(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
B25B 7/12 20060101AFI20240712BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B25B7/12
F16L1/00 V
(21)【出願番号】P 2020194523
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 恭一
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 一清
(72)【発明者】
【氏名】中野 篤
(72)【発明者】
【氏名】中井 豪
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-103303(JP,A)
【文献】特開2018-144185(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118930(WO,A1)
【文献】実公昭11-014517(JP,Y1)
【文献】実開昭61-201776(JP,U)
【文献】特開昭51-061100(JP,A)
【文献】実開昭63-151276(JP,U)
【文献】特開2020-116718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B7/00-7/22
B25B25/00-29/02
B25B33/00
F16L1/00
F16L23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の流体用継手を互いに接近または離間させる治具であって、
第1支持軸を支点として回動する一対の第1アーム部と、
第2支持軸を支点として回動する一対の第2アーム部と、
前記各第1アーム部の先端部に対し前記各第2アーム部の基端部を軸支する連結部と、
前記各第2アーム部の先端部に設けられ、前記流体用継手をそれぞれ支持するヘッド部と、
前記各第2アーム部の先端部に、前記ヘッド部を締結する締結具と、を備え、
前記ヘッド部は、前記締結具の着脱を通じて、第2のヘッド部と付替可能であり、
前記各第1アーム部の長手方向に見て、前記各第1アーム部の基端部から前記第1支持軸までの寸法をL1とし、該第1支持軸から前記連結部までの寸法をL2とすると、
L1>L2 …(A)
の関係が成立し、
前記各第2アーム部の長手方向に見て、前記連結部から前記第2支持軸までの寸法をL3とし、該第2支持軸から前記ヘッド部までの寸法をL4とすると、
L3>L4 …(B)
の関係が成立
し、
前記第1支持軸の中心は、前記第2支持軸の中心と平行に延び、
前記締結具の締結方向は、前記第1支持軸及び第2支持軸の中心と直交するように延びる治具。
【請求項2】
請求項1に記載された治具において、
L2<L4 …(C)
の関係が成立する治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載された治具において、
前記各第1アーム部における前記第1支持軸よりも基端側の部位には、前記流体用継手間の接続部に装着されかつ該接続部の周方向に開閉するクランプ部材を挟持する凹部が設けられている治具。
【請求項4】
請求項3に記載された治具において、
前記凹部は、前記各第1アーム部の基端に比して、前記第1支持軸に近接して配置される治具。
【請求項5】
請求項1または2に記載された治具において、
前記第2のヘッド部は、前記流体用継手間の接続部に装着されかつ該接続部の周方向に開閉するクランプ部材を握持するとともに、該クランプ部材を前記周方向に締め付けるように構成されている治具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された治具において、
前記ヘッド部は、環状のシール部材を挟み込んだ状態で前記流体用継手を互いに接近させることで、該シール部材を介して前記流体用継手を相互に接続する治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の流体用継手(第1流体機器、第2流体機器)を接続するための治具が開示されている。この治具は、交差部まわりに回動する一対の柄と、各柄の先端に設けた加圧プレートと、を備えている。前記特許文献1に係る加圧プレートは、一対の柄の回動に伴って流体用継手を挟持することで、流体用継手を互いに接近させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されている治具は、交差部を支点とし、加圧プレートを作用点としたテコとして機能する。ここで、流体用継手に作用する荷重を高めるためには、各柄の持ち手側を長く設計し、支点から力点までの寸法を長くすることが考えられる。しかしながら、単に持ち手側を長くするだけでは、治具の大型化を招くため不都合である。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、治具の大型化を招くことなく、流体用継手に作用する荷重を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一対の流体用継手を互いに接近または離間させる治具に係る。この治具は、第1支持軸を支点として回動する一対の第1アーム部と、第2支持軸を支点として回動する一対の第2アーム部と、前記各第1アーム部の先端部に対し前記各第2アーム部の基端部を軸支する連結部と、前記各第2アーム部の先端部に設けられ、前記流体用継手をそれぞれ支持するヘッド部と、を備え、前記各第1アーム部の長手方向に見て、前記各第1アーム部の基端部から前記第1支持軸までの寸法をL1とし、該第1支持軸から前記連結部までの寸法をL2とすると、
L1>L2 …(A)
の関係が成立し、前記各第2アーム部の長手方向に見て、前記連結部から前記第2支持軸までの寸法をL3とし、該第2支持軸から前記ヘッド部までの寸法をL4とすると、
L3>L4 …(B)
の関係が成立する。
【0007】
この構成によれば、一対の第1アーム部は、その基端部を力点とし、第1支持軸を支点とし、その先端部を作用点としたテコとして動作する。前記(A)の関係が成立することで、力点に加えた荷重は、(L1/L2)倍に増幅された状態で、作用点から出力される。
【0008】
一方、一対の第2アーム部は、その基端部を力点とし、第2支持軸を支点とし、その先端部を作用点としたテコとして動作する。前記(B)の関係が成立することで、力点に加えた荷重は、(L3/L4)倍に増幅された状態で、作用点から出力される。
【0009】
ここで、第1アーム部の先端部に対して第2アーム部の基端部を軸支することで、第1アーム部の回動と連動するように第2アーム部を回動させることができる。その際、一対の第1アーム部において増幅された荷重は、一対の第2アーム部においてさらに増幅される。これにより、治具の大型化を招くことなく、流体用継手に作用する荷重を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、治具の大型化を招くことなく、流体用継手に作用する荷重を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る治具の構成を例示する斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る治具の構成を例示する正面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る治具の動作を例示する説明図である。
【
図4】
図4は、ヘッド部の構成を例示する三面図である。
【
図5】
図5は、グリップの構成を例示する正面図である。
【
図6】
図6は、グリップの動作を例示する説明図である。
【
図7】
図7は、第2のヘッド部の構成を例示する斜視図である。
【
図8】
図8は、第2のヘッド部の動作を例示する説明図である。
【
図9】
図9は、第3のヘッド部の構成を例示する斜視図である。
【
図10】
図10は、第3のヘッド部の動作を例示する説明図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る治具の構成を例示する斜視図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る治具の構成を例示する正面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る治具の動作を例示する説明図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係る治具の構成を例示する正面図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係る治具の動作を例示する説明図である。
【
図16】
図16は、凹部の変形例に係る治具の構成を例示する正面図である。
【
図17】
図17は、凹部の変形例に係る治具の動作を例示する説明図である。
【
図18】
図18は、流体用継手の構成を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明は、例示である。
【0013】
〈施工対象について〉
図18は、流体用継手の構成を例示する断面図である。また、
図19は、従来の治具の構成を例示する断面図である。
【0014】
本開示に係る治具は、一対の流体用継手1001,1002を施工対象とする。
図18に示すように、一対の流体用継手1001,1002は、それぞれ管状に形成される。一対の流体用継手1001,1002は、双方とも熱可塑性の合成樹脂であって、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂からなる。
【0015】
図18に示す例では、一方の流体用継手1001の開口端には、鍔状のフランジ1001aが形成される。他方の流体用継手1002の開口端にも、同様にフランジ1002aが形成される。各フランジ1001a,1002aには、後述のシール部材1003を嵌め入れるための溝(不図示)が形成される。
【0016】
一方の流体用継手1001と、他方の流体用継手1002とは、環状のシール部材1003を介して接続される。このシール部材1003は、双方とも熱可塑性の合成樹脂であって、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂からなる。シール部材1003は、一方のフランジ1001aと、他方のフランジ1002aと、を向い合わせた状態で、各フランジ1001a,1002aの溝に嵌め入れることができる(
図3も参照)。シール部材1003を嵌め入れることで、一方の流体用継手1001と、他方の流体用継手1002と、を液密状に接続することができる。なお、流体用継手1001,1002およびシール部材1003は、これに限定されるものではない。
【0017】
なお、一対の流体用継手1001,1002間の接続部には、該接続部の周方向(各流体用継手1001,1002の外周に沿う方向)に開閉するクランプ部材1004を装着することができる(
図6、
図8、
図17等も参照)。クランプ部材1004は、熱可塑性の合成樹脂であって、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂からなる。クランプ部材1004の構成は、図例には限定されない。
【0018】
ところで、流体用継手1001,1002を施工するときには、2つのフランジ1001a,1002aの間にシール部材1003を挟み込んだ状態で、流体用継手1001,1002を互いに接近させることになる。流体用継手1001,1002を接近させることで、各フランジ1001a,1002aにシール部材1003を嵌め入れることができる。
【0019】
しかしながら、シール部材1003の嵌め入れには高い荷重が要求されるため、人の手で施工するのは容易ではない。容易に施工するための器具として、
図19に示すような治具J0が知られている。
【0020】
図19に示すように、従来の治具J0は、支持軸512を支点として回動する一対のアーム部511と、アーム部511の先端部に設けたヘッド部504と、を備える。ここで、一対のアーム部511は、支持軸512にて交差する第1アーム511Aおよび第2アーム511Bからなる。また、各ヘッド部504は、上述した流体用継手1001,1002を支持することができる。
【0021】
施工に際しては、一対のアーム部511の基端側を握り持つすることで、アーム部511を回動させる。これにより、各ヘッド部504により支持された流体用継手1001,1002は、相互に接近することになる。
【0022】
従来の治具J0は、支持軸512を支点とし、かつヘッド部504を作用点としたテコとして機能する。すなわち、アーム部511の基端から支持軸512までの距離をLaとし、支持軸512からヘッド部504までの距離をLbとすると、アーム部511の基端に入力した荷重は、(La/Lb)倍に増幅されることになる。
【0023】
そのため、流体用継手1001,1002に作用する荷重を高めるためには、アーム部511の持ち手側を長く設計し、支点から力点までの寸法を長くすることが考えられる。しかしながら、単に持ち手側を長くするだけでは、治具の大型化を招くため不都合である。
【0024】
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、治具の大型化を招くことなく、流体用継手1001,1002に作用する荷重を高めることができる構成を創作するに至った。
【0025】
なお、本開示の用途は、一対の流体用継手1001,1002を互いに接近させることには限定されない。後述の第3実施形態に例示するように、一対の流体用継手1001,1002を互いに離間させるため(各継手からシール部材1003を引き抜く用途)に用いることもできる。
【0026】
以下、本開示の各実施形態を順番に説明する。
【0027】
〈第1実施形態〉
まず、本開示の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る治具の構成を例示する斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る治具の構成を例示する正面図である。
図3は、第1実施形態に係る治具の動作を例示する説明図である。
図4は、ヘッド部の構成を例示する三面図である。
【0028】
(基本構成)
以下、第1実施形態に係る治具を単に「治具」と呼称する場合がある。
【0029】
図1~
図3に示すように、治具J1は、一対の流体用継手1001,1002を互いに接近させるための器具である。具体的に、治具J1は、使用者によって握持されかつ第1のテコとして機能する第1アーム機構1と、第2のテコとして機能する第2アーム機構2と、第1アーム機構1および第2アーム機構2を相互に連結する連結部3と、第2アーム機構2の先端部に取り付けられるヘッド部4と、を備えている。
【0030】
なお、以下の説明では、
図1に示すように、治具J1の長手方向を「前後方向」と呼称し、治具J1の短手方向を「上下方向」と呼称し、治具J1の厚み方向を「左右方向」と呼称する。これらの呼称は、紙面上のレイアウトに基づき定義されたものであり、便宜上の呼称に過ぎない。
【0031】
また、以下の説明において、「先端側」とは、流体用継手1001,1002側、すなわち前後方向における前側に相当する。「基端側」とは、使用者の持ち手側、すなわち前後方向における後側に相当する。
【0032】
図1~
図3に示すように、第1アーム機構1は、一対の第1アーム部11と、第1支持軸12と、グリップ13と、凹部14と、を備える。
【0033】
一対の第1アーム部11は、第1支持軸12を支点として回動する。具体的に、一対の第1アーム部11は、上側に配置された第1アッパーアーム11Aと、下側に配置された第1ロアーアーム11Bと、からなり、第1支持軸12の中心O1まわりに回動することができる。
【0034】
詳しくは、第1アッパーアーム11Aおよび第1ロアーアーム11Bは、それぞれ長尺状に形成されている。第1実施形態において、第1アッパーアーム11Aおよび第1ロアーアーム11Bは、互いに交差することなく連結されている。
【0035】
また、第1アッパーアーム11Aおよび第1ロアーアーム11Bは、治具J1の閉じ状態(
図1、
図2、および、
図3の下段に示す状態)においては、略前後方向に沿って互いに平行に延びる。第1アッパーアーム11Aおよび第1ロアーアーム11Bは、治具J1の開き状態(
図3の上段に示す状態)においては、基端側が互いに離間するように、前後方向に対して傾斜して延びる。
【0036】
第1支持軸12は、一対の第1アーム部11を、互いに回動可能に連結する。具体的に、第1支持軸12は、第1アーム機構1において、該第1アーム機構1の長手方向(
図1の前後方向)における中途の部位に配置されている。
【0037】
詳しくは、第1支持軸12は、第1アーム機構1の長手方向においては、その長手方向の中央部よりも先端側に配置されている。また、第1支持軸12は、第1アーム機構1の短手方向(
図1の上下方向)においては、第1アッパーアーム11Aと、第1ロアーアーム11Bと、の間に配置される。第1支持軸12の中心O1は、第1アーム機構1の厚み方向(
図1の左右方向)に沿って延びる。
【0038】
グリップ13は、一対の第1アーム部11における第1支持軸12よりも基端側の部位によって構成される。グリップ13は、使用者によって握持される。凹部14については後述する。
【0039】
図1~
図3に示すように、第2アーム機構2は、一対の第2アーム部21と、第2支持軸22と、を備える。
【0040】
一対の第2アーム部21は、第2支持軸22を支点として回動する。具体的に、一対の第2アーム部21は、上側に配置された第2アッパーアーム21Aと、下側に配置された第2ロアーアーム21Bと、からなり、第2支持軸22の中心O2まわりに回動することができる。
【0041】
詳しくは、第2アッパーアーム21Aおよび第2ロアーアーム21Bは、それぞれ長尺状に形成されている。第1実施形態において、第2アッパーアーム21Aおよび第2ロアーアーム21Bは、互いに交差することなく連結されている。
【0042】
また、第2アッパーアーム21Aおよび第2ロアーアーム21Bは、治具J1の閉じ状態(
図1、
図2、および、
図3の下段に示す状態)においては、略前後方向に沿って互いに平行に延びる。第2アッパーアーム21Aおよび第2ロアーアーム21Bは、治具J1の開き状態(
図3の上段に示す状態)においては、基端側が互いに近接するように、前後方向に対して傾斜して延びる。
【0043】
第2支持軸22は、一対の第2アーム部21を、互いに回動可能に連結する。具体的に、第2支持軸22は、第2アーム機構2において、該第2アーム機構2の長手方向(
図1の前後方向)における中途の部位に配置されている。
【0044】
詳しくは、第2支持軸22は、第2アーム機構2の長手方向においては、その長手方向の中央部よりも先端側に配置されている。また、第2支持軸22は、第2アーム機構2の短手方向(
図1の上下方向)においては、第2アッパーアーム21Aと、第2ロアーアーム21Bと、の間に配置される。第2支持軸22の中心O2は、第2アーム機構2の厚み方向(
図1の左右方向)に沿って延びる。
【0045】
図1~
図3に示すように、連結部3は、一対の第1アーム部11の各先端部に対し、一対の第2アーム部21の各基端部を軸支する(回転可能に支持する)。このように軸支することで、第1アーム機構1と第2アーム機構2とが連結される。これにより、第2アーム機構2は、第1アーム機構1の動作に連動して動作するようになる。
【0046】
詳しくは、連結部3は、上下一対の部材として構成されている。連結部3のうちの一方は、第1アッパーアーム11Aの先端部に対し、第2アッパーアーム21Aの基端部を回転可能に支持する。連結部3のうちの他方は、第1ロアーアーム11Bの先端部に対し、第2ロアーアーム21Bの基端部を回転可能に支持する。
【0047】
図1~
図3に示すように、ヘッド部4は、一対の第2アーム部21のそれぞれの先端部に設けられる。各ヘッド部4は、一対の流体用継手1001,1002のうちの一方を支持する。
【0048】
詳しくは、ヘッド部4は、上下一対の部材として構成されている。ヘッド部4のうちの一方は、第2アッパーアーム21Aの先端部に取り付けられる。ヘッド部4のうちの他方は、第2ロアーアーム21Bの先端部に取り付けられる。ヘッド部4の取り付けは、ボルト等の締結具5を介して実現される。
【0049】
図4は、ヘッド部4の構成を例示する図である。
図4に示すように、ヘッド部4は、一対の第2アーム部21のうちの一方(具体的には、第2アッパーアーム21Aまたは第2ロアーアーム21Bの先端側)に締結される締結部41と、一対の流体用継手1001,1002のうちの一方を支持する支持部42と、を有する。
【0050】
締結部41には、締結具5を挿通するための挿通孔41aが設けられる。また、支持部42の先端は、各流体用継手1001,1002を挟み込むべく、二股に分かれている。各支持部42の内周面4aは、略円弧状にカーブしている。また、支持部42の内周面4aは、各流体用継手1001,1002のフランジ1001a,1002aよりも小径である。
【0051】
締結具5の着脱を通じて、ヘッド部4を着脱することができる。本開示に係る治具J1は、複数種のヘッド部4を付け替えることができる。複数種のヘッド部4には、基本的な形状こそ共通しているが支持部42の内径が異なるものと、支持部42自体の形状が相違するものと、が含まれる。
【0052】
このうち、支持部42の内径が異なるヘッド部4は、流体用継手1001,1002を接近させようとしたときに、流体用継手1001,1002の寸法に応じて使い分けるために用いられる。
【0053】
また、支持部42自体の形状が異なるヘッド部4は、流体用継手1001,1002の接近以外の用途に用いられる。この用途に関連した構成については後述する。
【0054】
(テコとしての動作について)
図2に示すように、第1アーム機構1は、グリップ13を力点とし、第1支持軸12を支点とし、一対の第1アーム部11の先端部、および、その先端部に設けられた連結部3を作用点とした第1のテコとして動作する。具体的に、各第1アーム部11の長手方向(
図1の前後方向)に見て、各第1アーム部11の基端部から第1支持軸12までの寸法をL1とし、該第1支持軸12から各第1アーム部11の先端部(特に、連結部3が設けられた部位)までの寸法をL2とすると、
L1>L2 …(1)
の関係が成立する。この場合、力点から入力された荷重は、(L1/L2)倍に変換された状態で、作用点(特に連結部3)から出力される。前記(1)の関係が成立することで、作用点から出力される荷重を増幅させることができる。なお、
図2等に示すように、第1アーム機構1における力点、支点および作用点は、前後方向において、基端側から力点、支点および作用点の順番で並んでいる。
【0055】
また、第2アーム機構2は、ヘッド部4と一体的に動作する。これにより、第2アーム機構2は、一対の第2アーム部21の基端部、および、その基端部に設けられた連結部3を力点とし、第2支持軸22を支点とし、一対の第2アーム部21の先端部、および、その先端部に設けられたヘッド部4を作用点とした第2のテコとして動作する。具体的に、各第2アーム部21の長手方向(
図1の前後方向)に見て、各第2アーム部21の基端(特に、連結部3が設けられた部位)から第2支持軸22までの寸法をL3とし、該第2支持軸22からヘッド部4までの寸法をL4とすると、
L3>L4 …(2)
の関係が成立する。この場合、力点(特に連結部3)に入力された荷重は、(L3/L4)倍に変換された状態で、作用点(特にヘッド部4)から出力される。前記(2)の関係が成立することで、作用点から出力される荷重を増幅することができる。なお、
図2等に示すように、第2アーム機構2における力点、支点および作用点は、前後方向において、基端側から力点、支点および作用点の順番で並んでいる。
【0056】
また、連結部3は、第1アーム機構1における作用点として機能するとともに、第2アーム機構2における力点として機能する。よって、第1アーム機構1において増幅された荷重によって第2アーム機構2を動作させるとともに、この第2アーム機構2において荷重をさらに増幅させることができる。第2アーム機構2において増幅された荷重は、ヘッド部4から出力される。
【0057】
第1アーム機構1と第2アーム機構2とが連結されることで、グリップ13を握持した(握り持った)ときに、ヘッド部4を互いに接近させることができる。
【0058】
具体的に、第1アーム機構1におけるグリップ13が握持されると、このグリップ13には、一対の第1アーム部11の各基端を互いに接近させる方向(
図1の矢印A1を参照)に荷重Finが作用する。この荷重Finにしたがって、一対の第1アーム部11は、第1支持軸12を支点として相対的に回動する。この回動に際して、荷重Finは、(L1/L2)倍に増幅される。
【0059】
第1アーム機構1において増幅された荷重は、連結部3を介して第2アーム機構2に入力される。これにより、一対の第2アーム部21には、各基端を互いに離間させる方向(
図1の矢印A2を参照)に荷重(具体的には、(L1/L2)倍に増幅された荷重Fin)が作用する。この荷重にしたがって、一対の第2アーム部21は、第2支持軸22を支点として相対的に回動する。この回動に際して、第2アーム機構2に入力された荷重は、(L3/L4)倍に増幅される。
【0060】
なお、
図2における寸法L4は、第2支持軸22から、支持部42の内周円(内周面4aに沿う円)の中心O3までの寸法に等しい(中心O3については、
図4を参照)。すなわち、寸法L4は、第2支持軸22から締結具5までの寸法と、締結具5から支持部42の内周円の中心O3までの寸法(
図4の両矢印Lcを参照)と、の和に相当する。
【0061】
第2アーム機構2において増幅された荷重は、締結具5を介してヘッド部4に入力される。これにより、ヘッド部4には、該ヘッド部4同士を互いに接近させる方向(
図1の矢印A3を参照)に荷重Foutが作用する。荷重Foutは、
Fout=(L3/L4)×(L1/L2)×Fin …(3)
の関係を満足する。
【0062】
施工に際しては、まず、
図3の上段に示すように治具J1を開き状態にする。そして、流体用継手1001,1002の間にシール部材1003を挟み込むとともに、両フランジ1001a、1002aに当接するようにヘッド部4を挿入する。
【0063】
次いで、グリップ13を握持する(握り持つ)ことで、治具J1を閉じ状態にする。
図3の下段に示すように、ヘッド部4は、シール部材1003を挟み込んだ状態で、流体用継手1001,1002を互いに接近させる。これにより、シール部材1003を介して流体用継手1001,1002を相互に接続することができる。
【0064】
以上説明したように、第1アーム部11の先端部に対して第2アーム部21の基端部を軸支することで、第1アーム部11の回動と連動するように、第2アーム部21を回動させることができる。その際、一対の第1アーム部11において増幅された荷重Finは、一対の第2アーム部21においてさらに増幅される。これにより、流体用継手1001,1002に作用する荷重を高めることができる。
【0065】
ところで、治具J1によって荷重を高めるためには、寸法L2と寸法L4をそれぞれ可能な限り短くすることが求められる。しかしながら、流体用継手1001,1002をより確実に支持するためには、寸法L4を過度に短くするのは望ましくない。
【0066】
そこで、治具J1は、以下の関係(4)を満足するように構成される。
【0067】
L2<L4 …(4)
【0068】
前記(4)の関係を満足することで、流体用継手1001,1002をより確実に支持しつつ、流体用継手1001,1002に作用する荷重を可能な限り高めることができるようになる。
【0069】
(クランプに係る構成について)
以下、グリップ13によるクランプに係る構成について説明する。
図5は、グリップの構成を例示する正面図である。また、
図6は、グリップの動作を例示する説明図である。
【0070】
前述のように、流体用継手1001,1002間の接続部には、クランプ部材1004を装着することができる。第1実施形態に係る治具J1は、流体用継手1001,1002の接続に有用であるばかりでなく、クランプ部材1004の装着に用いることもできる。
【0071】
図5および
図6に示すように、一対の第1アーム部11における第1支持軸12よりも基端側の部位、すなわち前述のグリップ13には、クランプ部材1004を挟持する凹部14が設けられている。この凹部14は、各第1アーム部11の基端に比して、第1支持軸12に近接して配置される。具体的に、凹部14は、前後方向において、第1支持軸12の後方に隣接するように配置される。凹部14の内周面は、中心O1に直交する平面上で円弧状に延びる。また、凹部14の内周面の半径(内径)をr(
図2を参照)とし、クランプ部材1004の外周面の半径(外径)をRとすると、
r≧R …(5)
の関係が成立する。すなわち、凹部14の内径は、クランプ部材1004の外径以上の寸法を有するアールをなす。
【0072】
また、凹部14は、一対の第1アーム部11の一方(第1アッパーアーム11A)と、他方(第1ロアーアーム11B)と、の双方に設けられる。第1アッパーアーム11Aに設けた凹部14と、第1ロアーアーム11Bに設けた凹部14は、上下方向に見て互いに相対する。
【0073】
また、第1支持軸12からグリップ13の後端までの寸法をL21とし、第1支持軸12から凹部14の中心O3(凹部14がなす円弧の中心)までの寸法をL22とすると、
L21>L22 …(6)
の関係が成立する。
【0074】
前記(6)の関係が成立することで、グリップ13自体がテコとして動作するようになる。具体的に、グリップ13の基端に荷重F1を入力すると、その荷重F1は、グリップ13によって増幅された状態で、凹部14から出力される。凹部14から出力される荷重をF2とすると、荷重F2は、下式(7)の関係を満足する。
【0075】
F2=(L21/L22)×F1 …(7)
【0076】
施工に際しては、まず、
図6の上段に示すようにグリップ13を開き状態にする。そして、流体用継手1001,1002の接続部にクランプ部材1004を取り付けるとともに、そのクランプ部材1004を凹部14によって挟持する。
【0077】
次いで、グリップ13を握持する(握り持つ)ことで、グリップ13を閉じ状態にする。
図6の下段に示すように、凹部14は、クランプ部材1004を周方向(
図6の矢印A4を参照)に回動させ、これを締め付けることができる。
【0078】
以上説明したように、グリップ13によってクランプ部材1004を装着できるように構成することで、流体用継手1001,1002を接続した後に別の治具に持ち替えずとも、流体用継手1001,1002の接続に用いた治具J1によってクランプ部材1004を装着することができる。
【0079】
(ヘッド部の付替に係る構成について)
前述のように、ヘッド部4を付け替えることで、これを流体用継手1001,1002の接続以外の用途に用いることができる。以下、ヘッド部4の付替に係る構成について説明する。
【0080】
以下の記載では、
図1~
図3に例示したヘッド部4と区別するために、他の用途に用いられるヘッド部を第2のヘッド部、第3のヘッド部と呼称し、それぞれに符号4’および4”を付す。
【0081】
図7は、第2のヘッド部の構成を例示する斜視図である。
図8は、第2のヘッド部の動作を例示する説明図である。
図9は、第3のヘッド部の構成を例示する斜視図である。
図10は、第3のヘッド部の動作を例示する説明図である。
【0082】
図7および
図8に示すように、第2のヘッド部4’は、クランプ部材1004を握持する(握り持つ)ことができる。そのために、第2のヘッド部4’の内周面4a’は、クランプ部材1004の外周と略同径の円弧状に凹んでいる。この円弧の中心軸は、第2支持軸22の中心O2と略平行に延びる。
【0083】
図8の上段に示すように、治具J1の開き状態においては、第2のヘッド部4’の間にクランプ部材1004を挟み込むことができる。そして、
図8の下段に示すように、第2のヘッド部4’は、クランプ部材1004を周方向に締め付けることができる。
【0084】
なお、
図8の下段に示すように、第2のヘッド部4’は、クランプ部材1004の外周面のうちの一部に接する。また、
図9および
図10に示される第3のヘッド部4”の内周面4a”は、第2のヘッド部4’の内周面4a’と同様に、クランプ部材1004の外周面と略同径の円弧状に凹んでいる。この円弧の中心軸は、第2のヘッド部4’と同様に、第2支持軸22の中心O2と略平行に延びる。ここで、
図7および
図9に示すように、第3のヘッド部4”に係る内周面4a”の弧長は、第2のヘッド部4’に係る内周面4a’の弧長よりも長い。これにより、第3のヘッド部4”に係る内周面4a”は、第2のヘッド部4’に係る内周面4a’に比して、クランプ部材1004の外周面との接触面積が広くなる。
【0085】
詳しくは、第2のヘッド部4’および第3のヘッド部4”は、双方とも、第2アーム部21の長手方向(
図7、
図9等における前後方向)に沿って延びる。ここで、
図7に示すように、第2のヘッド部4’における円弧状の内周面4a’は、前後方向における前端部と後端部とには形成されておらず、前端部と後端部との間の中間の部位にのみ形成されている。
【0086】
一方、
図9に示すように、第3のヘッド部4”における円弧状の内周面4a”は、前後方向において、前端部から後端部にかけての全域に形成されている。その結果、第3のヘッド部4”に係る内周面4a”の弧長は、第2のヘッド部4’に係る内周面4a’の弧長よりも長くなる。このように構成することで、第3のヘッド部4”は、クランプ部材1004の外周面の略全体に接するようになる。第3のヘッド部4”を用いることで、クランプ部材1004をより確実に締め付けることができるようになる。
【0087】
なお、第2のヘッド部4’および第3のヘッド部4”の内径は、施工対象とするクランプ部材1004の外径に対応するように設定される。内径の異なる複数の第2のヘッド部4’または第3のヘッド部4”を使い分けることで、サイズの異なる複数種のクランプ部材1004を装着することができるようになる。
【0088】
《他の実施形態》
前述したように、治具J1は、第1のテコとして機能する第1アーム機構1と、第2のテコとして機能する第2アーム機構2と、を組み合わせてなる。第1アーム機構1と第2アーム機構2の構成は、それぞれがテコとして機能する限りにおいて、自由に変更することができる。以下、第1アーム機構1および第2アーム機構を変形させてなる第2~第4実施形態について順番に説明する。
【0089】
なお、以下の説明において、第1実施形態に係る治具J1と同様に構成された部材については、その部材の説明を適宜省略する。
【0090】
〈第2実施形態〉
図11は、第2実施形態に係る治具の構成を例示する斜視図である。以下、第2実施形態に係る治具を単に「治具」と呼称するとともに、符号「J2」を付して説明する場合がある。
【0091】
図11に示すように、治具J2は、第1支持軸112を支点として回動する一対の第1アーム部111と、第2支持軸122を支点として回動する一対の第2アーム部121と、第1アーム部111に第2アーム部121を軸支する連結部103と、各第2アーム部121の先端部に設けられたヘッド部104と、を備える。
【0092】
そして、一対の第1アーム部111は、第1のテコとして動作する第1アーム機構101を構成する。一対の第2アーム部121は、第2のテコとして動作する第2アーム機構102を構成する。
【0093】
第1アーム機構101と第2アーム機構102とが連結されることで、グリップ13を握持したときに、第1実施形態と同様に、ヘッド部104を互いに接近させることができる。これにより、流体用継手1001,1002を相互に接続することが可能となる。
【0094】
ここで、一対の第2アーム部121を構成する第2アッパーアーム121Aおよび第2ロアーアーム121Bは、第1実施形態と同様に、前後方向に沿って互いに平行に延びる。
【0095】
対して、一対の第1アーム部111を構成する第1アッパーアーム111Aおよび第1ロアーアーム111Bは、
図11における角度θに示すように、基端側に向かってテーパ状に傾斜している。このように構成することで、グリップ113の握り代をより長く確保することができ、流体用継手1001,1002をより堅固に接続することができるようになる。
【0096】
また、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、グリップ113に凹部114を設けることができる。この場合、前述のようにグリップ113の握り代をより長く確保したことで、クランプ部材1004をより強く締め付けることができるようになる。
【0097】
〈第3実施形態〉
図12は、第3実施形態に係る治具の構成を例示する正面図である。
図13は、第3実施形態に係る治具の動作を例示する説明図である。以下、第3実施形態に係る治具を単に「治具」と呼称するとともに、符号「J3」を付して説明する場合がある。
【0098】
図12および
図13に示すように、治具J3は、第1支持軸212を支点として回動する一対の第1アーム部211と、第2支持軸222を支点として回動する一対の第2アーム部221と、第1アーム部211に第2アーム部221を軸支する連結部203と、第2アーム部221の先端部に設けられたヘッド部204と、を備える。
【0099】
そして、一対の第1アーム部211は、第1のテコとして動作する第1アーム機構201を構成する。一対の第2アーム部221は、第2のテコとして動作する第2アーム機構202を構成する。第1アーム機構201と第2アーム機構202は、連結部203を介して連結される。
【0100】
ここで、一対の第1アーム部211を構成する第1アッパーアーム211Aおよび第1ロアーアーム211Bは、第1実施形態とは異なり、第1支持軸212において相互に交差する。
【0101】
同様に、一対の第2アーム部221を構成する第2アッパーアーム221Aおよび第2ロアーアーム221Bは、第1実施形態とは異なり、第2支持軸222において相互に交差する。
【0102】
この場合、
図12および
図13に示すように、第1アッパーアーム211Aと第2ロアーアーム221Bとが連結部203によって連結され、第1ロアーアーム211Bと第2アッパーアーム221Aとが連結部203によって連結される。
【0103】
治具J3は、第1アーム機構201と第2アーム機構202との連結構造こそ第1実施形態と相違するものの、
図13に示すように、グリップ213を握持することで、第1実施形態と同様にヘッド部204を互いに接近させることができる。これにより、流体用継手1001,1002を相互に接続することが可能となる。
【0104】
ここで、各第1アーム部211の長手方向(
図12の前後方向)に見て、各第1アーム部211の基端部から第1支持軸212までの寸法をL1’とし、該第1支持軸212から各第1アーム部211の先端部(特に、連結部203が設けられた部位)までの寸法をL2’とすると、
L1’>L2’ …(8)
の関係が成立する。
【0105】
また、各第2アーム部221の長手方向(
図12の前後方向)に見て、各第2アーム部221の基端部(特に、連結部203が設けられた部位)から第2支持軸222までの寸法をL3’とし、該第2支持軸222からヘッド部4までの寸法をL4’とすると、
L3’>L4’ …(9)
の関係が成立する。
【0106】
前記(8)および(9)の関係が成立することで、第1アーム機構201と第2アーム機構202の双方において荷重を増幅させることができる。
【0107】
〈第4実施形態〉
図14は、第4実施形態に係る治具の構成を例示する正面図である。
図15は、第4実施形態に係る治具の動作を例示する説明図である。以下、第4実施形態に係る治具を単に「治具」と呼称するとともに、符号「J4」を付して説明する場合がある。
【0108】
図14および
図15に示すように、治具J4は、第1支持軸312を支点として回動する一対の第1アーム部311と、第2支持軸322を支点として回動する一対の第2アーム部321と、第1アーム部311に第2アーム部321を軸支する連結部303と、第2アーム部321の先端部に設けられたヘッド部304と、を備える。
【0109】
そして、一対の第1アーム部311は、第1のテコとして動作する第1アーム機構301を構成する。一対の第2アーム部321は、第2のテコとして動作する第2アーム機構302を構成する。第1アーム機構301と第2アーム機構302は、連結部303を介して連結される。
【0110】
ここで、一対の第1アーム部311を構成する第1アッパーアーム311Aおよび第1ロアーアーム311Bは、第1実施形態と同様に、第1支持軸312において相互に交差せずに、所定以上の間隔を保つように接続される(非交差状態で接続される)。
【0111】
対して、一対の第2アーム部321を構成する第2アッパーアーム321Aおよび第2ロアーアーム321Bは、第1実施形態とは異なり、第2支持軸322において相互に交差する。
【0112】
この場合、
図14および
図15に示すように、第1アッパーアーム311Aと第2アッパーアーム321Aとが連結され、第1ロアーアーム311Bと第2ロアーアーム321Bとが連結される。
【0113】
第1アッパーアーム311Aと第2アッパーアーム321Aは、一直線上に並ぶように連結される。同様に、第1ロアーアーム311Bと第2ロアーアーム321Bは、一直線上に並ぶように連結される。このように連結することで、第4実施形態に係る第1アーム機構301は、第2実施形態に係る第1アーム機構101と同様に、所定の角度をもって基端側に向かってテーパ状に傾斜するようになる。これにより、グリップ313の握り代をより長く確保することができるようになる。
【0114】
治具J4は、一対の第1アーム部311、および、一対の第2アーム部321のうちの一方を交差させ、他方を交差させないように構成されている。この場合、
図15に示すように、グリップ313を握持することで、ヘッド部304を互いに離間させることができる。これにより、流体用継手1001,1002を相互に引き離し、ひいては、流体用継手1001,1002からシール部材1003を引き抜くことが可能となる。
【0115】
具体的に、シール部材1003の引き抜きに際しては、まず、
図18に示すような状態にある流体用継手1001,1002から、クランプ部材1004を取り外す。
【0116】
次いで、流体用継手1001,1002間の接続部に対し、閉じ状態にある治具J4を挿入する。このとき、上下のヘッド部304によって、フランジ部1001a,1002aを挟み込む。
【0117】
次いで、治具J4のグリップ313を握り込むことで、治具J4を閉じ状態から開き状態にする。これにより、
図18の紙面上側に位置する流体用継手1001には、紙面上方に向かって力が作用する。一方、
図18の紙面下側に位置する流体用継手1002には、紙面下方に向かって力が作用する。
【0118】
このように、一方の流体用継手1001と、他方の流体用継手1002とに対し、互いに反対方向に力を作用させることで、流体用継手1001,1002を相互に引き離すことができる。流体用継手1001,1002を相互に引き離すことで、各流体用継手1001,1002からシール部材1003を引き抜くことが可能となる。
【0119】
ここで、第1アーム部311の長手方向(
図14の前後方向)に見て、第1アーム部311の基端部から第1支持軸312までの寸法をL1”とし、該第1支持軸312から第1アーム部311の先端部(特に、連結部303が設けられた部位)までの寸法をL2”とすると、
L1”>L2” …(10)
の関係が成立する。
【0120】
また、第2アーム部321の長手方向(
図14の前後方向)に見て、第2アーム部321の基端部(特に、連結部303が設けられた部位)から第2支持軸322までの寸法をL3”とし、該第2支持軸322からヘッド部304までの寸法をL4”とすると、
L3”>L4” …(11)
の関係が成立する。
【0121】
前記(10)および(11)の関係が成立することで、第1アーム機構301と第2アーム機構302の双方において荷重を増幅させることができる。
【0122】
〈凹部の変形例〉
また、第1実施形態では、クランプ部材1004を締め付けるための凹部14は、前後方向において第1支持軸12と近接して配置されていたが、凹部14の配置は、これに限定されない。
【0123】
以下、凹部14の変形例について説明する。
【0124】
図16は、凹部の変形例に係る治具の構成を例示する斜視図である。
図17は、凹部の変形例に係る治具の動作を例示する説明図である。以下、凹部の変形例に係る治具を単に「治具」と呼称するとともに、符号「J5」を付して説明する場合がある。なお、説明を簡略化するために、凹部の変形例においては、第2アーム機構の図示および説明を省略した。
【0125】
図16および
図17に示すように、治具J5は、第1支持軸412を支点として回動する一対の第1アーム部411と、第1アーム部411の先端部に設けられたヘッド部404と、を備える。ここで、一対の第1アーム部411は、第1のテコとして動作する第1アーム機構401を構成する。
【0126】
図16および
図17に示すように、治具J5のグリップ413には、クランプ部材1004を挟持する凹部414が設けられる。この凹部414は、前後方向において、第1支持軸412から離間して配置される。詳しくは、変形例に係る凹部414は、第1アーム部411の基端と、第1支持軸412と、の中間に配置されている。凹部414の内径は、クランプ部材1004の外径以上の寸法を有するアールをなす。
【0127】
凹部414は、一対の第1アーム部411の一方(第1アッパーアーム411A)と、他方(第1ロアーアーム411B)と、の双方に設けられる。第1アッパーアーム411Aに設けられた凹部414と、第1ロアーアーム411Bに設けられた凹部414は、上下方向に見て互いに相対する。
【0128】
また、第1支持軸412からグリップ413の基端までの寸法をL21’とし、第1支持軸412から凹部414の中心(凹部414がなす円弧の中心)までの寸法をL22’とすると、
L21’>L22’ …(12)
の関係が成立する。
【0129】
前記(12)の関係が成立することで、グリップ413自体がテコとして動作するようになる。具体的に、グリップ413の基端に所定の荷重を入力すると、その荷重は、グリップ413によって(L21’/L22’)倍に増幅された状態で、凹部414から出力される。これにより、凹部414は、第1実施形態の凹部14と同様の効果を発揮することができる。
【0130】
施工に際しては、まず、
図17の上段に示すようにグリップ413を開き状態にする。そして、流体用継手1001,1002の接続部にクランプ部材1004を取り付けるとともに、そのクランプ部材1004を凹部414によって挟持する。
【0131】
次いで、グリップ413を握持することで、グリップ413を閉じ状態にする。
図17の下段に示すように、凹部414は、クランプ部材1004を周方向(
図17の矢印A4’を参照)に回動させ、これを締め付けることができる。
【0132】
上記各実施形態または変形例における治具は、片手で握持できるサイズを前提として説明しているが、例えば両手で把持できるサイズや複数人で操作するサイズなど、施工する流体用継手1001,1002の大きさや取り付け固さ等に合わせてサイズを適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0133】
J1 治具
1 第1アーム機構
11 第1アーム部
12 第1支持軸
14 凹部
2 第2アーム機構
21 第2アーム部
22 第2支持軸
3 連結部
4 ヘッド部
4’ 第2のヘッド部
4” 第3のヘッド部
1001 流体用継手
1002 流体用継手
1003 シール部材
1004 クランプ部材