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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240712BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240712BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240712BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240712BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240712BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240712BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240712BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020121251
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018264
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】福西 孝章
(72)【発明者】
【氏名】南雲 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】阪田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇
(72)【発明者】
【氏名】楊 長輝
(72)【発明者】
【氏名】佐田 友和
(72)【発明者】
【氏名】松田 昂
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041231(US,A1)
【文献】特開2013-089424(JP,A)
【文献】特開2018-169161(JP,A)
【文献】特表2016-532866(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092811(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106126947(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
H01M 10/42
H01M 10/48
H02J 7/00
G01R 31/367
G01R 31/382
G01R 31/385
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
試験に基づく電池の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを取得し、
前記試験後の前記電池の稼働データを取得し、
前記稼動データにおける前記電池の劣化度を取得し、
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、少なくとも1つの劣化係数を算出し、
前記電池の劣化度を算出するための劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記少なくとも1つの劣化係数を用いて、劣化度を算出し、
算出した劣化度が、取得した劣化度に近付くように前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを調整し、
調整した前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを用いて少なくとも1つの劣化特性を算出し、
算出した前記少なくとも1つの劣化特性を出力
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、保存劣化に対応する第1劣化特性算出モデルと、充電劣化に対応する第2劣化特性算出モデルと、放電劣化に対応する第3劣化特性算出モデルとを含み、
前記劣化度を、前記保存劣化に対応する第1劣化度と、前記充電劣化に対応する第2劣化度と、前記放電劣化に対応する第3劣化度とに分配するための分配率が初期設定されており、
前記少なくとも1つの劣化係数の算出において、前記第1劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第1劣化係数が算出され、前記第2劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第2劣化係数が算出され、前記第3劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第3劣化係数が算出され、
前記劣化度の算出において、前記劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記第1劣化係数、前記第2劣化係数及び前記第3劣化係数を用いて、前記第1劣化度、前記第2劣化度及び前記第3劣化度が算出され、
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整において、取得した劣化度を前記分配率に応じて第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度に分配し、算出した第1劣化度が、分配した第1劣化度に近付くように前記第1劣化特性算出モデルが調整され、算出した第2劣化度が、分配した第2劣化度に近付くように前記第2劣化特性算出モデルが調整され、算出した第3劣化度が、分配した第3劣化度に近付くように前記第3劣化特性算出モデルが調整され、
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整において、算出した前記第1劣化度、前記第2劣化度及び前記第3劣化度の合計が、取得した劣化度に近付くように前記分配率が調整される、
情報処理方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、パラメタを有し、
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整において、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの前記パラメタが調整され、
前記劣化特性の算出において、前記劣化特性は、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整後の前記パラメタを用いて算出される、
請求項記載の情報処理方法。
【請求項3】
さらに、前記パラメタには調整可能範囲が設定されており、
前記パラメタの調整において、前記パラメタは、前記調整可能範囲内で調整される、
請求項記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記稼動データの取得において、前記稼動データは、前記少なくとも1つの劣化特性を用いた処理を行う機器から受信され、
前記劣化特性の出力において、算出された前記少なくとも1つの劣化特性は、前記機器に送信される、
請求項1~のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
試験に基づく電池の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを取得する劣化特性算出モデル取得部と、
前記試験後の前記電池の稼動データを取得する稼動データ取得部と、
前記稼動データにおける前記電池の劣化度を取得する劣化度取得部と、
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、少なくとも1つの劣化係数を算出する劣化係数算出部と、
前記電池の劣化度を算出するための劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記少なくとも1つの劣化係数を用いて、劣化度を算出する劣化度算出部と、
算出した劣化度が、取得した劣化度に近付くように前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを調整する調整部と、
調整した前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを用いて少なくとも1つの劣化特性を算出する劣化特性算出部と、
算出した前記少なくとも1つの劣化特性を出力する出力部と、
を備え
前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、保存劣化に対応する第1劣化特性算出モデルと、充電劣化に対応する第2劣化特性算出モデルと、放電劣化に対応する第3劣化特性算出モデルとを含み、
前記劣化度を、前記保存劣化に対応する第1劣化度と、前記充電劣化に対応する第2劣化度と、前記放電劣化に対応する第3劣化度とに分配するための分配率が初期設定されており、
前記劣化係数算出部は、前記第1劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第1劣化係数を算出し、前記第2劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第2劣化係数を算出し、前記第3劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第3劣化係数を算出し、
前記劣化度算出部は、前記劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記第1劣化係数、前記第2劣化係数及び前記第3劣化係数を用いて、前記第1劣化度、前記第2劣化度及び前記第3劣化度を算出し、
前記調整部は、取得した劣化度を前記分配率に応じて第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度に分配し、算出した第1劣化度が、分配した第1劣化度に近付くように前記第1劣化特性算出モデルを調整し、算出した第2劣化度が、分配した第2劣化度に近付くように前記第2劣化特性算出モデルを調整し、算出した第3劣化度が、分配した第3劣化度に近付くように前記第3劣化特性算出モデルを調整し、
前記調整部は、算出した前記第1劣化度、前記第2劣化度及び前記第3劣化度の合計が、取得した劣化度に近付くように前記分配率を調整する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の劣化特性の推定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電池の劣化度を推定する技術が研究開発されている。劣化度の推定には、電池の劣化特性を用いることが知られている。しかし、電池の劣化特性を作成するには、長期間の試験を要する。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1に示す電池の劣化診断方法は、電池の状態を収集し、電池の状態から電池の劣化によって変化する特性を測定し、特性と電池の状態との関係を示すモデルを作成し、モデルに基づいて計算される特性に関する推定値に基づいて電池の劣化を診断している。このように、特許文献1では、劣化特性なしで電池の劣化度を推定することを試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-169161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、劣化特性を算出しないため、劣化特性を用いた処理を行うことができない。他方で、劣化特性を得るためには長期間の試験を要する。
【0006】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたもので、電池の試験期間を短縮しつつ、劣化特性を算出することができる技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、試験に基づく電池の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを取得し、前記試験後の前記電池の稼動データを取得し、前記稼動データにおける前記電池の劣化度を取得し、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、少なくとも1つの劣化係数を算出し、前記電池の劣化度を算出するための劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記少なくとも1つの劣化係数を用いて、劣化度を算出し、算出した劣化度が、取得した劣化度に近付くように前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを調整し、調整した前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを用いて少なくとも1つの劣化特性を算出し、算出した前記少なくとも1つの劣化特性を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電池の試験期間を短縮しつつ、劣化特性を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態における情報処理システムの全体構成を示す図である。
図2】本開示の実施の形態における車両の構成の一例を示す図である。
図3】本開示の実施の形態におけるサーバの構成の一例を示す図である。
図4】本開示の実施の形態におけるサーバの劣化抑制処理について説明するための第1のフローチャートである。
図5】本開示の実施の形態におけるサーバの劣化抑制処理について説明するための第2のフローチャートである。
図6】本実施の形態における稼動履歴記憶部に記憶される稼動履歴の一例を示す図である。
図7】本実施の形態における第1劣化特性の一例を示す図である。
図8】本実施の形態における第2劣化特性及び第3劣化特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
従来、電池の劣化特性を作成するためには、電池の保存、充電及び放電を様々な環境で実施する試験が必要であった。しかしながら、電池の劣化特性を作成するための試験には、長い時間と特別な試験装置とが必要となる。したがって、種々の電池の劣化特性を作成するためには長い時間がかかるとともに、多くのコストがかかる。ここで、電池の劣化特性とは電池の使用条件に応じた劣化速度であり、劣化特性を応用することで、劣化の進行を抑えた充放電制御などの処理が可能になる。
【0011】
上記の従来技術では、実験などで予め電池電圧と温度とに対する劣化定数(劣化特性の一例)を求めることなく、実際の製品の稼動履歴と特性とから電池の劣化を診断している。そのため、上記従来の技術では、電池の劣化を正確に推定することが困難である場合がある。
【0012】
以上の課題を解決するために、本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、試験に基づく電池の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを取得し、前記試験後の前記電池の稼動データを取得し、前記稼動データにおける前記電池の劣化度を取得し、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、少なくとも1つの劣化係数を算出し、前記電池の劣化度を算出するための劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記少なくとも1つの劣化係数を用いて、劣化度を算出し、算出した劣化度が、取得した劣化度に近付くように前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを調整し、調整した前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを用いて少なくとも1つの劣化特性を算出し、算出した前記少なくとも1つの劣化特性を出力する。
【0013】
この構成によれば、試験後の電池を実際に稼動させることにより得られる稼動データを用いて少なくとも1つの劣化特性算出モデルが調整されるので、電池の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを作成するための試験期間を短縮しつつ、劣化特性を算出することができる。その結果、例えば、算出された劣化特性を用いて電池の充電及び放電を制御することができ、電池の劣化を抑制することができる。また、算出された劣化特性を用いて劣化度が推定されてもよい。
【0014】
また、上記の情報処理方法において、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、保存劣化に対応する第1劣化特性算出モデルと、充電劣化に対応する第2劣化特性算出モデルと、放電劣化に対応する第3劣化特性算出モデルとを含み、前記劣化度を、前記保存劣化に対応する第1劣化度と、前記充電劣化に対応する第2劣化度と、前記放電劣化に対応する第3劣化度とに分配するための分配率が初期設定されており、前記少なくとも1つの劣化係数の算出において、前記第1劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第1劣化係数が算出され、前記第2劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第2劣化係数が算出され、前記第3劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、第3劣化係数が算出され、前記劣化度の算出において、前記劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記第1劣化係数、前記第2劣化係数及び前記第3劣化係数を用いて、前記第1劣化度、前記第2劣化度及び前記第3劣化度が算出され、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整において、取得した劣化度を前記分配率に応じて第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度に分配し、算出した第1劣化度が、分配した第1劣化度に近付くように前記第1劣化特性算出モデルが調整され、算出した第2劣化度が、分配した第2劣化度に近付くように前記第2劣化特性算出モデルが調整され、算出した第3劣化度が、分配した第3劣化度に近付くように前記第3劣化特性算出モデルが調整され、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整において、算出した前記第1劣化度、前記第2劣化度及び前記第3劣化度の合計が、取得した劣化度に近付くように前記分配率が調整されてもよい。
【0015】
電池の劣化度は、保存劣化に対応する第1劣化度と、充電劣化に対応する第2劣化度と、放電劣化に対応する第3劣化度との合計により表すことが可能である。そのため、保存、充電及び放電のそれぞれが劣化に与える影響に応じて分配率が調整され、取得された劣化度が分配率に応じて第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度に分配される。そして、算出された第1劣化度が、分配された第1劣化度に近付くように第1劣化特性算出モデルが調整され、算出された第2劣化度が、分配された第2劣化度に近付くように第2劣化特性算出モデルが調整され、算出された第3劣化度が、分配された第3劣化度に近付くように第3劣化特性算出モデルが調整される。これにより、保存、充電及び放電のそれぞれが劣化に与える影響を考慮して、保存劣化に対応する第1劣化特性算出モデル、充電劣化に対応する第2劣化特性算出モデル、及び放電劣化に対応する第3劣化特性算出モデルが調整されるので、電池の保存、充電及び放電のそれぞれの劣化特性に応じた第1劣化特性、第2劣化特性及び第3劣化特性を算出することができる。したがって、算出される劣化特性の正確性又は精度を向上させることができる。
【0016】
また、上記の情報処理方法において、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、パラメタを有し、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整において、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの前記パラメタが調整され、前記劣化特性の算出において、前記劣化特性は、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルの調整後の前記パラメタを用いて算出されてもよい。
【0017】
この構成によれば、電池の劣化特性に関わるパラメタが調整されることにより、少なくとも1つの劣化特性算出モデルを容易に調整することができる。
【0018】
また、上記の情報処理方法において、さらに、前記パラメタには調整可能範囲が設定されており、前記パラメタの調整において、前記パラメタは、前記調整可能範囲内で調整されてもよい。
【0019】
この構成によれば、パラメタの調整範囲を予め制限することができ、パラメタの過学習を防止することができる。
【0020】
また、上記の情報処理方法において、前記稼動データの取得において、前記稼動データは、前記少なくとも1つの劣化特性を用いた処理を行う機器から受信され、前記劣化特性の出力において、算出された前記少なくとも1つの劣化特性は、前記機器に送信されてもよい。
【0021】
この構成によれば、実際に使用されている機器から稼働データを取得することができる。そのため、機器の使用後に劣化特性を算出することができ、機器の使用時期を早期化できる。また、使用後に算出された劣化特性を機器における処理に用いることができる。なお、各機器の稼動データで上記のモデル群がそれぞれ調整され、各機器について劣化特性が最適化されてもよい。
【0022】
本開示の他の態様に係る情報処理装置は、試験に基づく電池の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを取得する劣化特性算出モデル取得部と、前記試験後の前記電池の稼動データを取得する稼動データ取得部と、前記稼動データにおける前記電池の劣化度を取得する劣化度取得部と、前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルに、前記稼動データを入力して、少なくとも1つの劣化係数を算出する劣化係数算出部と、前記電池の劣化度を算出するための劣化度算出モデルに、前記稼動データを入力して、算出した前記少なくとも1つの劣化係数を用いて、劣化度を算出する劣化度算出部と、算出した劣化度が、取得した劣化度に近付くように前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを調整する調整部と、調整した前記少なくとも1つの劣化特性算出モデルを用いて少なくとも1つの劣化特性を算出する劣化特性算出部と、算出した前記少なくとも1つの劣化特性を出力する出力部と、を備える。
【0023】
この構成によれば、試験後の電池を実際に稼動させることにより得られる稼動データを用いて少なくとも1つの劣化特性算出モデルが調整されるので、電池の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを作成するための試験期間を短縮しつつ、劣化特性を算出することができる。その結果、例えば、算出された劣化特性を用いて電池の充電及び放電を制御することができ、電池の劣化を抑制することができる。また、算出された劣化特性を用いて劣化度が推定されてもよい。
【0024】
以下添付図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を具体化した一例であって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0025】
(実施の形態)
図1は、本開示の実施の形態における情報処理システムの全体構成を示す図である。
【0026】
図1に示す情報処理システムは、車両1、サーバ2及び充電制御装置3を備える。
【0027】
車両1は、電池を用いて稼動する機器の一例である。車両1は、例えば、電動自動車、電動トラック、電動バイク又は電動自転車であり、蓄電池に充電された電力を電気モータへ供給することで移動する。なお、上記機器は、車両以外の移動体であってもよい。例えば、上記機器は、ドローン等の航空機、船舶又はロボットなどであってもよい。
【0028】
車両1は、サーバ2とネットワーク4を介して互いに通信可能に接続されている。ネットワーク4は、例えばインターネットである。
【0029】
車両1は、自身が搭載する電池の稼動データをサーバ2へ送信する。また、車両1は、稼動データに基づいて推定したSOH(State Of Health)をサーバ2へ送信する。
【0030】
サーバ2は、例えば、Webサーバである。サーバ2は、車両1から種々の情報を受信するとともに、充電制御装置3へ種々の情報を送信する。サーバ2は、車両1から受信した稼動データ及びSOHに基づいて、車両1が搭載する蓄電池の劣化特性を算出する。そして、サーバ2は、算出した劣化特性を充電制御装置3へ送信する。
【0031】
充電制御装置3は、車両1への充電を制御する。充電制御装置3は、サーバ2から受信した劣化特性に基づいて、車両1の充電計画を作成する。充電制御装置3は、車両1を充電する充電器(不図示)に設けられている。充電器は、充電制御装置3によって作成された充電計画に従って車両1を充電する。なお、車両1が充電制御装置3の機能を備えてもよいし、サーバ2が充電制御装置3の機能を備えてもよい。
【0032】
図2は、本開示の実施の形態における車両の構成の一例を示す図である。
【0033】
図2に示す車両1は、運転操作部11、駆動部12、蓄電池13、メモリ14、プロセッサ15及び通信部16を備える。
【0034】
運転操作部11は、運転者による車両1の運転操作を受け付ける。運転操作部11は、例えば、ハンドル、シフトレバー、アクセルペダル及びブレーキペダルなどを含む。なお、車両1が自動運転車である場合は、運転操作部11の代わりに自動運転システムが運転を制御する。
【0035】
駆動部12は、例えば、インバータ、電気モータ及びトランスミッションであり、運転制御部151による制御に従って、車両1を移動させる。
【0036】
蓄電池13は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、充電により電力を蓄えるとともに、放電により電力を駆動部12へ供給する。蓄電池13は、電池の一例である。
【0037】
メモリ14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の各種情報を記憶可能な記憶装置である。メモリ14は、蓄電池13の稼動履歴を記憶する。
【0038】
プロセッサ15は、例えば、中央演算処理装置(CPU)である。プロセッサ15により、運転制御部151、稼動データ取得部152及びSOH推定部153が実現される。
【0039】
運転制御部151は、運転操作部11による運転者の運転操作に応じて駆動部12を制御し、車両1を移動させる。
【0040】
稼動データ取得部152は、蓄電池13の稼動データを取得する。稼動データは、蓄電池13のSOC(State of Charge)、温度及び電流値を含む。SOCは、蓄電池13の充電率を表す指標である。蓄電池13のSOCは、(残容量[Ah]/満充電容量[Ah])*100により表される。蓄電池13の温度は、蓄電池13に設けられた温度センサ(不図示)により計測される。蓄電池13の電流値は、蓄電池13に設けられた計測器(不図示)により計測される。稼動データ取得部152は、蓄電池13のSOC、温度及び電流値を含む稼動データを通信部16へ出力する。
【0041】
SOH推定部153は、稼動データ取得部152によって取得された稼動データに基づいてSOHを推定する。SOHは、蓄電池13の健全性を表す指標である。蓄電池13のSOHは、(劣化時(現在)の満充電容量[Ah]/初期の満充電容量[Ah])*100により表される。SOH推定部153は、推定したSOHを通信部16へ出力する。
【0042】
通信部16は、稼動データ取得部152によって取得された稼動データをサーバ2へ送信する。また、通信部16は、SOH推定部153によって推定されたSOHをサーバ2へ送信する。通信部16は、定期的に稼動データ及びSOHをサーバ2へ送信する。通信部16は、例えば10分毎に稼動データ及びSOHをサーバ2へ送信する。稼動データ及びSOHは、個別に送信されてもよいし、一緒に送信されてもよい。
【0043】
図3は、本開示の実施の形態におけるサーバの構成の一例を示す図である。
【0044】
図3に示すサーバ2は、通信部21、プロセッサ22及びメモリ23を備える。
【0045】
通信部21は、試験後の蓄電池13の稼動データを取得する。通信部21は、車両1によって送信された試験後の蓄電池13の稼動データを受信する。稼動データは、少なくとも1つの劣化特性を用いた処理を行う機器から受信される。少なくとも1つの劣化特性を用いた処理を行う機器は、例えば、車両1である。通信部21は、車両1によって送信された試験後の蓄電池13のSOHを受信する。
【0046】
メモリ23は、例えば、RAM、HDD(Hard Disk Drive)、SSD又はフラッシュメモリ等の各種情報を記憶可能な記憶装置である。メモリ23により、劣化特性算出モデル記憶部231、劣化度算出モデル記憶部232、稼動履歴記憶部233及びパラメタ可動範囲記憶部234が実現される。
【0047】
劣化特性算出モデル記憶部231は、試験に基づく蓄電池(電池)13の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを予め記憶する。少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、蓄電池13を所定期間試験することにより作成される。所定期間は、例えば、2~3ヶ月間の短い期間である。少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、少なくとも1つの劣化係数を算出するための関数である。劣化係数は、劣化速度を表している。少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、パラメタを有する。
【0048】
少なくとも1つの劣化特性算出モデルは、保存劣化に対応する第1劣化特性算出モデルと、充電劣化に対応する第2劣化特性算出モデルと、放電劣化に対応する第3劣化特性算出モデルとを含む。
【0049】
第1劣化特性算出モデルは、保存劣化に対応する第1劣化係数kを算出するための関数である。第1劣化特性算出モデルは、蓄電池13の保存時における劣化特性の分布形状を関数で定義したものである。稼動データに含まれる温度及びSOCが第1劣化特性算出モデルに入力されることにより、第1劣化係数kが算出される。第1劣化係数kは、蓄電池13の保存時における劣化速度を表している。
【0050】
第2劣化特性算出モデルは、充電劣化に対応する第2劣化係数kを算出するための関数である。第2劣化特性算出モデルは、蓄電池13の充電時における劣化特性の分布形状を関数で定義したものである。稼動データに含まれる電流値及びSOCが第2劣化特性算出モデルに入力されることにより、第2劣化係数kが算出される。第2劣化係数kは、蓄電池13の充電時における劣化速度を表している。
【0051】
第3劣化特性算出モデルは、放電劣化に対応する第3劣化係数kを算出するための関数である。第3劣化特性算出モデルは、蓄電池13の放電時における劣化特性の分布形状を関数で定義したものである。稼動データに含まれる電流値及びSOCが第3劣化特性算出モデルに入力されることにより、第3劣化係数kが算出される。第3劣化係数kは、蓄電池13の放電時における劣化速度を表している。
【0052】
劣化度算出モデル記憶部232は、蓄電池13の劣化度を算出するための劣化度算出モデルを予め記憶する。
【0053】
なお、本実施の形態における劣化度は、蓄電池13が初期状態からどれだけ劣化したかを表す。すなわち、劣化度は、蓄電池13のSOHの初期値からの変化量(ΔSOH)を表す。
【0054】
劣化度算出モデルは、蓄電池13の劣化度を算出するための関数である。劣化度算出モデルは、保存劣化に対応する第1劣化度を算出するための第1劣化度算出モデルと、充電劣化に対応する第2劣化度を算出するための第2劣化度算出モデルと、放電劣化に対応する第3劣化度を算出するための第3劣化度算出モデルとを含む。
【0055】
稼動履歴記憶部233は、通信部21によって受信された稼動データ及びSOHを稼動履歴として記憶する。
【0056】
パラメタ可動範囲記憶部234は、少なくとも1つの劣化特性算出モデルのパラメタの調整可能範囲を予め記憶している。パラメタ可動範囲記憶部234は、第1劣化特性算出モデルの少なくとも1つのパラメタの調整可能範囲と、第2劣化特性算出モデルの少なくとも1つのパラメタの調整可能範囲と、第3劣化特性算出モデルの少なくとも1つのパラメタの調整可能範囲とを予め記憶している。
【0057】
プロセッサ22は、例えば、CPUである。プロセッサ22により、劣化特性算出モデル取得部221、劣化係数算出部222、劣化度取得部223、劣化度算出部224、モデル調整部225、劣化特性算出部226及び劣化特性出力部227が実現される。
【0058】
劣化特性算出モデル取得部221は、試験に基づく蓄電池(電池)13の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを取得する。劣化特性算出モデル取得部221は、蓄電池13の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを劣化特性算出モデル記憶部231から取得する。劣化特性算出モデル取得部221は、劣化特性算出モデル記憶部231に記憶されている第1劣化特性算出モデル、第2劣化特性算出モデル及び第3劣化特性算出モデルを取得する。
【0059】
劣化係数算出部222は、少なくとも1つの劣化特性算出モデルに、稼動データを入力して、少なくとも1つの劣化係数を算出する。劣化係数算出部222は、第1劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる温度及びSOCを入力して、第1劣化係数kを算出する。劣化係数算出部222は、第2劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、第2劣化係数kを算出する。劣化係数算出部222は、第3劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、第3劣化係数kを算出する。
【0060】
劣化度取得部223は、SOHの初期値(100%)から、車両1から取得したSOHの現在値SOHnowを減算したΔSOH(=100-SOHnow)を算出する。これにより、劣化度取得部223は、稼動データにおける蓄電池13の劣化度を取得する。
【0061】
劣化度算出部224は、蓄電池13の劣化度を算出するための劣化度算出モデルに、稼動データを入力して、劣化係数算出部222によって算出された少なくとも1つの劣化係数を用いて、劣化度ΔSOHを算出する。劣化度算出部224は、劣化度算出モデル記憶部232から劣化度算出モデルを取得する。劣化度算出モデルは、保存劣化に対応する第1劣化度ΔSOHを算出するための第1劣化度算出モデルと、充電劣化に対応する第2劣化度ΔSOHを算出するための第2劣化度算出モデルと、放電劣化に対応する第3劣化度ΔSOHを算出するための第3劣化度算出モデルとを含む。蓄電池13の劣化度ΔSOHは、第1劣化度ΔSOHと、第2劣化度ΔSOHと、第3劣化度ΔSOHとを加算することにより算出される。
【0062】
ここで、劣化度ΔSOHは、蓄電池13が初期状態からどれだけ劣化したかを表し、蓄電池13のSOHの初期状態からの変化量を表す。第1劣化度ΔSOHは、保存劣化に対応するSOHの初期状態からの変化量を表し、第2劣化度ΔSOHは、充電劣化に対応するSOHの初期状態からの変化量を表し、第3劣化度ΔSOHは、放電劣化に対応するSOHの初期状態からの変化量を表す。
【0063】
また、劣化度を、保存劣化に対応する第1劣化度と、充電劣化に対応する第2劣化度と、放電劣化に対応する第3劣化度とに分配するための分配率が初期設定されている。劣化度算出部224は、劣化度算出モデルに、稼動データを入力して、算出した第1劣化係数k、第2劣化係数k及び第3劣化係数kを用いて、第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度を算出する。
【0064】
モデル調整部225は、算出した劣化度が、取得した劣化度に近付くように少なくとも1つの劣化特性算出モデルを調整する。モデル調整部225は、少なくとも1つの劣化特性算出モデルのパラメタを調整する。モデル調整部225は、第1劣化特性算出モデル、第2劣化特性算出モデル及び第3劣化特性算出モデルのそれぞれのパラメタを調整する。パラメタには、調整可能範囲が設定されている。モデル調整部225は、パラメタ可動範囲記憶部234に記憶されている調整可能範囲内でパラメタを調整する。例えば、上限値及び下限値が調整可能範囲として設定されており、調整したパラメタが上限値又は下限値を超えた場合、モデル調整部225は、パラメタを上限値又は下限値に引き戻す。
【0065】
また、モデル調整部225は、取得した劣化度を分配率に応じて第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度に分配する。モデル調整部225は、算出した第1劣化度が、分配した第1劣化度に近付くように第1劣化特性算出モデルを調整し、算出した第2劣化度が、分配した第2劣化度に近付くように第2劣化特性算出モデルを調整し、算出した第3劣化度が、分配した第3劣化度に近付くように第3劣化特性算出モデルを調整する。さらに、モデル調整部225は、算出した第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度の合計が、取得した劣化度に近付くように分配率を調整する。
【0066】
すなわち、モデル調整部225は、取得した劣化度を分配率に応じて第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度の3つに分配する。なお、第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度の分配率の初期設定値は、1:1:1である。例えば、取得した劣化度が1.2である場合、第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度は、それぞれ0.4である。そして、モデル調整部225は、第1劣化度算出モデルにより算出される劣化度が、分配した第1劣化度に近付くように、第1劣化特性算出モデルのパラメタを調整する。また、モデル調整部225は、第2劣化度算出モデルにより算出される劣化度が、分配した第2劣化度に近付くように、第2劣化特性算出モデルのパラメタを調整する。また、モデル調整部225は、第3劣化度算出モデルにより算出される劣化度が、分配した第3劣化度に近付くように、第3劣化特性算出モデルのパラメタを調整する。このとき、モデル調整部225は、重回帰分析により、第1劣化特性算出モデル、第2劣化特性算出モデル及び第3劣化特性算出モデルのパラメタを調整する。
【0067】
そして、劣化度算出部224は、パラメタが調整された第1劣化特性算出モデルにより算出される第1劣化係数と、稼動データとを、第1劣化度算出モデルに代入することにより、第1劣化度を算出する。また、劣化度算出部224は、パラメタが調整された第2劣化特性算出モデルにより算出される第2劣化係数と、稼動データとを、第2劣化度算出モデルに代入することにより、第2劣化度を算出する。また、劣化度算出部224は、パラメタが調整された第3劣化特性算出モデルにより算出される第3劣化係数と、稼動データとを、第3劣化度算出モデルに代入することにより、第3劣化度を算出する。そして、モデル調整部225は、算出された第1劣化度と、算出された第2劣化度と、算出された第3劣化度との比率に分配率を調整する。
【0068】
例えば、算出された第1劣化度が0.1であり、算出された第2劣化度が0.02であり、算出された第3劣化度が0.04である場合、第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度の分配率は、10:2:4に調整される。取得した劣化度が1.2である場合、第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度のそれぞれには、0.75、0.15及び0.3が割り当てられる。
【0069】
その後、第1劣化度、第2劣化度及び第3劣化度が収束するまで、第1劣化特性算出モデル、第2劣化特性算出モデル及び第3劣化特性算出モデルのパラメタが調整される処理と、分配率が調整される処理とが繰り返し行われる。
【0070】
劣化特性算出部226は、モデル調整部225によって調整された少なくとも1つの劣化特性算出モデルを用いて少なくとも1つの劣化特性を算出する。劣化特性は、条件と、劣化係数とを対応付けた情報である。劣化特性算出部226は、モデル調整部225によって調整された第1劣化特性算出モデルを用いて第1劣化特性を算出し、モデル調整部225によって調整された第2劣化特性算出モデルを用いて第2劣化特性を算出し、モデル調整部225によって調整された第3劣化特性算出モデルを用いて第3劣化特性を算出する。第1劣化特性の条件は、温度及びSOCであり、第2劣化特性及び第3劣化特性の条件は、温度、SOC及び電流値(Cレート)である。
【0071】
劣化特性出力部227は、劣化特性算出部226によって算出された少なくとも1つの劣化特性を出力する。劣化特性出力部227は、通信部21を介して、劣化特性算出部226によって算出された少なくとも1つの劣化特性を充電制御装置3へ送信する。算出された少なくとも1つの劣化特性は、少なくとも1つの劣化特性を用いた処理を行う機器に送信される。少なくとも1つの劣化特性を用いた処理を行う機器は、例えば、充電制御装置3である。
【0072】
なお、本実施の形態では、車両1においてSOHが推定されているが、本開示は特にこれに限定されない。サーバ2のプロセッサ22がSOH推定部を備えてもよい。この場合、サーバ2のSOH推定部は、通信部21によって受信された稼動データに基づいて試験後の蓄電池13のSOHを推定してもよい。
【0073】
続いて、本開示の実施の形態におけるサーバ2の劣化抑制処理について説明する。
【0074】
図4は、本開示の実施の形態におけるサーバの劣化抑制処理について説明するための第1のフローチャートであり、図5は、本開示の実施の形態におけるサーバの劣化抑制処理について説明するための第2のフローチャートである。
【0075】
まず、ステップS1において、劣化特性算出モデル取得部221は、保存劣化に対応する第1劣化特性算出モデル、充電劣化に対応する第2劣化特性算出モデル、及び放電劣化に対応する第3劣化特性算出モデルを劣化特性算出モデル記憶部231から取得する。
【0076】
次に、ステップS2において、通信部21は、車両1によって送信された試験後の蓄電池13の稼動データを受信する。
【0077】
次に、ステップS3において、通信部21は、取得した稼動データを稼動履歴記憶部233に記憶する。
【0078】
図6は、本実施の形態における稼動履歴記憶部に記憶される稼動履歴の一例を示す図である。
【0079】
図6に示すように稼動履歴記憶部233は、車両を識別するための車両IDと、稼動データを取得した時刻と、電流値と、温度と、SOCとを対応付けて記憶する。車両ID、時刻、電流値、温度及びSOCは、車両1から取得した稼動データに含まれる。
【0080】
図4に戻って、次に、ステップS4において、通信部21は、車両1によって送信された試験後の蓄電池13の現在のSOHを受信する。
【0081】
次に、ステップS5において、通信部21は、取得した現在のSOHを稼動履歴記憶部233に記憶する。
【0082】
なお、本実施の形態では、通信部21は、車両1から稼動データ及びSOHを受信しているが、本開示は特にこれに限定されない。通信部21は、車両1の蓄電池13と同じ種類の蓄電池を搭載した他の機器から稼動データ及びSOHを受信してもよい。これにより、稼動データ及びSOHのデータ数を増加させることができ、少なくとも1つの劣化特性算出モデルをより早く且つより高い精度で調整することができる。
【0083】
次に、ステップS6において、劣化度取得部223は、今回取得したSOHが前回取得したSOHから変化したか否かを判断する。ここで、今回取得したSOHが前回取得したSOHから変化していないと判断された場合(ステップS6でNO)、ステップS1に処理が戻る。
【0084】
一方、今回取得したSOHが前回取得したSOHから変化したと判断された場合(ステップS6でYES)、ステップS7において、劣化度取得部223は、蓄電池13の劣化度ΔSOHを取得する。すなわち、劣化度取得部223は、SOHの初期状態からの変化量である劣化度ΔSOHを取得する。劣化度取得部223は、SOHの初期値(100%)から、今回取得したSOHの現在値SOHnowを減算したΔSOH(=100-SOHnow)を算出する。
【0085】
次に、ステップS8において、劣化度算出部224は、ΔSOHを、保存劣化に対応するSOHの初期状態からの劣化度ΔSOH、充電劣化に対応するSOHの初期状態からの劣化度ΔSOH、及び放電劣化に対応するSOHの初期状態からの劣化度ΔSOHに分配するための分配率の初期値を設定する。なお、分配率の初期値は、1:1:1である。
【0086】
次に、ステップS9において、劣化度算出部224は、分配率に基づいてΔSOHを分配する。例えば、ΔSOHが1.2であり、ΔSOH、ΔSOH及びΔSOHの分配率が1:1:1である場合、ΔSOHは、0.4ずつに分配される。
【0087】
次に、ステップS10において、劣化係数算出部222は、第1劣化係数k、第2劣化係数k及び第3劣化係数kを算出する。このとき、劣化係数算出部222は、第1劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる温度及びSOCを入力して、第1劣化係数kを算出する。劣化係数算出部222は、第2劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、第2劣化係数kを算出する。劣化係数算出部222は、第3劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、第3劣化係数kを算出する。
【0088】
次に、ステップS11において、劣化度算出部224は、第1劣化度算出モデル、第2劣化度算出モデル及び第3劣化度算出モデルを劣化度算出モデル記憶部232から取得する。また、劣化度算出部224は、最初にSOHが取得された時点から、今回の変化したSOHが取得された時点までの稼動データを抽出する。劣化度算出部224は、抽出した稼動データを劣化度の算出に用いる。
【0089】
次に、ステップS12において、劣化度算出部224は、第1劣化度算出モデルに、稼動データに含まれる温度及びSOCを入力して、算出した第1劣化係数kを用いて、ΔSOHを算出し、第2劣化度算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、算出した第2劣化係数kを用いて、ΔSOHを算出し、第3劣化度算出モデルに、稼動データに含まれる電量値及びSOCを入力して、算出した第3劣化係数kを用いて、ΔSOHを算出する。
【0090】
次に、ステップS13において、モデル調整部225は、劣化度算出部224によって算出されたΔSOHが、分配されたΔSOHに近付くように、第1劣化特性算出モデルのパラメタを調整し、劣化度算出部224によって算出されたΔSOHが、分配されたΔSOHに近付くように、第2劣化特性算出モデルのパラメタを調整し、劣化度算出部224によって算出されたΔSOHが、分配されたΔSOHに近付くように、第3劣化特性算出モデルのパラメタを調整する。
【0091】
次に、ステップS14において、劣化係数算出部222は、第1劣化係数k、第2劣化係数k及び第3劣化係数kを算出する。このとき、劣化係数算出部222は、パラメタが調整された第1劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる温度及びSOCを入力して、第1劣化係数kを算出する。劣化係数算出部222は、パラメタが調整された第2劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、第2劣化係数kを算出する。劣化係数算出部222は、パラメタが調整された第3劣化特性算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、第3劣化係数kを算出する。
【0092】
次に、ステップS15において、劣化度算出部224は、第1劣化度算出モデルに、稼動データに含まれる温度及びSOCを入力して、算出した第1劣化係数kを用いて、ΔSOHを算出し、第2劣化度算出モデルに、稼動データに含まれる電流値及びSOCを入力して、算出した第2劣化係数kを用いて、ΔSOHを算出し、第3劣化度算出モデルに、稼動データに含まれる電量値及びSOCを入力して、算出した第3劣化係数kを用いて、ΔSOHを算出する。
【0093】
次に、ステップS16において、モデル調整部225は、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHが収束したか否かを判断する。このとき、モデル調整部225は、算出されたΔSOHとΔSOHとΔSOHとの合計が、取得した劣化度ΔSOHと同じである場合、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHが収束したと判断する。
【0094】
なお、ΔSOHとΔSOHとΔSOHとの合計が、取得した劣化度ΔSOHと必ずしも同じである必要はない。モデル調整部225は、ΔSOHとΔSOHとΔSOHとの合計と、取得した劣化度ΔSOHとの差分が閾値以下である場合、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHが収束したと判断してもよい。また、モデル調整部225は、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHが変化しなくなった場合、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHが収束したと判断してもよい。
【0095】
ここで、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHが収束していないと判断された場合(ステップS16でNO)、ステップS17において、モデル調整部225は、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHの比率に分配率を調整する。例えば、算出されたΔSOHが0.1であり、算出されたΔSOHが0.02であり、算出されたΔSOHが0.04である場合、モデル調整部225は、10:2:4に分配率を調整する。その後、処理はステップS9に戻る。
【0096】
一方、算出されたΔSOH、ΔSOH及びΔSOHが収束していると判断された場合(ステップS16でYES)、ステップS18において、劣化特性算出部226は、モデル調整部225によって調整された第1劣化特性算出モデル、第2劣化特性算出モデル及び第3劣化特性算出モデルを用いて第1劣化特性、第2劣化特性及び第3劣化特性を算出する。
【0097】
図7は、本実施の形態における第1劣化特性の一例を示す図である。
【0098】
劣化特性算出部226は、モデル調整部225によって調整された第1劣化特性算出モデルを用いて、保存劣化に対応する第1劣化特性を算出する。第1劣化特性は、条件と、劣化係数とを対応付けた情報である。第1劣化特性の条件は、SOC及び温度である。第1劣化特性は、SOC及び温度の条件に対応する劣化係数を表している。
【0099】
図8は、本実施の形態における第2劣化特性及び第3劣化特性の一例を示す図である。
【0100】
劣化特性算出部226は、モデル調整部225によって調整された第2劣化特性算出モデルを用いて、充電劣化に対応する第2劣化特性を算出する。また、劣化特性算出部226は、モデル調整部225によって調整された第3劣化特性算出モデルを用いて、放電劣化に対応する第3劣化特性を算出する。第2劣化特性及び第3劣化特性は、条件と、劣化係数とを対応付けた情報である。第2劣化特性及び第3劣化特性の条件は、SOC、温度及び電流値である。なお、第2劣化特性の条件と第3劣化特性の条件とは同じである。第2劣化特性及び第3劣化特性は、SOC、温度及び電流値の条件に対応する劣化係数を表している。
【0101】
図5に戻って、次に、ステップS19において、劣化特性出力部227は、劣化特性算出部226によって算出された第1劣化特性、第2劣化特性及び第3劣化特性を出力する。劣化特性出力部227は、通信部21を介して、劣化特性算出部226によって算出された第1劣化特性、第2劣化特性及び第3劣化特性を充電制御装置3へ送信する。
【0102】
充電制御装置3は、サーバ2から受信した第1劣化特性、第2劣化特性及び第3劣化特性に基づいて、車両1の充電計画を作成する。充電制御装置3は、車両1を充電する充電器に設けられている。充電器は、充電制御装置3によって作成された充電計画に従って車両1を充電する。
【0103】
このように、試験後の蓄電池13を実際に稼動させることにより得られる稼動データを用いて少なくとも1つの劣化特性算出モデルが調整されるので、蓄電池13の少なくとも1つの劣化特性算出モデルを作成するための試験期間を短縮しつつ、劣化特性を算出することができる。その結果、例えば、算出された劣化特性を用いて蓄電池13の充電及び放電を制御することができ、蓄電池13の劣化を抑制することができる。
【0104】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。また、プログラムを記録媒体に記録して移送することにより、又はプログラムをネットワークを経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムによりプログラムが実施されてもよい。
【0105】
本開示の実施の形態に係る装置の機能の一部又は全ては典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0106】
また、本開示の実施の形態に係る装置の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0107】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。
【0108】
また、上記フローチャートに示す各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、同様の効果が得られる範囲で上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示にかかる技術は、電池の試験期間を短縮しつつ、劣化特性を算出することができるので、電池の劣化特性を推定する技術に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 車両
2 サーバ
3 充電制御装置
4 ネットワーク
11 運転操作部
12 駆動部
13 蓄電池
14,23 メモリ
15,22 プロセッサ
16,21 通信部
151 運転制御部
152 稼動データ取得部
153 SOH推定部
221 劣化特性算出モデル取得部
222 劣化係数算出部
223 劣化度取得部
224 劣化度算出部
225 モデル調整部
226 劣化特性算出部
227 劣化特性出力部
231 劣化特性算出モデル記憶部
232 劣化度算出モデル記憶部
233 稼動履歴記憶部
234 パラメタ可動範囲記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8