、樹脂製の部位であり、ここでは装置本体2のケース20と一体となって形成されている。ただし、レセプタクル部81は、金属製の部位でもよい。またレセプタクル部81は、ケース20と別体であって、ケース20に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されてもよい。
【0124】
レセプタクル部81は、全体として略円筒形状である。レセプタクル部81は、
図3に示すように、第1部位801と、第2部位802とから構成される。第1部位801は、ケース20のX軸の正の側の一端部と連続する部位である。第2部位802は、第1部位801よりもその外径が小さい部位であり、第1部位801のX軸の正の側の端部と連続する部位である。
【0125】
レセプタクル部81は、その軸方向に沿って円形状に貫通した貫通孔811を有している。貫通孔811は、ケース20における光源21及び光学系22等を収容している収容空間と連通している。ただし、レセプタクル部81における、貫通孔811の奥にある開口を塞ぐように、光学系22の第4レンズ224が配置される。言い換えると、フェルール71がレセプタクル部81に接続されていない状態では、光学系22の第4レンズ224の一面は、貫通孔811を介して、外部に露出する。
【0126】
貫通孔811は、
図3に示すように、円形状の小径孔812と、小径孔812の内径よりも大きい内径を有した円形状の大径孔813とを含む。小径孔812の内径は、フェルール71が小径孔812内にほぼ隙間なく収まる程度に、フェルール71の外径と略同一に設定されている。大径孔813の内径は、ホルダ部H1が大径孔813内に収まる程度に、ホルダ部H1の外径と略同一に設定されている。なお、小径孔812の内径は、小径孔812に隣接して配置されている第4レンズ224の外径よりも小さい。
【0127】
フェルール71がレセプタクル部81に接続された状態で、ホルダ部H1が小径孔812の開口の周縁部815(
図3参照)に接触する。結果的に、フェルール71が、更に奥へ進入してしまうことが抑制される。
【0128】
ここでは、ホルダ部H1が周縁部815(
図3参照)に接触した状態で、光導波路4の受光面40Aが、第4レンズ224の一面と僅かに隙間を空けて近接して対向した状態に配置される。特に、フェルール71によって位置が一意に決められたコア部41の光軸が、光源21及び光学系22の光軸CX1(
図2参照)と一致することになる。
【0129】
ここで、第2部位802の外周面にあるねじ部810(ねじ山)(
図3参照)が、固定キャップ34のねじ溝341に螺合可能である。
【0130】
また第2部位802は、その外周面におけるY軸の正を向く領域に、スリット状の溝部814を有している。溝部814は、第2部位802の上記領域を貫通している。溝部814は、大径孔813と連通している。溝部814は、X軸方向における第2部位802の両端部にわたって形成されている。溝部814は、ホルダ部H1の凸部H11が挿入可能となっている。ホルダ部H1が周縁部815(
図3参照)に接触した状態で、凸部H11は、溝部814のX軸方向における奥まで進入した位置となる。
【0131】
(2.3.6)ホルダ部
ホルダ部H1は、光放出モジュールM1の一部、及びフェルール71の一部が挿入されてこれらを互いに一体的に結合する部位である。
【0132】
ホルダ部H1は、例えば、X軸に沿って長尺な円筒状の部材であり、X軸方向における両端面が開放されている。ホルダ部H1は、例えば、金属製(又は合成樹脂製でもよい)の部位である。ホルダ部H1は、X軸に沿って見て円環状である。
【0133】
ホルダ部H1の内径は、光放出モジュールM1の外径よりも大きい。またホルダ部H1の内径は、フェルール71の外径よりも大きい。ホルダ部H1は、その外周面において、Y軸の正の向きに突出した凸部H11(
図4参照)を有している。凸部H11は、溝部814内をX軸の負の向きに挿入されることで、レセプタクル部81に対する、毛切断部材3の軸周りの方向における毛切断部材3の位置を一意に決める。ここでは一例として、凸部H11は、円柱状に形成されているが、その形状は、特に限定されない。
【0134】
また本実施形態では、光放出モジュールM1のX軸の負の側の一端部が、ホルダ部H1におけるX軸の正の側の開口から奥へ進入した状態で、固定部材F1を介して固定される。またフェルール71のX軸の正の側の一端部は、光導波路4の受光面40A側の端部がフェルール71に装着された状態で、かつ、ホルダ部H1におけるX軸の負の側の開口から奥に進入した状態で、固定部材F1を介して固定される。ここでは固定部材F1の屈折率は、コア部41の屈折率よりも小さい。そのため、コア部41から固定部材F1への必要以上の光の漏れを抑制しやすい。
【0135】
固定部材F1は、例えば、接着剤であるペースト状の樹脂が硬化した硬化物である。固定部材F1は、フェルール71内の接着部材G1と同じ種類の接着剤でもよいし、異なる種類の接着剤でもよい。固定部材F1は、光放出モジュールM1の一部と、フェルール71の一部とを接着する。固定部材F1は、光放出モジュールM1の中心軸とフェルール71の中心軸とをホルダ部H1の中心軸に一致させ、かつ、光導波路4の第2領域402が湾曲した状態で、固定する。なお、光導波路4の第2領域402の曲率はできるだけ小さいことが望ましく、それによって第2領域402における光の漏れを抑制できる。
【0136】
ところで、センサ部S1(S11,S12)及び受光部X1からそれぞれ導出されている複数の第1接続線101(
図2及び
図9参照)は、ホルダ部H1の内部を通るように配置される。複数の第1接続線101は、固定部材F1を介してホルダ部H1内で保持されながら、各第1接続線101の先端にある導体部101A(
図9参照:例えば接続ピン)が、ホルダ部H1のX軸の負の側の一端部から露出されている。
【0137】
一方、レセプタクル部81には、制御回路6と電気的に接続されている複数の第2接続線102(
図2及び
図9参照)が埋め込まれている。各第2接続線102の先端にある導体部102A(
図9参照:例えばピン受け部)が、レセプタクル部81のX軸の正の側の一端部(周縁部815)から露出されている。凸部H11が溝部814内をX軸の負の向きに奥まで挿入されることで、ホルダ部H1から露出する各第1接続線101の導体部101Aが、対応する第2接続線102の導体部102Aと接続される。要するに、毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、光導波路4が光学系22を介して光源21と光学的に結合されるだけでなく、センサ部S1及び受光部X1が、接続線(101,102)を介して制御回路6と電気的に接続されることになる。
【0138】
(2.3.7)センサ部
センサ部S1(
図1、
図5A、
図5B、及び
図9参照)は、皮膚92の接触状態を検知するための部位である。センサ部S1は、光導波路4の周囲の領域に配置される。
【0139】
本実施形態の毛切断装置1は、センサ部S1を2つ備えている。2つのセンサ部S1は、カバー30に固定されている。2つのセンサ部S1は、光導波路4の、光軸C1の方向と交差(ここでは一例として直交)する幅方向W1(
図5B参照)における両側にそれぞれ配置される。幅方向W1は、Z軸に平行である。センサ部S1の数は、特に限定されない。センサ部S1の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0140】
本実施形態ではカバー30が開口部31を有しているため、2つのセンサ部S1は、
図1に示すように、Z軸の方向において、カバー30の開口部31を間に挟み込むように配置されている。言い換えると、X軸の方向に沿って長尺の矩形状に開口している開口部31よりもZ軸の正の側に、一方のセンサ部S1が配置され、開口部31よりもZ軸の負の側に、他方のセンサ部S1が配置される。つまり、ここでは一例として、センサ部S1は、開口部31の周囲に配置される。
【0141】
以下、開口部31よりもZ軸の正の側のセンサ部S1を「第1センサ部S11」と呼び、開口部31よりもZ軸の負の側のセンサ部S1を「第2センサ部S12」と呼ぶことがある。
【0142】
各センサ部S1(検知部)は、例えば、静電容量式のタッチセンサ(タッチスイッチ)を構成する。各センサ部S1は、感度を高めることで物体の近接を検出する静電容量式の近接センサでもよく、この場合、センサ部S1は、皮膚92の近接状態を検知するための部位となり得る。また各センサ部S1は、静電容量式のセンサに限定されず、光学式のセンサ、誘導式のセンサ、又は磁気式のセンサ等でもよい。
【0143】
各センサ部S1は、単一の電極S2(導電体部)を有し、電極S2と接触体(皮膚92)との間における静電容量の変化を検知する、自己容量式のセンサである。また各センサ部S1は、例えば保護カバーS3を更に有している。各保護カバーS3は、対応する電極S2の表面(Y軸の負の側の一面)を覆うように配置される。各保護カバーS3は、電気絶縁性を有している。保護カバーS3は、例えば、電気絶縁性を有する樹脂材料により形成される。センサ部S1の検知方式によっては、保護カバーS3は省略されてもよい。
【0144】
各センサ部S1は、一方向に長尺であり、その長さ方向が光導波路4の光軸C1の方向に対して平行するように配置される。ここでは、開口部31の周縁を形成するX軸の方向に長い矩形の四辺に対して、第1センサ部S11及び第2センサ部S12は、一対の長辺にそれぞれ沿って配置される。
【0145】
各センサ部S1は、光軸C1の方向に沿って長尺の、矩形の平板状に形成されている。本実施形態では、各センサ部S1は、
図1に示すように、開口部31の長さ方向と略同じ長さを有している。各センサ部S1のX軸の正の側の一端は、開口部31のX軸の正の側の一端と、X軸の方向において略同じ位置にあり、各センサ部S1のX軸の負の側の他端は、開口部31のX軸の負の側の他端と、X軸の方向において略同じ位置にある。要するに、X軸の方向における開口部31のどの領域と皮膚92が対向しても、皮膚92の接触が検知される可能性が高い配置構造となっている。
【0146】
各センサ部S1は、例えば、インサート成形等によってカバー30に埋め込むように固定されている。各センサ部S1は、概ねその表面(接触面S10)が、カバー30の表面(Y軸の負の側の一面)から露出する。接触面S10は、保護カバーS3の表面(Y軸の負の側の一面)に相当する。接触面S10は、カバー30の表面と概ね面一である。ここでは一例として、接触面S10とカバー30の表面(Y軸の負の側の一面)とによって、カバー側接触面301が構成されるものとする。
【0147】
各電極S2は、複数の第1接続線101のうちのセンサ部S1用の線と電気的に接続されている。毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、各電極S2は、接続線(101,102)を介して制御回路6と電気的に接続されることになる。
【0148】
皮膚92が、各センサ部S1の接触面S10に接触することで、電極S2と人体とによって構成される(擬似的な)コンデンサの静電容量の変化を含む電気信号が、接続線(101,102)を介して制御回路6に出力される。(後述する)制御回路6は、各センサ部S1から受信する電気信号(検知信号)に応じて、接触面S10に皮膚92が接触したこと、又は接触面S10から皮膚92が離れたことを判断する。
【0149】
このように各センサ部S1は、皮膚92から押圧を受けても光放出モジュールM1に対する相対的な位置が変位することなく皮膚92の接触状態を検知するための接触面S10を有しているといえる。上述したセンサ部S1の構成は単なる一例であって、適宜に変更可能である。例えばセンサ部S1は、皮膚92の接触状態を検知するための接触面を有する可動部が、皮膚92から押圧を受けることにより光放出モジュールM1に対して相対的に変位する可動式のスイッチによって構成されてもよい。
【0150】
ただし、本実施形態のように、光放出モジュールM1に対する相対的な位置が変位することなく皮膚92の接触状態を検知するセンサ部S1の構成の方が、可動式のスイッチが適用される場合に比べて、可動領域の確保が不要となりやすい。結果的に、毛切断装置1の小型化を図りやすくなる。
【0151】
(2.3.8)受光部及びフィルタ部
受光部X1は、接触面(カバー側接触面301、及びモジュール側接触面501)の側からの光を受光するように構成される。受光部X1は、半導体素子として、例えばフォトダイオード等の受光素子を有している。受光部X1は、複数のフォトダイオードから構成されるフォトダイオードアレイを有してもよい。
【0152】
また受光部X1は、例えば集光レンズからなる受光面X10を有している。受光面X10は、接触面(カバー側接触面301、及びモジュール側接触面501)の側を向くように配置されている。ここでは一例として、受光面X10は、Y軸の負の側を向いている。
【0153】
本実施形態の受光部X1は、カバー30における開口部31よりも内側に配置される。具体的には、受光部X1は、開口部31と連通するカバー30の収容空間SP1内であって、開口部31の開口面310(
図5A参照)よりもY軸の正の側に配置される。特に本実施形態では、受光部X1は、カバー30の内部の天面302(
図5A参照)上に配置されている。天面302は、Y軸の負の側を向く面であり、皮膚92と対向し得る面である。
【0154】
ここでは受光部X1の受光面X10は、収容空間SP1内で、光放出モジュールM1と対向する。つまり、受光面X10は、開口部31の正面から見て、光放出モジュールM1の裏側に配置される。具体的には、開口部31の開口面310の垂直方向(Y軸の方向)において、第1距離L1は、第2距離L2よりも大きい(
図5A参照)。第1距離L1は、開口面310から受光部X1までの距離である。第2距離L2は、開口面310から光導波路4までの距離である。ここでは第2距離L2は、上述したモジュール側接触面501から光導波路4までの高さL0(
図6B参照)と略等しい。
【0155】
図5Bの例では、正面視がスクエア状の受光部X1が模式的に図示されているが、受光部X1の形状は特に限定されない。また受光部X1は、
図5Bに示すように、Y軸の負の側から見て、天面302のX軸の方向における略中央の位置に配置されているが、受光部X1の位置、及びサイズも特に限定されない。
【0156】
図5Aでは図示を省略しているが、受光部X1は、実装基板に実装されて、その実装基板が、天面302に適宜の固定手段によって固定されていることが望ましい。
【0157】
受光部X1の受光素子は、複数の第1接続線101のうちの受光部X1用の線と電気的に接続されている。毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、受光部X1の受光素子は、接続線(101,102)を介して制御回路6と電気的に接続されることになる。受光部X1は、受光面X10から入射した光強度に応じた電気信号を、接続線(101,102)を介して制御回路6に出力する。
【0158】
フィルタ部B1は、光放出モジュールM1から放出される特定の波長領域の光を反射、又は吸収し、かつ特定の波長領域以外の光を透過するように構成される。つまり、フィルタ部B1は、入射光のうち、ある特定の波長領域の不要な光を反射又は吸収によりカットし、必要な光のみを透過させる光学フィルタである。ここでいう「不要な光」とは、受光部X1の受光面X10に入射させたくない特定の波長領域の光であり、光源21で発生する光である。上述したように、光源21で発生する光の波長は、例えば、400nm以上、700nm以下であることから、ここでは一例として、「特定の波長領域」が、400nm以上、700nm以下の領域の少なくとも一部と重複するような光学フィルタが適用される。
【0159】
本実施形態では、フィルタ部B1は、受光部X1の受光面X10を覆うように配置される。フィルタ部B1は、例えば薄板状の部材である。ここでは一例として、フィルタ部B1は、正面視において、受光部X1と略同形のスクエア形状で、かつ受光部X1と略同寸法である。フィルタ部B1は、受光部X1の受光面X10上に積層される。
【0160】
皮膚92が、カバー側接触面301及びモジュール側接触面501に近づいて接触すると、開口部31の一部又は略全部が皮膚92で閉塞されることになり、結果的に、収容空間SP1は、外光が進入しにくい状況となる。そこで、本実施形態の毛切断装置1は、受光部X1を用いて、カバー側接触面301及びモジュール側接触面501の側からの光(外光を含み得る)を受光させて、その光強度を検知する。そして、毛切断装置1は、光強度の検知結果を、毛切断装置1に対する皮膚92の接触状態を判定(推定)するための判定材料の1つとし、光源21の光出力に関する制御を行う。ここでいう「外光」は、毛切断装置1の外部の光であり、例えば建物の外の太陽の光、窓等から建物内に差し込む太陽の光、及び照明光等を含む。
【0161】
ところで、光放出モジュールM1が収容空間SP1内に収容されていることから、受光部X1は、光放出部40からの光、具体的には、後述するように光放出部40が毛91と接触することで光放出部40から漏れ出た光を受光する可能性がある。光放出部40からの光強度は、外光の強度を検知する場合に、受光部X1から出力される電気信号上でノイズとなり得る。
【0162】
そこで上述の通り、フィルタ部B1を配置させることで、受光部X1は、光源21で発生する光の波長領域(400nm以上、700nm以下の領域)に対応する特定の波長領域の光をカットする可能性が高くなる。したがって、光源21で発生する光が受光部X1に入射してしまうことを完全に防ぐことは必須ではないものの、受光部X1が受光する光が、外光を支配的に含むように調整される。その結果、皮膚92の接触状態に関する判定の信頼性が向上される。
【0163】
言い換えると、フィルタ部B1を配置させることで、受光部X1が、光放出モジュールM1から放出される光を受光してしまう位置に配置されても、接触面(301,501)の側からの光に関する受光精度が向上される。つまり、受光部X1の配置に関する設計自由度が向上される。特にフィルタ部B1が受光部X1の受光面X10を覆うように配置されていることで、接触面(301,501)の側からの光に関する受光精度が更に向上される。
【0164】
(2.4)使用例
次に、本実施形態に係る毛切断装置1の使用例について、
図7A~
図8Bを参照して説明する。
【0165】
すなわち、本実施形態では、上述した構成の毛切断装置1は、毛91(ここでは「ひげ」)の切断(ここでは「そる」)に用いられる。その際、ユーザは、毛切断装置1の装置本体2(グリップ)を片手で握って毛切断装置1を把持した状態で、毛切断部材3(ヘッド)、つまりカバー30のY軸の負の向きを向いた面をユーザの皮膚92に接触させる。これにより、
図7Aに示すように、切断対象である毛91は、保持部材5で保持された光放出部40と対向する位置に、開口部31からカバー30内に導入される。
【0166】
図7Aに示すように、光放出部40が毛91に接触していない状態では、光放出部40には空気が接することになるため、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れはほとんど生じない。この状態で、ユーザは、毛切断装置1としての毛切断部材3を、皮膚92の表面921に沿って
図7Aにおける矢印A1の向きに移動させる。
【0167】
毛切断部材3の移動に伴って、
図7Bに示すように、光放出部40は、毛切断部材3の進行方向の前方(つまりZ軸の正の向き)に位置する毛91に接触する。このとき、光放出部40と毛91との屈折率の差によって、光放出部40からの光が毛91に漏れ出すようにして毛91に放出する。すなわち、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さいので、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出すことになり、光放出部40から毛91に光が放出される。
【0168】
さらに、
図7Bに示す状態において、光放出部40から毛91に放出される光の一部が散乱することで、光放出部40からの光は、毛91の周辺の皮膚92にも放出することになる。具体的には、光放出部40における毛91との接触部位から漏れ出た光の一部は、毛91にて散乱して皮膚92に放出する。ここで、
図7Bに示すように、主として毛91に放出する光を第1放出光Op1、主として皮膚92に放出する光を第2放出光Op2とする。すなわち、光放出部40に毛91が接触した状態においては、光放出部40からは、第1放出光Op1が毛91に放出されるとともに、第2放出光Op2が皮膚92に放出する。
【0169】
特に、光放出部40から毛91に第1放出光Op1が放出すると、光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)のエネルギにて、毛91が切断される。要するに、本実施形態では、光源21から出力されて光導波路4を通る光の波長(例えば400nm以上700nm以下)は、毛91の中の発色団(分子にその色を提供する分子の一部)によって吸収される光の波長を含む。したがって、第1放出光Op1は、毛91の発色団によって吸収されることで熱に変換され、この熱をもって、毛91の分子の結合を破壊、又は毛91を溶融若しくは燃焼させる。光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)の標的となり得る発色団は、例えば、ケラチン及び水等の発色団を含む。
【0170】
上述のように、ユーザが、毛切断装置1としての毛切断部材3を、皮膚92に沿って矢印A1(
図7A参照)の向きに移動させることで、皮膚92から突出した毛91を切断することができる。したがって、光導波路4が通過した後は、
図7Cに示すように、皮膚92には、切り残しとなる毛91の根元部分のみが残ることになる。
【0171】
ただし、毛切断装置1では、
図7Bに示すように、光放出部40が毛91に接触しなくても、例えば、光放出部40と空気との界面からの空気側への光(エバネッセント波)の染み出し等により、光が毛91に放出することもある。そのため、光放出部40が毛91に接触した場合のみならず、光放出部40と毛91とが接触寸前まで接近した場合等にも、毛切断装置1において、光放出部40から毛91に第1放出光Op1が放出して毛91を切断できることがある。
【0172】
ところで、皮膚92の状態によっては、
図8A及び
図8Bに示すように、毛切断装置1を使用して毛91(ここでは「ひげ」)の切断(ここでは「そる」)を行う際に、光放出部40が皮膚92の一部に接触する場合もある。
図8A及び
図8Bは、皮膚92における毛91の周辺(毛根周辺)に、一例としてニキビ等の隆起部922が存在する場合の、毛切断装置1の使用例を示す。隆起部922は、皮膚92のうち、隆起部922の周辺の皮膚92の表面921に比較して盛り上がった(隆起した)部位である。
【0173】
すなわち、
図8Aに示すように、光放出部40が毛91に接触していない状態では、光放出部40には空気が接することになるため、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れはほとんど生じない。この状態で、ユーザは、毛切断部材3を、皮膚92の表面921に沿って
図8Aにおける矢印A1の向きに移動させる。
【0174】
毛切断部材3の移動に伴って、
図8Bに示すように、光放出部40は、毛切断部材3の進行方向の前方(つまりZ軸の正の向き)に位置する毛91に接触する。このとき、光放出部40と毛91との屈折率の差によって、光放出部40からの光(第1放出光Op1)が毛91に漏れ出すようにして毛91に放出する。光放出部40から毛91に第1放出光Op1が放出すると、光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)のエネルギにて、毛91が切断される。
【0175】
さらに、
図8Bに示す状態において、光放出部40は、皮膚92における毛91の周辺の隆起部922にも接触する。このとき、光放出部40と皮膚92の表面921(隆起部922)との屈折率の差によって、光放出部40からの光が皮膚92に漏れ出すようにして皮膚92に放出する。すなわち、光放出部40の屈折率は、皮膚92の表面921の屈折率よりも小さいので、光放出部40に皮膚92が接触した状態では、光放出部40から皮膚92に光が漏れ出すことになり、光放出部40から皮膚92に光(第2放出光Op2)が放出される。このとき、光放出部40から皮膚92には第2放出光Op2が直接的に放出され、第2放出光Op2は、主として隆起部922に放出される。特に本実施形態では、光導波路4のうち、隆起部922に直接接触する部位は、クラッド部42となる可能性が高く、第2放出光Op2のエネルギは、第1放出光Op1に比べて低い。
【0176】
(2.5)毛切断部材の交換
ところで、本実施形態では、フェルール71がレセプタクル部81から取り外し可能であることから、毛切断部材3の取り替え(交換)が容易である。以下、毛切断部材3の交換作業について説明する。
【0177】
毛切断部材3は、経年劣化によって、交換時期が到来する可能性がある。具体的には、光導波路4の光放出部40が、皮膚92及び毛91等と繰り返し接触することによってダメージを受け、光の放出量が低減し、毛91を切断しきれない状況になる可能性がある。
【0178】
まずユーザは、装置本体2に装着中にある古くなった毛切断部材3を装置本体2から取り外す作業を行う。具体的には、ユーザは、毛切断部材3の固定キャップ34を緩める方向に指で回転させる。その結果、レセプタクル部81のねじ部810に締結されていたねじ溝341が緩まりながら、固定キャップ34は、X軸の正の方向に移動し、最終的にレセプタクル部81から抜け出す。この状態で、ユーザは、カバー30の外側を手で把持しながらX軸の正の方向へ引っ張ることで、フェルール71、及びホルダ部H1を介してフェルール71と一体的に結合されている光放出モジュールM1を、X軸の正の方向へ引き抜くことができる。その際に、溝部814内に嵌っていた凸部H11も、溝部814に沿ってX軸の正の方向へ移動し、最終的に溝部814から抜け出る(
図3参照)。
【0179】
続いて、ユーザは、例えば新品の毛切断部材3を装置本体2に取り付ける作業を行う。具体的には、ユーザは、そのカバー30の外側を手で把持しながら、先端側にあるフェルール71がレセプタクル部81内に挿入されるように、X軸の負の方向へ押し込む。その際に、ユーザは、ホルダ部H1の凸部H11を目印にしながら、毛切断部材3の周方向の向きを調整する。つまり、ユーザは、凸部H11が、X軸方向において溝部814と対向するように、毛切断部材3の周方向の向きを調整する。そして、凸部H11が溝部814に向かって挿入されるように、そのカバー30をX軸の負の方向へ押し込む。
【0180】
結果として、フェルール71は、レセプタクル部81内の小径孔812に嵌り込み、ホルダ部H1は、レセプタクル部81内の大径孔813に嵌り込む。この時点で、装置本体2に対する毛切断部材3の周方向に沿った回転が規制されることになる。そして、受光面40Aは、光学系22(第4レンズ224)と近接して対向し、更にコア部41の光軸C1が、光学系22の光軸CX1と、(ユーザが意識しなくても自動的に)合致することになる。要するに、光放出モジュールM1に関する位置決めが容易となっていて、組立性が改善される。
【0181】
最後にユーザは、固定キャップ34をレセプタクル部81に取り付けることで、毛切断部材3が装置本体2から抜けにくくなる。なお、毛切断部材3のうち、固定キャップ34は、使いまわしでもよいし、新しいものと交換されてもよい。
【0182】
このように毛切断部材3は、装置本体2のレセプタクル部81から取り外し可能に装着されるため、結果的に、組立性が改善されていて、また光学調整が容易である。
【0183】
上記の例では、ユーザの交換作業を想定して説明したが、この組立性の改善は、ユーザの交換作業のみに作用するものではなく、例えば、毛切断装置1の製造時における作業者の組立作業にも作用し得る。
【0184】
(2.6)制御回路
次に、制御回路6の構成について、
図9~
図11を参照して説明する。
【0185】
制御回路6は、
図9に示すように、光源21、電池23、ファン24及び操作部26等に電気的に接続されている。また制御回路6は、毛切断部材3が装置本体2に取り付けられた状態において、複数の接続線(101,102)を介して、受光部X1、第1センサ部S11、及び第2センサ部S12の各々と電気的に接続される。
【0186】
制御回路6は、入力部61と、モード切替部62と、出力調整部63と、駆動部64と、判定部65と、を有している。
【0187】
制御回路6は、例えば、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含んでいる。マイクロコントローラは、1以上のメモリに記録されているプログラムを1以上のプロセッサで実行することにより、制御回路6としての機能を実現する。プログラムは、予めメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような非一時的記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、1以上のプロセッサを、制御回路6として機能させるためのプログラムである。
【0188】
入力部61には、ユーザの操作に応じた電気信号が、操作部26から入力される。例えば、操作部26が、主電源のオン/オフの切り替え、又は、動作モードの切り替え等の操作を受け付けた場合に、その操作に応じた電気信号が入力部61に入力される。
【0189】
モード切替部62は、光源21の動作モードの切り替えを行う。本実施形態では、光源21の動作モードとしては、後述する第1モード及び第2モードの2種類のモードを有している。モード切替部62は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、これら第1モードと第2モードとの切り替えを行う。
【0190】
駆動部64は、光源21に電力を供給することで光源21を駆動する。つまり、駆動部64は、半導体レーザからなる光源21に駆動電流I1を供給することで、光源21を発光(点灯)させる。ここで、駆動部64は、光源21を駆動する際には、
図9に示すように、発光期間T1と消灯期間T2とを交互に繰り返す矩形波状の駆動電流I1を光源21に供給することで、光源21を発光させる。つまり、駆動部64は、パルス電流からなる駆動電流I1を光源21に供給し、これを受けて、光源21は間欠的に光を発生(点滅)する。
【0191】
すなわち、駆動電流I1の発光期間T1に光源21は発光し、駆動電流I1の消灯期間T2に光源21は消灯するので、光源21は駆動電流I1の周波数に合わせて間欠的に光を発生(点滅)する。要するに、光源21は、発光期間T1及び消灯期間T2を繰り返すことにより間欠的に光を発生する。本実施形態では一例として、駆動電流I1のデューティ(1周期に占める発光期間T1の割合)は50%であると仮定する。つまり、発光期間T1の時間長さと消灯期間T2の時間長さとは等しい。
【0192】
ところで、本実施形態では、光源21の動作モードとしては、第1モード及び第2モードの2種類のモードを有している。
【0193】
第1モードは、皮膚92への作用を優先するモードであって、発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下となるモードである。つまり、光源21の動作モードが第1モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さは、1万分の1秒以下である。言い換えれば、第1モードにおいては、駆動部64は、周波数が5kHz以上の駆動電流I1にて光源21を駆動する。これにより、光源21が連続的に光を発生する最大時間は、10000分の1秒(1/10000s)以下となる。本実施形態では一例として、光源21の動作モードが第1モードである場合における、光源21の発光期間T1の時間長さは15000分の1秒である。
【0194】
第2モードは、毛91の切断を優先するモードであって、発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上となるモードである。つまり、光源21の動作モードが第2モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さは、百分の1秒以上である。言い換えれば、第2モードにおいては、駆動部64は、周波数が50Hz以下の駆動電流I1にて光源21を駆動する。これにより、光源21が連続的に光を発生する最小時間は、100分の1秒(1/100s)以上となる。本実施形態では一例として、光源21の動作モードが第2モードである場合における、光源21の発光期間T1の時間長さは80分の1秒である。
【0195】
ここで、制御回路6は、これら第1モードと第2モードとの切り替えを行うモード切替部62を有している。すなわち、本実施形態では、光源21の動作モードは、発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下である第1モードと、発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上である第2モードと、の切り替えが可能である。
【0196】
出力調整部63は、駆動部64を制御することで光源21の出力を調整する。出力調整部63での調整対象となる光源21の出力は、光源21が発生する光強度(明るさ)及び光の波長等を含む。出力調整部63は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、光源21の出力の調整を行う。
【0197】
特に、本実施形態では、上述したように、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力にて調整されている。そのため、出力調整部63は、光源21の出力の大きさ(パワー密度)を調整することによって、光導波路4を通る光のパワー密度を調整する。具体的には、出力調整部63は、駆動部64から光源21に供給される駆動電流I1の大きさを変化させることで、光源21から光導波路4に出力される光のパワー密度を調整する。
【0198】
さらに、上述したように、光導波路4を通る光のパワー密度が可変である場合、パワー密度の変化は、出力調整部63にて実現される。すなわち、出力調整部63は、光源21の出力の大きさ(パワー密度)を変化させることで、光導波路4を通る光のパワー密度を変化させる。出力調整部63は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、これら光源21の出力の大きさ(パワー密度)を変化させる。
【0199】
なお、出力調整部63は、後述する制限部11からの制御を受けて、光源21の出力を調整することもある。
【0200】
次に、制御回路6における皮膚92の接触状態に関する判定処理について説明する。
【0201】
制御回路6の判定部65は、接触面(モジュール側接触面501及びカバー側接触面301)に対する皮膚92の接触状態を判定する(判定処理の実行)。具体的には、判定部65は、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったこと、及び、皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わったことを判定(推定)する。
【0202】
本実施形態では、判定部65は、センサ部S1(第1センサ部S11、第2センサ部S12)及び受光部X1から受信する電気信号に基づいて、接触状態を判定する。そして、判定部65は、判定結果に基づいて、駆動部64(又は出力調整部63)を制御して、光源21の駆動を開始して光出力を実行させたり、光源21の駆動を停止(光出力の低下でもよい)したりする。
【0203】
判定部65は、例えば、操作部26を通じて主電源をオフからオンに切り替える操作を受け付けると、判定処理の実行を開始する。言い換えると、本実施形態では一例として、操作部26を通じて主電源がオンになると、制御回路6は、光源21の駆動を開始可能なスタンバイ状態となる。したがって、駆動部64は、主電源がオンに切り替わっても直ちに光源21の駆動を開始しない。
【0204】
本実施形態では一例として、判定部65は、センサ部S1及び受光部X1の両方の電気信号(検知信号)に基づいて接触状態を判定する。しかし、本開示において、センサ部S1は必須の構成要素ではなく、センサ部S1が省略される場合、判定部65は、受光部X1の電気信号のみに基づいて接触状態を判定してもよい。
【0205】
判定部65は、制限部11、及び実行部12を含む(
図9参照)。判定部65は、検知信号に基づき、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったと判定すると、実行部12は、光放出モジュールM1からの光出力を実行する。つまり、実行部12は、駆動部64に光源21の駆動を開始させる。
【0206】
また判定部65は、検知信号に基づき、皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わったと判定すると、制限部11は、光放出モジュールM1からの光出力を制限する。つまり、制限部11は、駆動部64に光源21の駆動を停止させる(光出力を低下させてもよい)。
【0207】
[光出力の開始]
判定部65は、センサ部S1から受信する検知信号に基づき、第1条件を満たしているか否かを判定する。例えば人体のようにグランド電位の物体が、センサ部S1に接触(タッチ)することで、電極S2と人体とによって擬似的なコンデンサが形成される。その結果、人の皮膚92の接触が、各センサ部S1(コンデンサ)の静電容量の変化として現れる。判定部65は、受信する検知信号を通じて、例えば静電容量の変化に対応する電圧の変化を監視する。言い換えると、判定部65は、センサ部S1に対する皮膚92の接触状態を検知する(検知ステップ)。判定部65は、第1センサ部S11の電圧レベルと第2センサ部S12の電圧レベルの両方が第1閾値を超えた場合に、第1条件が満たされたと判定する。判定部65は、第1センサ部S11の電圧レベルと第2センサ部S12の電圧レベルのうちのいずれか一方だけが、第1閾値を超えた場合に、第1条件が満たされたと判定してもよい。
【0208】
また判定部65は、受光部X1から受信する検知信号に基づき、第2条件を満たしているか否かを判定する。上述の通り、皮膚92が、カバー側接触面301及びモジュール側接触面501に近づいて接触すると、開口部31の一部又は略全部が皮膚92で閉塞される。そのため、外光が収容空間SP1内に進入しにくくなり、皮膚92が非接触状態にある場合に比べて、受光部X1が受光する光強度は低下することになる。フォトダイオードには光強度に比例した電流が流れるため、判定部65は、受光部X1から、フォトダイオードに流れる電流が電圧に変換された検知信号を受信する。つまり、判定部65は、受信する検知信号を通じて、例えば電圧の変化を監視する。言い換えると、判定部65は、光強度に関する情報を受光部X1から取得する(取得ステップ)。電流電圧変換は、制御回路6で行われてもよい。
【0209】
判定部65は、受光部X1が受光する光強度が第1所定値未満となった場合に、つまり受光部X1から受信する検知信号の信号レベル(例えば電圧)が基準値Rf1(
図10B参照)未満となった場合に、第2条件が満たされたと判定する。
図10Bでは、電圧値V1は、開口部31がほぼ隙間なく皮膚92によって塞がれた状態(接触時)における電圧値である。また電圧値V2は、開口部31がほぼ開放された状態(非接触時)における電圧値である。基準値Rf1は、例えば、電圧値V1と電圧値V2との間に設定されている。
図10Bの例では、時刻t3に接触状態から非接触状態となった場合の、受光部X1から受信する検知信号の信号レベル(電圧)の変化を模式的に示している。
【0210】
判定部65は、第1条件及び第2条件の両方が満たされた場合に、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったと判定する。センサ部S1が省略される場合、判定部65は、第2条件のみが満たされた場合に、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったと判定してもよい。
【0211】
判定部65の判定結果が接触状態への切り替わりを示す場合、実行部12は、駆動部64に光源21の駆動を開始させる。言い換えると、実行部12は、センサ部S1に対する皮膚92の近接又は接触(ここでは接触)が検知された場合(第1条件を満たす場合)に、光放出モジュールM1からの光出力を実行する。実行部12は、駆動部64に対して、光源21への電力供給の実行を開始させる。したがって、例えば、ユーザがセンサ部S1に対して皮膚92を接触させることで光出力が自動的に実行されやすくなり、使い勝手が改善され得る。
【0212】
特に本実施形態では、上述の通り、第1条件だけでなく、実行部12は、受光部X1が受光する光強度が所定値(第1所定値)未満となった場合(第2条件を満たす場合)に、光放出モジュールM1からの光出力を実行する。したがって、皮膚92の検知に関する信頼性を向上しつつ、使い勝手が更に改善され得る。
【0213】
[光出力の制限]
判定部65は、センサ部S1から受信する検知信号に基づき、第3条件を満たしているか否かを判定する。判定部65は、第1センサ部S11の電圧レベルと第2センサ部S12の電圧レベルの両方が第2閾値未満となった場合に、第3条件が満たされたと判定する。ここでは一例として、第2閾値は、第1閾値と等しい。判定部65は、第1センサ部S11の電圧レベルと第2センサ部S12の電圧レベルのうちのいずれか一方だけが、第2閾値未満となった場合に、第3条件が満たされたと判定してもよい。特に、例えば[光出力の開始]では、2つのセンサ部S1の電圧レベルの両方が第1閾値を超えた場合に第1条件が満たされたと判定し、[光出力の制限]では、これらの電圧レベルの一方だけでも第2閾値未満となった場合に第3条件が満たされたと判定してもよい。
【0214】
また判定部65は、受光部X1から受信する検知信号に基づき、第4条件を満たしているか否かを判定する。判定部65は、受光部X1が受光する光強度が第2所定値を超えた場合に、つまり受光部X1から受信する検知信号の信号レベル(例えば電圧)が基準値Rf1(
図10B参照)を超えた場合に、第4条件が満たされたと判定する。ここでは一例として、第2所定値は、第1所定値と等しく、つまり、基準値Rf1は、第2条件の判定、及び第4条件の判定において共通である。
【0215】
判定部65は、第3条件及び第4条件の両方が満たされた場合に、皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わったと判定する。センサ部S1が省略される場合、判定部65は、第4条件のみが満たされた場合に、皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わったと判定してもよい。
【0216】
判定部65の判定結果が非接触状態への切り替わりを示す場合、制限部11は、駆動部64に光源21の駆動を停止させる。言い換えると、制限部11は、センサ部S1に対する皮膚92の近接又は接触(ここでは接触)の解除が検知された場合(第3条件を満たす場合)に、光放出モジュールM1からの光出力を制限する。制限部11は、駆動部64に対して、光源21への電力供給を停止させる。したがって、光放出モジュールM1から、不必要に光出力が成される状況を低減でき、使い勝手が改善され得る。また電池23の節電の効果がある。
【0217】
特に本実施形態では、上述の通り、第3条件だけでなく、制限部11は、受光部X1が受光する光強度に応じて(ここでは第4条件を満たす場合)、光放出モジュールM1からの光出力を制限する。言い換えると本実施形態では、制限部11は、光強度に加えて、センサ部S1に対する皮膚92の近接又は接触(ここでは接触)に関する検知結果に応じて、光放出モジュールM1からの光出力を制限する。したがって、皮膚92の検知に関する信頼性が向上し、例えば、ユーザにとって不本意に光出力が制限されてしまう可能性を低減できる。
【0218】
なお、上述の通り、「光出力の制限」は、光源21の駆動の停止に限定されず、判定部65の判定結果が非接触状態への切り替わりを示す場合、制限部11は、例えば、出力調整部63に光源21の出力の大きさ(パワー密度)を下げさせてもよい。
【0219】
図10Aは、一例として、時刻t1で皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わり、時刻t2で皮膚92が非接触状態から再び接触状態に切り替わった場合における、光出力の変化(オン/オフ)を示すグラフである。つまり、
図10Aの例では、判定部65は、時刻t1に、第3条件、及び第4条件が満たされたと判定して、駆動中にあった光源21を停止させている。また
図10Aの例では、判定部65は、時刻t2に、第1条件、及び第2条件が満たされたと判定して、光源21の駆動を開始させている。
【0220】
ところで、光強度に関して、ヒステリシス(設定条件)を設定してもよい。例えば、ユーザが毛切断装置1の使用中において、毛切断部材3(ヘッド)を皮膚92に当てたままで向きを変えようとした場合に、開口部31と皮膚92との隙間が広がり、受光部X1が受光する光強度が一時的に増加する可能性がある。結果的に、ユーザが望まない光出力の制限が実行される可能性がある。そこで、光出力の制限に関する第2所定値は、光出力の開始に関する第1所定値よりも高く設定してもよい。なお、逆に第2所定値は、第1所定値よりも低く設定してもよく、この場合、節電効果が向上される。
【0221】
また判定部65は、光強度が第2所定値を超えた後、光強度が第2所定値を超えた状態が所定の期間(例えば数秒~数十秒等)継続した場合に、第4条件が満たされたと判定してもよい。つまり、判定部65は、光強度に関する「継続時間」という条件(設定条件)も追加して、第4条件の判定を行ってもよい。
【0222】
また判定部65は、一定期間における光強度の平均値が、第2所定値を超えた場合に、第4条件が満たされたと判定してもよい。つまり、判定部65は、光強度に関する「平均値」という条件(設定条件)も追加して、第4条件の判定を行ってもよい。
【0223】
つまり、制限部11は、光強度が一定値(第2所定値)を超えることに加えて、光強度に関する設定条件(例えば、上記のヒステリシス、継続時間、及び平均値等)に基づいて、光放出モジュールM1からの光出力を制限してもよい。これにより、ユーザがまだ毛切断装置1を継続的に使用する意思があるにも関わらず、光出力が停止してしまう可能性が低減される。したがって、ユーザにとって不本意に光出力が制限されてしまう可能性を低減できる。
【0224】
もちろん上述した設定条件は、「光出力の開始」の判定に関する第2条件にも適用されてもよい。例えば、判定部65は、光強度が第1所定値未満となった状態が所定の期間継続した場合に、第2条件が満たされたと判定してもよい。
【0225】
[動作例1]
次に、上述した制御回路6を備えた毛切断装置1の動作例1について、
図11を参照して説明する。
図11は、毛切断装置1の動作モード(第1モード及び第2モード)の切り替えに関する動作例を示すフローチャートである。
【0226】
毛切断装置1は、まず、光源21の動作モードが第1モードであるか否かの判定を行う(ST1)。このとき、動作モードが第1モードであれば(ST1:Yes)、毛切断装置1は、発光期間T1の時間長さを1万分の1秒以下に設定して、駆動部64にて光源21を駆動する(ST2)。一方、動作モードが第1モードでなければ(ST1:No)、毛切断装置1は、処理ST2をスキップして処理ST3に移行する。
【0227】
処理ST3では、毛切断装置1は、光源21の動作モードが第2モードであるか否かの判定を行う。このとき、動作モードが第2モードであれば(ST3:Yes)、毛切断装置1は、発光期間T1の時間長さを100分の1秒以上に設定して、駆動部64にて光源21を駆動する(ST4)。一方、動作モードが第2モードでなければ(ST3:No)、毛切断装置1は、処理ST4をスキップして処理を終了する。
【0228】
毛切断装置1は、上記処理ST1~ST4を繰り返し実行する。
図11に示すフローチャートは、毛切断装置1の動作の一例に過ぎず、例えば、処理の順序が適宜入れ替わってもよいし、適宜、処理が追加又は省略されてもよい。
【0229】
[動作例2]
次に、上述した制御回路6を備えた毛切断装置1の動作例2について、
図12を参照して説明する。
図12は、毛切断装置1の判定処理に関する動作例を示すフローチャートである。
【0230】
毛切断装置1は、まず、操作部26を通じて主電源をオンにする操作を受け付ける(ST11)。毛切断装置1は、スタンバイ状態となり、判定処理を実行して、センサ部S1及び受光部X1からの検知信号を監視する(ST12:皮膚92の接触状態を検知する検知ステップ、及び光強度に関する情報を取得する取得ステップ)。
【0231】
毛切断装置1は、皮膚92が接触状態となると(ST13:Yes)、つまり、検知信号に基づき、第1条件と第2条件の両方が満たされたと判定すると、光源21の駆動を開始する(ST14:光放出ステップ)。なお、毛切断装置1は、皮膚92が接触状態となるまで(ST13:No)、光源21の駆動を開始することなくスタンバイ状態を継続する。
【0232】
毛切断装置1は、光源21の駆動中において、皮膚92が非接触状態となると(ST15:Yes)、つまり、検知信号に基づき、第3条件と第4条件の両方が満たされたと判定すると、光源21の駆動を停止する(ST16)。なお、毛切断装置1は、皮膚92が非接触状態となるまで(ST15:No)、光源21の駆動を継続する。
【0233】
図12に示すフローチャートは、毛切断装置1の動作の一例に過ぎず、例えば、処理の順序が適宜入れ替わってもよいし、適宜、処理が追加又は省略されてもよい。
【0234】
(3)作用
次に、本実施形態に係る毛切断装置1にて期待し得る作用について説明する。
【0235】
まず、毛切断装置1の基本的な機能である毛91の切断については、「(2.4)使用例」の欄で説明したようなメカニズムにより実現される。
【0236】
本実施形態では、光放出部40の第1放出光Op1は、400nm以上700nm以下の波長を持つので、例えば、ケラチン及び水等の毛91に含まれる発色団に吸収されやすい。また少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。そのため、光放出部40から毛91に放出する第1放出光Op1においても、毛91を切断するのに十分なパワー密度(50kW/cm2以上)を持ち得る。
【0237】
次に毛切断装置1の副次的な機能である皮膚92への作用について説明する。本実施形態では、光放出部40の第2放出光Op2は、400nm以上700nm以下の波長を持つので、殺菌又は活性化等の皮膚92への作用も期待できるようになる。つまり、皮膚92に放出する第2放出光Op2が、例えば、400nm以上450nm以下の波長を持つ場合、皮膚92に存在するアクネ菌等に対する殺菌作用が期待できる。特に、
図8A及び
図8Bに例示したように、皮膚92における毛91の周辺に、ニキビ等の隆起部922が存在する場合には、隆起部922に第2放出光Op2が直接的に放出し、より効果的な殺菌作用等を期待できる。さらに、第2放出光Op2が、例えば、450nm以上700nm以下の波長を持つ場合、皮膚92の活性化作用が期待できる。つまり、第2放出光Op2が皮膚92に放出されることによって、皮膚92が活性化され、肌質の改善等のいわゆる「美肌効果」といった作用が期待できる。
【0238】
また本実施形態では、「(2.3.7)センサ部」の欄で説明したようにセンサ部S1が設けられているため、皮膚92の接触状態に関する検知結果を用いた制御が実現可能となる。例えば、「(2.6)制御回路」の欄で説明したように、センサ部S1からの検知信号に基づき、皮膚92の接触状態を判定(推定)して、光出力を開始したり、光出力を停止したりできる。したがって、使い勝手が改善された毛切断装置1を提供できる。
【0239】
またセンサ部S1は、光導波路4の周囲の領域に配置されるため、例えばユーザが毛91を切断する作業において、皮膚92の接触状態が検知されやすくなる。
【0240】
さらにセンサ部S1は、開口部31の周囲に配置されるため、本実施形態のように開口部31が設けられている構成においても、皮膚92の接触状態が検知されやすくなる。
【0241】
またセンサ部S1は、その長さ方向が光導波路4の光軸C1の方向に対して平行するように配置されているため、皮膚92の接触状態が更に検知されやすくなる。さらに光軸C1の方向に平行するように配置されているセンサ部S1の数が2つ(第1センサ部S11、及び第2センサ部S12)であるため、皮膚92の検知に関する信頼性がさらに向上する。
【0242】
特に、第1センサ部S11、及び第2センサ部S12は、光導波路4の幅方向W1における両側にそれぞれ配置されるため、使用時には皮膚92が第1センサ部S11、及び第2センサ部S12に対して同時に接触(又は近接)する可能性が高くなる。またセンサ部S1が1つの場合に比べて、皮膚92の接触状態に関して、更に多様なパターンの制御が可能となる。例えば、皮膚92が、第1センサ部S11、及び第2センサ部S12の両方に接触している状態から、いずれか一方のみから離れた状態になれば、光出力を弱めて、両方から離れた状態となれば光出力を停止する、という段階的な光出力制御を行いやすくなる。
【0243】
また本実施形態では、「(2.3.8)受光部及びフィルタ部」の欄で説明したように受光部X1が設けられているため、例えば接触面(301,501)の側からの光強度に関する検知結果を用いた制御が実現可能となる。例えば、「(2.6)制御回路」の欄で説明したように、受光部X1からの検知信号に基づき、皮膚92の接触状態を判定(推定)して、光出力を開始したり、光出力を停止したりできる。したがって、使い勝手が改善された毛切断装置1を提供できる。
【0244】
また受光部X1は、カバー30における開口部31よりも内側に配置される。そのため、接触面(301,501)に対する皮膚92の接触状態(又は近接状態)に応じて、受光部X1で受光される接触面(301,501)の側からの光強度をより顕著に変化させることができる。
【0245】
特に、開口面310から受光部X1までの第1距離L1は、開口面310から光導波路4までの第2距離L2より大きい。そのため、例えば開口部31から挿入された毛91が受光部X1に接触してしまう可能性を低減できる。したがって、毛91の切断において、受光部X1が障害物となりにくい。
【0246】
(4)変形例
本実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。本実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0247】
また上記実施形態に係る毛切断装置1(特に制御回路6)と同様の機能は、毛切断方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0248】
本開示における毛切断装置1(特に制御回路6)は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御回路6としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0249】
また、毛切断装置1における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されていることは必須の構成ではない。例えば、毛切断装置1の構成要素は、複数のハウジングに分散して設けられていてもよい。反対に、毛切断装置1における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されてもよい。さらに、毛切断装置1の少なくとも一部の機能、例えば、毛切断装置1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0250】
(4.1)第1変形例
本実施形態の第1変形例に係る毛切断装置1Aについて、
図13を参照して説明する。ただし、以下の第1変形例について、毛切断装置1と実質的に共通する構成要素については同じ参照符号を付して、その説明を適宜省略する場合がある。
【0251】
図13に示すように、毛切断装置1Aは、全体としての外観が電気シェーバに近い形状である。毛切断装置1Aの装置本体2は、細長い筒状であり、装置本体2の先端に毛切断部材3(ヘッド)が装着されている。特に毛切断装置1Aは、毛切断部材3(ヘッド)の長手方向、及び光導波路4の光軸C1が、装置本体2の長手方向と直交する点で、毛切断装置1と相違する。
【0252】
毛切断装置1Aは、装置本体2のケース20内の光学系22から出射される光を、フェルール71内の受光面40Aまで導くように反射する1又は複数のミラーを、毛切断部材3又は装置本体2の内部に備えることが好ましい。
【0253】
このように構成された毛切断装置1Aにおいても、2つのセンサ部S1、及び受光部X1を備えている。したがって、使い勝手が改善された毛切断装置1Aを提供できる。
【0254】
なお、本開示における「毛切断装置」の外観形状は、毛切断装置1、及び毛切断装置1Aの形状に限定されず、他にも毛切断部材3(ヘッド)の長手方向の長さが、装置本体2の幅よりも大きいT字形状の外観でもよい。また「毛切断装置」の外観形状は、Y字形状、L字形状、又はカード型形状の外観でもよい。
【0255】
(4.2)第2変形例
本実施形態の第2変形例に係る毛切断装置1Bについて、
図14を参照して説明する。ただし、以下の第2変形例について、毛切断装置1と実質的に共通する構成要素については同じ参照符号を付して、その説明を適宜省略する場合がある。
【0256】
毛切断装置1Bは、
図14に示すようにセンサ部S1の数が4つである点で、毛切断装置1と相違する。具体的には、毛切断装置1Bは、毛切断装置1の第1センサ部S11、及び第2センサ部S12に加えて、別の2つのセンサ部S1を更に備えている。この別の2つのセンサ部S1も、開口部31の周囲に配置される。特に、この別の2つのセンサ部S1は、光導波路4の、光軸C1の方向における両側にそれぞれ配置される。
【0257】
以下、開口部31よりもX軸の正の側のセンサ部S1を「第3センサ部S13」と呼び、開口部31よりもX軸の負の側のセンサ部S1を「第4センサ部S14」と呼ぶことがある。
【0258】
第3センサ部S13及び第4センサ部S14は、第1センサ部S11及び第2センサ部S12と同様に、例えば、静電容量式のタッチセンサ(タッチスイッチ)を構成する。
【0259】
第3センサ部S13及び第4センサ部S14は、感度を高めることで物体の近接を検出する静電容量式の近接センサでもよく、この場合、皮膚92の近接状態を検知するための部位となり得る。第3センサ部S13及び第4センサ部S14は、静電容量式のセンサに限定されず、光学式のセンサ、誘導式のセンサ、又は磁気式のセンサ等でもよい。特に、第3センサ部S13及び第4センサ部S14は、第1センサ部S11及び第2センサ部S12とは異なる検知方式のセンサを構成してもよい。
【0260】
第3センサ部S13及び第4センサ部S14の各々は、接続線を介して、制御回路6に電気的に接続される。
【0261】
第3センサ部S13及び第4センサ部S14は、互いに同形で同寸法の電極S2を有している。また第3センサ部S13及び第4センサ部S14は、互いに同形で同寸法の保護カバーS3を更に有している。
【0262】
ここでは、開口部31の周縁を形成するX軸の方向に長い矩形の四辺に対して、第1センサ部S11及び第2センサ部S12は、一対の長辺にそれぞれ沿って配置され、第3センサ部S13及び第4センサ部S14は、一対の短辺にそれぞれ沿って配置される。
【0263】
Z軸の方向における第3センサ部S13及び第4センサ部S14の各々の寸法は、例えば、開口部31の幅寸法(Z軸の方向の寸法)と略等しい。X軸の方向における第3センサ部S13及び第4センサ部S14の各々の寸法は、例えば、開口部31の幅寸法(Z軸の方向の寸法)より小さい。すなわち、第3センサ部S13及び第4センサ部S14の各々の検知領域は、一例として、第1センサ部S11、及び第2センサ部S12の各々の検知領域よりも十分に小さい。
【0264】
本変形例では一例として、第1センサ部S11及び第2センサ部S12を「メインセンサ部」として利用し、第3センサ部S13及び第4センサ部S14を「サブセンサ部」として利用する。
【0265】
毛切断装置1Bでは、判定部65は、4つのセンサ部S1から受信する検知信号に基づき、第1条件を満たしているか否かを判定する。つまり、判定部65は、4つのセンサ部S1に対する皮膚92の接触状態を検知する(検知ステップ)。判定部65は、メインセンサ部(S11,S12)の電圧レベルの両方が閾値(第1閾値)を超えることを必須として、更にサブセンサ部(S13,S14)の電圧レベルのうち少なくとも一方が閾値を超えた場合に、第1条件が満たされたと判定する。つまり、毛切断装置1Bは、皮膚92が2つのメインセンサ部と1つ(又は2つ)のサブセンサ部と接触した場合に、光出力を開始する。
【0266】
ただし、第1条件のための判定パターンは、上記のものに限定されない。判定部65は、例えば、4つのセンサ部S1の電圧レベルのうち、いずれか1つでも閾値を超えた場合に、第1条件が満たされたと判定してもよい。或いは、判定部65は、例えば、4つのセンサ部S1の電圧レベルの全ての電圧レベルが閾値を超えた場合に、第1条件が満たされたと判定してもよい。
【0267】
サブセンサ部の検知領域は、メインセンサ部の検知領域よりも小さい。そのため、静電容量の変化も小さい場合には、サブセンサ部用の閾値は、メインセンサ部用の閾値(第1閾値)より小さくてもよい。
【0268】
また毛切断装置1Bでは、判定部65は、4つのセンサ部S1から受信する検知信号に基づき、第3条件を満たしているか否かを判定する。判定部65は、4つのセンサ部S1の電圧レベルのうちいずれか2つ以上が閾値未満になった場合に、第3条件が満たされたと判定する。つまり、毛切断装置1Bは、皮膚92が2つ以上センサ部S1から離れた場合に、光出力を制限する。
【0269】
ただし、第3条件のための判定パターンは、上記のものに限定されない。判定部65は、例えば、4つのセンサ部S1の電圧レベルのうち、いずれか1つでも閾値未満になった場合に、第3条件が満たされたと判定してもよい。或いは、判定部65は、例えば、接触していたセンサ部S1の全ての電圧レベルが閾値未満になった場合に、第3条件が満たされたと判定してもよい。
【0270】
更に光出力に関して、種々の制御パターンが設定されてもよい。毛切断装置1Bは、例えば、2つのメインセンサ部に接触した場合には第1光出力制御を行い、4つのセンサ部S1のうちの3つに接触した場合には第2光出力制御を行い、4つのセンサ部S1の全てに接触した場合には第3光出力制御を行ってもよい。光源21の出力の大きさ(パワー密度)は、第1光出力制御、第2光出力制御、及び第3光出力制御の順に段階的に増加していくように設定されてもよい。
【0271】
上述した毛切断装置1Bの構成においても、4つのセンサ部S1からの検知信号に基づき、皮膚92の接触状態を判定(推定)して、光出力を開始したり、光出力を停止したりできる。したがって、使い勝手が改善された毛切断装置1Bを提供できる。特に、2つのセンサ部S1が、光導波路4の、光軸C1の方向における両側にそれぞれ配置されていることで、皮膚92の接触状態に関して、更に多様なパターンの検知が可能となる。
【0272】
毛切断装置1Bの別の例として、センサ部S1は、開口部31の周囲を囲むように矩形の枠状に形成された1つの電極S2を有してもよい。
【0273】
また毛切断装置1Bの更に別の例として、各々が開口部31の周囲を囲むようにL字状に形成された電極S2を有する一対のセンサ部S1が設けられてもよい。一対のセンサ部S1の一方の電極S2は、開口部31の周縁を形成する四辺のうちの一方の長辺と一方の短辺とに沿ってL字状に形成され、他方の電極S2は、四辺のうちの他方の長辺と他方の短辺とに沿ってL字状に形成されてもよい。
【0274】
(4.3)第3変形例
本実施形態の第3変形例に係る毛切断装置1Cについて、
図15Aを参照して説明する。ただし、以下の第3変形例について、毛切断装置1と実質的に共通する構成要素については同じ参照符号を付して、その説明を適宜省略する場合がある。
【0275】
図15Aは、毛切断装置1Cの毛切断部材3の、X軸の方向における略中央でY-Z平面に沿って切った断面図である。毛切断装置1Cは、
図15Aに示すように、2つの受光部X1を備える点で、毛切断装置1と相違する。2つの受光部X1(第1受光部X11、第2受光部X12と呼ぶ)は、カバー30の内部(収容空間SP1)の天面302上に配置されている。天面302は、Y軸の負の側を向く面であり、皮膚92と対向し得る面である。
【0276】
第1受光部X11は、天面302上におけるZ軸の正の側の端の領域に配置される。第2受光部X12は、天面302上におけるZ軸の負の側の端の領域に配置される。したがって、各受光部X1の受光面X10は、Y軸の負の側を向いている。なお、各受光部X1の受光面X10上には、フィルタ部B1が積層される。
【0277】
毛切断装置1Cでは、Y軸の方向において、外光を受光する各受光部X1にとって、光放出モジュールM1が障害となりにくい配置となっている。つまり、各受光部X1が、接触面(301,501)の側からの光をより直接的に受光しやすくなる。したがって、例えば接触面(301,501)の側からの光強度に関する検知の信頼性が更に向上される。
【0278】
2つの受光部X1の配置に関する別の例として、
図15Bに示すように、2つの受光部X1は、カバー30の内部(収容空間SP1)の、互いに対向する内側面303に配置されてもよい。この場合、第1受光部X11の受光面X10は、Z軸の負の側を向き、第2受光部X12の受光面X10は、Z軸の正の側を向いている。
【0279】
更に2つの受光部X1の配置に関する更に別の例として、
図15Cに示すように、2つの受光部X1は、カバー30の内部(収容空間SP1)の二隅(天面302と各内側面303との隅)に配置されてもよい。この場合、第1受光部X11の受光面X10は、Y軸の方向に対して約45度Z軸の負の側に傾斜した方向を向き、第2受光部X12の受光面X10は、Y軸の方向に対して約45度Z軸の正の側に傾斜した方向を向いている。
【0280】
(4.4)その他の変形例
毛切断装置1は、操作部26を通じて主電源のオン/オフの切り替えを受け付けていることを説明した。しかし、毛切断装置1は、更に光源21の駆動の開始、すなわち光源21からの光出力の開始も、操作部26を通じて受け付け可能に構成されてもよい。この場合、制御回路6における、センサ部S1及び受光部X1からの検知信号に基づいて光源21の駆動を自動的に開始する機能は省略されてもよい。ただし、制御回路6は、少なくとも、センサ部S1及び受光部X1からの検知信号に基づいて、自動的に光出力に制限を加える機能を有していることが好ましい。自動的に光出力に制限を加える機能により、電池23に関する節電効果、及び安全性の向上が期待できる。
【0281】
また毛切断装置1は、センサ部S1からの検知信号に基づいて、主電源のオン/オフの切り替えも自動的に行うように構成されてもよい。この場合、例えばセンサ部S1は、接点を開閉するスイッチを含んでもよい。この場合、毛切断装置1は、皮膚92から受ける押圧によってセンサ部S1が接点を閉じることで、主電源がオンに切り替わり、更に光源21の駆動も自動的に開始する。この場合、ユーザは操作部26を操作する手間が省けて、使い勝手が更に改善される。
【0282】
センサ部S1は、通電方式のセンサを構成してもよい。例えば、一対のセンサ部S1の電極(第1センサ部S11の電極S2と、第2センサ部S12の電極S2と)が、陽極と陰極とをそれぞれ構成してもよい。制御回路6は、これらの電極間に電圧を印加し、皮膚92がこれらの電極に接触した場合に人体を介して電極間に流れる電流を検知することで、皮膚92の接触状態を判定してもよい。
【0283】
またセンサ部S1は、皮膚92の接触状態ではなく、皮膚92の近接状態を検知するための近接センサでもよい。この場合、センサ部S1は、皮膚92までの距離を検知する距離センサを構成してもよい。
【0284】
またセンサ部S1は、皮膚92からの押圧(圧力)を受けることで抵抗値が変化する感圧センサを構成してもよい。
【0285】
センサ部S1が2つ以上設けられている場合、2つ以上のセンサ部S1は、互いに検知方式が異なるセンサを構成してもよい。
【0286】
例えば、光源21等を収容する装置本体2(ケース20)は、グリップに相当することを想定したが、ケース20とは別体にグリップ部が設けられていて、ケース20とグリップ部とが連結されてもよい。そして、ケース20内の収容物は、ケース20とグリップ部とに分散的に収容されてもよい。
【0287】
また、操作部26は、メカニカルスイッチに限らず、タッチスイッチ、光学式若しくは静電容量式の非接触スイッチ、又はジェスチャセンサ等であってもよい。さらに、操作部26は、例えば、スマートフォン等の外部端末からの操作信号を受け付ける通信部、又はユーザの音声操作を受け付ける音声入力部等であってもよい。
【0288】
また、毛切断装置1は、物理的な「刃」にて毛91を切断するシェーバ(刃が駆動される電気シェーバを含む)等と組み合わされてもよい。この場合、毛切断装置1は、光放出部40に加えて、物理的な「刃」を有することで、光放出部40から放出される光と物理的な「刃」との両方で、毛91を切断できる。
【0289】
また、光導波路4は、コア部41及びクラッド部42が合成石英製である光ファイバに限らず、例えば、石英(SiO2)製又はプラスチック製の光ファイバであってもよい。プラスチック製の光ファイバの例としては、クラッド部42がフッ素系ポリマ等からなり、コア部41が完全フッ素化ポリマ、ポリメタクリル酸メチル系又はポリカーボネート等からなる光ファイバがある。さらに、光導波路4は、スラブ導波路、矩形光導波路又はフォトニック結晶ファイバ等であってもよい。
【0290】
また、光導波路4は、最小限の構成としてコア部41を有していればよく、クラッド部42は適宜省略されていてもよい。
【0291】
また、保持部材5における接着部材52の屈折率が光放出部40(コア部41)の屈折率よりも小さいことは、毛切断装置1に必須の構成ではない。つまり、接着部材52の屈折率は、コア部41の屈折率以上であってもよい。
【0292】
またホルダ部H1内における固定部材F1の屈折率がコア部41の屈折率よりも小さいことは、毛切断部材3、及び毛切断装置1に必須の構成ではない。つまり、固定部材F1の屈折率は、コア部41の屈折率以上であってもよい。同様に、フェルール71内における接着部材G1の屈折率がコア部41の屈折率よりも小さいことは、毛切断部材3、及び毛切断装置1に必須の構成ではない。つまり、接着部材G1の屈折率は、コア部41の屈折率以上であってもよい。
【0293】
また光源21は、単一波長の光に限らず、例えば、複数の波長の光を発生してもよい。この場合、光源21は、複数の波長の光を、同時に発生してもよいし、順次切り替えながら発生してもよい。この構成では、光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)は、複数の波長に対応する複数の発色団を標的とし得るので、複数種類の分子の結合を破壊することができ、毛91の切断効率の向上を図ることができる。
【0294】
また毛切断部材3は、光導波路4を複数備えていてもよい。この場合、毛切断部材3は、複数の光導波路4の各々の光放出部40にて毛91に光を放出して毛91を切断することが可能になる。ここで、複数の光導波路4は、同一の波長の光を通してもよいし、互いに異なる複数の波長の光を通してもよい。この場合、フェルール71内においては、複数の光導波路4が中心寄りに集まって配置されてもよい。あるいは光導波路4と一対一で対応するようにフェルール71が複数設けられてもよい。
【0295】
また光源21の動作モードについて、第1モードと第2モードとの切替えが手動で行われているが、この例に限らず、第1モードと第2モードとの切替えが自動的に行われてもよい。例えば、判定部65が、皮膚92の接触状態に応じて、第1モードと第2モードとの切替えを自動的に行ってもよい。
【0296】
電池23は、二次電池に限らず、一次電池であってもよい。さらに、毛切断装置1は、電池駆動式に限らず、例えば、系統電源(商用電源)等の外部電源からの電力供給を受けて動作してもよい。この場合、毛切断装置1としての電池23は省略可能である。
【0297】
また、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力以外で調整されていてもよい。例えば、光学系22又は光導波路4に含まれる光学フィルタにて、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。あるいは、光導波路4の曲率半径を変えることによって、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。光導波路4の一部からコア部41を露出させ、コア部41から光の一部を漏洩させることで、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。
【0298】
また、光導波路4における受光面40Aと反対側の終端面40Bにミラーが配置され、光導波路4の先端部まで到達する光がミラーにて光導波路4内に反射されるように構成されていてもよい。
【0299】
また、皮膚92への作用という機能は、あくまで毛切断装置1の副次的な機能であって、適宜省略可能である。つまり、毛切断装置1は、基本的な機能である毛91の切断の機能を有していればよい。
【0300】
また、二値間の比較において、「以上」としているところは、二値が等しい場合、及び二値の一方が他方を超えている場合との両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、二値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、二値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」においても「以下」と同義であってもよい。
【0301】
毛切断装置1は、毛切断部材3のカバー30に取外し可能に取り付けられたアタッチメントを備えてもよい。アタッチメントによって、皮膚92の表面921からの光放出部40の高さを増加させてもよい。
【0302】
(5)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)は、光放出モジュール(M1)と、接触面(301,501)と、受光部(X1)と、を備える。光放出モジュール(M1)は、コア部(41)を含む光導波路(4)を有し、皮膚(92)から突出する毛(91)に光を放出することで毛(91)の切断を行う。接触面(301,501)は、光導波路(4)の周囲にあり、皮膚(92)と接触する。受光部(X1)は、接触面(301,501)の側からの光を受光する。第1の態様によれば、例えば接触面(301,501)の側からの光強度に関する検知結果を用いた制御が実現可能となり、使い勝手が改善された毛切断装置(1,1A~1C)を提供できる。
【0303】
第2の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)は、第1の態様において、カバー(30)を更に備える。カバー(30)は、光放出モジュール(M1)を覆うように構成され、かつ、コア部(41)の少なくとも一部を外部に露出させる開口部(31)を有する。受光部(X1)は、カバー(30)における開口部(31)よりも内側に配置される。第2の態様によれば、接触面(301,501)に対する皮膚(92)の接触状態(又は近接状態)に応じて、受光部(X1)で受光される接触面(301,501)の側からの光強度をより顕著に変化させることができる。
【0304】
第3の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)に関して、第2の態様において、開口部(31)の開口面(310)の垂直方向において、第1距離(L1)は、第2距離(L2)よりも大きい。第1距離(L1)は、開口面(310)から受光部(X1)までの距離である。第2距離(L2)は、開口面(310)から光導波路(4)までの距離である。第3の態様によれば、例えば開口部(31)から挿入された毛(91)が受光部(X1)に接触してしまう可能性を低減できる。
【0305】
第4の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、フィルタ部(B1)を更に備える。フィルタ部(B1)は、光放出モジュール(M1)から放出される特定の波長領域の光を反射、又は吸収し、かつ特定の波長領域以外の光を透過する。第4の態様によれば、受光部(X1)が、光放出モジュール(M1)から放出される光を受光してしまう位置に配置されても、接触面(301,501)の側からの光に関する受光精度が向上される。つまり、受光部(X1)の配置に関する設計自由度が向上される。
【0306】
第5の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)に関して、第4の態様において、フィルタ部(B1)は、受光部(X1)の受光面(X10)を覆うように配置される。第5の態様によれば、接触面(301,501)の側からの光に関する受光精度が更に向上される。
【0307】
第6の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、制限部(11)を更に備える。制限部(11)は、受光部(X1)が受光する光強度に応じて、光放出モジュール(M1)からの光出力を制限する。第6の態様によれば、光放出モジュール(M1)から、不必要に光出力が成される状況を低減でき、使い勝手が更に改善され得る。
【0308】
第7の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)に関して、第6の態様において、制限部(11)は、光強度が一定値を超えることに加えて、光強度に関する設定条件に基づいて、光放出モジュール(M1)からの光出力を制限する。第7の態様によれば、ユーザにとって不本意に光出力が制限されてしまう可能性を低減できる。
【0309】
第8の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)は、第6又は第7の態様において、皮膚(92)の近接状態又は接触状態を検知するためのセンサ部(S1)を更に備える。制限部(11)は、光強度に加えて、センサ部(S1)に対する皮膚(92)の近接又は接触に関する検知結果に応じて、光放出モジュール(M1)からの光出力を制限する。第8の態様によれば、ユーザにとって不本意に光出力が制限されてしまう可能性を低減できる。
【0310】
第9の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)は、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、受光部(X1)が受光する光強度が所定値未満となった場合に、光放出モジュール(M1)からの光出力を実行する実行部(12)を更に備える。第9の態様によれば、例えばユーザが皮膚(92)を接触面(301,501)に近接又は接触させることで光出力が自動的に実行されやすくなり、使い勝手が更に改善され得る。
【0311】
第10の態様に係る毛切断方法は、光放出ステップと、取得ステップと、を含む。光放出ステップでは、コア部(41)を含む光導波路(4)を有する光放出モジュール(M1)から、皮膚(92)から突出する毛(91)に光を放出させることで、毛(91)の切断を行う。取得ステップでは、光導波路(4)の周囲にあり皮膚(92)と接触する接触面(301,501)の側からの光強度に関する情報を取得する。第10の態様によれば、例えば接触面(301,501)の側からの光強度に関する検知結果を用いた制御が実現可能となり、使い勝手が改善された毛切断方法を提供できる。
【0312】
第2~9の態様に係る構成については、毛切断装置(1,1A~1C)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【産業上の利用可能性】
【0313】
毛切断装置は、家庭用、又は美容、医療若しくは介護等の様々な分野において、人又は人以外の動物の様々な毛の切断に適用することができる。
【符号の説明】
【0314】
1,1A~1C 毛切断装置
11 制限部
12 実行部
30 カバー
301 カバー側接触面(接触面)
31 開口部
310 開口面
4 光導波路
41 コア部
501 モジュール側接触面(接触面)
91 毛
92 皮膚
B1 フィルタ部
L1 第1距離
L2 第2距離
M1 光放出モジュール
S1 センサ部
X1 受光部
X10 受光面