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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240712BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240712BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240712BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240712BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240712BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0568
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/66 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021511198
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006117
(87)【国際公開番号】W WO2020202844
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019066975
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 倫久
(72)【発明者】
【氏名】蚊野 聡
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179782(WO,A1)
【文献】特開2019-009113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0568
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 4/134
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質と正極添加剤とを含む正極合剤を備える正極と、
負極集電体を備える負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータと、
電解液と、を備え、
前記負極では、充電時にリチウム金属が析出し、放電時に前記リチウム金属は前記電解液中に溶解し、
前記正極添加剤は、一般式(1):Lia1Fex1M1y1z1で表される第1化合物および一般式(2):Lia2Nix2M2y2z2で表される第2化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
一般式(1)は、0≦a1≦5、0≦x1≦5、0≦y1≦1および0≦z1≦4を満たし(ただし、初回充電前においては、少なくともa1は0ではない)
a1、x1、y1およびz1のうち、少なくとも2つは0より大きく、
M1は、Co、Cu、Mg、Ni、Mn、Zn、Al、Ga、Ge、Ti、Si、Sn、Ce、Y、Zr、SおよびNaからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
一般式(2)は、0≦a2≦2、0≦x2≦1、0≦y2≦1および1≦z2≦2を満たし(ただし、初回充電前においては、少なくともa2は0ではない)
a2およびx2の少なくとも一方は0より大きく、
M2は、Co、Cu、Mg、Fe、Mn、Zn、Al、Ga、Ge、Ti、Si、Sn、Ce、Y、Zr、SおよびNaからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記電解液は、オキサレート錯体アニオンと、リチウムイオンと、を有するオキサレート錯体塩を含む、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記負極集電体は、銅箔または銅合金箔である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記電解液は、前記オキサレート錯体塩を、0.01mol/L以上、2mol/L以下の濃度で含む、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記オキサレート錯体アニオンが、ジフルオロオキサレートボレートイオンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記電解液が、更に、LiPFおよびリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記第1化合物が、LiFeO、LiFe、LiFeO、LiOおよびFeからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記第2化合物が、LiNiO、LiNiO、NiOおよびLiOからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記正極合剤は、0.1質量%以上、20質量%以下の前記正極添加剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
満放電時において、前記負極が、前記負極集電体の表面に厚さ5μm以上、30μm以下のリチウム金属層を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記負極が、Fe元素または/およびNi元素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウム金属を負極活物質として用いるリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、例えば、パソコンおよびスマートフォン等のICT用、車載用、ならびに蓄電用等の用途に用いられている。このような用途において、非水電解質二次電池には、さらなる高容量化が求められる。高容量の非水電解質二次電池としては、リチウムイオン電池が知られている。しかし、リチウムイオン電池の高容量化は限界に達しつつある。
【0003】
リチウムイオン電池を超える高容量の非水電解質二次電池として、リチウム二次電池が有望である(特許文献1)。リチウム二次電池では、充電時に、負極にリチウム金属が析出し、このリチウム金属は放電時に非水電解質中に溶解する。なお、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池とも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-243957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウム(金属)二次電池では、負極におけるリチウム金属の析出形態の制御が難しい。リチウム金属がデンドライト状に析出することを抑制し、電解液とリチウム金属の副反応を抑え、サイクル特性を向上させることが望まれている。本開示は、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、正極活物質と正極添加剤とを含む正極合剤を備える正極と、負極集電体を備える負極と、前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータと、電解液と、を備え、
前記負極では、充電時にリチウム金属が析出し、放電時に前記リチウム金属は前記電解液中に溶解し、
前記正極添加剤は、一般式(1):Lia1Fex1M1y1z1で表される第1化合物および一般式(2):Lia2Nix2M2y2z2で表される第2化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
一般式(1)は、0≦a1≦5、0≦x1≦5、0≦y1≦1および0≦z1≦4を満たし、
a1、x1、y1およびz1のうち、少なくとも2つは0より大きく、
M1は、Co、Cu、Mg、Ni、Mn、Zn、Al、Ga、Ge、Ti、Si、Sn、Ce、Y、Zr、SおよびNaからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
一般式(2)は、0≦a2≦2、0≦x2≦1、0≦y2≦1および1≦z2≦2を満たし、
a2およびx2の少なくとも一方は0より大きく、
M2は、Co、Cu、Mg、Fe、Mn、Zn、Al、Ga、Ge、Ti、Si、Sn、Ce、Y、Zr、SおよびNaからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記電解液は、オキサレート錯体アニオンと、リチウムイオンと、を有するオキサレート錯体塩を含む、リチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0007】
リチウム二次電池において、優れたサイクル特性が得られる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るリチウム二次電池を模式的に示す縦断面図である。
図2】リチウム二次電池の初回充電前の完全放電状態(すなわち電池組み立て直後)における図1のIIの領域を模式的に示す拡大断面図である。
図3】リチウム二次電池の初回充電後の完全放電状態における図1のIIの領域を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係るリチウム二次電池は、正極活物質と正極添加剤とを含む正極合剤を備える正極と、負極集電体を備える負極と、正極と負極との間に配置されるセパレータと、オキサレート錯体塩を含む電解液とを備え、負極では、充電時にリチウム金属が析出し、放電時にリチウム金属は電解液中に溶解する。リチウム二次電池では、例えば、可逆容量の50%以上、更には80%以上もしくは実質的に100%がリチウム金属の析出と溶解により発現される。負極集電体は、銅箔または銅合金箔であり得る。
【0010】
一般的なリチウム二次電池では、放電過程において負極集電体上のリチウム金属が溶解する際に、リチウム金属と電解液との副反応が起こる。副反応の生成物は不可逆容量となり、サイクル特性の低下の一因となる。
【0011】
一方、電解液が、オキサレート錯体アニオンとリチウムイオンとを有するオキサレート錯体塩を含む場合、オキサレート錯体アニオンの作用により、リチウム金属の析出形態が制御され、デンドライト状のリチウム金属の析出が抑制される。その結果、析出するリチウム金属の表面積が減少し、副反応が抑制され、サイクル特性が向上する。
【0012】
発明者の研究では、リチウム金属と電解液との副反応は、特に放電末期において負極集電体近傍で顕著に進行することが見出されている。オキサレート錯体塩を含む電解液を用いた場合でも、放電末期の副反応の抑制には不十分であることも見出されている。これに対し、正極合剤が所定の正極添加剤を含む場合は、正極添加剤から初回充電時に負極集電体の表面にリチウム金属が供給される。リチウムが抜けた正極添加剤の少なくとも一部は、分解し、リチウムイオンを吸蔵しないため、不可逆な充電容量が得られる。すなわち、初回充電後、満放電状態において、負極集電体の表面には、常に正極に戻れないリチウム金属が析出した状態となる。負極集電体が正極添加剤由来のリチウム金属層により常に被覆された状態となる場合、負極集電体近傍での副反応は顕著に抑制され得る。すなわち、オキサレート錯体塩を含む電解液と正極添加剤とを併用することで、放電過程の全域において副反応が抑制されるため、サイクル特性が向上する。
【0013】
正極添加剤は、一般式(1):Lia1Fex1M1y1z1で表される第1化合物および一般式(2):Lia2Nix2M2y2z2で表される第2化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。第1化合物は、典型的には、LiFeOの組成式を有し、第2化合物は、典型的には、LiNiOの組成式を有する。
【0014】
一般式(1)は、0≦a1≦5、0≦x1≦5、0≦y1≦1および0≦z1≦4を満たす。a1、x1、y1およびz1のうち、少なくとも2つは0より大きい。ただし、初回充電前において、少なくともa1は0ではなく、第1化合物はLiを含む。a1、x1、y1およびz1は、0<a1≦5、0<x1≦5、0≦y1≦1および1≦z1≦4を満たしてもよい。初回充電前において、a1、x1、y1およびz1は、例えば、4≦a1≦5、0.8≦x1≦1、x1+y1=1、3.5≦z1≦4を満たしてもよい。
【0015】
一般式(1)は、第1化合物が、リチウム鉄含有酸化物および/またはその分解物を含むことを示している。リチウム鉄含有酸化物は、逆蛍石型の結晶構造を有してもよい。充電時には、リチウム鉄含有酸化物からリチウムイオンが放出される。このとき、リチウム鉄含有酸化物の少なくとも一部が分解し、正極合剤中に分解物が残存する。正極添加剤により負極集電体上にリチウム金属層が形成され、特に放電末期の副反応が抑制されるとともに、オキサレート錯体アニオンの作用により平滑なリチウム金属層が負極集電体の表面に形成され得る。
【0016】
M1は、Co、Cu、Mg、Ni、Mn、Zn、Al、Ga、Ge、Ti、Si、Sn、Ce、Y、Zr、SおよびNaからなる群より選択される少なくとも1種を含む。ガス発生の抑制等の観点から、M1は、MnおよびAlの少なくとも一方を含んでもよい。
【0017】
一般式(2)は、0≦a2≦2、0≦x2≦1、0≦y2≦1および1≦z2≦2を満たす。a2およびx2の少なくとも一方は0より大きい。ただし、初回充電前において、少なくともa2は1より大きい。a2、x2、y2およびz2は、1≦a1≦2、0<x2≦1、0≦y2<1および1≦z2≦2を満たしてもよい。初回充電前において、a2、x2、y2およびz2は、例えば、1<a2≦2、0.8≦x2≦1、x2+y2=1、1.5≦z2≦2を満たしてもよい。
【0018】
一般式(2)は、第2化合物が、リチウムニッケル含有酸化物および/またはその分解物を含むことを示している。リチウムニッケル含有酸化物は、岩塩型層状構造の結晶構造を有してもよい。充電時には、リチウムニッケル含有酸化物からリチウムイオンが放出される。このとき、リチウムニッケル含有酸化物の少なくとも一部が分解し、正極合剤中に分解物が残存する。正極添加剤により負極集電体上にリチウム金属層が形成され、特に放電末期の副反応が抑制されるとともに、オキサレート錯体アニオンの作用により、平滑なリチウム金属層が負極集電体の表面に形成され得る。リチウムニッケル含有酸化物の分解物は、岩塩型層状構造を有し得るが、比較的不規則な結晶構造を有し、一般的な岩塩型層状構造の正極活物質と容易に区別できる。
【0019】
M2は、Co、Cu、Mg、Fe、Mn、Zn、Al、Ga、Ge、Ti、Si、Sn、Ce、Y、Zr、SおよびNaからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0020】
第1化合物および第2化合物は、いずれも大きな充電容量を有するため、正極添加剤の使用量は少量でも十分である。例えば、正極合剤中の正極添加剤の含有量は、正極合剤の総量に対して、0.1質量%以上、20質量%以下でもよく、0.1質量%以上、5質量%以下でもよい。
【0021】
正極合剤中の正極添加剤の含有量が正極合剤の総量に対して0.1質量%以上である場合、負極集電体上に副反応を抑制するための十分量のリチウム金属層が形成され、サイクル特性の低下を抑制しやすくなる。一方、正極合剤中の正極添加剤の含有量が20質量%以下である場合、正極中により多くの正極活物質を含ませることができるため、高容量および優れたサイクル特性が得られ易い。正極合剤中の正極添加剤の含有量は、例えば、X線回折法(XRD)、メスバウアー分光法等により求められる。
【0022】
正極合剤は、第1化合物として、例えば、LiFeO、LiFe、LiFeO、LiOおよびFeからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。正極作製時もしくは初回充電前に正極合剤に含ませる正極添加剤がLiFeOである場合、初回充電後の第1化合物の分解物は、例えば、LiFe、LiFeO、LiOおよびFeからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0023】
正極合剤は、第2化合物として、例えば、LiNiO、LiNiO、NiOおよびLiOからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。正極作製時もしくは初回充電前に正極合剤に含ませる正極添加剤がLiNiOである場合、初回充電後の第2化合物の分解物は、例えば、LiNiO、LiNiO、NiOおよびLiOからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0024】
正極合剤層に正極添加剤を添加する場合、初回充電前に負極集電体の表面にリチウム金属層が存在しない場合であっても、初回充電後の満放電状態において、常に負極集電体の表面にリチウム金属層が存在し得る。リチウム金属層の厚さは、特に限定されないが、電池の満放電時において、例えば5μm以上、30μm以下であればよく、5μm以上、15μm以下でもよい。
【0025】
ここで、負極集電体の表面に形成されるリチウム金属層は、電池内で電気化学的に析出して形成される点で、電池に組み込まれる前の負極集電体の表面に予め形成され得るリチウム金属層とは構造的に相違する。例えば、電池に組み込まれる前の負極集電体の表面に予めリチウム金属箔を貼り付け、もしくはリチウム金属を膜状に蒸着させることで、リチウム金属層を形成することも可能である。しかし、そのような方法で負極集電体の表面にリチウム金属層を形成するには、非常に煩雑な工程を必要とする。また、電気化学的に析出させたリチウム金属層は、電気化学的な方法以外で形成されたリチウム金属層とは、組成、密度等が相違する。例えば、電池に組み込まれる前に予め形成されたリチウム金属層は、周囲の雰囲気の二酸化炭素、水分もしくは酸素との反応により生成する炭酸リチウム、酸化リチウム等を多く含み得る。電気化学的な方法以外で予め負極集電体の表面にリチウム金属層を形成した場合、その後、予め形成されたリチウム金属層の表面に更に電気化学的にリチウム金属層が析出するため、リチウム金属層が2層以上の構造を有し得る。
【0026】
正極添加剤の中でも、リチウム鉄含有酸化物の分解物もしくはリチウムニッケル含有酸化物の分解物は、電解液中に溶出し、負極に移動し得る。よって、正極合剤が正極添加剤を含む場合、負極は、Fe元素または/およびNi元素を含んでもよい。
【0027】
オキサレート錯体塩が有するオキサレート錯体アニオンは、ホウ素および/またはリンを含有してもよい。オキサレート錯体アニオンの具体例としては、ビスオキサレートボレートアニオン(B(C )、ジフルオロオキサレートボレートアニオン(BF(C)、PF(C、PF(C 等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
電解液中でオキサレート錯体アニオンがリチウムイオンに作用することで、リチウム金属が細かい粒子状で均一に析出し易くなるものと考えられる。そのため、リチウム金属の局所的な析出に伴うデンドライトの析出、不均一な充放電反応の進行等が抑制される。オキサレート錯体アニオンの中でも、ビスオキサレートボレートアニオンおよび/またはジフルオロオキサレートボレートアニオンが好ましい。
【0029】
電解液に含まれるオキサレート錯体塩の濃度は、特に限定されないが、電解液の粘度を低減し、高いイオン伝導性を確保する観点からは、例えば、0.01mol/L以上、2mol/L以下であればよく、0.1mol/L以上、1mol/L以下でもよい。
【0030】
電解液は、高いイオン伝導性を確保するとともに、より高いサイクル特性および充放電効率を確保するために、更に、LiPFおよびリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの少なくとも一方を含んでもよい。
【0031】
電解液中のリチウム塩の合計濃度は、例えば、0.5mol/L以上であり、1mol/L以上でもよく、1.5mol/L以上でもよい。リチウム塩の濃度がこのような範囲である場合、電解液の高いリチウムイオン伝導性を確保しやすい。一方、電解液中のリチウム塩の濃度は、3mol/L以下であってもよく、2mol/L以下であってもよい。この場合、リチウムイオンに溶媒和する溶媒分子の数を低減することができ、充放電反応を効率よく行うことができる。中でも、オキサレート錯体塩、LiPFおよびリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの合計濃度が上記濃度範囲内であることが好ましい。
【0032】
以下、リチウム二次電池の構成要素について図面を参照しながら更に説明するが、以下の図面等は本発明を限定するものではない。
【0033】
図1は、本開示の一実施形態に係るリチウム二次電池を模式的に示す縦断面図である。図2、3は、図1のIIの領域を模式的に示す拡大断面図である。
【0034】
リチウム二次電池10は、例えば円筒形の電池ケースと、電池ケース内に収容された巻回式の電極群14および図示しない電解液とを備える。電池ケースは、例えば有底円筒形の金属製容器であるケース本体15と、ケース本体15の開口部を封口する封口体16とで構成される。ケース本体15と封口体16との間にガスケット27を配置してもよい。ケース本体15の側壁は、例えば、ケース本体15の周方向に沿って環状に形成された段部21を有する。段部21の開口部側に封口体16が支持される。封口体16は、ケース本体15の内側から順に、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25およびキャップ26を備えている。ケース本体15内において、電極群14の巻回軸方向の両端部には、絶縁板17、18をそれぞれ配置してもよい。
【0035】
電極群14は、それぞれ帯状の正極11と負極12とを、これらの間にセパレータ13を介在させた状態で渦巻状に巻回して構成されている。正極11は、正極リード19を介して、例えば正極端子を兼ねるキャップ26と電気的に接続されている。負極12は、負極リード20を介して、例えば負極端子を兼ねるケース本体15と電気的に接続されている。
【0036】
図2に示すように、正極11は、正極集電体110と、正極集電体110の両面に配置された正極合剤層111とを備える。負極12は、負極集電体120を備えている。図2には、電池組み立て直後、すなわち初回充電前の完全放電状態における断面を示す。図2では、負極集電体120の表面にリチウム金属は析出していない。一方、図3には、初回充電後、完全放電状態における断面を示す。図3では、負極集電体120の表面に不可逆容量に相当するリチウム金属層121が形成されている。
【0037】
(正極)
正極11において、正極合剤層111は、正極集電体110の両面に形成されていてもよく、一方の表面に形成されていてもよい。また、正極11の正極リード19を接続する領域および/または負極12と対向しない領域では、正極集電体110の一方の表面のみに正極合剤層111を形成してもよい。正極合剤層111は、正極活物質および正極添加剤を必須成分として含んでおり、導電材、結着材等の任意成分を含んでもよい。
【0038】
正極11は、例えば、正極合剤と分散媒とを含むスラリーを、正極集電体110の表面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延することにより得られる。分散媒としては、水および/または有機媒体が用いられる。正極集電体110の表面には、必要に応じて、導電性の炭素材料を塗布してもよい。
【0039】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出する材料を用い得る。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン、フッ素化ポリアニオン、遷移金属硫化物等が挙げられる。
【0040】
リチウム含有遷移金属酸化物に含まれる遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、W等が挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物は、遷移金属元素を1種含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。遷移金属元素は、Co、Niおよび/またはMnであってもよい。リチウム含有遷移金属酸化物は、必要に応じて、1種または2種以上の典型金属元素を含むことができる。典型金属元素としては、Mg、Al、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sb、Pb、Bi等が挙げられる。典型金属元素は、Al等であってもよい。
【0041】
正極活物質の結晶構造は特に制限されないが、空間群R-3mに属する結晶構造を有する正極活物質を用いてもよい。このような正極活物質は、充放電に伴う格子の膨張収縮が比較的小さく、劣化しにくく、優れたサイクル特性が得られ易い。空間群R-3mに属する岩塩型層状の結晶構造を有する正極活物質は、例えば、NiとCoとMnおよび/またはAlとを含むものであってもよい。このような正極活物質において、Ni、Co、MnおよびAlの原子数の合計に占めるNiの比率は、50原子%以上であってもよい。例えば、正極活物質がNi、Co、およびAlを含む場合、Niの比率は、50原子%以上であってもよく、80原子%以上であってもよい。正極活物質が、Ni、CoおよびMnを含む場合、Niの比率は、50原子%以上であってもよい。
【0042】
導電材は、例えば、炭素材料である。炭素材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、および黒鉛等が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0043】
結着材としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ゴム状重合体等が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0044】
正極集電体110の材質としては、Al、Ti、Feなどを含む金属材料が挙げられる。金属材料は、Al、Al合金、Ti、Ti合金、Fe合金などであってもよい。Fe合金は、ステンレス鋼であってもよい。正極集電体110は、箔、フィルムなどであり、多孔質であってもよい。正極集電体110の厚みは、例えば、5μm以上、30μm以下である。
【0045】
(負極)
負極12では、充電によりリチウム金属が析出する。より具体的には、電解液に含まれるリチウムイオンが、充電により負極12で電子を受け取ってリチウム金属になり、負極12に析出する。負極12で析出したリチウム金属は、放電により電解液中にリチウムイオンとして溶解する。なお、電解液に含まれるリチウムイオンは、電解液に添加したリチウム塩に由来してもよく、充電により正極活物質から供給されてもよく、これらの双方でもよい。
【0046】
負極12は、負極集電体120を備えている。負極集電体120は、通常、導電性シートで構成され、導電性シートは導電性材料で構成される。導電性材料は、金属、合金などの金属材料であってもよい。金属材料は、リチウムと反応しない材料、すなわちリチウムと合金および金属間化合物のいずれも形成しない材料を用いてもよい。例えば、銅、ニッケル、鉄およびこれらの金属元素を含む合金などが挙げられる。中でも、金属材料は、コストの観点からも、銅および/または銅合金が好ましい。銅合金中の銅の含有量は、50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。負極集電体120は、箔、フィルムなどであり、多孔質であってもよい。負極集電体120の厚みは、例えば、5μm以上、20μm以下である。
【0047】
高い体積エネルギー密度を確保し易い観点から、負極12は、リチウム二次電池の初回充電前、すなわち組み立て直後において、負極集電体120のみを含んでいてもよい。
【0048】
なお、本開示において、リチウム二次電池の定格容量をCとするとき、完全放電状態とは、0.05×C以下の放電状態(DoD:Depth of Discharge)となるまで放電させた状態をいう。例えば0.05Cの定電流で下限電圧まで放電した状態をいう。下限電圧は、例えば2.5Vである。
【0049】
(電解液)
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解する溶質とを含む。溶質には様々なリチウム塩が用いられる。電解液中のリチウム塩の濃度は、例えば0.5~2mol/Lである。電解液は、公知の添加剤を含有してもよい。
【0050】
溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、環状エーテルなどの非水溶媒または水が例示できる。溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテルおよび環状エーテルからなる群より選択される少なくとも1種を主溶媒として含むことが好ましい。ここで、主溶媒が全溶媒に占める体積割合は、50体積%以上であってもよく、60体積%以上であってもよく、70体積%以上または80体積%以上としてもよい。
【0051】
環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートおよびこれらの誘導体等を用いることができる。電解液のイオン導電率の観点から、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0052】
鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。
【0053】
環状カルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。
【0054】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル等を用いることができる。
【0055】
環状エーテルとしては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等が挙げられる。
【0056】
鎖状エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等が挙げられる。
【0057】
なお、エーテルの最低空軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、高いエネルギー準位に存在する。そのため、エーテルが、強い還元力を有するリチウム金属と接触しても還元分解されにくい。加えて、エーテル骨格中の酸素は、リチウムイオンと強く相互作用するため、リチウム塩を容易に溶解させることができる。これらの性質を考慮すると、エーテルは、リチウム二次電池の電解液の溶媒として使用するのに適している。一方、エーテルとリチウムイオンとの相互作用が強過ぎると、リチウムイオンに対するエーテルの脱溶媒和エネルギーが大きくなり、エーテル分子によりリチウムイオンが捕捉された状態となり、負極表面においてリチウムイオンがリチウム金属に還元され難くなる。
【0058】
以上より、エーテルは、フッ素化してもよく、例えばフッ素化率40%以上のフッ素化エーテルを用いてもよい。この場合、充放電反応をより均一に行うことができる。フッ素化率は、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。
【0059】
本開示において、フッ素化エーテルのフッ素化率とは、フッ素化エーテルに含まれるフッ素原子と水素原子の合計個数に占めるフッ素原子の個数比率を百分率(%)で表したものである。従って、フッ素化率は、フッ素化エーテルのフッ素原子を全て水素原子に置き換えたエーテルにおける、フッ素原子による水素原子の置換割合を百分率(%)で表したものと同じ意味である。
【0060】
フッ素化エーテルの具体例としては、例えば、フッ素化された(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテルが挙げられ、アルキル基の炭素数は、それぞれ、例えば、1~6であり、1~4であってもよく、1または2であってもよい。
【0061】
リチウム塩としては、オキサレート錯体塩、LiPFおよびリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO2F)2)の他に、例えば、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32などが挙げられる。リチウム塩は、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(セパレータ)
セパレータ13には、イオン透過性および電子絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートとしては、例えば、微多孔フィルム、織布、不織布が挙げられる。セパレータの材質は、特に限定されないが、高分子材料がよく、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース等が挙げられる。オレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよびプロピレンの少なくとも一方をモノマー単位として含むオレフィン系共重合体などが挙げられる。セパレータ13は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、無機フィラー等が挙げられる。
【0063】
図1では、円筒形電池ケースを備えた円筒形のリチウム二次電池について説明したが、本開示に係るリチウム二次電池はこの場合に限らない。本開示に係るリチウム二次電池は、例えば、角形の電池ケースを備えた角形電池、アルミニウムラミネートシートなどの樹脂外装体を備えたラミネート電池などにも適用できる。また、電極群も、巻回型に限らず、例えば、複数の正極と複数の負極とをセパレータが正負極間に介在するように交互に積層した積層型の電極群であってもよい。
【0064】
[実施例]
以下、本開示に係るリチウム二次電池を実施例および比較例に基づいて具体的に説明する。本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実施例1~3および比較例1~5)
以下の手順でリチウム二次電池を作製した。
(1)正極11の作製
正極活物質と、表1に示す正極添加剤(LiFeO、LiNiO)と、アセチレンブラック(導電剤、AB)と、ポリフッ化ビニリデン(結着剤、PVdF)とを、(正極活物質+正極添加剤):AB:PVdF=95:2.5:2.5の質量比で混合した。正極合剤中の正極添加剤の含有量は、表1に示す通りである。混合物に、分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドンを適量加えて撹拌することにより、正極合剤スラリーを調製した。正極活物質としては、Ni、CoおよびAlを含み、空間群R-3mに属する結晶構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物を用いた。
【0066】
正極合剤スラリーを、正極集電体110としてのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥した。乾燥物を、ローラーを用いて厚み方向に圧縮した。得られた積層体を、所定の電極サイズに切断することにより、正極集電体110の両面に正極合剤層111を備える正極11を作製した。なお、正極11の一部の領域には、正極合剤層111を有さない正極集電体110の露出部を形成した。正極集電体110の露出部に、アルミニウム製の正極リード19の一端部を溶接により取り付けた。
【0067】
(2)負極12の作製
厚み10μmの電解銅箔を、所定の電極サイズに切断することにより、負極集電体120を形成した。負極集電体120を負極12として電池の作製に用いた。負極集電体120には、ニッケル製の負極リード20の一端部を溶接により取り付けた。
【0068】
(3)非水電解質の調製
表1に示すように、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)との体積比4:1:15の混合溶媒に、表1に示すリチウム塩(LiPF、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB))を表1に示す濃度となるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0069】
(4)電池の作製
不活性ガス雰囲気中で、上記(1)で得られた正極11と、上記(2)で得られた負極12とを、これらの間にセパレータ13としてポリエチレン製の微多孔フィルムを介在させて積層し、渦巻状に巻回して電極群を作製した。得られた電極群を、Al層を備えるラミネートシートで形成される袋状の外装体に収容し、非水電解液を注入した後、外装体を封止し、リチウム二次電池を完成させた。
【0070】
(5)評価
実施例および比較例で得られたリチウム二次電池について、下記の手順で充放電試験を行い、50サイクル目の容量の初期容量に対する維持率を評価した。
まず、25℃の恒温槽内において、リチウム二次電池の充電を、以下の条件で行った後、20分間休止して、以下の条件で放電を行った。
【0071】
(充電)
0.2Itの電流で、電池電圧が4.1Vになるまで定電流充電を行い、その後、4.1Vの電圧で電流値が0.02Itになるまで定電圧充電を行った。
(放電)
0.2Itの電流で電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行った。
【0072】
上記充電および放電を1サイクルとし、50サイクルの充放電試験を行った。1サイクル目の放電容量を測定し、初回放電容量とした。50サイクル目の放電容量の、初回放電容量に対する比率を、容量維持率(%)として求めた。
【0073】
実施例1~3および比較例1~5の結果を表1に示す。実施例1~3は、電池A1~A3であり、比較例1~5は、電池R1~R5である。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、電池A1~A3では、LiFOBを用い、正極に正極添加剤を添加したため、電解液とリチウム金属との副反応を抑制でき、50サイクル後も高い放電容量が維持され、優れたサイクル特性が得られている。
【0076】
(実施例4~7および比較例6~11)
正極活物質と、表1に示す正極添加剤(LiFeO、LiNiO)と、アセチレンブラック(導電剤、AB)と、ポリフッ化ビニリデン(結着剤、PVdF)とを、(正極活物質+正極添加剤):AB:PVdF=95:2.5:2.5の質量比で混合し、上記実施例1~3等と同様に正極を作製し、更に、上記と同様の負極集電体120を負極12として準備した。正極合剤中の正極添加剤の含有量は、表2に示す通りである。
【0077】
表2に示すように、ジメトキシエタン(DME)と1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(フッ素化率70%)(HFE)との体積比1:2の混合溶媒に、表2に示すリチウム塩(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB))を表2に示す濃度となるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0078】
その他は、上記実施例1~3等と同様に電池を作製し、同様に評価した。実施例4~7および比較例6~11の結果を表2に示す。実施例4~7は、電池A4~A7であり、比較例6~11は、電池R6~R11である。
【0079】
【表2】
【0080】
表2に示すように、電池A4~A7では50サイクル後も高い放電容量が維持され、優れたサイクル特性が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示に係るリチウム二次電池は、サイクル特性に優れる。本開示に係るリチウム二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末のような電子機器、ハイブリッド、プラグインハイブリッドを含む電気自動車、太陽電池と組み合わせた家庭用蓄電池などの様々な用途に有用である。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0082】
10 リチウム二次電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 電極群
15 ケース本体
16 封口体
17、18 絶縁板
19 正極リード
20 負極リード
21 段部
22 フィルタ
23 下弁体
24 絶縁部材
25 上弁体
26 キャップ
27 ガスケット
110 正極集電体
111 正極合剤層
120 負極集電体
121 リチウム金属層
図1
図2
図3