(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】農業用ハウス設計支援装置、コンピュータプログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240712BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20240712BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240712BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G9/14
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2024518467
(86)(22)【出願日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2023044183
【審査請求日】2024-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2023029299
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】新村 素晴
(72)【発明者】
【氏名】大出 浩睦
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221772(JP,A)
【文献】立松宏一ら,北海道における農業用温室を対象とした施設内環境解析及び構造形式に関する研究,調査研究報告,No.376,地方独立行政法人北海道立総合研究機構,2017年03月,p.1-45,[online],インターネット<URL:https://www.hro.or.jp/upload/22993/376.pdf>
【文献】山本雄二郎,ハウスの放熱係数について,農業気象,1970年12月,Vol.26 No.3,p.117-122
【文献】大橋慎太郎ら,積雪寒冷地域のハウス栽培における放熱機構の解析,農業施設,2005年,Vol.36 No.1,p.37-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/02
A01G 9/14
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地域に設置予定の農業用ハウスの設計を支援する農業用ハウス設計支援装置であって、
各種機器・設備から排出される熱エネルギー中、回収して利用可能な回収熱の熱量を得る回収熱量取得部と、
前記農業用ハウスの基本設計情報を取得する基本設計情報取得部と、
前記基本設計情報を備えた前記農業用ハウスにおいて、所定の栽培期間、所定の植物を栽培する場合の前記農業用ハウスのハウス放熱係数を求めるハウス放熱係数算出部と、
前記回収熱の熱量に、前記ハウス放熱係数を考慮して、前記植物に適する設定夜温度を維持する暖房能力を確保可能な前記農業用ハウスの床面積の理論値を算出する床面積理論値算出部と
を有する農業用ハウス設計支援装置。
【請求項2】
前記ハウス放熱係数として、前記農業用ハウスの水平放熱係数及び垂直放熱係数の少なくとも一方が用いられる請求項1記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項3】
前記ハウス放熱係数算出部は、前記栽培期間、前記の植物を栽培するとした場合に、前記設定夜温度と前記栽培期間において推定される前記地域の地域最低気温との内外気温差を求める内外気温差算出部を有し、
前記水平放熱係数及び前記垂直放熱係数が前記内外気温差を考慮して求められる請求項2記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項4】
前記ハウス放熱係数算出部は、前記栽培期間における前記地域の地中熱流束を算出する地中熱流束算出部を有し、
前記垂直放熱係数が、前記地中熱流束に基づいて算出される請求項3記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項5】
前記床面積理論値算出部は、前記床面積の理論値を方形の床形状と仮定して算出する請求項1記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項6】
前記床面積の理論値、前記内外気温差、前記地中熱流束及び前記基本設計情報に基づき、前記回収熱量取得部により求められる前記回収熱を所望の効率で利用可能な前記農業用ハウスの被覆面積の理論値を算出する被覆面積理論値算出部を有する請求項4記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項7】
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの全幅及び奥行きの設計値を求める床面積設計値算出部を有する請求項1記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項8】
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの幅及び奥行きの設計値を求める床面積設計値算出部と、
前記床面積設計値算出部により求められる前記床面積の設計値、前記全幅及び前記奥行き、前記基本設計情報取得部において取得される前記基本設計情報に基づき、前記農業用ハウスの被覆面積の設計値を、前記被覆面積の理論値以下で求める被覆面積設計値算出部とを有する請求項6記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項9】
前記農業用ハウス内の設定夜温度を確保するための必要熱量を算出する必要熱量算出部を備え、
前記必要熱量算出部は、前記農業用ハウスの設置地域の公開気象データから得られる日毎の最高気温及び日毎の最低気温に、前記床面積の設計値及び前記被覆面積の設計値を考慮して求められる日毎の夜間暖房負荷を用いて算出される前記所定の栽培期間の期間暖房負荷を、前記必要熱量として算出する手段である請求項8記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項10】
前記期間暖房負荷が、前記日毎の夜間暖房負荷に、日毎の昼間暖房負荷を加えて求められる請求項9記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項11】
暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量を求め、前記回収熱によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量と比較し、両者の差分を前記回収熱を利用した場合の温室効果ガス削減量として求める暖房由来温室効果ガス排出量算出部を有する請求項9又は10記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項12】
前記必要熱量を前記回収熱により全て確保した場合、燃料消費量=0、温室効果ガス排出量=0であるとする請求項11記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項13】
前記暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコスト、前記回収熱によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコストをそれぞれ求めると共に、両者の差分から削減エネルギーコストを求めるコスト算出部を有する請求項11記載の農業用ハウス設計支援装置。
【請求項14】
コンピュータを、所定の地域に設置される農業用ハウスの設計を支援する農業用ハウス設計支援装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
各種機器・設備から排出される熱エネルギー中、回収して利用可能な回収熱の熱量を得る手順と、
前記農業用ハウスの基本設計情報を取得する手順と、
前記基本設計情報を備えた前記農業用ハウスにおいて、所定の栽培期間、所定の植物を栽培する場合の前記農業用ハウスのハウス放熱係数を求める手順と、
前記回収熱の熱量に、前記ハウス放熱係数を考慮して、前記植物に適する設定夜温度を維持する暖房能力を確保可能な前記農業用ハウスの床面積の理論値を算出する手順と
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記ハウス放熱係数として、前記農業用ハウスの水平放熱係数及び垂直放熱係数の少なくとも一方が用いられる請求項14記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記ハウス放熱係数を算出する手順では、前記栽培期間、前記の植物を栽培するとした場合に、前記設定夜温度と前記栽培期間において推定される前記地域の地域最低気温との内外気温差を求め、
前記水平放熱係数及び前記垂直放熱係数を、前記内外気温差を考慮して求める請求項15記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記ハウス放熱係数を算出する手順では、前記栽培期間における前記地域の地中熱流束を算出し、
前記垂直放熱係数を、前記地中熱流束に基づいて算出する請求項16記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記床面積の理論値、前記内外気温差、前記地中熱流束及び前記基本設計情報に基づき、前記回収熱を所望の効率で利用可能な前記農業用ハウスの被覆面積の理論値を算出する請求項17記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの全幅及び奥行きの設計値を求める請求項14記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの幅及び奥行きの設計値を求め、
前記床面積の設計値、前記全幅及び前記奥行き、前記基本設計情報に基づき、前記農業用ハウスの被覆面積の設計値を、前記被覆面積の理論値以下で求める請求項18記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
さらに、前記農業用ハウスの設置地域の公開気象データから得られる日毎の最高気温及び日毎の最低気温に、前記床面積の設計値及び前記被覆面積の設計値を考慮して求められる日毎の夜間暖房負荷を用いて算出される前記所定の栽培期間の期間暖房負荷を、前記農業用ハウス内の設定夜温度を確保するための必要熱量として算出する請求項20記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
前記期間暖房負荷が、前記日毎の夜間暖房負荷に、日毎の昼間暖房負荷を加えて求められる請求項21記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】
さらに、暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量を求め、前記回収熱によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量と比較し、両者の差分を前記回収熱を利用した場合の温室効果ガス削減量として求める暖房由来温室効果ガスの排出量を算出する請求項21又は22記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
さらに、前記暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコスト、前記回収熱によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコストをそれぞれ求めると共に、両者の差分から削減エネルギーコストを求める請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
請求項14~24のいずれか1に記載のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスの設計を支援する技術に関し、特に、各種機器・設備から排出される熱エネルギーを利用して農業用ハウスの設計を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策は喫緊の課題として種々検討されている。特に、二酸化炭素等の温室効果ガスを排出する発電所、変電所、工場、清掃工場等における温室効果ガスの削減は温暖化対策に大きな効果が期待できる。
【0003】
特許文献1では、火力発電所の二酸化炭素を多く含む熱排気を大気に放出せず、海水を利用して所定温度まで低下させる熱交換を行い、この二酸化炭素を含んだ熱排気を植物工場に供給し、温室効果ガスの大気への放出を抑制する技術が開示されている。
【0004】
非特許文献1では、地球温暖化防止技術の一つとして、ガス等の燃焼により発生する熱を農業用ハウスに供給して暖房を賄うと共に、排ガスから二酸化炭素を取り出して供給し、植物の成長を促す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】エネフロ、ENERGY FRONTLINE、2021年4月13日、Vol.25、「CO2でトマトがぐんぐん!一石三鳥の最新技術とは?」 URL:https://ene-fro.com/article/ef195_a1/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び非特許文献1に開示の技術は、基本的には、エネルギー排出設備から排出される二酸化炭素や熱を回収し、他の用途に活用することによって大気中への温室効果ガスの放出量を抑制する技術である。このうち、排熱の熱エネルギーの多くは化石燃料由来の熱であり、その利用を促すことで化石燃料の使用量の低減を図ることができ、省エネ、温室効果ガス排出量の削減につながる。
【0008】
ところが、上記従来の技術では、排熱の熱エネルギーを利用すること自体に関する知見はあるものの、農業用ハウスにおいてその熱エネルギーをより効率的に利用するということに関しては十分な検討がなされていない。
【0009】
実際、工場等の排熱等は、既存の農業用ハウスに供給することで、その利用がなされ、省エネ、温室効果ガスの削減に貢献できていると評価されているに過ぎないのが現状である。工場等からの排熱等の利用のために農業用ハウスを建設するにしても、現状、その農業用ハウスを、排熱の熱エネルギーを効率的に活用するのに見合った規模で建設することは行われておらず、単に、予め決まったサイズの農業用ハウスを建設しているに過ぎない。従って、農業用ハウスの規模を、回収して利用可能な熱エネルギーに見合ったものとすることができれば、農業用ハウスの建設に伴うコストや労力等がよりリーズナブルになる。その結果、排熱を利用可能な農業用ハウスの建設が促され、温室効果ガス排出量の抑制効果も高くなる。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、各種機器・設備から排出される熱エネルギーを回収し、回収熱を有効利用するのに見合った規模の農業用ハウスの建設を可能とし、建設コスト等の無駄を抑制して農業用ハウスの建設を促し、温室効果ガスの削減に寄与できる農業用ハウス設計支援装置、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の農業用ハウス設計支援装置は、
所定の地域に設置予定の農業用ハウスの設計を支援する農業用ハウス設計支援装置であって、
各種機器・設備から排出される熱エネルギー中、回収して利用可能な回収熱の熱量を得る回収熱量取得部と、
前記農業用ハウスの基本設計情報を取得する基本設計情報取得部と、
前記基本設計情報を備えた前記農業用ハウスにおいて、所定の栽培期間、所定の植物を栽培する場合の前記農業用ハウスのハウス放熱係数を求めるハウス放熱係数算出部と、
前記回収熱の熱量に、前記ハウス放熱係数を考慮して、前記植物に適する設定夜温度を維持する暖房能力を確保可能な前記農業用ハウスの床面積の理論値を算出する床面積理論値算出部と
を有する。
【0012】
前記ハウス放熱係数として、前記農業用ハウスの水平放熱係数及び垂直放熱係数の少なくとも一方が用いられることが好ましい。
前記ハウス放熱係数算出部は、前記栽培期間、前記の植物を栽培するとした場合に、前記設定夜温度と前記栽培期間において推定される前記地域の地域最低気温との内外気温差を求める内外気温差算出部を有し、
前記水平放熱係数及び前記垂直放熱係数が前記内外気温差を考慮して求められることが好ましい。
【0013】
前記ハウス放熱係数算出部は、前記栽培期間における前記地域の地中熱流束を算出する地中熱流束算出部を有し、
前記垂直放熱係数が、前記地中熱流束に基づいて算出されるものであることが好ましい。
【0014】
前記床面積理論値算出部は、前記床面積の理論値を方形の床形状と仮定して算出することが好ましい。
前記床面積の理論値、前記内外気温差、前記地中熱流束及び前記基本設計情報に基づき、前記回収熱量取得部により求められる前記回収熱を所望の効率で利用可能な前記農業用ハウスの被覆面積の理論値を算出する被覆面積理論値算出部を有することが好ましい。
【0015】
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの全幅及び奥行きの設計値を求める床面積設計値算出部を有することが好ましい。
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの幅及び奥行きの設計値を求める床面積設計値算出部と、
前記床面積設計値算出部により求められる前記床面積の設計値、前記全幅及び前記奥行き、前記基本設計情報取得部において取得される前記基本設計情報に基づき、前記農業用ハウスの被覆面積の設計値を、前記被覆面積の理論値以下で求める被覆面積設計値算出部とを有することが好ましい。
【0016】
前記農業用ハウス内の設定夜温度を確保するための必要熱量を算出する必要熱量算出部を備え、
前記必要熱量算出部は、前記農業用ハウスの設置地域の公開気象データから得られる日毎の最高気温及び日毎の最低気温に、前記床面積の設計値及び前記被覆面積の設計値を考慮して求められる日毎の夜間暖房負荷を用いて算出される前記所定の栽培期間の期間暖房負荷を、前記必要熱量として算出する手段であることが好ましい。
前記期間暖房負荷が、前記日毎の夜間暖房負荷に、日毎の昼間暖房負荷を加えて求められることが好ましい。
【0017】
暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量を求め、前記回収熱によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量と比較し、両者の差分を前記回収熱を利用した場合の温室効果ガス削減量として求める暖房由来温室効果ガス排出量算出部を有することが好ましい。
前記必要熱量を前記回収熱により全て確保した場合、燃料消費量=0、温室効果ガス排出量=0であるとすることが好ましい。
【0018】
前記暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコスト、前記回収熱によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコストをそれぞれ求めると共に、両者の差分から削減エネルギーコストを求めるコスト算出部を有することが好ましい。
【0019】
また、本発明では、
コンピュータを、所定の地域に設置される農業用ハウスの設計を支援する農業用ハウス設計支援装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
各種機器・設備から排出される熱エネルギー中、回収して利用可能な回収熱の熱量を得る手順と、
前記農業用ハウスの基本設計情報を取得する手順と、
前記基本設計情報を備えた前記農業用ハウスにおいて、所定の栽培期間、所定の植物を栽培する場合の前記農業用ハウスのハウス放熱係数を求める手順と、
前記回収熱の熱量に、前記ハウス放熱係数を考慮して、前記植物に適する設定夜温度を維持する暖房能力を確保可能な前記農業用ハウスの床面積の理論値を算出する手順と
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムを提供する。
【0020】
前記ハウス放熱係数として、前記農業用ハウスの水平放熱係数及び垂直放熱係数の少なくとも一方が用いられることが好ましい。
前記ハウス放熱係数を算出する手順では、前記栽培期間、前記の植物を栽培するとした場合に、前記設定夜温度と前記栽培期間において推定される前記地域の地域最低気温との内外気温差を求め、
前記水平放熱係数及び前記垂直放熱係数を、前記内外気温差を考慮して求めることが好ましい。
前記ハウス放熱係数を算出する手順では、前記栽培期間における前記地域の地中熱流束を算出し、
前記垂直放熱係数を、前記地中熱流束に基づいて算出することが好ましい。
【0021】
前記床面積の理論値、前記内外気温差、前記地中熱流束及び前記基本設計情報に基づき、前記回収熱を所望の効率で利用可能な前記農業用ハウスの被覆面積の理論値を算出することが好ましい。
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの全幅及び奥行きの設計値を求めることが好ましい。
前記農業用ハウスの床面積の設計値が、前記床面積の理論値以下となるように、前記農業用ハウスの幅及び奥行きの設計値を求め、
前記床面積の設計値、前記全幅及び前記奥行き、前記基本設計情報に基づき、前記農業用ハウスの被覆面積の設計値を、前記被覆面積の理論値以下で求めることが好ましい。
【0022】
さらに、前記農業用ハウスの設置地域の公開気象データから得られる日毎の最高気温及び日毎の最低気温に、前記床面積の設計値及び前記被覆面積の設計値を考慮して求められる日毎の夜間暖房負荷を用いて算出される前記所定の栽培期間の期間暖房負荷を、前記農業用ハウス内の設定夜温度を確保するための必要熱量として算出することが好ましい。
前記期間暖房負荷が、前記日毎の夜間暖房負荷に、日毎の昼間暖房負荷を加えて求められることが好ましい。
【0023】
さらに、暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量を求め、前記回収熱によって前記必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量と比較し、両者の差分を前記回収熱を利用した場合の温室効果ガス削減量として求める暖房由来温室効果ガスの排出量を算出することが好ましい。
さらに、前記暖房設備の稼働によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコスト、前記回収熱によって前記必要熱量を確保するまでに必要なコストをそれぞれ求めると共に、両者の差分から削減エネルギーコストを求める構成とすることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、前記のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。コンピュータプログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD-ROM、メモリカードなどの記録媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、各種機器・設備から排出される熱エネルギー中、回収可能な回収熱の熱量を求め、農業用ハウスの水平方向及び垂直方向の各熱流による放熱係数を考慮して求められる床面積から、回収熱の供給により必要な暖房能力を確保できる規模の農業用ハウスの建設を可能とする。よって、本発明の農業用ハウス設計支援装置により得られる結果に基づいて建設された農業用ハウスは、回収熱を効率よく利用でき、省エネ化を図り、温室効果ガスの削減に貢献できる。また、農業用ハウスの建設に伴うコストや労力等の無駄を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態に係る農業用ハウス設計支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、回収熱量取得部の機能を説明するための図である。
【
図3】
図3は、ディスプレイに表示される入力画面及び出力画面の一例を示した図である。
【
図4】
図4は、ハウス放熱係数算出部の構成及び機能を説明するための図である。
【
図5】
図5は、床面積理論値算出部の構成及び機能を説明するための図である。
【
図6】
図6は、被覆面積理論値算出部の構成及び機能を説明するための図である。
【
図7】
図7は、床面積設計値算出部における床面積の設計値の算出過程を説明するための図である。
【
図8】
図8は、被覆面積設計値算出部における被覆面積の設計値の算出過程を説明するための図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る農業用ハウス設計支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、必要熱量算出部における期間暖房負荷の算出過程を説明するための図である。
【
図11】
図11は、夜間デグリアワーの算出過程を説明するための図である。
【
図12】
図12は、期間暖房負荷に日毎の昼間暖房負荷を含める場合の算出過程を説明するための図である。
【
図13】
図13は、暖房由来温室効果ガス排出量算出部における温室効果ガス排出量の算出過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、さらに詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る農業ハウス設計支援装置1の概略構成を示した図である。この図に示したように、本実施形態の農業ハウス設計支援装置1は、プロセッサ(CPU)1a、記憶部(本明細書において「記憶部」と称する場合、主記憶装置、ストレージ等、揮発性や不揮発性の記録媒体のいずれも含む意味であり、いずれかに限定するものではない)1bを備えたコンピュータ(コンピュータの種類は限定されるものではなく、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、携帯型情報端末等を含む)から構成される。
【0028】
具体的には、本実施形態の農業ハウス設計支援装置1には、当該農業ハウス設計支援装置1であるコンピュータを、回収熱量取得部11、基本設計情報取得部12、ハウス放熱係数算出部13、床面積理論値算出部14、被覆面積理論値算出部15、床面積設計値算出部16及び被覆面積設計値算出部17として機能させる手順を実行するコンピュータプログラムが記憶部1bに記憶されている。コンピュータプログラムは、通常、当該コンピュータ(農業ハウス設計支援装置1)に内蔵又は外付けのハードディスクやSSD等の不揮発性の記録媒体に記憶され、上記プロセッサ1aによって読み出されて実行される。また、各種データの記憶場所は、農業ハウス設計支援装置1に内蔵又は外付けの記憶部のほか、通信回線を介して接続された記憶部であってもよい。
【0029】
回収熱量取得部11は、
図2に示したように、各種機器・設備から排出される熱エネルギー中、回収して利用可能な回収熱の熱量を得る。各種機器・設備とは、熱エネルギーを排出するものであれば特に限定されない。例えば、農業用ハウスに付設されているボイラー、暖房装置、二酸化炭素発生装置等の比較的小型の機器等、あるいは、発電所、工場、清掃工場等の大型設備やプラント等のいずれであってもよい。但し、農業用ハウスの設置場所から離れるほど、熱エネルギーの輸送コストもかかるため、農業用ハウスの設置場所に近い場所に設けられる機器や設備であることが好ましい。回収熱量取得部11は、例えば、清掃工場の排ガスを回収する配管系を設けた場合に、その配管系を経由して得られる排ガスから取り出し可能な回収熱の熱量を求める。回収熱の熱量は、実際に回収可能な熱量を測定して求めることもできるが、シミュレーション用として、想定される適宜の値を用いることもできる。
図3は、出力装置であるディスプレイの表示画面の一例を示したものであり、図の左側に空欄で示されているボックスに各種の入力情報が表示される。回収熱の熱量が入力装置を用いて入力されると、あるいは、回収熱の熱量を求めた装置(図示せず)からその情報を受信すると、回収熱量取得部11により、
図3において「余熱量」と表示されたボックスにその熱量が表示される。なお、余熱量が、単位:kcal/hで入力された場合には、回収熱量取得部11は、単位:GJ/hに変換する機能も有する。回収熱量取得部11はまた、入力された回収熱の熱量(余熱量)を基本設計情報データベース31に記憶させる。
【0030】
基本設計情報取得部12は、農業用ハウスの設計に必要な基本設計情報を取得する。基本設計情報とは、本実施形態では、屋根形状(例えば、三角形状、半円状など、あるいは、三角形状を選択した場合の勾配など)、屋根材の種類(例えば、FRAなど)、間口、軒高(屋根の矢切部を含まない設置面からの高さ)、奥行き方向のスパン長さ、縦横比(全幅/奥行き)、内張被覆材の種類(例えば、ラクソス(商品名)、テンパ(商品名)など)などの農業用ハウスの構造に関する情報と、植物の種類、栽培の開始日及び終了日などの栽培に関する情報である。なお、本実施形態で設計する農業用ハウスは連棟構造を前提とし、以下の説明において「間口」は一棟分の間口を意味し、「全幅」は連棟構造の農業用ハウス全体の幅を意味する。基本設計情報については、農業用ハウスの建設予定者や排ガスを排出する工場関係者等の本装置のシミュレーション実行者が入力装置を用いて入力すると、基本設計情報取得部12によってその入力内容が、
図3に示した所定の入力項目に反映される。屋根形状、屋根材の種類、奥行き方向のスパン長さ等、農業用ハウスとして採用可能な範囲が限定されている場合には、プルダウンメニューを表示させて選択される構成とすることができる。間口、軒高、縦横比などは数値を入力させる構成とすることができる。もちろん入力方法は任意であり、これに限定されるものではない。縦横比は、農業用ハウスを設置予定の土地の形状、面積等を考慮して適宜に決定される。
基本設計情報取得部12はまた、入力された上記の基本設計情報を基本設計情報データベース31に記憶させる。
【0031】
ハウス放熱係数算出部13は、基本設計情報取得部12により取得された基本設計情報を読み込み、所定の栽培期間、所定の植物を栽培する場合の農業用ハウスのハウス放熱係数を求める。ハウス放熱係数には、妻面、矢切部及び側壁からの熱交換の係数(本明細書においては、これらは水平方向の熱流に関する係数であることから「水平放熱係数」と称する)と、地面の熱交換及び天面での熱交換の係数(本明細書においては、これらは垂直方向の熱流に関する係数であることから「垂直放熱係数」と称する)とが存在する。本実施形態では、ハウス放熱係数として、この水平放熱係数と垂直放熱係数の双方を考慮する。いずれか一方のみを考慮した場合には、農業用ハウス全体のハウス放熱係数としては十分ではなく、算出される床面積や被覆面積の値の信頼度に影響することから、両方を考慮することが好ましい。
【0032】
ハウス放熱係数算出部13は、内外気温差算出部131、地中熱流束算出部132を有する。内外気温差算出部131は、所定の栽培期間、所定の植物を栽培するとした場合に、農業用ハウス内の設定夜温度と、この所定の栽培期間において推定される、農業用ハウスの設置予定の地域の地域最低気温との内外気温差を求める。
【0033】
設定夜温度は、植物の種類に応じて規定されている。栽培期間中の平均値に相当する値が採用されるが、農業用ハウスの設置地域や季節等も考慮して定められることが好ましい。設定夜温度は、
図3に示した入力画面において手入力で設定することも可能であるが、好ましくは、農業ハウス設計支援装置1が、植物の種類別に適切な夜温(平均値)を記憶した植物種類別情報データベース32を有し、入力画面において栽培対象の植物の種類を選択すると、内外気温差算出部131が当該植物種類別情報データベース32にアクセスして、当該植物に対応する夜温(平均値)を読み出して設定される構成とする(
図4参照)。
【0034】
地域最低気温は、当該地域の地域気象観測システム(アメダス)等から得られる公開気象データから入手する。地域最低気温は、栽培を予定する期間によって異なり、当該栽培期間中の最低気温が採用される。また、植物の設定夜温度は、上記のように栽培期間中の平均値に相当する温度であるが、農業ハウス外の温度は、日没以降低下し、日の出時刻前が最も低温となることから、明け方にかけて暖房能力が最大となるように制御することが好ましい。その場合、農業用ハウス内の夜温は、結果的に、日の出時刻にかけて平均値よりも高めに制御される。これを最高夜温度とした場合、最高夜温度は、経験値等から植物の種類によって定めることが好ましく、例えば、トマトの場合に、平均値としての設定夜温度よりも数度高い温度が採用される。この最高夜温度又は最高夜温度と設定夜温度(平均値)との差分は、植物種類別情報データベース32に設定夜温度(平均値)と共に記憶させておくことで植物の種類を選択すれば読み出される。
【0035】
内外気温差は、本実施形態では、この最高夜温度と地域最低気温との差になる。よって、設定夜温度(平均値)に、設定夜温度(平均値)と最高夜温度との差分を加え、地域最低気温との差を求めることで内外気温差が算出される。例えば、設定夜温度(平均値):15.5℃、設定夜温度(平均値)と最高夜温度との差分:2℃、地域最低気温:-11℃の場合には、内外気温差:28.5℃となる。
【0036】
地中熱流束算出部132は、単位面積あたりの地中伝熱量を算出するが、地域を考慮して定めた地中伝熱係数に上記の内外気温差を掛けて算出する。地中伝熱係数は、公開気象データに基づき各地点について暖地・寒地の分別を行い割り当てた値であり、本実施形態では、日最低気温0℃以下の日数が112日/年未満の場合は暖地として「-36」を割り当て、日最低気温0℃以下の日数が112日以上の場合は寒地として「-31」を割り当てている。地中伝熱係数は、地域に紐付けて地域情報データベース33に記憶されている。地中熱流束算出部132は、地域情報データベース33から地中伝熱係数を読み出して地中伝熱量を算出する(
図4参照)。
【0037】
ハウス放熱係数算出部13は、上記のデータを用いて水平放熱係数を算出する。具体的には、
図4に示したように、基本設計情報データベース31にアクセスし、基本設計情報取得部12により取得された上記の基本設計情報のうち、屋根材の種類、内張被覆材の種類、屋根形状の種類、間口、軒高、縦横比を読み込む(S401)。基本設計情報データベース31においては、屋根材の種類及び内張被覆材の種類に対応して平均放熱係数が紐付けられている。
なお、「平均放熱係数」は、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られる一晩の暖房負荷係数を、実験期間内の複数種類のフィルム(屋根材、内張被覆材(カーテン))について求め、それらをフィルム(屋根材、内張被覆材(カーテン))の種類別に平均化した値である。本実施形態では、1980年11月9日~1981年2月3日にかけて、株式会社誠和の小山工場圃場に建設したA~Cの3つのハウス(表面積:262m
2、床面積:120m
2、外被膜:農業用塩化ビニルフィルム、暖房方式:温風暖房機、カーテンの形式:Aハウス・・・農業用ビニルフィルム一層、B,Cハウス・・・二軸二層、カーテン位置(下層):A,Bハウス・・・1.8m(地上より)、Cハウス・・・1.85m(地上より)、二層の場合の層間距離:20cm)にそれぞれ4つの栽培ベッドを設けて行った実験により求めた値を採用した。実験は、各栽培ベッド上のみ黒マルチで被覆し、栽培ベッド毎に、野沢菜、レタス、さやえんどう、いんげんを植え、各ハウスにおける暖房負荷係数の平均値をフィルムの種類に対応して求め、Aハウスの暖房負荷係数を100%としたときに、B,Cハウスの暖房負荷係数が各種フィルムの組み合わせによって何%の値になったかを求め、この値を「平均放熱係数」としたものである。
水平放熱係数及び垂直放熱係数の算出に用いる平均放熱係数は、本実施形態では、内張被覆材が選択されている場合には、内張被覆材の平均放熱係数を採用し、内張被覆材が選択されないには屋根材の平均放熱係数を採用する。
但し、内張被覆材や屋根材といった天面を構成する部材の平均放熱係数だけでなく、側面の熱移動指標も考慮した平均放熱係数を用いると、計算精度の向上が期待できるため好ましい。天面及び側面の熱移動指標を考慮する場合には、平均放熱係数は、次式により算出される。なお、側面の平均放熱係数は、側面を構成する被覆材の平均放熱係数である。
平均放熱係数=(天面の平均放熱係数×天面の表面積+側面の平均放熱係数×側面の表面積)/(天面の表面積+側面の表面積)
また、屋根形状に関しては、屋根形状によって表面積が異なるため、それに応じた放熱係数(屋根形状係数)が紐付けられている。本実施形態では、屋根を天面部と矢切部とに分けて屋根形状係数を設定しており、水平放熱係数を求める際には矢切部の屋根形状係数2を用い、後述の垂直放熱係数を求める際には天面部の屋根形状係数1を用いる。屋根形状係数は、床面積との比で、前者は1未満の値若しくは1以上の値(但し、多くのケースは1未満の値)(屋根形状係数2)、後者は1以上の値(屋根形状係数1)が採用される。ハウス放熱係数算出部13は、これらの基本設計情報の値及び紐付けられた各係数を読み込むと共に(S401)、内外気温差算出部131により求められた内外気温差(S402)を用いて、水平放熱係数を算出する(S403)。本実施形態において、水平放熱係数は、次式により算出される。
【0038】
水平放熱係数=(平均放熱係数×内外気温差×屋根形状係数2×(間口)2×縦横比の平方根/間口)+(2×平均放熱係数×内外気温差×軒高/縦横比の平方根)
【0039】
ハウス放熱係数算出部13はまた、上記のデータを用いて垂直放熱係数を算出する。具体的には、上記のデータのうち、垂直方向の熱量に影響する情報、すなわち、地中熱流束算出部132により求められた地中熱流束(S404)、基本設計情報のうちの内張被覆材の平均放熱係数、屋根形状に紐付けられた屋根形状係数1(S401)、内外気温差算出部131により求められる内外気温差(S402)を用いて、垂直放熱係数を算出する(S405)。本実施形態において、垂直放熱係数は、次式により算出される。
【0040】
垂直放熱係数=地中熱流束+平均放熱係数×内外気温差×屋根形状係数1
【0041】
床面積理論値算出部14は、回収熱量取得部11により得た回収熱の熱量に、ハウス放熱係数算出部13により求めたハウス放熱係数、本実施形態では、水平放熱係数及び垂直放熱係数に基づき、栽培対象の植物に適する設定夜温度を維持する暖房能力を確保可能な農業用ハウスの床面積の理論値を算出する。床面積の理論値を算出する場合、面積の算出を単純化し、農業用ハウス設計支援装置1の計算負荷を軽減するため、方形の床形状として算出する設定とすることが好ましい。
【0042】
また、回収熱の熱量は、回収熱量取得部11によって得えられた熱量を100%利用することも計算上は可能であるが、輸送中の損失等を考慮して実際に利用可能な熱量を採用することが好ましい。そのため、上記の農業用ハウスの基本設計情報、植物の種類等と共に、
図3に示したように、熱利用効率を入力項目として入力可能とすることが好ましい。床面積理論値算出部14は、回収熱の熱量を用いる際には、回収熱量取得部11によって得られた熱量(余熱量)に、入力された熱利用効率(例えば、90%、80%等)を掛けた熱量を床面積の理論値の計算に用いる。すなわち、
図5に示したように、床面積理論値算出部14は、この回収熱の熱量に熱利用効率を掛けた値(S501)、水平放熱係数(S403)及び垂直放熱係数(S405)を用いて、まず床面積の相乗平均値(S502)を次式により算出する。
【0043】
相乗平均値=(-水平放熱係数+((水平放熱係数)2-4×垂直放熱係数×回収熱の熱量×熱利用効率)の平方根)/(2×垂直放熱係数)
次に、相乗平均値を2乗し、床面積の理論値を算出する(S503)。
【0044】
被覆面積理論値算出部15は、農業用ハウスの側面、妻面、屋根を形成する天井面と矢切面を合わせた被覆材により被覆される合計面積を被覆面積として算出する。この被覆面積も、床面積と同様に、回収熱の熱量を所望の熱利用効率で利用可能な面積が求められる。本実施形態では、
図6に示したように、基本設計情報のうちの回収熱の熱量、熱利用効率、内張被覆材の平均放熱係数を用いると共に(S601)、内外気温差算出部131により求められた内外気温差(S402)、地中熱流束算出部132により求められた地中熱流束(S404)、床面積理論値算出部14により算出された床面積の理論値(S503)を用いて、次式により被覆面積の理論値を求める(S602)。
【0045】
被覆面積の理論値=(回収熱の熱量×熱利用効率-地中熱流束×床面積の理論値)/(平均放熱係数×内外気温差)
【0046】
床面積設計値算出部16は、床面積の設計値が、床面積理論値算出部14により求められた床面積の理論値以下となるように、農業用ハウスの全幅及び奥行きの設計値を求める。まず、
図7に示したように、基本設計情報データベース31に記憶されている間口及び縦横比の情報(S701)と、床面積理論値算出部14において求められた床面積を求めるための相乗平均値(S502)を参照し、連棟数を求める(S702)。間口は上記のように一棟分あたりの間口であるため、縦横比の関係から、連棟数が求められる。
【0047】
この連棟数に、基本設計情報データベース31に記憶されているスパン長さと間口(S703)、並びに、床面積理論値算出部14において求められた床面積(S503)を参照し、スパン数を求める(S704)。スパン数は、床面積の理論値を、連棟数、間口及びスパン長さで割って得られた値以下の整数値を採用する。間口と連棟数から設計上の全幅が求められ、スパン長さとスパン数から設計上の奥行きが求められる(S705)。そして、全幅と奥行きとにより床面積の設計値が求められる(S706)。スパン数が、上記のように、床面積の理論値を全幅(連棟数×間口)とスパン長さで割って得られた値以下の整数値であるため、床面積の設計値は、床面積理論値算出部14において求められた床面積の理論値以下となる。
【0048】
被覆面積設計値算出部17は、被覆面積理論値算出部15により求められた被覆面積の理論値以下となるように、被覆面積の設計値を求める。具体的には、
図8に示したように、床面積設計値算出部16により求められた床面積の設計値(S706)、全幅及び奥行き(S705)、連棟数(S702)、基本設計情報データベース31に記憶されている軒高、間口、屋根形状(屋根形状係数1,2)(S801)を用いて求める。「2×全幅×軒高+2×奥行き×軒高」により、妻面(屋根に含む矢切部を除く)2面と側面2面の被覆面積が得られ(S802)、これに屋根の被覆面積を加算する。屋根の被覆面積は、天面部に関しては床面積の設計値に天面部の屋根形状係数1を掛けて求め(S803)、矢切部に関しては間口の平方に連棟数と矢切部の屋根形状係数2を掛けて求める(S804)。そして、S802、S803及びS804で求めた各被覆面積を合計すると、被覆面積の設計値となる(S805)。床面積設計値算出部16により求めた床面積の設計値、全幅(連棟数×間口)を用いるため、被覆面積設計値算出部17により得られる被覆面積の設計値は、被覆面積理論値算出部16により求めた被覆面積の理論値以下となる。
【0049】
次に、本実施形態の農業用ハウス設計支援装置1を用いた農業用ハウスの設計シミュレーションの例を説明する。
シミュレーション実行者等が、
図3に示した入力画面から必要事項を入力する。入力項目としては、回収熱の熱量(余熱量)(例えば、15000kcal/h)、熱利用効率(例えば、0.9)、屋根形状(三角屋根:屋根形状係数1=1.096、屋根形状係数2=0.45)、屋根材の種類、内張被覆材の種類(ラクソス+テンパ:平均放熱係数1.9)、間口(例えば、8m)、軒高(例えば、5m)、奥行き方向のスパン長さ(例えば、5m)、縦横比(全幅/奥行き)(例えば、1.5)、植物の種類(例えば、トマト)、栽培開始日、栽培終了日、農業用ハウスの設置予定の地名(例えば、札幌)である。
【0050】
回収熱量取得部11及び基本設計情報取得部12は、これらの入力情報を基本設計情報データベース31に記憶させる。ハウス放熱係数算出部13は、内張被覆材の種類に応じて、紐付けられた平均放熱係数=1.9kcal/m
2h℃を取得し、
図3の入力画面に表示させる。また、植物の種類として入力された「トマト」に対応して設定夜温度(平均値)=15.5℃が植物種類別情報データベース32から読み込まれ、さらに、最高夜温度と設定夜温度(平均値)の差(設定夜温度補正(最大))=2℃が読み込まれる。地名「札幌」に対応し、札幌地域の公開気象データから地域最低気温を取り込む。地域最低気温は、入力された栽培開始日及び栽培終了日に基づいて得られる栽培期間中における地域最低気温(例えば、-11℃)である。また、地域に紐付けられた地中伝熱係数(例えば、-31kcal/m
2h)を地域情報データベース33から読み込む。
【0051】
内外気温差算出部131により、上記の設定夜温度(平均値)、設定夜温度補正(最大)、地域最低気温を用いて内外気温差=28.5℃が出力される。地中熱流束算出部132により、内外気温差(28.5℃)と地中伝熱係数(-31kcal/m2h)を用いて地中熱流束=27.71kcal/m2hが求められる。
【0052】
次に、ハウス放熱係数算出部13はこれらの数値を用いて、上記式により水平放熱係数と垂直放熱係数を求め(
図4参照)、床面積理論値算出部14が水平放熱係数、垂直放熱係数、回収熱の熱量(余熱量)及び熱利用効率を用いて床面積の相乗平均値=32.40m、床面積の理論値(理論床面積)=1050.02m
2を算出する(
図5参照)。理論床面積は、
図3の右半分に位置する出力画面に表示される。理論床面積が求められたならば、
図7に示したように、床面積設計値算出部16が、床面積の相乗平均値(32.40m)×縦横比の平方根(1.5の平方根)/間口(8m)の式により、連棟数を求める。連棟数は、整数値で求めるため、出力された値に対して小数点以下を適宜に丸めて求める。この例では、連棟数=5と算出する。次に、床面積の相乗平均値の平方(32.40m)
2/連棟数(5)/間口(8m)/スパン長さ(5m)よりスパン数を求める。スパン数も整数値で求め、ここでは計算により得られた値の小数点以下を切り捨てた値が採用され、スパン数=5と算出される。
【0053】
床面積設計値算出部16は、間口(8m)×連棟数(5)×スパン長さ(5m)×スパン数(5)より、床面積の設計値(設計床面積)=1000m
2を算出し、
図3の出力画面に表示させる。よって、出力画面では、理論床面積:1050m
2に対し、その値以下の設計床面積:1000m
2が表示される。
【0054】
一方、被覆面積理論値算出部15は、余熱量=15000kcal/h、熱利用効率=0.9、地中熱流束=27.71kcal/hm
2、理論床面積=1050.02m
2、内外気温差=28.5℃、内張被覆材の平均放熱係数=1.9kcal/m
2h℃の各値を用いて上記式により被覆面積の理論値(理論被覆面積)=1995.75m
2を算出する(
図6参照)。また、被覆面積設計値算出部17は、設計床面積(1000m
2)×屋根形状係数1(1.0965)+屋根形状係数2(0.45)×間口の平方(8m)
2)×連棟数(5)+2×全幅(40m)×軒高(5m)より、被覆面積の設計値(設計被覆面積)=1890.58m
2を求める(
図8参照)。理論被覆面積及び設計被覆面積は、それぞれ、
図3に示した出力画面に、1995.7m
2、1890.5m
2と表示される。
【0055】
本実施形態によれば、回収熱の熱量を基準とし、ハウス放熱係数との関連で床面積及び被覆面積の理論値を算出し、具体的な設計値を求める構成である。よって、回収熱の熱量をより有効に利用できる規模の農業用ハウスを設計することができ、化石燃料由来の暖房設備によって同等の暖房を賄う場合と比較して、温室効果ガスの削減を期待できる。
【0056】
次に、上記実施形態により設計された農業用ハウスを用いて植物を栽培する場合に必要となる熱量をシミュレーションし、さらに、回収熱を利用した場合における温室効果ガスの削減効果をシミュレーションする機能を備えた農業用ハウス設計支援装置1の実施形態を説明する。
【0057】
本実施形態では、
図9に示したように、上記の回収熱量取得部11、基本設計情報取得部12、ハウス放熱係数算出部13、床面積理論値算出部14、被覆面積理論値算出部15、床面積設計値算出部16及び被覆面積設計値算出部17に加え、必要熱量算出部21、暖房由来温室効果ガス排出量算出部22及びコスト算出部23として機能させる手順を実行するコンピュータプログラムが記憶部1bに記憶されている。
【0058】
必要熱量算出部21は、農業用ハウス内の設定夜温度を確保するための必要熱量を算出する。設計夜温度は、上記のとおりであり、植物の種類に応じて設定される。必要熱量算出部21は、
図10に示したように、農業用ハウスの設置地域の公開気象データから得られる日毎の最高気温及び日毎の最低気温に(S1001)、床面積設計値算出部16により求められた床面積の設計値(設計床面積)(S706)及び被覆面積設計値算出部17により求められた被覆面積の設計値(設計被覆面積)(S805)を考慮して日毎の夜間暖房負荷(S1005)を求め、この日毎の夜間暖房負荷(S1005)を用いて栽培期間における期間暖房負荷(S1007)を求める。この期間暖房負荷(S1007)が、栽培期間において設定夜温度を確保するための必要熱量となる。
【0059】
日毎の夜間暖房負荷(S1005)を求めるために、日毎の夜間放熱量(S1003)と日毎の地中伝熱量(S1004)を求める。日毎の夜間放熱量(S1003)は、「設計被覆面積(S806)×内張被覆材(内張被覆材が選択されない場合には屋根材)の平均放熱係数(S1008)×日毎の夜間デグリアワー(S1002)」により求められる。
【0060】
日毎の夜間デグリアワー(S1002)とは、上記の設定夜温度と外気温の差分を積分した値である。夜間デグリアワーは、近似値が用いられる。地域の日毎の最高気温と日毎の最低気温を直線で結んだときの幾何的な暖房デグリアワーの算出方法に従って求める(農業気象(J. Agr. Met.) 38 (1):29-36頁, 1982、林 真紀夫、古在豊樹「各種暖房デグリアワー算定値と実測値の比較および暖房デグリアワー線図の提案」参照)。
【0061】
具体的には、
図11に示したように、「日毎の最低気温≧設定夜温度」(S1101)か否かを判断する。
a)日毎の最低気温が設定夜温度以上の場合(S1101においてYesの場合):
「(14×設定夜温度(平均値)+(49×日毎の最高気温+119×日毎の最低気温)/12)×0」により求める。すなわち、この場合は、暖房の必要がないため、夜間デグリアワー(1)は0となる(S1102)。
b)次に、「7/12×日毎の最高気温+5/12×日毎の最低気温>設定夜温度(平均値)」か否かを判断する(S1103)。
b-1)設定夜温度を超える場合(S1103においてYesの場合):
「12×(設定夜温度(平均値)-日毎の最低気温)2/(日毎の最高気温-日毎の最低気温)」により、夜間デグリアワー(2)を求める(S1104)。
b-2)設定夜温度以下の場合(S1103においてNoの場合):
「(14×設定夜温度(平均値)+(49×日毎の最高気温+119×日毎の最低気温)/12)×1」により、夜間デグリアワー(3)を求める(S1105)。
【0062】
なお、夜間デグリアワーの近似値は、日毎の最高気温と日毎の最低気温を説明変数とし、夜間デグリアワーを目的変数として生成した機械学習モデルにより求めることが正確性の点でより好ましい。
【0063】
日毎の地中伝熱量(
図10のS1004)は、日毎の地中熱流束(S1009)に設計床面積(上記の例では1000m
2)(S706)を掛け、これに日没から翌朝までの夜間時間に相当する14時間を掛けて求められる。日毎の地中熱流束(S1009)は、設定夜温度(平均値)と日毎の夜間平均外気温との差分に係数を掛け(S1010)、これに地中伝熱係数(札幌の場合、-31)(S1011)をプラスして求められる。日毎の夜間平均外気温は、地域の日毎の最高気温及び日毎の最低気温(S1001)を用いて、「(5×日毎の最高気温+19×日毎の最低気温)/24」により求められる 。
【0064】
このようにして得られた日毎の夜間放熱量(S1003)と日毎の地中伝熱量(S1004)を合計すると、日毎の夜間暖房負荷(S1005)が求められる。日毎の夜間放熱量(S1003)と日毎の地中伝熱量(S1004)との合計が0以下の場合には、日毎の夜間暖房負荷は0として算出される。
【0065】
日毎の夜間暖房負荷(S1005)を栽培期間に相当する日数分求め、それらを合計する(S1006)。これにより期間暖房負荷(S1007)が得られる。なお、期間を月毎すれば月次の期間暖房負荷が求められ、12ヶ月分合計すれば、年次の期間暖房負荷が得られる。
【0066】
但し、期間暖房負荷(S1007)を求めるにあたっては、
図12に示したように、日毎の夜間暖房負荷(S1005)だけでなく、日毎の昼間暖房負荷(S1201)を加算し、日毎の期間暖房負荷(S1202)を求め、これを、栽培期間に対応する日数分求めて合計する構成とすることが好ましい。日毎の昼間暖房負荷(S1201)は、日射量作用を考慮した値となる。日毎の昼間暖房負荷としては、簡易的に固定値を採用することもできるが、公開気象データを参照し、「昼間の室内設定温度-外気温-室内太陽熱影響温度」を求めて(S1203)、そのうち正の部分のみを積分した値(デグリアワー)を求めることが好ましい。このように、日毎の昼間暖房負荷(S1201)を用いることにより、期間暖房負荷(S1007)の算出精度が高くなる。日毎の昼間暖房負荷(デグリアワー)(S1201)は、日毎の最高気温、日毎の最低気温及び日照時間を説明変数として生成した機械学習モデルにより求めることが精度を高めるためにはより好ましい。
【0067】
暖房由来温室効果ガス排出量算出部22は、必要熱量算出部21により求められた期間暖房負荷(S1007)である、栽培期間において設定夜温度を確保するための必要熱量を温室効果ガス排出量に換算する。
【0068】
このとき、暖房由来温室効果ガス排出量算出部22は、
図13に示したように、まず、暖房設備の稼働によって上記の必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量(S1301)を求める。必要熱量である期間暖房負荷(S1007)は、栽培期間に対応させたものでもよいし、上記のように月次、年次で求めたものでもよい。但し、換算される温室効果ガス排出量(S1301)は、回収熱によって必要熱量を賄う場合と比較されるところ、回収熱を利用する場合、上記のとおり、熱利用効率(例えば、0.9)を掛けた熱量を用いる。そこで、暖房設備の稼働によって必要熱量を確保する場合の温室効果ガス排出量を求める際には、上記により得られた期間暖房負荷(S1007)を熱利用効率(例えば、0.9)で割った値を採用する(S1302)。例えば、必要熱量算出部21により、必要熱量である年次期間暖房負荷=1734.57GJが求められた場合(S1007)、これを例えば熱利用効率=0.9で割り、1927.30GJを得る(S1302)。この値に対して、化石燃料の種類によって紐付けられた排出係数(S1303)を掛ける。化石燃料の種類は入力画面において選択可能とすることができ、
図3に示したように、例えばA重油を選択した場合には、二酸化炭素の排出係数=0.0189が採用される。よって、この例では、1927.30GJ×0.0189×44/12=133.56tが求められ、
図3の出力画面において、暖房設備を稼働した場合(資源循環なしの場合)の温室効果ガスの排出量=133.5tと表示される。
【0069】
一方、本実施形態では、回収熱を所定の熱利用効率(例えば、0.9)で利用して、上記必要熱量を賄うことのできる農業用ハウスを設計するシミュレーションを行っているため、回収熱によって必要熱量を確保する場合の燃料消費量は原則として0であり、温室効果ガス排出量は0となる。
よって、暖房由来温室効果ガス排出量算出部22により求められる温室効果ガス削減量は、この例では、133.5tとなる。
なお、回収熱によって必要熱量を賄うことができないケースを考慮する場合には、暖房設備によって不足分の熱量を補うことに伴う温室効果ガス排出量を算出する計算プログラムを追加することも可能である。
【0070】
コスト算出部23は、暖房設備の稼働によって必要熱量を確保するまでに必要なコストと、回収熱によって必要熱量を確保するまでに必要なコストをそれぞれ求め、両者の差分から削減エネルギーコストを求める。まず、暖房設備の稼働によって必要熱量を確保するまでに必要なコストは、例えばA重油の場合、熱量ベースでの単価が2000円として、例えば、上記の1734.57GJを賄う場合の費用は、回収熱を利用する場合と比較するため、熱利用効率(例えば、0.9)を考慮し、¥2000×1734.57GJ/0.9となり、約3,854,600円となる。
【0071】
一方、農業用ハウス建設・運営サイドが排熱提供サイドから仕入れる回収熱の工場取引単価が、熱量単価で¥1100/GJとした場合、¥1100×1734.57GJ/0.9となるため、約2,120,030円となる。この金額は、排熱提供サイドである工場等から見れば、従来大気中に放出していたに過ぎない排熱を基にした新たな売り上げとなる。よって、
図3の出力画面において、この金額を排熱提供サイドにおける総売上として表示する項目を設けることも好ましい。このような数値を農業用ハウスの建設前に把握できることは、排熱提供サイドにおいて、農業用ハウスとの連携を図ることに対するインセンティブとなる。
【0072】
コスト算出部23は、約3,854,600円と約2,120,030円を、
図3に示した出力画面に表示させる(なお、
図3では、正確な計算値:「¥3,854,174」、「¥2,119,796」が示されている)。そして、両者の差分を算出する。この差分の約1,734,570円(
図3では、正確な計算値:「1,734,379」と表示(端数処理に伴う誤差あり))が、暖房で必要熱量を賄う場合と回収熱により必要熱量を賄う場合との差となる。
【0073】
本実施形態では、床面積、被覆面積の設計値が求められた農業用ハウスにおいて、所望の植物を所定の栽培期間栽培した場合の必要熱量を求めることができる。そして、暖房由来温室効果ガス排出量算出部22により、化石燃料を用いた場合と回収熱を用いた場合との差から温室効果ガスの削減量を求めることができ、さらに、コスト算出部23により、両者の差をコスト面から把握することができる。よって、本実施形態では、回収熱を最大限に生かせる規模の農業用ハウスを設計できると共に、その農業用ハウスを使用して回収熱を用いた場合の温室効果ガスの削減量及び削減コストを可視化できることになり、回収熱を用いた農業用ハウスを建設・運営する場合における利点を明確化できる。また、回収熱を提供する工場等においても、排熱の有効利用とその場合の利益が明確化される。その結果、農業用ハウスの建設・運営サイド、排熱提供サイドの双方の立場に対し、温室効果ガスの削減に貢献できる農業用ハウスの建設を促すインセンティブとなる。
【符号の説明】
【0074】
1 農業用ハウス設計支援装置
11 回収熱量取得部
12 基本設計情報取得部
13 ハウス放熱係数算出部
131 内外気温差算出部
132 地中熱流束算出部
14 床面積理論値算出部
15 被覆面積理論値算出部
16 床面積設計値算出部
17 被覆面積設計値算出部
21 必要熱量算出部
22 暖房由来温室効果ガス排出量算出部
23 コスト算出部23
31 基本設計情報データベース
32 植物種類別情報データベース
33 地域情報データベース
【要約】
各種機器・設備から排出される熱エネルギーを回収し、回収熱を有効利用するのに見合った規模の農業用ハウスの建設を促す。
各種機器・設備から排出される熱エネルギー中、回収して利用可能な回収熱の熱量を得る回収熱量取得部11と、農業用ハウスの基本設計情報を取得する基本設計情報取得部12と、農業用ハウスのハウス放熱係数を求めるハウス放熱係数算出部13と、回収熱の熱量に、ハウス放熱係数を考慮して、植物に適する設定夜温度を維持する暖房能力を確保可能な農業用ハウスの床面積の理論値を算出する床面積理論値算出部14とを有する。