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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
B25B23/14 640Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022097631
(22)【出願日】2022-06-16
(65)【公開番号】P2023183857
(43)【公開日】2023-12-28
【審査請求日】2024-01-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000172868
【氏名又は名称】佐藤鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】寺林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】笹木 亮
(72)【発明者】
【氏名】野原 徳博
(72)【発明者】
【氏名】村田 保
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138277(JP,A)
【文献】特開2021-167516(JP,A)
【文献】特開2022-052007(JP,A)
【文献】特開2015-110254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00 - 23/18
B23P 19/06
B25F 5/00 - 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットに着脱可能な第1ソケット部を駆動部により回転させる工具部と、
前記工具部に設けられるカメラと、
前記工具部に対して前記カメラの位置を可変とするカメラ位置可変部と、
前記カメラの姿勢を可変とするカメラ姿勢可変部と、
本締めされた前記ナットを撮影するための前記カメラの位置および姿勢を決めるカメラ調節部と、
を備え、
被連結物に通されたボルトに一次締めされた前記ナットに前記第1ソケット部を装着した状態において、前記カメラは、前記被連結物に通された別の前記ボルトに本締めされた前記ナットを撮影可能な位置および姿勢にすることが可能であり、
前記カメラ調節部は、胴部と、前記ナットに着脱可能な第2ソケット部と、前記カメラに当接させる当接部と、を備え、
前記胴部および前記第2ソケット部は、一方が他方に対して姿勢を可変可能に連結し、
前記胴部および前記当接部は、一方が他方に対して姿勢を可変可能に連結している工具。
【請求項2】
ナットに着脱可能な第1ソケット部を駆動部により回転させる工具部と、
前記工具部に設けられるカメラと、
前記工具部に対して前記カメラの位置を可変とするカメラ位置可変部と、
前記カメラの姿勢を可変とするカメラ姿勢可変部と、
本締めされた前記ナットを撮影するための前記カメラの位置および姿勢を決めるカメラ調節部と、
を備え、
被連結物に通されたボルトに一次締めされた前記ナットに前記第1ソケット部を装着した状態において、前記カメラは、前記被連結物に通された別の前記ボルトに本締めされた前記ナットを撮影可能な位置および姿勢にすることが可能であり、
前記カメラ調節部は、胴部と、前記ナットに着脱可能な第2ソケット部と、カメラ調節支援装置と、出力装置と、を備え、
前記胴部および前記第2ソケット部は、一方が他方に対して姿勢を可変可能に連結し、
前記胴部は、マーカを備え、
前記カメラ調節支援装置は、前記カメラを撮影目標となる前記ナットを撮影する目標位置および目標姿勢にすることを支援するためのものであって、前記被連結物に通された前記ボルトに一次締めまたは本締めされた前記ナットに前記第1ソケット部を装着し、前記カメラの撮影目標となる前記ナットであって、前記被連結物に通された別の前記ボルトに一次締めまたは本締めされた前記ナットに前記第2ソケット部を装着した状態で前記カメラが撮影した前記マーカの画像と、前記カメラの目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、前記画像撮影時の前記カメラの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する情報である誘導情報を生成し、前記誘導情報を前記出力装置に出力する工具
【請求項3】
ナットに着脱可能な第1ソケット部を駆動部により回転させる工具部と、
前記工具部に設けられるカメラと、
前記工具部に対して前記カメラの位置を可変とするカメラ位置可変部と、
前記カメラの姿勢を可変とするカメラ姿勢可変部と、
本締めされた前記ナットを撮影するための前記カメラの位置および姿勢を決めるカメラ調節部と、
を備え、
被連結物に通されたボルトに一次締めされた前記ナットに前記第1ソケット部を装着した状態において、前記カメラは、前記被連結物に通された別の前記ボルトに本締めされた前記ナットを撮影可能な位置および姿勢にすることが可能であり、
前記カメラ調節部は、カメラ調節支援装置と、出力装置と、を備え、
前記カメラ調節支援装置は、前記カメラを撮影目標となる前記ナットを撮影する目標位置および目標姿勢にすることを支援するためのものであって、前記被連結物に通された前記ボルトに一次締めまたは本締めされた前記ナットに前記第1ソケット部を装着した状態で、前記カメラが、前記カメラの撮影目標であって前記被連結物に通された別の前記ボルトに一次締めまたは本締めされた前記ナットを撮影した画像と、前記カメラの目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、前記画像撮影時の前記カメラの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する情報である誘導情報を生成し、前記誘導情報を前記出力装置に出力する工具
【請求項4】
前記第2ソケット部は、前記ナットが着脱するナット着脱部と、第2ソケット部本体と、を備え、
前記第2ソケット部本体は、前記胴部に連結しており、前記ナット着脱部に装着される前記ナットの軸方向回りにおいて、前記ナット着脱部に対して回転可能であり、前記第2ソケット部本体の回転軸から重心が偏心している請求項記載の工具。
【請求項5】
前記カメラを複数備え、
各前記カメラは、異なる方向から本締めされた前記ナットを撮影可能な位置および姿勢である請求項1~4のいずれか1項に記載の工具。
【請求項6】
一次締めされた前記ナットおよび前記被連結物には、それぞれマークが付されており、
一次締めされた前記ナットに前記第1ソケット部を装着した状態において、一の前記カメラは、前記ボルトに適切に本締めされた前記ナットに対して、前記ナットおよび前記被連結物の前記マークを含めて撮影可能な位置および姿勢である請求項1~4のいずれか1項に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具および工具の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木構造物等における複数の部材(以下、被連結物とする)の連結(接合)には、例えばボルト(高力ボルト)とナットが用いられる。
【0003】
ボルトとナットによる被連結物の連結作業の一例について説明すると、まず、被連結物に設けられた孔にボルトを通し、ボルトに座金およびナットを取り付け、ナットを回す工具により所定のトルクでナットをボルトに一次締め(仮締め)する。次いで、ナット、座金および被連結物に、略一続きの略直線状のマークを付す。次いで、工具によりナットをボルトに本締めする。本締めにおいて、ボルトと座金は回転せず、ナットのみが回転するため、ナットに付されたマークは、座金および被連結物に付されたマークに対し、その回転量に応じて角度がずれる。全てのナットの本締めが完了した後、ナットがボルトに適切に締結されているか否かを検査する。
【0004】
検査は、座金および被連結物に付されたマークとナットに付されたマークの角度のずれに基づいて行われる。一般的には、本締め後のナットの回転角がナットの平均回転角の±30°の範囲であれば、ナットが適切に締結していると判断される。
【0005】
従来、このような検査は、作業者が目視により行っていた。近年、本締めされたナットをカメラ等で撮影し、撮影した画像のナット、座金および被連結物に付されたマークの回転角に基づいてナットの締付状態を判定するナット締結検査装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-113755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ナット締結検査装置に用いる画像は、一般的に、作業者が、一度の撮影で複数のナットを撮影し、全てのナットを撮影するまで撮影範囲を変えながら撮影することにより取得される。しかしながら、このような撮影では、ナットを撮影し忘れる可能性がある。ナットを撮影し忘れると、そのナットについてはナット締結検査装置により検査することができない。また、撮影範囲ごとにカメラの位置や姿勢などの撮影条件が異なると、ナット締結検査装置によりナットの締付状態を判定する際に、画像の処理に手間と時間がかかるとともに、判定の精度が低下する可能性がある。
【0008】
本発明は、ナットの本締めを行いながら、本締め後のナットを確実に撮影し、ナット締結検査装置に適した画像を取得できる工具および工具の使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
工具は、ボルトにナットを締結するためのものであって、ナットに着脱可能な第1ソケット部を駆動部により回転させる工具部と、工具部に設けられるカメラと、を備えている。被締結物に通されたボルトに一次締めされたナットに第1ソケット部を装着した状態において、カメラは、被連結物に通された別のボルトに本締めされたナットを撮影可能な位置および姿勢である。
【0010】
工具は、カメラを複数備え、各カメラは、異なる方向から本締めされたナットを撮影可能な位置および姿勢であってもよい。
【0011】
また、一次締めされたナットおよび被連結物には、それぞれマークが付されており、工具は、一次締めされたナットに第1ソケット部を装着した状態において、一のカメラが、ボルトに適切に本締めされたナットに対して、ナットおよび被連結物のマークを含めて撮影可能な位置および姿勢であってもよい。
【0012】
工具は、カメラの姿勢を可変とするカメラ姿勢可変部を備えてもよい。また、工具は、工具部に対してカメラの位置を可変とするカメラ位置可変部を備えてもよい。
【0013】
工具は、本締めされたナットを撮影するためのカメラの位置および姿勢を決めるカメラ調節部を備えてもよい。
【0014】
カメラ調節部の一態様は、胴部と、ナットに着脱可能な第2ソケット部と、カメラに当接させる当接部と、を備えている。胴部および第2ソケット部は、一方が他方に対して姿勢を可変可能に連結している。胴部および当接部は、一方が他方に対して姿勢を可変可能に連結している。
【0015】
第2ソケット部は、ナットが着脱するナット着脱部と、第2ソケット部本体と、を備え、第2ソケット部本体は、胴部に連結しており、ナット着脱部に装着されるナットの軸方向回りにおいて、ナット着脱部に対して回転可能であり、第2ソケット部本体の回転軸から重心が偏心しているものであってもよい。
【0016】
カメラ調節部の一態様は、胴部と、ナットに着脱可能な第2ソケット部と、カメラ調節支援装置と、出力装置とを備えている。胴部および第2ソケット部は、一方が他方に対して姿勢を可変可能に連結している。胴部は、マーカを備えている。カメラ調節支援装置は、カメラを撮影目標となるナットを撮影する目標位置および目標姿勢にすることを支援するためのものであって、被連結物に通されたボルトに一次締めまたは本締めされたナットに第1ソケット部を装着し、カメラの撮影目標となるナットであって、被連結物に通された別のボルトに一次締めまたは本締めされたナットに第2ソケット部を装着した状態でカメラが撮影したマーカの画像と、カメラの目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、画像撮影時のカメラの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する情報である誘導情報を生成し、誘導情報を前記出力装置に出力する。
【0017】
上記カメラ調節部の態様において、マーカは、平面的な表示が好ましい。また、第2ソケット部をカメラの撮影目標となるナットに装着する際、胴部は、第2ソケット部に対し、平面マーカがカメラ(カメラの光軸)の目標とする方向である目標方向に直交する姿勢であることが好ましい。また、カメラの目標位置および目標姿勢に関する情報は、例えば、目標とするマーカの画素数およびマーカの形状に関する情報とし、カメラ調節支援装置は、マーカの画素数と画像のマーカの画素数との対比およびマーカの形状と画像のマーカの形状との対比に基づいて、画像撮影時のカメラの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する誘導情報を生成してもよい。
【0018】
カメラ調節部の一態様は、カメラ調節支援装置と、出力装置とを備えている。カメラ調節支援装置は、カメラを撮影目標となるナットを撮影する目標位置および目標姿勢にすることを支援するためのものであって、被連結物に通されたボルトに一次締めまたは本締めされたナットに第1ソケット部を装着した状態で、カメラが、カメラの撮影目標であって被連結物に通された別の前記ボルトに一次締めまたは本締めされた前記ナットを撮影した画像と、カメラの目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、画像撮影時のカメラの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する情報である誘導情報を生成し、誘導情報を出力装置に出力する。
【0019】
上記カメラ調節部の態様において、カメラの目標位置および目標姿勢に関する情報は、例えば、撮影目標となるナットの画素数、撮影目標となるナットに対するカメラ(レンズ)の光軸の目標方向およびナットの形状に関する情報である。カメラ調節支援装置は、ナットの画素数と画像のナットの画素数との対比および目標方向から見たナットの形状と画像のナットの形状との対比に基づいて、画像取得時のカメラの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する誘導情報を生成してもよい。
【0020】
工具の使用方法は、ナットを回転させる工具部と、工具部に設けられるカメラと、を備える工具の使用方法であって、被連結物に通されたボルトに一次締めされたナットを工具により本締めする際、カメラが、別のボルトに本締めされたナットを撮影する。
【0021】
工具の使用方法において、工具が、カメラを複数備え、各カメラが、異なる方向から本締めされたナットを撮影してもよい。
【0022】
工具の使用方法において、一次締めされたナットおよび被連結物には、それぞれマークが付されており、一次締めされたナットを工具により本締めする際、一のカメラが、ボルトに適切に本締めされたナットに対して、ナットおよび被連結物のマークを含めて撮影してもよい。なお、これは、一のカメラが、ボルトに適切に本締めされていないナットに対して、ナットおよび被連結物のマークを含めて撮影することを妨げるものではない。
【発明の効果】
【0023】
工具および工具の使用方法によると、ナットの本締めを行いながら、本締め後のナットを確実に撮影し、ナット締結検査装置に適した画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態の工具を示す側面図である。
図2】第1実施形態の工具を示す正面図である。
図3】第1実施形態の工具を示す平面図である。
図4】第1実施形態の工具の使用状態を示す部分断面側面図である。
図5】第1実施形態の工具の使用状態を示す背面図である。
図6】第2実施形態のカメラ調節部(カメラ調節具)の構成を示す図であって、(A)は平面図であり、(B)は部分断面側面図であり、(C)は正面図である。
図7】第2実施形態の工具の使用状態を示す部分断面側面図である。
図8】第2実施形態の工具の使用状態を示す平面図である。
図9】第3実施形態のカメラ調節具を示す図であって、(A)は平面図であり、(B)は部分断面側面図であり、(C)は背面図である。
図10】第3実施形態の工具を示す平面図である。
図11】カメラ調節支援装置の構成を示すブロック図である。
図12】第3実施形態の工具の使用状態を示す部分断面側面図である。
図13】第3実施形態の工具の使用状態を示す背面図である。
図14】第4実施形態の工具の使用状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、工具および工具の使用方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態の工具は、図1図3に示すように、工具部10と、カメラ位置可変部20と、カメラ姿勢可変部30と、カメラ40とを備えている。
【0026】
工具部10は、ナットNをボルトBに締結するためのものである。工具部10は、ハウジング11と、主軸12と、駆動部13と、駆動制御部14と、第1ソケット部15と、電源部16とを備えている。
【0027】
ハウジング11は、ハウジング本体11aと、把持部11bと、を備えている。ハウジング本体11aは、略円柱状のものであり、軸が前後方向に平行となっている。ハウジング本体11aは、内部に各構成を収容可能な空間を備えている。把持部11bは、作業者が工具を把持するためのものであり、ハウジング本体11aから下方に延びている。把持部11bの前面には、後述する駆動部13を操作するレバー11cが設けられている。また、ハウジング11には、後述する主軸12および第1ソケット部15の回転方向を切り替える正逆スイッチ(図示略)が設けられている。正逆スイッチの操作により、ナットNの締付と緩めを切り替えることができる。
【0028】
ハウジング本体11aには、前後方向においてハウジング本体11aの内外に延びる主軸12が設けられている。主軸12は、先端側がハウジング本体11aの先端から突出している。主軸12は、軸が前後方向に平行であり、その軸回りに回転可能となっている
【0029】
ハウジング本体11aの内部には、主軸12およびこれに連結する第1ソケット部15を回転させる駆動部13が設けられている。ここでは、駆動部13として電動モータが用いられている。
【0030】
ハウジング11には、レバー11cおよび正逆スイッチの操作により駆動部13を制御する駆動制御部14が設けられている。駆動制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備えるマイクロコンピュータにより構成される。
【0031】
第1ソケット部15は、ナットNに着脱可能なものである。本実施形態では、第1ソケット部15は、略円柱状であり、後端が主軸12の先端に同軸で装着されている。また、第1ソケット部15は、主軸12に着脱可能となっている。第1ソケット部15は、その先端の開口から内部にナットNを嵌められるナット嵌り部15aと、ナット嵌り部15aから同軸で後方に延びる穴であって、ナットNを締結するボルトBが受け入れられるボルト受け入れ部15bとを備えている。
【0032】
把持部11bの下端には、駆動部13および制御部等に電源を供給する電源部16が設けられている。ここでは、電源部16として、把持部11bに着脱可能であって、充電可能なバッテリが用いられている。
【0033】
工具部10は、レバー11cを後方に向かって引くと、駆動部13が駆動し、レバー11cを離すと、レバー11cが初期位置に復帰して、駆動部13が停止する。また、工具部10は、レバー11cの後退量に比例して駆動部13の回転数が大きくなるようになっている。
【0034】
工具部10は、第1ソケット部15のナット嵌り部15aにボルトBに取り付けられたナットNを装着し、駆動部13を駆動させ、主軸12とともに第1ソケット部15を回転させることにより、ナットNをボルトBに締結したり、ボルトBに締結したナットNを緩めることができる。
【0035】
なお、第1ソケット部15は、大きさの異なるナットNに対応できるように、ナット嵌り部15aの大きさが異なるものを複数備えてもよい。
【0036】
カメラ位置可変部20は、後述するカメラ40の位置を可変とするためのものである。カメラ位置可変部20は、工具部10に取り付けられている。本実施形態では、カメラ位置可変部20は、基部21と、台部23と、を備えている。基部21は、ハウジング本体11aの上部に設けられている。基部21の上面には、前後方向に延びる溝、長孔またはレール等からなる第1ガイド25が設けられている。台部23は、第1ガイド25に沿って移動可能に基部21上に設けられており、後述するカメラ姿勢可変部30およびカメラ40を前後方向に移動させることができる。台部23には、カメラ姿勢可変部30およびカメラ40を左右方向に移動させるために、左右方向に延びる溝、長孔またはレール等からなる第2ガイド27が設けられている。また、台部23には、カメラ姿勢可変部30およびカメラ40を上下方向に移動させる昇降部29が2つ設けられている。
【0037】
カメラ姿勢可変部30は、カメラ40の姿勢を可変とするためのものである。カメラ姿勢可変部30は、カメラ位置可変部20に取り付けられている。本実施形態では、カメラ姿勢可変部30は、2つ備えられている。各カメラ姿勢可変部30は、自由雲台であり、カメラ姿勢可変部本体31と、球状体33と、支持体35と、設置部37と、を備えている。カメラ姿勢可変部本体31は、昇降部29に連結している。また、カメラ姿勢可変部本体31および昇降部29は、第2ガイド27に沿って左右方向に移動可能となっている。カメラ姿勢可変部本体31は、その内部に球状の球状体33を収容し、球状体33を任意方向に回転(回動)可能に支持している。カメラ姿勢可変部本体31は、上部が開口しており、球状体33の一部は、その開口から外部に露出している。球状体33の外部に露出している部分には、棒状の支持体35の一端が連結している。支持体35の他端は、略板状の設置部37の底面に連結している。
【0038】
カメラ40は、ナットNの締付状態を検査するナット締結検査装置に用いる画像を取得するためのものである。本実施形態では、カメラ40は、2つ備えられており、それぞれカメラ姿勢可変部30の設置部37上に設置されている。カメラ40は、広角レンズ等のレンズ41を有する小型カメラであり、動画を撮影可能なものである。カメラ40で撮影した画像(画像データ)は、カメラ40に着脱可能なフラッシュメモリ等の補助記憶装置に記憶されまたはカメラ40と通信可能な外部装置に送信される。外部装置は、例えば、コンピュータ等で構成されるナットNを撮影した画像からナットNのボルトBへの締付状態を判定するナット締結検査装置または後述するカメラ調節支援装置70である。
【0039】
なお、カメラ40は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、カメラ40は、静止画を撮影可能なものであってもよい。
【0040】
カメラ40は、カメラ位置可変部20により、カメラ姿勢可変部30とともに、前後方向、左右方向および上下方向に移動することができる。また、カメラ40は、カメラ姿勢可変部30により、任意の方向に回転可能であるため、任意の姿勢にすることができる。
【0041】
上記第1実施形態の工具の使用方法について説明する。ここでは、2つの部材(被連結物C,C)を複数のボルトB(高力ボルト)およびナットNにより連結するものとする。各被連結物Cには、ボルトBを通すための孔が直交する所定の2方向において間隔をあけて複数設けられている。ここでは、ボルトBを通すための孔は、上下方向に等間隔で設けられ、左右方向にも等間隔で設けられている。ボルトBへのナットNの締結は、説明の便宜上、左から右および上から下に向かって行われるものとする。
【0042】
被連結物C,Cの連結は、一次締め工程、マーキング工程、カメラ調節工程、本締め工程の順に行われる。一次締め工程では、被連結物Cの孔にボルトBを通す。次いで、ボルトBに座金Wを取り付ける。次いで、ボルトBにナットNを取り付ける。次いで、工具部10の第1ソケットをナットNに装着し、工具部10の駆動部13を駆動して、ナットNをボルトBに一次締め(仮締結)する。
【0043】
マーキング工程では、ボルトBに一次締めされたナットN1、座金Wおよび被連結物Cに組となるマークM1,M2,M3を付ける。本実施形態では、マークM1,M2,M3は、ナットN1(ボルトB)の軸方向から見て、ナットN1の頭部面、座金Wの頭部面および被連結物CのナットNが締結する面に描かれる略一続きの直線である。これにより、ナットN1、座金Wおよび被連結物Cに付されるマークM1,M2,M3は、一次締めされたナットN1(被連結物Cに通されたボルトB)の軸回りにおいて回転角が略同一となる。なお、マークは、ボルトBの先端面も含めて、略一続きの直線とし、ボルトBにもマークを付してもよい。ボルトBにもマークを付けることにより、ナットの締結に伴うボルトBの供回りも確認することができる。また、座金Wを用いない場合、マークは、ナットN1と被連結物Cにのみ付されていてもよい。
【0044】
カメラ調節工程は、本締め工程において工具部10で一次締めしたナットN1を本締めしながらすでに本締めされたナットN2をカメラ40で撮影するためのカメラ40の位置および姿勢を調節するための工程である。カメラ調節工程では、工具部10により所定の範囲において一次締めされたナットN1を本締めする。次いで、カメラ40の位置および姿勢を調節する。カメラ40の位置および姿勢の調節は、図4および図5に示すように、工具部10の第1ソケット部15を被連結物Cに通されたボルトBに一次締めされたナットN1に装着した状態で、各カメラ40が別のボルトBにすでに本締めされたナットN2を撮影できるようにカメラ40の位置および姿勢をカメラ位置可変部20およびカメラ姿勢可変部30により調節する。例えば、各カメラ40は、レンズ41(光軸)が撮影目標となる一の本締めされたナットN2に向くように位置および姿勢を調節する。この際、2台のカメラ40,40は、撮影目標となる一の本締めされたナットN2を異なる方向から撮影する位置および姿勢であることが好ましい。また、一方のカメラ40は、ボルトBに適切に本締めされたナットN2に対して、組となるマークM1,M2,M3を含めて撮影可能な位置および姿勢であることが好ましい。この場合、一方のカメラ40は、ナットN2の軸方向から見て、ボルトBに適切に本締めされたナットN2に付されたマークM1が延びる方向とこれと組みをなす被締結物に付されたマークM3が延びる方向の間の方向、例えばこれらの方向のなす角度の略中間の方向から本締めされたナットN2の中心に向けられる。本締めされたナットN2がボルトBに適切に締結されているか否かは、本締めされたナットN2に付されたマークM1が延びる方向とこれと組みをなす被締結物に付されたマークM3が延びる方向とのなす角度が基準化された合格範囲内にあるか否かにより判断される。そこで、ボルトBに適切に本締めされたナットN2に付されたマークM1が延びる方向は、この合格範囲内の角度から適宜設定する。他方のカメラ40は、一方のカメラ40にとって撮影対象となるナットN2の死角となる側から撮影対象となるナットN2を撮影可能な位置および姿勢であることが好ましい。
【0045】
本締め工程では、一次締めしたナットN1を工具部10により本締めする。図4および図5に示すように、一次締めした各ナットN1を工具部10により本締めする際、カメラ40ですでに本締めされたナットN2とその周辺の本締めされたナットN2を撮影する。一方のカメラ40は、適切に本締めされたナットN2については、ナットとともにナットN2、座金Wおよび被連結物Cにそれぞれ付されたマークM1,M2,M3も含めて撮影する。カメラ40による本締めされたナットN2の撮影は、一次締めした各ナットN1を本締めするごとに行われる。本締め工程では、カメラ調節工程でカメラ40の位置および姿勢を調節したことならびにボルトBおよびナットN1,N2の配置が規則的であることにより、一次締めしたナットN1を工具部10で本締めしながら、カメラ40ですでに本締めされたナットN2とその周辺の本締めされたナットN2を撮影することができる。
【0046】
工具部10により全てのナットN1の本締めが完了した後、未撮影の本締めされたナットN2は、別途カメラ40で撮影する。例えば、未撮影の本締めされたナットN2をカメラ40が撮影できるように、工具部10の向きを変えて第1ソケットを本締めされたナットN2に装着し、カメラ40で未撮影の本締めされたナットN2を撮影する。
【0047】
各カメラ40で撮影されるナットには、本締めされていないナットN1が含まれていてもよい。また、2つのカメラ40,40は、撮影範囲(画角)が異なっていてもよいし、それぞれ別の本締めされたナットN2に向けられていてもよい。また、本締めされたナットN2の撮影は、一方のカメラ40で、ナットN2、座金Wおよび被連結物Cに付されたマークM1,M2,M3のうちの一つまたは二つを撮影し、他方のカメラ40で残りのマークを撮影してもよい。
【0048】
第1実施形態の工具およびその使用方法によると、工具部10と、カメラ40とを備え、被連結物Cに通されたボルトBに一次締めされたナットN1を工具部10により本締めしながら、別のボルトBに本締めされたナットN2をカメラ40で撮影できるので、ナットの締結作業とナットの締結状態を判定するナット締結検査装置に用いるナットの画像の取得を効率よく行うことができる。また、一次締めされたナットN1を本締めしながらカメラ40で本締めされたナットN2を撮影するので、ナットN2の撮影忘れを低減できる。また、複数のナットを工具部10により順次締結する際、締結するナットが変わってもカメラ40と撮影目標となるナットの距離やカメラ40の向き(角度)等が略同じとなるため、本締めされたナットN2の撮影ごとに同質の画像を取得することができる。この画像をナット締結検査装置に用いると、画像の前処理の手間や時間が軽減されるとともに、検査精度が向上する。
【0049】
また、第1実施形態の工具およびその使用方法によると、カメラ40を複数備え、各カメラ40で異なる方向から本締めされたナットN2を撮影することができるので、死角が少ないナットおよびマークの画像を取得することができる。この画像をナット締結検査装置に用いると、検査精度がより一層向上する。
【0050】
また、第1実施形態の工具によると、カメラ40の姿勢を可変とするカメラ姿勢可変部30および工具部10に対してカメラ40の位置を可変とするカメラ位置可変部20を備えることにより、カメラ40の位置や姿勢を任意に変えることができるので、任意の本締めされたナットN2を撮影することができる。
【0051】
また、第1実施形態の工具およびその使用方法によると、被連結物Cに通されたボルトBに一次締めされたナットN1を工具により本締めする際、一のカメラ40は、ボルトBに適切に本締めされたナットN2に対して、ナットN2および被連結物CのマークM1,M3を含めて撮影可能であることにより、ナットN2および全てのマークがより撮影されやすくなるので、ナット締結検査装置の検査精度をより向上させる画像を取得することができる。
【0052】
次に、第2実施形態の工具について説明する。第2実施形態の工具は、第1実施形態の工具に、さらにカメラ調節部50を備えている。そのため、工具部10、カメラ位置可変部20、カメラ姿勢可変部30およびカメラ40の説明は省略する。
【0053】
カメラ調節部50は、本締めされたナットN2を撮影するカメラ40の位置および姿勢を決めるためのものである。本実施形態において、カメラ調節部50は、カメラ調節具60であって、図6に示すように、胴部61と、胴部61に接続し、ナットNに着脱可能な第2ソケット部62と、胴部61に接続し、カメラ40に当接する当接部68とを備えている。
【0054】
胴部61は、棒状(柱状)のものである。胴部61は、伸縮機構(図示略)により、その長手方向に伸縮可能となっており、その長さを調整できるようになっている。
【0055】
第2ソケット部62は、ナットが着脱するナット着脱部63と、第2ソケット部本体64とを備えている。ナット着脱部63は、上記第1ソケット部15と同様のものであり、円柱状であって、ナット嵌り部63aと、ボルト受け入れ部63bとを備えている。第2ソケット部本体64は、ナット着脱部63と同軸でナット着脱部63の側周と後端とを覆う有底の円筒状のものである。第2ソケット部本体64は、ナット着脱部63に対して、ナット着脱部63に装着されるナットNの軸方向回りにおいて回転可能、言い換えれば、第2ソケット部本体64およびナット着脱部63の軸方向回りにおいて回転可能となっている。本実施形態では、第2ソケット部本体64は、軸受65を介してナット着脱部63と連結している。第2ソケット部本体64は、その回転軸から重心を偏心させる偏心部66を備えている。本実施形態では、偏心部66は、重りであって、第2ソケット部本体64の外周面の一部に設けられている。ナット着脱部63が固定された状態において、第2ソケット部本体64は、ナット着脱部63に対して回転可能であり、さらに偏心部66を備えることにより、偏心部66が常に回転軸の真下に位置する姿勢となる。
【0056】
第2ソケット部本体64は、姿勢可変部67を介して、胴部61の一端(先端)に連結している。姿勢可変部67は、カメラ姿勢可変部30と同様のものである。姿勢可変部67により、第2ソケット部62および胴部61の一方は、他方に対し、任意の方向に回転(回動)可能であり、姿勢を任意に変えることができる。
【0057】
当接部68は、カメラ40が当接する部分である。当接部68は、カメラ40の所定の部分の形状に沿うものであることが好ましい。本実施形態では、当接部68は、L字状であって、直方体状のカメラ40の角に合わせられるようになっている。当接部68は、姿勢可変部67を介して、胴部61の他端(後端)に連結している。姿勢可変部67より、当接部68および胴部61の一方は、他方に対し、任意の方向に回転(回動)可能であり、姿勢を任意に変えることができる。
【0058】
上記第2実施形態の工具の使用方法について説明する。被連結物C,Cの連結は、一次締め工程、マーキング工程、カメラ調節工程、本締め工程の順に行われる。一次締め工程、マーキング工程および本締め工程は、第1実施形態と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0059】
カメラ調節工程では、工具部10により所定の範囲の一次締めされたナットN1を本締めする。次いで、カメラ40の位置および姿勢を調節する。カメラ40の位置および姿勢の調節は、図7および図8に示すように、工具の第1ソケット部15を被連結物Cに通されたボルトBに一次締めされた一のナットN1に装着する。また、工具の第1ソケット部15を一のナットN1に装着した状態において、一方のカメラ40の撮影目標となる別のボルトBに本締めされたナットN2にカメラ調節部50の第2ソケット部62を装着する。次いで、胴部61の長手方向における胴部61と当接部68の長さが、カメラ40にとって撮影目標となるナットN2の撮影に適した距離と略等しくなるように、胴部61の長さを伸縮させる。また、第2ソケット部62に対する胴部61の角度(姿勢)が、カメラ40にとって撮影目標となるナットN2の撮影に適した姿勢(角度)と略等しくなるように、第2ソケット部62に対する胴部61の姿勢(角度)を姿勢可変部67により調節する。胴部61の長手方向における胴部61と当接部68の長さ、言い換えれば、撮影目標となるナットN2とカメラ40(レンズ41)の略直線距離は、例えば、撮影目標となるナットN2をカメラ40で撮影した際、撮影した画像においてナットN2の上面(頭頂面)またはこれが締結するボルトBの先端面が所定の画素数(例えば100ピクセル)以上となるような長さ(距離)に設定する。例えば、胴部61の長手方向における胴部61と当接部68の長さは、ナットN2に対するカメラ40の距離を変えながらカメラ40のでナットN2を撮影し、撮影した画像のナットN2またはボルトBの画素数を調べることにより設定してもよいし、このような条件を満たすように、既往の手法により算定してもよい。第2ソケット部62に対する胴部61の姿勢(角度)、言い換えれば略撮影目標となるナットN2に対するカメラ40(レンズ41)の光軸の方向(パン角、ロール角、チルト角)は、例えば、ナットN1、座金W、被連結物CにマークM1,M2,M3を付した際の略一続きの直線の方向が左右方向に平行である場合、一方のカメラ40に対しては、ボルトBに適切に本締めされたナットN2に対して、組となるマークM1,M2,M3を含めて撮影可能であり、かつ、撮影目標となるナットN2を撮影した際、画像の左右方向または上下方向が、ナットN1、座金W、被連結物CにマークM1,M2,M3を付した際の直線と略平行となる向きとする。他方のカメラ40に対しては、一のカメラ40にとって撮影対象となるナットN2の死角となる側から撮影対象となるナットN2を撮影可能であり、かつ、撮影目標となるナットN2を撮影した際、画像の左右方向または上下方向が、ナットN1、座金W、被連結物CにマークM1,M2,M3を付した際の直線と略平行となる向きとする。次いで、カメラ位置可変部20およびカメラ姿勢可変部30により一方のカメラ40の位置および姿勢を調節して、カメラ40の所定の部分を当接部68に当接させる。また、他方のカメラ40に対しても、一方のカメラ40と同様に、その位置と姿勢を調節して、カメラ調節工程が完了する。
【0060】
なお、本締め工程において、例えば、カメラ調節工程で設定したカメラ40の位置または姿勢が変わってしまう場合、再度カメラ調節工程を行えばよい。この際、前回の調節とは別の本締めされたナットN2に、カメラ調節部50の第2ソケット部62を装着しても、胴部61および当接部68の姿勢を前回設定した姿勢と同じ姿勢にすることができる。その理由は、ボルトBに本締めされたナットN2は、それぞれ回転角が異なる、言い換えればナットN2の角の位置が異なるが、カメラ調節部50は、第2ソケット部本体64が、ナット着脱部63に対して回転可能であり、さらに偏心部66を備えていることにより、第2ソケット部本体64は、ナット嵌り部63aに嵌められるナットの回転角がどの様な角度であっても、偏心部66が下に位置する姿勢となるため、第2ソケット部本体64に連結する胴部61およびこれに連結する当接部68の姿勢が、前回設定した姿勢と同じになるためである。
【0061】
第2実施形態の工具によると、カメラ調節部50(カメラ調節具60)を備えることにより、短時間で容易にカメラ40を本締めしたナットの撮影に適した位置および姿勢とすることができる。
【0062】
また、第2実施形態の工具によると、カメラ調節部50(カメラ調節具60)が、胴部61と、第2ソケット部62と、当接部68とを備えることにより、簡易な構成で、カメラ40を本締めしたナットの撮影に適した位置および姿勢にすることができる。
【0063】
また、第2実施形態の工具によると、第2ソケット部本体64が、ナット着脱部63に対して回転可能であり、さらに偏心部66を備えていることにより、第2ソケット部62に対する胴部61および当接部68の姿勢を一度決めれば、どのような回転角のナットN2に第2ソケット部62を装着しても、第2ソケット部62に対する胴部61および当接部68の姿勢が同じとなるので、カメラ40を再度同じ位置および姿勢に調節することができる。
【0064】
次に、第3実施形態の工具について説明する。第3実施形態の工具は、第1実施形態の工具に加え、カメラ調節部50を備えている。そのため、以下の説明では、工具部10、カメラ位置可変部20、カメラ姿勢可変部30およびカメラ40の説明は省略する。
【0065】
カメラ調節部50は、カメラ40に非接触で、本締めされたナットN2を撮影するカメラ40の位置および姿勢を決めるためのものである。カメラ調節部50は、カメラ調節具60と、カメラ調節支援装置70と、出力装置90とを備えている。
【0066】
カメラ調節具60は、図9に示すように、胴部61と、胴部61に接続し、ナットNに着脱可能な第2ソケット部62と、を備えている。第2ソケット部62は、ナットNが着脱するナット着脱部63と、第2ソケット部本体64とを備えている。第2ソケット部本体64は、姿勢可変部67を介して、胴部61の一端(先端)に連結している。第2ソケット部本体64は、偏心部66を備えている。胴部61、第2ソケット部62(ナット着脱部63、第2ソケット部本体64)、姿勢可変部67および偏心部66は、第2実施形態のものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0067】
胴部61には、マーカMAが設けられている。本実施形態では、マーカMAは、胴部61の他端(後端)面に付されている平面的な表示である。マーカMAは、円であって、その中心を通り、かつ、直交する2つの直線により4つの領域に分割され、4つの領域が第1色と第2色で交互に塗りつぶされている。なお、マーカMAは、後述するカメラ調節支援装置70が、カメラ40が撮影したマーカMAの画像からマーカを認識できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0068】
カメラ調節具60は、被連結物C,Cに通されたボルトBに本締めされたナットN2であって、カメラ40の撮影目標となるナットN2に、第2ソケット部62が装着される。なお、第2ソケット部62は、ボルトBに一次締めされたナットN1に装着されてもよい。
【0069】
カメラ調節支援装置70は、カメラ40をボルトBに本締めされたナットN2の撮影に適した位置および姿勢にすることを支援するためのものである。本実施形態では、カメラ調節支援装置70は、図10に示すように、ハウジング本体11aに設けられている。カメラ調節支援装置70は、カメラ40および出力装置90と通信可能に接続している。カメラ調節支援装置70は、ハードウェアの構成として、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、記憶装置と、通信IF(Interface)とを備えており、これらの各構成はバスで接続されている。CPUは、カメラ調節支援装置70の機能的構成を実現するためのプログラムを実行し、カメラ調節支援装置70を制御する。メモリは、CPUがプログラムを実行する際に作業領域として機能するものである。メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。記憶装置は、プログラムおよび各種データ等を記憶する。記憶装置は、例えば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等で構成されている。通信IFは、カメラ40等の他の装置と通信を行うためのインターフェースである。
【0070】
なお、カメラ調節支援装置70は、工具部10に設けられている必要はなく、カメラ40と通信可能なサーバ等の外部装置であってもよい。
【0071】
出力装置90は、各種情報を出力するものであり、例えばディスプレイ、スピーカまたはこれらの両方により構成される。本実施形態では、出力装置90は、ディスプレイであり、図10に示すように、ハウジング本体11aに設けられ、画面が上方に向いている。
【0072】
カメラ調節支援装置70は、図11に示すように、機能的構成として、取得部71と、誘導情報生成部75と、出力部79とを備えている。
【0073】
取得部71は、カメラ40が撮影した画像(画像データ)および各種情報を取得する。本実施形態では、取得部71は、被連結物Cに通されたボルトBに一次締めされたナットN1に工具部10の第1ソケット部15を装着し、カメラ40の撮影目標となるナットであって、被連結物Cに通された別のボルトBに本締めされたナットN2にカメラ調節具60の第2ソケット部62を装着し、かつ、胴部61が撮影目標となるナットN2の撮影に適したカメラ40の方向に向けられた状態で、カメラ40がマーカMAを撮影した画像をカメラ40からの通信により取得する。また、取得部71は、外部機器等からの通信等により、後述するカメラ40の目標位置および目標姿勢に関する情報を取得することができる。
【0074】
誘導情報生成部75は、カメラ40が撮影したマーカMAの画像と、カメラ40の目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、マーカMA撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する情報である誘導情報を生成し、誘導情報を出力部79に出力する。カメラ40の目標位置および目標姿勢は、カメラ40で撮影目標となるナットN2を撮影するのに適した位置および姿勢である。本実施形態では、カメラ40の目標位置に関する情報は、画像のマーカの画素数(例えば100ピクセル以上の値)であり、取得部71により取得またはあらかじめ記憶装置に記憶されている。カメラ40の目標姿勢に関する情報は、例えば、カメラ40の目標姿勢をその光軸がカメラ調節具60のマーカMAの中心を通ってマーカMAに直交するものとした場合におけるその光軸方向から見たマーカMAの形状に関する情報であり、具体的には、実空間におけるマーカMAの複数の特徴点(中心および円周部分と直線部分との交点等)の座標(2次元座標)であり、取得部71により取得またはあらかじめ記憶装置に記憶される。誘導情報生成部75は、カメラ40が撮影したマーカMAの画像にマーカ認識手法を適用して、画像中のマーカを抽出し、画像マーカ情報としてマーカの画素数およびカメラ調節具60のマーカMAの特徴点に対応する点である対応点を検出する。
【0075】
誘導情報生成部75は、カメラ40の目標位置に関する情報の画素数と座標変換等による画像のマーカの画素数との対比およびカメラ40の目標姿勢に関する情報の特徴点と画像のマーカの対応点との対比により、すなわちこれら両画素数を略一致および両点(マーカの形状)を略一致させることにより、画像(マーカMA)撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢にする誘導情報を既往の手法により生成する。誘導情報は、例えば、画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢にするための移動方向および移動距離ならびに回転方向および回転量である。なお、画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢にする誘導情報を生成できるものであれば、上記以外の手法で誘導情報を生成してもよい。例えば、誘導情報生成部75は、カメラ40が撮影したマーカMAの画像と、カメラ40の目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、カメラ40の目標位置および目標姿勢および画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢を算定し、カメラ40の目標位置および目標姿勢および画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢に基づいて、誘導情報を生成してもよい。
【0076】
出力部79は、各種情報を、後述する出力装置90に出力する。本実施形態では、出力部79は、誘導情報を、出力装置90に表示させる。
【0077】
上記第3実施形態の工具の使用方法について説明する。被連結物C,Cの連結は、一次締め工程、マーキング工程、カメラ調節工程、本締め工程の順に行われる。一次締め工程、マーキング工程および本締め工程は、第1実施形態と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0078】
カメラ調節工程では、まず、工具部10により所定の範囲の一次締めされたナットN1を本締めする。次いで、カメラ40の位置および姿勢を調節する。カメラ40の位置および姿勢の調節は、図12および図13に示すように、工具部10の第1ソケット部15を被連結物C,Cに通されたボルトBに一次締めされた一のナットN1に装着する。また、被連結物C,Cに通された別のボルトBに本締めされ、カメラ40の撮影目標となるナットN2にカメラ調節具60の第2ソケット部62を装着する。そして、第2ソケット部62に対する胴部61の姿勢(角度)が、一方のカメラ40の撮影目標となるナットN2の撮影に適した向きとなるように、第2ソケット部62に対する胴部61の角度を姿勢可変部67により調節する。第2ソケット部62に対する胴部61の姿勢の調節は、第2実施形態と同様である。そして、一方のカメラ40により胴部61のマーカMAを撮影すると、カメラ調節支援装置70の上記各機能的構成により、出力装置90に誘導情報が表示され、誘導情報に従って、一方のカメラ40の位置および姿勢を調節することにより、一方のカメラ40の位置および姿勢が本締めされたナットN2撮影に適した目標位置および目標姿勢となる。必要に応じて、カメラ40の位置および姿勢の調節とカメラ40によるマーカMAの再撮影およびカメラ調節支援装置70の処理を繰り返してもよい。
【0079】
他方のカメラ40に対しても、一方のカメラ40と同様に、その位置と姿勢を調節して、カメラ調節工程が完了する。この場合も、第2ソケット部62に対する胴部61の姿勢の調節は、第2実施形態と同様である。
【0080】
第3実施形態の工具によると、カメラ調節部50が、胴部61と、第2ソケット部62と、カメラ調節支援装置70と、出力装置90とを備えることにより、短時間で容易にカメラ40をナットの撮影に適した位置および姿勢とすることができる。
【0081】
次に、第4実施形態の工具について説明する。第4実施形態の工具は、第1実施形態の工具に加え、カメラ調節部50を備えている。そのため、以下の説明では、工具部10、カメラ位置可変部20、カメラ姿勢可変部30およびカメラ40の説明は省略する。
【0082】
カメラ調節部50は、カメラ調節具60を用いることなく、カメラ40に非接触で、本締めされたナットN2を撮影するカメラ40の位置および姿勢を決めるためのものである。カメラ調節部50は、カメラ調節支援装置70と、出力装置90とを備えている。出力装置90は、第3実施形態のものと同じであり、ここでは説明を省略する。第3実施形態では、カメラ調節具60のマーカMAをマーカとするのに対して、本実施形態では、カメラ40の撮影目標となるナットN2であって、被連結物C,Cに通されたボルトBに本締めされたナットN2をマーカとする。そのため、本実施形態のカメラ調節支援装置70の取得部71、誘導情報生成部75および出力部79は、第3実施形態の取得部71、誘導情報生成部75および出力部79におけるマーカMAおよび画像のマーカをナットに置き換えたものに相当する。
【0083】
取得部71は、第3実施形態のものと同じであり、カメラ40が撮影した画像(画像データ)および各種情報を取得する。本実施形態では、取得部71は、被連結物Cに通されたボルトBに一次締めされたナットN1に工具部10の第1ソケット部15を装着した状態で、被連結物Cに通された別のボルトBに本締めされ、カメラ40の撮影目標となるナットN2をカメラ40で撮影した画像をカメラ40からの通信により取得する。また、取得部71は、外部機器等からの通信等により、後述するカメラ40の目標位置および目標姿勢に関する情報を取得することができる。
【0084】
誘導情報生成部75は、カメラ40が撮影したナットN2の画像と、カメラ40の目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、ナットN2撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に誘導する情報である誘導情報を生成し、誘導情報を出力部79に出力する。本実施形態では、カメラ40の目標位置に関する情報は、画像のナットの上面(頭頂面)またはこれが締結するボルトBの先端面の画素数(例えば100ピクセル以上の値)であり、取得部71または入力部を備える場合には入力部により取得またはあらかじめ記憶装置に記憶されている。カメラ40の目標姿勢に関する情報は、例えば、撮影目標となるナットN2に対するカメラ40(レンズ41)の光軸の方向と、ナットの形状に関する情報である。撮影目標となるナットN2に対するカメラ40(レンズ41)の光軸の方向は、第2実施形態のカメラ調節具60の胴部61の姿勢と同じであり、一方のカメラ40に対しては、ボルトBに適切に本締めされたナットN2に対して、組となるマークM1,M2,M3を含めて撮影可能であり、かつ、撮影目標となるナットN2を撮影した際、画像の左右方向または上下方向が、ナットN1、座金W、被連結物Cにマークを付した際の直線と略平行となる方向であり、他方のカメラ40に対しては、一方のカメラ40にとって撮影対象となるナットN2の死角となる側から撮影対象となるナットN2を撮影可能であり、かつ、撮影目標となるナットN2を撮影した際、画像の左右方向または上下方向が、ナットN1、座金W、被連結物Cにマークを付した際の直線と略平行となる方向である。ナットの形状に関する情報は、例えば、実空間におけるナットの複数の特徴点の座標(2次元または3次元座標)である。カメラ40の目標姿勢に関する情報は、取得部71により取得、あらかじめ記憶装置に記憶または取得もしくは記憶装置の情報に基づいて既往の手法により誘導情報生成部75で算定される。
【0085】
誘導情報生成部75は、カメラ40が撮影したナットの画像にマーカ認識手法を適用して、画像中の撮影対象となるナットまたはこれに加えてナットが締結するボルトを抽出し、画像マーカ情報としてナットの上面(頭頂面)またはボルトの先端面の画素数およびナットN1,N2の特徴点に対応する点である対応点を検出する。誘導情報生成部75は、目標姿勢に関する情報における撮影目標となるナットN2に対するカメラ40(レンズ41)の光軸の方向とナットの複数の特徴点の座標に基づいて、カメラ40の目標姿勢から見たナットの特徴点の座標(2次元座標)を算定する。
【0086】
誘導情報生成部75は、カメラ40の目標位置に関する情報の画素数と画像のナットまたはボルトの画素数との対比および座標変換等によるカメラ40の目標姿勢から見たナットN2の特徴点と画像のナットの対応点との対比により、具体的にはこれら両画素数を略一致および両点(ナットの形状)を略一致させることにより、画像(ナットN2)撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢にする誘導情報を既往の手法により生成する。誘導情報生成部75は、例えば、画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢にするための移動方向および移動距離ならびに回転方向および回転量を誘導情報として生成する。なお、画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢にする誘導情報を生成できるものであれば、上記以外の手法で誘導情報を生成してもよい。例えば、誘導情報生成部75は、カメラ40が撮影したナットN2の画像と、カメラ40の目標位置および目標姿勢に関する情報とに基づいて、カメラ40の目標位置および目標姿勢および画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢を算定し、カメラ40の目標位置および目標姿勢および画像撮影時のカメラ40の位置および姿勢に基づいて、誘導情報を生成してもよい。
【0087】
出力部79は、第3実施形態と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0088】
上記第4実施形態の工具の使用方法について説明する。被連結物C,Cの連結は、一次締め工程、マーキング工程、カメラ調節工程、本締め工程の順に行われる。一次締め工程、マーキング工程および本締め工程は、第1実施形態と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0089】
カメラ調節工程では、まず、工具部10により所定の範囲の一次締めされたナットN1を本締めする。次いで、カメラ40の位置および姿勢を調節する。カメラ40の位置および姿勢の調節は、工具部10の第1ソケット部15を被連結物C,Cに通されたボルトBに一次締めされた一のナットN1に装着する。また、被連結物C,Cに通された別のボルトBに本締めされ、カメラ40の撮影目標となるナットN2を撮影目標(マーカ)とする。
【0090】
そして、一方のカメラ40により撮影目標となるナットN2を撮影すると、カメラ調節支援装置70の上記各機能的構成により、出力装置90に誘導情報が表示され、誘導情報に従って、一方のカメラ40の位置および姿勢を調節することにより、一方のカメラ40の位置および姿勢が目標位置および目標姿勢となる。必要に応じて、カメラ40の位置および姿勢の調節とカメラ40によるナットN2の再撮影およびカメラ調節支援装置70の処理を繰り返してもよい。
【0091】
次いで、他方のカメラ40に対しても、一方のカメラ40と同様に、その位置と姿勢を調節して、カメラ調節工程が完了する。
【0092】
第4実施形態の工具によると、カメラ調節部50が、カメラ調節支援装置70と、出力装置90とを備えることにより、容易かつ短時間でカメラ40をナットの撮影に適した位置および姿勢とすることができる。
【0093】
本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0094】
10 工具部
11 ハウジング
11a ハウジング本体
11b 把持部
11c レバー
12 主軸
13 駆動部
14 駆動制御部
15 第1ソケット部
15a ナット嵌り部
15b ボルト受け入れ部
16 電源部
20 カメラ位置可変部
21 基部
23 台部
25 第1ガイド
27 第2ガイド
29 昇降部
30 カメラ姿勢可変部
31 カメラ姿勢可変部本体
33 球状体
35 支持体
37 設置部
40 カメラ
41 レンズ
50 カメラ調節部
60 カメラ調節具
61 胴部
62 第2ソケット部
63 ナット着脱部
63a ナット嵌り部
63b ボルト受け入れ部
64 第2ソケット部本体
65 軸受
66 偏心部
67 姿勢可変部
68 当接部
70 カメラ調節支援装置
71 取得部
75 誘導情報生成部
79 出力部
90 出力装置
B ボルト
C 被連結物
MA マーカ
M1,M2,M3 マーク
N,N1,N2 ナット
W 座金
図1
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