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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/00 20060101AFI20240712BHJP
   A45D 44/22 20060101ALI20240712BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240712BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240712BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240712BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A45D44/00 Z ZBP
A45D44/22 Z ZNM
A61K8/02
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q1/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022509227
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2020037454
(87)【国際公開番号】W WO2021192369
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2020055790
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020058596
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 浩志
(72)【発明者】
【氏名】上田 真里
(72)【発明者】
【氏名】竹下 さち子
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061486(WO,A1)
【文献】特開2013-119676(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
A45D 44/22
A61K 8/02
A61Q 19/00
A61Q 1/00
A61Q 1/10
B32B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜シートの被貼付面への貼付を補助する治具であって、
第1面を有する基部と、
前記基部の前記第1面に取り付けられ、微細孔が設けられた多孔性親水フィルムと、
前記第1面の反対面に取り付けられ、外形が枠形状の台座と、
を備えた治具。
【請求項2】
前記多孔性親水フィルムの硬度は、4度以上20度以下である、
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
記多孔性親水フィルムの微細孔の開孔率は35%以上55%以下である、
請求項1に記載の治具。
【請求項4】
前記基部の硬度は、4度以上20度以下である、
請求項1に記載の治具。
【請求項5】
前記多孔性親水フィルムは、透明性を有する、
請求項1に記載の治具。
【請求項6】
前記台座の硬度は、5度以上である、
請求項1に記載の治具。
【請求項7】
前記基部は、透明性を有する、請求項1に記載の治具。
【請求項8】
前記基部が、凸R曲面を含む、請求項1に記載の治具。
【請求項9】
前記基部の全体が凸R曲面である、請求項1に記載の治具。
【請求項10】
前記凸R曲面の曲率半径Rは30mm以上150mm以下である、
請求項8または9のいずれか一項に記載の治具。
【請求項11】
前記凸R曲面の曲率半径Rは40mm以上90mm以下である、
請求項8または9のいずれか一項に記載の治具。
【請求項12】
前記台座の中央部には貫通孔が設けられている、
請求項1に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄膜シートの被貼付面(肌等)への貼付を補助する治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜に各種色材を含むインクを塗布し、これを人体に貼り付けて、肌に生じたシミや痣、傷跡(以下、「変色領域」とも称する)等を目立ち難くすることが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、肌を撮像し、変色領域を識別する。そして、変色領域の周囲の色と同様の色を薄膜シートに印刷し、これを肌に貼り付けることで、変色領域を目立ち難くしている。
【0003】
このような薄膜シートは、通常、台紙と積層された積層シートの状態で流通され、ユーザにより台紙から剥離されて肌に貼り付けられる。しかしながら、薄膜シートが非常に薄いことから、シワ等を生じさせることなく薄膜シートを肌に貼り付けることが難しい。そこで、治具を用いて薄膜シートを肌に貼り付ける方法が特許文献2に提案されている。例えば、積層シートを、薄膜シートと治具とが面するように治具上に載置し、台紙側に水を吹き付ける。そして、台紙を剥離し、露出した薄膜シートを肌に密着させた後、治具を薄膜シートから剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-43836号公報
【文献】国際公開第2018/061486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、薄膜シートが非常に薄いため、薄膜シートを治具から被貼付面に移行させる際に、薄膜シートが治具から剥れ難いことがあった。また、治具を使って被貼付面に薄膜シートを貼付ける際に、被貼付面の凹凸のため薄膜シートに均一な圧力がかからず、薄膜シートの一部が被貼付面に密着しないことがあった。
【0006】
本開示は、被貼付面に薄膜シートを容易に貼付できる治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の治具を提供する。
薄膜シートの被貼付面への貼付を補助する治具であって、
第1面を有する基部と、
前記第1面に取り付けられ、所定の開孔率で微細孔が設けられた多孔性親水フィルムと、
を含み、
前記開孔率は、35%以上55%以下である、
治具。
【発明の効果】
【0008】
本開示の治具によれば、被貼付面に薄膜シートを容易に貼付できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施の形態1に係る積層シートの分解斜視図である。
図2A図2Aは、本開示の実施の形態1に係る治具の分解斜視図である。
図2B図2Bは、本開示の実施の形態1に係る治具の分解斜視図である。
図3図3A図3Cは、本開示の実施の形態1に係る治具に積層シートの薄膜シートを載せる方法を示す概略断面図である。
図4図4は、本開示の実施の形態1に係る治具を含む化粧用セットの斜視図である。
図5図5A図5Cは、本開示の実施の形態2に係るフィルム治具に積層シートの薄膜シートを載せる方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[積層シート]
まず、本実施の形態1に係る積層シート100の構成について図1を用いて説明する。本実施の形態1の積層シート100は、肌に貼り付けるための薄膜シート11と、支持体12が積層された構造を有する。積層シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。積層シートがロール状である場合、必要な長さだけ巻きだして使用される。積層シートがロール状である場合、所望の長さで切り取れるよう、切り取り線(切り込み)等が形成されていてもよい。
【0012】
(薄膜シート)
薄膜シート11は、公知のメイク支援システム等を通じて、特定の個人の肌の変色部位に応じて作製された、特定の人が使用するためのシート(オンデマンドで作製されるシート)であってもよい。一方で、薄膜シート11は、不特定多数の人の平均的な肌の色に合わせて作製された、不特定多数の人が使用するためのシート等であってもよい。当該薄膜シート11は、肌の彩色等のためだけでなく、肌の変色部位の上に貼り付けることで、変色部位を目立たなくしたり、当該変色部位を装飾したりする用途にも用いることもできる。
【0013】
薄膜シート11は、肌に貼着するための厚みが10μm以下のシートである。薄膜シート11の厚みは、10nm~10μmであることが好ましく、10nm~1000nmであることがより好ましい。薄膜シート11の厚みが当該範囲であると、肌等の被貼付面に貼着した際に、違和感が無い。
【0014】
当該薄膜シート11は、例えば透液性を有する薄膜(図示せず)と着色層や光散乱層等(図示せず)とから構成されるシートとすることができる。薄膜シート11が薄膜の他に着色層や光散乱層等を有すると、薄膜シート11の貼付によって、被貼付面(例えば肌等)の色を任意の色に着色可能となる。より具体的には、肌を彩色したり、肌の変色部位を正常な色に見せたりすることが可能となる。なお、薄膜シート11が着色層等を有する場合、薄膜シート11内の薄膜が被貼付面と接するように貼り付けることが好ましい。被貼付面が人体の皮膚である場合、生体適合性のある薄膜を皮膚と接するように貼り付けることで、皮膚に対する刺激等を生じさせにくくなる。そこで、薄膜シート11が着色層を有する場合、薄膜が後述の支持体12と面するように、薄膜シート11を支持体12に積層する。
【0015】
薄膜シート11が含む薄膜は、人の肌に貼り付けても違和感が無く、生体適合性を有するシート状の部材であることが好ましい。また、薄膜は、通常、無色透明、または半透明であることが好ましい。
【0016】
薄膜シート11中の薄膜の厚さは、10nm~10μmが好ましく、10nm~1000nmがより好ましい。また特に、薄膜が疎水性である場合、薄膜の薄さは特に10nm~800nmであることが好ましい。
【0017】
薄膜の平面視形状は特に制限されず、薄膜シート11の貼付部位の形状や、用途に応じて適宜選択される。なお、薄膜には、薄膜シート11の貼付部位の形状に適合するように、外周部および/または面内に切り込みが形成されてもよい。
【0018】
ここで、薄膜は、スピンコート法もしくはロールツーロール法、LB法(ラングミュア・ブロジェット法)等で形成されるシートであってもよく、電界紡糸法等で生成されるファイバーが折り重なるファイバーシート等であってもよい。
【0019】
薄膜の材料の例には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、またはこれらの共重合体に代表されるポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールに代表されるポリエーテル類;ナイロン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、またはこれらの塩に代表されるポリアミド類;プルラン、セルロース、デンプン、キチン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コーンスターチに代表される多糖類またはこれらの塩;アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸に代表されるシリコーン類;アクリル酸アルキル、アクリル酸シリコーン、アクリル酸アミドや、これらの共重合体に代表されるアクリル酸類;ポリビニルアルコール;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリ酸無水物;ポリエチレン;ポリプロピレン;多孔質層コーティングシート、ナノファイバーシート、等が含まれる。これらの中でも、薄膜の材料が、ポリ乳酸、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン、キチン、キトサン、アルギン酸、コーンスターチ、またはポリウレタンであると、生体適合性や入手容易性、取り扱い性等が良好になる。
【0020】
一方、薄膜上に配置される着色層には、色材とバインダとが含まれる。着色層には、皮膜形成剤や分散剤、各種添加剤等がさらに含まれていてもよい。着色層の色は通常、肌に合わせた色とすることができるが、薄膜シート11を、チーク、アイシャドウまたはボディペインティングなど、化粧用品として使用する場合は、任意の色とすることができる。また、薄膜シート11全体が同一の色であってもよいが、一部に、色が異なる領域が配置されていてもよい。
【0021】
また、着色層は、一層からなるものであってもよく、二層以上から構成されていてもよい。着色層が複数層から構成される場合、各層に含まれる色材の種類は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、各層に含まれる色材の量は同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、肌色の着色層の上に、任意の色の着色層が積層されたような構成であってもよい。
【0022】
着色層に含まれる色材の例には、酸化鉄、水酸化鉄等のチタン酸鉄等の無機赤色顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料;マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料;水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料;紺青(フェロシアン化第二鉄)、群青(ウルトラマリン青)、瑠璃、岩群青、アルミ-コバルト酸化物、アルミ-亜鉛-コバルト酸化物、ケイ素-コバルト酸化物、ケイ素-亜鉛-コバルト酸化物、コバルト顔料、花紺青、コバルト青、錫酸コバルト、コバルトクロム青、コバルト-アルミニウム-ケイ素酸化物、マンガン青等の無機青色系顔料;インディゴ、フタロシアニン、インダンスレンブルー、およびこれらのスルホン化物等の有機青色顔料もしくは青色染料;各種タール系色素をレーキ化したもの、各種天然色素をレーキ化したもの、これらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が含まれる。
【0023】
一方、着色層に含まれるバインダの形状は特に制限されないが、粒子状であることが好ましく、特に(メタ)アクリル系樹脂からなる粒子(以下、単に「アクリル系粒子」とも称する)であることが好ましい。バインダが、アクリル系粒子からなると、上述の色材の定着性が良好になりやすく、着色層の耐久性が良好になりやすい。バインダは、皮膚刺激性のない(メタ)アクリル系樹脂からなる粒子であることがさらに好ましい。そこで、上記アクリル系粒子は、日本の薬事法に基づく化粧品の成分表示名称リストに掲載のある成分や、EU化粧品規制(Cosmetics Directive 76/768/EEC)に則った成分、米国CTFA(Cosmetic,Toiletry & Fragrance Association,U.S.)によるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(2002年1月1日、9th版)に記載されている成分等から選択されることが好ましく、公知の化粧料等に適用されているアクリル系樹脂の粒子とすることが好ましい。
【0024】
着色層に含まれるバインダの量は、色材の量を10質量部としたとき、0.5~10質量部であることが好ましく、1.5~5.7質量部であることがより好ましい。色材の量に対するバインダの量が上記範囲であると、色材の定着性が高まる。また、バインダの量が上記範囲であると、相対的に色材の量が十分になりやすく、着色層を所望の色とすることができる。
【0025】
着色層の厚さは、所望の色の濃さ等に合わせて適宜選択されるが、10nm~15μmであることが好ましく、10nm~3μmであることがより好ましい。着色層の厚みが当該範囲であると、厚塗り感を生じさせることなく、所望の発色が得られやすくなる。なお、着色層を複数積層する場合、これらの合計の厚みが、当該範囲であることが好ましい。このような着色層は、例えばインクジェット印刷法や、スクリーン印刷法、オフセット印刷、グラビア印刷等によって薄膜上に色材およびバインダを含むインクを塗布することで形成できる。インクは、油系であってもよく、水系であってもよい。これらの中でも、オンデマンド印刷を行いやすい、あるいは、化粧料インクを複数回に亘って塗布する積層印刷を行うことができる等の観点から、インクジェット法が好ましい。
【0026】
一方、光散乱層には、反射材料とバインダとが含まれる。光散乱層には、皮膜形成剤や分散剤、各種添加剤等がさらに含まれていてもよい。光散乱層は、一層からなるものであってもよく、二層以上から構成されていてもよい。光散乱層が複数層から構成される場合、各層に含まれる反射材料の種類は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、各層に含まれる反射材料の量は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
光散乱層に含まれる反射材料は、紫外光および可視光(例えば、波長200~780nmの光)を散乱もしくは反射する粒子であればよく、例えば、パール剤や、ソフトフォーカス剤、ラメ剤等とすることができる。パール剤、ソフトフォーカス剤、およびラメ剤は、皮膚刺激性がないものであることが好ましい。
【0028】
光散乱層に含まれるバインダの量は、上記反射材料の量を10質量部としたとき、0.5~10質量部であることが好ましく、1.5~5.7質量部であることがより好ましい。反射材料の量に対するバインダの量が上記範囲であると、反射材料の定着性が高まる。また、バインダの量が当該範囲であると、相対的に反射材料の量が十分になりやすく、光散乱層によって、十分に光を反射したり散乱させたりすることができる。
【0029】
光散乱層の厚さは、10nm~120μmであることが好ましく、10nm~100μmであることがより好ましい。光散乱層の厚みが当該範囲であると、肌の表面で反射された光が光散乱層で十分に反射されやすくなる。
【0030】
なお、薄膜シート11には、本実施の形態1の目的および効果を損なわない範囲で、さらに光沢層や吸湿層等が積層されていてもよい。吸湿層が配置されていると、薄膜シート11の表面側の湿度が制御され、快適性が高まる。吸湿層には通常吸湿剤が含まれ、吸湿剤の例には、真球状シリカ、多孔質アクリル粒子、ナイロン6(ポリアミド6)等が含まれる。
【0031】
(支持体)
支持体12は、上述の薄膜シート11の他方の面に配置される板状の部材であり、薄膜シート11を保護する台紙としての機能を有する。
【0032】
支持体12の形状は薄膜シート11の一方の面を覆うことが可能であれば特に制限されない。支持体12の平面視形状は薄膜シート11と同じであってもよく、薄膜シート11より大きくてもよい。例えば、薄膜シート11から剥離する際につかむためのつかみシロ等を有していてもよい。
【0033】
また、支持体12の厚みは、50~2000μmが好ましく、100~1500μmがより好ましい。支持体12の厚みが当該範囲であると、支持体12を薄膜シート11から剥離する際に、支持体12が任意の方向に変形しやすくなる。
【0034】
支持体12は、親水性を有する材料、もしくは内部に水を保持可能な吸水性を有する材料から構成される。本本明細書において、親水性を有する材料とは、接触角が90°以下である材料をいい、吸水性を有する材料とは、内部に水を保持可能な構造(例えば孔等)を有する材料をいう。
【0035】
支持体12の材料の例には、紙(セルロース)、レーヨン、ポリエステル、アラミド、ガラス繊維、ナイロン、ビニロン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等)、エチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂、多孔質フィルム、ナノファイバーシート等が含まれる。これらの中でも、薄膜シート11から剥離しやすいとの観点で、紙(セルロース)、レーヨン、ポリエステルが好ましい。また、支持体12は、光透過性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、薄膜シート11が積層されている面と積層されていない面とを区別するために、一方の面が着色されていたり、文字や模様が付されたりしていてもよい。
【0036】
また、支持体12は可撓性を有することが好ましく、その弾性率は、100~100000MPaが好ましく、100~5000MPaがより好ましい。当該弾性率は、静的試験法、横振動法、超音波法のいずれかにより測定される値である。弾性率測定に関するJIS規格は、JIS Z2280、JIS R1602、JIS R1605であり、弾性率は、これらのいずれかに準拠して測定した値である。支持体12の弾性率が当該範囲であると、薄膜シート11から剥離する際に破断等が生じ難く、また適度に変形可能となる。
【0037】
[治具]
次に、本実施の形態1に係る治具200の構成について図2を用いて説明する。図2Aに示すように、治具200は、少なくとも、基部21と、当該基部21の第1面に取り付けられた多孔性親水フィルム22と、を備える。
【0038】
(基部)
基部21は、薄膜シート11を被貼付面に貼り付ける際に、薄膜シート11が撓んだりすることを抑制するための部材である。当該基部21は、柔軟性に優れた構造を有し、薄膜シート11を被貼付面に押し付けた際に、被貼付面の凹凸に合わせて弾性変形することが好ましい。このため、基部21のアスカ―C硬度は、4度以上20度以下が好ましい。
【0039】
基部21の平面視形状は、被貼付面の形状や、積層シート100(特に薄膜シート11)の形状等に合わせて適宜選択され、薄膜シート11の面積より大きい面積を有していればよい。基部21は平板状であってもよく、曲面(凹面または凸面)を有していてもよい。第1面の凸R曲面の好ましい形状の詳細については後述する。また、基部21の厚みには特に制限が無く、取扱性の観点から、0.1~15mm程度が好ましく、0.1~8mm程度がさらに好ましい。
【0040】
また、基部21は、透明性を有していてもよく、有していなくてもよい。ただし、被貼付面に薄膜シート11を貼り付ける際、薄膜シート11の貼付位置を視認しやすいとの観点で、透明性を有することが好ましい。なお、「透明性を有する」とは、例えば、波長550mmにおける光の透過率が40%以上であることを指す。
【0041】
基部21には、例えばレーヨン、ポリエステル、アラミド、ガラス繊維、ナイロン、ビニロン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン等)、エチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、または共重合ポリエステル樹脂等を含むシート、親水剤を含むシリコン(Si)系のシート、親水剤を含むエラストマーシート、水性ゲル等から構成されるゴムシート等が含まれる。これらのシートは、各種親水化処理が施されたものであってもよい。
【0042】
(多孔性親水フィルム)
多孔性親水フィルム22は、フィルム状の多孔性親水性部材により構成される。多孔性親水フィルム22の水との接触角は、90°以下が好ましく、50°以下がより好ましい。多孔性親水フィルム22の水との接触角が当該範囲であると、多孔性親水フィルム22の表面に一様に水性液体の層が形成されやすく、薄膜シートが密着しやすくなる。
【0043】
多孔性親水フィルム22には、所定の開孔率の微細孔が設けられている。開孔率とは、単位体積あたりの開孔部分(微細孔)の割合である。なお、好ましい開孔率の範囲を特定するための実施例1については後述する。
【0044】
当該多孔性親水フィルム22を治具200の表面に有すると、多孔性親水フィルム22の微細孔により、薄膜シート11との接触面積が小さくなるので、薄膜シート11との密着度が低減する。また、多孔性親水フィルム22の微細孔に水性液体が入り込むため、治具200と薄膜シート11との間の水性液体の層の幅が増加する。したがって、治具200から薄膜シート11を剥離しやすくなり、薄膜シート11を被貼付面に移行させることが容易になる。
【0045】
多孔性親水フィルム22の平面視形状は、本実施の形態1では、基部21の平面視形状と同一であるが、薄膜シート11の平面視形状より大きければよく、基部21より多少小さくてもよい。また、多孔性親水フィルム22の厚みは、500μm以下であり、100μm以下がさらに好ましい。
【0046】
多孔性親水フィルム22は、一層からなるもの(単層フィルム)であってもよく、二層以上から構成されるもの(多層フィルム)であってもよい。例えば、多孔性親水フィルム22が、親水性を有するフィルムと、所望の弾性を有する基材とが積層されて構成されてもよい。また、これらは接着剤等によって接着されてもよい。多孔性親水フィルム22が親水性を有するフィルムと弾性を有する基材との積層体であると、薄膜シートを貼り付ける面(被貼付面)が曲面等であったとしても、多孔性親水フィルム22が当該形状に追従でき、薄膜シートを被貼付面に密着させることが可能となる。
【0047】
また、多孔性親水フィルム22の親水性を有する面(薄膜シート11と対向させる面、治具200の表面)は、平滑であってもよく、凹凸を有していてもよい。
【0048】
多孔性親水フィルム22は、透明性を有していてもよく、有していなくてもよいが、被貼付面に薄膜シート11を貼り付ける際、薄膜シート11の貼付位置を視認しやすいとの観点で、基部21とともに透明性を有することが好ましい。
【0049】
多孔性親水フィルム22の例には、例えばレーヨン、ポリエステル、アラミド、ガラス繊維、ナイロン、ビニロン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン等)、エチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、または共重合ポリエステル樹脂等を含むフィルム、親水剤を含むシリコン(Si)系のフィルム、親水剤を含むエラストマー系のフィルム、水性ゲル等から構成されるゴム系のフィルム、等が含まれる。
【0050】
多孔性親水フィルム22は、接着剤(図示せず)等により基部21の第1面に接着され、固定される。基部21と多孔性親水フィルム22とを接着する接着剤は、疎水性接着剤であることが好ましい。
【0051】
(台座)
図2Bに示すように、治具200は、基部21および多孔性親水フィルム22に加えて台座23を備えていても良い。
【0052】
台座23は、スポンジ構造等の軟質多孔性の部材により構成される。なお、台座23は、独立気泡構造(無吸水構造)であれば、より好ましい。
【0053】
台座23の中央部には、台座23を基部21に固定した際に基部21の柔軟性が保たれるように、貫通孔が設けられる。すなわち、台座23の外形は、枠形状となる。
【0054】
台座23の平面視形状は、本実施の形態1では、外周において基部21とほぼ同じである。また、台座23の厚みには特に制限が無く、取扱性の観点から、0.1~15mm程度が好ましく、0.1~8mm程度がさらに好ましい。また、被貼付面に均一に圧力を与えるためには、台座23のアスカ―C硬度は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましい。
【0055】
台座23の材料の例には、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、硬質塩ビ(塩化ビニル)等が含まれる。
【0056】
台座23は、接着剤(図示せず)等により基部21の底面(第1面の反対面)に接着され、固定される。基部21と台座23とを接着する接着剤は、疎水性接着剤であることが好ましい。
【0057】
[積層シートの使用方法]
次に、本実施の形態1の積層シート100の使用方法について、図3A図3Cを用いて説明する。図3A図3Cは、図1図2AのA-A線での断面図である。ただし、本実施の形態1の積層シート100の使用方法は、以下の方法に限定されない。
【0058】
まず、図3Aに示すように、ユーザは、治具200の多孔性親水フィルム22と薄膜シート11とが面するように、治具200に積層シート100を載置する。すなわち、多孔性親水フィルム22は、薄膜シート11の仮貼付部としての機能を有する。
【0059】
そして、ユーザは、積層シート100の支持体12側から霧吹き等により、水や乳液、保湿剤等の生体安全性の高い水性液体を全体に吹き付ける。これにより、親水性または吸水性を有する支持体12が水性液体を含み、積層シート100の支持体12と薄膜シート11との間に水性液体の層(図示せず)が形成される。またこのとき、水性液体が浸透した薄膜シート11と治具200との積層吸着も生じる。
【0060】
その後、図3Bに示すように、ユーザは、支持体12を持ち上げ、薄膜シート11から支持体12を剥離する。
【0061】
そして、図3Cに示すように、ユーザは、治具200を把持して、治具200に載置された薄膜シート11を、被貼付面(図示せず)に密着させる。そして、ユーザは、治具200を用いて薄膜シート11を被貼付面側に押し付けることにより、薄膜シート11を治具200から剥離して被貼付面側に移行させる。このとき、ユーザが、被貼付面の凹凸に合わせて基部21を弾性変形させることにより、被貼付面に均一に圧力をかけることができ、薄膜シート11を被貼付面に均一に密着させることができる。
【0062】
なお、被貼付面に薄膜シート11を転写する場合、薄膜シート11と治具200の多孔性親水フィルム22との間に水の層が存在すると、薄膜シート11が治具200から剥がれやすくなる。そこで、必要に応じて、被貼付面もしくは薄膜シート11に霧吹き等で水を吹き付け、薄膜シート11を治具200から剥がれやすくしてもよい。
【0063】
[位置合わせ方法]
上述の通り、治具200の基部21および多孔性親水フィルム22が、いずれも透明性を有する場合、ユーザは、被貼付面に薄膜シート11を貼り付ける際に、薄膜シート11の貼付位置を視認しやすくなる。以下では、透明な治具200を用いた薄膜シート11の位置合わせ方法の具体例について説明する。
【0064】
(例1)
例1は、治具200を透かして薄膜シート11を見ながら被貼付面に位置合わせする方法である。例えば、ユーザは、治具200を透かして見ながら、肌のシミの位置に、薄膜シート11のコンシーラ印刷部の位置を合わせ、頬骨の中央部に治具200を押し当てる。
【0065】
(例2)
例2は、治具200に、位置合わせ用のマーク(点、線、枠等)を予め付けておく方法である。例えば、薄膜シート11を載置する部分を示すためのガイドとなるマークを、印刷等により、基部21上あるいは多孔性親水フィルム22上に付ける。あるいは、頬骨の中央や小鼻の脇等、被貼付面(顔)の所定部位に押し当てられる治具200部分を示すマークを、印刷等により、基部21上あるいは多孔性親水フィルム22上に付ける。
【0066】
(例3)
例3は、治具200の多孔性親水フィルム22に設けられた微細孔をマークとして使用する方法である。頬骨の中央や小鼻の脇等、被貼付面(顔)の所定部位に押し当てられる治具200部分が、微細孔の場所で規定される。
【0067】
(例4)
例4は、治具200の台座23の内周をマークとして使用する方法である。頬骨の中央や小鼻の脇等、被貼付面(顔)の所定部位に押し当てられる治具200部分が、台座23の内周からの位置関係で規定される。
【0068】
[その他]
本開示の治具200は、化粧用セット300の中に収容することもできる。図4は、本実施の形態1に係る治具200を含む化粧用セット300の斜視図である。
【0069】
化粧用セット300では、筐体31の内部に積層シート100および治具200を保持する。このとき、支持体12が筐体31の内底面に面するように積層シート100を配置する。そして、積層シート100の薄膜シート11上に、多孔性親水フィルム22が薄膜シート11に面するように治具200を載置する。
【0070】
[実施例]
以下において、実施例を参照して本開示に係る多孔性親水フィルム22の微細孔の開孔率の好ましい範囲について詳細に説明する。実施例によって、本開示の範囲は限定して解釈されない。
【0071】
[実施例1]
実施例1として、多孔性親水フィルム22が単層フィルムまたは多層フィルムであり、その微細孔の開孔率Aが表1に示す値(%)となる治具200を準備した。なお、開孔率Aは、微細孔の孔径Dおよび微細孔のピッチPにより下記の式で算出される。
A=78.5×D/P
【0072】
[比較例1]
比較例1-1として、多孔性親水フィルム22の代わりにシリコンパフ(微細孔なし)を基部21に接着した治具200を準備した。また、比較例1-2として、多孔性親水フィルム22の代わりに親水フィルム(微細孔なし)を基部21に接着した治具200を準備した。
【0073】
そして、各実施例および各比較例において、複数回に渡って、以下の工程を行った。
(1)積層シート100を支持体12が上になるように治具200の多孔性親水フィルム22(シリコンパフ、親水フィルム)上に載置し、支持体12側に水を吹き付ける。
(2)その後、薄膜シート11から支持体12を剥離し、治具200を用いて薄膜シート11を被貼付面に貼り付ける。
【0074】
[評価]
上記各実施例および各比較例に対して、以下の各項目について評価した。結果を表1に示す。なお、各項目の評価値として、「A」は全く問題ないレベルを示す。また、「B」は「A」よりも劣るが実用上問題ないレベルを示す。また、「C」は実用上問題があるレベルを示す。
【0075】
<項目1:肌への移行>
・薄膜シート11が肌(被貼付面)へ移行しやすいか
A:薄膜シート11が治具200から肌に簡単に移行する。
B:治具200の一部に薄膜シート11が癒着し、薄膜シート11が治具200から剥がれ難いことがある。
C:治具200から薄膜シート11が剥がれず、薄膜シート11を肌に移行できない。
【0076】
<項目2:圧力の均一性>
・治具200を用いて薄膜シート11を肌に押し付ける際、治具200の一端から他端まで薄膜シート11に均一な圧力をかけられるか
A:薄膜シート11に均一に圧力がかけられる。
B:顔の凹凸のため、十分な圧力がかからない部分がある。このため、浮いた部分を手で押さえながら薄膜シート11を肌に貼り付ける必要がある。
C:圧力がかからず浮いてしまう部分が多く、手で押さえても薄膜シート11を肌に貼り付けることが困難である。
【0077】
<項目3:ヨレの発生>
・肌へ移行のした際、薄膜シート11にヨレが発生しないか
A:薄膜シート11にヨレが全く発生しない。
B:薄膜シート11にヨレが発生することがある。
C:薄膜シート11に必ずヨレが発生する。
【0078】
<項目4:治具への載置>
・薄膜シート11を治具200へ載置しやすいか
A:治具200に薄膜シート11を密着させて載置できる。
B:治具200に薄膜シート11を載置すると一部分が浮くことがある。
C:薄膜シート11全体が浮いてしまい、治具200に載置できない。
【0079】
<項目5:水の広がり>
・吹き付けられた水が、積層シート100の中央部から端部に広がりやすいか
A:水が積層シート100全体に均一に広がる。
B:水が広がり難く、追加で吹き付けが必要になることがある。
C:積層シート100に水が広がらない。
【0080】
<項目6:支持体の剥離>
・薄膜シート11から支持体12を剥がしやすいか
A:薄膜シート11から支持体12を簡単に剥離できる。
B:支持体12の一部が薄膜シート11に癒着し、支持体12が薄膜シート11から剥がれ難いことがある。
C:支持体12の全体が薄膜シート11に癒着し、薄膜シート11から支持体12を剥がすのが困難である。
【0081】
<項目7:多孔性親水フィルムへの浸水>
・水を吹き付けた際、薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間に水層が十分に広がるか
A:薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間の全体に水層が均一に広がる。
B:薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間の水層が不十分であり、追加で吹き付けが必要になることがある。
C:薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間に水層が広がらない。
【0082】
【表1】
【0083】
[結果]
上記表1に示されるように、微細孔が無い比較例に比べて、所定の開孔率で微細孔が設けられた実施例1の方が、単層フィルムか多層フィルムかにかかわらず、良好な評価値を得られた。特に、開孔率Aが、35%≦A≦55%の範囲において、全ての項目において評価値「A」となった。
【0084】
[効果]
以上のように、本実施の形態1の実施例1によれば、治具200の多孔性親水フィルム22には所定の開孔率で微細孔が設けられる。これにより、積層シート100に水を吹き付けた際、積層シート100の中央部から端部に水が広がりやすくなるとともに、薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間に水層が広がりやすくなる。したがって、水が積層シート100全体に均一に広がる。したがって、薄膜シート11を治具200から被貼付面に容易に移行できる。
【0085】
また、治具200の基部21が柔軟性を有することにより、被貼付面に均一に圧力をかけることができ、薄膜シート11を被貼付面に均一に密着させることができる。したがって、被貼付面に薄膜シート11を容易に貼付できる。
【0086】
[実施例2]
実施例2として、基部21の第1面の全体が凸R曲面であり、その曲率半径Rが表2に示す値(R=10、30、40、50、70、90、150、160(単位mm))となる治具200を準備した。当該基部21は、薄膜シート11を被貼付面に押し付けた際に、被貼付面からの反力によって著しく歪まない程度の剛性を有することが好ましい。このため、基部21の厚みは、6mm以上50mm以下の範囲であることが好ましい。
【0087】
[比較例2-1]
比較例2-1として、基部21の第1面が平面で、親水フィルム22の代わりにシリコンパフを基部21に接着した治具200を準備した。また、比較例2-2として、基部21の第1面が平面で、親水フィルム22を基部21に接着した治具200を準備した。
【0088】
そして、各実施例および各比較例において、複数回に渡って、以下の工程を行った。
(1)積層シート100を支持体12が上になるように治具200の親水フィルム22(シリコンパフ)上に載置し、支持体12側に水を吹き付ける。
(2)その後、薄膜シート11から支持体12を剥離し、治具200を用いて薄膜シート11を被貼付面に貼り付ける。
【0089】
[評価]
上記各実施例2および各比較例2に対して、以下の各項目について評価した。結果を表2に示す。なお、各項目の評価値として、「A」は全く問題ないレベルを示す。また、「B」は「A」よりも劣るが実用上問題ないレベルを示す。また、「C」は実用上問題があるレベルを示す。
【0090】
<項目1:肌への移行>
・薄膜シート11が肌(被貼付面)へ移行しやすいか
A:薄膜シート11が治具200から肌に簡単に移行する。
B:治具200の一部に薄膜シート11が癒着し、薄膜シート11が治具200から剥がれ難いことがある。
C:治具200から薄膜シート11が剥がれず、薄膜シート11を肌に移行できない。
【0091】
<項目2:圧力の均一性>
・治具200を用いて薄膜シート11を肌に押しつける際、治具200の一端から他端まで薄膜シート11に均一な圧力をかけられるか
A:薄膜シート11に均一に圧力がかけられる。
B:顔の凹凸のため、十分な圧力がかからない部分がある。このため、浮いた部分を手で押さえながら薄膜シート11を肌に貼り付ける必要がある。
C:圧力がかからず浮いてしまう部分が多く、手で押さえても薄膜シート11を肌に貼り付けることが困難である。
【0092】
<項目3:ヨレの発生>
・肌へ移行のした際、薄膜シート11にヨレが発生しないか
A:薄膜シート11にヨレが全く発生しない。
B:薄膜シート11にヨレが発生することがある。
C:薄膜シート11に必ずヨレが発生する。
【0093】
<項目4:治具への載置>
・薄膜シート11を治具200へ載置しやすいか
A:治具200に薄膜シート11を密着させて載置できる。
B:治具200に薄膜シート11を載置すると一部分が浮くことがある。
C:薄膜シート11全体が浮いてしまい、治具200に載置できない。
【0094】
<項目5:水の広がり>
・吹き付けられた水が、積層シート100の中央部から端部に広がりやすいか
A:水が積層シート100全体に均一に広がる。
B:水が広がり難く、追加で吹きつけが必要になることがある。
C:積層シート100に水が広がらない。
【0095】
<項目6:支持体の剥離>
・薄膜シート11から支持体12を剥がしやすいか
A:薄膜シート11から支持体12を簡単に剥離できる。
B:支持体12の一部が薄膜シート11に癒着し、支持体12が薄膜シート11から剥がれ難いことがある。
C:支持体12の全体が薄膜シート11に癒着し、薄膜シート11から支持体12を剥がすのが困難である。
【0096】
<項目7:親水フィルムへの浸水>
・水を吹き付けた際、薄膜シート11と親水フィルム22との間に水層が十分に広がるか
A:薄膜シート11と親水フィルム22との間の全体に水層が均一に広がる。
B:薄膜シート11と親水フィルム22との間の水層が不十分であり、追加で吹きつけが必要になることがある。
C:薄膜シート11と親水フィルム22との間に水層が広がらない。
【0097】
【表2】
【0098】
[結果]
上記表2に示されるように、第1面が平面である比較例に比べて、第1面が凸R曲面である実施例2の方が良好な評価値を得られた。特に、曲率半径Rが、30≦R≦150の範囲において、肌への貼付の際の項目1乃至3において評価値「A」となった。さらに、曲率半径Rが、40≦R≦90の範囲において、全ての項目において評価値「A」となった。
【0099】
[効果]
以上のように、本実施の形態1の実施例2によれば、治具200の第1面が凸R曲面を有していても良い。これにより、ユーザが、治具200の表面の凸R曲面を利用して治具200を被貼付面に平行に転がすことにより、被貼付面に均一に圧力をかけることができ、薄膜シート11を被貼付面に均一に密着させることができる。したがって、被貼付面に薄膜シート11を容易に貼付できる。
【0100】
また、治具200の第1面が凸R曲面を有することにより、積層シート100に水を吹き付けた際、積層シート100の中央部から端部に水が広がりやすくなるとともに、薄膜シート11と親水フィルム22との間に水層が広がりやすくなる。したがって、水が積層シート100全体に均一に広がる。したがって、薄膜シート11を治具200から被貼付面に容易に移行できる。
【0101】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1の冶具200に対して、基部21を採用しない構成について説明する。
【0102】
[積層シート]
本実施の形態2に係る積層シートの構成は、実施の形態1(図1)で説明した積層シート100と同一であるので説明を省略する。
【0103】
次に、本実施の形態2に係るフィルム治具400(図5参照)の構成について説明する。フィルム治具400は、実施の形態1(図2A)で説明した治具200と比較して、基部21を有さず、多孔性親水フィルム22のみを備える。
【0104】
(多孔性親水フィルム)
実施の形態2に係る多孔性親水フィルム22は、柔軟性に優れた構造を有し、薄膜シート11を被貼付面に押し付けた際に、被貼付面の凹凸に合わせて弾性変形することが好ましい。このため、当該多孔性親水フィルム22のアスカ―C硬度は、4度以上20度以下が好ましい。
【0105】
当該多孔性親水フィルム22は、被貼付面に薄膜シート11を貼り付ける際、薄膜シート11の貼付位置を視認しやすいとの観点で、透明性を有する。なお、「透明性を有する」とは、例えば、波長550mmにおける光の透過率が40%以上であることを指す。
【0106】
実施の形態2に係る多孔性親水フィルム22のその他の点については、実施の形態1と共通であるので、その詳しい説明を省略する。
【0107】
[積層シートの使用方法]
次に、本実施の形態2の積層シート100の使用方法について、図5A図5Cを用いて説明する。ただし、本実施の形態2の積層シート100の使用方法は、以下の方法に限定されない。
【0108】
まず、図5Aに示すように、ユーザは、フィルム治具400の多孔性親水フィルム22と薄膜シート11とが面するように、フィルム治具400に積層シート100を載置する。すなわち、多孔性親水フィルム22は、薄膜シート11の仮貼付部としての機能を有する。
【0109】
そして、ユーザは、積層シート100の支持体12側から霧吹き等により、水や乳液、保湿剤等の生体安全性の高い水性液体を全体に吹き付ける。これにより、親水性または吸水性を有する支持体12が水性液体を含み、積層シート100の支持体12と薄膜シート11との間に水性液体の層(図示せず)が形成される。またこのとき、水性液体が浸透した薄膜シート11とフィルム治具400との積層吸着も生じる。
【0110】
その後、図5Bに示すように、ユーザは、支持体12を持ち上げ、薄膜シート11から支持体12を剥離する。
【0111】
そして、図5Cに示すように、ユーザは、フィルム治具400を把持して、フィルム治具400に載置された薄膜シート11を、被貼付面(図示せず)に密着させる。そして、ユーザは、フィルム治具400を用いて薄膜シート11を被貼付面側に押し付けることにより、薄膜シート11をフィルム治具400から剥離して被貼付面側に移行させる。このとき、ユーザが、被貼付面の凹凸に合わせて基部21を弾性変形させることにより、被貼付面に均一に圧力をかけることができ、薄膜シート11を被貼付面に均一に密着させることができる。
【0112】
なお、被貼付面に薄膜シート11を転写する場合、薄膜シート11とフィルム治具400の多孔性親水フィルム22との間に水の層が存在すると、薄膜シート11がフィルム治具400から剥がれやすくなる。そこで、必要に応じて、被貼付面もしくは薄膜シート11に霧吹き等で水を吹き付け、薄膜シート11をフィルム治具400から剥がれやすくしてもよい。
【0113】
[位置合わせ方法]
上述の通り、多孔性親水フィルム22が透明性を有する場合、ユーザは、被貼付面に薄膜シート11を貼り付ける際に、薄膜シート11の貼付位置を視認しやすくなる。本実施の形態2では、実施の形態1で例示した例1乃至例3の位置合わせ方法により、透明なフィルム治具400を用いて薄膜シート11の位置合わせを行うことができる。
【0114】
[その他]
本開示のフィルム治具400は、実施の形態1(図4)で説明した治具200と同様に、化粧用セット300の中に収容することもできる。
【0115】
[実施例]
以下において、実施例を参照して本開示に係る多孔性親水フィルム22の微細孔の開孔率の好ましい範囲について詳細に説明する。なお、実施例によって、本開示の範囲は限定して解釈されない。
【0116】
[実施例3]
実施例3として、多孔性親水フィルム22が単層フィルムまたは多層フィルムであり、その微細孔の開孔率Aが表1に示す値(%)となるフィルム治具400を準備した。なお、開孔率Aは、微細孔の孔径Dおよび微細孔のピッチPにより下記の式で算出される。
A=78.5×D/P
【0117】
[比較例3]
比較例3として、多孔性親水フィルム22の代わりに親水フィルム(微細孔なし)を適用したフィルム治具400を準備した。
【0118】
そして、各実施例および比較例において、複数回に渡って、以下の工程を行った。
(1)積層シート100を支持体12が上になるようにフィルム治具400の多孔性親水フィルム22(シリコンパフ、親水フィルム)上に載置し、支持体12側に水を吹き付ける。
(2)その後、薄膜シート11から支持体12を剥離し、フィルム治具400を用いて薄膜シート11を被貼付面に貼り付ける。
【0119】
[評価]
上記各実施例および比較例に対して、以下の各項目について評価した。結果を表3に示す。なお、各項目の評価値として、「A」は全く問題ないレベルを示す。また、「B」は「A」よりも劣るが実用上問題ないレベルを示す。また、「C」は実用上問題があるレベルを示す。
【0120】
<項目1:肌への移行>
・薄膜シート11が肌(被貼付面)へ移行しやすいか
A:薄膜シート11がフィルム治具400から肌に簡単に移行する。
B:フィルム治具400の一部に薄膜シート11が癒着し、薄膜シート11がフィルム治具400から剥がれ難いことがある。
C:フィルム治具400から薄膜シート11が剥がれず、薄膜シート11を肌に移行できない。
【0121】
<項目2:圧力の均一性>
・フィルム治具400を用いて薄膜シート11を肌に押し付ける際、フィルム治具400の一端から他端まで薄膜シート11に均一な圧力をかけられるか
A:薄膜シート11に均一に圧力がかけられる。
B:顔の凹凸のため、十分な圧力がかからない部分がある。このため、浮いた部分を手で押さえながら薄膜シート11を肌に貼り付ける必要がある。
C:圧力がかからず浮いてしまう部分が多く、手で押さえても薄膜シート11を肌に貼り付けることが困難である。
【0122】
<項目3:ヨレの発生>
・肌へ移行のした際、薄膜シート11にヨレが発生しないか
A:薄膜シート11にヨレが全く発生しない。
B:薄膜シート11にヨレが発生することがある。
C:薄膜シート11に必ずヨレが発生する。
【0123】
<項目4:治具への載置>
・薄膜シート11をフィルム治具400へ載置しやすいか
A:フィルム治具400に薄膜シート11を密着させて載置できる。
B:フィルム治具400に薄膜シート11を載置すると一部分が浮くことがある。
C:薄膜シート11全体が浮いてしまい、フィルム治具400に載置できない。
【0124】
<項目5:水の広がり>
・吹き付けられた水が、積層シート100の中央部から端部に広がりやすいか
A:水が積層シート100全体に均一に広がる。
B:水が広がり難く、追加で吹き付けが必要になることがある。
C:積層シート100に水が広がらない。
【0125】
<項目6:支持体の剥離>
・薄膜シート11から支持体12を剥がしやすいか
A:薄膜シート11から支持体12を簡単に剥離できる。
B:支持体12の一部が薄膜シート11に癒着し、支持体12が薄膜シート11から剥がれ難いことがある。
C:支持体12の全体が薄膜シート11に癒着し、薄膜シート11から支持体12を剥がすのが困難である。
【0126】
<項目7:多孔性親水フィルムへの浸水>
・水を吹き付けた際、薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間に水層が十分に広がるか
A:薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間の全体に水層が均一に広がる。
B:薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間の水層が不十分であり、追加で吹き付けが必要になることがある。
C:薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間に水層が広がらない。
【0127】
【表3】
【0128】
[結果]
上記表3に示されるように、微細孔が無い比較例3に比べて、所定の開孔率で微細孔が設けられた実施例3の方が、単層フィルムか多層フィルムかにかかわらず、良好な評価値を得られた。特に、開孔率Aが、35%≦A≦55%の範囲において、全ての項目において評価値「A」となった。
【0129】
[効果]
以上のように、本実施の形態2によれば、フィルム治具400の多孔性親水フィルム22には所定の開孔率で微細孔が設けられる。これにより、積層シート100に水を吹き付けた際、積層シート100の中央部から端部に水が広がりやすくなるとともに、薄膜シート11と多孔性親水フィルム22との間に水層が広がりやすくなる。したがって、水が積層シート100全体に均一に広がる。したがって、薄膜シート11をフィルム治具400から被貼付面に容易に移行できる。
【0130】
また、フィルム治具400の多孔性親水フィルム22が多孔性であるため、微細孔がない親水フィルムに比べ柔軟性を有することにより、基部21がないフィルム単体であっても被貼付面に均一に圧力をかけることができ、薄膜シート11を被貼付面に均一に密着させることができる。したがって、被貼付面に薄膜シート11を容易に貼付できる。
【0131】
なお、フィルム治具400の材質は、柔軟性を持つ部材であればフィルムに限らず、表面が多孔性かつ親水性に加工された板状部材であってもよい。
【0132】
2020年3月26日出願の特願2020-055790および2020年3月27日出願の特願2020-058596の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示の治具は、被貼付面に薄膜シートを容易に貼付できる。したがって、各種美容シートや医療用シートの貼付に非常に有用である。
【符号の説明】
【0134】
100 積層シート
11 薄膜シート
12 支持体
200 治具
21 基部
22 多孔性親水フィルム
23 台座
400 フィルム治具
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5