(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】自動灌水装置
(51)【国際特許分類】
E03B 7/12 20060101AFI20240712BHJP
A01G 25/02 20060101ALI20240712BHJP
A01G 25/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
E03B7/12 Z
A01G25/02 601P
A01G25/00 501F
(21)【出願番号】P 2020144500
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000128980
【氏名又は名称】株式会社カクダイ
(73)【特許権者】
【識別番号】000146995
【氏名又は名称】テクノエクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】古川 喬
(72)【発明者】
【氏名】上出 博章
(72)【発明者】
【氏名】高倉 健一
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特許第6047516(JP,B2)
【文献】実公昭49-036739(JP,Y1)
【文献】実開昭54-037542(JP,U)
【文献】特開2019-183924(JP,A)
【文献】米国特許第06427712(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/10- 7/12
A01G 25/00-25/16
F16K 17/36-17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水栓の吐水口に接続される水入口を一端部に有し、他端部に水出口を有し、内部が通水路となされている樹脂製の通水管と、
通水路の中間箇所に設けられた主弁座、主弁座に対して当接離間させられることにより通水路を開閉する主弁体、および主弁体を駆動させるためのアクチュエータを有している電磁弁と、
電磁弁による通水路の開閉のタイミングを制御する制御ユニットと、
通水路の一次側部分と連通するように設けられ、電磁弁により通水路が閉じられた状態において周囲温度が氷点付近の所定温度以下となった時に通水路の一次側部分に滞留した水を少量ずつ排出させて水の凍結を防止する温度感知式の水抜き弁と、
通水路の一次側部分と連通するように設けられ、電磁弁により通水路が閉じられた状態において通水路の一次側部分に滞留した水が凍結する時に膨張した分の水を膨張吸収室に導入させる密閉式の逃がし弁とを備えている、自動灌水装置。
【請求項2】
水抜き弁が、水入口に近接した箇所において、通水路の一次側部分と連通するように設けられている、請求項1の自動灌水装置。
【請求項3】
逃がし弁が、主弁座に近接した箇所において、通水路の一次側部分と連通するように設けられている、請求項1または2の自動灌水装置。
【請求項4】
水抜き弁が、
金属製の筒状体よりなり、一端部が通水管に連通状に接続され、内部の中間箇所に第1副弁座を有し、他端部および周壁における第1副弁座よりも他端側部分のうち少なくとも一方に水排出口を有しているハウジングと、
一端部に第1副弁体を有し、第1副弁体が第1副弁座に対して当接離間させられるようにハウジング内における第1副弁座よりも他端側部分に移動可能に収容されている第1移動体と、
第1移動体を第1副弁座と反対側に向かって付勢する第1スプリングと、
形状記憶合金よりなり、第1移動体を第1副弁座側に向かって付勢する第2スプリングとを備えており、
第2スプリングは、周囲温度が氷点付近の所定温度よりも高い時には、第1スプリングのばね弾性力に抗して第1移動体を第1副弁座側に移動させて第1副弁体を第1副弁座に当接させる一方、周囲温度が前記所定温度以下となった時には、第1スプリングのばね弾性力により第1移動体が第1副弁座と反対側に移動させられて第1副弁体が第1副弁座から離間させられるように収縮方向に変形するものである、請求項1~3のいずれか1つの自動灌水装置。
【請求項5】
逃がし弁が、
通水管の管壁の所定箇所に形成された連通孔の外側縁部よりなる第2副弁座と、
管壁における第2副弁座の周囲の部分から外方に向かってのび、膨張吸収室の周壁を形成している筒状のシリンダ部と、
一端部に第2副弁体を有し、少なくとも一部が、シリンダ部内に水密状にかつ第2副弁体が第2副弁座に対して当接離間させられるように移動自在に収容されて、膨張吸収室の可動端壁を形成している第2移動体と、
第2移動体を第2副弁座側に向かって付勢する付勢部材とを備えている、請求項1~4のいずれか1つの自動灌水装置。
【請求項6】
付勢部材が第3スプリングよりなり、
シリンダ部の周囲に、筒状のスプリングホルダが配置されており、
スプリングホルダ内における第2副弁座と反対側の端部または長さ中間部にスプリング保持部が形成されており、
第3スプリングが第2移動体とスプリング保持部との間に介在されており、
スプリングホルダにおける第2副弁座側の端部が、通水管の管壁に、両者のうち少なくともいずれか一方に同他方に向かって突出するように形成された間隔保持凸部によって所定の間隔をあけた状態で取り付けられている、請求項5の自動灌水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば一般住宅の庭、集合住宅や公共施設の共有スペース、公園等において自動で灌水を行うために用いられる自動灌水装置に関し、より詳細には、寒冷期に内部で水が凍結することによる破損を防止するための機能を備えた自動灌水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動灌水装置は、例えば農業等の分野において大規模に灌水する用途のものから、一般住宅の庭や公共施設の共有スペース等における植栽への水遣りのような小規模の用途のものまで種々提案されている。
後者の小規模用途に適用される簡易式の自動灌水装置として、給水栓の吐水口に接続される水入口を一端部に有し、他端部に水出口を有し、内部が通水路となされている通水管と、通水路の中間箇所に設けられた弁座、弁座に対して当接離間させられることにより通水路を開閉する弁体、および弁体を駆動させるためのアクチュエータを有している電磁弁と、電磁弁による通水路の開閉のタイミングを制御する制御ユニット(タイマー)とを備えているものが知られている。
この自動灌水装置によれば、電磁弁による通水路の開閉のタイミングを制御ユニットで予めプログラム設定しておき、通水管の水入口を給水栓の吐水口に接続し、通水管の水出口を灌水用ホースに接続した後、給水栓を開いて通水状態とすれば、所定の日時に電磁弁が作動して、芝生や植木等の植栽に対して自動で潅水を行うことができる。
【0003】
上記の自動灌水装置は、通常、庭や公園等の屋外において給水栓に直結して設置される。そのため、周囲の温度が氷点以下となる寒冷期において、電磁弁により通水路が閉じている時に通水路の一次側部分に滞留した水が凍結すると、凍結時の水の膨張圧力によって通水管や電磁弁が破損し、漏水等の問題が生じるおそれがある。
【0004】
上記のような自動灌水装置の内部での水の凍結による破損の問題を解消するための手段として、下記特許文献1記載の凍結破損防止装置が提案されている。
この装置は、通水管内の通水路の一次側部分と連通するように設けられた筒状部と、筒状部の壁に形成された貫通孔と、筒状部内に摺動自在に設けられかつ貫通孔からの放水と止水とを切り替える栓体部と、栓体部に対して筒状部内の水に対抗する方向に押圧力を付与する弾性体と、栓体部とともに移動しかつ先端側が貫通孔に挿入されている延出部とを備えているものである。
上記の凍結破損防止装置によれば、凍結に伴い筒状部内の水の圧力が所定値以上に上昇したときに、筒状部内の流路と貫通孔とが導通した状態となり、貫通孔から水が放出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の凍結破損防止装置の場合、通水路に滞留した水の凍結自体を防止する機能を有しておらず、また、凍結により膨張した体積分の水が筒状部の貫通孔から全量放出される前に、貫通孔が凍結した水によって塞がれると、水の凍結による通水管等の破損を防止できないおそれがあった。
【0007】
この発明の目的は、上記の課題を解決して、寒冷期に内部で水が凍結することにより破損が生じるのを確実に防止できる自動灌水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0009】
1)給水栓の吐水口に接続される水入口を一端部に有し、他端部に水出口を有し、内部が通水路となされている樹脂製の通水管と、
通水路の中間箇所に設けられた主弁座、主弁座に対して当接離間させられることにより通水路を開閉する主弁体、および主弁体を駆動させるためのアクチュエータを有している電磁弁と、
電磁弁による通水路の開閉のタイミングを制御する制御ユニットと、
通水路の一次側部分と連通するように設けられ、電磁弁により通水路が閉じられた状態において周囲温度が氷点付近の所定温度以下となった時に通水路の一次側部分に滞留した水を少量ずつ排出させて水の凍結を防止する温度感知式の水抜き弁と、
通水路の一次側部分と連通するように設けられ、電磁弁により通水路が閉じられた状態において通水路の一次側部分に滞留した水が凍結する時に膨張した分の水を膨張吸収室に導入させる密閉式の逃がし弁とを備えている、自動灌水装置。
【0010】
2)水抜き弁が、水入口に近接した箇所において、通水路の一次側部分と連通するように設けられている、上記1)の自動灌水装置。
【0011】
3)逃がし弁が、主弁座に近接した箇所において、通水路の一次側部分と連通するように設けられている、上記1)または2)の自動灌水装置。
【0012】
4)水抜き弁が、
金属製の筒状体よりなり、一端部が通水管に連通状に接続され、内部の中間箇所に第1副弁座を有し、他端部および周壁における第1副弁座よりも他端側部分のうち少なくとも一方に水排出口を有しているハウジングと、
一端部に第1副弁体を有し、第1副弁体が第1副弁座に対して当接離間させられるようにハウジング内における第1副弁座よりも他端側部分に移動可能に収容されている第1移動体と、
第1移動体を第1副弁座と反対側に向かって付勢する第1スプリングと、
形状記憶合金よりなり、第1移動体を第1副弁座側に向かって付勢する第2スプリングとを備えており、
第2スプリングは、周囲温度が氷点付近の所定温度よりも高い時には、第1スプリングのばね弾性力に抗して第1移動体を第1副弁座側に移動させて第1副弁体を第1副弁座に当接させる一方、周囲温度が前記所定温度以下となった時には、第1スプリングのばね弾性力により第1移動体が第1副弁座と反対側に移動させられて第1副弁体が第1副弁座から離間させられるように収縮方向に変形するものである、上記1)~3)のいずれか1つの自動灌水装置。
【0013】
5)逃がし弁が、
通水管の管壁の所定箇所に形成された連通孔の外側縁部よりなる第2副弁座と、
管壁における第2副弁座の周囲の部分から外方に向かってのび、膨張吸収室の周壁を形成している筒状のシリンダ部と、
一端部に第2副弁体を有し、少なくとも一部が、シリンダ部内に水密状にかつ第2副弁体が第2副弁座に対して当接離間させられるように移動自在に収容されて、膨張吸収室の可動端壁を形成している第2移動体と、
第2移動体を第2副弁座側に向かって付勢する付勢部材とを備えている、上記1)~4)のいずれか1つの自動灌水装置。
【0014】
6)付勢部材が第3スプリングよりなり、
シリンダ部の周囲に筒状のスプリングホルダが配置されており、
スプリングホルダ内における第2副弁座と反対側の端部または長さ中間部にスプリング保持部が形成されており、
第3スプリングが第2移動体とスプリング保持部との間に介在されており、
スプリングホルダにおける第2副弁座側の端部が、通水管の管壁に、両者のうち少なくともいずれか一方に同他方に向かって突出するように形成された間隔保持凸部によって所定の間隔をあけた状態で取り付けられている、上記5)の自動灌水装置。
【発明の効果】
【0015】
上記1)の自動灌水装置によれば、例えば、給水栓が開栓されかつ電磁弁により通水路が閉じられた状態(以下、「一時止水状態」という場合がある。)において、周囲温度が氷点付近の所定温度以下となった時に、水抜き弁によって、通水路の一次側部分に滞留した水が少量ずつ排出させられ、それによって内部での水の凍結が防止される。
また、上記1)の装置によれば、例えば、給水栓が閉栓されかつ電磁弁により通水路が閉じられた状態(以下、「完全止水状態」という場合がある。)において、周囲温度が氷点付近の所定温度以下となった時に、水抜き弁による通水路の一次側部分に滞留した水の排出が停止した場合であっても、逃がし弁によって、凍結時に膨張した体積分の水が膨張吸収室に導入されるので、それによって通水管や電磁弁の破損が回避される。
従って、上記1)の自動灌水装置によれば、寒冷期に内部で水が凍結することにより破損が生じるのを確実に防止することが可能である。
【0016】
上記2)の自動灌水装置によれば、以下のような効果が奏される。
すなわち、完全止水状態においては、通常、熱伝導率の高い金属製の給水栓、および、外気に晒される水抜き弁それぞれの付近から水の凍結が発生して進行するが、水抜き弁が給水栓から離れた位置に設けられていると、それぞれの箇所で凍結した水により通水路の一次側部分が分断されるため、逃がし弁による水凍結時の膨張吸収機能が十分に働かず、通水管や電磁弁の破損が発生するおそれがある。
上記2)の自動灌水装置によれば、水抜き弁が給水栓と近接して配置されているので、完全止水状態において、上記のように通水路が分断されて逃がし弁による水凍結時の膨張吸収機能が発揮されなくなる事態が回避され、水の凍結による通水管や電磁弁の破損をより一層確実に防止することができる。
【0017】
上記3)の自動灌水装置によれば、逃がし弁が、通水路の一次側部分のうち給水栓から最も離れた最奥箇所に設けられているため、完全止水状態において、金属製の給水栓に近い水入口から通水路の一次側部分の奥に向かって水の凍結が徐々に進行していった場合に、逃がし弁による水凍結時の膨張吸収機能が最大限に発揮され、水の凍結による通水管や電磁弁の破損をより一層確実に防止することができる。
【0018】
上記4)の自動灌水装置によれば、水抜き弁が、形状記憶合金製の第2スプリングの温度感知によって開閉を行うものであるので、オイルエレメントを使用する一般的な温度感知式の弁と比べて、温度応答性に優れており、また、ハウジングも熱伝導性に優れた金属よりなるので、例えば、一時止水状態において、通水路の一次側部分に滞留した水を、凍結が発生する前に確実に排出させることができる。
また、上記4)の装置によれば、水抜き弁は、オイルエレメントを使用する一般的な温度感知式の弁と比べて、内部構造が簡素化されるので、水の排出量を多くすることができ、ひいては通水路の一次側部分における水の流動を大きくすることができるので、水の凍結を防止する効果が高い。
【0019】
上記5)の自動灌水装置によれば、逃がし弁が、第2副弁座、シリンダ部、第2移動体および付勢部材によって構成されているので、通水路の一次側部分の水が凍結した際に膨張した体積分を膨張吸収室にスムーズに導入することができる一方、温度上昇により解凍した水を膨張吸収室から通水路の一次側部分に確実に戻すことができ、また、膨張吸収室の密閉性が確保されているので、水の凍結に伴う動作不良の発生がなく、さらに、構造が比較的単純であるので、組立が容易であり、コストも抑えられる。
【0020】
上記6)の自動灌水装置によれば、スプリングホルダにおける第2副弁座側の端部が、通水管の管壁に、両者のうち少なくとも一方に形成された間隔保持凸部によって所定の間隔をあけた状態で取り付けられているので、通水路の一次側部分の水が凍結して膨張した際に、その膨張圧力を受けることによって、管壁が外方に膨らむように変形し易くなり、逃がし弁による膨張吸収効果と相俟って、水の凍結による通水管や電磁弁の破損がさらに確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施形態に係る自動灌水装置の全体概略を示す正面図である。
【
図3】同自動灌水装置の要部を示す垂直縦断面図である。
【
図4】同自動灌水装置の水抜き弁を示すものであって、(a)は閉状態の垂直縦断面図であり、(b)は開状態の垂直縦断面図である。
【
図5】
図4(a)のV-V線に沿う拡大垂直横断面図である。
【
図6】同水抜き弁の第1移動体を分解して示す斜視図である。
【
図7】同自動灌水装置の逃がし弁を示すものであって、(a)は閉状態の垂直縦断面図であり、(b)は開状態の垂直縦断面図である。
【
図8】(a)は
図7(a)のa-a線に沿う垂直横断面図であり、(b)は
図7(b)のb-b線に沿う垂直横断面図であり、(c)は
図7(a)のc-c線に沿う垂直横断面図であり、(d)は(c)のd-d線に沿う垂直横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、
図1~
図8を参照して、この発明の実施形態を説明する。
以下の説明において、
図1,3,4,7の各上下および左右を「上下」および「左右」といい、また、
図2の下を「前」、同上を「後」というものとする。
【0023】
[a.自動灌水装置の全体構成]
図1および
図2に全体の概略構成を示すように、この発明の実施形態に係る自動灌水装置(1)は、通水管(2)、電磁弁(3)、制御ユニット(4)、水抜き弁(5)、および逃がし弁(6)を備えている。これらの構成部品のうち通水管(2)の両端部および水抜き弁(5)以外は、ボックス型のケーシング(7)に収容されている。
【0024】
[b.通水管]
通水管(2)は、上下に長いものであって、図示しない給水栓の吐水口に接続される水入口(21)を上端部に有し、下端部に水出口(22)を有しており、その内部が通水路(P)となされている。
なお、通水管(2)を配設する方向は、給水栓の吐水口との接続性や、後述する水抜き弁(5)および逃がし弁(6)による凍結破損防止機能等を考慮すると、図示のような上下方向(鉛直方向)が好ましいが、水平方向や斜め方向に配設することも可能である。
【0025】
この通水管(2)は、金属材料と比べて熱伝導率が低い(換言すれば断熱性が高い)樹脂材料によって形成されている。通水管(2)を形成する樹脂材料としては、低熱伝導率に加えて、低温耐性を有しかつ内部の水が凍結した時の膨張圧力を少しでも吸収できるように弾性変形可能な樹脂を用いるのが好ましく、具体的には、例えばポリアセタール(POM)が挙げられる。
【0026】
図示の通水管(2)は、上側管状部材(20a)および下側管状部材(20b)を有している。上側管状部材(20a)の下部および下側管状部材(20b)の上部には、環状のフランジ部(201)が形成されている。また、下側管状部材(20b)の上部には、フランジ部(201)よりも上方に突出しかつ上側管状部材(20a)の下部内に水密状に差し込まれる差込部(202)が形成されている。そして、上側管状部材(20a)の下部内に下側管状部材(20b)の差込部(202)が差し込まれて、両部材(20a)(20b)のフランジ部(201)がクイックファスナー(F)によって狭着保持されることにより、上側管状部材(20a)および下側管状部材(20b)が着脱自在に接続されている。なお、通水管(2)の主要部の構成は、上記には限定されず、例えば単一の管状部材よりなるものや、3つ以上の管状部材を直列に接続したものであっても構わない。
図示の通水管(2)の場合、その上部は、横断面の外周が方形状のものとなされている。
通水管(2)の水入口(21)と給水栓の吐水口との接続構造は特に限定されないが、例えば、通水管(2)の雌ねじ付き水入口(21)に雄ねじ部材(図示略)によって回転自在に取り付けた吐水口接続用ナット(図示略)を、雄ねじ付き吐水口にねじ接合する構成を採用することができる(
図3参照)。
また、通水管(2)の水出口(22)と灌水用ホースとの接続構造も特に限定されないが、例えば、通水管(2)の雄ねじ付き水出口(22)に、灌水用ホースの一端部に回転自在に取り付けられたホース接続用ナット(図示略)をねじ接合する構成を採用することができる(
図3参照)。
【0027】
[c.電磁弁]
図示の電磁弁(3)は、パイロット式のものであって、通水路(P)の中間箇所に設けられた主弁座(31)と、主弁座(31)に対して当接離間させられることにより通水路(P)を開閉する主弁体(32)と、主弁体(32)を駆動させるパイロット弁(33)とを備えている。
主弁座(31)は、通水管(2)の長さ中間部内(ここでは下側管状部材(20b)の上部内)に、通水管(2)の長さ方向と交差する方向(ここでは右方)を向くように形成されている。これに伴い、通水路(P)は、その長さ中間において略U形に折れ曲がっている。
主弁体(32)は、ダイヤフラム式のものであって、ディスク状のベース部材(321)と、ゴム弾性体よりなりベース部材(321)に装着されているダイヤフラム部材(322)とを有している。下側管状部材(20b)の上部内における主弁座(31)に臨んだ箇所(ここでは右側部)に主弁体収容部(203)が形成されている。この主弁体収容部(203)に、主弁体(32)が、ダイヤフラム部材(322)の表面(シール面)を主弁座(31)に対して当接離間させうるように移動自在に収容されている。
主弁体収容部(203)は側方(ここでは右方)に開口させられているとともに、同開口の縁部に中間管壁部材(20c)が取り付けられている。
中間管壁部材(20c)の内面には環状凸部(204)が形成されており、同環状凸部(204)の先端と、これと対向するように主弁体収容部(203)に形成された環状段差とによって、ダイヤフラム部材(322)の外周縁部が狭着保持されている。
そして、中間管壁部材(20c)と主弁体(32)とで囲まれた空間が、電磁弁(3)の圧力室(P11)となされている。
圧力室(P11)は、主弁体(32)に形成された貫通状の通水孔(323)を介して、それよりも上流に位置する通水路の一次側部分(P1)と連通させられており、内部が水で満たされている。この発明において、通水路の一次側部分(P1)には圧力室(P11)も含まれるものとし、圧力室(P11)が通水路の一次側部分(P1)の最奥箇所となる。
中間管壁部材(20c)と主弁体(32)との間には、主弁体(32)を主弁座(31)に向かって付勢する第4スプリング(34)が介在されている。第4スプリング(34)には、中間管壁部材(20c)側の端部から主弁体(32)側に向かって水平状にのびかつ主弁体(32)の通水孔(323)に挿通させられた線状挿通部(341)が一体的に設けられている。この線状挿通部(341)は、主弁体(32)の移動に伴い通水孔(323)内を摺動させられることで、通水孔(323)の詰まりを防止するクリーニング機能を奏する。
【0028】
詳しい図示は省略したが、パイロット弁(33)は、例えば、圧力リリース通路を介して圧力室(P11)と連通させられた弁室と、弁室の水流出口から通水路の二次側部分(P2)に至る水流出通路と、弁室内における水流出口の縁部に設けられた弁座と、弁座に対して当接離間させられるように弁室に収容された弁体と、電磁誘導作用により弁体を駆動させるアクチュエータ(331)とを備えている。図示の電磁弁(3)の場合、パイロット弁(33)の圧力リリース通路、弁室、水流出通路、および弁座を形成している部分は、中間管壁部材(20c)の下端に連なって中間管壁部材(20c)と一体的に成形されており、同部分に、アクチュエータ(331)が連結金具(332)を介してビス(333)で連結固定されている。
アクチュエータ(331)のソレノイドへの通電を行わない状態では、弁体が弁座に当接させられて水流出口が閉鎖されている。この状態では、圧力室(P11)内の水の圧力が、それよりも上流に位置する通水路の一次側部分(P1)の水の圧力と等しくなされるため、電磁弁(3)の主弁体(32)が主弁座(31)に当接させられ、通水路(P)が閉じた状態となされる。
一方、アクチュエータ(331)のソレノイドへの通電が行われると、弁体が弁座から離間させられて、圧力室(P11)内の水が通水路の二次側部分(P2)に流出し、それによって、圧力室(P11)内の水の圧力が、それよりも上流に位置する通水路の一次側部分(P1)の水の圧力よりも小さくなる。その結果、電磁弁(3)の主弁体(32)が、第4スプリング(34)のばね弾性力に抗して主弁座(31)から離間させられ、通水路(P)が開いた状態となされる。
なお、電磁弁の構成は、上記には限定されず、例えば、上記以外のパイロット式電磁弁や、直動式電磁弁も適用可能である。
【0029】
[d.制御ユニット]
制御ユニット(4)は、電磁弁(3)による通水路(P)の開閉のタイミングを制御するものであって、例えば、制御ユニット本体(41)と、操作パネル(42)と、電源(図示略)とを有するタイマーよりなる。
操作パネル(42)は、例えば、水遣り日(曜日)、水遣り開始時刻、水遣り時間等の情報をボタン操作やタッチ操作で入力できるように構成されている。操作パネル(42)で入力された情報は、制御ユニット本体(41)においてプログラム設定される。そして、設定されたプログラムに従って、制御ユニット本体(41)から電磁弁(3)のアクチュエータ(331)に出力信号が送られる(通電される)ことにより、所定日時に所定時間だけ通水路(P)が開いて自動で灌水が行われるようになっている。操作パネル(42)には、通常、プログラムされた情報等を表示する表示部が設けられている。操作パネル(42)は、使用しない時には、ケーシング(7)に開閉自在に設けられた蓋(71)で覆われるようになっている(
図2参照)。電源としては、例えば乾電池や蓄電池等が用いられる。
【0030】
[e.水抜き弁]
水抜き弁(5)は、温度感知式のものであって、通水路の一次側部分(P1)と連通するように設けられており、電磁弁(3)により通水路(P)が閉じられた状態において周囲温度が氷点付近の所定温度以下となった時に通水路の一次側部分(P1)に滞留した水を少量ずつ排出させて水の凍結を防止するようになっている。
この水抜き弁(5)は、通水管(2)の水入口(21)に近接した箇所に設けられているのが好ましい。具体的には、水抜き弁(5)は、例えば、
図1~
図3に示すように、上側管状部材(20a)の上部の一側面(ここでは左側面)に連通状に接続されて、水平横向きに設けられ。
【0031】
図4~
図6に詳しく示すように、この実施形態の水抜き弁(5)は、ハウジング(51)と、ハウジング(51)内に収容された第1移動体(52)と、第1スプリング(53)と、形状記憶合金製の第2スプリング(54)とを有している。
【0032】
ハウジング(51)は、金属製の筒状体よりなる。ハウジング(51)の一端部(ここでは右端部)は、通水管(2)に連通状に接続されている。ハウジング(51)内には、その長さ中間箇所(ここでは右端寄り箇所)に、第1副弁座(511)が形成されている。ハウジング(51)の他端部(ここでは左端部)および周壁における第1副弁座(511)よりも他端側部分(ここでは左側部分)のうち少なくとも一方(ここでは両方)には、水排出口(512)が形成されている。
ハウジング(51)を構成する金属材料は特に限定されないが、水抜き弁(5)の温度感知性を考慮すると、高い熱伝導率を有する銅(特に黄銅)が好適に用いられる。
図示のハウジング(51)は、一端部(ここでは右端部)に雌ネジを有する水平筒状のハウジング本体(51a)と、一側部(ここでは右側部)が通水管(2)の上端部(上側管状部材(20a)の上部)の側面に形成された雌ネジ付き第1連通孔(205)にねじ込まれ、他側部(ここでは左側部)がハウジング本体(51a)の一端部(ここでは右端部)にねじ込まれている雄型の継手部材(51b)とよりなる。
ハウジング本体(51a)内面の長さ中間位置には、通水管(2)側(ここでは右方)を向いた環状段差(513)が形成されている。ハウジング本体(51a)の周壁には、第1副弁座(511)に近接する箇所に、複数(ここでは6つ)の水排出口(512)が周方向に等間隔おきに形成されている(
図5参照)。また、ハウジング本体(51a)は、通水管(2)と反対側の端部(ここでは左端部)に端壁部を有しており、この端壁部にも水排出口(512)が形成されている。なお、これらの水排出口(512)のうち、ハウジング本体(51a)の周壁の下側に位置する水排出口(512)が、主として水排出機能を担うものであるが、残りの水排出口(512)はハウジング(5)内に外気を導入して第2スプリング(54)の温度感知性を高める機能を奏する。また、ハウジング本体(51a)の周壁に形成された複数の水排出口(512)は、ハウジング(51)を通水管(2)に接続した状態において、これらのいずれか1つが下方に位置することで水排出機能を奏することができるので、ハウジング(5)の接続時に水排出口(512)の細かい位置合わせが不要となり、組立性が向上する。
継手部材(51b)は、通水管(2)と反対側の端部(ここでは左端部)に、中心に通水孔(515)があけられた端壁部(514)を有している。この端壁部により、ハウジング(51)の中間仕切壁部(514)が構成されている。図示の端壁部(514)は、通水孔(515)の周縁部分が、通水管(2)と反対側(ここでは左方)に向かって短い筒状に突出させられており、同突出部分の先端によって第1副弁座(511)が構成されている。
【0033】
第1移動体(52)は、その一端部(ここでは右端部)に第1副弁体(520)を有しており、第1副弁体(520)が第1副弁座(511)に対して当接離間させられるようにハウジング(51)内における第1副弁座(511)よりも他端側(ここでは左側)部分に移動可能に収容されている。
より詳細には、第1移動体(52)は、スプリングガイド(521)と、第1副弁体(520)を保持する副弁体ホルダ(522)とを備えている。
スプリングガイド(521)は、略筒状のものであって、外周面の一端部または長さ中間部(ここでは左端部)に第1スプリング受け部(523)を有しているとともに、内周面の他端部(ここでは右端部)に径方向内方に突出した係止凸部(524)を有している。
副弁体ホルダ(522)は、少なくとも長さの一部(ここでは左端部以外の部分)がスプリングガイド(521)の内部に挿入される略軸状のものである。副弁体ホルダ(522)の外周面の一端部(ここでは右端部)には、スプリングガイド(521)の係止凸部(524)に係り止められる被係止部(525)が形成されている。副弁体ホルダ(522)における被係止部(525)よりも他端側(ここでは右側)部分は、スプリングガイド(521)の一端(ここでは右端)開口を通じて外方に突出している。
より詳細には、副弁体ホルダ(522)は、一端側(ここでは右側)の第1ホルダ部材(522A)と、他端側(ここでは左側)の第2ホルダ部材(522B)とよりなる。
第1ホルダ部材(522A)は、第1副弁体(520)を内部に収容しうる大きさを有する略筒状のものである。第1ホルダ部材(522A)の外周面の長さ中間部に、前記被係止部(525)を構成する段差部が設けられている。第1ホルダ部材(522A)の内周面の一端部(ここでは右端部)に、径方向内方に突出した副弁体受け部(526)が形成されている。第1ホルダ部材(522A)の内周面の他端側部分(ここでは左側部)には、雌ねじが形成されている。段差部(525)は、第1ホルダ部材(522A)の外周面の所要部分をフラットに削り取ることにより、周方向に等間隔をおいて複数(ここでは4つ)形成されたものであって、各段差部(525)は、一端側(ここでは右方)より見て略台形状をしている。従って、
図5に示すように、スプリングガイド(521)の係止凸部(524)に第1ホルダ部材(522A)の各段差部(525)が係り止められた状態で、両者(524)(525)の間に、複数(ここでは4つ)の通水間隙(S1)が形成されている。なお、係止凸部および被係止部は、両者の間に通水間隙が形成されるものであれば、図示の形状には限定されない。
また、第1ホルダ部材(522A)の外径は、スプリングガイド(521)の内径よりもやや小さいものとなされている。これにより、第1ホルダ部材(522A)の外周面とスプリングガイド(521)の内周面との間に、環状の通水間隙(S2)が形成される。
第2ホルダ部材(522B)は、略軸状のものであって、その一端側部分(ここでは右側部分)に第1ホルダ部材(522A)の雌ねじ部にねじ込まれる小径の雄ねじが形成されている。つまり、第2ホルダ部材(522B)の雄ねじが第1ホルダ部材(522A)の雌ねじにねじ込まれることにより、両者(522A)(522B)が分離可能に連結一体化されている。
また、第2ホルダ部材(522B)の外径は、第1ホルダ部材(522A)の外径とほぼ等しくなされている。従って、第2ホルダ部材(522B)の外周面と、スプリングガイド(521)の内周面との間にも、環状の通水間隙(S3)が形成される。
第2ホルダ部材(522B)の外周面の他端部(ここでは左端部)寄り部分には、フランジ状の第2スプリング受け部(527)が形成されている。第2スプリング受け部(527)は、長さ方向から見て六角形となされている。これにより、第2スプリング受け部(527)と、ハウジング(51)の横断面円形をした周壁内面との間に、通水間隙(図示略)が形成されている。また、第2スプリング受け部(527)は、第1移動体(52)が移動する際に、その6つの角部分がハウジング(51)の周壁と接触することにより、第1移動体(52)の姿勢を保持するスライドガイドとしても機能する。なお、第2スプリング受け部は、図示のようなフランジ状とする他、例えば段差部によって構成してもよい。
第2ホルダ部材(522B)の他端部(ここでは左端部)には、第2スプリング(54)の内径とほぼ等しい外径を有する小径部(528)が形成されている。
【0034】
第1スプリング(53)は、第1移動体(52)を第1副弁座(511)と反対側(ここでは左方)に向かって付勢するためのものであって、給水栓等の給水器具において一般に使用されるばね材料よりなる。
この第1スプリング(53)は、スプリングガイド(521)の周囲において、スプリングガイド(521)の第1スプリング受け部(523)とハウジング(51)の中間仕切壁部(514)との間に介在されている。
【0035】
第2スプリング(54)は、第1移動体(52)を第1副弁座(511)側(ここでは右方)に向かって付勢するためのものであって、例えばNi-Ti系等の形状記憶合金よりなる。第2スプリング(54)は、副弁体ホルダ(522)の他端部(ここでは左端部)に設けられた第2スプリング受け部(527)と、ハウジング(51)の端壁(ここでは左端壁)との間に介在されている。
この第2スプリング(54)は、周囲温度が氷点付近の所定温度よりも高い時には、第1スプリング(53)のばね弾性力に抗して第1移動体(52)を第1副弁座(511)側(ここでは右側)に移動させて第1副弁体(520)を第1副弁座(511)に当接させる一方、周囲温度が前記所定温度以下となった時には、第1スプリング(53)のばね弾性力により第1移動体(52)が第1副弁座(511)と反対側(ここでは左側)に移動させられて第1副弁体(520)が第1副弁座(511)から離間させられるように収縮方向に変形するものである。より詳細には、第2スプリング(54)は、例えば、周囲温度が2℃±2℃まで低下した時点で収縮方向に変形し、この収縮変形状態から、周囲温度が6.5℃±2℃まで上昇した時点で元の状態に復元するように構成される。
【0036】
[f.逃がし弁]
逃がし弁(6)は、密閉式のものであって、通水路の一次側部分(P1)と連通するように設けられており、電磁弁(3)により通水路(P)が閉じられた状態において通水路の一次側部分(P1)に滞留した水が凍結する時に膨張した分の水を膨張吸収室(60)に導入するように構成されている。
逃がし弁(6)は、通水管(2)の電磁弁(3)の主弁座(31)に近接した箇所、すなわち、通水路の一次側部分(P1)の最奥箇所に設けられているのが好ましい。具体的には、逃がし弁(6)は、例えば、
図1~
図3に示すように、電磁弁(3)の圧力室(P1)を画定する中間管壁部材(20c)の外面に連通状に接続されて、水平横向きに設けられている。
【0037】
図7および
図8に詳しく示すように、この実施形態の逃がし弁(6)は、第2副弁座(61)と、シリンダ部(62)と、第2副弁体(63)を有する第2移動体(64)と、第3スプリング(付勢部材)(65)と、スプリングホルダ(66)とを備えている。
【0038】
第2副弁座(61)は、通水管(2)の管壁の所定箇所、より詳細には、中間管壁部材(20c)の中央部に貫通状に形成された第2連通孔(連通孔)(206)の外側縁部によって構成されている。
【0039】
シリンダ部(62)は、通水管(2)の管壁(中間管壁部材(20c))における第2副弁座(61)の周囲の部分から外方(ここでは右方)に向かってのびる水平筒状のものであって、膨張吸収室(60)の周壁を形成している。
【0040】
第2移動体(64)は、その一端部(ここでは左端部)に第2副弁体(63)を有している。
この第2移動体(64)は、第2副弁体(63)が第2副弁座(61)に対して当接離間させられるように少なくとも一部がシリンダ部(62)内に水密状にかつ移動可能に収容されている。すなわち、第2移動体(64)の少なくとも一部によって、膨張吸収室(60)の可動端壁が形成されている。
図示の第2移動体(64)は、シリンダ部(62)内に摺動自在に収容される内筒部(641)と、内筒部(641)の第2副弁座(61)側開口(ここでは左端開口)を閉鎖するように設けられかつ第2副弁体(63)を保持する保持部(642a)を有している端壁部(642)と、内筒部(641)の他端部(ここでは右端部)に連なって設けられかつシリンダ部(62)の周囲に摺動自在に嵌め被せられる外筒部(643)とを備えている。
第2副弁体(63)は、その片面(ここでは左側面)の外周部が第2副弁座(61)に当接させられる小さなディスク状のものであって、同片面の中心部には、中間管壁部材(20c)の第2連通孔(206)に挿入可能な凸部(631)が形成されており、また、その他面(ここでは右側面)の中心部には、水平突出状の軸部(632)が形成されている。
第2移動体(64)の端壁部(642)の中心部分には、第2副弁体(63)の軸部(632)が嵌め入れられる保持凹部(642a)(保持部)が形成されている。また、端壁部(642)の外周部分には、シリンダ部(62)内面との間をシールするためのOリング等のシール部材(67)の一部が収容される環状凹所(642b)が形成されている。このシール部材(67)によって、膨張吸収室(60)の水密性が保持されるようになっている。
第2移動体(64)の外筒部(643)の開口端部(ここでは左端部)には、径方向外向きのフランジ部よりなるスプリング受け部(643a)が設けられている。
なお、第2移動体は、上記構成とする他、例えば、外筒部を省略した構成、あるいは、外筒部および内筒部を省略した構成とすることも可能である。但し、上記構成の第2移動体(64)によれば、第3スプリング(65)として水凍結時の膨張圧力に適応したばね弾性力を確保するために直径が大きくかつ長さの長いものを使用できるにもかかわらず、逃がし弁(6)全体を比較的コンパクトに保てる点で有利である。
【0041】
第3スプリング(65)は、第2移動体(64)を第2副弁座(61)側に向かって付勢するものである。
第3スプリング(65)を構成する材料は特に限定されず、公知のばね材料の中から適宜に選択すればよい。
【0042】
スプリングホルダ(66)は、第3スプリング(65)を保持するためのものであって、水平筒状の周壁部(661)と、周壁部(661)における第2副弁座(61)と反対側の端部開口(ここでは右端部開口)を閉鎖するように設けられた底壁部(662)とを有している有底筒状体よりなる。
このスプリングホルダ(66)は、シリンダ部(62)の周囲に配置され、その開口端部(ここでは左端部)が通水管(2)の管壁(中間管壁部材(20c))の外面に取り付けられている。
スプリングホルダ(66)の底壁部(662)内面には、第3スプリング(65)の一端部(ここでは右端部)を保持するスプリング保持部(662a)が形成されている。図示のスプリングホルダ(66)では、スプリング保持部が、底壁部(662)内面に周方向に間隔をおいて放射状に並ぶように形成された複数(ここでは4つ)の板状凸部(662a)よりなり、これらの板状凸部(662a)の周囲に第3スプリング(65)の一端部(ここでは右端部)が嵌められて保持されるようになっている。そして、第3スプリング(65)の他端部(ここでは左端部)が第2移動体(64)のスプリング受け部(643a)で受けられることにより、第3スプリング(65)のばね弾性力が、第2副弁体(63)を有する第2移動体(64)を第2副弁座(61)側(ここでは左方)に向かって付勢する方向に作用する。
なお、スプリングホルダは、図示のような有底筒状のものには限らず、例えば、内部の長さ中間位置に適宜のスプリング保持部を形成した筒状のものであってもよい。
スプリングホルダ(66)の開口端部(ここでは左端部)には径方向外向きのフランジ部(663)が形成されている。フランジ部(663)には、通水管(2)の管壁(中間管壁部材(20c))に向かって突出する間隔保持凸部(663a)が、周方向に間隔をおいて複数(ここでは4つ)形成されている。したがって、スプリングホルダ(66)の開口端部(フランジ部(663))は、間隔保持凸部(663a)の突出高さに相当する間隔(S4)をあけた状態で、通水管(2)の管壁(中間管壁部材(20c))に取り付けられる(
図7(b)参照)。なお、間隔保持凸部は、上記のようにスプリングホルダ(66)の開口端部(フランジ部(663))に形成する他、通水管(2)の管壁(中間管壁部材(20c))に形成してもよく、あるいは、これら(663)(20c)の双方に形成してもよい。
スプリングホルダ(66)のフランジ部(663)における間隔保持凸部(663a)が設けられている箇所には、それぞれ水平貫通状のビス挿通孔(664)が形成されている(
図8(c)参照)。また、中間管壁部材(20c)の外周部における前記フランジ部(663)のビス挿通孔(664)に対応する箇所にもビス挿通孔(図示略)があけられている。そして、スプリングホルダ(66)のフランジ部(663)および中間管壁部材(20c)が、ビス(68)によって、下側管状部材(20b)における主弁体収容部(203)の開口縁部に取り付けられている。したがって、上記の構成によれば、組立作業を容易にかつ迅速に行うことができ、コストも抑えられる。
【0043】
ここで、中間管壁部材(20c)は、他の通水管形成部材である上側管状部材(20a)および下側管状部材(20b)と同様に、通水路の一次側部分(P1)の最奥に位置する圧力室(P11)内の水が凍結した時に生じる膨張圧力を僅かでも吸収できるように、外方に向かって弾性変形可能な樹脂材料、具体的には、例えばポリアセタール(POM)によって形成されているのが好ましい。
図8に詳しく示すように、中間管壁部材(20c)のうち、第2連通孔(206)の周囲の部分(すなわち、第2副弁座(61)を形成している部分)、および、シリンダ部(62)と外周縁部との間の部分は、他の部分と比べて厚みの小さい薄肉部(207)となされている。これらの薄肉部(207)の存在により、中間管壁部材(20c)は、圧力室(P11)内の水が凍結した際の膨張圧力によって外方に変形しやすい構造となされている。シリンダ部(62)と外周縁部との間の薄肉部(207)には、その外面(ここでは右側面)に複数の補強リブ(208)が形成されており、水の凍結時の膨張圧力により塑性変形や破損が生じないようになされている。
【0044】
[g.凍結破損防止機能]
次に、上記の自動灌水装置(1)による凍結破損防止機能について説明する。
まず、給水栓が開栓されているが電磁弁(3)により通水路(P)が閉じられている一時止水状態において、周囲温度が氷点付近の所定温度(例えば2℃前後)よりも高い場合には、水抜き弁(5)の第2スプリング(54)が第1スプリング(53)のばね弾性力に抗して第1移動体(52)を第1副弁座(511)側(ここでは右側)に向かって付勢し、それによって第1副弁体(520)が第1副弁座(511)に当接させられている(
図4(a)参照)。
【0045】
そして、周囲温度が前記所定温度以下まで低下すると、第2スプリング(54)が収縮方向に変形して付勢力が作用しなくなるので、第1スプリング(53)のばね弾性力により第1移動体(52)が第1副弁座(511)と反対側(ここでは左側)に移動させられ、第1副弁体(520)が第1副弁座(511)から離間させられる。これにより、通水路の一次側部分(P1)に滞留していた水が、第1連通孔(205)および通水孔(515)を通じてハウジング(51)内の二次側部分に流入し、水排出口(512)から少量ずつ吐水される(
図4(b)参照)。このように通水路の一次側部分(P1)に滞留していた水が流動することによって、内部での水の凍結が効果的に防止される。
上記において、第1連通孔(205)および通水孔(515)を通じてハウジング(51)内の二次側部分に流入した水は、スプリングガイド(521)の係止凸部(524)と第1ホルダ部材(522A)の段差部(525)との間に設けられた通水間隙(S1)、第1ホルダ部材(522A)および第2ホルダ部材(522B)の外周面とスプリングガイド(521)の内周面との間に設けられた環状の通水間隙(S2)(S3)、さらには第2ホルダ部材(522B)の第2スプリング受け部(527)とハウジング (51)の周壁内面との間に設けられた通水間隙を通じて、第2スプリング(54)が収容されているハウジング(51)部分内に速やかに流れ込み、第2スプリング(54)と接触する。地中に埋設されている給水管内に滞留している水は、外気温度が氷点付近になった場合でも、それより数℃程度高いことが多い。この水に接触した第2スプリング(54)が、水の温度を感知する、換言すれば、氷点より温度の高い水によって加温されると、その形状を復元してばね弾性力を作用させることにより、第1副弁体(520)を含む第1移動体(52)を第1副弁座(511)側(ここでは右方)に移動させる。これにより、第1副弁体(520)が第1副弁座(511)に当接して通水孔(515)を閉じ、凍結防止のための通水が停止される。従って、この実施形態によれば、水抜き弁(5)の作動による通水時間が短くなり、ひいては、吐水量が必要最小限に抑えられる。
【0046】
上述した通り、一時止水状態においては、水抜き弁(5)の作用により通水路の一次側部分(P1)における水の凍結が防止されるため、圧力室(P11)を含む通水路の一次側部分(P1)には水の凍結時の膨張圧力は作用しない。
そのため、逃がし弁(6)は、
図3および
図7(a)に示すように、第2副弁体(63)を含む第2移動体(64)が第3スプリング(65)のばね弾性力で第2副弁座(61)側(ここでは左方)に向かって付勢させられ、第2副弁体(63)が第2副弁座(61)に当接させられた状態となる。そのため、圧力室(P11)内の水は、膨張吸収室(60)には導入されない。換言すれば、この状態では、膨張吸収室(60)の容積はほぼゼロとなる。
【0047】
次に、給水栓が閉栓されかつ電磁弁(3)により通水路(P)が閉じられた完全止水状態において、周囲温度が氷点付近の所定温度以下となった場合、その初期段階においては、一時止水状態について前述した通り水抜き弁(5)が作動することによって、通水路の一次側部分(P1)に滞留した水が排出される。
しかしながら、完全止水状態では、通水路の一次側部分(P1)に給水圧が作用しないため、水抜き弁(5)による水の排出はやがて停止する。
その後、通水路の一次側部分(P1)に残った水は、金属製の給水栓に最も近い水入口(21)付近、および外気に晒された水抜き弁(5)との連通部分から次第に凍結していく。水の凍結は、通水路の一次側部分(P1)の奥に向かって徐々に進行し、最終的に圧力室(P11)内の水が凍結する。
凍結に伴って通水路の一次側部分(P1)の水が膨張すると、その膨張圧力が圧力室(P11)を画定している中間管壁部材(20c)および第2副弁体(520)に作用する。膨張圧力が大きくなると、第2副弁体(520)を含む第2移動体(64)が、第3スプリング(65)のばね弾性力に抗して、シリンダ部(62)内を第2副弁座(61)と反対側(ここでは右方)に移動し、第2副弁体(63)が第2副弁座(61)から離間させられた状態となる。これにより、膨張した体積分の水が、圧力室(P11)から第2連通孔(206)を通じて膨張吸収室(60)に導入される。膨張吸収室(60)の可動端壁を構成している第2移動体(64)の移動距離は、膨張圧力の大きさに比例して大きくなり、それに伴い膨張吸収室(60)の容積も増大する。また、薄肉部(207)を有する中間管壁部材(20c)も、水の凍結による膨張圧力が大きくなると、外方(ここでは右方)に向かって若干膨らむように弾性変形させられ、その分だけ圧力室(P11)の容積が大きくなる。以上のように逃がし弁(6)が作動することで、通水路の一次側部分(P1)に滞留した水の凍結による膨張圧力が吸収されるので、通水管(2)や電磁弁(3)の破損が効果的に防止される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明による自動灌水装置は、例えば一般住宅の庭、集合住宅・公共施設の共有スペース、公園等において、給水栓に直結して使用するに当たり、寒冷期に内部で水が凍結することによる破損を防止する機能を備えたものとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0049】
(1):自動灌水装置
(2):通水管
(20c):中間管壁部材(通水管の管壁)
(206):第2連通孔(連通孔)
(21):水入口
(22):水出口
(P):通水路
(P1):通水路の一次側部分
(P11):圧力室
(3):電磁弁
(31):主弁座
(32):主弁体
(331):アクチュエータ
(4):制御ユニット
(5):水抜き弁
(51):ハウジング
(511):第1副弁座
(512):水排出口
(52):第1移動体
(520):第1副弁体
(53):第1スプリング
(54):第2スプリング
(6):逃がし弁
(60):膨張吸収室
(61):第2副弁座
(62):シリンダ部
(63):第2副弁体
(64):第2移動体
(65):第3スプリング(付勢部材)
(66):スプリングホルダ
(662a):スプリング保持部
(663):フランジ部(第2副弁座側の端部)
(663a):間隔保持凸部