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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/52 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
H01H13/52 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020116691
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014389
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 雄弥
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-004472(JP,A)
【文献】特開2008-234889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、
前記ボディに保持された固定接点部と、
ダイアフラム状に形成され、可動接点部と、前記可動接点部の周囲に設けられた屈折部位と、を有し、前記固定接点部に対向する位置に配置され、押されることにより前記屈折部位が屈折して前記可動接点部が前記固定接点部に接触する可動部材と、
前記屈折部位が屈折する前後に亘って前記屈折部位に接触する状態で前記可動部材上に位置するフィルムと、を備え、
前記フィルムは、前記可動部材の一部にのみ配置され
前記フィルムの外径は、前記可動部材の外径よりも小さい、
プッシュスイッチ。
【請求項2】
前記フィルムは、前記可動部材上に位置した状態で、前記可動部材の少なくとも中央部を露出させる、
請求項1記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記フィルムは、前記屈折部位と共に屈折する、
請求項1又は2に記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
前記フィルムは、前記可動部材に接着部材により接着されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記可動部材は、前記可動接点部を有する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、
前記フィルムは、前記第2面に接触している、
請求項1~4のいずれか1項に記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
前記可動部材に対向する位置に配置され、外部からの力を受けて前記可動部材を押す押し子を更に備え、
前記フィルムの弾性率は、前記押し子の弾性率よりも大きい、
請求項1~5のいずれか1項に記載のプッシュスイッチ。
【請求項7】
ボディと、
前記ボディに保持された固定接点部と、
ダイアフラム状に形成され、可動接点部と、前記可動接点部の周囲に設けられた屈折部位と、を有し、前記固定接点部に対向する位置に配置され、押されることにより前記屈折部位が屈折して前記可動接点部が前記固定接点部に接触する可動部材と、
前記屈折部位が屈折する前後に亘って前記屈折部位に接触する状態で前記可動部材上に位置するフィルムと、
前記可動部材に対向する位置に配置され、外部からの力を受けて前記可動部材を押す押し子と、を備え、
前記フィルムの弾性率は、前記押し子の弾性率よりも大きい、
プッシュスイッチ。
【請求項8】
前記押し子の周囲に設けられ、前記押し子を支持し、前記押し子が前記可動部材を押す動作に伴い変形する支持部を更に備え、
前記支持部は、その外周部が前記ボディに保持されている、
請求項6又は7に記載のプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にプッシュスイッチに関する。より詳細には、本開示は、可動部材の変形によりオン又はオフするプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、押釦スイッチが開示されている。この押釦スイッチは、ラバーステムと、スイッチ部と、を備えている。スイッチ部は、固定接点と、固定接点の上方を覆うように設けられたドーム状の可動接点と、を備えている。ラバーステムが下方に押圧されると、ラバーステムの突出部にて可動接点の上面に下方向の荷重が加えられる。荷重が一定以上になると、可動接点は反転し、可動接点の下面の一部が固定接点に接触し、これによりスイッチ入力を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-251101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の押釦スイッチ(プッシュスイッチ)では、可動接点(可動部材)が反転する際に発生する音を抑制する構造を有しておらず、操作音を十分に抑制することができない、という問題があった。
【0005】
本開示は、操作音を抑制しやすいプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るプッシュスイッチは、ボディと、固定接点部と、可動部材と、フィルムと、を備える。前記固定接点部は、前記ボディに保持されている。前記可動部材は、ダイアフラム状に形成されている。前記可動部材は、可動接点部と、屈折部位と、を有する。前記屈折部位は、前記可動接点部の周囲に設けられている。前記可動部材は、前記固定接点部に対向する位置に配置され、押されることにより前記屈折部位が屈折して前記可動接点部が前記固定接点部に接触する。前記フィルムは、前記屈折部位が屈折する前後に亘って前記屈折部位に接触する状態で前記可動部材上に位置する。前記フィルムは、前記可動部材の一部にのみ配置される。前記フィルムの外径は、前記可動部材の外径よりも小さい。
本開示の一態様に係るプッシュスイッチは、ボディと、固定接点部と、可動部材と、フィルムと、押し子と、を備える。前記固定接点部は、前記ボディに保持されている。前記可動部材は、ダイアフラム状に形成されている。前記可動部材は、可動接点部と、屈折部位と、を有する。前記屈折部位は、前記可動接点部の周囲に設けられている。前記可動部材は、前記固定接点部に対向する位置に配置され、押されることにより前記屈折部位が屈折して前記可動接点部が前記固定接点部に接触する。前記フィルムは、前記屈折部位が屈折する前後に亘って前記屈折部位に接触する状態で前記可動部材上に位置する。前記押し子は、前記可動部材に対向する位置に配置され、外部からの力を受けて前記可動部材を押す。前記フィルムの弾性率は、前記押し子の弾性率よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、操作音を抑制しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るプッシュスイッチの分解斜視図である。
図2図2は、同上のプッシュスイッチの全体斜視図である。
図3図3は、同上のプッシュスイッチの非操作時の概略断面図である。
図4図4は、同上のプッシュスイッチの操作時の概略断面図である。
図5図5は、同上のプッシュスイッチの静音特性の説明図である。
図6図6は、本開示の一実施形態の変形例1に係るプッシュスイッチの分解斜視図である。
図7図7は、同上のプッシュスイッチの静音特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)概要
以下、本実施形態のプッシュスイッチ1(図1参照)について図面を参照して説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
図1に示すように、本実施形態のプッシュスイッチ1は、ボディ2と、(第1)固定接点部7と、可動部材3と、フィルム6と、を備える。固定接点部7は、ボディ2に保持されている。可動部材3は、ダイアフラム状に形成されている。可動部材3は、可動接点部8(図3参照)と、屈折部位31と、を有する。屈折部位31は、可動接点部8の周囲に設けられている。可動部材3は、固定接点部7に対向する位置に配置され、押されることにより屈折部位31が屈折して可動接点部8が固定接点部7に接触する。フィルム6は、屈折部位31が屈折する前後に亘って屈折部位31に接触する状態で可動部材3上に位置する。
【0011】
可動部材3は、可動接点部8が固定接点部7に接触するオン位置と、可動接点部8が固定接点部7から離れるオフ位置との間を移動可能である。可動部材3は、押されることで、オフ位置からオン位置へ移動するように構成されている。固定接点部7及び可動接点部8は、接点部4を構成している。接点部4は、可動接点部8がオン位置にある状態でオンになり、可動接点部8がオフ位置にある状態でオフになる。
【0012】
本実施形態では、可動部材3は、押し子51(後述する)により押される。押し子51は、プッシュスイッチ1の外部からの力を受けて可動部材3を押すように構成されている。本開示でいう「外部からの力」は、プッシュスイッチ1の操作時にプッシュスイッチ1の外部からプッシュスイッチ1に加わる力である。言い換えれば、「外部からの力」は、プッシュスイッチ1の操作者がプッシュスイッチ1に対して加える力(以下、「操作力」という)である。操作力は、操作者が直接、押し子51を押すことで押し子51に加えられる力の他、操作者が中間部材(例えば、操作釦10(後述する))を介して押し子51を押すことで押し子51に加えられる力を含む。
【0013】
本実施形態では、可動部材3は、押し子51に加わる操作力に応じて、反転動作を行うように構成されている。具体的には、可動部材3は、操作力の大きさが所定の大きさに達するまでは可動部材3から押し子51に作用する荷重が増大し、操作力の大きさが所定の大きさに達すると、屈折部位31が屈折して可動部材3から押し子51に作用する荷重が減少する特性を有している。本開示でいう「屈折部位」は、可動部材3において、所定の大きさ以上の力が加わることで屈折(反転)した際に生じる凸部と凹部との境界部分をいう。ここで言う「凸部」とは、図4の可動部材3の外周部(中心から離れた領域)であり、「凹部」とは、図4の可動部材3の中心を含む領域である。可動部材3に力が加えられていない状態では、屈折部位31は、可動部材3における他の部位に対して外見上の区別がつかなくてもよい。
【0014】
本実施形態では、プッシュスイッチ1は、操作時にのみ接点部4がオンになる、モーメンタリ型のスイッチである。プッシュスイッチ1の操作時には、押し子51の上端部が押操作されることによって、押し子51に下向きの操作力が作用する。本開示でいう「押操作」は、押し子51の上端部を可動部材3に近づく向き(下方)に押す操作である。押操作をやめると、可動部材3が弾性復帰することで、接点部4がオフになる。
【0015】
押操作の開始から終了まで、フィルム6が屈折部位31に接触する状態が維持される。すなわち、屈折部位31が屈折する前後に亘ってこの状態が維持される。そのため、屈折部位31で発生する音をフィルム6により抑制する効果が得られる。つまり、本実施形態では、プッシュスイッチ1に操作力が加えられて屈折部位31が屈折する際に、屈折部位31の屈折により発生する音がフィルム6に吸収される。また、本実施形態では、プッシュスイッチ1に加えられた操作力が失われて屈折部位31が屈折した状態から元の状態に戻るように可動部材3が弾性復帰する際においても、可動部材3の弾性復帰により発生する音がフィルム6に吸収される。つまり、本実施形態では、屈折部位31の変形に伴って発生する音がフィルム6に吸収される。したがって、本実施形態では、操作音(ここでは、屈折部位31の変形に伴って発生する音)を抑制しやすい、という利点がある。
【0016】
(2)詳細
(2-1)プッシュスイッチ
以下、本実施形態のプッシュスイッチ1について詳細に説明する。プッシュスイッチ1は、例えば携帯情報端末、車載機器、及び家電機器などの各種の機器の操作部に用いられる。プッシュスイッチ1は、例えばプリント基板に実装された状態で機器の筐体に内蔵される。この場合、筐体においてプッシュスイッチ1に対応する位置には、例えば中間部材として操作釦10(図3参照)が配置される。操作者が操作釦10を押すことによって、プッシュスイッチ1が操作釦10を介して間接的に操作される。
【0017】
ボディ2は、一面(図1における上面)を開口した凹部210を有している。固定接点部7は、凹部210に配置されている。以下では、特に断りのない限り、ボディ2のうち凹部210が形成された面をボディ2の上面とし、凹部210の深さ方向を「上下方向」として説明する。また、以下では、後述する第1端子11及び第2端子12がボディ2から突出する方向を「左右方向」とし、上下方向及び左右方向の両方と直交する方向(図3の紙面と直交する方向)を前後方向として説明する。つまり、図1等において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の矢印で示す通りに上、下、左、右、前、後の各方向を規定する。ただし、これらの方向はプッシュスイッチ1の使用方向を規定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0018】
プッシュスイッチ1は、図1図4に示すように、ボディ2と、可動部材3と、接点部4と、操作体5と、フィルム6と、金属体9と、を備えている。以下では、特に断りのない限り、プッシュスイッチ1の非操作時、つまりプッシュスイッチ1が押されていない状態について説明する。
【0019】
(2-2)ボディ
ボディ2は、ベース21と、カバー22と、を有している。ベース21とカバー22とが結合されることで、可動部材3及びフィルム6等を収容する空間が形成されている。
【0020】
ベース21は、合成樹脂製である。ベース21は、電気絶縁性を有している。ベース21の形状は、直方体状である。ベース21の上面には、平面視で円形状の凹部210が形成されている。上から見て、凹部210の中心は、ベース21の中心と一致している。
【0021】
凹部210の底面211の外周部(中心から離れた領域)は、可動部材3が接触する領域となっている。本実施形態では、可動部材3は、その外周縁が全周にわたって底面211に接触する。
【0022】
ベース21は、その前面及び後面にそれぞれ、一対の突部212を有している。
【0023】
カバー22は、金属製である。カバー22は、カバー本体220と、複数(図1では4つ)の突片23と、を有している。カバー本体220の形状は、矩形板状である。カバー本体220の厚さ方向は、上下方向に沿っている。カバー本体220の四辺からはそれぞれ、突片23が下方に突出している。4つの突片23のうち2つの第1突片231(ここでは、カバー本体220の左右方向の両側の突片23)は、操作体5がボディ2に保持された状態において、操作体5の左右方向の移動を規制する。また、4つの突片23のうち残り2つの第2突片232(ここでは、カバー22の前後方向の両側の突片23)は、それぞれ左右方向の両側から突出する一対の引掛け爪233を有している。2つの(前側及び後ろ側の)第2突片232の各々の一対の引掛け爪233を、ベース21の前面及び後面にそれぞれ設けられた一対の突部212に引っ掛けることで、ベース21とカバー22とが互いに結合される。
【0024】
カバー本体220の中央部には、押し子51の上端部が通る通孔24が設けられている。通孔24の平面視形状は円形状である。押し子51は、上端部が通孔24を通して外部に臨む形で、ボディ2に保持される。
【0025】
(2-2)金属体
金属体9は、第1金属部材91及び2つの第2金属部材92を有する。第1金属部材91及び2つの第2金属部材92は、いずれも導電性を有する金属板からなる。第1金属部材91と各第2金属部材92とは、互いに電気的に絶縁されている。
【0026】
第1金属部材91及び2つの第2金属部材92は、ベース21に保持されている。本実施形態では、第1金属部材91及び2つの第2金属部材92は、インサート成形により、ベース21と一体化されている。すなわち、ベース21は、金属体9(第1金属部材91及び2つの第2金属部材92)をインサート品としてインサート成形されている。
【0027】
第1金属部材91は、(第1)固定接点部7と、2つ(図1では1つのみを図示)の第1端子11と、を有している。固定接点部7は、第1金属部材91の上面から上方に突出した、平面視において円状の領域からなる。固定接点部7は、凹部210の底面211から露出している。固定接点部7は、凹部210の中央部に露出している。
【0028】
2つの第1端子11は、固定接点部7に電気的に接続されている。すなわち、固定接点部7と2つの第1端子11とは、第1金属部材91のうちベース21に埋め込まれた部分を介して、互いに電気的に接続されている。2つの第1端子11は、ボディ2の外部に露出している。すなわち、2つの第1端子11のうち一方は、ベース21の右面から突出しており、他方は、ベース21の左面から突出している。
【0029】
2つの第2金属部材92は、互いに電気的に接続されている。2つの第2金属部材92は、一体に形成されている。
【0030】
2つの第2金属部材92の各々は、(第2)固定接点部921と、第2端子12と、を有している。固定接点部921は、凹部210の底面211から露出している。固定接点部921は、底面211の外周部に露出している。
【0031】
第2端子12は、固定接点部921に電気的に接続されている。すなわち、固定接点部921と第2端子12とは、第2金属部材92のうちベース21に埋め込まれた部分を介して、互いに電気的に接続されている。第2端子12は、ボディ2の外部に露出している。すなわち、2つの第2金属部材92のうち一方の第2金属部材92の第2端子12は、ベース21の右面から突出しており、他方の第2金属部材92の第2端子12は、ベース21の左面から突出している。
【0032】
第1端子11及び第2端子12は、例えばプリント基板上の導電部材に対して、はんだ付けにより機械的に結合及び電気的に接続される。
【0033】
固定接点部7及び固定接点部921は、凹部210の底面211から上方に突出している。第1金属部材91における固定接点部7の周囲の領域及び第2金属部材92における固定接点部921の周囲の領域は、底面211と略面一に形成されている。
【0034】
(2-3)可動部材
可動部材3は、金属製である。可動部材3は、ベース21の凹部210内に配置されている。本実施形態では、可動部材3は、弾性を有する板材にて構成されている。可動部材3は、例えば、ステンレス(SUS)等の金属板にて構成されている。本実施形態では、可動部材3は、1枚の板ばねで構成されている。可動部材3の外形形状は、円盤状である。可動部材3は、凹部210内に収まるように、凹部210に対応する形状(円状)であって、凹部210より一回り小さく形成されている。可動部材3の上面における中央部は、受圧部32(図3参照)を構成する。つまり、可動部材3の上面の中央部は、押し子51から操作力を受ける受圧部32として機能する。
【0035】
また、可動部材3のうち外縁付近の部位は、屈折部位31を構成する。可動部材3を平面視した場合に、屈折部位31が占める領域は、円環状の領域である。
【0036】
可動部材3は、いわゆるメタルドームである。可動部材3は、中央部が上方に凸となるように湾曲したドーム状に形成されている。可動部材3は、その外周縁が全周にわたって凹部210の底面211に接触している。さらに、可動部材3の外周縁は、底面211に露出する固定接点部921に接触している。これにより、可動部材3は、固定接点部921に電気的に接続されている。すなわち、可動部材3は、2つの第2金属部材92に電気的に接続されている。一方で、可動部材3は、第1金属部材91(固定接点部7)に対して電気的に絶縁されている。望ましくは、可動部材3の下面には、例えば金(Au)メッキ又は銀(Ag)メッキ等により、導電性を有する導電膜が全面に亘って形成されている。
【0037】
可動部材3の下面のうち中央部(受圧部32)に対応する部分は、可動接点部8を構成する。また、受圧部32に所定の大きさ以上の操作力が作用すると、可動部材3の屈折部位31が変形(屈折)して可動部材3が下向きに撓む。一例として、可動部材3は、図4に示すように、可動部材3の中央部が下向きに凸となるドーム状に変形する。図4のように屈折部位31が変形することで、可動部材3から押し子51に作用する荷重が減少する。つまり、可動部材3は、押し子51に加わる操作力(押し子51の移動量)に応じて、反転動作を行うように構成されている。このとき、受圧部32の下面に形成されている可動接点部8が固定接点部7に接触し、可動接点部8と固定接点部7とが電気的に接続される。
【0038】
すなわち、可動接点部8と固定接点部7とは、接点部4を構成する。接点部4は、受圧部32が凹部210の底面211に近づく向き(下方)に押されて可動部材3が変形することにより、オフからオンに切り替わる。具体的には、受圧部32に操作力が作用していない状態(図3に示す状態)では、可動接点部8が固定接点部7から離間しているため、接点部4はオフである。このとき、第1金属部材91と第2金属部材92とは電気的に絶縁されているため、第1端子11と第2端子12との間は非導通となる。一方、受圧部32に操作力が作用して可動接点部8が固定接点部7に接触すると(図4参照)、接点部4はオンになる。このとき、第1金属部材91と2つの第2金属部材92とは可動部材3を介して電気的に接続されるため、第1端子11と第2端子12との間が導通する。
【0039】
(2-4)フィルム
フィルム6は、例えば合成樹脂を材料として形成されている。フィルム6を構成する樹脂の一例は、ポリイミド又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等である。フィルム6の外形形状は、円状である、フィルム6の厚さは、可動部材3の厚さよりも小さい。
【0040】
ここで、図1に示すように、可動部材3は、可動接点部8を有する第1面P1(下面)と、第1面P1とは反対側の第2面P2(上面)と、を有し、フィルム6は、第2面P2に接触している。つまり、フィルム6は、可動部材3の上面を覆っている。
【0041】
フィルム6は、可動部材3の一部にのみ配置されることが好ましい。本実施形態では、フィルム6は、可動部材3の一部にのみ配置される。より詳細には、フィルム6の外径は、可動部材3の外径よりも小さく、フィルム6は、可動部材3と中心を一致させて可動部材3に重ねられている。そのため、可動部材3のうち外縁付近の部位には、フィルム6が配置されておらず、露出している。ただし、フィルム6は、少なくとも可動部材3の屈折部位31に接触し、かつ、屈折部位31を覆う寸法に形成されている。本実施形態では、フィルム6の外径は、環状の屈折部位31の外径よりも大きい。図4に示すように、フィルム6は、屈折部位31と、屈折部位31の近傍の領域と、を少なくとも覆っている。フィルム6は、屈折部位31が屈折する前後に亘って屈折部位31に接触し、かつ、屈折部位31を覆う状態で可動部材3上に位置する。
【0042】
フィルム6は、その全面(第1面P1の全体)が、可動部材3に接触している。フィルム6は、可動部材3に接着部材により接着されている。接着部材は、複数の部材を接着するための部材である。接着部材の一例は、接着剤及び粘着剤等である。
【0043】
可動部材3の屈折部位31が屈折するとき、フィルム6は、屈折部位31と共に屈折する。なお、可動部材3は特定の箇所(屈折部位31)で屈折する性質を有しているのに対し、フィルム6は、特定の箇所で屈折する性質を有していなくてもよい。本実施形態のフィルム6は、特定の箇所で屈折する性質を有しておらず、屈折部位31が屈折する際に、可動部材3に引っ張られることで、屈折部位31に接している部位が屈折する。
【0044】
また、フィルム6は、弾性復帰する性質を有していなくてもよい。本実施形態のフィルム6は、弾性復帰する性質を有しておらず、屈折部位31が屈折するように可動部材3が弾性変形した後、弾性復帰する可動部材3に引っ張られることで元の形状に戻る。
【0045】
(2-5)操作体
操作体5は、ゴム製である。操作体5は、電気絶縁性を有している。操作体5は、押し子51と、支持部52と、を有している。
【0046】
押し子51は、可動部材3に対向する位置に配置され、外部からの力を受けて可動部材3を押す。フィルム6の弾性率は、押し子51の弾性率よりも大きいことが好ましい。
【0047】
押し子51の形状は、上下方向を軸とする円柱状である。押し子51は、可動部材3の上方に配置されており、可動部材3の受圧部32と対向している。ただし、受圧部32と押し子51との間には、フィルム6が介在している。本実施形態では、非操作時において、押し子51は、フィルム6に接触している。ただし、非操作時において、押し子51は、フィルム6及び可動部材3に接触していなくてもよい。
【0048】
押し子51は、上端部に加わる操作力を可動部材3の受圧部32に伝達する。つまり、押し子51の上端部に上方から操作力が作用すると、この操作力はフィルム6を介して受圧部32に伝達され、受圧部32に上方から作用する。これにより、押し子51が押されることによって、受圧部32が押し子51を介して間接的に操作される。
【0049】
支持部52は、押し子51と一体に形成されている。支持部52は、押し子51の周囲に設けられ、押し子51につながっている。支持部52は、押し子51を囲んでいる。支持部52の形状は、矩形板状である。「矩形」とは、正方形と、長方形とを含む概念である。支持部52の厚さ方向は、上下方向に沿っている。支持部52は、その外周部に、突出部521を有している。突出部521は、突出部521の周囲よりも下に突出している。
【0050】
支持部52は、押し子51を支持している。支持部52は、一部がボディ2の外部に露出する形で、ボディ2に収容される。支持部52は、その外周部(突出部521)がボディ2に保持されている。
【0051】
支持部52は、押し子51が可動部材3を押す動作に伴い変形する。つまり、押し子51に押操作がされると、押し子51が下方に移動するが、これに伴い、支持部52が突出部521を支点として弾性変形する(図4参照)。また、押し子51に押操作がされない状態になると、支持部52が弾性復帰することで、操作体5の形状は、押操作がされる前の形状に戻る(図3参照)。
【0052】
支持部52は、カバー22の複数の突片23に囲まれている。これにより、押し子51の移動方向と直交する平面内での操作体5の移動が制限されている。また、ボディ2内での支持部52の位置は、ベース21の上面とカバー22の内面との間で挟まれることにより、規定されている。
【0053】
(3)動作
以下、本実施形態のプッシュスイッチ1の動作について図3及び図4を用いて説明する。操作者がプッシュスイッチ1の押し子51を一定以上の力で押操作すると、押し子51を介して上方から可動部材3の受圧部32に操作力が作用する。すると、受圧部32が下方に押されて、可動部材3が徐々に変形する。そして、可動部材3に作用する操作力の大きさが所定の大きさを超えると、図4に示すように、可動部材3は屈折部位31において勢いよく座屈して大きく変形する。このとき、受圧部32に作用する可動部材3の弾性力が急激に変化する。このような可動部材3の反転動作によって、可動部材3は、例えば図4に示すように、中央部(受圧部32)が下向きに凸となるように湾曲したドーム状等に変形する。したがって、プッシュスイッチ1を押操作する操作者には、可動部材3の変形に伴って節度感(クリック感)が与えられる。そして、可動部材3が上記のように変形すると、図4に示すように、可動部材3の下面に形成されている可動接点部8が固定接点部7に接触し、接点部4がオンになる。この状態では、第1端子11と第2端子12との間が導通する。
【0054】
一方、可動部材3が上記のように変形した状態で、受圧部32に作用する操作力が無くなると、可動部材3は、可動部材3の復元力によって中央部(受圧部32)が上方に凸となるように湾曲したドーム状等に復元(変形)する。このとき、受圧部32に作用する可動部材3の弾性力が急激に変化するため、可動部材3は、元の形状に勢いよく復元(変形)する。そして、可動部材3が元の形状になると、図3に示すように、可動部材3の下面に形成されている可動接点部8が固定接点部7から離れて、接点部4がオフになる。この状態では、第1端子11と第2端子12との間が非導通となる。
【0055】
(4)利点
以下、本実施形態のプッシュスイッチ1の利点について、比較例のプッシュスイッチとの比較を交えて説明する。比較例のプッシュスイッチは、フィルム6を備えていない点で、本実施形態のプッシュスイッチ1と相違する。
【0056】
ここで、プッシュスイッチの操作時に発生する音、つまり操作音は、2種類の音に大別される。すなわち、操作音は、可動部材3と固定接点部7との衝突により発生する音と、可動部材3の反転に伴って発生する音と、を含んでいる。
【0057】
比較例のプッシュスイッチでは、押し子51の剛性を調整したり、非操作時における押し子51と可動部材3との間の距離を調整したりすることで、押し子51の弾性エネルギーを減少させれば、可動部材3と固定接点部7との衝突により発生する音を抑制することは可能である。しかしながら、比較例のプッシュスイッチでは、可動部材3が反転する際、つまり可動部材3の屈折部位31が屈折したり、元の状態に復帰したりする際に、可動部材3と押し子51とが非接触の状態となる。このため、比較例のプッシュスイッチでは、可動部材3の反転に伴って発生する音を抑制できず、結果として操作音を抑制しにくい。
【0058】
これに対して、本実施形態のプッシュスイッチ1では、フィルム6を備えており、可動部材3の屈折部位31が屈折したり、元の状態に復帰したりする際においても、屈折部位31がフィルム6に接触した状態が維持される。このため、本実施形態のプッシュスイッチ1では、可動部材3の反転に伴って発生する音がフィルム6に吸収される。したがって、本実施形態のプッシュスイッチ1では、比較例のプッシュスイッチと比較して、操作音(ここでは、可動部材3の反転に伴って発生する音)を抑制しやすい、という利点がある。
【0059】
以下、図5に示すグラフを用いて利点を説明する。図5の横軸は、フィルム6の外径を表し、縦軸は、横軸で表す外径のフィルム6を備えるプッシュスイッチ1で生じる「平均音圧レベル」を表す。ここでは、「平均音圧レベル」とは、複数(ここでは3つ)のプッシュスイッチ1で生じる「音圧レベル」の平均値である。同じ形状の複数のプッシュスイッチ1を用いて、各外径(横軸)に対応する平均音圧レベルを測定した。ここでは、「音圧レベル」とは、押し子51が押操作されて可動部材3が変形し始めてから、接点部4がオンになり、その後、押操作をやめて可動部材3が元の形状に戻るまでの間に、プッシュスイッチ1で生じる音の大きさの最大値である。
【0060】
図5中の白丸は、ポリイミドを材料として形成されたフィルム6を使用したときの測定値を表す。図5中の黒丸は、PTFEを材料として形成されたフィルム6を使用したときの測定値を表す。ただし、外径が0[mm]の場合に対応する測定値は、フィルム6を備えていない比較例のプッシュスイッチにおける測定値である。
【0061】
図5中の破線は、可動部材3の中心から屈折部位31までの間の距離に対応する。つまり、フィルム6の外径が破線に対応する長さ(約3.8[mm])よりも短い場合は、フィルム6は、屈折部位31を覆っていない。フィルム6の外径が破線に対応する長さ以上の場合は、フィルム6は、屈折部位31を覆っている。
【0062】
まず、ポリイミドを材料として形成されたフィルム6を使用したときの測定値(白丸)を参照して説明する。フィルム6の外径が破線に対応する長さ(約3.8[mm])よりも短い場合は、平均音圧レベルは、プッシュスイッチ1がフィルム6を備えていないとき(外径=0[mm])の測定値と大きく変わらない。一方で、フィルム6の外径が破線に対応する長さよりも長くなると(外径=4[mm])、平均音圧レベルが低下している。具体的には、プッシュスイッチ1がフィルム6を備えていないときの平均音圧レベルが約15[dB]であるのに対して、外径=4[mm]のときの平均音圧レベル(白丸)は、約10[dB]に低下している。
【0063】
次に、PTFEを材料として形成されたフィルム6を使用したときの測定値(黒丸)を参照して説明する。フィルム6の外径が破線に対応する長さ(約3.8[mm])よりも短い場合は、平均音圧レベルは、プッシュスイッチ1がフィルム6を備えていない場合(外径=0[mm])の測定値よりも大きい。一方で、フィルム6の外径が破線に対応する長さよりも長くなると(外径=4[mm])、平均音圧レベルが低下している。具体的には、プッシュスイッチ1がフィルム6を備えていないときの平均音圧レベルが約15[dB]であるのに対して、外径=4[mm]のときの平均音圧レベル(黒丸)は、約13.5[dB]に低下している。
【0064】
次に、フィルム6の弾性率と音圧レベルとの関係を説明する。ここで言う弾性率は、上下方向に力が加えられたときの変形量から求められる弾性率である。ポリイミドを材料として形成されたフィルム6の弾性率は、PTFEを材料として形成されたフィルム6の弾性率よりも大きい。また、押し子51の弾性率は、ポリイミドを材料として形成されたフィルム6の弾性率よりも小さく、PTFEを材料として形成されたフィルム6の弾性率よりも大きい。
【0065】
図5に示すように、フィルム6の材料としてポリイミドを用いたときの方が、フィルム6の材料としてPTFEを用いたときよりも、平均音圧レベルが小さい。これは、フィルム6が、弾性率が大きいほど(つまり、変形しにくいほど)弾性エネルギーを蓄えにくいためであると考えられる。フィルム6に蓄えられた弾性エネルギーは音に変化する可能性があるので、弾性エネルギーを蓄えにくいほど、静音化の点で有利である。また、PTFEよりもポリイミドの方が、損失弾性率が大きく、弾性エネルギーが熱エネルギーとして拡散されやすいため、静音化の点で有利である。
【0066】
(5)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0067】
(5-1)変形例1
図6に示すように、本変形例1のプッシュスイッチ1Aのフィルム6Aは、平面視で環状(円環状)である。つまり、フィルム6Aは、可動部材3上に位置した状態で、可動部材3の少なくとも中央部(受圧部32)を露出させる。ここで、可動部材3の中央部の下面には、可動接点部8(図3参照)が設けられている。フィルム6Aは、可動部材3の下面に配置されて、可動接点部8を露出させていてもよい。
【0068】
フィルム6Aが環状である態様においても、操作音(ここでは、可動部材3の反転に伴って発生する音)を抑制することが可能である。これについて、図7を参照して説明する。
【0069】
図7には、図5の一部を再掲している。すなわち、図7における右端の点D1、D2以外の点は、実施形態及び比較例のプッシュスイッチ1におけるフィルム6の外径と平均音圧レベルとの関係を表す。また、図7の右端の点D1、D2は、本変形例1のプッシュスイッチ1Aの平均音圧レベルを表す。本変形例1のプッシュスイッチ1Aにおいて、フィルム6Aの外径は4[mm]であり、フィルム6Aの内径は3[mm]である。また、ポリイミドを材料として形成されたフィルム6A(点D2に対応)と、PTFEを材料として形成されたフィルム6A(点D1に対応)と、のそれぞれに対応する平均音圧レベルを測定した。
【0070】
プッシュスイッチ1がフィルム6、6Aのいずれも備えていないとき(外径=0[mm])の平均音圧レベルが約15[dB]であるのに対して、本変形例1のプッシュスイッチ1Aでは、平均音圧レベルが約12~12.5[dB]に低下している。このように、本変形例1でも、操作音を抑制することが可能である。
【0071】
なお、フィルム6、6Aの材料がポリイミドの場合は、本変形例1よりも、実施形態の構成の方が、平均音圧レベルが小さい。これは、実施形態ではフィルム6が可動部材3のより広い範囲を覆うことで、フィルム6が可動部材3の振動を吸収する効果が比較的高いためであると考えられる。一方で、フィルム6、6Aの材料がPTFEの場合は、弾性率が比較的小さいので、実施形態のようにフィルム6の面積が大きいほど、弾性エネルギーを蓄える量が増えて、静音化に不利であると考えられる。
【0072】
(5-2)その他の変形例
上述の実施形態において、プッシュスイッチ1のストローク長、つまり非操作時から押操作によってプッシュスイッチ1がオンするまでの押し子51の移動量は、適宜設定可能である。例えば、プッシュスイッチ1は、ストローク長が比較的短い短ストロークタイプ、ストローク長が比較的長い長ストロークタイプ、又は短ストロークタイプと長ストロークタイプとの中間に該当する中ストロークタイプであってもよい。
【0073】
上述の実施形態において、プッシュスイッチ1は、押し子51を備えていなくてもよい。この態様では、可動部材3は、フィルム6を介して外部からの力を受けることになる。また、この態様では、操作力は、操作者が直接、フィルム6を押すことでフィルム6を介して可動部材3に加えられる力となる。
【0074】
上述の実施形態において、プッシュスイッチ1は、機器の操作部に用いられて人に操作される構成に限らず、例えば機器の位置検知に用いられてもよい。機器が所定の位置に移動することで、所定の位置に設置されたプッシュスイッチ1の押し子51が押操作され、プッシュスイッチ1から信号が出力される。
【0075】
上述の実施形態において、可動部材3は、1枚の板ばねにて構成されているが、可動部材3は、複数枚の板ばねを重ね合わせた構成であってもよい。この場合、重ね合わせる板ばねの枚数によって、可動部材3が座屈するために必要な操作力の大きさが変化し、プッシュスイッチ1の操作感触が変化する。
【0076】
上述の実施形態において、可動部材3の下面に導電膜を有する形態とする場合は、例えば、導電膜を可動部材3の下面の全面に亘って形成してもよい。あるいは、導電膜は、固定接点部7との接触箇所に部分的に形成されていてもよい。
【0077】
屈折部位31に、窪みが形成されていてもよい。屈折部位31に窪みが形成されることで、可動部材3が屈折部位31において屈折しやすくなる。
【0078】
可動部材3及びフィルム6の外径形状は、円状に限定されない。可動部材3及びフィルム6の少なくとも一方の外径形状は、例えば、長方形状、正方形状、又は、長円状であってもよい。
【0079】
フィルム6は、可動部材3に接着以外の手段で固定されていてもよい。フィルム6は、例えば、レーザ溶着により可動部材3に固定されていてもよいし、可動部材3にコーティング又はプリントされていてもよい。
【0080】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)は、ボディ(2)と、固定接点部(7)と、可動部材(3)と、フィルム(6、6A)と、を備える。固定接点部(7)は、ボディ(2)に保持されている。可動部材(3)は、ダイアフラム状に形成されている。可動部材(3)は、可動接点部(8)と、屈折部位(31)と、を有する。屈折部位(31)は、可動接点部(8)の周囲に設けられている。可動部材(3)は、固定接点部(7)に対向する位置に配置され、押されることにより屈折部位(31)が屈折して可動接点部(8)が固定接点部(7)に接触する。フィルム(6、6A)は、屈折部位(31)が屈折する前後に亘って屈折部位(31)に接触する状態で可動部材(3)上に位置する。
【0081】
この態様によれば、操作音を抑制しやすい、という利点がある。
【0082】
第2の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)では、第1の態様において、フィルム(6、6A)は、可動部材(3)の一部にのみ配置される。
【0083】
この態様によれば、フィルム(6、6A)に蓄えられる弾性エネルギーの大きさを低減できる。
【0084】
第3の態様に係るプッシュスイッチ(1A)では、第2の態様において、フィルム(6A)は、可動部材(3)上に位置した状態で、可動部材(3)の少なくとも中央部を露出させる。
【0085】
この態様によれば、フィルム(6A)に蓄えられる弾性エネルギーの大きさを低減できる。
【0086】
第4の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)では、第2又は第3の態様において、フィルム(6、6A)の外径は、可動部材(3)の外径よりも小さい。
【0087】
この態様によれば、フィルム(6、6A)に蓄えられる弾性エネルギーの大きさを低減できる。
【0088】
第5の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)では、第1~第4のいずれかの態様において、フィルム(6、6A)は、屈折部位(31)と共に屈折する。
【0089】
この態様によれば、屈折部位(31)における音の発生を抑制しやすい。
【0090】
第6の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)では、第1~第5のいずれかの態様において、フィルム(6、6A)は、可動部材(3)に接着部材により接着されている。
【0091】
この態様によれば、屈折部位(31)が屈折するときにフィルム(6、6A)が屈折部位(31)から離れる可能性を低減できる。
【0092】
第7の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)では、第1~第6のいずれかの態様において、可動部材(3)は、可動接点部(8)を有する第1面(P1)と、第1面(P1)とは反対側の第2面(P2)と、を有する。フィルム(6、6A)は、第2面(P2)に接触している。
【0093】
この態様によれば、可動接点部(8)がフィルム(6、6A)に覆われることを抑制できる。
【0094】
第8の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)は、第1~第7のいずれかの態様において、押し子(51)を更に備える。押し子(51)は、可動部材(3)に対向する位置に配置され、外部からの力を受けて可動部材(3)を押す。フィルム(6、6A)の弾性率は、押し子(51)の弾性率よりも大きい。
【0095】
この態様によれば、静音性を更に高められる。
【0096】
第9の態様に係るプッシュスイッチ(1、1A)は、第8の態様において、支持部(52)を更に備える。支持部(52)は、押し子(51)の周囲に設けられ、押し子(51)を支持する。支持部(52)は、押し子(51)が可動部材(3)を押す動作に伴い変形する。支持部(52)は、その外周部(突出部521)がボディ(2)に保持されている。
【0097】
この態様によれば、押し子(51)を位置決めできる。
【0098】
第1の態様以外の構成については、プッシュスイッチ(1、1A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0099】
1、1A プッシュスイッチ
2 ボディ
3 可動部材
6、6A フィルム
7 固定接点部
8 可動接点部
31 屈折部位
51 押し子
52 支持部
521 突出部(外周部)
P1 第1面
P2 第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7